【解決手段】チクソ性付与剤を配合した樹脂を発光素子上に噴霧して堆積させた後硬化させることにより、前記発光素子の光を外部に透過させる光透過部材の最外層を、表面に凹凸を生じさせて形成する発光装置の製造方法。
チクソ性付与剤を配合した樹脂を発光素子上に噴霧して堆積させた後硬化させることにより、前記発光素子の光を外部に透過させる光透過部材の最外層を、表面に凹凸を生じさせて形成する発光装置の製造方法。
前記発光装置は、前記発光素子の上方に接続した前記光透過部材と、前記発光素子の周囲を被覆する被覆部材と、前記発光素子の下方に接続し、少なくとも下面が前記被覆部材から露出された一対の外部接続端子と、を備える請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する発光装置及びその製造方法は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
<実施の形態1>
図1(a)は実施の形態1に係る発光装置100の概略上面図であり、
図1(b)はそのA−A断面における概略断面図である。
【0011】
図1(a)及び(b)に示すように、実施の形態1に係る発光装置100は、発光素子10と、光透過部材40と、を備えている。光透過部材40は、波長変換層20と最外層30を有している。波長変換層20は、樹脂21と蛍光物質25を含んでいる。最外層30は、樹脂31とチクソ性付与剤35を含んでいる。光透過部材40は、少なくとも発光素子10の光を外部に透過させ、本実施の形態では蛍光物質25の光も外部に透過させる。そして、最外層30の表面は、凹凸を有している。
【0012】
このように、最外層30の表面が凹凸を有することによって、発光装置100の最外層30とカバーテープ又は吸着ノズル(コレット)との接触面積を小さくすることができる。これにより、発光装置100のカバーテープへの貼り付き及び/若しくは実装時のリリース不良を抑えることができる。また、チクソ性付与剤35の配合によって、樹脂31の表面の粘着性(タック性)を低減することができ、それも発光装置100のカバーテープへの貼り付き及び/若しくは実装時のリリース不良の抑制に寄与する。
【0013】
なお、最外層30の表面の凹凸は、算術平均粗さRaが5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。この算術平均粗さRaは、JIS B0601に準ずるものとする。
【0014】
また、
図1(a)及び(b)に示すように、発光装置100は、被覆部材50と、導光部材55と、一対の外部接続端子60と、を更に備えている。光透過部材40は、発光素子10の上方に接続している。被覆部材50は、発光素子10の周囲を被覆している。一対の外部接続端子60は、発光素子10の下方に接続している。一対の外部接続端子60は、少なくとも下面が被覆部材50から露出されている。このような発光装置100は、主として、下面が実装面となり、実装時に、その反対側の上面、即ち最外層30の表面が吸着ノズル(コレット)によって吸着されるため、本実施の形態の構成が効果を奏しやすい。
【0015】
このような発光装置100は、例えば以下のようにして製造することができる。
図2(a)〜(e)は、実施の形態1に係る発光装置100の製造方法の一例を示す概略断面図である。発光装置100の製造方法は、チクソ性付与剤35を配合した樹脂31を発光素子10上に噴霧して堆積させた後硬化させることにより、最外層30を、表面に凹凸を生じさせて形成することを含む。これにより、上記のようなカバーテープへの貼り付き及び/若しくは実装時のリリース不良を抑えられる発光装置を比較的簡便に製造することができる。
【0016】
なお、ここでは、
図2(a)〜(d)のように、複数の発光装置100が連なった状態の発光装置の複合体を作製し、最後に、
図2(e)のように、発光装置の複合体を個々の発光装置100に分割する例を示す。
【0017】
まず、
図2(a)及び(b)は、発光素子10の上に波長変換層20を形成する工程を示す。具体的には、噴霧装置90を用いて、樹脂21と蛍光物質25を含むスラリー70を、発光素子10上に噴霧し、樹脂21を硬化させる。なお、スラリー70には、樹脂21と蛍光物質25のほか、揮発性の溶剤を含ませてもよい。
【0018】
このように、光透過部材40は、発光素子10と最外層30の間に、樹脂21と蛍光物質25を含む波長変換層20を有することが好ましい。これにより、最外層30を、波長変換層20の蛍光物質25を外気、外力、熱などから保護する層として機能させることができる。
【0019】
特に、本実施の形態のように、波長変換層20を、樹脂21と蛍光物質25を噴霧して堆積させた後、樹脂21を硬化させることにより形成する場合、蛍光物質25が波長変換層20の表面近傍に存在しやすいため、最外層30により蛍光物質25を保護する技術的意義が増大する。
【0020】
