特開2016-222997(P2016-222997A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222997(P2016-222997A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】砒素の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 30/04 20060101AFI20161205BHJP
   B01J 45/00 20060101ALI20161205BHJP
   B01J 49/00 20060101ALI20161205BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C22B30/04
   B01J45/00
   B01J49/00 160
   C22B3/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-113265(P2015-113265)
(22)【出願日】2015年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】菊田 直子
(72)【発明者】
【氏名】仙波 祐輔
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA03
4K001BA24
4K001DB36
4K001EA05
(57)【要約】
【課題】銅の電解液からアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を用いて砒素を回収する方法において、効率的に且つ高い回収率で砒素を回収する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る砒素の回収方法は、砒素を含有する銅電解液から砒素を回収する方法であって、銅電解液とアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂とを接触させ、次いで、そのキレート樹脂に硫酸濃度が50g/L以上150g/L以下である硫酸水溶液を接触させて硫酸水溶液中にキレート樹脂に吸着した砒素を溶離して回収する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砒素を含有する銅の電解液とアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂とを接触させ、次いで、前記キレート樹脂に硫酸濃度が50g/L以上150g/L以下である硫酸水溶液を接触させて該硫酸水溶液中に該キレート樹脂に吸着した砒素を溶離して回収する
ことを特徴とする銅電解液からの砒素の回収方法。
【請求項2】
前記砒素を溶離する際の前記硫酸水溶液の温度を40℃以上85℃以下の範囲に維持することを特徴とする請求項1に記載の銅電解液からの砒素の回収方法。
【請求項3】
前記キレート樹脂と接触させる前記電解液は、遊離硫酸濃度が100g/L以上400g/L以下の硫酸酸性の銅電解液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅電解液からの砒素の回収方法。
【請求項4】
前記アミノポリアルコール基がグルカミン基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銅電解液からの砒素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砒素の回収方法に関し、より詳しくは、砒素を含有する銅の電解液からイオン交換樹脂を用いて砒素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化銅鉱石から銅を製錬する方法の一つとして、以下のような製錬プロセスが最も一般的に用いられている。すなわち、先ず、硫化銅鉱石を破砕や浮遊選鉱等の選鉱処理に付して銅品位が20〜30%前後に濃縮した銅精鉱を得て、次いでその銅精鉱を酸素と共に自溶炉等の炉に装入し、高温で熔解してスラグとマットに分離する。次に、得られたマットを転炉並びに精製炉で精製して不純物を分離して銅品位が99%を越える精製アノードとする。さらに、アノードをカソードと共に硫酸酸性溶液を満たした電槽に装入し、アノード、カソード間に通電して電解精製を行うことによって、純度が99.99%に達する電気銅を得る。
【0003】
硫化銅鉱石には、銅の他にも、砒素等の不純物も含有されているが、上述した製錬方法を用いた場合、多くの砒素はマットやスラグに分配されて、さらに一部の砒素は揮発して排ガスに分配される。
【0004】
このうち、マットに分配された砒素は、大部分がアノードに移行し、さらに上述した電解精製の工程においてほぼ全量が電解液中に溶出する。
【0005】
このようにして、銅電解の電解液には、主な銅と共に常に砒素が含有されている。そして、鉱石中の砒素濃度が増加すると電解液中の砒素濃度も増加していくが、電解液中の砒素濃度が許容限度を超えると、製品である電気銅中に共析したり、巻き込まれて、電気銅の品質を悪化させる可能性がある。そのため、電解液中の砒素濃度を一定濃度以下に管理する必要がある。
