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特開2017-141185プロレニン受容体リガンド及びアンタゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-141185(P2017-141185A)
(43)【公開日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】プロレニン受容体リガンド及びアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/435 20060101AFI20170721BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20170721BHJP
   C07D 221/04 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20170721BHJP
【FI】
   A61K31/435ZNA
   C07K2/00
   C07D221/04
   A61P43/00 111
   A61P27/02
   A61P29/00
   A61P9/00
   A61P5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-23315(P2016-23315)
(22)【出願日】2016年2月10日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】周東 智
(72)【発明者】
【氏名】石田 晋
(72)【発明者】
【氏名】神田 敦宏
(72)【発明者】
【氏名】桑原 智希
【テーマコード(参考)】
4C034
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C034CB06
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC27
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC20
4C086ZC42
4H045BA50
4H045BA51
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA23
4H045EA30
4H045FA10
4H045FA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シクロプロパンの構造的特徴を利用したβストランドミメティックを設計、合成し、新たな(プロ)レニン受容体リガンドの提供。溶解性・安定性などに優れ、臨床応用の可能性が高い、新たな(プロ)レニン受容体の阻害剤の提供。
【解決手段】式(1)等で示されるプロレニン受容体リガンド。

(Xはアルキル基等;Xは含窒素塩基性置換基を有するアルキル基等;X及びXはH又はそれぞれが結合するCと共にカルボニル基(C=O);R及びRは各々独立にH、アルキル等)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるプロレニン受容体リガンド。
【化1】
一般式(1)中、
1は、置換又は無置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)であり、
2は、含窒素塩基性置換基を有する直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)であり、
3及びX4は、水素原子であるか、またはそれぞれが結合する炭素原子と共にカルボニル基(C=O)を形成し、
1は、水素原子、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数は1〜6)、又は−CO−R10(R10は置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、カルボン酸基部位を除くアミノ酸残基、又はカルボン酸基部位を除くペプチド残基である)であり、
2は、−NH−R11又は−O−R12であり、R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはアミノ基部位を除くペプチド残基であり、R12は水素、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはペプチド残基である。
【請求項2】
下記一般式(2)で示されるプロレニン受容体リガンド。
【化2】
一般式(2)中、
1、R2、X3及びX4は、請求項1における定義と同義であり、
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である、
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基であり、
n及びmは、独立に、1〜5の範囲の整数である。
【請求項3】
下記一般式(3)で示されるプロレニン受容体アンタゴニスト。
【化3】
一般式(3)中、
3及びX4は、それぞれが結合する炭素原子と共にカルボニル基(C=O)を形成し、
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である、
