【課題】本発明は、熱可塑性樹脂繊維からなる繊維層と熱可塑性樹脂繊維及びコットンからなる繊維層とを含む吸収性物品用不織布に関し、強度と柔軟性に優れるとともに尿や経血などの体液に対する液透過性にも優れた、吸収性物品用不織布を提供するものである。
【解決手段】本発明は、コットン及び熱可塑性樹脂繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の少なくとも片面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第2繊維層とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる吸収性物品用不織布であって、前記第1繊維層に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維は、前記第2繊維層に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維よりも細い繊維径を有し、前記不織布は、複数の凸部及び溝部を備えた特定の構造を有している。
コットン及び熱可塑性樹脂繊維を含む第1繊維層と、前記第1繊維層の少なくとも片面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第2繊維層とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる吸収性物品用不織布であって、
前記第1繊維層に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維は、前記第2繊維層に含まれる前記熱可塑性樹脂繊維よりも細い繊維径を有し、
前記不織布は、第1面と、該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記不織布の前記第1面において第1方向に延設され且つ前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられた、前記第1面の方向に向けて突出する複数の凸部と、前記第1方向に延設され且つ前記第2方向において隣り合う前記凸部の間に設けられた、前記第2面の方向に向けて窪む複数の溝部とを有していて、
前記溝部は、前記凸部の頂部における前記第1面側の位置よりも前記第2面側に位置する第1底部を備えた第1凹部と、前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられた、前記第1底部から前記第2面の方向に向けて窪む複数の第2凹部とを有し、
前記第2凹部は、前記第1底部から前記第2面側の方向に延設された周壁部と、前記周壁部の前記第2面側の端部にその端部を塞ぐように設けられた、前記不織布の中で最も高い繊維密度を有する第2底部とを備える、
前記不織布。
前記周壁部は、前記第1方向に沿う一対の第1周壁部と、前記第2方向に沿う一対の第2周壁部とを有していて、前記一対の第1周壁部の少なくとも一方に、前記第2面に通じる孔部を備えている、請求項1に記載の不織布。
前記不織布は、前記第2面を形成する前記第1繊維層と、該第1繊維層の第1面側の面に隣接した前記第2繊維層と、該第2繊維層の第1面側の面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層とによって構成されていて、各繊維層は、熱可塑性樹脂繊維の坪量が同一であり、前記第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、前記第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同じ又はそれ以上の繊維径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る吸収性物品用不織布の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1〜4は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品用不織布1を模式的に示す図である。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、広げた状態の不織布を、上面側から厚さ方向D
Tに見ることを、単に「平面視」という。
【0021】
図1〜4に示すように、本発明の第一実施形態に係る吸収性物品用不織布1は、第1面である上面1aと、該上面1aとは反対側の第2面である下面1bとを有し、前記下面1bを形成する繊維層であって、コットン2a及び熱可塑性樹脂繊維2bを含む第1繊維層2と、前記第1繊維層2の上面1a側の面に隣接し、前記上面1aを形成する繊維層であって、熱可塑性樹脂繊維3aを含み且つコットンを含まない第2繊維層3とを含む、2層の繊維積層体によって構成されており、さらに、前記不織布1は、後述する特定の凹凸構造、すなわち、前記上面1aにおいて第1方向D
1に延設され且つ前記第1方向D
1と直交する第2方向D
2に予め定めた間隔で設けられた、前記上面1aの方向に向けて突出する複数の凸部4と、前記第1方向D
1に延設され且つ前記第2方向D
2において隣り合う前記凸部4の間に設けられた、前記下面1bの方向に向けて窪む複数の溝部5とを有しており、前記溝部5は、前記凸部4の頂部41における前記第1面1a側の位置よりも前記第2面1b側に位置する第1底部51aを備えた第1凹部51と、前記第1凹部51内において前記第1方向D
1に不連続に設けられた、前記第1底部51aから前記第2面1bの方向に向けて窪む複数の第2凹部52と、を有しており、さらに、前記第2凹部52は、前記第1底部51aから前記第2面1b側の方向に延設された周壁部52aと、前記周壁部52aの前記第2面1b側の端部にその端部を塞ぐように設けられた、前記不織布1の中で最も高い繊維密度を有する第2底部52bとを備えた、特定の凹凸構造を有している。
【0022】
本発明の吸収性物品用不織布が適用される吸収性物品は、特に限定されず、例えば、テープ型又はパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー等の様々な吸収性物品を挙げることができる。本発明の吸収性物品用不織布は、例えば、使い捨ておむつ等のバックシートの外方側の面に貼り付けられるシート材として用いることもできるが、特に、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の表面シートや防漏壁などの着用者の肌と接触する可能性があるシート材として、好適に用いることができる。
【0023】