【0006】
電解液中の砒素濃度を抑制させるためには、砒素のインプット量を減らすことが根本的な解決法ではあるものの、工業的に、近年では砒素品位の低い鉱石の入手が難しいことから容易ではない。
【0007】
電解液に溶出して含有された砒素を電解液から分離し除去する方法として、電解液を加熱濃縮した後に冷却して、溶解度差を利用することで析出した銅を硫酸銅として回収した後、さらに電解採取して砒素を除去する方法、いわゆる脱銅電解法が一般的に行われている。しかしながら、脱銅電解法は、電力消費量が極めて多く、また、アルシン(AsH)等の有毒ガスが発生する可能性があり、安定した操業を管理するのは容易ではない。
【0008】
これを解決するために、例えば特許文献1では、硫化水素を電解液に吹き込んで砒素の硫化物を生成させて分離する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、硫化水素を大量に扱うため作業環境上好ましくなく、除害設備が必要となる等手間もかかる。
【0009】
また、特許文献2では、水流化ソーダを使用して硫化物を生成させる方法が提案されているが、同様に手間がかかる。具体的に、特許文献2の方法は、電解液を2分割し、一方に水流化ソーダを通じて金属硫化物として砒素等の不純物を除去した後、さらに過剰の水流化ソーダを添加することで残存する硫酸と反応させて硫化水素を生成させ、この硫化水素をもう一方の電解液に通じて金属硫化物として砒素等の不純物を除去するものである。
【0010】
しかしながら、水流化ソーダを通じた電解液については系内に戻すことができずに排水処理を施す必要があり、さらに硫化水素を取り扱わなければならない点に関しては特許文献1に記載の技術と同様に作業環境上の問題がある。
【0011】
一方で、キレート樹脂に電解液を通じて、水溶液中の砒素を吸着する方法もある。例えば、特許文献3では、アミノポリアルコール基を有するキレート樹脂による砒素の回収方法が提案されている。排水中のホウ素又は砒素を除去するために、アミノポリアルコール基の一つであるグルカミン基を有する樹脂が様々なメーカーから販売されているが、これらの樹脂は一般的には排水処理用途に開発されていることから、有効なpHは6〜10程度の弱酸性から弱アルカリ性領域である。そのため、例えば銅の電解液のようなpH値がマイナス領域となる強酸性硫酸水溶液での使用には適さない。
【0012】
ところが、そのような強酸性の液からでも砒素の吸着は可能であることから、例えば特許文献4に示すように、銅の電解液中の砒素を低減させるために、アミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を適用する方法も提案されている。
【0013】
ここで、通常、キレート樹脂においては、吸着に適したpH範囲があるのと同じく溶離に適したpH範囲も存在する。また、吸着・溶離挙動は、単にpH値だけでなく、温度や溶離液の酸の種類の影響も受けることが知られている。すなわち、液性と温度の相互の影響によって、吸着や溶離の挙動が異なる。
【0014】
銅の電解液への適用を考えた場合、吸着時に液性や温度を変えることは、砒素吸着後の液を電解工程に戻すことが難しくなることから、あまり実用的ではない。このため、吸着時には、電解液の液性や温度は変えず、そのまま電解液を樹脂に通液して可能な量だけ砒素を回収することが多い。
【0015】
一方で、キレート樹脂からの溶離に際しては、溶離に適した条件を選択することが可能であることから、溶離条件が砒素回収率の向上に重要な要素となる。
【0016】
なお、上述した特許文献4では、砒素の回収率向上のための液の繰り返しに関する言及はあるものの、溶離時の液性や温度については明確に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭57-5884号公報
【特許文献2】特開平9−78284号公報
【特許文献3】特開昭58−64180号公報
【特許文献4】特開平11−90413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、砒素を含有する銅電解液からアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を用いて砒素を回収する方法において、効率的に且つ高い回収率で砒素を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、キレート樹脂に砒素を吸着させ、その砒素を樹脂から溶離させるに際して、特定の溶離条件で砒素を溶離液中に溶離させることによって、高い回収率で砒素を回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0020】
(1)本発明の第1の発明は、砒素を含有する銅の電解液とアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂とを接触させ、次いで、前記キレート樹脂に硫酸濃度が50g/L以上150g/L以下である硫酸水溶液を接触させて該硫酸水溶液中に該キレート樹脂に吸着した砒素を溶離して回収することを特徴とする銅電解液からの砒素の回収方法である。
