【解決手段】密閉型のドラム缶(2)を気密なチャンバ(16)内に収容し、該ドラム缶の気密性を検査する方法であって、この気密検査方法は、前記ドラム缶内及び前記チャンバ内を同時に排気して真空引きする真空引き工程(ステップS1)と、前記真空引き工程後に、前記ドラム缶の地板(8)及び天板(10)を押圧保持する押圧工程(ステップS4)と、前記押圧工程後に、前記ドラム缶内にヘリウムガスを大気圧以上になるまで封入する高圧封入工程(ステップS7)と、前記高圧封入工程後に、前記ドラム缶から前記チャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する微小漏れ検査工程(ステップS8)とを含む。
前記押圧工程後であって前記高圧封入工程前に、前記ドラム缶内にヘリウムガスを前記第1設定圧力以上で且つ大気圧未満となる第2設定圧力になるまで封入する中圧封入工程と、
前記中圧封入工程後であって前記高圧封入工程に、前記ドラム缶から前記チャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する中漏れ検査工程と
を更に含む、請求項2に記載の密閉型ドラム缶の気密検査方法。
前記押圧工程では、前記チャンバ内において前記地板及び前記天板を押圧保持し、前記小圧封入工程後における前記ドラム缶の前記天板及び前記地板の膨出変形を抑制することにより、前記下側及び上側チャイムの形状を保持し、前記膨出変形に起因した前記下側及び上側チャイムからのヘリウムガスの漏洩を防止する、請求項2又は3に記載の密閉型ドラム缶の気密検査方法。
前記押圧機構は、前記チャンバ内において前記地板及び前記天板を押圧保持する際、前記地板及び前記天板の少なくとも何れか一方に当接して前記チャンバ内に押圧部を形成する弾性体を備え、
前記弾性体は、前記地板及び前記天板の少なくとも何れか一方の近傍から漏洩し、前記押圧部に滞留するヘリウムガスを前記チャンバ内に逃がして拡散させる逃がし部を有する、請求項5に記載の密閉型ドラム缶の気密検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、密閉型のドラム缶は、円筒状をなした胴体と、前記胴体の下端開口を下側チャイムの形成により閉塞する地板と、前記胴体の上端開口を上側チャイムの形成により閉塞する天板とを備えている。下側及び上側チャイムは、前記胴体の下端縁と前記地板の外周縁、及び前記胴体の上端縁と前記天板の外周縁をそれぞれ巻き締めにより相互に結合、或いは巻き締め後に溶接により接合することにより形成される。
【0005】
また、従来のドラム缶の気密検査には、いわゆる水没試験を行うのが一般的である。水没試験では、密閉した空のドラム缶を所定時間に亘って水没させ、水泡が発生するか否かでドラム缶の気密性を検査する。従って、気密検査後のドラム缶に別の試験を行う場合、ドラム缶が乾くまで待機する必要があるため、試験に時間が掛かるとともに、ドラム缶の漏れレベルを段階的に且つ高精度に判定することができなかった。
【0006】
そこで、特許文献1において、被試験体を上記密閉型ドラム缶とした場合、高圧ヘリウムガスを導入する高圧ラインを選択することにより、ドラム缶からのヘリウムガスの微小漏れを短時間で検出可能のように思われる。しかし、実際は真空のチャンバ内に収容したドラム缶に高圧の、特に大気圧以上のヘリウムガスを封入すると、ドラム缶の天板及び地板が膨出変形し、ひいては下側及び上側チャイムの巻き締めが解かれ、或いは下側及び上側チャイムの溶接部が破断したりすることにより、下側及び上側チャイムからヘリウムガスが漏れるおそれがある。従って、ドラム缶の微小漏れ(滲み漏れ)レベルの気密検査を高精度に行うことができない。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度な気密検査を行うことができる密閉型ドラム缶の気密検査方法及びそれに用いる気密検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の密閉型ドラム缶の気密検査方法は、密閉型のドラム缶を気密なチャンバ内に収容し、該ドラム缶の気密性を検査する方法であって、ドラム缶は、円筒状をなした胴体と、胴体の下端開口を下側チャイムの形成により閉塞する地板と、胴体の上端開口を上側チャイムの形成により閉塞する天板とを備え、ドラム缶内及びチャンバ内を同時に排気して真空引きする真空引き工程と、真空引き工程後に、地板及び天板を押圧保持する押圧工程と、押圧工程後