なお、本発明の吸収性物品用不織布が、吸収性物品の表面シート等に適用される場合は、肌触りや柔軟性の点から、凸部を備えた第1面が着用者の肌に面するように配設されることが好ましい。
【0024】
本発明の一実施形態に係る吸収性物品用不織布1を構成する繊維積層体は、コットン2a及び熱可塑性樹脂繊維2bを含む第1繊維層2と、前記第1繊維層2の上面1a側の面に隣接し、前記上面1aを形成する繊維層であって、熱可塑性樹脂繊維3aを含み且つコットンを含まない第2繊維層3とを含む、2層の繊維積層体によって構成されているが、本発明において前記繊維積層体は、上記2層の繊維積層体に限定されず、前記第1繊維層及び第2繊維層を含む3層以上の繊維層からなる繊維積層体であってもよい。
【0025】
本発明において、前記第1繊維層に含まれるコットンは、特に制限されず、例えば、繊度が1.0〜15dtexの範囲内であり、繊維長が5〜40mmの範囲内であるコットンなどを用いることができる。中でも、繊維長が20mm以上のコットンは、第1繊維層を後述する第2繊維層と積層した際に(すなわち、繊維積層体を形成した際に)、コットン繊維の一部が前記第2繊維層内に入り込みやすく、不織布の液透過性を向上させることができるため、好適に用いることができる。また、繊維長が20mm以上のコットンと、繊維長が10mm以下のコットンとを混合した混合コットンは、繊維長が20mm以上のコットンにより不織布の液透過性を向上させることができる上に、繊維長が10mm以下のコットンにより不織布の嵩を増大させることができるため、特に好ましく用いることができる。
【0026】
第1繊維層におけるコットンの含有量は、特に制限されないが、吸水性や保水性、柔軟性などの点から、例えば、1〜70質量%の範囲内であり、好ましくは2〜30質量%の範囲内である。
【0027】
本発明において、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維であれば特に制限されず、その熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられ、これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0028】
前記熱可塑性樹脂繊維の繊度(繊維径)は、後述する第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊維径よりも細いものであれば特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、肌触り、液透過性などの点から、通常1.1〜8.8dtexの範囲内であり、好ましくは1.5〜4.6dtexの範囲内である。
【0029】
また、前記熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、液透過性等の点から、通常20〜100mmの範囲内であり、好ましくは35〜65mmの範囲内である。前記熱可塑性樹脂繊維は、親水化処理が施されていてもよく、このような親水化処理としては、例えば、界面活性剤や親水剤等を利用した処理(例えば、繊維内部への界面活性剤の練り込み、繊維表面への界面活性剤の塗布等)などが挙げられる。
【0030】
第1繊維層における熱可塑性樹脂繊維の含有量は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性などの点から、例えば、30〜99質量%の範囲内であり、好ましくは70〜98質量%の範囲内である。
【0031】
また、前記第1繊維層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記コットン及び熱可塑性繊維以外の繊維や任意の添加剤などを含んでいてもよい。
【0032】
次に、本発明の吸収性物品用不織布を構成する前記第2繊維層について説明する。前記第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維よりも太い繊維径を有すること以外は特に制限されず、任意の熱可塑性樹脂繊維を用いることができるが、繊維同士の絡み合いのしやすさなどの点から、繊維径(繊度)以外は前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様の繊維(すなわち、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様の材質(樹脂)からなり、同様の繊維長を有する繊維)を用いることが好ましい。
なお、前記第2繊維層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記熱可塑性繊維以外の繊維や任意の添加剤などを含んでいてもよい。
【0033】
本発明においては、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維が、前記第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維よりも細い繊維径を有しているので、前記第1繊維層に含まれる繊維径の細い熱可塑性樹脂繊維が、前記第1繊維層に含まれるコットンや前記第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と絡み合いやすく、上述のような繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離が生じにくいため、不織布が構成成分としてコットンを含むものであっても、不織布として優れた強度を保持することができる。
【0034】
本発明において、吸収性物品用不織布を構成する繊維積層体は、上述の実施形態に係る2層の積層体に限定されず、所望の吸収性や柔軟性等に応じて3層以上の繊維層からなる積層体であってもよい。また、本発明の吸収性物品用不織布は、繊維積層体の層数にかかわらず、前記不織布の第1面が、コットンを含む第1繊維層以外の繊維層によって形成されていることが好ましい。吸収性物品の着用者の肌当接面となる第1面が、コットンを含む第1繊維層以外の繊維層によって形成されていると、コットンによる肌触りの悪化や柔軟性の低下等を防ぐことができ、不織布として優れた肌触り及び柔軟性を保持することができる。
【0035】
また、本発明の吸収性物品用不織布において、前記第1繊維層及び第2繊維層以外のその他の繊維層は、特に制限されず、例えば、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、無機繊維、熱可塑性樹脂繊維等の合成樹脂繊維などからなる繊維層が挙げられる。なお、その他の繊維層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、任意の添加剤などを含んでいてもよい。