【0021】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記砒素を溶離する際の前記硫酸水溶液の温度を40℃以上85℃以下の範囲に維持することを特徴とする銅電解液からの砒素の回収方法である。
【0022】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記キレート樹脂と接触させる前記電解液は、遊離硫酸濃度が100g/L以上400g/L以下の硫酸酸性の銅電解液であることを特徴とする銅電解液からの砒素の回収方法である。
【0023】
(4)本発明の第3の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記アミノポリアルコール基がグルカミン基であることを特徴とする銅電解液からの砒素の回収方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を用いて、銅の電解液中に含まれる砒素を吸着させた後、特定の条件の硫酸水溶液を溶離液として用いて溶離させることによって、効率的に、高い回収率で砒素を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜調整が可能である。
【0026】
本実施の形態に係る砒素の回収方法は、砒素を含有する銅の電解液から砒素を回収方法であって、その銅電解液をキレート樹脂に接触させ、そのキレート樹脂に吸着した砒素を溶離液により溶離させて回収する方法である。
【0027】
具体的に、この砒素の回収方法は、砒素を含有する銅電解液とグルカミン基を有するキレート樹脂とを接触させて砒素をキレート樹脂に吸着させる吸着工程と、キレート樹脂に所定の硫酸濃度の硫酸水溶液を接触させて、その硫酸水溶液中にキレート樹脂に吸着した砒素を溶離して回収する溶離工程とを有する。
【0028】
(1)吸着工程
吸着工程では、砒素を含有する銅電解液とキレート樹脂とを接触させて、そのキレート樹脂に砒素を吸着させる。本実施の形態においては、キレート樹脂として、アミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を用いる。
【0029】
アミノポリアルコール基を有するキレート樹脂は、樹脂基材(高分子基材)にアミノポリアルコール基が固定化されたものである。樹脂基材としては、特に限定されないが、ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、セルロース等の高分子を主体とする球状、粒状、繊維状のものを例示することができる。
【0030】
アミノポリアルコール基としては、アミノ基及び多価アルコール基を含有する基であることが好ましく、特に、砒素の吸着性の観点から、N−メチルグルカミン基、D−グルカミン基等のグルカミン基であることが好ましい。
【0031】
ここで、工業的な銅電解工程における銅の電解液としては、通常、60℃前後に加温され維持されており、電解液中の遊離硫酸濃度が例えば190g/L前後の強酸性の液である。この銅電解液においては、キレート樹脂に対する砒素の吸着のために液性や温度を変えてしまうと、その後の電解工程に戻すことが難しくなる。このことから、本実施の形態においては、銅電解液の液性や温度を変えずに、つまりキレート樹脂を用いたイオン交換処理の前処理として脱酸処理等のいずれの処理も行わずに、そのままの銅電解液の状態でキレート樹脂と接触させて、その電解液中の砒素を樹脂に吸着させる。
【0032】
具体的に、本実施の形態においては、キレート樹脂と接触させる銅電解液として、遊離硫酸濃度が100g/L以上400g/L以下、より好ましくは150g/L以上200g/L以下の硫酸酸性の電解液を用いる。このような硫酸酸性の銅電解液を、そのままの状態でキレート樹脂と接触させてイオン交換処理を行うことによって、電解液中の砒素を後述する溶離工程で溶離させた後に、容易に電解工程に戻すことができて効率的な操業が可能となる。
【0033】
銅電解液とキレート樹脂とを接触させる方法としては、カラム方式が一般的であるが、バッチ混合により接触させてもよい。
【0034】
具体的に、カラム方式では、例えば円筒形のカラムにアミノポリアルコール基を有するキレート樹脂を充填し、砒素を含有する銅電解液をそのカラムに通液させる。なお、通液に際しての条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、通液速度SV(Space Velocity)、通液量BV(Bed Volume)等は、操業効率や吸着効率等の観点から適宜調整することが好ましい。
【0035】
キレート樹脂への砒素の吸着処理後においては、カラム方式の場合には通液後の流出液を、バッチ混合の場合には固液分離後の液を、それぞれ回収して、その砒素を吸着除去した銅電解液を使用する電解工程に戻す。なお、バッチ混合の場合における固液分離の方法としては、特に限定されずどのような方法を用いても構わないが、ろ過処理や沈降処理等のキレート樹脂の基体を破壊しない方法を用いることが好ましい。
