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特開2016-223187グラウト工事のシミュレーション装置、グラウト工事のシミュレーションプログラム及びグラウト工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223187(P2016-223187A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】グラウト工事のシミュレーション装置、グラウト工事のシミュレーションプログラム及びグラウト工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-111432(P2015-111432)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】面谷 達彦
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040AC01
2D040BB09
2D040CB03
2D040GA01
(57)【要約】
【課題】坑道掘削予定の岩盤にグラウト孔を掘削するグラウト工事において、グラウト孔の設計及び施工を容易且つ迅速に行う。
【解決手段】坑道1の切羽3から円錐状にグラウト孔20を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うグラウト工事のシミュレーション装置30であって、入力部34と、シミュレーション部35と、表示部36とを備え、シミュレーション部35は、グラウト孔20の基準点10、方位角度A、傾斜角度θd、第1の距離L、第2の距離R、角度θnとに基づいて、基準点10を出発点とするグラウト孔20の掘削ベクトルを算出して、この掘削ベクトルに基づいて坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置したシミュレーションの結果を表示部36に表示する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うグラウト工事のシミュレーション装置であって、
前記坑道及び前記グラウト孔に関する設計データを入力する入力部と、
前記入力部によって入力された設計データに基づいて、前記グラウト孔の配置のシミュレーションを行うシミュレーション部と、
前記シミュレーション部によって行われたシミュレーションの結果を表示する表示部とを備え、
前記シミュレーション部は、前記入力部を介して、
前記グラウト孔の基準点を定めるために、前記グラウト孔の基準点の経度、緯度、標高の座標が入力され、
前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向を定めるために、前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdが入力され、
前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lが入力され、
前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rが入力され、
前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnが入力されると、
前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを後記(1)式によって算出し、
前記掘削ベクトルに基づいて前記坑道に前記グラウト孔を仮想的に配置したシミュレーションの結果を表示部に表示する
ことを特徴とするシミュレーション装置。

掘削ベクトル(x、y、z)=
(L*cos(θd)*cos(A)+R*cos(θn)*sin(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*cos(A)、
L*cos(θd)*sin(A)−R*cos(θn)*cos(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*sin(A)、
−L*sin(θd)+R*sin(θn)*cos(θd) ) ・・・(1)
但し、
A :坑道の掘削方向の方位角度
θd:坑道の掘削方向の傾斜角度
L :グラウト孔の基準点から坑道の掘削方向に沿った第1の距離
R :第1の距離におけるグラウト孔の到達目標位置と坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離
θn:水平面とグラウト孔の掘削方向とが成す角度
【請求項2】
坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うグラウト工事のシミュレーション装置に備えられたコンピュータによって実行されるグラウト工事のシミュレーションプログラムであって、
前記グラウト孔の基準点を定めるために、前記グラウト孔の基準点の経度、緯度、標高の座標が入力され、
前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向を定めるために、前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdが入力され、