に、ドラム缶内にヘリウムガスを大気圧以上になるまで封入する高圧封入工程と、高圧封入工程後に、ドラム缶からチャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する微小漏れ検査工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、気密検査方法は、真空引き工程後であって押圧工程前に、ドラム缶内にヘリウムガスを大気圧未満となる第1設定圧力まで封入する小圧封入工程と、小圧封入工程後であって押圧工程前に、ドラム缶からチャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する大漏れ検査工程とを更に含む。
好ましくは、気密検査方法は、押圧工程後であって高圧封入工程前に、ドラム缶内にヘリウムガスを第1設定圧力以上で且つ大気圧未満となる第2設定圧力になるまで封入する中圧封入工程と、中圧封入工程後であって高圧封入工程に、ドラム缶からチャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する中漏れ検査工程とを更に含む。
【0010】
好ましくは、押圧工程では、チャンバ内において地板及び天板を押圧保持し、小圧封入工程後におけるドラム缶の天板及び地板の膨出変形を抑制することにより、下側及び上側チャイムの形状を保持し、膨出変形に起因した下側及び上側チャイムからのヘリウムガスの漏洩を防止する。
一方、本発明の密閉型ドラム缶の気密検査装置は、密閉型のドラム缶の気密性を検査する装置であって、ドラム缶は、円筒状をなした胴体と、胴体の下端開口を下側チャイムの形成により閉塞する地板と、胴体の上端開口を上側チャイムの形成により閉塞する天板とを備え、ドラム缶を気密に収容するチャンバと、ドラム缶内及びチャンバ内を同時に排気して真空引きする真空引きポンプと、チャンバ内において地板及び天板を押圧保持する押圧機構と、ドラム缶内にヘリウムガスを大気圧以上になるまで封入可能なヘリウムガス供給ユニットと、チャンバ内のドラム缶外に設けられ、ドラム缶からチャンバ内へのヘリウムガスの漏れ量を測定するヘリウムリークディテクタと、ヘリウムリークディテクタで測定されたヘリウムガスの漏れ量に基づいて、ドラム缶からチャンバ内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する制御ユニットとを備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、押圧機構は、チャンバ内において地板及び天板を押圧保持する際、地板及び天板の少なくとも何れか一方に当接してチャンバ内に押圧部を形成する弾性体を備え、弾性体は、地板及び天板の少なくとも何れか一方の近傍から漏洩し、押圧部に滞留するヘリウムガスをチャンバ内に逃がして拡散させる逃がし部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密閉型ドラム缶の気密検査方法及びそれに用いる気密検査装置によれば、ドラム缶内及びチャンバ内を同時に排気して真空引きした後に、チャンバ内において地板及び天板を押圧保持することにより、ドラム缶の天板及び地板の膨出変形を抑制することができるため、ドラム缶の気密検査において下側及び上側チャイムの形状を保持することができる。従って、ドラム缶内に大気圧以上のヘリウムガスを封入しても、上記膨出変形に起因した下側及び上側チャイムからのヘリウムガスの漏洩を防止することができ、ドラム缶の微小漏れ(滲み漏れ)レベルの気密検査を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は密閉型ドラム缶2とその気密検査装置4を示す。ドラム缶2は、円筒状をなした中空の胴体6と、この胴体6の下端開口を閉塞する円形の地板8と、上端開口を閉塞する円形の天板10とを備えている。
図2に示すように、胴体6の下端縁と地板8の外周縁とは、充填剤を介在させた状態で巻締機による巻締めにより、
図2の場合には胴体6の下端縁と地板8の外周縁とにより5重巻の形態を形成して相互に結合され、下側チャイム12が形成されている。また、胴体6の上端縁と天板10の外周縁とも充填剤を介在させた状態で巻締機による巻締めにより相互に結合され、下側チャイム12と同様の上側チャイム14が形成されている。
【0015】
また、
図3に示すように、胴体6の下端縁と地板8の外周縁とにより7重巻の形態を形成して巻き締めし、下側及び上側チャイム12、14を形成することもある。
