特開2016-222869(P2016-222869A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-222869フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体、該誘導体を含む表面処理剤、該表面処理剤で処理された物品及び光学物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222869(P2016-222869A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体、該誘導体を含む表面処理剤、該表面処理剤で処理された物品及び光学物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/335 20060101AFI20161205BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20161205BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20161205BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C08G65/335
   C09D127/12
   C09D5/16
   C09K3/18 102
   C09K3/18 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-113229(P2015-113229)
(22)【出願日】2015年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐治
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 隆介
【テーマコード(参考)】
4H020
4J005
4J038
【Fターム(参考)】
4H020BA12
4H020BA22
4H020BA36
4J005BD07
4J005BD08
4J038CD091
4J038DL161
4J038DL171
4J038GA14
4J038NA05
4J038NA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撥水撥油性、低動摩擦性、離型性、汚れ拭き取り性、耐摩耗性及び基材への密着性に優れた被膜を形成する化合物、これを含んだ表面処理剤、処理された物品の提供。
【解決手段】式(1)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。

(Aは末端が−CF3基である1価のフッ素含有基又はホスホン酸基含有基;Rf1は−(CF2d−(OCF2p(OCF2CF2q(OCF2CF2CF2r(OCF2CF2CF2CF2s(OCF(CF3)CF2t−O(CF2d−;d、p、q、r、s、tは各々独立に整数;Q1はアルキレン構造含有2価の連結基;Q2はケイ素原子含有2価の連結基;XはH、アルカリ金属原子、非置換/置換のC1〜5のアルキル基、アリール基、又はJ3Si−で示される1価の基;Jは1〜5のアルキル基、アリール基;aは2〜20の整数)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【化1】
(式(1)中、Aは末端が−CF3基である1価のフッ素含有基又は下記式(2)で示される基であり、Rf1は−(CF2d−(OCF2p(OCF2CF2q(OCF2CF2CF2r(OCF2CF2CF2CF2s(OCF(CF3)CF2t−O(CF2d−であり、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは3〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Q1は何れかの末端にアルキレン構造を有する2価の連結基であり、Q2は両末端にケイ素原子を有する2価の連結基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基又はJ3Si−(Jは独立に非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である。)で示される1価の基であり、aは2〜20の整数である。)

【化2】
【請求項2】
前記Rf1が下記式(3)で示される2価の直鎖型フルオロオキシアルキレン基である請求項1に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【化3】
(式(3)中、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p=1〜80、q=1〜80、r=0〜10、s=0〜10、p+q=5〜100を満たす整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10〜100であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【請求項3】
前記Q1が、下記式(4−1)〜(4−8)からなる群から選択される2価の連結基である請求項1又は2に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸エステル誘導体。
【化4】
(式(4−1)〜(4−8)中、hは2〜10の整数であり、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基である。)
【請求項4】
前記Q2が、下記式(5−1)〜(5−4)からなる群から選択される両末端にケイ素原子を有する2価の連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【化5】
(式(5−1)〜(5−4)中、iは1〜10の整数であり、jは1〜100の整数であり、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体の少なくとも1種以上を含む表面処理剤。
【請求項6】
請求項5に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
【請求項7】