前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lが入力され、
前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rが入力され、
前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnが入力されると、
前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを後記(2)式によって算出し、
前記掘削ベクトルに基づいて前記坑道に前記グラウト孔を仮想的に配置したシミュレーションの結果を表示部に表示する処理を前記コンピュータに実行させるためのグラウト工事のシミュレーションプログラム。

掘削ベクトル(x、y、z)=
(L*cos(θd)*cos(A)+R*cos(θn)*sin(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*cos(A)、
L*cos(θd)*sin(A)−R*cos(θn)*cos(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*sin(A)、
−L*sin(θd)+R*sin(θn)*cos(θd) ) ・・・(2)
但し、
A :坑道の掘削方向の方位角度
θd:坑道の掘削方向の傾斜角度
L :グラウト孔の基準点から坑道の掘削方向に沿った第1の距離
R :第1の距離におけるグラウト孔の到達目標位置と坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離
θn:水平面とグラウト孔の掘削方向とが成す角度
【請求項3】
坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工法であって、
経度、緯度、標高の座標から定められたグラウト孔の基準点と、
前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdから定められた前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向と、
前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lと、
前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rと、
前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnとに基づいて、
前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを後記(3)式によって算出し、
次いで、前記掘削ベクトルに基づいて、後記(4)式によって、前記グラウト孔の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度αを算出し、後記(5)式によって、前記グラウト孔の水平面に対する傾斜角度βを算出し、後記(6)式によって、前記グラウト孔の掘削深さcを算出し、
次いで、前記方位角度α、前記傾斜角度β、前記掘削深さcに基づいて、前記グラウト孔を掘削する
ことを特徴とするグラウト工法。

掘削ベクトル(x、y、z)=
(L*cos(θd)*cos(A)+R*cos(θn)*sin(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*cos(A)、
L*cos(θd)*sin(A)−R*cos(θn)*cos(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*sin(A)、
−L*sin(θd)+R*sin(θn)*cos(θd) ) ・・・(3)
α=-180+180*Arctan(y/x)/π ・・・(4)
β=180*Arctan(z/(x2+y2)1/2)/π ・・・(5)
c=(x2+y2+z2)1/2 ・・・(6)

但し、
A :坑道の掘削方向の方位角度
θd:坑道の掘削方向の傾斜角度
L :グラウト孔の基準点から坑道の掘削方向に沿った第1の距離
R :第1の距離におけるグラウト孔の到達目標位置と坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離
θn:水平面とグラウト孔の掘削方向とが成す角度
α :グラウト孔の水平面における方位角度
β :グラウト孔の水平面に対する傾斜角度
c :グラウト孔の掘削深さ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑道掘削予定の岩盤にグラウト孔を掘削するグラウト工事において、グラウト孔の設計及び施工を容易且つ迅速に行うことが可能なグラウト工事のシミュレーション装置、グラウト工事のシミュレーションプログラム及びグラウト工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位を下回るレベルでの坑道掘削では、坑道壁面からの湧水を止めること(止水)が重要であり、岩盤に対するグラウト工事という方法が広く知られている。グラウト工事とは、岩盤の湧水箇所(主として岩盤の割れ目)にグラウト材(一般的にはセメントミルク)を充填して固化することであり、この処理のおかげで、地下水の湧き出す経路が閉塞されて湧水を止めることが可能となる。
