特開2016-222548(P2016-222548A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222548(P2016-222548A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ヨウ化アルキル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/16 20060101AFI20161205BHJP
   C07C 19/07 20060101ALI20161205BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   C07C17/16
   C07C19/07
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-107460(P2015-107460)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮下 佑一
(72)【発明者】
【氏名】乾 光博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 富良
(72)【発明者】
【氏名】高木 隆好
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006BA52
4H006BA66
4H006BC10
4H006BE61
4H039CA54
4H039CD30
(57)【要約】
【課題】
金属またはアンモニウムのヨウ化物塩を出発原料としたヨウ化アルキル化合物の高収率製造方法の提供。
【解決手段】
摂氏60〜120度の反応温度において、ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質の存在下で、金属またはアンモニウムのヨウ化物塩ヨウ化物塩を炭素数1〜6の脂肪族アルコールとブレンステッド酸と反応させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂氏60〜120度の反応温度において、ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質の存在下、金属またはアンモニウムのヨウ化物塩、炭素数1〜6の脂肪族アルコール、及びブレンステッド酸を混合し、反応させることを特徴とするヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項2】
ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質が、単体または0価錯体であることを特徴とする請求項1記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項3】
単体または0価錯体が、2〜15属元素から選ばれる少なくとも1つの元素からなることを特徴とする請求項2に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項4】
単体または0価錯体が、マグネシウム、アルミニウム、リン、鉄、亜鉛、及びスズから選ばれる少なくとも1種の元素からなることを特徴とする、請求項2又は3に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項5】
ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質が、金属ヨウ化物塩に対して0.01〜10モルパーセント添加されていることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項6】
ブレンステッド酸が、摂氏25度の水中における酸解離定数の負の常用対数(pK)が4以下のブレンステッド酸であることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項7】
ブレンステッド酸が、硫酸またはリン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項8】
炭素数1〜6の脂肪族アルコールが、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族アルコールであることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項9】
炭素数1〜6の脂肪族アルコールが、メタノールまたはエタノールであることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項10】
ブレンステッド酸を混合する際、反応液の温度が摂氏60〜120度の範囲となる速度で混合することを特徴とする請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【請求項11】