一方、
図4に示すように、
図2に示す5重巻の巻き締め形態を形成した後に下側及び上側チャイム12、14と胴体6の外周面とを溶接して接合することにより溶接部15を形成しても良い。
また、
図5に示すように、
図3に示す7重巻の巻き締め形態を形成した後に溶接部15を形成することもある。
【0016】
装置4は、チャンバ16、ドラム缶用ポンプ(真空引きポンプ)18、チャンバ用ポンプ(真空引きポンプ)20、押圧機構22、ヘリウムガス供給ユニット24、ヘリウムリークディテクタ26、制御ユニット28から概略構成されている。
チャンバ16は、ドラム缶2を気密に収容するための収容庫であり、上壁16a、側壁16b、底壁16c、及び扉16dを有している。扉16dを開閉することにより、チャンバ16内にドラム缶2を出し入れすることができる。
【0017】
チャンバ16の側壁16bには、チャンバ接続ポート30とドラム缶接続ポート32とが設けられている。チャンバ接続ポート30には、チャンバ16内とチャンバ用ポンプ20とを接続する配管が気密に挿通され、これよりチャンバ排気ライン34が形成される。
一方、ドラム缶接続ポート32には、ドラム缶2とドラム缶用ポンプ18とを接続する配管が気密に挿通され、これよりドラム缶排気ライン36が形成される。また、ドラム缶接続ポート32には、ドラム缶2とヘリウムガス供給ユニット24とを接続する配管が気密に挿通され、これよりヘリウムガス供給ライン38が形成される。
【0018】
ドラム缶排気ライン36及びヘリウムガス供給ライン38を構成するチャンバ16内の配管は、いわゆるフレキシブル配管であり、チャンバ16内でのドラム缶2の若干の上下移動を許容する長さ及び柔軟性を有している。
ドラム缶排気ライン36及びヘリウムガス供給ライン38のチャンバ16内における配管の末端は、連結器40に気密に接続され、連結器40はドラム缶2の天板10に設けられた注入口金42に気密に嵌合されている。
【0019】
ドラム缶用ポンプ18は、真空引き可能な排気ポンプであって、ドラム缶用ポンプ18を作動させることにより、ドラム缶排気ライン36を介してドラム缶2内を排気することができ、また、ドラム缶2内を真空引きして中真空以下まで減圧することができる。チャンバ用ポンプ20もドラム缶用ポンプ18と同様の真空引き可能な排気ポンプであり、チャンバ用ポンプ20を作動させることにより、チャンバ排気ライン34を介してチャンバ16内を排気することができ、また、ドラム缶2内を真空引きして中真空以下まで減圧することができる。
【0020】
押圧機構22は、機構本体44、台座46、及び複数のロッド48から概略構成された昇降機である。機構本体44は、チャンバ16の下方に設けられ、機構本体44の内部には何れも図示しないクランク機構や、モータなどの駆動部が配置されている。
一方、台座46はチャンバ16内に位置付けられている。機構本体44と台座46とは上下方向に延びる各ロッド48によりチャンバ16の底壁16cを隔てて連結されている。各ロッド48はチャンバ16内の気密性を保持しながら上下移動可能に底壁16cに挿通されている。
【0021】
押圧機構22は、更に下側パッド50及び上側パッド52を備えている。下側パッド50は、樹脂等の弾性体から形成され、台座46の上面に固定されている。ドラム缶2は下側パッド50を介して台座に載置される。下側パッド50は地板8よりも小さな外形寸法を有する略円柱形状(真円柱形状を含む)をなし、下側パッド50の外周縁が下側チャイム12に接触しないように配置されている。
一方、上側パッド52は、下側パッド50と同様の材質から形成され、ドラム缶2の天板10に載置されている。上側パッド52は天板10よりも小さな外形寸法を有する略円柱形状(真円柱形状を含む)をなし、上側パッド52の外周縁が上側チャイム14に接触しないように配置されている。
【0022】
ヘリウムガス供給ユニット24は、ヘリウムガス供給ライン38介してドラム缶2内に大気圧以上になるまでヘリウムガスを段階的に供給することができるように構成されている。
ヘリウムリークディテクタ26は、チャンバ16内のドラム缶2外に設けられ、ドラム缶2からチャンバ16内へのヘリウムガスの漏れ量を高精度に測定できるように構成されている。
【0023】