【0003】
グラウト工事は、既に掘削済みのトンネル(坑道)の外壁に向かって、岩盤のセメント改良で施工される場合もあるが、鉱山の深部で行なう場合、坑道掘削作業と並行して湧き出した温泉水の排水処理対応が必要であり、熱湯が作業員にかかるリスクもあり、坑道掘削作業の効率が著しく低下する。このため、坑道掘削予定の岩盤に予めグラウト工事が行われている。予めグラウト工事が行なわれた岩盤であれば、坑道掘削作業時に、大量の湧水は発生しないため、坑道掘削作業において高い効率を維持することだけでなく、作業上の安全性も大きく向上するため効果的な方法である。
【0004】
坑道掘削作業前に施工するグラウト工事の一例としては、坑道掘削予定の岩盤に傘をかぶせるように円錐の母線上に複数本のグラウト孔をあけて、グラウト材を充填する方法がある(例えば、特許文献1参照)。このようなグラウト工事は、岩盤の割れ目に沿って地下水(温泉水)が上昇して石英鉱脈を形成している鉱山(熱水鉱床)等に、非常に有効である。
【0005】
しかしながら、このようなグラウト工事においては、グラウト孔が掘削予定の坑道の掘削方向を基準とする相対的な数値で設計されているので、坑道の掘削方向が水平面上にあるときは特に大きな問題は無いが、特に、掘削予定の坑道が水平面に対して傾斜している場合には、掘削予定の坑道の傾斜に合わせてその数値を変換しなければならず、煩雑で時間もコストも掛かり、グラウト孔の設計や掘削作業等の施工も煩雑となり、容易且つ迅速化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−174171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、坑道掘削予定の岩盤にグラウト孔を掘削するグラウト工事において、グラウト孔の設計及び施工を容易且つ迅速に行うことが可能なグラウト工事のシミュレーション装置、グラウト工事のシミュレーションプログラム及びグラウト工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るグラウト工事のシミュレーション装置は、坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うグラウト工事のシミュレーション装置であって、前記坑道及び前記グラウト孔に関する設計データを入力する入力部と、前記入力部によって入力された設計データに基づいて、前記グラウト孔の配置のシミュレーションを行うシミュレーション部と、前記シミュレーション部によって行われたシミュレーションの結果を表示する表示部とを備え、前記シミュレーション部は、前記入力部を介して、前記グラウト孔の基準点を定めるために、前記グラウト孔の基準点の経度、緯度、標高の座標が入力され、前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向を定めるために、前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdが入力され、前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lが入力され、前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rが入力され、前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnが入力されると、前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを後記(1)式によって算出し、前記掘削ベクトルに基づいて前記坑道に前記グラウト孔を仮想的に配置したシミュレーションの結果を表示部に表示することを特徴とする。
【0009】
掘削ベクトル(x、y、z)=
(L*cos(θd)*cos(A)+R*cos(θn)*sin(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*cos(A)、
L*cos(θd)*sin(A)−R*cos(θn)*cos(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*sin(A)、
−L*sin(θd)+R*sin(θn)*cos(θd) ) ・・・(1)
【0010】
本発明に係るグラウト工事のシミュレーションプログラムは、坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うグラウト工事のシミュレーション装置に備えられたコンピュータによって実行されるグラウト工事のシミュレーションプログラムであって、前記グラウト孔の基準点を定めるために、前記グラウト孔の基準点の経度、緯度、標高の座標が入力され、前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向を定めるために、前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdが入力され、前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lが入力され、前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rが入力され、前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnが入力されると、前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを前記(1)式によって算出し、前記掘削ベクトルに基づいて前記坑道に前記グラウト孔を仮想的に配置したシミュレーションの結果を表示部に表示する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0011】