金属またはアンモニウムのヨウ化物塩が、アルカリ金属ヨウ化物塩であることを特徴とする、請求項1に記載のヨウ化アルキル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヨウ化アルキル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ化アルキル化合物は高い反応性を有し、古くからアルキル化剤として医薬品原料や機能性有機化合物などの工業製品の合成に広く用いられている。また、近年ではオゾン層破壊の恐れのある臭化メチルに代わる殺虫剤として材木等の燻蒸剤にヨウ化メチルが用いられるなど、その用途は広がりを見せている。
【0003】
ヨウ素はクラーク数64番目の元素で、同族のハロゲン元素である塩素(11番目)、フッ素(17番目)、臭素(46番目)と比較してもその産出量が限られているだけではなく、主な産出地が千葉県(日本)やアンデス山脈(チリ)と限られているため、極めて貴重な資源であるといえる。ヨウ化アルキル化合物は、前述の通り、その高い反応性などから非常に有用な化合物であり、ときとして塩化アルキルや臭化アルキルといった他のアルキル化剤では代替が困難な場合もある。一方で、ヨウ素は原子量が大きいため、ヨウ素化合物はモル単位あたりの質量が大きく、アトムエコノミーの観点で不利であるという欠点がある。そのため、工業的な使用を考慮した場合には、その供給安定性の不安や製造コストの高騰を招く懸念がある。
【0004】
よって、ヨウ化アルキル化合物の安価な提供が望まれる。特に反応原料としての見地からは、反応によって副生するヨウ素化合物をヨウ化アルキル化合物へと容易かつ高収率で再生することでヨウ素の有効利用を可能とする手法、すなわち、ヨウ素循環プロセスという考え方をすることができる。一般に副生するヨウ素化合物はヨウ化リチウムやヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムといったヨウ化物塩で得られることが多く、ヨウ化物塩、すなわちヨウ化物イオン(I)を出発原料とした効率的ヨウ化アルキル化合物の再生手法の提供は大変有用である。また、アルキル交換反応の形式で反応が進行するものついては、ヨウ化アルキルのアルキル基が別のアルキル基に置き換えられたヨウ化アルキルが副生することになるが、これは塩基加水分解によって容易かつ高収率でヨウ化物塩へと変換可能であり、本質的にはヨウ化物イオンを出発原料としたヨウ化アルキル合成手法へと容易に誘導することができる。従って、ヨウ化物イオンを起点とするヨウ化アルキルの高収率合成手法を提供することができれば、限りのあるヨウ素資源を有効かつ効率的に利用することができ、ヨウ素の廃棄量を大きく低減するとともに製造コストの大幅な低減が可能となる。
【0005】
ヨウ化物イオンを出発原料としたヨウ化アルキル化合物の合成法として、大過剰のヨウ化水素酸とメタノールの混合物をゆっくりと蒸留することでヨウ化メチルを得る方法が非特許文献1に記載されている。この手法では化学量論量以上の大過剰のヨウ化水素酸を用いる必要がある。そのために過剰分のヨウ化水素酸を利用しきれないという課題がある。
【0006】
また、特許文献1では、ヨウ化ナトリウムあるいはヨウ化カリウムと、硫酸およびメタノールの混合物から加熱蒸留することによってヨウ化メチルを90%の収率で合成する方法が開示されている。ヨウ素化合物は一般に非常に高価であるため、工業的な使用、ひいてはヨウ素循環プロセスまでを考慮した場合にはこの収率は十分満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】チェコスロバキア特許164707号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Am.Chem.J.38巻、639頁、1907年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、過剰量のヨウ化物イオンを用いることなく反応収率に優れるヨウ化アルキル化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、先の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、金属またはアンモニウムのヨウ化物塩と脂肪族アルコールとを、適切な還元剤存在下で反応させることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は請求項1に記載の、摂氏60〜120度の反応温度において、ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質の存在下、金属またはアンモニウムのヨウ化物塩、炭素数1〜6の脂肪族アルコール、及びブレンステッド酸を混合し、反応させることを特徴とするヨウ化アルキル化合物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過剰量のヨウ化物塩を用いることなく、高収率でヨウ化アルキル化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質とは、すなわち単体ヨウ素(I、E°=0.535V)をヨウ化物イオンへと変換可能な還元性物質のことを意味する。当該物質は、単体または0価錯体のみならず、化合物であっても差支えない。