【0036】
本発明において、吸収性物品用不織布を構成する各繊維層の坪量は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、吸収性などの点から、それぞれ、例えば、1〜60g/m
2の範囲内であり、好ましくは10〜30g/m
2の範囲内である。吸収性物品用不織布としての坪量は、特に制限されないが、通常は10〜100g/m
2の範囲内であり、好ましくは15〜75g/m
2の範囲内であり、更に好ましくは20〜50g/m
2の範囲内である。
また、本発明の吸収性物品用不織布の厚みは、特に制限されないが、通常は0.1〜5mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3mmの範囲内、更に好ましくは0.8〜2mmの範囲内である。
【0037】
本発明の別の実施形態に係る吸収性物品用不織布においては、前記不織布が、該不織布の第2面を形成する前記第1繊維層と、該第1繊維層の第1面側の面に隣接した前記第2繊維層と、該第2繊維層の第1面側の面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層とによって構成されていて、各繊維層は、熱可塑性樹脂繊維の坪量が同一であり、前記第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、前記第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同じ又はそれ以上の繊維径(繊度)を有するものである。
この実施形態に係る吸収性物品用不織布は、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊維量(繊維本数)が、前記第2繊維層及び前記第3繊維層よりも多いため、コットンを含む第1繊維層の強度をより一層向上させることができる。また、このような不織布は、厚さ方向において、前記不織布の第1面から第2面にかけて(すなわち、第3繊維層から第1繊維層にかけて)繊維量(繊維本数)が多くなるという繊維量勾配(或いは、前記第1面から第2面にかけて(第3繊維層から第1繊維層にかけて)繊維密度が増大するという繊維密度勾配)が存在する構造を有しているため、前記不織布の第1面側の面に供給された尿や経血などの体液が、前記不織布の第1面側から第2面側へと引き込まれやすく、吸収性物品用不織布として、より一層優れた吸収性(特に、吸収速度や液移行性等)を発揮することができる。
【0038】
次に、本発明の吸収性物品用不織布を構成する、凹凸賦形加工前(凹凸構造を形成する前)の繊維積層体の製造方法について説明する。
本発明において、前記繊維積層体を製造する手段は、特に限定されないが、例えば、上記各繊維層を形成するための繊維(すなわち、第1繊維層を形成するためのコットン及び熱可塑性樹脂繊維、第2繊維層を形成するための熱可塑性樹脂繊維など)を用いて、各繊維層に対応するウェブ(フリース)をそれぞれ形成し、各ウェブ内及びウェブ間の繊維同士を物理的又は化学的に結合させる方法などが挙げられる。
【0039】
具体的には、以下の手順に従って、前記第1繊維層及び第2繊維層を含む2層の繊維積層体を製造することができる。
(1)シート状部材を一の方向に搬送する搬送装置と、該搬送装置の上方において搬送方向の上流側に配置された第1段のカーディング装置と、前記搬送装置の上方において搬送方向の下流側(すなわち、第1段のカーディング装置よりも下流側)に配置された第2段のカーディング装置と、該第2段のカーディング装置の下流側に配置されたエアスルー方式の加熱装置とを備えた製造装置を用意する。
(2)前記第1段のカーディング装置に、第2繊維層を形成するための熱可塑性樹脂繊維を供給し、前記カーディング装置内の回転ロールのピンによって前記熱可塑性樹脂繊維を開繊して、前記第2繊維層に対応するウェブを前記搬送装置の搬送面上に形成する。
(3)前記搬送装置の搬送面上に形成された前記第2繊維層に対応するウェブを、搬送方向の下流側に搬送しながら、前記第2段のカーディング装置に、第1繊維層を形成するためのコットンと熱可塑性樹脂繊維を供給し、前記カーディング装置内の回転ロールのピンによって各繊維を開繊して、前記第1繊維層に対応するウェブを、搬送中の前記第2繊維層に対応するウェブ上に形成する。
(4)前記第2繊維層に対応するウェブ上に前記第1繊維層に対応するウェブが積層した積層ウェブを、前記エアスルー方式の加熱装置に搬送し、該加熱装置内で、各ウェブ内及びウェブ間の繊維同士を交絡させ、任意に前記熱可塑性樹脂繊維同士を熱融着させるとともにコットンを熱可塑性樹脂繊維の表面に融着固定させることにより、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが積層した2層の繊維積層体を製造することができる。
【0040】
なお、3層以上の繊維層からなる繊維積層体を製造する場合は、カーディング装置を3段以上配置した製造装置を用いて、上記手順と同様にして製造することができる。
【0041】
各繊維層に対応するウェブの形成方法は、上述の方法に限定されず、例えば、湿式法などを採用してもよい。また、ウェブの結合方法は、上述の方法に限定されず、例えば、水流交絡法やニードルパンチ法などを採用してもよい。
【0042】
このようにして製造された繊維積層体は、後述する凹凸賦形加工によって上記特定の凹凸構造が付与され、本発明の吸収性物品用不織布が得られる。
【0043】
次に、本発明の吸収性物品用不織布の凹凸構造について、図面を参照しながら更に詳細に説明する。
【0044】
図1〜4に示すように、本発明の一実施形態に係る吸収性物品用不織布1は、凸部4をなす第1面1aの領域及び第2面1bの領域が、第2面1b側から第1面1a側の方向に向けて凸となる形状に湾曲した構成となっている。一方で、溝部5の第1凹部51は、その第1凹部51をなす第1面1aの領域及び第2面1bの領域が、第1面1a側から第2面1b側の方向に向けて凸となる形状に湾曲した構成となっている。したがって、前記不織布1は、前記凸部4が延設された第1方向D
1と直交する第2方向D
2に対して、凹凸が交互に繰り返される断面略波形のシート状となっている。
【0045】
前記凸部4は、前記不織布1の面(シート面)の第1方向D
1(例えば、不織布の長手方向)に向けて延設されていると共に、前記不織布1の面の前記第1方向D
1と直交する第2方向D
2(例えば、不織布の幅方向)に予め定めた間隔で複数列配設されている。本実施形態においては、各凸部4は、いずれも第1方向D