本発明に係るグラウト工法は、坑道の切羽から前方外方に広がるように円錐状にグラウト孔を配置するグラウト工法であって、経度、緯度、標高の座標から定められたグラウト孔の基準点と、前記坑道の水平面における水平面上に設定された基準方位に対する方位角度A及び前記水平面に対する傾斜角度θdから定められた前記基準点を出発点とした坑道の掘削方向と、前記グラウト孔の前記基準点から前記坑道の掘削方向に沿った第1の距離Lと、前記第1の距離Lにおける前記グラウト孔の到達目標位置と前記坑道の掘削方向がなす直線との第2の距離Rと、前記基準点から、前記坑道の掘削方向を透視した面における、水平面と前記グラウト孔の掘削方向とが成す角度θnとに基づいて、前記基準点を出発点とするグラウト孔の掘削ベクトルを前記(1)式によって算出し、次いで、前記掘削ベクトルに基づいて、後記(2)式によって、前記グラウト孔の水平面における方位角度αを算出し、後記(3)式によって、前記グラウト孔の水平面に対する傾斜角度βを算出し、後記(4)式によって、前記グラウト孔の掘削深さcを算出し、次いで、前記方位角度α、前記傾斜角度β、前記掘削深さcに基づいて、前記グラウト孔を掘削することを特徴とする。
【0012】
α=-180+180*Arctan(y/x)/π ・・・(2)
【0013】
β=180*Arctan(z/(x2+y2)1/2)/π ・・・(3)
【0014】
c=(x2+y2+z2)1/2 ・・・(4)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、坑道掘削予定の岩盤にグラウト孔を掘削するグラウト工事において、グラウト孔の設計及び施工を容易且つ迅速に行うことが可能となるので、極めて大きな工業的価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】グラウト工事の様子を示した側面断面図である。
図2】坑道を示した側面図である。
図3】グラウト孔の配置を示した正面図である。
図4】シミュレーション装置を示したブロック図である。
図5】グラウト孔を配置する前の坑道を示した概略図である。
図6】シミュレーション装置によるシミュレーションの結果を示した概略図である。
図7】シミュレーション装置によるシミュレーション方法を示したフローチャートである。
図8】グラウト工事の施工方法を示したフローチャートである。
図9】試錐機の方位付け方法の様子を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るグラウト工事のシミュレーション装置、グラウト工事のシミュレーションプログラム及びグラウト工法について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
【0018】
<1.グラウト工事の概要の説明>
グラウト工事とは、岩盤の湧水箇所(主として岩盤の割れ目)にグラウト材(一般的にはセメントミルク)を充填して固化し、地下水の湧き出す経路を閉塞して湧水を止めるための工事である。例えば、図1に示すように、水平面における水平面上に設定された基準方位に対する坑道方位角度A(図9参照)及び水平面に対する坑道傾斜角度θd(図2参照)が所定の角度に設定されている掘削予定の坑道1bを岩盤2に掘削する場合には、既に掘削済みの坑道1aの切羽3の手前の坑道1bの坑道軸4上の基準点10から前方(掘削方向w)に向かうに連れて漸次坑道1bの径方向外方に広がり円錐状となるように、岩盤2のこの基準点10を頂点とする複数の円錐の母線上に、それぞれ所定の間隔でグラウト孔20を複数掘削して、そのグラウト孔20にグラウト材を充填して固化させて、その後、グラウト工事が施された岩盤2を掘削方向wに沿って所定の深さまで掘削して、岩盤2に坑道1aと連続する新たな坑道1bを形成する。次いで、同様に、新たな坑道1bの切羽3の手前に基準点10を設定し、岩盤2にグラウト孔20を掘削し、グラウト材を充填して、岩盤2に坑道1を掘削するといった手順を繰り返して、岩盤2に坑道1を形成していく。これにより、坑道1bの周囲の岩盤2には予めグラウト工事が行なわれて地下水の湧き出す経路が閉塞されて湧水が止められているので、坑道掘削作業時に大量の湧水が発生しないため、坑道掘削作業において高い効率を維持することができ、更に、熱湯等が作業員にかかるリスクが低減するために、作業上の安全性も大きく向上させることができる。
【0019】