なお、この場合、波長変換層20の厚さは、特に限定されないが、下限としては、蛍光物質25の粒径及び必要含有量の観点から、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。また、上限としては、層の側面からの漏光を抑える観点から、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0021】
また、樹脂21と蛍光物質25を含むスラリー70の噴霧は、パルス式スプレー法で行うことが好ましい。これにより、波長変換層20を均質な層に形成しやすく、色度分布に斑の少ない発光が可能となる。
【0022】
このほか、波長変換層20は、蛍光物質25を含む樹脂21を発光素子10上に滴下(ポッティング)し、樹脂21を硬化させることにより形成してもよい。
【0023】
次に、
図2(c)及び(d)は、波長変換層20の上に最外層30を形成する工程を示す。具体的には、噴霧装置92を用いて、樹脂31とチクソ性付与剤35を含むスラリー80を、波長変換層20上に噴霧し、樹脂31を硬化させる。このとき、
図2(c)に示すように、樹脂31は、チクソ性の増大によって、噴霧された際の粒の形状を維持しやすくなっており、堆積した複数の樹脂31の粒の表面が最外層30の表面の凹凸として残るようになる。なお、スラリー80には、樹脂31とチクソ性付与剤35のほか、揮発性の溶剤を含ませてもよい。
【0024】
樹脂31は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ハイブリッドシリコーン樹脂のうちのいずれか1つであることが好ましい。これらのシリコーン系樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れる反面、表面の粘着性が比較的高いため、本実施の形態の構成が効果を奏しやすい。
【0025】
樹脂31とチクソ性付与剤35を含むスラリー80の噴霧は、パルス式スプレー法で行うことが好ましい。これにより、最外層30の表面の広範囲において凹凸を均一に形成しやすい。
【0026】
チクソ性付与剤35の配合量は、特に限定はされないが、樹脂31への好ましいチクソ性付与の観点から、1wt%以上30wt%以下であることが好ましく、3wt%以上20wt%以下であることがより好ましく、5wt%以上10wt%以下であることがよりいっそう好ましい。なお、「wt%」は、重量パーセントであり、その層の構成材料の全重量に対する各材料の重量の比率を表す。
【0027】
最外層30の厚さは、特に限定はされない。但し、最外層30の厚さの下限としては、例えば1μm以上が挙げられ、蛍光物質25の保護の観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、蛍光物質25の粒径より大きいことがよりいっそう好ましい。また、最外層30の厚さの上限としては、例えば50μm以下が挙げられ、層の側面からの漏光を抑える観点から、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
【0028】
チクソ性付与剤35の粒径は、特に限定はされないが、樹脂31への好ましいチクソ性付与の観点から、1nm以上1μm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における粒径は、一次粒子径を意味し、平均粒径(メジアン径D
50)により定義することができる。また、粒径は、レーザ回折・散乱法、画像解析法(走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM))、動的光散乱法、X線小角散乱法などにより測定することができる。
【0029】
チクソ性付与剤35は、シリカのナノ粒子であることが好ましい。これにより、チクソ性付与剤35による光損失が少なく、光の取り出し効率の低下を抑えることができる。なお、ナノ粒子とは、粒径が1nm以上100nm以下の粒子とする。
【0030】
最外層の樹脂31は、波長変換層の樹脂21と同種であることが好ましい。これにより、波長変換層20と最外層30の馴染みを良くでき、また屈折率差による光反射を抑えることができる。
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係る発光装置及びその製造方法における各構成要素について説明する。
【0032】
(発光装置100)
発光装置は、実施の形態1のようなチップ・サイズ・パッケージ(CSP;Chip Size Package)型のほか、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)等のパッケージ型、又はチップ・オン・ボード(COB;Chip On Board)型であってもよい。また、発光装置は、実施の形態1のような上面発光(トップビュー)型に限らず、主発光面に対する外部接続端子の配置関係によって、側面発光(サイドビュー)型にすることもできる。
【0033】
(発光素子10)
