特開2016-92307(P2016-92307A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-92307(P2016-92307A)
(43)【公開日】2016年5月23日
(54)【発明の名称】樹脂基板の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/42 20060101AFI20160418BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20160418BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20160418BHJP
【FI】
   H05K3/42 610A
   H05K3/00 K
   H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-227423(P2014-227423)
(22)【出願日】2014年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】坂尾 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宗之
(72)【発明者】
【氏名】谷 典明
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD25
5E317CD32
5E317GG17
(57)【要約】
【課題】樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成した際に、樹脂基板の主面や、貫通孔の内側面および内底面における表面形状を制御することが可能な、樹脂基板の加工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂基板の加工方法は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2を用い、該樹脂基板に備えた導体3に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、前記貫通孔を設ける領域に前記一方の主面から、予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面4を除去し、該樹脂基板の一方の主面は平坦性を保つ工程Aを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、
前記貫通孔を設ける領域に前記一方の主面から、予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、該樹脂基板の一方の主面は平坦性を保つ工程Aを含むことを特徴とする樹脂基板の加工方法。
【請求項2】
前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材から前記無機部材が欠落した凹部を含む表面プロファイルを形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂基板の加工方法。
【請求項3】
前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材から前記無機部材が突出した凸部を含む表面プロファイルを形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂基板の加工方法。
【請求項4】
前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材に前記無機部材が局在し、かつ、該有機部材の領域と該無機部材の領域が面一をなす表面プロファイルを形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂基板の加工方法。
【請求項5】
フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、
前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面に保護シートを設けてから、予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程Bを含むことを特徴とする樹脂基板の加工方法。
【請求項6】
フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、
前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面にマスクを設けてから、ドライエッチング法により前記貫通孔を形成し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程Cを含むことを特徴とする樹脂基板の加工方法。
【請求項7】