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基であり、
n及びmは、独立に、1〜5の範囲の整数である。
【請求項4】
下記式Im-IIで示される化合物からなるプロレニン受容体アンタゴニスト。
【化4】
【請求項5】
請求項3または4に記載のプロレニン受容体アンタゴニストを有効成分として含有する網脈略膜炎症性疾患治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロレニン受容体リガンド、プロレニン受容体アンタゴニスト及びこのアンタゴニストを有効成分として含有する網脈略膜炎症性疾患治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロプロパン環は、これまで多くの医薬品で用いられてきたベンゼン環などの構造とは異なり、置換基が基本構造面の上下に飛び出すため空間的三次元多様性を備えた日本発の次世代ライブラリー骨格と言える。さらに、この分子を基にしてタンパク質と効率的に結合する官能基や親和性の高い構造(Previledge structure)を取り入れることで阻害あるいは活性効果を向上させることができる。周東らは、このシクロプロパン環を基本骨格とした低分子化合物の合成が可能であり(非特許文献1)、これまでにプロテアソーム阻害性化合物の開発に成功している(特許文献1)。
【0003】
レニン-アンジオテンシン系 (Renin-Angiotensin system; RAS) は血圧の調節、細胞の分化・増殖調節などにおいて重要な役割を果たしている。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンI (Ang I) に変換する酵素であり、RASの律速酵素となっている。Ang Iはアンジオテンシン変換酵素 (ACE) によりAng IIに変換され、最終産物であるAng IIがアンジオテンシン受容体に結合することにより、血圧上昇など様々な生理活性を示す。プロレニンはレニンの不活性前駆体であり、プロセグメント配列を有し、腎臓傍糸球体細胞でプロセグメントが切断され、活性化することは知られていたが、血中においてはどのように活性化するのか長い間明らかになっていなかった。
【0004】
RASに関係する薬剤に関しては、現在、組織RAS(臓器局所において細胞の分化・増殖や組織修復などの役割を担っている、図1の(2))のシグナルを抑制する阻害薬(直接レニン阻害薬;アリスキレン、ACE阻害薬;カプトプリル、ARB;ロサルタンなど)は多く存在する。しかしながら、それら阻害薬ではRAS非存在型細胞内シグナル活性化(図1の(1))を抑制することが出来ない。現在存在する唯一の(プロ)レニン受容体の阻害剤はペプチド製剤であるため溶解性・安定性などの問題が多数あり、直接の臨床応用は難しい(非特許文献2)。また、(プロ)レニン受容体タンパクの結晶構造なども解明されておらず、阻害薬開発は難航している。
【0005】
ところで、2002年にNguyenらによってプロレニンが(プロ)レニン受容体に結合することにより、非蛋白融解的に活性化を受けることが明らかにされた(非特許文献3)。プロレニンは副腎や網膜、子宮などからも産生されており、さらにプロレニンの血中濃度はレニンに比しておよそ10倍であるため、末梢組織におけるレニン活性の発現においてプロレニンが重要な役割を果たしていると考えられる。また、プロレニンが(プロ)レニン受容体に結合するとAng IIとは独立した機構で細胞内シグナルが活性化され、炎症などを引き起こすということが知られている。これらを制御する化合物として(プロ)レニン受容体リガンドの創製が近年盛んに研究されている。
【0006】
市原らはプロレニンのプロセグメント中の特定の配列 (R10IFLKRMPSI19; デコイペプチド) がペプチド鎖として (プロ)レニン受容体に高い親和性を示し、さらに、デコイペプチド中の5残基 (I11FLKR15; handle region peptide, HRP) がデコイペプチドと同等の阻害活性を持つということを報告している(非特許文献4)。(プロ)レニン受容体のX線結晶構造は現在得られておらず、HRPの受容体結合配座は明らかになっていないが、プロレニンのX線結晶構造がSanofi-Aventisのグループによって報告された(非特許文献5)。結晶構造中においてHRP相当部位はβストランド構造をとっていることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2014/168262A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Org. Lett. 2013, 15, 1686-1689
【非特許文献2】Satofuka, S.Kanda, A.Ishida, S. Receptor-associated prorenin system in the pathogenesis of retinal diseases. Front Biosci. 4: 1449-1460. 2012
【非特許文献3】Nguyen, G. et al., J. Clin. Invest. 2002, 109, 1417.
【非特許文献4】Ichihara, A. et al., Front. Biosci. 2007, 12, 4810.