この際、グラウト孔20は、図1に示すように、複数のグラウト孔20によって、坑道1bの掘削方向w(坑道軸4)に対してそれぞれ角度が異なる複数のグラウト孔群21を構成している。例えば、グラウト孔20は、6つのグラウト孔群21a,21b,21c,21d,21e,21fを構成している。更に、これらの第1〜第6のグラウト孔群21a〜21fは、第1のグラウト孔群21a、第2のグラウト孔群21b、第3のグラウト孔群21c、第4のグラウト孔群21d、第5のグラウト孔群21e、第6のグラウト孔群21fの順に、坑道1bの掘削方向w(坑道軸4)に対する角度が小さくなるように形成されている。
【0020】
また、第1〜第6のグラウト孔群21a〜21fの各グラウト孔20は、基準点10から最深部22までの坑道1bの掘削方向wに沿った第1の距離L(L1,L2,L3,L4)と、第1の距離Lにおけるグラウト孔20の到達目標位置(最深部22)と坑道1bの掘削方向wがなす直線との第2の距離R(R1,R2,R3)、すなわち、最深部22から坑道1bの坑道軸4までの坑道1bの掘削方向wと直交する掘削直交方向に沿った第2の距離R(R1,R2,R3)とがそれぞれ所定の値に設定されている。
【0021】
更に、各グラウト孔20は、図2に示すように、基準点10から、坑道1bの掘削方向wを透視した面における、水平面とグラウト孔20の掘削方向wとが成す位相角度θn、すなわち、坑道1bの坑道軸4と当接する切羽3の当接点5において坑道軸4と直交する仮想切羽面6に、図3に示すように、当接点5を原点、水平面上に設定された基準方向となる所定の水平方向をx軸方向、鉛直方向をy軸方向として、平面直交座標系を設けた場合に、x軸の+方向(一方向)からy軸の+方向(上方向)に対して(左回りに)、位相角度θnを有するように配置されている。
【0022】
例えば、図1及び図3に示すように、第1のグラウト孔群21aは、12個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが11.1m(L1)、第2の距離Rが5.65m(R1)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から15°位相させた状態で、30°間隔で等間隔にリング状に配置されている。第2のグラウト孔群21bは、6個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが16.8m(L2)、第2の距離Rが5.65m(R1)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から30°位相させた状態で、60°間隔で等間隔にリング状に配置されている。第3のグラウト孔群21cは、12個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが22.0m(L3)、第2の距離Rが5.65m(R1)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から15°位相させた状態で、30°間隔で等間隔にリング状に配置されている。第4のグラウト孔群21dは、6個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが27.0m(L4)、第2の距離Rが5.65m(R1)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から60°間隔で等間隔にリング状に配置されている。第5のグラウト孔群21eは、8個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが27.0m(L4)、第2の距離Rが3.85m(R2)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から22.5°位相させた状態で、45°間隔で等間隔にリング状に配置されている。第6のグラウト孔群21fは、4個のグラウト孔20で構成され、各グラウト孔20は、第1の距離Lが27.0m(L4)、第2の距離Rが2.05m(R3)に設定され、仮想切羽面6に、x軸から90°間隔で等間隔にリング状に配置されている。
【0023】
なお、グラウト孔群21の個数、各グラウト孔群21のグラウト孔20の個数、各グラウト孔20の第1の距離L、第2の距離R、位相角度θn等の値については、上述したものに限定されるものではなく、例えば、岩盤2の特性等に応じて適宜変更可能である。更に、例えば、大きな岩等の障害物を避けるために、グラウト孔20は、同じグラウト孔群21の他のグラウト孔20と、第1の距離L、第2の距離R、位相角度θn等の値を異ならせて配置されるようにしてもよい。更に、グラウト孔20は、不等間隔に配置されるようにしてもよい。
【0024】
<2.シミュレーション装置の説明>
次に、上述したようなグラウト工事におけるグラウト孔20の配置のシミュレーションを行うことが可能なシミュレーション装置30について説明する。
【0025】
このシミュレーション装置30は、図4に示すように、例えば、CPU31、ROM32、RAM33等を有する汎用のコンピュータからなり、図1に示すように、既に掘削済みの坑道1aの切羽3の手前の基準点10から前方(掘削方向w)に向かうに連れて径方向外方に広がるように円錐状にグラウト孔20を配置するグラウト工事のシミュレーションを行うものである。
【0026】