1に向けて連続的且つ他の凸部4と相互に平行となるように延設されている。
【0046】
本発明の吸収性物品用不織布において、凸部は、隣り合う他の凸部との間の間隔が0.25〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3mmであり、より好ましくは0.75〜2mmである。ここで、「隣り合う凸部の間の間隔」とは、各凸部の第2方向D
2の略中央位置(実質的に凸部の頂部)の間の距離を指す。
隣り合う凸部の間の間隔の距離が0.25mm未満であると、不織布の凹凸構造が微細過ぎて、不織布の凸部と着用者の肌との接触面積をあまり減らすことができないため、不織布の表面(第1面)の肌触りが低下する可能性がある一方、隣り合う凸部の間の間隔の距離が5mmを超えると、凹凸賦形加工前の不織布(すなわち、繊維積層体)との構造上の差異が少なくなるため、凹凸構造を生かした柔軟な肌触りが得られにくくなる。
【0047】
また、本発明の吸収性物品用不織布において、凸部は、第1凹部の第1底部の第1面側の高さから凸部の頂部の高さまでの長さ(すなわち、凸部の高さ)が、0.25〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3mmであり、より好ましくは0.75〜2mmである。この凸部の高さが0.25mm未満であると、凸部の突出が小さ過ぎるため、凹凸構造を生かした柔軟な肌触りが得られにくくなる一方、凸部の高さが5mmを超えると、凸部の突出が大き過ぎて鋭利な構造となってしまうため、柔軟な肌触りが得られにくくなる。
【0048】
図1〜4に示すように、本発明の一実施形態に係る吸収性物品用不織布1は、第2方向D
2に対して隣り合う凸部4、4の間の空間に、溝部5が第1方向D
1に延びるように設けられていて、前記溝部5は、凸部4の頂部41における第1面1aの位置よりも第2面1bの方向に位置する第1底部51aを備えた第1凹部51と、この第1凹部51内において前記第1方向D
1に不連続に設けられた、前記第1底部51aから前記第2面1bの方向に向けて窪む複数の第2凹部52とを有している。
【0049】
本発明の吸収性物品用不織布は、このような特定の凸部及び溝部を有する構造、すなわち、前記溝部が、前記凸部の頂部における第1面側の位置よりも第2面側に位置する第1底部を備えた第1凹部と、前記第1底部から前記第2面側の方向に延設された周壁部及び前記周壁部の前記第2面側の端部にその端部を塞ぐように設けられた、第2底部を備える第2凹部と、を有する構造を備えているので、前記不織布の第1面側から掛かる厚さ方向の応力を、前記第1凹部が前記第2面側に撓むことによって緩衝することができるため、コットンを構成成分として含む不織布であっても、十分に柔軟性を確保することができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記第2凹部52は、平面視にて略矩形状の開口を有していて、全体として前記不織布1の下面1b側に突出して、略直方体状の内部空間を備えたものとなっている。また、第2凹部52は、各溝部5の長さ方向(すなわち、第1方向D
1、或いは第1凹部51の長さ方向)に一定の間隔で配設されていて、これらの各第2凹部52は、他の第2凹部52とは相互に独立した状態に形成されている。
【0051】
また、本実施形態において、前記複数の第2凹部52は、それぞれ、第1底部51aと連続した状態で下面1b側に向けて延びる立壁状の周壁部52aと、この周壁部52aの下端側に設けられた上述の第2底部52bとを備えている。前記周壁部52aは、前記第1方向D
1に沿うように延びる一対の第1周壁部52a
1、52a
1と、前記第2方向D
2に沿うように延びる一対の第2周壁部52a
2、52a
2とを備えていて、一対の第1周壁部52a
1、52a
1同士は、相互に向かい合う位置に配設され、一対の第2周壁部52a
2、52a
2同士も、相互に向かい合う位置に配設されている。
【0052】
そして、
図1及び
図3に示すように、一対の第1周壁部52a
1、52a
1には、第1凹部51の内部空間から第2面1bに通じる孔部53がそれぞれ形成されている。本実施形態においては、孔部53は、一対の第1周壁部52a
1、52a
1のそれぞれに1つずつ設けられていて、それらの孔部53は、第1周壁部52a
1における第2底部52b寄りの位置に形成されたものとなっている(したがって、1つの第1凹部51には、2つの孔部53が存在している。)。一方で、一対の第2周壁部52a
2、52a
2には、孔部53に相当するものは存在せず、各第2周壁部52a
2は、下端側の全部が第2底部52bと直接的に連結された状態となっている。
【0053】
本発明の吸収性物品用不織布において、第2凹部は、溝部の溝底、より具体的には第1凹部の第1底部が吸収性物品の着用者の肌に接触する機会を極力低減させるとともに、仮に、前記第1底部が着用者の肌に触れたとしても、その接触面積を極力小さくするために設けられている。すなわち、本発明の吸収性物品用不織布は、凸部、次いで第1凹部の第1底部の順に着用者の肌に触れやすい構造を有しており、前記不織布の中では最も柔軟性の高い凸部が、前記第1底部よりも着用者の肌に触れやすいという望ましい構造を有しているが、さらに、本発明の吸収性物品用不織布においては、着用者の肌に触れる接触面積が少ない方が柔軟性を感じやすいということを考慮して、上述の第2凹部を設けて第1凹部が存在しない部分を形成することにより、第1凹部の第1底部において着用者の肌に接する部分をより少なくし、肌に当たる機会及び接触面積が可及的に少なくなるようにしている。
また、本発明において第2凹部は、該第2凹部に接触することによる違和感や異物感を生じにくくするために、前記第1凹部の第1底部に設けられており、前記第2凹部が着用者の肌に触れる機会をできるだけ少なくしている。
【0054】
本発明において、第2凹部の深さ、すなわち、第1凹部の第1底部の第1面(上面)側の高さから第2凹部の第2底部の第1面側の高さまでの長さは、0.05〜2mmであることが好ましく、更に好ましくは0.075〜1.5mmであり、より好ましくは0.1〜1mmである。前記第2凹部の深さが0.05mm未満であると、後述する第2底部の剛性が確保しづらく、不織布の厚さ方向の強度が不足しやすい。一方、前記第2凹部の深さが2mmを超えると、吸収性物品の他の部材(例えば、吸収体や不織布、フィルム等)と貼り合わせる際に、厚さ方向の強度が不足しやすく、また、圧縮した際には、剛直感を生じてしまう可能性がある。
【0055】