前記工程A乃至Cは、前記導体を露呈させ、かつ該導体の露呈部を平坦化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の樹脂基板の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチング法を用いて樹脂基板に貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板用途の樹脂基板として、プリプレグと呼ばれるガラス布にエポキシ樹脂を含浸した材料を用いて、その上に、ビルドアップフィルムを用いて、回路を形成する方法が用いられている。このような樹脂基板は、寸法変化が小さく、高周波特性や絶縁抵抗が高いことから、絶縁性や機械強度が高く長寿命という特長を有している。しかしながら、樹脂基板は、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸した材料ゆえに、その加工は難しいことが知られている。
【0003】
搭載される機器の小型・軽量化に伴い、樹脂基板における貫通配線を含む導電部についても、さらなる細線化や高密度化が求められている。従来、樹脂基板に貫通配線を含む導電部の形成法としてめっき法が用いられ、この要求に応えてきた(特許文献1、2)。
たとえば、従来の手法では、図11に示すように、樹脂基板102に備えた導体103に向けて、貫通孔を設ける領域に一方の主面102sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔105が形成された基板101を用意し、該樹脂基板の一方の主面102sからエッチング液を用いて貫通孔を形成した後、該樹脂基板をめっき液に浸漬することにより、貫通孔にめっき液を充填し、貫通孔内に薄膜の導電部を形成する。しかしながら、貫通孔の小径化に伴い、貫通孔内に残存するエッチング液を除去する一連の操作(いわゆる、ウェットプロセス)が困難になりつつある。すなわち、めっき液の残渣が貫通孔内から抜けず、その後の工程に影響を及ぼすことが懸念されている。
【0004】
また、貫通孔の小径化により、アスペクト比[貫通孔の深さ/開口径(幅)]が増大し、導電部の薄膜化が求められている。これに伴い、導電部において、貫通孔内において接する部位(貫通孔の内底面、内側面をなす樹脂基板の表面)や、この部位から貫通孔外に延びる貫通孔の開口部近傍に位置する部位(開口部が設けられた樹脂基板の一主面をなす表面において開口部の周縁付近の部位)における粗さが、配線長を増長し、デバイスの高周波特性を劣化させる影響が顕在化した。
【0005】
図11(c)は、エッチング液を用いて処理された樹脂基板上に、めっき法により形成した導電部の表面プロファイルを示すSEM写真である。図11(c)の写真から明らかなように、ウェットプロセスにより形成されためっき膜の表面は、エッチング液により形成された樹脂基板のプロファイルが反映される。すなわち、エッチング後の樹脂基板の表面は、有機部材が積極的に削られており、有機部材に分散して含まれる無機部材(フィラー)が有機部材のなす面から突出してなるプロファイル102Asとなる。ゆえに、その上に形成されるめっき膜も、このエッチング液で処理された後の樹脂基板の表面プロファイルを反映した表面形状にならざるを得ない。
【0006】
このようなエッチング後の樹脂基板の表面プロファイルに関する問題は、樹脂基板の一主面のみならず、貫通孔の内側面や内底面においても同様に解決されるべき課題である。
したがって、従来のウェットプロセスを用いた製法では、貫通孔の小径化に伴い、膜厚が薄く、かつ、平坦な導電膜を、樹脂基板上に形成することは極めて困難であり、これを打開する新たな製法の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−217536号公報
【特許文献2】特開2004−146533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成した際に、樹脂基板の主面や、貫通孔の内側面および内底面における表面形状(プロファイル)を制御することが可能な、樹脂基板の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の樹脂基板の加工方法は、フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、前記貫通孔を設ける領域に前記一方の主面から、(所望の手法によって)予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、該樹脂基板の一方の主面を平坦化する工程Aを含むことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の樹脂基板の加工方法は、請求項1において、前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材から前記無機部材が欠落した凹部を含む表面プロファイルを形成することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の樹脂基板の加工方法は、請求項1において、前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材から前記無機部材が突出した凸部を含む表面プロファイルを形成することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の樹脂基板の加工方法は、請求項1において、前記工程Aは、前記樹脂基板の一方の主面が、前記有機部材に前記無機部材が局在し、かつ、該有機部材の領域と該無機部材の領域が面一をなす表面プロファイルを形成することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の樹脂基板の加工方法は、フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面に保護シートを設けてから、(所望の手法によって)予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程Bを含むことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の樹脂基板の加工方法は、フィラーをなす無機部材が有機部材に分散して含まれてなる樹脂基板を用い、該樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成する樹脂基板の加工方法であって、前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面にマスクを設けてから、ドライエッチング法により前記貫通孔を形成し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程Cを含むことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の樹脂基板の加工方法は、請求項1乃至6のいずれか一項において、前記工程A乃至Cは、前記導体を露呈させ、かつ該導体の露呈部の平坦化も行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、該樹脂基板の一方の主面を平坦化する工程Aを備えることにより、樹脂基板の主面や、貫通孔の内側面および内底面における表面形状(プロファイル)を制御することが可能である。これにより、上記工程Aによれば、樹脂基板の主面とともに、その主面に形成された貫通孔の内側面や内底面についても、各面の平坦化を図ることができる。
したがって、本発明は、「樹脂基板に備えた導体に向けて、該樹脂基板の一方の主面から貫通孔を形成した際に、樹脂基板の主面や、貫通孔の内側面および内底面における表面形状(プロファイル)を制御することが可能な樹脂基板の加工方法」の提供に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る樹脂基板の加工方法で形成された樹脂基板の断面図と基板表面のSEM写真、及びエッチング条件を示すグラフ。
図2】本発明に係るエッチング法で用いるエッチング装置の一例を示す断面図。
図3】本発明に係る第一実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真。
図4】本発明に係る第二実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真。
図5】本発明に係る第三実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真。
図6】本発明に係る第四実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真。
図7】本発明に係る第五実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真。
図8】貫通孔の内側面の観察方法を説明する図。
図9】貫通孔の内底面を観察したSEM写真と組成分析結果。
図10】貫通孔の内側面および内底面を観察した断面SEM写真。
図11】従来の方法で形成された樹脂基板の断面図と基板表面のSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明に係るエッチング方法が適用される一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る樹脂基板の加工方法で形成された樹脂基板の断面図(a)と基板表面のSEM写真(b)、及びエッチング条件を示すグラフ(c)である。
本発明は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を用い、該樹脂基板2の一方の主面2s(図1においては上面)から前記導体3に向けて貫通孔6を形成する樹脂基板の加工方法である。図1は、導体3が樹脂基板2の他方の主面2rに設けた構成を示しているが、樹脂基板2と導体3との位置関係はこれに限定されるものではなく、導体3が樹脂基板2の中に配置された構成としてもよい。
【0014】
上述した樹脂基板の加工方法では、樹脂基板2の一方の主面2sにおいて、貫通孔6を設ける領域に前記一方の主面2sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2を用いる。非貫通孔5が設けられた樹脂基板2に対して、ドライエッチング法を用い、非貫通孔5の内底面4を除去するとともに、樹脂基板2の一方の主面2sは平坦性を保つ工程Aを含んでいる。