請求項5に記載の表面処理剤で表面処理された光学物品。
【請求項8】
請求項5に記載の表面処理剤で処理されたタッチパネルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体及び該誘導体を含む表面処理剤に関し、詳細には、撥水撥油性、指紋拭き取り性に優れ、該表面処理剤で処理された物品及び光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーフルオロオキシアルキレン基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などの特性を有し、その特性を利用して、工業的には紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜などに幅広く利用されている。
【0003】
しかし、その性質は同時に他の基材に対して非粘着性、非密着性であることを意味しており、パーフルオロオキシアルキレン基含有化合物を基材表面に塗布することはできても、その被膜を基材表面に直接的に密着させることは困難であった。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させる材料として、シランカップリング剤がよく知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(特には加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基は、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや布などの表面と化学的及び/又は物理的に結合することによって耐久性を有する強固な被膜となる。
【0005】
特許文献1では、下記式(I)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性シランが提案されている。
【0006】
【化1】
【0007】
(式(I)中、Rf1は−Cd2dO−の繰り返し単位を5〜100個含む2価の直鎖型フルオロオキシアルキレン基(dは1〜6の整数であり、繰り返し単位ごとに異なっていてよい)であり、A及びBは、互いに独立に、Rf2基又は下記式(II)で示される基であり、Rf2はF、H、及び末端が−CF3基又は−CF2H基である1価のフッ素含有基のいずれかであり、Qは2価の有機基であり、Zはシルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を含み、かつシロキサン結合を含まない2〜7価の連結基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは1〜6、cは1〜5の整数である。)
【0008】
【化2】
【0009】
該フルオロオキシアルキレン基含有シランで処理したガラスは、汚れ拭き取り性に優れ、密着性に優れた材料を得ることができるが、ガラスや二酸化ケイ素(シリカ)以外の表面に直接的に密着させることは困難であった。
【0010】
最近では、外観や視認性をよくするためにディスプレイの表面や電子機器等の筐体に指紋を付きにくくする技術や、汚れを落とし易くする技術の要求が年々高まってきており、ガラスや二酸化ケイ素(シリカ)以外の表面にも密着可能な材料の開発が望まれている。
【0011】
電子機器が設置型から携帯型へ、信号入力方式がボタン方式からタッチパネル方式へ移行するのに伴って、電子機器に直接触れる機会が増えているため、指紋を付きにくくする処理又は汚れを拭き取り易くする処理が必要な基板の種類が多様化してきている。この基板としては、ガラス以外では、金属酸化物や樹脂が挙げられる。また、タッチパネルディスプレイやウェアラブル端末の表面に被覆する撥水撥油層は、傷付き防止性及び指紋拭き取り性の観点から動摩擦係数が低いことが望ましい。そのため動摩擦係数が低い撥水撥油層の開発も要求されている。さらに、それらの端末は汚れ拭き取り作業を実施することが多いため、耐摩耗性が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−117012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、詳細には、撥水撥油性、低動摩擦性、汚れの拭き取り性、離型性、耐摩耗性、及び、基材への密着性に優れた被膜を形成するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体を含み、性能を長期にわたって保持可能な耐久性を備えた表面処理剤、該表面処理剤で処理された物品及び光学物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ホスホン酸基が多くの金属酸化物へ密着可能であることを見出した。また、汚れ拭き取り性、低動摩擦性に優れるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを主鎖構造に有し、ホスホン酸基を末端基に有するポリマーを含む処理剤が、金属酸化物に対して、耐摩耗性に優れた撥水撥油層を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、下記のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体及び該誘導体を含む表面処理剤、該表面処理剤で処理された物品、光学物品及びタッチパネルディスプレイを提供するものである。
【0016】
〔1〕
下記式(1)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【0017】
【化3】
【0018】
(式(1)中、Aは末端が−CF3基である1価のフッ素含有基又は下記式(2)で示される基であり、Rf1は−(CF2d−(OCF2p(OCF2CF2q(OCF2CF2CF2r(OCF2CF2CF2CF2s(OCF(CF3)CF2t−O(CF2d−であり、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは3〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Q1は何れかの末端にアルキレン構造を有する2価の連結基であり、Q2は両末端にケイ素原子を有する2価の連結基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基又はJ3Si−(Jは独立に非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である。)で示される1価の基であり、aは2〜20の整数である。)