発光素子は、少なくとも半導体素子構造を備え、多くの場合に基板をさらに備える。発光素子は、例えば発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)チップが挙げられる。発光素子の上面視形状は、矩形、特に正方形状又は一方向に長い長方形状であることが好ましいが、その他の形状であってもよい。発光素子(主に基板)の側面は、上面に対して、垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜していてもよい。発光素子は、同一面側に正負(p,n)電極を有することが好ましいが、正/負電極を互いに反対の面に有する対向電極構造でもよい。1つの発光装置に搭載される発光素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の発光素子は、直列又は並列に接続することができる。半導体素子構造は、半導体層の積層体、即ち少なくともn型半導体層とp型半導体層を含み、また活性層をその間に介することが好ましい。半導体素子構造は、正負電極及び/又は絶縁膜を含んでもよい。正負電極は、金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル又はこれらの合金で構成することができる。絶縁膜は、珪素、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は窒化物で構成することができる。発光素子の発光波長は、半導体材料やその混晶比によって、紫外域から赤外域まで選択することができる。半導体材料としては、蛍光物質を効率良く励起できる短波長の光を発光可能な材料である、窒化物半導体(主として一般式In
xAl
yGa
1−x−yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される)を用いることが好ましい。発光素子の発光波長は、発光効率、並びに蛍光物質の励起及びその発光との混色関係等の観点から、400nm以上530nm以下が好ましく、420nm以上490nm以下がより好ましく、450nm以上475nm以下がよりいっそう好ましい。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。発光素子の基板は、主として半導体素子構造を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板であるが、結晶成長用基板から分離した半導体素子構造に接合させる接合用基板であってもよい。基板が透光性を有することで、フリップチップ実装を採用しやすく、また光の取り出し効率を高めやすい。基板の母材としては、サファイア、スピネル、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。なかでも、サファイアが好ましい。基板の厚さは、例えば0.02mm以上1mm以下であり、基板の強度や発光装置の厚さの観点において、0.05mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
【0034】
(光透過部材40)
光透過部材の発光素子の光及び/又は蛍光物質の光に対する透過率は、70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。光透過部材は、少なくとも最外層を含む2層以上で構成される。つまり、光透過部材は、波長変換層と最外層以外に1以上の層を含んでもよく、また波長変換層に替えて波長変換機能を実質的に有さない層を含んでもよい。なお、光透過部材の隣接する2層の境界は、観測される場合と観測されない場合がある。
【0035】
(波長変換層20)
波長変換層は、少なくとも樹脂と蛍光物質により構成される。
【0036】
(樹脂21)
波長変換層の樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。なかでも、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ハイブリッドシリコーン樹脂のうちのいずれか1つであることが好ましい。波長変換層の樹脂は、蛍光物質の粒子同士を結着させる結着剤として機能することができる。
【0037】
(蛍光物質25)
蛍光物質は、発光素子から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色光)を出射する発光装置とすることができる。蛍光物質は、以下に示す具体例のうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的な蛍光物質としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばY
3(Al,Ga)
5O
12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばLu
3(Al,Ga)
5O
12:Ce)、シリケート系蛍光体(例えば(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えばCa
8Mg(SiO
4)
4Cl
2:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi
6−zAl
zO