ここで、樹脂基板2としては、例えば、シリカなどから構成される無機部材2aが、エポキシなどから構成される有機部材2bに、分散して含まれたものが好適に用いられる。
【0015】
ドライエッチング法において用いるプロセスガスとしては、フッ素を含むガス(以下、F系ガスとも呼ぶ)が好ましく、例えば、SF、NF、CF、CHF、CH、CHF、C、C、Cなどが挙げられる。
また、上記プロセスガスに添加するガスとしては、例えば、O、N、OとNの混合ガスなどが挙げられる。
【0016】
本発明に係る樹脂基板の加工方法は、ドライエッチング法を用いた工程Aを採用したことにより、図1(樹脂基板の断面図、基板表面のSEM写真)に示すように、樹脂基板2の一方の主面2sが異なる3種類の表面形状(α形状、β形状、γ形状)をもつように、加工処理することができる。
【0017】
α形状は、樹脂基板2のうち、無機部材2aの方が有機部材2bに比べて積極的にエッチングされてなる表面プロファイルであり、無機部材2aが欠落した凹部を有する有機部材2bから表面が構成されている。
【0018】
γ形状は、前記α形状とは逆に、樹脂基板2のうち、有機部材2bの方が無機部材2aに比べて積極的にエッチングされてなる表面プロファイルであり、無機部材2aが局所的に突出した有機部材2bから表面が構成されている。
【0019】
β形状は、α形状とγ形状の間に位置しており、樹脂基板2のうち、無機部材2aと有機部材2bが同レベルでエッチングされてなる表面プロファイルであり、平坦に削れられた無機部材2aが平坦な有機部材2bの中に離散して表面が構成されている。ゆえに、β形状は、α形状やγ形状に比べて優れた平坦性を有する。
【0020】
上述した3種類の異なる表面形状α、β、γは、ドライエッチング法におけるエッチング条件、たとえば添加ガス流量を調整することにより、安定して作り分けることが可能である。図1(c)のグラフは、プロセスガスがCFとCHFの混合ガスであり、添加ガスとしてOを用いた場合の結果である。
たとえば、(プロセスガス/添加ガス)の比は、表面形状αとする場合「<(400/20)」、表面形状βとする場合「(400/20)〜(400/60)」、表面形状γとする場合「>(400/60)」とすればよい。
このように添加ガス流量を調整するとともに、プロセス圧力4Paにて、13.56MHzの高周波電源を用い、2.5kWの投入パワーにて、樹脂基板を処理した。
【0021】
図1(c)のグラフは、横軸が添加ガスの流量[sccm]、縦軸がエッチング速度[nm/min]である。図1(c)において、◇印は無機部材(熱酸化膜で代用)、□印は有機部材(フォトレジストで代用)の結果である。無機部材は、添加ガスの流量が増加するに伴い、エッチング速度が単調に減少する傾向を示した。これに対して、有機部材は、添加ガスの流量が増加するに伴い、エッチング速度が単調に増加する傾向を示した。
【0022】
つまり、このような無機部材と有機部材の相反する傾向を利用することにより、添加ガスの流量を増加するだけで、樹脂基板の表面形状を 「α形状→β形状→γ形状」と変化させることが可能あることが明らかとなった。この結果から、添加ガスの流量を増加するだけで、樹脂基板の表面形状が、「α形状→β形状→γ形状」と変化する理由として、以下のメカニズムが推定される。
【0023】
添加ガスの流量が小さい条件[α領域(SF:Silica Fast)]では、フィラーをなす無機部材2aに対するエッチング速度が高く、有機部材2bに対するエッチング速度が低くなる傾向がある。これにより、樹脂基板の表面から無機部材2aが積極的に除去され、その除去された部分が有機部材2bに凹部として樹脂基板の表面に痕跡として残存する表面形状が得られる。すなわち、α領域におけるエッチング速度は、「Epoxy<Silica」 という関係にある。
【0024】
これとは逆に、添加ガスの流量が大きい条件[γ領域(OP:Org Fast)]では、フィラーをなす無機部材2aに対するエッチング速度が低く、有機部材2bに対するエッチング速度が高くなる傾向がある。これにより、樹脂基板の表面から有機部材2bが積極的に除去され、その除去された有機部材2bから無機部材2aが突出して凸部をなす表面形状が得られる。すなわち、γ領域におけるエッチング速度は、「Epoxy>Silica」 という関係にある。
【0025】
添加ガスの流量が、前記α領域と前記γ領域の中間となる条件[β領域(SM:Smooth)]では、フィラーをなす無機部材2aに対するエッチング速度と、有機部材2bに対するエッチング速度とが、ほぼ同等になる傾向がある。これにより、樹脂基板の表面から無機部材2aと有機部材2bがほぼ均等に除去されることになり、最終的には、有機部材2bの平坦な加工面と面一をなすように、平坦な加工面をもつ無機部材2aが、有機部材2bの中に散在してなる表面が得られる。すなわち、β領域におけるエッチング速度は、「Epoxy≒Silica」 という関係にある。
【0026】