制御ユニット28には、ドラム缶用ポンプ18、チャンバ用ポンプ20、押圧機構22、ヘリウムガス供給ユニット24の各駆動部、及びヘリウムリークディテクタ26の信号出力部が電気的に接続されている。制御ユニット28からの指令により、押圧機構22が作動されると、各ロッド48はチャンバ16内の気密性を保持しながら上下移動可能であり、これに伴い台座46、ひいてはドラム缶2も上下移動可能である。
【0024】
詳しくは
図3に示すように、押圧機構22の作動によりドラム缶2が
図1の状態から上方向に移動されると、台座46が底壁16cから離間するとともに、上側パッド52がチャンバ16の上壁16aに当接し、押圧されて、上側パッド52による押圧部53が形成される。この際、上側パッド52は自身の弾性力によってドラム缶2の天板10をチャンバ16内において
図3の矢印で示すA方向、すなわち下方向に押圧する。一方、下側パッド50は台座46に押し上げられてドラム缶2の地板8をチャンバ16内において
図3の矢印で示すB方向、すなわち上方向に押圧している。
【0025】
下側パッド50によって地板8に作用する押圧力、及び上側パッド52によって天板10に作用する押圧力は、これらの押圧力によって地板8及び天板10が変形しない程度の所定の大きさに予め設定されている。
図4に示すように、上側パッド52の上面52aには、上側パッド52の略円柱形状(真円柱形状を含む)の高さ方向に貫通したガス抜き孔54が上面52aの略同心円となる位置に4つ開口されている。
【0026】
各ガス抜き孔54の周囲には、それぞれ有底のザグリ穴56が加工されている。また、上面52aの中央には有底穴58が加工されている。更に、上側パッド52には、その外周縁を上側パッド52の高さ方向全域に亘って内方に切り欠いた切り欠き60が加工されている。切り欠き60は、上側パッド52を天板10に載置したとき、上側パッド52が注入口金42、及び注入口金42に嵌合された連結器40に干渉せず、ひいては連結器40に接続されたドラム缶排気ライン36及びヘリウムガス供給ライン38に干渉しない位置に形成されている。
【0027】
また、上面52aには、各ザグリ穴56及び切り欠き60を環状に連通する環状溝62が加工されている。また、上面52aには、切り欠き60から有底穴58、環状溝62を経て上側パッド52の外周縁に開口する直線溝64が加工されている。
図3に示すように、上側パッド52によって天板10を押圧中に、ドラム缶2内に封入されたヘリウムガスが天板10近傍から漏れた場合、押圧部53に形成された上側パッド52の上面52aと上壁16aとの隙間に、ヘリウムガスが溜まる可能性がある。チャンバ16内の限られた領域にヘリウムガスが滞留すると、ヘリウムリークディテクタ26によるヘリウムガスの検出を高精度に行えない。
【0028】
しかし、上述した加工を上側パッド52の上面52aに施すことにより、上面52aと上壁16aとの隙間に滞留したヘリウムガスを各ガス抜き孔54、各ザグリ穴56、環状溝62、有底穴58及び直線溝64を順に経て上記隙間から逃がし、チャンバ16内に拡散させることができる。すなわち、上記各ガス抜き孔54、各ザグリ穴56、環状溝62、有底穴58及び直線溝64を押圧部53に滞留するヘリウムガスをチャンバ16内に逃がして拡散させる逃がし部66として機能させることができる。
【0029】
したがって、ヘリウムリークディテクタ26によるヘリウムガス検出精度を高精度に保持することができるとともに、装置4の信頼性を高めることができる。なお、図示しないが、下側パッド50にも上側パッド52と同様の加工を施し、下側パッド50の押圧に伴い発生する押圧部に滞留するヘリウムガスをチャンバ16内に逃がして拡散させる逃がし部を形成しても良い。
【0030】
以下、
図5を参照して、制御ユニット28からの指令により実行するドラム缶2の気密検査について説明する。制御ユニット28には各種パターンの試験モードのプログラムが格納可能であり、本実施形態ではその一例を説明する。
図5に示す試験モードの各ステップを実行する前に、制御ユニット28は装置4を起動するための立上モード、ヘリウムリークディテクタ26の精度を確保するための校正モードを順次実行する。
【0031】
次に、チャンバ16の扉16dを開けて検査対象のドラム缶2をチャンバ16内にセットした状態で上記試験モードに移行し、ドラム缶2の気密検査が開始される。
制御ユニット28は、先ずドラム缶用ポンプ18及びチャンバ用ポンプ20を作動し、ドラム缶2内及びチャンバ16内を同時に排気して真空引きしする真空引き工程を行う<ステップS1>。ステップS1では、ドラム缶2内及びチャンバ16内を双方とも中真空以下(0.1Pa〜100Pa)に減圧して保持する。なお、ステップS1の所要時間は300秒未満である。
