【課題】粉状又は粉粒状の物を管内で熱処理するに用いる炉、口管であって、付着防止の為に振動等を加える加熱装置において、加振部材の圧縮変形を抑制して炉心管に対する当接打撃を確保する方法の提供。
【解決手段】打撃振動発生器5の作動と関係なく加振部材4の打撃部4aが、加熱室2の内部空間2s内で高温(約1000℃近く)の環境下に晒されても、加振部材4の打撃部4aが保護部材6で覆われて加熱室2の内部空間2sと熱遮断されているため、打撃部4aが熱変形可能な温度領域まで上昇しない。これにより、加振部材4の全長が圧縮変形し難くなる。
前記保護部材は、前記炉壁に配置される第二スリーブであり、前記第二スリーブが、前記炉壁を貫通して前記加振部材が前記炉心管に向け往復動自在に挿通する通孔を有し、
前記打撃振動発生器は、前記打撃部が前記炉心管の前記外面から離れる退避位置において、前記打撃部を前記第二スリーブの前記通孔内に配置させるように位置設定されることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る熱処理装置Aは、
図1〜
図8に示すように、炉心管1の内部に供給された粉状体や粉粒体などからなる装入物Bを加熱処理する際に、炉心管1の内面1aに付着した装入物Bを、衝撃や振動などの打撃振動により落下させて排出するための打撃機構が備えられたものである。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る熱処理装置Aは、装入物Bを加熱処理して排出させる炉心管1と、炉心管1の外側に設けられる加熱室2と、加熱室2を囲むように設けられる炉壁3と、炉壁3側から加熱室2を通って炉心管1の外面1bに向け往復動自在に設けられる加振部材4と、加振部材4を往復動させる打撃振動発生器5と、加振部材4の外側に設けられる保護部材6と、を主要な構成要素として備えている。
【0010】
炉心管1は、その少なくとも内面1a又は全体を例えばカーボンやセラミックスの非金属又は金属などの耐熱性に優れた材料で形成し、後述する加熱室2からの伝導熱で所定温度に発熱する円筒管である。
炉心管1の軸方向一端側には、管状の原料導入口11から装入物Bを供給するための入口部1cが形成される。炉心管1の軸方向他端側には、装入物Bの出口部1dが形成されている。
さらに、炉心管1は、その軸線を中心として回転自在に支持され、管状の原料導入口11から入口部1cに供給された一定量の装入物Bを回転作用により出口部1dへ向けて流しながら、後述する加熱室2からの伝導熱で加熱して、出口部1dから原料排出口12に排出させるように構成されている。
【0011】
炉心管1の具体例として、
図1(a)(b)及び
図2(a)に示される例の場合には、設置床面Fに対し入口部1cよりも出口部1dの方が低くなるように適宜角度θで傾斜させて配置している。それにより、炉心管1の内面1aに沿って粉状又は粉粒状の装入物Bが重力で出口部1dへ向けスムーズに流れるようにしている。
また、炉心管1の軸方向他端側には、不活性ガスなどの気体を出口部1dに向けて供給するためのガス導入口13が設けられ、加熱処理で装入物Bのから発生した有害な排ガスと共に、炉心管1の軸方向一端側に設けられる排気口14から排気されるように構成されている。
すなわち、炉心管1の入口部1cと管状の原料導入口11と間には、排ガスを通すための排気ライン14aが形成されている。
【0012】
加熱室2は、炉心管1を加熱するため、炉心管1の外側に炉壁3で囲むように円筒状やそれに類似した筒状に形成される。
加熱室2の内部空間2sには、加熱ヒータなどの電気的な熱源やガスバーナーなどの電気以外の熱源などからなる加熱器(図示しない)が設けられる。
この加熱器の具体例として、加熱室2の内部空間2sにおいて粉体状の装入物Bを850〜1000℃程度の焼成温度で熱処理する場合には、内部空間2sを1000℃以上に加熱する必要がある。そのため、炉心管1は、1000℃以上に耐え得る材料で形成されている。
炉壁3は、耐火性に優れた断熱材などで構成され、その厚み方向へ貫通するように形成される貫通孔3aを有している。貫通孔3aの内側には、後述する加振部材4が炉心管1に向けて往復動自在に挿通するように配置されている。