【0019】
【化4】
【0020】
〔2〕
前記Rf1が下記式(3)で示される2価の直鎖型フルオロオキシアルキレン基である〔1〕に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【0021】
【化5】
【0022】
(式(3)中、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p=1〜80、q=1〜80、r=0〜10、s=0〜10、p+q=5〜100を満たす整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10〜100であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0023】
〔3〕
前記Q1が、下記式(4−1)〜(4−8)からなる群から選択される2価の連結基である〔1〕又は〔2〕のいずれか1に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸エステル誘導体。
【0024】
【化6】
【0025】
(式(4−1)〜(4−8)中、hは2〜10の整数であり、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基である。)
【0026】
〔4〕
前記Q2が、下記式(5−1)〜(5−4)からなる群から選択される両末端にケイ素原子を有する2価の連結基である〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体。
【0027】
【化7】
【0028】
(式(5−1)〜(5−4)中、iは1〜10の整数であり、jは1〜100の整数であり、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である。)
【0029】
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか1に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体の少なくとも1種以上を含む表面処理剤。
【0030】
〔6〕
〔5〕に記載の表面処理剤で表面処理された物品。
〔7〕
〔5〕に記載の表面処理剤で表面処理された光学物品。
〔8〕
〔5〕に記載の表面処理剤で処理されたタッチパネルディスプレイ。
【発明の効果】
【0031】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体を硬化して得られる被膜は、連結基を介したホスホン酸基によって金属酸化物表面に密着できる。本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体はフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを有するため、特に指紋拭き取り性と低動摩擦性に優れた表面を形成することができる。
【0032】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、基材への密着性に優れ、撥水撥油性、低動摩擦性、汚れの拭き取り性に優れた被膜を与えることができ、種々のコーティング用途に長期に渡って有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、下記式(1)で示されるものである。
【0035】
【化8】
【0036】
(式(1)中、Aは末端が−CF3基である1価のフッ素含有基又は下記式(2)で示される基であり、Rf1は−(CF2d−(OCF2p(OCF2CF2q(OCF2CF2CF2r(OCF2CF2CF2CF2s(OCF(CF3)CF2t−O(CF2d−であり、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは3〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Q1は何れかの末端にアルキレン構造を有する2価の連結基であり、Q2は両末端にケイ素原子を有する2価の連結基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基又はJ3Si−(Jは独立に非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である。)で示される1価の基であり、aは2〜20の整数である。)
【0037】
【化9】
【0038】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、1価のフルオロオキシアルキレン基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基(Rf1)と、ホスホン酸基(−(CH2a−PO(OH)2)が、シルアルキレン構造又はシルアリーレン構造を含む2価の連結基を介して結合した構造である。
【0039】
上記式(1)において、Rf1は下記式で示されるものである。
【0040】
【化10】
【0041】
式中、dはそれぞれ独立に0〜5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは3〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。該フルオロオキシアルキレン基の繰り返し単位の合計(p+q+r+s+t)は3〜200であるが、10〜150が好ましく、15〜80がより好ましい。
【0042】
上記繰り返し単位を含むRf1として、具体的には、下記のものが例示できる。
【0043】
【化11】
【0044】
(式中、d’は上記dと同じであり、p’は上記pと同じであり、q’は上記qと同じであり、r’、s’、t’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記r、s、tの上限と同じである。)