【0032】
次に、制御ユニット28はヘリウムガス供給ユニット24を作動し、ドラム缶2内にヘリウムガスを大気圧未満となる第1設定圧力まで封入する小圧封入工程を行う<ステップS2>。ステップS2において、ヘリウムガス供給ユニット24はドラム缶2内に第1設定圧力(0.1kPa〜20kPa)になるまでヘリウムガスを封入した後、ヘリウムガスの封入を中止して保持する。なお、チャンバ16内は中真空以下に保持されている。
【0033】
次に、制御ユニット28はヘリウムリークディテクタ26の出力信号を読み込み、ドラム缶2からチャンバ16内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する大漏れ検査工程を行う<ステップS3>。ステップS3においてヘリウムガス漏れ有り(YES)と判定された場合には、制御ユニット28の表示パネル等に大漏れ検査不合格である旨表示し、後述するステップS9の排気工程に移行した後に気密検査を終了する。なお、ステップS2及びステップS3の合計所要時間は60秒未満である。
【0034】
一方、ステップS3においてヘリウムガス漏れ無し(NO)と判定された場合には、制御ユニット28は、押圧機構22を作動することによりドラム缶2を
図1の状態から
図3の状態まで上方向に移動し、下側パッド50により地板8を押圧するとともに上側パッド52により天板10を押圧して保持する<ステップS4>。
次に、制御ユニット28はヘリウムガス供給ユニット24を作動し、ドラム缶2内にヘリウムガスを第1設定圧力以上で且つ大気圧未満となる第2設定圧力になるまで封入する中圧封入工程を行う<ステップS5>。ステップS5において、ヘリウムガス供給ユニット24はドラム缶2内に第2設定圧力(20kPa〜100kPa)になるまでヘリウムガスを封入した後、ヘリウムガスの封入を中止して保持する。なお、チャンバ16内は中真空以下に保持されている。
【0035】
次に、制御ユニット28はヘリウムリークディテクタ26の出力信号を読み込み、ドラム缶2からチャンバ16内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する中漏れ検査工程を行う<ステップS6>。ステップS6においてヘリウムガス漏れ有り(YES)と判定された場合には、制御ユニット28の表示パネル等に中漏れ検査不合格である旨表示し、後述するステップS9の排気工程に移行した後に気密検査を終了する。なお、ステップS4、ステップS5、及びステップS6の合計所要時間は60秒未満である。
【0036】
一方、ステップS6においてヘリウムガス漏れ無し(NO)と判定された場合には、制御ユニット28はヘリウムガス供給ユニット24を作動し、ドラム缶2内にヘリウムガスを第3設定圧力になるまで封入する高圧封入工程が行われる<ステップS7>。ステップS7において、ヘリウムガス供給ユニット24はドラム缶2内に第3設定圧力(100kPa(大気圧)以上)になるまでヘリウムガスを封入した後、ヘリウムガスの封入を中止して保持する。なお、チャンバ16内は中真空以下に保持されており、ステップS7の所要時間は60秒未満である。
【0037】
次に、制御ユニット28はヘリウムリークディテクタ26の出力信号を読み込み、ドラム缶2からチャンバ16内へのヘリウムガスの漏れの有無を検査する微小漏れ検査工程を行う<ステップS8>。ステップS8においてヘリウムガス漏れ有り(YES)と判定された場合には、制御ユニット28の表示パネル等に微小漏れ検査不合格である旨表示し、後述するステップS9の排気工程に移行した後に気密検査を終了する。
【0038】
一方、ステップS8においてヘリウムガス漏れ無し(NO)と判定された場合には、制御ユニット28の表示パネル等に微小漏れ検査合格である旨表示する。なお、ステップS8の所要時間は、気密検査したい漏れレベルに応じて設定可能である。
次に、制御ユニット28はドラム缶用ポンプ18を作動し、ドラム缶2内のヘリウムガスをチャンバ16の外部に排気する排気工程を行う<ステップS9>。ステップS9では、チャンバ用ポンプ20を作動することにより、チャンバ16内の中真空状態を解除するとともに、チャンバ16内の排気が行われる。また、前述したように、ステップS3及びステップS6の判定でヘリウムガス漏れ有りとなって不合格とされた場合にもステップS9の工程を行う。そして、ステップS9を実行した後、気密検査を終了する。
【0039】