【0013】
加振部材4は、炉壁3の貫通孔3aに対して炉心管1の外面1bに向け往復動自在に支持され、その先端には、炉心管1の外面1bと当接する打撃部4aを有している。
打撃部4aは、後述する打撃振動発生器5の作動でその先端面を炉心管1の外面1bに当接させることにより、炉心管1の全周に亘り打撃振動を付与するノッカーなどとも呼ばれるもので、特開2012−180955号公報に記載された「加振シャフト」に相当する。
加振部材4において少なくとも打撃部4aは、炉心管1を構成する耐熱材料よりも硬度が劣る耐熱材料で棒状などの形状に形成され、炉心管1の外面1bに対する打撃部4aの当接で炉心管1の外面1bが強い打撃を受けても、炉心管1の変形や破損を防止している。
加振部材4の具体例として、
図1(a)(b)及び
図2(a)に示される例の場合には、炉心管1の外面1bに向け複数の加振部材4が炉心管1の軸方向へ所定間隔毎に配設されている。そのうち加熱室2の内部空間2sとなる加熱域に向けて配設される加振部材4は、打撃部4aを有する先端部41と、後述する打撃振動発生器5に連係する末端部42と、がそれぞれ軸方向へ一体形成されている。
加熱域の外部に向けて配設される加振部材4は、特開2012−180955号公報に記載された「加振シャフト」及び「打撃振動発生器」と同様に構成してもよい。
さらに、
図1〜
図5,
図7及び
図8に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに対して加振部材4を炉心管1の外面1bに向け略水平方向へ往復動自在に支持している。
【0014】
そして、加熱室2の内部空間2sとなる加熱域に向けて配設される加振部材4には、
図5(a)(b)や
図7(a)(b)に示されるように、加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込むことも可能である。
冷却機構7は、加振部材4の周囲に形成される冷却室7aを有し、冷却室7aに冷却エアなどの冷媒7bを供給することで、加振部材4(打撃部4a)が冷却されるように構成することが好ましい。
冷却機構7の具体例として、
図5(a)(b)や
図7(a)(b)に示される例の場合には、加振部材4の周囲に設けられて加振部材4との間に冷却室7aを形成するブッシュ7cと、加振部材4の外周面に冷媒7bとの接触面積を確保するために形成される冷却フィン7dと、を有している。
ブッシュ7cは、炉壁3の貫通孔3aに沿って嵌入するなど、加熱室2の外部から着脱可能に取り付けられることで、点検や部品交換などのメンテナンス作業を容易にすることが好ましい。ブッシュ7cの周壁には、冷媒7bの供給口と排出口が開設され、加熱室2の外部や炉壁3の内部などから冷却室7aへ冷媒7bを供給すると同時に、冷却室7aから加熱室2の外部や炉壁3の内部などへ冷媒7bを排気している。それにより、冷却室7a内の温度が冷媒7bで下げられるため、打撃部4aを含めて加振部材4の全体が冷却される。
なお、その他の例として図示しないが、図示例以外の構造の冷却機構7を備えることも可能である。
【0015】
打撃振動発生器5は、加振部材4(末端部42)と連係して打撃部4aを炉壁3側から炉心管1の外面1bに向け往復動させる駆動源である。
打撃振動発生器5は、打撃部4aが炉心管1の外面1bから離れる退避位置P1と、打撃部4aが炉心管1の外面1bに当接して打撃振動を付与する打撃位置P2とに亘って、所定の作動ストロークで往復動させるように構成されている。
打撃振動発生器5による打撃部4aの位置設定は、
図1〜
図6に示されるように、打撃振動発生器5の作動と関係なく打撃部4aの退避位置P1を加熱室2の内部空間2sに配置する場合と、
図7,
図8に示されるように、打撃部4aの退避位置P1が炉壁3の炉壁3の貫通孔3aに配置され、打撃振動発生器5の作動で打撃部4aを加熱室2の内部空間2sに進入させる場合などがある。
打撃振動発生器5の具体例として、
図1〜
図5及び
図7に示される例の場合には、打撃振動発生器5がブラケット5aなどで炉壁3に取り付け固定され、圧縮空気の導入により加振部材4に向かう打撃振動が発生する打撃振動出力部材51を有している。打撃振動出力部材51の打撃振動が加振部材4(末端部42)に伝達されることで、打撃部4aを炉心管1の外面1bに向け前進させている。
