特開2016-225563(P2016-225563A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-225563(P2016-225563A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】太陽電池とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20161205BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   H01L31/06 400
   H01L31/04 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-113043(P2015-113043)
(22)【出願日】2015年6月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/CZTS薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】反保 衆志
(72)【発明者】
【氏名】キム シンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ガンミン
(72)【発明者】
【氏名】柴田 肇
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩司
(72)【発明者】
【氏名】仁木 栄
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA07
5F151CB12
5F151CB13
5F151CB14
5F151CB15
5F151CB24
5F151DA20
5F151FA02
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
【課題】CZTS系化合物からなる光吸収層の結晶状態を改善することにより太陽電池の高効率化を図る。
【解決手段】本発明の太陽電池の製造方法は、表面に裏側電極層が設けられた基板を準備するステップS1と、裏側電極層上にCu、Zn、Sn、及びSeを含むCZTS系層を形成するステップS2と、Geを含む雰囲気中でCZTS系層を加熱し溶融させて、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層を形成するステップS3と、光吸収層上にバッファ層を形成するステップS4と、バッファ層上に表側電極層を形成するステップS5と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の製造方法であって、
表面に裏側電極層が設けられた基板を準備するステップと、
前記裏側電極層上にCu、Zn、Sn、及びSeを含むCZTS系層を形成するステップと、
Geを含む雰囲気中で前記CZTS系層を加熱し溶融させて、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層を形成するステップと、
前記光吸収層上にバッファ層を形成するステップと、
前記バッファ層上に表側電極層を形成するステップと、を含む製造方法。
【請求項2】
前記CZTS系層は、(1)Znの一部を置換したMg、(2)SnまたはGeの一部を置換したSi、(3)Seの一部を置換したS、TeまたはOの中の少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記CZTS系化合物は、Cu2Zn(Sn、Ge)Se4で表される化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記CZTS系化合物は、Cu2(Mg、Zn)(Si、Ge、Sn)(S、Se)4で表される化合物を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Geを含む雰囲気は、SnとSeをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記光吸収層を形成するステップは、前記CZTS系層を450〜550℃の範囲の温度で加熱するステップを含む、請求項1または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記粒径は、前記光吸収層の膜厚以上の長さを含む、請求項1または5に記載の製造方法。
【請求項8】
表面に裏側電極層が設けられた基板と、
前記裏側電極層上に設けられた光吸収層であって、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層と、
前記光吸収層上のバッファ層と、
前記バッファ層上の表側電極層と、を備える太陽電池。
【請求項9】
前記CZTS系化合物は、Cu2Zn(Sn、Ge)Se4、またはCu2(Mg、Zn)(Si、Ge、Sn)(S、Se)4で表される化合物の少なくとも一方を含む、請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記粒径は、前記光吸収層の膜厚以上の長さを含む、請求項8に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、より具体的には、化合物半導体層、特にCZTS系層を含む太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CIGS系太陽電池は量産化に成功をおさめている。しかし、今後ますます拡大する太陽電池の需要に対しては、希少金属のInおよびGaを利用しているため、十分な対応(供給)は困難である。そこで、希少金属のInやGa等の13族元素を、ZnやSn等の安価な12族、14族の元素で置換したCZTS系太陽電池が注目を集め精力的に研究開発が進められている。