上述した3つの領域α、β、γを作り分けることが可能なエッチング方法は、「ドライエッチング法により、樹脂基板に設けられた非貫通孔の内底面を除去し、該樹脂基板の一方の主面は平坦性を保つ工程Aを備えたエッチング方法」として最適である。何故ならば、樹脂基板の内底面を除去して貫通孔を形成した後、貫通孔を通じて樹脂基板の両面が電気的な接続をするように、貫通孔内に導通部材を埋設する必要がある。その際、下地として薄膜のシード層を設ける必要があるが、シード層の被膜性能は、樹脂基板の表面形状に依存するからである。シード層の膜厚や材料、層構成などの各条件に適宜対応するためには、上述した3つの領域からなる表面形状を、自在に構築できる製法の開発が期待されていた。求められていた。従来のウェットエッチング法では、本発明で言うところのγ領域の表面形状しか得られないため、シード層の各条件に十分に対応することは難しい状況にあった。本発明は、この課題を解消することに寄与するものである。
【0027】
本発明係るエッチング方法は、例えば、図2に示した上方からガスを導入してプラズマを生成し、下方の基板をエッチング加工する平行平板プラズマエッチング装置10を使用して実施できる。図2において、符号11はガスボンベ等のガスの供給源12a,12bに接続されたガス導入系12と、真空ポンプに接続された排気系13を有するチャンバを示す。なお、図2においては、各ガスの供給源12a,12bごとに設けられるバルブや流量計などは省略して描写してある。しかしながら、後述するとおり、図2の平行平板プラズマCVD装置10においても、ガス導入の開閉制御や流量制御を行うことから、ガス導入系12の必要な箇所に、バルブや流量は適宜備えている。
【0028】
チャンバ11内には、平板状の電極14,15が上下に平行して設けられており、上方に位置する電極14には高周波電力を与える高周波電源16aが、下方に位置する電極15にはバイアス電力を与えるバイアス電源16bが、それぞれ電気的に接続されている。下方に位置する電極15の上には、エッチング処理される基板Sub(前述した「予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2」に相当)が搭載される。
【0029】
上方の電極14をその前面にシャワープレート18を備えた中空の電極で構成し、その中空部19に該ガス導入系12を接続して該中空部19内へ導入した反応ガスを該シャワープレート18に形成した多数のガス噴出口18aからチャンバ11内へ均一に噴出させるようにした。また、下方の電極15は基板Subを加熱するヒーターとしての機能を具備する。ガス導入系12には、エッチング処理をおこなう際に供給される、プロセスガスの供給源12aと、添加ガスの供給源12bとが具備されており、これらのガスを各々、流量調整して導入可能とされている。
【0030】
真空排気されたチャンバ11内に、ガス導入系12から所望のガス(プロセスガス+添加ガス)を導入し、所定の圧力に調整した後、高周波電源16aから例えば13.56MHz等の高周波電力を投入して両電極14,15間にプラズマを発生させる。また、必要に応じて、電極15には、バイアス電源16bからバイアス電力として高周波電力を印加する。その際、電極15に載置された基板Subが、所定の温度となるように制御した状態とする。
【0031】
これにより、電極15に載置された基板Subは、所望の時間だけプラズマに曝されることにより、基板Subの一方の面側(上方に位置する電極14と対向する面側)がエッチングされる。すなわち、基板Sub(予め非貫通孔が形成された樹脂基板)のち、非貫通孔の開口部の周囲をなす一方の主面とともに、非貫通孔の内底面がエッチングされる。このエッチング処理は、非貫通孔の内底面がエッチングにより加工され、3が露呈して、非貫通孔が貫通孔となるまで行われる。その際、非貫通孔の開口部の周囲をなす一方の主面も、エッチング処理の影響を受けることになる。
【0032】
貫通孔が形成された後、導電部材で貫通孔を埋設するため、貫通孔の開口部の周囲をなす一方の主面とともに、貫通孔の内側面および内底面に対して、薄膜のシード層を予め形成する必要がある。薄膜のシード層による被覆状況は、その被覆面をなす「貫通孔の開口部の周囲をなす一方の主面」及び「貫通孔の内側面および内底面」の表面形状(プロファイル)の影響を受ける。ゆえに、これらの各面における表面プロファイルを、所望の形状に制御する技術が重要となる。
以下では、上述した3つの領域α、β、γについて、図3〜5を参照し、より詳細に説明する。
【0033】
<第一実施形態>
図3は、本発明に係る第一実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真であり、領域αを形成する場合を表している。図3において、(a)は樹脂基板が未処理の状態、(b)は非貫通孔が形成された状態、(c)は工程Aにより貫通孔が形成された状態、(d)はシード層が形成された状態、を各々表している。(b)と(c)において断面図の右側に配置した写真は、各状態における基板表面のSEM写真である。
【0034】
図3(a)は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を示している。