zN
8−z:Eu(0<Z<4.2))、窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN又はSCASN)系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu)、フッ化珪酸カリウム系蛍光体(例えばK
2SiF
6:Mn)などが挙げられる。このほか、蛍光物質は、量子ドットを含んでもよい。量子ドットは、粒径1nm以上100nm以下程度の粒子であり、粒径によって発光波長を変えることができる。量子ドットは、例えば、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化鉛、セレン化鉛、又はテルル化カドミウム・水銀などが挙げられる。
【0038】
(最外層30)
最外層の表面は、発光装置の外面の一部を構成する。最外層は、少なくとも樹脂とチクソ性付与剤により構成される。最外層は、蛍光物質を実質的に含まないことが好ましい。実質的にチクソ性付与剤が配合された樹脂のみで構成される最外層は、好ましい一例である。
【0039】
(樹脂31)
最外層の樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。シリコーン系の樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、フェニル−メチルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0040】
(チクソ性付与剤35)
チクソ性付与剤は、最外層の樹脂にチクソ性を付与する又は増大させる。チクソ性付与剤は、無機物でも有機物でもよい。具体的には、シリカ、ベントナイト、ステアリン酸アミド、ひまし油などを用いることができる。なかでも、透光性の観点から、シリカが好ましい。
【0041】
(被覆部材50)
被覆部材は、例えば「モールドアンダーフィル」などと呼ばれるもの、又は樹脂パッケージであってよい。被覆部材は、少なくとも樹脂の母材を含み、更にその母材中に白色顔料を配合することが好ましく、また任意で充填剤を配合してもよい。被覆部材の母材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビスマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。熱可塑性樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリカーボネート樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。白色顔料は、これらのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、白色顔料は、後述の充填剤とは異なるものとする。白色顔料の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。充填剤は、有機物でもよいが、熱膨張係数がより低い観点において、無機物を用いることが好ましい。充填剤は、シリカ、ガラス、ワラストナイト(珪酸カルシウム)、マイカ、タルク、チタン酸カリウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。充填剤は、これらのうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。また、強化剤として機能させる充填剤は、繊維状又は板状(鱗片状)が好ましい。
【0042】
(導光部材55)
導光部材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、並びにこれらの変性樹脂及びハイブリッド樹脂のうちの少なくとも1つを用いることができる。なかでも、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ハイブリッドシリコーン樹脂のうちのいずれか1つであることが好ましい。導光部材は、上述の蛍光物質を配合してもよい。また、導光部材は、省略してもよい。
【0043】
(外部接続端子60)
外部接続端子は、突起電極(バンプ又はピラー)でもよいし、リード電極(個片化されたリードフレーム)でもよく、また発光素子の正負電極を兼ねてもよい。外部接続端子は、金属又は合金の小片で構成することができる。具体的には、例えば、金、銀、銅、鉄、錫、白金、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、タングステン、及びはこれらの合金が挙げられる。なかでも、銅は、熱伝導性に優れ、比較的安価であるため、銅又は銅合金が特に好適である。また、金は、また化学的に安定であり表面酸化が少なく接合しやすい性質を有するため、金又は金合金も好ましい。外部接続端子は、半田接合性の観点から、表面に金又は銀などの被膜を有してもよい。
【0044】
(噴霧装置90,92)