また、前記第2凹部の深さと前記凸部の高さとの関係は、前記第2凹部の深さ(すなわち、第1凹部の第1底部の第1面側の高さから第2凹部の第2底部の第1面側の高さまでの長さ)が、前記凸部の高さ(すなわち、第1凹部の第1底部の第1面側の高さから凸部の頂部の高さまでの長さ)の10〜80%であることが好ましく、更に好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜60%である。前記第2凹部の深さが前記凸部の高さの10%未満であると、前記第2凹部の周壁部における孔部の形成スペースを十分に確保することができないため、孔部が不十分な形で形成され或いは形成されず、不織布として優れた柔軟性が得られにくくなる。逆に、前記第2凹部の深さが前記凸部の高さの80%を超えると、孔部が過度に大きく形成されてしまうため、前記第2凹部の周壁部の強度が低下して毛羽立ち易くなり、不織布の肌触りが低下するおそれがある。
【0056】
また、第2凹部の第1方向の長さは、特に制限されないが、0.25〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3mmであり、より好ましくは0.75〜2mmである。前記第2凹部の第1方向の長さが0.25mm未満であると、前記第2凹部が小さくなり過ぎてしまい、前記第2凹部によって奏される上述の作用が十分に得られない可能性がある。前記第2凹部の第1方向の長さが5mmを超えると、前記第2凹部が第1方向に長くなり過ぎてしまい、平坦な不織布や凹部が存在しない不織布と比べて柔軟性において差別化しにくく、柔軟な肌触りが得られにくくなる。
【0057】
一方、第2凹部の第2方向の長さは、特に制限されないが、0.25〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.75〜2mmである。前記第2凹部の第2方向の長さが0.25mm未満であると、前記第2凹部が小さくなり過ぎてしまい、特に第2底部の形成が不十分になるため、前記第2凹部によって奏される上述の作用が十分に得られない可能性がある。前記第2凹部の第2方向の長さが5mmを超えると、前記第2凹部が大きくなり過ぎてしまい、不織布に接触した際に違和感や異物感が生じやすくなるおそれがある。
また、第2凹部の第2方向におけるピッチ(すなわち、第2方向において隣り合う第2凹部同士の距離)は、特に制限されないが、1.5mm以下であることが好ましい。この第2凹部の第2方向におけるピッチが1.5mm以下であると、不織布を構成する前記第1繊維層内のコットンが、前記第2凹部の第2底部に保持されやすくなるため、前記第2底部において、上述のような繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離をより一層生じにくくすることができる。
【0058】
本発明において、前記第2凹部の周壁部に形成された孔部は、当該孔部の最大部分の長さ(本実施形態の場合、第1方向の長さ)が、前記第2凹部の大きさにもよるものの、0.25〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3mmであり、より好ましくは0.75〜2mmである。前記孔部の最大部分の長さが0.25mm未満であると、孔部の形成が不十分であり、前記第2凹部の柔軟性を十分に確保することができない上、前記凸部における繊維の引張力が低下しにくく、前記凸部の柔軟性を十分に確保することができない。前記孔部の最大部分の長さが5mmを超えると、孔部が大きくなり過ぎてしまい、当該孔部の周縁部が毛羽立ちやすくなり、不織布に接触した際に違和感や異物感が生じやすく、不織布の肌触りを低下させるおそれがある。
【0059】
一方、孔部の高さ方向(すなわち、不織布の厚さ方向)の最大長さは、前記第2凹部の深さにもよるものの、0.1〜5mmであることが好ましく、更に好ましくは0.25〜3mmであり、より好ましくは0.5〜2mmである。前記孔部の高さ方向の最大長さが0.1mm未満であると、孔部の形成が不十分となり、前記第2凹部の柔軟性を十分に確保することができない上、前記凸部における繊維の引張力が低下しにくく、前記凸部の柔軟性も十分に確保することができない。前記孔部の高さ方向の最大長さが5mmを超えると、孔部が大きくなり過ぎてしまい、当該孔部の周縁部が毛羽立ちやすくなって、不織布に接触した際に違和感や異物感が生じやすく、不織布の肌触りを低下させるおそれがある。
【0060】
本発明において前記孔部は、凸部における繊維の引張力を解放して、凸部全体或いは凸部を形成する繊維が移動する自由度を向上させ、凸部の柔軟性、より具体的には凸部における不織布の厚さ方向への柔軟性、及び不織布の第1方向(長手方向)や第2方向(幅方向)に肌を滑らせた際の柔軟性(特に、幅方向の柔軟性)を向上させて滑らかな感触を確保するために、前記第2凹部の第1周壁部のみに設けられている。孔部が形成されていることにより、凸部に、優れた硬軟感(不織布の厚さ方向への優れた柔らかさ)及び不織布の第2方向への優れた粗滑感(不織布の平面方向(特に、第2方向)の優れた滑らかさ)の両方を付与することができ、不織布全体として優れた硬軟感及び粗滑感を確保することができるとともに、柔軟な肌触りを得ることができる。
【0061】
また、本発明においては、不織布の第1方向(すなわち、凸部及び溝部が延びている方向)に肌を滑らせた際に、前記第2凹部による段差が肌に引っ掛かりにくくなるようにして不織布の第1方向への滑らかさを確保するために、前記第2凹部の第2周壁部には孔部が形成されていない。
すなわち、前記第2周壁部は、前記第1凹部の第1底部及び前記第2凹部の第2底部と連続し、継ぎ目なく一体となっているため、肌を不織布の第1方向に滑らせた際に、肌は前記第2凹部の段差をあまり感じることなく凸部や溝部に沿って滑らかに移動しやすい。これにより、凸部の柔軟性や繊維の柔軟性を生かした不織布の第1方向への滑らかさを確保することできる。
【0062】
さらに、本発明において孔部は、肌が触れやすい凸部や第1凹部の第1底部からできるだけ遠ざけて、着用者の肌が孔部に触れる機会を極力減らし、違和感や異物感を生じにくくするために、前記第2凹部の第1周壁部における前記第2底部寄りの位置に形成されている。これにより、肌を不織布の平面方向に滑らせた際の滑らかさをより安定的に確保することができる。
【0063】
本実施形態に係る吸収性物品用不織布において、孔部53は、前記不織布1に含まれている熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく、その熱可塑性樹脂繊維を破断することにより形成された周縁部53aを備えている。より具体的には、
図3に示すように、孔部53の周縁部53aには、前記不織布1に含まれる熱可塑性樹脂繊維のうち、破断により形成された破断端部54aを有する破断繊維54におけるその破断端部54aが含まれている。