更に、シミュレーション装置30は、図4に示すように、坑道1及びグラウト孔20に関する設計データを入力する入力部34と、入力部34によって入力された設計データに基づいて、グラウト孔20の配置シミュレーションを行うシミュレーション部35と、シミュレーション部35によって行われた配置シミュレーションの結果を表示する表示部36と、各種データを記憶する記憶部37とを備えている。
【0027】
入力部34は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成されており、例えば、坑道1及びグラウト孔20に関する設計データが入力される。
【0028】
例えば、入力部34を介して、図1に示すように、グラウト孔20を配置する基準点10を定めるために、基準点10の経度、緯度、標高の座標等の基準点データが入力される。更に、基準点10を出発点とした坑道1bの掘削方向wを定めるために、坑道方位角度Aや坑道傾斜角度θd等の坑道傾斜データが入力される。更に、グラウト孔群21の個数や、各グラウト孔群21のグラウト孔20の個数や、各グラウト孔20に対する、第1の距離Lや第2の距離Rや位相角度θn等のグラウト孔方向データが入力される。そして、入力部34は、入力された基準点データ、坑道傾斜データ、グラウト孔方向データ等の設計データを、記憶部37に出力して一旦記憶する。
【0029】
更に、入力部34は、シミュレーション部35に配置シミュレーションを開始させたり、記憶部37に記憶されているデータの中から所望のデータを選択したり、記憶部37に記憶されているデータを編集したりするなどの操作が行われる。
【0030】
シミュレーション部35は、例えば、記憶部37に記憶されている設計データ等を読み出して、坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置させる配置シミュレーションを行う。そして、シミュレーション部35は、配置シミュレーションの結果を、記憶部37に出力して一旦記憶すると共に、表示部36に出力する。
【0031】
具体的に、シミュレーション部35は、坑道方位角度Aと坑道傾斜角度θdと第1の距離Lと第2の距離Rと位相角度θnとに基づいて、基準点10を出発点とするグラウト孔20の掘削ベクトルを後記(5)式によって算出する。更に、シミュレーション部35は、算出した掘削ベクトルに基づいて、後記(6)式によって、グラウト孔20の基準点10からの水平面上におけるグラウト孔方位角度αを算出し、後記(7)式によって、グラウト孔20の基準点10からの水平面に対するグラウト孔傾斜角度βを算出し、後記(8)式によって、グラウト孔20の基準点10からの掘削深さcを算出する。そして、シミュレーション部35は、図5に示すような坑道1に、図6に示すように、この掘削ベクトルに基づいてグラウト孔20を仮想的に配置した配置シミュレーションデータを生成し、配置シミュレーションの結果を表示部36に表示する。この際に、掘削ベクトルは、原点が基準点10になり、ベクトルの線分がグラウト孔20になり、ベクトルの先端がグラウト孔20の到達目標位置(最深部22)になり、ベクトルの長さがグラウト孔20の掘削深さcになる。なお、配置シミュレーションの結果は、図6に示すように、3次元でプロットされることが好ましいが、2次元でプロットされるようにしてもよい。
【0032】
掘削ベクトル(x、y、z)=
(L*cos(θd)*cos(A)+R*cos(θn)*sin(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*cos(A)、
L*cos(θd)*sin(A)−R*cos(θn)*cos(A)+R*sin(θn)*sin(θd)*sin(A)、
−L*sin(θd)+R*sin(θn)*cos(θd) ) ・・・(5)
【0033】
α=-180+180*Arctan(y/x)/π ・・・(6)
【0034】
β=180*Arctan(z/(x2+y2)1/2)/π ・・・(7)
【0035】
c=(x2+y2+z2)1/2 ・・・(8)
【0036】
表示部36は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等で構成されており、シミュレーション部35によって行われた配置シミュレーションの結果や、設計データの数値や、設計データに基づいて算出された各種の算出結果等を表示する。
【0037】
記憶部37は、上述した、入力部34を介して入力された坑道及1及びグラウト孔20に関する設計データや、シミュレーション部35によって生成された配置シミュレーションデータや、設計データに基づいて算出された各種の算出結果データが記憶されている。
【0038】
以上のような構成を有するシミュレーション装置30は、ROM32又はRAM33に記憶されているプログラムに従って、次のようにして、グラウト孔20の配置のシミュレーションを行う。
【0039】
先ず、図7に示すように、ステップS1において、坑道及1及びグラウト孔20に関する設計データを入力させる。
【0040】
具体的には、入力部34を介して、経度、緯度、標高の座標を入力させて、坑道1の坑道軸4上にグラウト孔20を配置する基準点10を少なくとも1つ定めさせる。
【0041】