当該物質の例としては、特に限定するものではないが、マグネシウム(E°=−2.657V)、アルミニウム(E°=−1.676V)、リン(E°=−0.347V)、鉄(E°=−0.44V)、亜鉛(E°=−0.7626V)、スズ(E°=−0.1375V)、チオ硫酸ナトリウム(E°=−0.576V)、亜硫酸ナトリウム(E°=−0.936V)、またはヒドラジン(E°=0.1V)などが挙げられる。当該ヨウ化物イオンの一電子酸化における酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する物質については、収率が良い点で、酸化電極電位が0.5以下であるものが好ましく、酸化電極電位が0以下である2〜15属元素から選ばれる少なくとも1つの元素からなる単体または0価錯体であることがより好ましく、マグネシウム、アルミニウム、リン、鉄、亜鉛、及びスズから選ばれる少なくとも1種の元素からなることがより好ましく、鉄、又はリンから選ばれることがさらに好ましい。また、当該物質については、水およびアルコールへの溶解性が乏しい固体のものを用いる場合には、反応を効率よく行うために、表面積が大きい粉末状で用いることが望ましい。また、当該物質の添加量は反応に用いるヨウ化物イオンの0.01〜10モルパーセント量用いることでより大きな効果を得ることができるが、収率および反応後処理の容易さの観点から、0.1〜5モルパーセント量用いるのが好ましい。
【0015】
金属またはアンモニウムのヨウ化物塩の例としては、特に限定するものではないが、アルカリ金属ヨウ化物塩、アルカリ土類金属ヨウ化物塩、軽金属ヨウ化物塩、重金属ヨウ化物塩、又はアンモニウムヨウ化物塩が挙げられる。
【0016】
アルカリ金属ヨウ化物塩としては、特に限定するものではないが、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。
【0017】
アルカリ土類金属ヨウ化物塩としては、特に限定するものではないが、例えば、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。
【0018】
軽金属ヨウ化物塩としては、特に限定するものではないが、例えば、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
【0019】
重金属ヨウ化物塩としては、特に限定するものではないが、ヨウ化バナジウム、ヨウ化クロム、ヨウ化マンガン、又はヨウ化ニッケル等が挙げられる。
【0020】
アンモニウムヨウ化物塩としては、特に限定するものではないが、例えば、ヨウ化アンモニウム、アンモニウムヨウ化物塩(例えば、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム)等が挙げられる。
【0021】
以上のヨウ化物塩については、製造上の入手性および経済性の観点から、アルカリ金属ヨウ化物塩、アルカリ土類金属ヨウ化物塩、またはアンモニウムヨウ化物塩が好ましく、アルカリ金属ヨウ化物塩又はヨウ化アンモニウムがより好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、又はヨウ化カリウム又はヨウ化テトラブチルアンモニウムがさらに好ましい。
【0022】
また、金属またはアンモニウムのヨウ化物塩については、ヨウ化アルキル化合物を塩基存在下に加水分解して生成させたものをそのまま用いることもできる。
【0023】
ここで、塩基としては、特に限定するものではないが、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、又は金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等)を用いることができる。
【0024】
炭素数1〜6の脂肪族アルコールは、総炭素数が1〜6の脂肪族アルコールを示すものであり、脂肪鎖については直鎖状、分岐鎖状いずれの形態であってもよい。また、当該脂肪鎖については、炭素以外の元素を有していてもよく、具体的にはエーテル結合やハロゲン置換基などを有していてもよい。
【0025】
炭素数1〜6の脂肪族アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2,2−ジメチル−1−エタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−メチルシクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−フルオロ−2−プロパノール、エチレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましい。
【0026】
これらの脂肪族アルコールの添加量は、ヨウ化物イオンに対して1.1〜100倍モル量用いるのが好ましいが、経済性や釜効率の観点から3〜10倍モル量を用いるのがさらに好ましい。本製造方法では別途溶媒を加えることなく反応を行なうことができ、別途溶媒を添加しない場合が最も好ましい。ただし、脂肪族アルコールの粘性が高い場合などは、溶媒共存下で反応させることもできる。その溶媒の具体例としては、特に限定するものではないが、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、又はアニソールなどが挙げられる。