【0045】
中でも、Rf1は下記式(3)で示される2価の直鎖型フルオロオキシアルキレン基が低動摩擦性の観点から、タッチパネル等の滑り性を重視する用途には好ましい。
【0046】
【化12】
【0047】
(式(3)中、dはそれぞれ独立に0〜5の整数であり、p=1〜80、q=1〜80、r=0〜10、s=0〜10、p+q=5〜100を満たす整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10〜100であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0048】
上記式(1)において、Aは末端が−CF3基である1価のフッ素含有基又は下記式(2)で示される基であり、炭素数1〜6のパーフルオロ基が好ましく、中でも−CF3基、−CF2CF3基がより好ましい。
【0049】
【化13】
【0050】
上記式(1)及び(2)において、aは2〜20の整数であるが、3〜10の整数が好ましい。
【0051】
上記式(1)及び(2)において、Q1は何れかの末端にアルキレン構造を有する2価の連結基であり、Q2は両末端にケイ素原子を有する2価の連結基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基、アリール基、又はJ3Si−(Jは独立に非置換若しくは置換の炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基である)で示される1価の基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換したものであってもよい。また、該アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
【0052】
例えば、Q1としては下記の基が挙げられる。
【0053】
【化14】
【0054】
(式中、hは2〜10の整数であり、Meはメチル基である。)
【0055】
【化15】
【0056】
(式中、hは2〜10の整数であり、Meはメチル基である。)
【0057】
また、例えば、Q2としては下記の基が挙げられる。
【0058】
【化16】
【0059】
(式中、iは1〜10の整数であり、Meはメチル基である。)
【0060】
1とQ2の組み合わせとしては、例えば下記の基が挙げられる。
【0061】
【化17】
【0062】
(式中、hは2〜10の整数であり、iは1〜10の整数であり、Meはメチル基である。)
【0063】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、上記式(1)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体である。
【0064】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、特に、金属酸化物との密着性に優れる。ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基と金蔵酸化物表面との密着機構は明らかにされていないが、ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基が金属酸化物表面と化学結合又は金属酸化物表面に吸着することにより被膜を形成するものと考えられる。そのため、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体を金属酸化物表面に塗工すると、フルオロオキシアルキレン基が最表面に、ホスホン酸基及びホスホン酸エステル基が金属酸化物側に配向し易くなり、撥水撥油性、低動摩擦性、離型性、汚れの拭き取り性に優れた被膜を提供すると考えられる。
【0065】
従って、本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、基材への密着性、撥水撥油性、低動摩擦性、離型性、汚れの拭き取り性、耐摩耗性に優れた硬化皮膜を与えることができ、種々のコーティング用途に長期に渡って有効に使用し得る。また、汚れを拭き取り易く、眼鏡レンズ、反射防止膜、偏光板、TV、タッチパネルディスプレイ、携帯電話、時計、ウェアラブル端末、装飾品、精密金型の被膜として好適である。
【0066】
上記式(1)で示されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、例えば、次の方法により製造することができる。
【0067】
まず、公知の方法によりパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの末端ヒドロキシル基に不飽和基を付加した化合物を得る。該方法として、例えば、臭化アリルを硫酸水素テトラブチルアンモニウムと水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下で反応させた後、塩酸で処理することによって下記の化合物を得ることができる。
【0068】
【化18】
【0069】
さらに、上記パーフルオロオキシアルキレン基含有化合物を、両末端にSiH結合を有するシルアルキレン化合物又はシルアリーレン化合物、例えば、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと反応させ、次いでアリルホスホン酸ジエチルと反応させることにより下記化合物を得ることができる。該付加反応は公知の反応条件で行えばよく、付加反応触媒、例えば白金化合物の存在下で付加反応させるのがよい。
【0070】
【化19】
【0071】
さらに、上記パーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを、トリメチルシリルブロミドやトリメチルシリルヨージドと反応させることにより下記のポリマーを得ることができる。該付加反応は公知の反応条件で行えばよく、室温で3日間撹拌するのみでも反応が進行する。
【0072】
【化20】
【0073】
さらに、上記パーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを、水で加水分解することで、下記のポリマーを得ることができる。
【0074】
【化21】
【0075】