【非特許文献5】Morales, R. et al., J. Mol. Biol. 2012, 421, 100.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、(プロ)レニン受容体とHRPの結合様式は明らかになっていない。そこで本発明者らは、プロレニン中での配座で(プロ)レニン受容体に結合しているという仮定のもと、プロレニン結晶構造中でβストランド構造をとっているHRP相当部位を模倣することで(プロ)レニン受容体リガンドを創製することを計画した。
【0010】
βストランドの構造的特徴は伸展した主鎖構造であり、また主鎖構造中の規則的に並んだ水素結合のドナー及びアクセプターとなる窒素原子、酸素原子もβストランド間でのβシート構造の形成に重要である。さらに規則的に両方向に伸びた側鎖構造も特徴であり、受容体との結合において疎水性相互作用を形成する部位で、結合親和性に大きく影響を与える部位である。
【0011】
ところで、ペプチドの医薬としての利用はその代謝安定性の低さや、体内分布に関する体内動態の問題から、インスリンなど少数に限られている。そのような欠点を克服するものとして複素環を母核とした構造を有するペプチドミメティックがこれまでに多く開発されてきた。しかし、分子量の増大、環構造により制御できる範囲が狭い、及び様々な側鎖構造の導入に困難な場合があるなどの問題がある。
【0012】
そこで本発明は、シクロプロパンの構造的特徴を利用したβストランドミメティックを設計、合成し、新たな(プロ)レニン受容体リガンドを提供することを目的とする。
【0013】
さらに本発明は、溶解性・安定性などに優れ、臨床応用の可能性が高い、新たな(プロ)レニン受容体の阻害剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、配座制御がなされたシクロプロパン環を骨格として、現在唯一存在する実験的RAPS阻害剤のPRRB((pro)renin receptor blocker)を模倣したシクロプロパン環化合物でのRAPS阻害剤の開発を試みた。その結果、構造修飾等を行いPRRBが有する欠点(安定性、溶解度など)を改良してRAPS阻害効果の高い化合物を提供することに成功した。
【0015】
本発明は、以下の通りである。
[1]
下記一般式(1)で示されるプロレニン受容体リガンド。
【化1】
一般式(1)中、
1は、置換又は無置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)であり、
2は、含窒素塩基性置換基を有する直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)であり、
3及びX4は、水素原子であるか、またはそれぞれが結合する炭素原子と共にカルボニル基(C=O)を形成し、
1は、水素原子、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数は1〜6)、又は−CO−R10(R10は置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、カルボン酸基部位を除くアミノ酸残基、又はカルボン酸基部位を除くペプチド残基である)であり、
2は、−NH−R11又は−O−R12であり、R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはアミノ基部位を除くペプチド残基であり、R12は水素、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはペプチド残基である。
[2]
下記一般式(2)で示されるプロレニン受容体リガンド。
【化2】
一般式(2)中、
1、R2、X3及びX4は、請求項1における定義と同義であり、
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である、
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基であり、
n及びmは、独立に、1〜5の範囲の整数である
[3]
下記一般式(3)で示されるプロレニン受容体アンタゴニスト。
【化3】
一般式(3)中、
3及びX4は、それぞれが結合する炭素原子と共にカルボニル基(C=O)を形成し、
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である、
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基であり、
n及びmは、独立に、1〜5の範囲の整数である。
[4]
下記式Im-IIで示される化合物からなるプロレニン受容体アンタゴニスト。
【化4】
[5]
[3]又は[4]に記載のプロレニン受容体アンタゴニストを有効成分として含有する網脈略膜炎症性疾患治療薬。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プロレニン受容体リガンドとして機能するシクロプロパン環化合物を提供することができる。本発明者らは、PRRBペプチドミメティック化合物Im-IIは、PRRBと同様もしくはそれ以上の抑制効果を示すことを見いだし、本発明によれば、新規(プロ)レニン受容体阻害薬(つまり世界初の低分子化合物でのRAPS(receptor-associated prorenin system)抑制薬)を提供するができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】受容体結合プロレニン系(receptor-associated prorenin system: RAPS)の説明図である。(プロ)レニン受容体は、プロレニンと結合することにより自身の細胞内シグナルの活性化が起こり、さらにプロレニンを活性型プロレニンに構造変化をさせ、組織レニン・アンジオテンシンアンジオテンシン系(RAS)活性を誘導する。結果、両方の細胞内シグナル活性の伝達によりVEGFなどの分子の発現が上昇し、炎症・血管新生が起こる。これらの(1)RAS非存在型細胞内シグナル活性化と(2)組織RAS活性化の2つを合わせて受容体結合プロレニン系(receptor-associated prorenin system: RAPS)という。