【0027】
生成物のヨウ化アルキルは、原料の脂肪族アルコールのヒドロキシ基がヨウ素基に置き換わったものであり、任意の脂肪族アルコールに対応したヨウ化アルキルを合成することができる。
【0028】
ブレンステッド酸としては、特に限定するものではないが、摂氏25度、水中における酸解離定数の負の常用対数(pKa)が4以下のものが好ましい。ブレンステッド酸の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、硫酸、リン酸などが挙げられる。
【0029】
当該ブレンステッド酸については、無溶媒のものを用いることもできるし、溶液状のものを用いることもできる。当該ブレンステッド酸を溶液として用いる場合の溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、又はアニソールなどが挙げられ、原料の脂肪族アルコールを溶媒とすることもできる。
【0030】
当該ブレンステッド酸については、混合時の急激な発熱や突沸を避け、副反応を低減させるために、連続的にまたは複数回に分けて混合することが好ましく、混合する速度としては、反応温度が摂氏60〜120度の範囲になるように調節することが好ましい。なお、ブレンステッド酸を混合する速度としては、反応速度に優れる点で、反応温度が摂氏65度以上になるように調節することが好ましく、摂氏70度以上になるように調節することがより好ましい。また、副反応を抑える点で、反応温度が摂氏110度以下になるように調節することが好ましく、摂氏100度以下になるように調節することがより好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、反応温度は摂氏60〜120度であることが必須であり、収率および反応時間において良好な結果を得る観点から、摂氏65〜110度であることが好ましく、摂氏70〜100度であることがより好ましい。
【0032】
本発明の製造方法は、任意の圧力で行なうことができるが、製造設備のコスト及び安全性の観点から、常圧で行うことが好ましい。
【0033】
ヨウ化アルキルを反応液から回収する方法はヨウ化アルキルの物性に応じて種々選択することができる。例えば高沸点のヨウ化アルキル化合物では、ジエチルエーテルや石油エーテルなどの低沸点有機溶剤への抽出および濃縮などの一般的な生成方法によって単離することができる。また、低沸点のヨウ化アルキルの場合には加熱あるいは減圧などによる蒸留による分離手法を用いることができ、蒸留は反応を行なうと同時に行なっても良い。用いる脂肪族アルコールによっては、蒸留の際に生成するヨウ化アルキルとアルコールが共沸することがあるが、この場合には留出成分に水を添加し、二相分離させることでヨウ化アルキルとアルコールを分離することができる。アルコールは水への親和性が高いため、水相へと抽出することで容易にヨウ化アルキルを単離することができる。また、必要に応じて蒸留等のさらなる精製工程を設けることで高純度なヨウ化アルキル化合物を取得することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0035】
ヨウ化アルキルの収率は、島津製作所社製のガスクロマトグラフィーGC−14Aを使用し、内部標準法によるピーク面積比から決定した。
【0036】
副生するヨウ素(I)の分析はチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴下することで決定した。
【0037】
水分量はカールフィッシャーを用いて決定した。
【0038】
また、実験で使用した試薬は、キシダ化学株式会社、和光純薬工業株式会社から購入したものをそのまま使用した。
【0039】
実施例1
ヨウ化メチルの合成例(反応工程)
窒素気流下、実用段数5段のオルダショウ蒸留塔を備えた1000mLの4口フラスコ中で、ヨウ化ナトリウム(300g、2mol)、メタノール(256g、8mol)、赤リン粉(1.862g、0.06mol)、純水(72g、4mol)の混合物をメカニカルスターラーにて撹拌しながら摂氏70度まで加熱した。75%硫酸(270g)を2時間かけて等速添加し、同時に摂氏70〜75度の温度範囲に保持しながら還流比1で留分(本留)をメタノールとの共沸組成物として単留出させた。反応液温度を1時間かけて摂氏90度まで昇温し、約90〜100度の温度を保ちながらさらに1時間かけて留分(後留)を単留出にて取得した。本留および後留のヨウ化メチルの取得量を、アセトニトリルを内部標準物質としたガスクロマトグラフィーによって分析したところ、本留(ヨウ化メチル:276.1g、1.925mol、メタノール:17.6g、0.549mol)、後留(ヨウ化メチル:5.48g、0.0386mol、メタノール:122.6g、3.825mol)となり、ヨウ化メチルの合計収率は99.2%(281.6g、1.984mol)となった。また、留分、釜残いずれからもヨウ素(I)は検出されなかった。
【0040】
参考例1