また、本発明は、本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体の少なくとも1種以上を含む表面処理剤を提供する。本発明の表面処理剤は、片末端にホスホン酸基を有するタイプと、両末端にホスホン酸基を有するタイプとを混合しても良い。片末端にホスホン酸基を有するタイプと両末端にホスホン酸基を有するタイプを比較すると、片末端にホスホン酸基を有するタイプの方が撥水撥油性が高く、動摩擦係数が低く、耐摩耗性にも優れるが、両末端にホスホン酸基を有するタイプの方が、薄膜塗工でも表面改質が可能である。そのため、用途に合わせて、片末端にホスホン酸基を有するタイプと、両末端にホスホン酸基を有するタイプとを混合して、表面処理剤として使用することが好ましい。
【0076】
また、本発明の表面処理剤は無官能性フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを含んでいても良く、この使用量は、片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマー100質量部に対して5〜120質量部、好ましくは10〜60質量部とすることが低い動摩擦係数と耐久性を両立するうえで有利である。
【0077】
また、本発明の表面処理剤は、適当な溶剤に溶解させてから塗工することが好ましい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ1,3−ジメチルシクロヘキサンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3−トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチルなど)、アルコール系溶剤(イソプロピルアルコールなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロエプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロメタキシレンがより好ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテルやデカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサンが好ましい。
【0078】
上記溶媒はその2種以上を混合してもよく、溶媒に溶解させるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体の最適濃度は、処理方法により異なるが0.01〜50質量%、特に0.03〜25質量%とすることが好ましい。
【0079】
表面処理剤は、ウェット塗工法(刷毛塗り、ディッピング、スプレー、インクジェット)、蒸着法など公知の方法で基材に施与することができる。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、80℃から200℃までの範囲が好ましい。硬化湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で好ましい。
【0080】
また、硬化被膜(フッ素層)の膜厚は、50nm以下が好ましく、特に、2〜20nmが好ましく、更に4〜15nmが好ましい。
【0081】
上記表面処理剤で処理される基材は、特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英、サファイヤなど各種材質のものが挙げられ、就中、サファイヤ、金属酸化物が好ましく、これらに撥水撥油性、低動摩擦性、防汚性を付与することができる。
【0082】
基板の表面は、ハードコート処理や反射防止処理されていてもよい。密着性が悪い場合には、プライマー層として、金属酸化物層(TiO2、Al23、ZrO2、Ta25、ITO、AgO、CuO等)処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、イトロ処理、UV処理、VUV(真空紫外線)処理、アルカリ処理、酸処理等の公知の処理方法で密着性を向上することができる。
【0083】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、カーオーディオ、タブレットPC、スマートフォン、ウェラブル端末、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、電子公告等に使用される液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイや、メガネレンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、保護フィルム、反射防止フィルム等の光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、汚れを容易に拭き取ることができるため、特にメガネレンズ、スマートフォン、PC、スマートウォッチ等のタッチパネルディスプレイや輸送用機器のインパネの撥水撥油層として有用である。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例において使用した試験方法は、以下のとおりである。
【0086】
[撥水撥油性の評価方法]
接触角計(協和界面科学社製DropMaster)を用いて、硬化被膜の水接触角及びオレイン酸に対する接触角を25℃、湿度40%で測定した。なお、水接触角は、2μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定した。オレイン酸接触角は、4μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定した。
【0087】
[動摩擦係数]
ベンコット(旭化成社製)に対する動摩擦係数を、表面性試験機(新東科学社製 HEIDON 14FW)を用いて下記条件で測定した。
接触面積:10mm×30mm
荷重:100g
【0088】
[マジックインク拭取り性]
上記にて作製したフィルムを用い、処理表面に油性マジック(ゼブラ株式会社製『ハイマッキー』)を塗り、ラビングテスター(新東科学社製)により下記条件で拭いた後のマジックインクの拭取り性を、下記指標を用い、目視により評価した。
試験環境条件:25℃、湿度40%