【0036】
(2)溶離工程
次に、溶離工程では、吸着工程後のキレート樹脂に溶離液を接触させて、そのキレート樹脂に吸着した砒素を溶離液中に溶離させて回収する。
【0037】
吸着工程にて砒素を吸着させたキレート樹脂に対しては、通常、酸等の溶離液と接触させることで砒素を樹脂から溶離する。このとき、溶離液としては、塩酸、硫酸等の鉱酸が用いられ、特に、銅の電解液としては通常硫酸水溶液を用いることから、本実施の形態においても、その溶離液として所定の濃度の硫酸水溶液を用いる。例えば、銅の製錬工場にて生成した銅電解液に対する処理においては、硫化鉱を製錬するときの副産物として硫酸が生成することから、他の酸より安価に入手できるといった経済的なメリットもある。
【0038】
なお、他の種類の酸を用いた場合、電解液への混入による電気銅の品質悪化や生産効率の悪化等を引き起こし、また塩酸を用いた場合には、その塩素による設備腐食が発生するといった問題も生じる。
【0039】
ここで、本実施の形態においては、溶離液として用いる硫酸水溶液の濃度が重要となる。具体的には、溶離液として、硫酸濃度が50g/L以上150g/L以下の範囲の硫酸水溶液を用いる。また、より好ましくは、硫酸濃度が60g/L以上90g/L以下の範囲の硫酸水溶液を用いる。このような濃度の硫酸水溶液を溶離液として用いて溶離処理を行うことによって、キレート樹脂に吸着した砒素の溶離率を高くすることができる。
【0040】
また、溶離に際しての温度条件としては、特に限定されないが、温度が高くなるほど砒素の溶離率を高くすることができる。具体的には、温度条件として、40℃以上とすることが好ましく、50℃以上とすることがより好ましい。なお、一方で、温度が高く設定する場合、高価な耐食性材料や耐熱性材料を用いる必要があり、またこのような材料を用いた場合でも、温度の増加とともに耐用年数が低下して交換頻度が高くなり、処理コストの増加を招く。したがって、温度条件としては、85℃以下とすることが好ましく、80℃以下ですることがより好ましい。このような温度条件の上限値は、溶離液を接触させるキレート樹脂の耐熱温度の観点からも好ましい。
【0041】
溶離液とキレート樹脂とを接触させる方法としては、吸着工程における銅電解液とキレート樹脂との接触方法と同様に、カラム方式を用いることができ、またバッチ混合により行ってもよい。具体的に、カラム方式の場合には、キレート樹脂を充填させたカラムに砒素を吸着させた後(吸着工程)、そのカラムに所定の濃度及び温度の溶離液を通液させることによって接触させる。なお、通液条件としては、特に限定されるものではなく、操業効率や溶離効率等の観点から、SV、BV等について適宜調整することが好ましい。
【0042】
カラム方式の場合、キレート樹脂に溶離液である硫酸水溶液を通液して接触させた後、その流出液を回収する。また、バッチ混合の場合では、キレート樹脂と溶離液である硫酸水溶液を混合させた後、その混合液を固液分離することによって液を回収する。なお、バッチ混合の場合における固液分離の方法としては、特に限定されずどのような方法を用いても構わないが、ろ過処理や沈降処理等のキレート樹脂の基体を破壊しない方法を用いることが好ましい。
【0043】
このようにして、濃度が50g/L以上150g/L以下である硫酸水溶液を用いてキレート樹脂に吸着した砒素を溶離させると、その硫酸水溶液中に砒素が溶出分配される。特に、本実施の形態に係る砒素の回収方法では、溶離液として、濃度が50g/L以上150g/L以下である硫酸水溶液を用いていることから、砒素の溶離率を向上させることができ、高い回収率で銅電解液から砒素を回収することができる。
【0044】
砒素が溶離した後のキレート樹脂は、再び吸着工程に戻すことで、繰り返し使用することが可能である。このように、吸着処理と溶離処理とを繰り返すことによって、銅電解液から砒素を効果的に且つ効率的に除去することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
≪溶離液の硫酸濃度について≫
[実施例1]
砒素濃度が14g/L、遊離硫酸濃度が190g/L、銅濃度が45g/Lである硫酸酸性の銅電解液1.5Lと、グルカミン基を有するキレート樹脂(三菱化学株式会社製,DIAION CRB05)70mlとをビーカーに入れ、温度50℃に維持し、30分間撹拌混合して、銅電解液中の砒素をキレート樹脂に吸着させた。次いで、キレート樹脂と電解液とを5Cの濾紙を用いて固液分離した後、濾紙上に残った樹脂に純水を用いてかけ水洗浄を行い、付着液を除去した。
【0047】
次いで、洗浄後の樹脂1mlを分取し、その樹脂をビーカーに入れて、液温80℃に維持した硫酸濃度が75g/Lの硫酸水溶液20mLを加えて混合し、45分間撹拌してキレート樹脂に吸着した砒素を硫酸水溶液中に溶離した。
【0048】
次いで、溶離後の硫酸水溶液中に含まれる砒素濃度を、ICP発光分析法を用いて分析した。その結果、砒素濃度は0.63g/Lであった。
【0049】
[実施例2]