図2】プロレニン刺激によるFGF2遺伝子発現解析結果。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<プロレニン受容体リガンド>
本発明は、下記一般式(1)で示されるプロレニン受容体リガンドに関する。
【化5】
【0019】
一般式(1)中の各置換基は、以下の通りである。
1は、置換又は無置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)である。
無置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)は、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基であることができる。
【0020】
1に置換できる置換基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい芳香環(炭素数は6〜14)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、又はシアノ基であることができる。ヘテロ原子を含んでもよい芳香環は、C6−14アリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−アンスリル等が挙げられる。X1に置換できる置換基であるヘテロ原子を含んでもよい芳香環は、好ましくはフェニル基である。ヘテロ原子を含んでもよい芳香環であるヘテロアリール基としては、例えば、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれる原子を1〜3個含む、縮環していてもよい5〜14員芳香族複素環基が挙げられる。芳香族複素環基としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カリボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル等を例示できる。
【0021】
2は、含窒素塩基性置換基を有する直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)である。直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)は、X1の説明で例示した基を挙げることができる。X2に置換できる含窒素塩基性置換基は、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、又は窒素原子を含む塩基性複素環基であることができる。窒素原子を含む塩基性複素環基としては、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル等を挙げることができる。
【0022】
3及びX4は、それぞれ水素原子であるか、またはそれぞれが結合する炭素原子と共にカルボニル基(C=O)を形成する。
【0023】
1は、水素原子、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数は1〜6)、又は−CO−R10ある。R10は置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)であるか、又はカルボン酸基部位を除いたアミノ酸残基、若しくはカルボン酸基部位を除いたペプチド残基である。直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)は、X1の説明で例示した基を挙げることができる。R1の置換基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい芳香環、ハロゲン原子、又はシアノ基であることができ、X1の説明で例示した基と同様の基を挙げることができる。
【0024】
カルボン酸基部位を除いたアミノ酸残基、またはカルボン酸基部位を除いたペプチド残基は、アミノ酸又はペプチドの末端のカルボン酸基が結合先のアミノ基と縮合することで、ペプチド結合を形成する際の縮合構造におけるアミノ酸残基、またはペプチド残基である。アミノ酸残基、及びペプチド残基には特に制限はなく、種々のアミノ酸残基、及び、種々のペプチド残基であることでできる。なお、ペプチド残基はアミノ酸単位2〜5個が結合した基であり、その組成や長さは、リガンドとしての効果において適宜選択できる。
【0025】
2は、−NH−R11又は−O−R12である。R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはアミノ基部位を除くペプチド残基である。R12は水素原子、又は、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐アルキル基(炭素数1〜6)、アミノ基部位を除くアミノ酸残基、若しくはアミノ基部位を除くペプチド残基である。直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)は、X1の説明で例示した基を挙げることができる。R11及びR12における置換できる置換基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい芳香環、ハロゲン原子、又はシアノ基であることができ、X1の説明で例示した基と同様の基を挙げることができる。
【0026】
11の例であるアミノ基部位を除くアミノ酸残基は、アミノ酸残基からアミノ基(−NH2)を除いた基である。R11の例であるアミノ基部位を除くペプチド残基は、ペプチド残基の結合末端のアミノ酸残基からアミノ基(−NH2)を除いた基である。アミノ酸残基、及びペプチド残基には特に制限はなく、種々のアミノ酸残基、種々のペプチド残基であることでできる。
【0027】