ブラケット5aには、加振部材4を往復動自在に支持するガイド部材5bが設けられ、ガイド部材5bと加振部材4(末端部42)とに亘りスプリングなどの弾性体5cを介装することで、打撃部4aが炉心管1の外面1bから離れるように後退させている。
【0016】
また、打撃振動発生器5の他の例として、
図6及び
図8に示される例の場合には、打撃振動出力部材51に代えてハンマリング52を用いている。
ハンマリング52は、加振部材4(末端部42)に向け往復動自在に支持され、ハンマリング52を加振部材4(末端部42)に突き当てることにより、打撃部4aが炉心管1の外面1bに向け打撃位置P2まで前進移動するように構成されている。
なお、
図6(a)(b)や
図8(a)(b)に示される例では、ハンマリング52を円弧軌道で往復動させているが、それ以外の軌道でハンマリング52を往復動させることも可能である。
さらに、
図6(a)(b)に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに対して加振部材4が炉心管1の外面1bに向け斜め上方へ往復動するように支持され、加振部材4の自重によって打撃部4aが自由落下して退避位置P1まで後退するように配置している。
この場合には、打撃部4aの退避位置P1において加振部材4が炉壁3の貫通孔3aから脱落しないように、ストッパ5dを加振部材4に設けることが好ましい。
ストッパ5dを含めて加振部材4は、点検や部品交換などのメンテナンス作業を容易にするため、加熱室2の外部から容易に着脱可能となるように取り付けることが好ましい。
図示例においてストッパ5dは、貫通孔3aから加熱室2の外部空間に突出する加振部材4の末端部42に配置したスプリングなどの弾性体5cであるが、弾性体5c以外の他の部品でストッパ5dを構成することも可能である。
なお、打撃振動発生器5として、打撃振動出力部材51やハンマリング52に限らず、それ以外の異なる構造体で、加振部材4の打撃部4aを炉心管1の外面1bに向け前進させることも可能である。
【0017】
保護部材6は、炉心管1を構成する耐熱材料よりも硬度が優る耐熱材料で筒状に形成され、加振部材4において少なくとも打撃部4aの外周を覆うように配置されている。
詳しく説明すると、保護部材6は、打撃部4aの外周を覆うことで、打撃部4aが加熱室2の内部空間2sと熱遮断されて熱影響を受け難くしている。
保護部材6の具体例としては、
図1〜
図6に示されるような、加振部材4の打撃部4aと一体的に形成される第一スリーブ61と、
図7,
図8に示されるような、加振部材4の打撃部4aと別個に形成されて炉壁3に設置される第二スリーブ62などがある。
【0018】
このような本発明の実施形態に係る熱処理装置Aによると、
図1〜
図6に示されるように、打撃振動発生器5の不作動時においても加振部材4の打撃部4aが加熱室2の内部空間2sに配置される場合や、
図7,
図8に示されるように、打撃振動発生器5の作動で加振部材4の打撃部4aが加熱室2の内部空間2sに進入する場合など、打撃振動発生器5の作動と関係なく加振部材4の打撃部4aが、加熱室2の内部空間2s内で高温(約1000℃近く)の環境下に晒されても、加振部材4の打撃部4aが保護部材6で覆われて加熱室2の内部空間2sと熱遮断されている。そのため、打撃部4aが熱変形可能な温度領域まで上昇しない。これにより、加振部材4の全長が圧縮変形し難くなる。
したがって、炉心管1への当接打撃に伴う加振部材4の圧縮変形を抑制して炉心管1に対する当接打撃を確保することができる。
その結果、炉心管1に対する加振部材4の当接打撃を繰り返しても、加振部材4が軸方向へ大幅に潰れ変形して全長が短くならず、打撃振動発生器5の作動ストロークでも加振部材4の打撃部4aが炉心管1の外面1bまで届いて、炉心管1に十分な打撃振動を付与できる。
それにより、長期間に亘って炉心管1の内面1aに付着した装入物Bを確実に落下させることができ、加振部材4の交換時期を延長して稼働率の向上が図れる。
【0019】
さらに、
図5(a)(b)や