拭取り材:試料と接触するテスターの先端部にティッシュペーパー(カミ商事株式会社製エルモア)を固定したもの。
移動距離(片道)20mm
移動速度1800mm/min
接触面積:10mm×30mm
荷重:500g
◎:1往復の拭取り操作で簡単に完全に拭取れる。
○:1往復の拭取り操作では少しインクが残る。
△:1往復の拭取り操作では半分ほど残る。
×:全く拭きとれない。
【0089】
[耐摩耗試験]
往復摩耗試験機(新東科学社製HEIDON 30S)を用いて、下記条件で硬化被膜の耐摩耗試験を実施した。
評価環境条件:25℃、湿度40%
擦り材:試料と接触するテスターの先端部(10mm×30mm)に不織布を8枚重ねて固定した。
荷重:500g
擦り距離(片道):40mm
擦り速度:4,800mm/min
往復回数:500往復
【0090】
実施例1
以下に示す式(1a)60%、式(1b)38%、及び式(1c)2%より成る混合物を使用した。当該混合物は、両末端にカルボン酸基を有するパーフルオロオキシ化合物(ソルベイソレクシス社製FOMBLIN ZDIAC4000)を、フッ素ガスを用いて部分フッ素化することにより製造されたものである。各ポリマーの含有比率(モル%、以下同様)は、カルボン酸を有するポリマーを酸吸着剤に吸着させることで分取し、19F−NMRにより決定されたものである。
【0091】
【化22】
【0092】
工程(1i)
反応容器に、上記式(1a)60%、上記式(1b)38%、及び上記式(1c)2%より成る混合物600gをフッ素系溶剤(PF5060 3M社製)5.4kgに溶解させる。次いで、陰イオン交換樹脂B20−HG(オルガノ社製)1.2kgを加え、20℃で3時間攪拌し、式(1a)及び(1b)を陰イオン交換樹脂に吸着させた。その後、PF5060で、陰イオン交換樹脂を洗浄後、PF5060 6kgと樹脂とを混合し、0.1N塩酸を適量加え、20℃で2時間攪拌した。攪拌後、30分間静置したところ、2層に分かれ、下層はフッ素層、上層は塩酸と樹脂との混合層となった。フッ素層を取り出し、PF5060を留去し、生成物87gを得た。得られた混合物を19F−NMRにより測定したところ、上記式(1a)を得た。
【0093】
工程(1ii)
前記反応で得られた化合物(式(1a))50gを、1,3−トリフルオロメチルベンゼン40gとテトラヒドロフラン10gの混合溶媒に溶解し、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの40%トルエン溶液30gを滴下した。室温で3時間撹拌後、適量の塩酸を加え、十分に攪拌し水洗した。さらに、下層を取り出し、溶剤を留去したところ、液状の生成物42gを得た。得られた混合物を19F−NMR、1H−NMRにより測定し、下記式(1d)であることを確認した。
【0094】
【化23】
【0095】
工程(1iii)
反応容器に、上記工程(1ii)で得られた化合物(式(1d))40g、臭化アリル3.5g、硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.4g、30%水酸化ナトリウム水溶液5.2gを滴下した後、60℃で3時間攪拌した。その後、PF5060(3M社製フッ素系溶剤)と塩酸を適量加え攪拌した後、十分に水洗した。さらに、下層を取り出し、溶剤を留去したところ、液状の生成物35gを得た。得られた化合物を1H−NMRにより測定し、下記式(1e)であることを確認した。
【0096】
【化24】
【0097】
工程(1iv)
次に、上記工程(1iii)で得られた化合物(式(1e))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、1,2−ビス(ジメチルシリル)エタン3.8g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.005g(Pt単体として1.25×10-9モルを含有)を混合し、80℃で3時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物19gを得た。得られた化合物を1H−NMRにより測定し、下記式(1f)であることを確認した。
【0098】
【化25】
【0099】
工程(1v)
次に、上記工程(1iv)で得られた化合物(式(1f))19g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、アリルホスホン酸ジエチル1.7g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.005g(Pt単体として1.25×10-9モルを含有)を混合し、90℃で48時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物20gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(1g)であることを確認した。
【0100】
【化26】
【0101】
工程(1vi)
次に、上記工程(1v)で得られた化合物(式(1g))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、ジエチルエーテル10g、ブロモトリメチルシラン1.45gを混合し、70℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物21gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(1h)であることを確認した。
【0102】
【化27】
【0103】
上記式(1h)の化合物(以下、「化合物1」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0104】
【化28】
【0105】
工程(1vii)
次に、上記工程(1vi)で得られた化合物1 20gを水100gとアセトン50gを混合した溶液に適化し、20℃で3時間撹拌し1時間静置した。その後、下層を取り出し、溶剤を減圧溜去したところ液状の生成物18gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより、下記式(1i)であることを確認した。
【0106】
【化29】
【0107】