噴霧装置は、各種スプレー装置を用いることができる。特に、パルス式スプレー装置が好ましい。パルス式スプレー装置は、空気圧による間欠吐出が可能であり、散布量を調整しやすいため、微小空間にも成膜でき、また均質な膜を形成しやすい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0046】
<実施例1>
実施例1の発光装置は、
図1(a)及び(b)に示す例の発光装置100の構造を有する、横幅1.7mm、縦幅1.7mm、厚さ0.28mmの直方体状の上面発光・CSP型のLED装置である。発光素子10は、サファイア基板と、窒化物半導体のn型層、活性層、p型層が順次積層された半導体素子構造と、を有し、青色(発光ピーク波長455nm)発光可能な、横幅1mm、縦幅1mm、厚さ0.15mmのLEDチップである。光透過部材40は、発光素子10の上方即ちサファイア基板に接続している。光透過部材40は、発光素子10の上面、被覆部材50の上面、導光部材55の上面に接する波長変換層20と、その波長変換層20上を被覆する最外層30と、の2層により構成されている。波長変換層20は、樹脂21としてフェニル−メチルシリコーン樹脂(硬化物)と、蛍光物質25としてYAG系蛍光体、LAG系蛍光体、SCASN系蛍光体と、を含む厚さ0.08mmの層である。最外層30は、樹脂31として樹脂21と同じフェニル−メチルシリコーン樹脂(硬化物)と、チクソ性付与剤35として日本アエロジル社製の粒径12nmのシリカの粒子と、を含む厚さ0.01mmの層である。チクソ性付与剤35の配合量は、9.1wt%である。被覆部材50は、発光素子10の側方においては導光部材55を介して発光素子10の周囲を被覆し、発光素子10の下方においては直接発光素子10を被覆している。被覆部材50は、酸化チタンを60wt%含有するフェニル−メチルシリコーン樹脂(硬化物)である。導光部材55は、発光素子10の側面に接し、発光素子10の周囲を被覆している。導光部材55は、被覆部材50と同じフェニル−メチルシリコーン樹脂(硬化物)である。一対の外部接続端子60は、発光素子10の下方に接続している。一対の外部接続端子60は其々、厚さ0.04mmの銅の母体の表面にニッケル/金の被膜が形成された小片であって、発光素子10の正負電極に接続している。一対の外部接続端子60は、下面が被覆部材50から露出されている。より詳細には、一対の外部接続端子60の下面と被覆部材50の下面は、実質的に同一面をなし、本発光装置の下面を構成している。
【0047】
本実施例1の発光装置は、以下のように、発光装置の複合体を作製し、その発光装置の複合体を分割することで得られる。まず、正負電極に一対の外部接続端子60の母体を各々接続した発光素子10を複数個、サファイア基板側を下向きにして、シート上に略等間隔に縦横に配列する。次に、導光部材55の材料を、各発光素子10の周囲を被覆するようにディスペンサで塗布し、オーブンで硬化させる。次に、被覆部材50を、全ての発光素子10を埋め込むように圧縮成形法により成形した後、研削して外部接続端子60を露出させる。次に、各発光素子10の一対の外部接続端子60の母体上にスパッタ装置でニッケル/金の被膜を成膜する。次に、シートを剥がし、発光素子10のサファイア基板側を上向きにして、発光素子10、被覆部材50、導光部材55の連続する上面に、噴霧装置90としてパルス式スプレー装置を用いて、樹脂21、蛍光物質25及び溶剤のn−ヘプタン(樹脂21:蛍光物質25:溶剤=10:15:25)を含むスラリー70を噴霧して、樹脂21をオーブンで仮硬化させることで波長変換層20を形成する。次に、波長変換層20の上面に、噴霧装置92としてパルス式スプレー装置を用いて、樹脂31、チクソ性付与剤35及び溶剤のn−ヘプタン(樹脂31:チクソ性付与剤35:溶剤=10:1:25)を含むスラリー80を噴霧して、樹脂31をオーブンで仮硬化させることで最外層30を形成する。その後、更にオーブンで樹脂21,31を本硬化させることで光透過部材40を完成させる。最後に、ダイシング装置で発光装置の複合体を縦横に切断し、個々の発光装置に分割する。
【0048】
<比較例1>
比較例1の発光装置は、最外層の樹脂31にチクソ性付与剤35を配合しないこと以外は、実施例1の発光装置と同様に作製する。
【0049】
図3(a)は実施例1の発光装置の最外層の上面の顕微鏡写真であり、
図3(b)は比較例1の発光装置の最外層の上面の顕微鏡写真である。
図3(a),(b)に示すように、比較例1の発光装置における最外層の上面は比較的平坦で艶があるのに対して、実施例1の発光装置における最外層の上面は細かい凹凸を生じていることがわかる。また、比較例1の発光装置の3つのサンプルにおける最外層の上面の算術平均粗さRaは3.02μm、3.76μm、4.01μmであるのに対して、実施例1の発光装置の3つのサンプルにおける最外層の上面の算術平均粗さRaは12.81μm、13.36μm、13.88μmである。なお、この算術平均粗さRaは、例えばキーエンス社製レーザ顕微鏡VK−9510で測定される。そして、実施例1の発光装置は、比較例1の発光装置に比べ、カバーテープへの貼り付き及び/若しくは実装時のリリース不良が抑えられている。