したがって、孔部53の周縁部53aは、熱可塑性樹脂繊維が溶融によって硬化した部分は一切存在せず、柔軟な熱可塑性樹脂繊維の一部、或いは熱可塑性樹脂繊維のうち破断によって形成された破断端部54aを有する破断繊維54によって形成されたものとなっている。これにより、仮に吸収性物品の着用者の肌が孔部53の周縁部53aに触れたとしても、溶融により硬化した熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、不織布の硬さや粗さを感じることが可及的に抑止される。
【0064】
ここで、破断繊維54は、第1周壁部52a
1を形成する熱可塑性樹脂繊維の一部の繊維であって、その熱可塑性樹脂繊維を、長さ方向に引っ張ったり、物理的に切断したりして破断することによって形成された破断端部54aを有するものである。
したがって、破断端部54aは、熱可塑性樹脂繊維を溶融した場合のように、繊維の端部が溶けて丸くなって繊維径が大きくなっているようなものではなく、繊維が千切れたことによって先細りになった態様或いは繊維径の変化がほとんど生じていない態様となっている。これにより、着用者の肌が孔部53の周縁部53aに触れた場合であっても、ごわつきや繊維の引っ掛かりによる違和感を生じることが抑えられる。
【0065】
さらに、孔部53の内部空間53bには、
図3に示すように、熱可塑性樹脂繊維のうちの一部の繊維55が架け渡されている。また、一部の破断繊維54については、その破断端部54aが孔部53の内部空間53bに延出した状態となっている。
したがって、孔部53の内部空間53b内には、その内部空間53bに架け渡された繊維55と、一部の延出した繊維とが混在した状態となっていて、完全に開放された空間とはなっていない。このように、孔部の内部空間に熱可塑性樹脂繊維の一部が架け渡された構成となっていると、仮に、着用者の肌が孔部に触れた場合であっても、内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維が凹部の周面や底部と孔部との感触の違いを極力小さくし、着用者に違和感を生じにくくさせることができる。すなわち、孔部の内部空間に架け渡された熱可塑性樹脂繊維は、着用者の肌が孔部を完全に通り抜けて不織布の第2面側(下面側)に至らないように機能するため、前記周壁部又は第2底部と孔部との境目の段差が触感上において小さくなり、これにより、不織布の肌触りが比較的滑らかになり、着用者の肌が孔部に触れた場合であっても着用者に違和感を生じにくくすることができる。
【0066】
本発明において、前記孔部の内部空間の開孔率は、1〜50%であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜35%であり、より好ましくは2.5〜20%である。前記孔部の内部空間の開孔率が1%未満であると、開孔率が低過ぎて凸部や凸部における繊維に自由度を付与することができず、凸部の柔軟性を十分に確保することができない。前記孔部の内部空間の開孔率が50%を超えると、孔部が設けられた周壁部(本実施形態の場合は第1周壁部52a
1)の強度が低下しやすい上、孔部の周縁部の境目が触感上認識しやすくなる可能性がある。ただし、孔部の内部空間の開孔率は、不織布を使用する吸収性物品の種類や用途等に応じて上記の範囲以外であってもよく、任意に設定することができる。
【0067】
以下、上記特定の凹凸構造を有する吸収性物品用不織布1の製造方法について、図面を参照しながら詳説する。
図5〜
図8は、吸収性物品用不織布1を製造する製造装置の一例を示すもので、製造装置6は、コットン2a及び熱可塑性樹脂繊維2bを含む第1繊維層2と、前記第1繊維層2の片面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維3aを含み且つコットンを含まない第2繊維層3とを含む2層の繊維層からなる繊維積層体7を、上記特定の凹凸構造を有する吸収性物品用不織布1へと加工するための装置である。前記製造装置6は、加工前の前記繊維積層体7がロール状に巻かれ、前記繊維積層体7を搬送方向MDに向けて巻き出す巻出装置61と、前記巻出装置61によって巻き出された繊維積層体7に予熱を与える予熱装置62と、予熱が与えられた繊維積層体7を延伸して凸部及び溝部(第1凹部及び第2凹部を含む。)を形成するための凹凸賦形加工を行う賦形装置63と、を備えている。
【0068】
本実施形態において予熱装置62は、上下一対の加熱ロール62a,62bを備えていて、前記巻出装置61から巻き出されて搬送されてきた加工対象の繊維積層体7を、回転している下方の加熱ロール62bに巻き付けて加熱した後、回転している上方の加熱ロール62aに受け渡し、その加熱ロール62aによって前記繊維積層体7を加熱することが可能となっている。
【0069】
また、賦形装置63は、上下一対の延伸ロール63a、63bを備えていて、上方の延伸ロール63aは、
図6に示すように、ロール幅方向に一定の間隔で配設された、この上方の延伸ロール63aの外周面に沿って相互に平行に複数列設けられた突稜63a
1と、隣り合う2つの突稜63a
1、63a
1の間に設けられた複数列の凹溝63a
2とを備えている。一方、下方の延伸ロール63bは、
図6及び
図7に示すように、外周面63b
2に、上方の延伸ロール63aの凹溝63a
2と噛み合うように設けられた複数のピン63b
1を備えている。これらのピン63b
1は、
図8に示すように、ロールの幅方向に対しては、上方の延伸ロール63aの突稜63a
1と接触しないように一定の間隔で配設されているとともに、ロールの周方向に対しては、外周面63b
2に沿って一定の間隔でほぼ直線的に配設されている。また、本実施形態における下方の延伸ロール63bは、
図7に示すように、複数のピン63b
1が、下方の延伸ロール63bの外周面63b
2に千鳥状に配設された構成となっている。
【0070】
このように構成された製造装置6を用いて、吸収性物品用不織布1の製造を実施する場合には、巻出装置61から巻き出された加工対象の繊維積層体7に対して予熱を与える予熱工程と、予熱工程を経た前記繊維積層体7を延伸して凹凸賦形加工する賦形工程と、を順次行う。
【0071】
前記予熱工程は、巻出装置61から巻き出され、搬送方向MDに沿って搬送されてきた加工対象の繊維積層体7を、予熱装置62の回転している上下一対の加熱ロール62a,62bの外周面に接触させることにより、前記繊維積層体7を加熱して予熱を与える。この予熱工程における予熱温度は、繊維積層体7を構成する熱可塑性樹脂繊維の種類に応じて適宜設定し得るが、例えば、熱可塑性樹脂繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)と高密度ポリエチレン(HDPE)との芯鞘型の複合繊維の場合は、加熱ロールの外周面の温度が60〜120℃程度であることが好ましい。