図3(b)は、図3(a)の基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図3においては上面)において、貫通孔を設ける領域に前記一方の主面2sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2を示している。図3(b)の写真は、樹脂基板2の一方の主面2sであり、若干凹部が見られるが、有機部材2bのみからなる平坦な表面形状が観測された。
【0035】
図3(c)は、上述した「添加ガスの流量が小さい条件[α領域(SF:Silica Fast)]」により、本発明の工程Aを実施した結果を示している。図3(c)の写真から明らかなように、ドライエッチングにより、樹脂基板2は、その厚さが減少するに伴い、表面に露呈した筈の無機部材2aが欠落し、その欠落した箇所に凹部2as(α)が形成された部位と、有機部材2bの部位2bs(α)とから構成された表面2Asとなる。これと同時に、非貫通孔5の内底面4が除去されることにより、貫通孔5(α)が形成され、貫通孔5(α)の底に導体3の露呈部6(α)が生じる。
図3(d)は、工程Aの後に、2層構造のシード層9a、9bを形成した状態を示している。貫通孔5(α)の内側面や内底面に沿って被覆するシード層9a、9bは、樹脂基板2の一方の主面2Asにおいては、前述した凹部2as(α)を反映したものとなる。
【0036】
<第二実施形態>
図4は、本発明に係る第二実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真であり、領域αを形成する場合を表している。図4において、(a)は樹脂基板が未処理の状態、(b)は非貫通孔が形成された状態、(c)は工程Aにより貫通孔が形成された状態、(d)はシード層が形成された状態、を各々表している。(b)と(c)において断面図の右側に配置した写真は、各状態における基板表面のSEM写真である。
【0037】
図4(a)は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を示している。
図4(b)は、図4(a)の基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図4においては上面)において、貫通孔を設ける領域に前記一方の主面2sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2を示している。図4(b)の写真は、樹脂基板2の一方の主面2sであり、若干凹部が見られるが、有機部材2bのみからなる平坦な表面形状が観測された。
【0038】
図4(c)は、上述した「添加ガスの流量が大きい条件[γ領域(OP:Org Fast)]
」により、本発明の工程Aを実施した結果を示している。図4(c)の写真から明らかなように、ドライエッチングにより、樹脂基板2は、その厚さが減少するに伴い、有機部材2bが積極的にエッチングされる。その結果、無機部材2aが露呈した状態となり、無機部材2aからなる凸部2as(γ)が、有機部材2bの部位2bs(γ)から突出した形状をなす表面2Asとなる。
図4(d)は、工程Aの後に、2層構造のシード層9a、9bを形成した状態を示している。貫通孔5(γ)の内側面や内底面に沿って被覆するシード層9a、9bは、樹脂基板2の一方の主面2sにおいては、前述した凸部2as(γ)を反映した形状を備えるものとなる。
【0039】
<第三実施形態>
図5は、本発明に係る第三実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真であり、領域αを形成する場合を表している。図5において、(a)は樹脂基板が未処理の状態、(b)は非貫通孔が形成された状態、(c)は工程Aにより貫通孔が形成された状態、(d)はシード層が形成された状態、を各々表している。(b)と(c)において断面図の右側に配置した写真は、各状態における基板表面のSEM写真である。
【0040】
図5(a)は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を示している。
図5(b)は、図5(a)の基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図5においては上面)において、貫通孔を設ける領域に前記一方の主面2sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2を示している。図5(b)の写真は、樹脂基板2の一方の主面2sであり、若干凹部が見られるが、有機部材2bのみからなる平坦な表面形状が観測された。
【0041】
図5(c)は、上述した「添加ガスの流量が前記α領域と前記γ領域の中間となる条件[β領域(SM:Smooth)]」により、本発明の工程Aを実施した結果を示している。ドライエッチングにより、樹脂基板2は、その厚さが減少するに伴い、樹脂基板の表面から無機部材2aと有機部材2bがほぼ均等にエッチングされる。その結果、有機部材2bの平坦な加工面2bs(β)と面一をなすように、平坦な加工面をもつ無機部材2aの加工面2as(β)が形成された表面2Asが得られる。