砒素の溶離に際して、硫酸濃度が50g/Lの硫酸水溶液20mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0050】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素濃度を分析したところ、0.56g/Lであった。
【0051】
[実施例3]
砒素の溶離に際して、硫酸濃度が150g/Lの硫酸水溶液20mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0052】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素濃度を分析したところ、0.55g/Lであった。
【0053】
[比較例1]
砒素の溶離に際して、硫酸濃度が25g/Lの硫酸水溶液20mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0054】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素濃度を分析したところ、0.43g/Lであった。
【0055】
[比較例2]
砒素の溶離に際して、硫酸濃度が200g/Lの硫酸水溶液20mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0056】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素濃度を分析したところ、0.20g/Lであった。
【0057】
上述した実施例1〜3及び比較例1〜2の結果から、溶離液として硫酸濃度が50g/L以上150g/L以下の硫酸水溶液を用いることによって、砒素の回収率を高めることができることが分かった。
【0058】
≪溶離に際しての温度について≫
[実施例4]
内径10mmのパイレックス(登録商標)ガラス製の円筒形カラムに、グルカミン基を有するキレート樹脂(三菱化学株式会社製,DIAION CRB05)を10ml充填し、次いで、砒素濃度が5.3g/L、遊離硫酸濃度が190g/L、銅濃度が45g/Lである硫酸酸性の銅電解液を、120ml/hr(SV=12)の流速で200ml(BV=20)の量をカラム内に通液し、キレート樹脂に砒素を吸着させた。通液中は、カラム内の溶液が50℃を保持されるように加温した。
【0059】
通液後、カラムに残留している溶液を抜き出して除去し、硫酸濃度が75g/Lの硫酸水溶液を10ml/hr(SV=1)の流速で70ml(BV=7)の量をカラム内に通液して、樹脂に吸着した砒素を溶離した。硫酸水溶液の通液中は、カラム内の硫酸水溶液が80℃に保持されるように加温した。
【0060】
溶離後、硫酸水溶液中の砒素をICP発光分析法を用いて分析した。その結果、硫酸水溶液中に回収できた砒素の物量は0.30gであった。
【0061】
[実施例5]
溶離に際して、カラム内の硫酸水溶液の温度を70℃に保持したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0062】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素を分析したところ、硫酸水溶液中に回収できた砒素量は0.33gであった。
【0063】
[実施例6]
溶離に際して、カラム内の硫酸水溶液の温度を60℃に保持したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0064】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素を分析したところ、硫酸水溶液中に回収できた砒素量は0.32gであった。
【0065】
[実施例7]
溶離に際して、カラム内の硫酸水溶液の温度を50℃に保持したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0066】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素を分析したところ、硫酸水溶液中に回収できた砒素量は0.28gであった。
【0067】
[実施例8]
溶離に際して、カラム内の硫酸水溶液の温度を40℃に保持したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0068】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素を分析したところ、硫酸水溶液中に回収できた砒素量は0.24gであった。
【0069】
[比較例3]
溶離に際して、カラム内の硫酸水溶液の温度を30℃に保持したこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0070】
溶離後の硫酸水溶液中の砒素を分析したところ、硫酸水溶液中に回収できた砒素量は0.12gであった。
【0071】
上述したように、実施例4〜8及び比較例3の結果から、溶離に際してカラム内の硫酸水溶液の温度を40℃以上、好ましくは50℃以上とすることにより、砒素の回収量を増加させることができることが分かった。