【0003】
CIGS系薄膜やCZTS系薄膜の製膜法としては、大きく分けてプリカーサ法と蒸着法がある。CIGS系薄膜作製においては蒸着法により最も高い変換効率が得られており、同手法ではCIGS系薄膜作製は蒸着法のみで完了し、その後の工程は必要としない。
【0004】
一方、蒸着法によるCZTS系薄膜においては、蒸着の後の熱処理は高品質化には必須の処理である。なお、プリカーサ法ではもちろん同様な熱処理は必要である。CZTS系薄膜から揮発性の高いSn系の化合物が離脱しやすいためである。したがって、CZTS系薄膜の作製においては、プリカーサ法、蒸着法の両手法ともにSn系化合物の脱離を抑制した熱処理が必須である。Sn系化合物の離脱を抑制するためにはSn系化合物を添加した雰囲気での熱処理により対応は可能であるが、熱処理後の薄膜の形態は太陽電池の性能として十分ではない。
【0005】
特許文献1では、Cu2Sn1-xGex3(1-y)Se3y化合物またはCu2Sn1-xGex3(1-y)Se3y化合物を光吸収層として含む太陽電池及びその製法を開示する。その製法では、少なくともSnを含むプリカーサをGe蒸気共存下で熱処理(例えば、450〜650℃)することが記載されている。
【0006】
特許文献2では、光吸収層の全部又は一部がCu2Ge1-xSnx3系化合物(0<x<1)からなる光電変換素子/太陽電池及びその製法を開示する。その製法では、Cu系プリカーサをS及びGeを含む蒸気下で熱処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−002270号公報
【特許文献2】特開2013−153139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載の発明では、太陽電池の効率が特に改善されている訳ではなく、さらなる改良、改善を施したCZTS系薄膜太陽電池が求められている。
本発明の目的は、CZTS系化合物からなる光吸収層の結晶状態を改善することにより太陽電池の高効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、太陽電池の製造方法を提供する。その製造方法は、表面に裏側電極層が設けられた基板を準備するステップと、裏側電極層上にCu、Zn、Sn、及びSeを含むCZTS系層を形成するステップと、Geを含む雰囲気中でCZTS系層を加熱し溶融させて、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層を形成するステップと、光吸収層上にバッファ層を形成するステップと、バッファ層上に表側電極層を形成するステップと、を含む。
【0010】
本発明の一態様の製造方法によれば、結晶状態(粒径、平坦性)が改善した光吸収層を得ることにより、その光吸収層を含む太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の一態様の製造方法では、Geを含む雰囲気は、SnとSeをさらに含む。
【0012】
本発明の一態様の製造方法によれば、Geに加えてSnとSeを含む雰囲気中でCZTS系層を加熱処理することにより、CZTS系層でのSnの減少を抑制しつつ結晶状態(粒径、平坦性)を改善させることが可能となる。
【0013】
本発明の一態様では、表面に裏側電極層が設けられた基板と、裏側電極層上に設けられた光吸収層であって、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層と、光吸収層上のバッファ層と、バッファ層上の表側電極層と、を備える太陽電池が提供される。
【0014】
本発明の一態様の太陽電池によれば、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物からなる光吸収層を含むことにより、高い変換効率を得ることができる。
【0015】
本発明の一態様の太陽電池では、Geを含む粒径が大きく平坦なCZTS系化合物の粒径は、光吸収層の膜厚以上の長さを含む。
【0016】
本発明の一態様の太陽電池によれば、光吸収層において、大粒径化による欠陥の低減、および表面の平坦化による光電変換により発生したキャリアの界面再結合の抑制により、太陽電池の変換効率をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態の太陽電池の製法のフローを示す図である。
図3】本発明の一実施形態の熱処理炉の構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態のGe割合と光学的禁制帯幅(Eop)の関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態のCZTS系化合物の断面図(顕微鏡写真)を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の太陽電池の特性を示す図である。
図7】本発明の一実施形態の太陽電池の特性を示す図である。