図7(a)(b)に示されるように、第二スリーブ62の内側に加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込むことが好ましい。
この場合には、加振部材4の打撃部4aが冷却機構7で冷却することにより、打撃部4aの温度上昇が確実に阻止されるため、炉心管1への当接打撃に伴う加振部材4の圧縮変形をより確実に抑制できる。
また、
図6(a)(b)に示されるように、炉壁3の貫通孔3aに対して加振部材4を炉心管1の外面1bに向け斜め上方へ往復動するように支持し、その上限位置が打撃位置P2となるように配置することが好ましい。
この場合には、加熱室2の内部空間2sにおいて最も低温な下方領域を、加振部材4の打撃部4aが往復動するため、炉心管1への当接打撃に伴う加振部材4の圧縮変形をより確実に抑制できる。
【0020】
ところで、加振部材4の打撃部4aを保護部材6で覆って加熱室2の内部空間2sと熱遮断する場合には、打撃振動発生器5の作動で打撃部4aを炉心管1の外面1bに当接させて打撃が付与される際に、保護部材6が炉心管1の外面1bに接触する可能性もある。
特に、保護部材6が炉心管1を構成する材料よりも硬度が優る耐熱材料で形成される場合には、炉心管1の外面1bに接触することで、炉心管1に部分的な変形や破損のおそれがある。
そのため、加振部材4の打撃部4aにおいて少なくとも炉心管1と対向する先端面のみを、炉心管1の外面1bに対して当接させるが、保護部材6の保護端面は炉心管1の外面1bと接触しないように設定する必要がある。
しかし、この場合、打撃部4aにおいて少なくとも炉心管1と対向する先端面は、保護部材6で完全に覆われず、加熱室2の内部空間2sに露出するため、高温(約1000℃近く)の環境下に晒されてしまい、熱変形可能な温度領域まで上昇する可能性がある。
次に、このような問題点などを解決するため、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
この実施例1は、
図1〜
図6に示すように、保護部材6が、加振部材4の打撃部4aと接触して覆うように形成した第一スリーブ61であり、打撃部4aは、保護部材6となる第一スリーブ61の保護端面61aから炉心管1に向け突出する変形可能部位4bを有するものである。
加振部材4の打撃部4aにおいて炉心管1と対向する先端部分には、変形可能部位4bが一体形成され、変形可能部位4bと連続して中間部位4cが一体形成されている。
変形可能部位4bは、打撃振動発生器5の作動で打撃部4aを炉心管1の外面1bに当接し打撃させる度に、軸方向へ徐々に潰れて、第一スリーブ61の保護端面61aを覆う円板状に拡径変形するように構成されている。
保護部材6となる第一スリーブ61は、加振部材4において少なくとも打撃部4aの外径と略同じ内径の円筒状に形成され、保護端面61aと連続する筒状部位61bを有している。
筒状部位61bは、打撃部4aの外周面に沿って二重成形するか、又は打撃部4aの外周面に接着剤などで一体的に固着することにより、打撃部4aにおいて少なくとも中間部位4cの外周面と密着している。
【0022】
特に、
図1〜
図6に示される例では、加振部材4の打撃部4aが打撃振動発生器5の不作動時においても加熱室2の内部空間2s内で高温(約1000℃近く)の環境下に晒され、この状態で変形可能部位4bを除く中間部位4cの外周面が、第一スリーブ61で覆われて加熱室2の内部空間2sと熱遮断されている。
詳しく説明すると、
図2(a)(b)(c)に示される例では、加振部材4において打撃部4aの変形可能部位4b及び中間部位4cを有する先端部41が、打撃振動発生器5の作動と関係なく打撃部4aの退避位置P1においても加熱室2の内部空間2sに配置されている。加振部材4において末端部42は、炉壁3の貫通孔3aを往復動自在に挿通し、加熱室2の外部で打撃振動発生器5と連係させている。
さらに、加振部材4の先端部41において打撃部4aの変形可能部位4b及び中間部位4cは、これらの外径を軸方向へ同じにした円柱状に一体形成されている。
第一スリーブ61の筒状部位61bは、その肉厚を軸方向へ同じとした円筒状に形成されている。
【0023】