図5(d)は、工程Aの後に、2層構造のシード層9a、9bを形成した状態を示している。貫通孔5(γ)の内側面や内底面に沿って被覆するシード層9a、9bは、樹脂基板2の一方の主面2sにおいても、前述した加工面2bs(β)、2as(β)を反映した平坦な形状を備えるものとなる。
【0042】
<第四実施形態>
図6は、本発明に係る第四実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真である。第四実施形態では、非貫通孔を加工する際に、樹脂基板2の一方の面2sを保護シート7により被覆した点が、上述した第一乃至第三実施形態と異なる。図6において、(a)は樹脂基板が未処理の状態、(b)は保護シート7が設けられた状態、(c)は非貫通孔が形成された状態、(d)は工程Bにより貫通孔が形成された状態、(e)は保護シートが除去された状態、(f)はシード層が形成された状態、を各々表している。(c)と(e)において断面図の右側に配置した写真は、各状態における基板表面のSEM写真である。
【0043】
すなわち、第四実施形態は、「前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面に保護シートを設けてから、(所望の手法によって)予め非貫通孔が形成された樹脂基板に対して、ドライエッチング法により前記非貫通孔の内底面を除去し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程B」を含む、樹脂基板の加工方法である。その際、エッチング条件については、α、β、γの何れを選択しても構わないが、以下の説明では条件βを用いて説明している。
【0044】
図6(a)は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を示している。
図6(b)は、図6(a)の基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図6においては上面)に保護シート7を設けた状態を示している。保護シート7としては、例えば、PET樹脂フィルム[PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなる高分子フィルム]などが好適である。
【0045】
図6(c)は、図6(b)の保護シート7を設けた基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図6においては上面)において、貫通孔を設ける領域に保護シート7で被覆された状態にある前記一方の主面2sから、所望の手法(ドリル加工やレーザー加工などの既知の手法)により、予め非貫通孔5が形成された樹脂基板2を示している。図6(c)の写真は、保護シート7を除去した樹脂基板2の一方の主面2sであり、若干凹部が見られるが、有機部材2bのみからなる平坦な表面形状が観測された。つまり、非貫通孔5を形成する前後において、樹脂基板2の一方の主面2sは、その表面形状に変化は無かった。
【0046】
図6(d)は、上述した「添加ガスの流量が前記α領域と前記γ領域の中間となる条件[β領域(SM:Smooth)]」により、本発明の工程Bを実施した結果を示している。ドライエッチングにより、樹脂基板2は、その厚さが減少すること無く、非貫通孔の内部(内側面と内底面)のみが、無機部材2aと有機部材2bがほぼ均等にエッチングされる。その結果、貫通孔の内側面5(δ)は、有機部材2bの平坦な加工面と面一をなすように、平坦な加工面をもつ無機部材2aの加工面が形成された表面2Asが得られる。
【0047】
図6(e)は、図6(d)の基板1から保護シート7を除去した状態を示している。写真から明らかなように、貫通孔の作製中には、樹脂基板2の一方の主面2sが保護シート7により守られていたので、貫通孔を作製した後でも、樹脂基板2の一方の主面2sの表面形状に変化は無かった。
図6(f)は、工程Bの後に、2層構造のシード層9a、9bを形成した状態を示している。貫通孔の内側面5(δ)や内底面6(δ)に沿って被覆するシード層9a、9bは、樹脂基板2の一方の主面2s(未処理の樹脂基板2の表面2s)と同様に、前述した平坦な形状を備えるものとなる。
【0048】
<第五実施形態>
図7は、本発明に係る第五実施形態を示す断面図と基板表面のSEM写真である。第五実施形態では、樹脂基板2の一方の面2sをマスク8により被覆し、非貫通孔を加工すること無く、一気に貫通孔を形成した点が、上述した第一乃至第四実施形態と異なる。図7において、(a)は樹脂基板が未処理の状態、(b)はマスク8が設けられた状態、(c)はマスク8に貫通孔が形成された状態、(d)は工程Cにより樹脂基板2に貫通孔が形成された状態、(e)はマスク8が除去された状態、(f)はシード層が形成された状態、を各々表している。(a)と(e)において断面図の右側に配置した写真は、各状態における基板表面のSEM写真である。
【0049】
すなわち、第五実施形態は、「前記貫通孔を設ける領域にあたる前記一方の主面にマスクを設けてから、ドライエッチング法により前記貫通孔を形成し、前記非貫通孔の内側面を平坦化する工程C」を含む、樹脂基板の加工方法である。その際、エッチング条件については、α、β、γの何れを選択しても構わないが、以下の説明では条件βを用いて説明している。