図8】本発明の一実施形態の太陽電池の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態の太陽電池の構成を示す図である。図1において、太陽電池100は、基板1と、基板1上の裏面電極2と、裏面電極2上の光吸収層3と、光吸収層3上のバッファ層4と、バッファ層4上の窓層5と、窓層5上の表面電極6を含むことができる。なお、窓層5上に選択的に例えばMgF2からなる反射防止層(図示なし)を設けることもできる。さらに、各層の間に、付加的な層(例えば、基板と下部電極の密着性を高めるための接着層、光散乱層等)を設けることもできる。
【0019】
基板1としては、ガラス、セラミックス、金属等の材料からなる基板を用いることができる。裏面電極2としては、例えば、Mo、MoSi2等の導電性材料を用いることができる。光吸収層3としては、CZTS系化合物を用いることができる。CZTS系化合物の詳細については後述する。バッファ層4としては、例えば、CdS、ZnS等の材料を用いることができる。窓層5としては、例えばZnO等を用いることができる。表面電極6としては、例えばAl等の導電性材料を用いることができる。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態の太陽電池の製法のフローを示す図である。ステップS1において、基板を準備する。具体的には、表面に裏面電極2が設けられた基板1を準備する。裏面電極2は、上述したMo等の導電性材料がスパッタリング法、真空蒸着法等の従来からある薄膜形成法を用いて基板1上に形成される。ステップS2において、Cu、Zn、Sn、及びSeを含むCZTS系層が裏面電極2上に形成される。CZTS系層としては、例えばCu2ZnSnSe4薄膜が多元蒸着法を用いて裏面電極2上に形成される。その場合の生成条件は、例えば次の通りである。

<CuZnSnSe薄膜の生成条件の例>
Cu(純度=6N):蒸発源温度=1100〜1150℃
Zn(純度=6N):蒸発源温度=350〜400℃
Sn(順度=6N):蒸発源温度=1150〜1200℃
Se(順度=6N):蒸発源温度=150〜200℃
基板温度 :150〜400℃
【0021】
多元蒸着法以外の方法を利用することも可能である。例えば、化学輸送堆積法、有機金属気相堆積法、反応性プラズマ堆積法、スパッタ堆積法、イオン化堆積法、液相成長法、パルスレーザ堆積法、ゾルゲル堆積法、気相反応法等を用いてCZTS系層を形成することもできる。なお、ここで形成されるCZTS系層は、後工程の熱処理の対象となるいわゆるプリカーサ(反応前駆体)となる。
【0022】
上記の例では、薄膜の組成をCu2Zn(Sn、Ge)Se4と表記したが、各元素の組成比Cu/(Zn+(Sn+Ge))、Zn/(Sn+Ge)、Cu/(Sn+Ge)およびSe/全元素はそれぞれ、0.7〜1.0、0.9〜1.4、1.6〜2.0、および0.95〜1.05の範囲が利用可能である。その中でも特に望ましい組成比としては、例えば、Cu/(Zn+(Sn+Ge))、Zn/(Sn+Ge)、Cu/(Sn+Ge)およびSe/全元素がそれぞれ、0.85、1.0、1.8、および1.0付近が挙げられる。さらに本発明の一実施形態としては、Znの一部をMgで代替、Sn、Geの一部をSiで代替、さらにSeの一部をO、S、もしくはTeのカルコゲン元素でそれぞれ代替することも可能である。
【0023】
ステップS3において、裏面電極2上に形成したCZTS系層を熱処理してCZTS系化合物を形成する。熱処理はGeを含む雰囲気中で行うことができる。図3は、本発明の一実施形態の熱処理炉の構成を示す図である。図3は石英管状炉の一例である。石英管状炉50は、2つの加熱ゾーン1、2に分けられ、各々の加熱ゾーンの温度がヒーター14、13によって独立して制御できるようになっている。加熱ゾーン1の石英管10中に、加熱対象となるCZTS系層が形成された基板12が置かれる。加熱ゾーン2の石英管10中に、雰囲気供給原料11が置かれる。キャリアガスがポンプによって図3の矢印に沿って、すなわち、加熱ゾーン2から1に向かって流れ、加熱ゾーン2で発生した雰囲気が加熱ゾーン1に送られるようになっている。
【0024】
図3の石英管状炉の例における熱処理条件は、一例として以下のように設定することができる。
<熱処理条件の例>
処理温度(ゾーン1):450℃〜530℃
供給温度(ゾーン2):300℃〜600℃
処理圧力 :10Pa〜1000Pa
キャリアガス :窒素、またはアルゴン
【0025】
Geを含む雰囲気は、雰囲気供給原料11として、例えばSnSe2(固体)、GeSe2(固体)およびSe(固体)を用いることができる。代替例としては、Ge源として、例えばGeSe(固体)、GeS2(固体)、あるいはGeS(固体)を用いることもできる。GeH4(ガス)としてGeを炉内に供給することもできる。Sn源として、SnSe(固体)、SnS2(固体)、SnS(固体)、あるいはSnH4(ガス)を用いることができる。カルコゲン元素源として、S(固体)、H2Se(ガス)、H2S(ガス)、H2O(ガス)、H2Te(ガス)、及びO2(ガス)の中からの選択した1つあるいは2以上の組み合わせも可能である。
【0026】
Geを含む雰囲気で熱処理を行うことにより、薄膜中にはGeが取り込まれ(Snの一部を置換)混晶化が進む。Geの供給量を変化させ、Geの取り込み量を制御することにより禁制帯幅が制御できる。図4に本発明の一実施形態のGe割合と光学的禁制帯幅(Eop)の関係を示す。図4の破線15として示されるように、Ge割合の増加に伴って光学的禁制帯幅(Eop)を大きくする制御が可能である。ここで、Ge割合とは全ての14族元素中のGe原子の割合、Ge/(Ge+Sn)を意味する。