また、加振部材4の打撃部4aにおいて変形可能部位4bと連続する中間部位4cは、変形可能部位4bからの熱影響を受け易く、熱変形可能な温度領域まで上昇する可能性がある。
そこで、
図3(a)(b)や
図4(a)(b)に示されるように、第一スリーブ61において保護端面61aと連続する筒状部位61bの肉厚を、保護端面61a側が厚くなるように形成することが好ましい。
図3(a)(b)に示される例では、打撃部4aの中間部位4cを、その外径が変形可能部位4bに向かって段々と小径となるように複数の円柱体を組み合わせた竹の子状に一体形成している。
第一スリーブ61の筒状部位61bは、その肉厚が保護端面61aに向かって段々と厚くなるように内周面を段状に形成している。
図示例の場合には、中間部位4cとして大小二段の円柱体を組み合わせた形状に形成しているが、大小三段以上の円柱体を組み合わせた形状に形成することも可能である。
図4(a)(b)に示される例では、打撃部4aの中間部位4cを、その外径が変形可能部位4bに向かって徐々に縮径する円錐台状に一体形成している。
第一スリーブ61の筒状部位61bは、その肉厚が保護端面61aに向かって徐々に厚くなるように内周面をテーパー状に傾斜させた形状に形成されている。
一方、
図5(a)(b)に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに沿って加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込んでいる。
さらに、
図6(a)(b)に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに沿って往復動自在に支持された加振部材4を、打撃振動発生器5となるハンマリング52で退避位置P1から打撃位置P2まで前進移動させている。
【0024】
このような本発明の実施例1に係る熱処理装置Aによると、打撃部4aにおいて炉心管1の外面1bに当接し打撃振動を付与する変形可能部位4bが、第一スリーブ61の保護端面61aから突出して高温(約1000℃近く)の環境下に晒されるため、打撃振動発生器5の作動で炉心管1の外面1bに当接し打撃させる度に、軸方向へ潰れ変形し易い。
しかし、この潰れに伴って変形可能部位4bが、第一スリーブ61の保護端面61aを覆うように拡径変形するため、第一スリーブ61の保護端面61aが炉心管1の外面1bに接触せず、加振部材4による炉心管1への打撃に関与しない。
したがって、炉心管1の構成材料よりも硬質な耐熱材料からなる第一スリーブ61で加振部材4の打撃部4aの熱遮断性能を向上させることができる。
その結果、第一スリーブ61の接触による炉心管1の変形や破損を防止しながら加振部材4の圧縮変形を確実に抑制できる。
これにより、炉心管1及び加振部材4の寿命を延長して稼働率の更なる向上が図れるという利点がある。
【0025】
特に、
図3(a)(b)や
図4(a)(b)に示されるように、第一スリーブ61において保護端面61aと連続する筒状部位61bの肉厚を、保護端面61a側が厚くなるように形成する場合には、
図2(b)(c)に示されるような筒状部位61bの肉厚が軸方向へ同じ円筒状のものに比べ、筒状部位61bにおいて保護端面61a側の断熱性能が他の部分よりも向上するため、中間部位4cが変形可能部位4bからの熱影響を受けたとしても、熱変形可能な温度領域まで上昇しない。
したがって、加振部材4において変形可能部位4bと連続する中間部位4cの圧縮変形を防止することができる。
その結果、加振部材4で炉心管1に対してより確実に打撃振動を付与することができるという利点がある。
【実施例2】
【0026】
この実施例2は、
図7,
図8に示すように、保護部材6が、炉壁3に配置される第二スリーブ62であり、第二スリーブ62が、炉壁3を貫通して加振部材4が炉心管1に向け往復動自在に挿通する通孔62aを有し、打撃振動発生器5は、打撃部4aが炉心管1の外面1bから離隔した退避位置P1において、打撃部4aを第二スリーブ62の通孔62a内に配置させるように位置設定される構成が、
図1〜
図6に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は
図1〜
図6に示した実施例1と同じものである。