【0050】
図7(a)は、フィラーをなす無機部材2aが有機部材2bに分散して含まれてなる樹脂基板2と、該樹脂基板2に備えた導体3とから構成される基板1を示している。
図7(b)は、図6(a)の基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2s(図6においては上面)にマスク8を設けた状態を示している。マスク8としては、例えば、ドライフィルムレジスト、液レジストなどが好適である。
【0051】
図7(c)は、図7(b)のマスク8を設けた基板1を用い、樹脂基板2の一方の主面2sの露呈部2bs(ε)が確認されるまで、ドライエッチングにより、マスク8に貫通孔8Is(ε)を形成した状態を示している。
図7(d)は、樹脂基板2の一方の主面2sの露呈部2bs(ε)に対して、ドライエッチングにより、樹脂基板2にに貫通孔5(ε)を形成した状態を示している。その際、図7(b)のマスク8は除去せず、マスク8が樹脂基板2の一方の主面2sを被覆した状態を維持する。
【0052】
図7(e)は、図7(d)のドライエッチング後に、マスク8を除去した状態を表している。すなわち、上述した「添加ガスの流量が前記α領域と前記γ領域の中間となる条件[β領域(SM:Smooth)]」により、本発明の工程Cを実施した結果を示している。ドライエッチングにより、樹脂基板2は、その厚さが減少すること無く、非貫通孔の内部(内側面と内底面)のみが、無機部材2aと有機部材2bがほぼ均等にエッチングされる。その結果、貫通孔の内側面5(ε)は、有機部材2bの平坦な加工面と面一をなすように、平坦な加工面をもつ無機部材2aの加工面が形成された表面2Asが得られる。
【0053】
図7(e)の写真は、図7(d)の基板1から保護シート7を除去した状態を示している。この写真から明らかなように、貫通孔の作製中には、樹脂基板2の一方の主面2sがマスク8により守られていたので、貫通孔を作製した後でも、樹脂基板2の一方の主面2sの表面形状に変化は無かった。
図7(f)は、工程Cの後に、2層構造のシード層9a、9bを形成した状態を示している。貫通孔の内側面5(ε)や内底面6(ε)に沿って被覆するシード層9a、9bは、樹脂基板2の一方の主面2s(未処理の樹脂基板2の表面2s)と同様に、前述した平坦な形状を備えるものとなる。
【0054】
<貫通孔の内面の観察結果>
図8は、貫通孔の内側面の観察方法を説明する図である。走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、本発明に係る樹脂基板の加工方法により形成された貫通孔を、次の2つの角度から観測した。
View−A(Top)とは、樹脂基板の一方の面および貫通孔の内底面に対して垂直をなす方向から観測した場合である。
View−B(Tilt60°)とは、樹脂基板の一方の面および貫通孔の内底面に対して60°傾斜した方向から観測した場合である。View−Bの場合のみ、低倍率(Low)と高倍率(High)の2条件にて観測した。
【0055】
図9は、貫通孔の内底面を観察したSEM写真と組成分析結果である。(a)は貫通孔を形成する前、すなわち非貫通孔の例であり、(b)、(c)、(d)が順に、エッチング処理時間が4、7、10[min]の例である。(a)〜(d)において、上段はView−A(Top)による低倍率の写真、中段はView−A(Top)による高倍率の写真、下段は組成分析結果のグラフ、をそれぞれ示している。
【0056】
下段に示した組成分析結果のグラフから、本発明に係る樹脂基板の加工方法を行うことにより、貫通孔の内底面に残存する有機成分に起因する信号(C,O)が激減することが明らかとなった。また、エッチング処理時間の増加に伴い、貫通孔の内底面に残存する有機成分がさらに低減する様子も確認された。図9に示した例では、エッチング処理時間を7[min]以上とすれば、貫通孔の内底面から有機成分を十分に除去できることが分かった。
【0057】
図10は、貫通孔の内側面および内底面を観察した断面SEM写真である。(a)が低倍率の写真であり、(b)が(a)のサークル内を示す高倍率の写真である。
図10より、導体3からなる貫通孔の内底面4、及び、樹脂基板2からなる貫通孔の内側面5は、両者(内底面4、内側面5)の交点をなすコーナー部を含む全域において、平坦な表面形状が得られていることが確認された。
したがって、本発明は、樹脂基板の主面や、貫通孔の内側面および内底面における表面形状(プロファイル)を制御することが可能な、樹脂基板の加工方法の提供に貢献するものである。
【0058】
以上、本発明の樹脂基板の加工方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、樹脂基板の加工方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 基板、2 樹脂基板、2a 無機部材、2b 有機部材、2s 一方の主面、3 導体、4 内底面、5 非貫通孔、6 貫通孔。
図2
図8
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図9
図10
図11