【0027】
図2のステップS4において、熱処理により形成されたCZTS系化合物上にバッファ層4を形成する。バッファ層4としては、例えば、CdSを溶液成長法(CBD法)により形成し、あるいはZnSを蒸着法により形成することができる。次のステップS5において、バッファ層4上に窓層5を形成した後、表面電極6を形成する。窓層5としては、例えば、ZnOをスパッタリング法により形成することができる。表面電極6としては、例えば、Alをマスクを用いた蒸着法によりくし型電極として形成することができる。
【実施例】
【0028】
上述した図2の太陽電池の製法フローを用いて、図1の構成を有する太陽電池を製作した。太陽電池の製作には、基板1として裏面電極2のMoを800nm堆積した青板ガラスを用い、上記した処理(図2のステップS2、S3)により光吸収層3を形成した。熱処理後には、光吸収層3上に70nmのCdSのバッファ層、50nmの無添加のZnO、300nmのAl添加のZnOからなる窓層を順次堆積させた。また、表面電極としてはAlを形成した。
【0029】
熱処理雰囲気は、加熱ゾーン2に導入する原料により制御した。プリカーサ(反応前駆体)としてはGeを含まないCu−Zn−Sn−Seを用意して熱処理を行った。図5に本製作下において得られた本発明の一実施形態のCZTS系化合物の断面図(顕微鏡写真)を示す。図5(a)に、加熱ゾーン2にSnSe2およびSeを導入し処理を行った場合の表面形態を示す。同図からSnSe2およびSeで処理した場合には粒径が膜厚に比べて小さく、表面状態も凹凸が激しいことが分かる。
【0030】
一方、加熱ゾーン2にGeSe2およびSeを導入して熱処理を行った場合には、図5(b)に示すとおり、粒径が膜厚と同程度かそれ以上であり、表面も非常に平坦であるものが得られる。これは、500℃以上でGeSe2に近い組成領域で液相が存在するためであり、この液相により(液層の下で)結晶粒の肥大化および平坦化が実現したことを示している。ただし、GeSe2およびSeによる熱処理を行った場合には、Sn組成の減少(特に表面での)が顕著なため、同時にSnSe2を加えたほうが組成の制御の観点からは望ましい。そこで、加熱ゾーン2においてSnSe2、SeにGeSe2を加えた雰囲気で処理した場合には、図5(c)に示すとおり、(b)の場合と同様に、大粒径かつ平坦な表面形態を有する薄膜を得ることができた。つまり、本発明の一実施例によるGeを含む雰囲気を用いることにより大粒径かつ平坦な光吸収層を得ることができた。
【0031】
本発明により作製したGeを含むCuZn(Sn、Ge)Se4薄膜を用いて作製した太陽電池の特性を以下に例示する。図6に作製した太陽電池の電流(J)電圧(V)特性を示す。図7図8に作製した太陽電池の各種特性値を示す。図7に示す通り、変換効率Effの高い(10.03%)太陽電池を作製することができた。なお、図7の例は、図3の加熱ゾーン2においてSnSe、SeにGeSeを加えた雰囲気で処理した場合(図5(c)に相当)であって、Ge割合は約0.4である。この場合、図4から光学的禁制帯幅(Eop)は約1.2eVである。また、図7に示す通り、開放電圧Vocは0.543V、短絡電流密度Jscは29.5mA/cm-2、曲線因子(FF)は62.7%といずれも良好な値を示している。特に、図7の右端のバンドギャップと開放電圧の差分(Eg/q―Voc)は0.647Vと小さな値となっている。これは光吸収層をなすCZTS系化合物層の大粒径化による欠陥の低減、および平坦な表面による界面再結合の抑制によるものである。
【0032】
図8は、図7の特性の比較例として、図3の加熱ゾーン2にSnSe2およびSeを導入し処理を行った場合(a)と、加熱ゾーン2にGeSe2およびSeを導入して熱処理を行った場合(b)とにおける太陽電池としての特性を示している。Geを含む雰囲気で熱処理した(b)の方が、Geを加えない(a)の場合に比べて、変換効率Eff、開放電圧Voc、短絡電流密度Jsc及び曲線因子(FF)のいずれにおいても改善していることがわかる。ただし、図8(b)の場合の各特性値は、いずれも図7の場合の特性値よりも小さな値となっており、太陽電池としては図7の場合、すなわちSnSe2、SeにGeSe2を加えた雰囲気で熱処理した場合が最も特性が良くなることが確認された。
【0033】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明をした。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。さらに、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の太陽電池の構成/製法は、太陽電池以外の他の光素子(光センサ、イメージセンサ等)として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:基板
2:裏面電極
3:光吸収層
4:バッファ層
5:窓層
6:表面電極
10:石英管
11:雰囲気供給原料
12:CZTS系層が形成された基板
13、14:ヒーター
50:石英管状炉
100:太陽電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8