12の例であるアミノ基部位を除くアミノ酸残基は、アミノ酸残基からアミノ基(−NH2)を除いた基である。R12の例であるアミノ基部位を除くペプチド残基は、ペプチド残基の結合末端のアミノ酸残基からアミノ基(−NH2)を除いた基である。アミノ酸残基、及びペプチド残基には特に制限はなく、種々のアミノ酸残基、種々のペプチド残基であることでできる。
11及びR12におけるペプチド残基はアミノ酸単位2〜5個が結合した基であり、その組成や長さは、リガンドとしての効果において適宜選択できる。
【0028】
一般式(1)で示されるプロレニン受容体リガンドは、より具体的には、下記一般式(2)で示されるプロレニン受容体リガンドであることができる。
【化6】
【0029】
一般式(2)中、R1、R2、X3及びX4は、一般式(1)における定義と同義である。
【0030】
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。X5の置換基である、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、及びハロゲン原子は、X1の説明で例示した基と同様の基を挙げることができる。X5は、好ましくは無置換のフェニル基である。mは、1〜5の範囲の整数であるが、好ましくは1〜3の範囲の整数である。
【0031】
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基である。窒素原子を含む塩基性複素環基は、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル等を挙げることができる。X6は、好ましくは第一級アミノ基であり、より好ましくはアミノ基−NH2である。nは、1〜5の範囲の整数であるが、好ましくは3〜5の範囲の整数である。
【0032】
一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【化7】
【0033】
一般式(1)及び(2)で示される本発明のリガンド化合物は、タンパク質のβ−シート構造に模した構造を有する物であり、R1及び/又はR2がアミノ酸残基、ペプチド残基を含む場合、当該リガンド化合物は、β−シート構造を有する擬似ペプチドとなる。
【0034】
<プロレニン受容体アンタゴニスト>
本発明は、下記一般式(3)で示されるプロレニン受容体アンタゴニストを包含する。この化合物は、プロレニン受容体に対する阻害効果を有する。
【化8】
【0035】
一般式(2)中の各置換基は以下の通りである。
5は、置換又は無置換のフェニル基であり、置換基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。X5の置換基である、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、及びハロゲン原子は、X1の説明で例示した基と同様の基を挙げることができる。X5は、好ましくは無置換のフェニル基である。mは、1〜5の範囲の整数であるが、好ましくは1〜3の範囲の整数である。
【0036】
6は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、グアジニノ基、窒素原子を含む塩基性複素環基であり、窒素原子を含む塩基性複素環基は、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル等を挙げることができる。X6は、好ましくは第一級アミノ基であり、より好ましくはアミノ基−NH2である。nは、1〜5の範囲の整数であるが、好ましくは3〜5の範囲の整数である。
【0037】
プロレニン受容体アンタゴニストとしては、好ましくは下記式で示される化合物である。
【化9】
【0038】
本発明は、上記一般式(3)又は式Im−IIで示されるプロレニン受容体アンタゴニストを有効成分として含有する網脈略膜炎症性疾患治療薬に関する。
本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、経口、非経口(静脈投与等)及び局所投与用の何れの投与形式でも使用することができる。本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、好ましくは点眼薬、軟膏、注射薬又は経口薬として使用できる。本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、眼軟膏、硝子体注射、又はテノン嚢下注射等の形態で使用するのに特に好適である。本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬の使用方法および用量は、使用者の症状、組成物に含まれる有効性成分や製剤の形態に応じて適宜選択することができる。例えば点眼薬の場合、通常、1回につき1〜3滴程度を一日あたり1〜6回程度点眼することにより使用することができる。例えば眼軟膏の場合は、通常、1回につき1mg〜100mg程度を一日あたり1〜6回程度塗布することにより使用することができる。例えば硝子体注射、又はテノン嚢下注射の場合は、通常、1回につき1μL〜100μL程度を一日あたり1〜6回程度注射することにより使用することができる。注射剤の全体積に対する有効成分の含有量は、例えば、0.0001%(w/v)以上、50.00%(w/v)以下であることができる。本発明に係る注射剤は、上記成分に加え、水等の分散媒、浸透圧調整剤、緩衝剤等を含んでもよい。
【0039】
本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、本発明の効果を妨げない限り、上記の有効成分に加えて、各種用途に応じて、種々の活性成分または薬効成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有していてもよい。このような成分の種類は特に制限されない。
【0040】