更に、入力部34を介して、坑道方位角度Aと坑道傾斜角度θdとを入力させて、基準点10を出発点とした掘削予定の坑道1bの掘削方向wを定めさせる。例えば、一例としては、真東方向を0°とし、そこから反時計回りを+側と設定し、更に、鉛直方向上側を+側と設定して、坑道1bの掘削方向wが、基準点10から水平面上において北方向から西方向へ60°傾きつつ、水平面に対して鉛直方向の上側に45°傾いている場合には、坑道方位角度Aを「+150°」と入力させ、坑道傾斜角度θdを「+45°」と入力させる。
【0042】
更に、入力部34を介して、岩盤2に配置するグラウト孔群21の個数を入力させる。そして、入力部34を介して、各グラウト孔群21のグラウト孔20の個数を入力させる。その後、各グラウト孔20に対する、第1の距離Lと第2の距離Rと位相角度θnとを入力させる。そして、基準点10が複数ある場合には、同様に、各基準点10に対して、坑道方位角度Aと、坑道傾斜角度θdと、グラウト孔群21の個数と、各グラウト孔群21のグラウト孔20の個数と、各グラウト孔20に対する、第1の距離Lと第2の距離Rと位相角度θnとを入力させる。
【0043】
次いで、ステップS2において、坑道及1及びグラウト孔20に関する設計データに基づいて配置シミュレーションを行う。
【0044】
具体的には、入力部34によって、シミュレーション部35に配置シミュレーションを開始させる操作が行われると、シミュレーション部35は、例えば、記憶部37から設計データを読み出して、坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置させる配置シミュレーションを行う。
【0045】
この際、シミュレーション部35は、坑道方位角度Aと坑道傾斜角度θdと第1の距離Lと第2の距離Rと位相角度θnとに基づいて、基準点10を出発点とするグラウト孔20の掘削ベクトルを前記(5)式によって算出する。更に、シミュレーション部35は、算出した掘削ベクトルに基づいて、前記(6)式によって、グラウト孔方位角度αを算出し、前記(7)式によって、グラウト孔傾斜角度βを算出し、前記(8)式によって、掘削深さcを算出する。そして、シミュレーション部35は、図5に示すような坑道1に、図6に示すように、この掘削ベクトルに基づいて坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置した配置シミュレーションの結果を生成する。
【0046】
次いで、ステップS3において、配置シミュレーションの結果を表示部36に表示する。
【0047】
以上のようにして、シミュレーション装置30は、坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置させる配置シミュレーションを行う。
【0048】
以上のように、シミュレーション装置30は、図6に示すように、坑道1にグラウト孔20を仮想的に配置した配置シミュレーションの結果を表示部36に表示することができる。したがって、表示部36に表示された配置シミュレーションの結果を確認することで、グラウト孔20の配置やグラウト材(セメントミルクなど)が充填された状況等を、視覚的、直感的にしかも正確に把握できるようになる。よって、グラウト工事の妥当性の検証が可能になり、しかも、妥当性の検討が容易になり、その結果、グラウト孔20の設計を容易且つ迅速に行うことができ、更に、グラウト工事の安全性を向上させることができる。
【0049】
なお、シミュレーション部35は、全ての基準点10のグラウト孔群21のグラウト孔20の各種データの入力が完了する毎に、配置シミュレーションを行い、配置シミュレーションの結果を表示部36に表示することに加え、1つの基準点10の全てのグラウト孔群21のグラウト孔20の各種データの入力が完了する毎、1つのグラウト孔群21の全てのグラウト孔20の各種データの入力が完了する毎、1つのグラウト孔20の各種データの入力が完了する毎に、配置シミュレーションを行い、配置シミュレーションの結果を表示部36に表示するようにしてもよい。更に、これらの設定を自由に切り換えることができるようにしてもよい。
【0050】
また、予め、坑道方位角度A、坑道傾斜角度θd、坑道1bの掘削方向w、経度、緯度、標高の座標等を含んだ、図5に示すような3次元又は2次元の坑道データを、記憶部37等に記憶させておき、入力部34を介して坑道1の坑道軸4が選択されると、その位置が自動的に基準点10として設定されるようにしてもよい。
【0051】
<3.グラウト工事の施工方法の説明>
次に、上述したようなシミュレーション装置30を使用したグラウト工事の施工方法について説明する。
【0052】
先ず、図8に示すように、ステップS10において、既に掘削済みの坑道1aの切羽3の手前にグラウト孔20を配置する基準点10を定める。
【0053】
次いで、ステップS11において、シミュレーション装置30によって、坑道方位角度Aと坑道傾斜角度θdと第1の距離Lと第2の距離Rと位相角度θnとに基づいて、この基準点10を出発点とする全てのグラウト孔20の掘削ベクトルを前記(5)式によって算出する。
【0054】
次いで、ステップS12において、シミュレーション装置30によって、算出した掘削ベクトルに基づいて、前記(6)式によって、グラウト孔方位角度αを算出し、前記(7)式によって、グラウト孔傾斜角度βを算出し、前記(8)式によって、掘削深さcを算出する。すなわち、各グラウト孔20に対して、坑道1bの掘削方向w基準ではなく、水平面基準での方位及び傾斜を算出する。
【0055】