【0072】
前記賦形工程は、予熱工程を経て搬送されてきた繊維積層体7を、賦形装置63において、噛み合いながら回転している上下一対の延伸ロール63a、63bの間に挿入し、前記繊維積層体7を、噛み合っている上方の延伸ロール63aの突稜63a
1及び凹溝63a
2と、下方の延伸ロール63bのピン63b
1との間で延伸して賦形する。なお、賦形工程を実施するに際しては、賦形を行いやすいように、上下一対の延伸ロール63a、63bを60〜120℃に加熱しながら賦形することが好ましい。
【0073】
前記賦形工程においては、上方の延伸ロール63aは、突稜63a
1が繊維積層体7と接触している部分を下方の延伸ロール63bの方向に押し込み、これにより凸部4が賦形される。一方、下方の延伸ロール63bは、周方向に一列に並んでいる複数のピン63b
1が、そのピン63b
1の先端部分に接触している繊維積層体7を、上方の延伸ロール63aの対応する凹溝63a
2内に押し込む。このとき、繊維積層体7のうち、ピン63b
1と非接触状態で凹溝63a
2内に引っ張られた部分は溝部5の第1凹部51となる。また、ピン63b
1の先端部分と接触していた部分は、凹溝63a
2内に強く押し込まれて賦形されるため、これにより、凸部4及び溝部5が延設される方向に延びる第1周壁部52a
1及びロール幅方向に延びる第2周壁部52a
2、並びに第2底部52bを有する第2凹部52が形成されることとなる。
【0074】
なお、第2凹部52の第2底部52bは、その形成時において、上方の延伸ロール63aと下方の延伸ロール63bとが繊維積層体7を噛み込んだ状態で、ピン63b
1の先端部分が繊維積層体7の当接部分を凹溝63a
2内に強く押し込むため、実質的に繊維密度が不織布の他の部分よりも高くなる。このように、隣り合う2つの凸部4の間に配置される第2底部52bの繊維密度が相対的に高いと、前記不織布1を構成する上述の第1繊維層2に含まれる繊維径の細い熱可塑性樹脂繊維2bが、前記第1繊維層2に含まれるコットン2aや前記第2繊維層3に含まれる熱可塑性樹脂繊維3aとより密に絡み合うため、当該第2底部52bにおいて、上述の従来技術のような繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離をより一層生じにくくすることができる。不織布に、このような繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離がより生じにくい部分(すなわち、第2底部)を局所的に複数設けることによって、仮に、上述のような繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離が部分的に生じたとしても、前記第2底部においては繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離が生じず、不織布全体として強度が低下するのを効果的に防ぐことができる。
その上、前記不織布1は、厚さ方向D
Tにおいて、相対的に繊維密度の低い凸部4から繊維密度の最も高い第2凹部52の第2底部52bにかけて、密度勾配が存在する構造を有することとなるため、前記不織布1の上面1a(第1面)側から供給された尿や経血などの体液が、前記不織布1の上面1a側の凸部4から第2底部52bを介して下面1b(第2面)側へと引き込まれやすく、吸収性物品用の不織布として優れた吸収性(特に、吸収速度や液移行性等)を発揮することができる。
【0075】
そして、繊維積層体7において、ピン63b
1の先端部分の幅方向(ロールの幅方向)の両端部に接触していた部分は、突稜63a
1が繊維積層体7を下方の延伸ロール63bの方向に押し込む際に発生する張力も作用して、ピン63b
1が第1周壁部52a
1を形成する熱可塑性樹脂繊維を掻き分けたり、或いは繊維を破断して破断端部54aを有する破断繊維54を形成したりする。これにより、第2凹部52に、破断繊維54の破断端部54aが含まれた孔部53を形成されることとなる。なお、一部の熱可塑性樹脂繊維は、孔部53の内部空間53bに架け渡された状態で残り、また、一部の破断繊維54の破断端部54aは内部空間53b内に延出した状態となる。
ここで、孔部53は、加工対象の前記繊維積層体7の搬送方向MDに沿う方向、すなわち、延伸ロール63a、63bの回転方向であって、凸部4及び溝部5が延設される方向に沿う第1周壁部52a
1に形成されることとなる。
【0076】
前記賦形工程を経て凹凸構造が賦形された繊維積層体は、上述の凸部4と、第1凹部51及び第2凹部52を含む溝部5とが形成されて、吸収性物品用不織布1として完成することとなる。この吸収性物品用不織布1は、その後、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の表面シートや防漏壁などに使用される。
【0077】
以下に、本発明の別の実施形態に係る吸収性物品用不織布について説明する。
本発明の別の実施形態においては、吸収性物品用不織布が、3層の繊維層からなる繊維積層体であって、繊維積層体(不織布)が、不織布の第1面を形成する、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層と、該第3繊維層の第2面側の面に隣接した、前記第2繊維層(中間層)と、該第2繊維層の第2面側の面に隣接した、コットンを含む前記第1繊維層とによって構成されている。このように構成された吸収性物品用不織布は、前記不織布の第1面が着用者の肌対向面となるように吸収性物品の表面シートとして用いられたときに、表面シートの肌対向面を形成する前記第3繊維層とコットンを含む前記第1繊維層との間に、中間層として前記第2繊維層が介在し、前記第3繊維層と第1繊維層が隔離されて、前記第1繊維層のコットンに吸収・保持された尿などの体液が、前記第3繊維層、ひいては着用者の肌に伝わりにくくなるため、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こりにくい。
【0078】
この別の実施形態における3層の繊維積層体の具体的な構成としては、例えば、以下のような構成が挙げられる。
[第1面(肌対向面)側繊維層](第3繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[中間層](第2繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[第2面(非肌対向面)側繊維層](第1繊維層)