保護部材6となる第二スリーブ62は、加振部材4において少なくとも打撃部4aの外径よりも大きな内径の通孔62aを有する円筒状に形成され、炉壁3の貫通孔3aに沿って嵌入するなど、加熱室2の外部から着脱可能に取り付けることで、点検や部品交換などのメンテナンス作業を容易にすることが好ましい。
【0027】
打撃振動発生器5による打撃部4aの位置設定として、
図7(a)(b)に示されるように、実施例1と同じ打撃振動出力部材51を用いる場合には、打撃部4aの作動ストロークが不足するため、打撃振動出力部材51と加振部材4(末端部42)との間に増幅機構8を設けて、打撃部4aの作動ストロークを増幅させることが好ましい。
図7(a)(b)に示される例では、増幅機構8がリンク機構であり、打撃振動出力部材51の打撃振動が増幅機構8となる揺動リンク81を介して加振部材4の末端部42に伝達される。
さらに、
図7(a)(b)に示される例では、第二スリーブ62の内側に加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込んでいる。
一方、
図8(a)(b)に示される例では、第二スリーブ62の通孔62aに沿って往復動自在に支持された加振部材4を、打撃振動発生器5となるハンマリング52で退避位置P1から打撃位置P2まで前進移動させている。
また、その他の例として図示しないが、増幅機構8としてリンク機構以外を用いたり、第二スリーブ62の内側に打撃部4aの冷却機構7を組み込まず、第二スリーブ62の通孔62aと加振部材4の外周面とが移動用の隙間を空けて対向するように配置したり、変更することも可能である。
【0028】
このような本発明の実施例2に係る熱処理装置Aによると、打撃振動発生器5の作動に関係なく打撃部4aの退避位置P1では、保護部材6となる第二スリーブ62の通孔62a内に加振部材4の打撃部4aを配置することにより、打撃部4aが保護部材6で覆われて加熱室2の内部空間2sと熱遮断されるため、打撃部4aを含めて加振部材4が全体的に熱変形可能な温度領域まで上昇しない。打撃振動発生器5の作動で、打撃部4aが炉心管1の外面1bに当接して打撃振動を付与する打撃位置P2まで往復動させる時は、加熱室2の内部空間2sに入って高温(約1000℃近く)の環境下に晒されるが、打撃部4aが加熱室2の内部空間2sに滞留する時間は、瞬間的で熱の影響を受け難いため、打撃部4aを含めて加振部材4が全体的に熱変形可能な温度領域まで上昇しない。
したがって、炉心管1への当接打撃に伴う加振部材4の圧縮変形を抑制して炉心管1に対する当接打撃を確保することができる。
その結果、実施例1と同様に、炉心管1に対する加振部材4の当接打撃を繰り返しても、加振部材4が軸方向へ大幅に潰れ変形して全長が短くならず、打撃振動発生器5の作動ストロークでも加振部材4の打撃部4aが炉心管1の外面1bまで届いて、炉心管1に十分な打撃振動を付与できる。
これにより、長期間に亘って炉心管1の内面1aに付着した装入物Bを確実に落下させることができ、加振部材4の交換時期を延長して稼働率の向上が図れるという利点がある。
【0029】
なお、
図1〜
図5,
図7及び
図8に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに対して加振部材4を炉心管1の外面1bに向け略水平方向へ往復動自在に支持し、
図6(a)(b)に示される例では、炉壁3の貫通孔3aに対して加振部材4を炉心管1の外面1bに向け斜め上方へ往復動するように支持したが、これに限定されず、
図1〜
図5,
図7及び
図8に示される例において、加振部材4の支持方向を斜め上方へ往復動するように変更したり、
図6(a)(b)に示される例において、加振部材4の支持方向を略水平方向へ往復動するように変更したりしてもよい。
また、
図5(a)(b)や
図7(a)(b)に加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込んだ例を示したが、これに限定されず、
図3(a)(b),
図4(a)(b),
図6(a)(b),
図8(a)(b)に示される例においても加振部材4(打撃部4a)の冷却機構7を組み込んでもよい。