例えば、坑道方位角度Aが−90°、坑道傾斜角度tanθdが、−0.17(θd=-9.65°)、第1の距離Lが30m、第2の距離Rが8m、位相角度θnが0°の場合には、掘削ベクトル(x、y、z)は(−8.000、−29.576、5.028)となり、グラウト孔方位角度αは−105.136°となり、グラウト孔傾斜角度βは−9.319°となり、掘削深さcは31.048mとなる。
【0056】
次いで、ステップS13において、グラウト孔方位角度α、グラウト孔傾斜角度β、掘削深さcに基づいて、各グラウト孔20を掘削する。例えば、試錐機を、先ず、水平面上において、基準点10から基準方位に対してグラウト孔方位角度αの向きに向け、次いで、水平面に対してグラウト孔傾斜角度βだけ傾斜させて配置させた後に、基準点10から掘削深さcだけ掘削する。
【0057】
この際、例えば、試錐機の方位付けは次のようにして行う。先ず、図9に示すように、坑道1a内に同一標高の水平面上に3本の測線40,41,42を張り、それぞれの測線40,41,42の位置を測量したうえで、これらの測線40,41,42の側壁等からの距離で、正確に試錐機の方位付けを行う。例えば、北から時計回りに300°の方位にグラウト孔20を掘削する場合には、測線40の右測点40aから1.91mの位置と、測線41の右測点41aから1.80mの位置と、測線42の右測点42aから1.71mの位置とを結ぶ方向に試錐機を向ける等して、試錐機の方位付けを行なう。
【0058】
次いで、ステップS14において、切削したグラウト孔20にグラウト材を充填して固化させる。その後、ステップS12〜S14の手順を繰り返して、この基準点10から配置される全てのグラウト孔20を同様に掘削して、グラウト材を充填して固化させる。
【0059】
次いで、ステップS15において、掘削方向wに沿って所定の深さまで掘削して、既に掘削済みの坑道1aと連続する新たな坑道1bを掘削する。その後、ステップS10〜S15の手順を繰り返して、掘削済みの坑道1の切羽3の手前に基準点10を設定して、掘削ベクトルから、グラウト孔方位角度α、グラウト孔傾斜角度β、掘削深さcを算出して、各グラウト孔20に対して、坑道1bの掘削方向w基準ではなく、水平面基準での方位及び傾斜を算出して、それらの水平面基準の値を用いてグラウト孔20を形成して、坑道1を形成していく。
【0060】
以上のようにして、シミュレーション装置30を使用してグラウト工事の施工を行う。
【0061】
以上のように、シミュレーション装置30を使用したグラウト工事の施工方法によれば、各グラウト孔20の掘削ベクトルを算出し、算出した掘削ベクトルから、グラウト孔方位角度α、グラウト孔傾斜角度β、掘削深さcとを算出することができる。すなわち、各グラウト孔20に対して、坑道1bの掘削方向w基準ではなく、水平面基準での方位及び傾斜を算出することができる。したがって、坑道1の傾斜に影響されずに、水準器さえあれば、各グラウト孔20の掘削方向を把握することができる。よって、坑道掘削予定の岩盤2に容易にグラウト孔20を掘削することができるので、容易且つ迅速にグラウト工事の施工を行うことができ、極めて大きな工業的価値を有する。
【0062】
なお、ステップS12において、更に、後記(9)式によって、基準点10からグラウト孔20の到達目標位置(最深部22)までの長さである掘削深さ(第1の掘削深さ)cのうちの、切羽3からグラウト孔20の到達目標位置(最深部22)までの長さである掘削深さ(第2の掘削深さ)c´を算出するようにしてもよい。
【0063】
c´=(1-S/(L+R*tan(θd)*sin(θn))*(x2+y2+z2)1/2 ・・・(9)
但し、
S:坑道1bの坑道軸4と当接する切羽3の当接点5において坑道軸4と直交する仮想切羽面6と基準点10との距離
【0064】
例えば、坑道方位角度Aが−90°、坑道傾斜角度tanθdが、−0.17(θd=-9.65)、第1の距離Lが30m、第2の距離Rが8m、位相角度θnが0°であって、切羽3の当接点5において坑道軸4と直交する仮想切羽面6と基準点10との距離Sが4.0mの場合には、掘削深さc´は26.909mとなる。
【0065】
このような場合、ステップS13において、試錐機を、水平面上において、基準点10から基準方位に対してグラウト孔方位角度αの向きに向け、水平面に対してグラウト孔傾斜角度βだけ傾斜させて配置させた後に、試錐機の先端が切羽3に当接してから掘削深さc´だけ掘削することで、各グラウト孔20を掘削することができる。したがって、掘削深さcを用いて掘削する場合と同様に、坑道1の傾斜に影響されずに、坑道掘削予定の岩盤2に容易にグラウト孔20を掘削することができるので、容易且つ迅速にグラウト工事の施工を行うことができ、極めて大きな工業的価値を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 坑道、2 岩盤、3 切羽、4 坑道軸、5 当接点、6 仮想切羽面、10 基準点、20 グラウト孔、21 グラウト孔群、22 最深部、30 シミュレーション装置、31 CPU、32 ROM、33 RAM、34 入力部、35 シミュレーション部、36 表示部、37 記憶部、40 測線、41 測線、42 測線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9