以上のように本実施形態では、真空引き工程(ステップS1)を経た後に、押圧工程(ステップS4)によりドラム缶2の天板10及び地板8の膨出変形を抑制することができるため、ドラム缶2の気密検査において下側及び上側チャイム12、14の巻き締めが解かれたり、或いは下側及び上側チャイム12、14の溶接部が破断したりするのを防止し、下側及び上側チャイム12、14の形状を保持することができる。従って、高圧封入工程(ステップS7)及び微小漏れ検査工程(ステップS8)の過程においてドラム缶2内に大気圧以上のヘリウムガスを封入しても、上記膨出変形に起因した下側及び上側チャイム12、14からのヘリウムガスの漏洩を防止することができる。また、ドラム缶2の微小漏れ(滲み漏れ)レベルの気密検査を高精度に行うことができる。
【0040】
また、真空引き工程(ステップS1)後であって押圧工程(ステップS4)前に、大気圧未満の第1設定圧力となるようにヘリウムガスをドラム缶2内に封入する小圧封入工程(ステップS2)を行うことにより、大漏れ検査工程(ステップS3)において、小圧にも拘わらずドラム缶2からヘリウムガスが大量に漏れる、ドラム缶2のいわゆる大漏れ状態を微小漏れ検査工程(ステップS8)前に検知することができる。従って、大漏れ検査工程(ステップS3)で不合格となった場合、大漏れ検査工程(ステップS3)以降の不要なステップを行うことなく気密検査を終了し、当該ドラム缶2を気密検査のラインから排除することができるため、気密検査の検査効率を大幅に向上することができる。
【0041】
また、押圧工程(ステップS4)後であって高圧封入工程(ステップS7)前に、第1設定圧力以上で且つ大気圧未満の第2設定圧力となるようにヘリウムガスをドラム缶2内に封入する中圧封入工程(ステップS5)を行うことにより、中漏れ検査工程(ステップS6)において、ドラム缶2から中圧のヘリウムガスが漏れる、ドラム缶2のいわゆる中漏れ状態を微小漏れ検査工程(ステップS8)前に検知することができる。従って、中漏れ検査工程(ステップS6)で不合格となった場合、中漏れ検査工程(ステップS6)以降の不要なステップを行うことなく気密検査を終了し、当該ドラム缶2を気密検査のラインから排除することができるため、気密検査の検査効率を大幅に向上することができる。
【0042】
しかも、中圧封入工程(ステップS5)は小圧封入工程(ステップS2)と異なり押圧工程(ステップS4)後に行うため、第2設定圧力を大気圧未満といえども大気圧に近い比較的高圧に設定することもできる。従って、幅広い設定圧力でのドラム缶2の気密検査を段階的に行うことができる。
更には、微小漏れ検査工程(ステップS8)前に、大漏れ検査工程(ステップS3)、ひいては中漏れ検査工程(ステップS6)を事前に行う3段階の気密検査工程を行うことにより、ドラム缶2の漏れレベルを段階的に検査することができるため、ドラム缶2の漏れ原因の詳細を特定するのに好適である。
【0043】
本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
具体的には、上記実施形態では3段階のドラム缶2の気密検査を行うが、これに限らず、必要に応じ4段階以上の気密検査を行うようにしても良い。この場合には、より一層幅広い設定圧力でのドラム缶2の気密検査を段階的に行うことができるため、より正確にドラム缶2の漏れレベルや漏れ原因を把握することができる。
【0044】
また、真空引き工程(ステップS1)、押圧工程(ステップS4)、高圧封入工程(ステップS7)及び微小漏れ検査工程(ステップS8)のみを行う1段階の気密検査でも良い。この場合であっても、ドラム缶2の変形を抑制しながら、高精度な気密検査を行うことができる。
また、上記実施形態では押圧機構22はチャンバ16内のドラム缶2を上方向に移動して天板10及び地板8を押圧するための昇降機として具現化されている。しかし、これに限らず、チャンバ16内のドラム缶2を下方向に移動して天板10及び地板8を押圧するようにしても良い。
【0045】
また、天板10及び地板8の膨出変形を抑制し、下側及び上側チャイム12、14の巻き締めが解かれたり、或いは下側及び上側チャイム12、14の溶接部が破断したりするのを防止することができるのであれば、昇降機に限らず種々の押圧機構が想定可能であることは勿論である。また、押圧機構によって天板10及び地板8に作用させる押圧力を異なる段階の気密検査毎に変えるようにしても良い。この場合には、より効果的に天板10及び地板8の膨出変形を抑制することができる。