上記式(1i)の化合物(以下、「化合物2」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0108】
【化30】
【0109】
実施例2
実施例1で得られた化合物(式(1g))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、ジエチルエーテル10g、ブロモトリメチルシラン1.725gを混合し、70℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物20gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(2h)であることを確認した。
【0110】
【化31】
【0111】
式(2h)中、XはCH2CH3又はSi(CH33である。
CH2CH3:Si(CH33=61:39
(p/q=0.9、p+q≒45)
【0112】
上記式(2h)の化合物(以下、「化合物3」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0113】
【化32】
【0114】
実施例3
工程(3i)
実施例1で得られた化合物(式(1e))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン15g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.005g(Pt単体として1.25×10-9モルを含有)を混合し、80℃で5時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物21gを得た。得られた化合物を1H−NMRにより測定し、下記式(3f)であることを確認した。
【0115】
【化33】
【0116】
工程(3ii)
次に、上記工程(3i)で得られた化合物(式(3f))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、アリルホスホン酸ジエチル2.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.005g(Pt単体として1.25×10-9モルを含有)を混合し、90℃で48時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物20gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(3g)であることを確認した。
【0117】
【化34】
【0118】
工程(3iii)
次に、上記工程(3ii)で得られた化合物(式(3g))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、ジエチルエーテル10g、ブロモトリメチルシラン1.45gを混合し、70℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物21gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(3h)であることを確認した。
【0119】
【化35】
【0120】
上記式(3h)の化合物(以下、「化合物4」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0121】
【化36】
【0122】
さらに、上記化合物4を超臨界精製することにより、主鎖の数平均分子量が異なるサンプルを調製した。なお、19F−NMRにより、化合物4の数平均分子量は4,520であった。
【0123】
化合物4 20gを、25mLの高圧容器に入れ、70℃に昇温した。その後、液化炭酸ガスを導入することにより、高圧容器の圧力を15MPaまで上げ、30分間超臨界状態を保った。二酸化炭素を2ml/minで2分間流し、流出したサンプルを回収した。この操作を10MPaから22MPaまで実施したところ、表1に示すサンプル(化合物5〜13)を分取することができた。
【0124】
【表1】
【0125】
工程(3iv)
次に、上記工程(3iii)で得られた化合物4 20gを水100gとアセトン50gを混合した溶液に適化し、20℃で3時間撹拌し1時間静置した。その後、下層を取り出し、溶剤を減圧溜去したところ液状の生成物18gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより、下記式(3i)であることを確認した。
【0126】
【化37】
【0127】
上記式(3i)の化合物(以下、「化合物14」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0128】
【化38】
【0129】
さらに、上記化合物14を超臨界精製することにより、数平均分子量が異なるサンプルを調製した。なお、19F−NMRにより、化合物14の数平均分子量は4,130であった。
【0130】
化合物14 20gを、25mLの高圧容器に入れ、70℃に昇温した。その後、液化炭酸ガスを導入することにより、高圧容器の圧力を15MPaまで上げ、30分間超臨界状態を保った。二酸化炭素を2ml/minで2分間流し、流出したサンプルを回収した。この操作を10MPaから22MPaまで実施したところ、表2に示すサンプル(化合物15〜22)を分取することができた。
【0131】
【表2】
【0132】
実施例4
工程(4i)
反応容器に、両末端にカルボン酸基を有するパーフルオロオキシ化合物(ソルベイソレクシス社製FOMBLIN ZDIAC4000)を、1,3−トリフルオロメチルベンゼン40gとテトラヒドロフラン10gの混合溶媒に溶解し、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの40%トルエン溶液60gを滴下した。室温で3時間撹拌後、適量の塩酸を加え、十分に攪拌し水洗した。さらに、下層を取り出し、溶剤を留去したところ、液状の生成物41gを得た。得られた混合物を19F−NMR、1H−NMRにより測定し、下記式(4d)であることを確認した。
【0133】
【化39】
【0134】
工程(4ii)