繊度2.2dtex、繊維長44mm及び坪量8g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維と、繊度1,7dtex、繊維長45mm及び坪量1g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維、並びに坪量1g/m
2のコットンの混合物
【0079】
また、本発明の更に別の実施形態においては、吸収性物品用不織布が、3層の繊維層からなる繊維積層体であって、繊維積層体(不織布)が、不織布の第1面を形成する前記第2繊維層と、該第2繊維層の第2面側の面に隣接した、コットンを含む前記第1繊維層(中間層)と、該第1繊維層の第2面側の面に隣接した、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層とによって構成されている。このように構成された吸収性物品用不織布は、前記不織布の第1面が着用者の肌対向面となるように吸収性物品の表面シートとして用いられたときに、コットンを含む前記第1繊維層と前記不織布の第1面に設けられた凸部の第2面側(非肌対向面側)の空隙部との間に、第3繊維層が介在する構造となるため、前記第3繊維層の第2面側に配置された吸収体から放出される、尿などの体液の蒸発等により生じる湿気を、前記第1繊維層のコットンにおいて吸収・保持するとともに、前記空隙部及び前記第3繊維層において封じ込めることができる(なお、前記空隙部は、吸収体から放出される湿気を、湿気の状態で留める空間として機能し、第3繊維層は、吸収体から放出される湿気を封じ込める補助空間として機能する。)。その結果、吸収体から放出された湿気を、前記第1繊維層よりも第2面側の領域において効果的に封じ込めることができ、着用者に蒸れなどを感じにくくさせることができる。
【0080】
この別の実施形態における3層の繊維積層体の具体的な構成としては、例えば、以下のような構成が挙げられる。
[第1面(肌対向面)側繊維層](第2繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[中間層](第1繊維層)
繊度2.2dtex、繊維長44mm及び坪量8g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維と、繊度1,7dtex、繊維長45mm及び坪量1g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維、並びに坪量1g/m
2のコットンの混合物
[第2面(非肌対向面)側繊維層](第3繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
【0081】
なお、上述の各実施形態において、前記第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、特に制限されず、第1繊維層又は第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様のものを用いることができる。さらに、これらの実施形態においては、各繊維層は、熱可塑性樹脂繊維の坪量が同一であり、前記第2繊維層及び第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維が、それぞれ前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維よりも大きい繊維径(繊度)を有していることが好ましい。不織布(繊維積層体)がこのような構成を備えていると、前記第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊維量(繊維本数)が、必然的に前記第2繊維層及び前記第3繊維層よりも多くなるため、コットンを含む第1繊維層の強度をより一層向上させることができる。また、このような不織布は、第1繊維層の熱可塑性樹脂繊維が、第2繊維層又は第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維と絡み合いやすくなるため、不織布を構成する繊維層がコットンを含むような場合であっても、各繊維層間の層間剥離が生じにくくなる。
【0082】
また、本発明の一実施形態に係る吸収性物品用不織布1においては、前記第2凹部52の孔部53は、第1方向D
1に沿うように形成された一対の第1周壁部52a
1に設けられているが、本発明の吸収性物品用不織布においては、このような態様に限定されず、例えば、孔部は、一対の第1周壁部52a
1のうちの一方の周壁部に設けられていても、第2方向D
2に沿うように形成された一対の第2周壁部に設けられていてもよく、或いは、いずれか1つの周壁部に設けられていてもよい。
さらに、上記実施形態に係る吸収性物品用不織布1においては、孔部53は、前記第2凹部52の周壁部52aにおける第2底部52b寄りの位置に設けられているが、本発明吸収性物品用不織布においては、このような態様に限定されず、前記孔部は、不織布の柔軟性を損なわない範囲で任意の位置に設けることができる。
【0083】
また、上記実施形態に係る吸収性物品用不織布1においては、前記孔部53の内部空間53b内に、熱可塑性樹脂繊維のうちの一部の繊維55が架け渡されているが、本発明の吸収性物品用不織布においては、このような孔部の内部空間に架け渡された繊維は、存在していなくてもよい。また、本発明においては、上記実施形態のように、破断繊維の破断端部が孔部の内部空間内に延出していなくてもよい。
【0084】
上記実施形態に係る吸収性物品用不織布1においては、前記第2凹部52は略直方体状に形成されているが、本発明の吸収性物品用不織布においては、第2凹部の形状は、特に制限されず、円柱状や角柱状などの任意の形状とすることができる。
さらに、上記実施形態においては、凸部4が前記不織布1の第1方向D
1に連続的に延びているが、本発明の吸収性物品用不織布においては、凸部は、必ずしも不織布の第1方向に連続的に延びていなくてもよく、また、間欠的であってもよい。ただし、第2凹部については、凸部が連続している部分の間に挟まれた第1凹部の第1底部に設けることが好ましく、これにより、凸部が先に着用者の肌に触れやすくなり、且つ前記第2凹部には着用者の肌が接触しにくくなるため、前記第2凹部に触れることよる違和感や異物感をより生じにくくすることができる。
【0085】
本発明の吸収性物品用不織布は、上述した実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。