ヨウ化メチルの精製例(洗浄工程)
実施例1の本留分に純水(36g、2mol)を加え、よく混合した後に、1時間静置し、重液として粗ヨウ化メチル(265.7g、水分:600ppm、メタノール:2800ppm)を得た後、さらにこの重液に純水(36g、2mol)を添加し、同様に1時間静置し、重液としてヨウ化メチル(264.9g、水分:400ppm、メタノール:80ppm)を取得した。
【0041】
軽液はヨウ化メチルを少量含む、水とメタノールを主成分とした混合物であるが、これを次バッチの反応工程で添加する純水およびメタノールの一部に置き換えて再利用することができる。これを行なうことで、次バッチの本留として軽液中のヨウ化メチルを再回収することが可能となり、ヨウ化メチルのロスを防ぐことができる。
【0042】
参考例2
ヨウ化メチルの精製例(精製蒸留工程)
洗浄工程で得たヨウ化メチルは蒸留精製を行なうことでさらに純度を向上させることができる。参考例1で2度の洗浄を行なった重液(400g)を、増容剤として添加するn−デカン(29.2g)と混合したのち、実際段数5段のオルダショウにて摂氏40〜80度の温度に加熱、蒸留した。初留(還流比20)にて水およびメタノールを濃縮させた後、本留(還流比1)でヨウ化メチル(339.8g、収率:85%、水分:80ppm、メタノール:26ppm)で取得した。
【0043】
n−デカンは繰り返し使用することができ、n−デカン中に残存することによるヨウ化メチルのロスは、n−デカンの繰り返し再利用することによって限りなくゼロに近づけることができる。また、初留は次バッチの反応工程への添加あるいは洗浄工程への添加により、精製ロスを避けることが可能であり、実施例1で得たヨウ化メチルの収率を実質的に担保することができる。
【0044】
実施例2
ヨウ化メチルの合成例
窒素気流下、スニーダー管を備えた500mLの4口フラスコ中で、ヨウ化ナトリウム(150g、1mol)、メタノール(160g、5mol)、鉄粉(5.60g、0.1mol)、純水(36g、2mol)の混合物をメカニカルスターラーにて撹拌しながら摂氏70度まで加熱した。75%硫酸(135g)を2時間かけて等速添加し、同時に摂氏70〜75度の温度範囲に保持しながら留分(本留)をメタノールとの共沸組成物として留出させた後、鉄粉(5.6g、0.1mol)をさらに添加した。反応液温度を1時間かけて摂氏90度まで昇温した後、およそ90度の温度を保ちながらさらに1時間かけて留分(後留)を留出にて取得した。本留および後留のヨウ化メチルの取得量を、アセトニトリルを内部標準物質としたガスクロマトグラフィーによって分析したところ、本留(ヨウ化メチル:86.3g、0.608mol、メタノール:17.0g、0.531mol)、後留(ヨウ化メチル:55.1g、0.388mol、メタノール:68.3g、2.134mol)となり、ヨウ化メチルの合計収率は99.6%(141.4g、0.996mol)となった。また、留分、釜残いずれからもヨウ素(I)は検出されなかった。
【0045】
実施例3
ヨウ化エチルからヨウ化ナトリウムへの誘導とヨウ化メチルへの変換
窒素雰囲気下、水酸化ナトリウム(42g、1.05mol)とメタノール(160g、5mol)の混合物をメカニカルスターラーにて撹拌しながら摂氏60度まで加熱した。摂氏60度でヨウ化エチル(156g、1mol)を1時間かけて定量添加した後、さらに2時間同じ温度で加熱撹拌した。反応液中のヨウ化エチルの残存量を、アセトニトリルを内部標準物質としたガスクロマトグラフィーによって分析したところ、ヨウ化エチルの転化率は99.4%であった。すなわち、本反応により、原料ヨウ化エチルのほぼ全量がヨウ化ナトリウムに転化された。さらに、この溶液に対して75%硫酸(147g)を2時間かけて等速添加し、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、原料のヨウ化エチルに対してのヨウ化メチルの合計収率は98.7%(140g、0.987mol)となった。
【0046】
この結果は、ヨウ化アルキルがアルキル交換反応の形式で反応に用いられた場合でも、副生した別のアルキル基に置き換えられたヨウ化アルキルを、塩基加水分解によって容易かつ高収率でヨウ化物塩へと変換可能であり、さらにその反応液をそのまま本願発明のヨウ化アルキル合成の原料として利用可能であることを示している。
【0047】
比較例1
実施例2で添加した鉄粉を加えずに同様の実験を行なった。その結果、本留(ヨウ化メチル:109.6g、0.702mol、メタノール:19.8g、0.619mol)、後留(ヨウ化メチル:8.6g、0.131mol、メタノール:24.3g、0.759mol)となり、ヨウ化メチルの合計収率は83.3%(118.2g、0.833mol)となった。反応釜残液からはヨウ素(I、0.0465mol、ヨウ化ナトリウム基準の収率として9.3%)が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明はヨウ化アルキル化合物の製造方法に関するものである。このヨウ化アルキル化合物はアルキル化剤として医薬品原料や機能性有機化合物などの工業製品の原料として広く用いられる。