反応容器に、上記工程(4i)で得られた化合物(式(4d))40g、臭化アリル7.0g、硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.6g、30%水酸化ナトリウム水溶液10.0gを滴下した後、60℃で3時間攪拌した。その後、PF5060(3M社製フッ素系溶剤)と塩酸を適量加え攪拌した後、十分に水洗した。さらに、下層を取り出し、溶剤を留去したところ、液状の生成物35gを得た。得られた化合物を1H−NMRにより測定し、下記式(4e)であることを確認した。
【0135】
【化40】
【0136】
工程(4iii)
次に、上記工程(4ii)で得られた化合物(式(4e))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、1,2−ビス(ジメチルシリル)エタン7.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.010g(Pt単体として2.5×10-9モルを含有)を混合し、80℃で3時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物18gを得た。得られた化合物を1H−NMRにより測定し、下記式(4f)であることを確認した。
【0137】
【化41】
【0138】
工程(4iv)
次に、上記工程(4iii)で得られた化合物(式(4f))18g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、アリルホスホン酸ジエチル3.5g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.005g(Pt単体として1.25×10-9モルを含有)を混合し、90℃で48時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物21gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(4g)であることを確認した。
【0139】
【化42】
【0140】
工程(4v)
次に、上記工程(4iv)で得られた化合物(式(4g))20g、1,3−トリフルオロメチルベンゼン30g、ジエチルエーテル10g、ブロモトリメチルシラン2.9gを混合し、70℃で24時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧溜去したところ液状の生成物21gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより測定し、下記式(4h)であることを確認した。
【0141】
【化43】
【0142】
上記式(4h)の化合物(以下、「化合物23」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0143】
【化44】
【0144】
工程(4vi)
次に、上記工程(4v)で得られた化合物(式(4h))20gを水100gとアセトン50gを混合した溶液に適化し、20℃で3時間撹拌し1時間静置した。その後、下層を取り出し、溶剤を減圧溜去したところ液状の生成物18gを得た。得られた混合物を1H−NMRにより、下記式(4i)であることを確認した。
【0145】
【化45】
【0146】
上記式(4i)の化合物(以下、「化合物24」という)の1H−NMR(TMS基準、ppm)データを以下に示す。
【0147】
【化46】
【0148】
表面処理剤及び硬化被膜の調製
実施例1〜4で得たパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体を、濃度10質量%になるように、フッ素系溶剤Novec7200(3M社製)に溶解させて、処理剤を得た。サファイヤガラスの表面をプラズマ処理後に、上記各表面処理剤を下記条件及び装置で真空蒸着塗工した。80℃、湿度80%の雰囲気下で1時間硬化させた後、150℃で3時間硬化させ、被膜を形成した。
【0149】
[プラズマ処理の条件]
・装置:プラズマドライ洗浄装置PDC210
・ガス:O2ガス80cc、Arガス10cc
・出力:250W
・時間:30秒
【0150】
[真空蒸着による塗工条件及び装置]
・測定装置:小型真空蒸着装置VPC−250F
・圧力:2.0×10-3Pa〜3.0×10-2Pa
・蒸着温度(ボートの到達温度):500℃
・蒸着距離:20mm
・処理剤の仕込量:50mg
・蒸着量:50mg
【0151】
比較例
比較例1〜3の表面処理剤及び硬化被膜は、化合物1及び2に代えて下記の化合物25〜27を用いた他は実施例と同様の方法で調製し、評価試験を実施した。
【0152】
(比較例1)化合物25
【0153】
【化47】
【0154】
(比較例2)化合物26
【0155】
【化48】
【0156】
(比較例3)化合物27
【0157】
【化49】
【0158】
得られた硬化被膜を下記の方法により評価した。評価結果を表3(初期性能)及び表4(耐摩耗性)に示す。

【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
表3及び4より、実施例のパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体から形成された被膜によって、撥水撥油性が高く、動摩擦係数が低く、かつ、マジックインクの拭き取り性が優れていることが分かった。一方、ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基を有さない比較例では、撥水撥油性、動摩擦係数は許容範囲内であったが、マジックインクの拭き取り性が悪かった。さらに、実施例のパーフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体から形成された被膜は、布で摩擦後においても水接触角100度以上、オレイン酸接触角60度以上という高い撥水撥油性を示した。一方、ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基を有さない比較例では、撥水撥油性が大きく低下した。即ち、本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性ホスホン酸誘導体は、撥水撥油性、低動摩擦性、汚れの拭き取り性、耐摩耗性、及び、基材への密着性に優れた硬化被膜を提供できる。
【0162】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。