本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、点眼薬の場合、必要に応じて、生体に許容される範囲内のpHおよび/または浸透圧に調節される。許容されるp Hは、通常pH4.0〜9.0の範囲である。浸透圧は、通常100〜1200mOsmの範囲である。生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.3〜4.2程度である。pHや浸透圧の調節は、既述のpH調整剤、等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。本発明の網脈略膜炎症性疾患治療薬は、点眼薬の場合、水性または非水性の希釈剤等を用いて公知の方法により製造できる。例えば、水性の溶液剤または懸濁剤用希釈剤としては、蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。非水性の溶液剤または懸濁剤用希釈剤としては、植物油、流動パラフィン、鉱物油、プロピレングリコール、p−オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0041】
<製造方法>
一般式(1)〜(3)で示される化合物は、参考例及び実施例に示すように、公知化合物である(S)−エピクロロヒドリンを出発原料として、化合物9を経由して合成することができる。(S)−エピクロロヒドリンから化合物9の合成は、参考例1−1〜1−6に示す。
【0042】
さらに、X1が、無置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)である場合には、化合物9から化合物20(公知化合物)を経て合成できる。化合物9から化合物20の合成は、参考例1−7〜1−13に示す。
【0043】
化合物20を原料とする式Im−I−2、Im−I−3、Im−I−4の製造方法は、参考例1−14〜1−16及び実施例1−1〜1−3に記載する。
【0044】
さらに、X1が、フェニル置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)である場合には、化合物9から化合物25、27を経て合成できる。化合物9から化合物25、27の合成は、参考例2−1及び2−2に示す。
【0045】
化合物27を原料とする式Im−IIの製造方法は、参考例2−3〜2−7及び実施例2−1に記載する。
【0046】
また、X1が、フェニル置換の直鎖又は分岐アルキル基(炭素数は1〜6)である、Lac−IIは、化合物27を原料として合成される化合物32を原料として、参考例3−1及び実施例3−1に記載する方法で合成できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【0048】
共通事項
測定機器
NMRスペクトルはJEOL JNM-AL-400、JMN-ECX-400p、JMN-ECA-500を用いて測定した。1H-NMRスペクトルの化学シフトは、重クロロホルムを測定溶媒として用いた場合にはテトラメチルシラン(Si(CH3)4: 0 ppm)、重メタノールを用いた場合には溶媒の残留プロトン(CD2HOD: 3.31 ppm) を内部標準として表示した。13C-NMRスペクトルの化学シフト値は測定溶媒由来のシグナル(CDCl3: 77.0 ppm, CD3OD: 49.0 ppm)を内部標準として表示した。シグナルの多重度はs: singlet、d: doublet、t: triplet、q: quartet、dd: double doublet、ddd: double double doublet、m: multiplet、br: broadの略号を用いて示した。スピン結合定数はJ値を用い (Hz) で表示した。シグナルの帰属は1H-1H COSYスペクトルに基づいて行った。比旋光度 ([α]D) はJASCO P1030を用いて測定した。溶媒には市販の吸光分析用の溶媒を用いた。MSスペクトルはJEOL JMS-HX110、JEOL JMS-T100GCV、JEOL JMS-T100LCP、JEOL JMS-700TZを用いて測定した。元素分析はジェイ・サイエンスMICRO CORDER JM10を用いて測定した。HPLCは以下のシステムを用いたJASCO PU-2087 Plus (pump)、JASCO PU-2089 Plus (pump)、JASCO CO-2065 Plus (column oven)、JASCO MD-2018 Plus (detector)、JASCO LC-Net II/ADC (system controller)、Mightysil RP-18 GP 250-4.6 (5μm, KANTO CHEMICAL CO., INC.; column for determination of purity)、Mightysil RP-18 GP 250-20 (5μm, KANTO CHEMICAL CO., INC.; column for purification)
【0049】
実験材料
反応溶媒はモレキュラーシーブス3Aまたは4Aで乾燥させてから用いた。THFは市販の無水の物をそのまま用いた。試薬については特に記載のない限り、市販の一級または特級のものをそのまま用いた。アルゴンガス、水素ガスは市販のものをそのまま用いた。Pd/Cは10%Pd/C粉末 (含水品) PE-TYPE (N. E. Chemcat Co.) を使用した。TLCはMerk silica gel 60 F254を使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにはWakogel(R) 60N, 63-212μm (Wako Pure Chemical Industries Ltd.) を用いた。セライト濾過にはKanto Celite 545を使用した。
【0050】
【化10】
【0051】
参考例1-
(1R,5S)-1-Ethoxycarbonyl-3-oxabicyclo[3.1.0]hexan-2-one (1)
アルゴン雰囲気下、ナトリウムエトキシド (20% in EtOH, 154 mL, 330 mmol) のエタノール溶液 (1.50 L) にマロン酸ジエチル (50.3 mL, 330 mmol) を滴下し、室温で撹拌した。反応液に (S)-エピクロロヒドリン (23.5 mL, 300 mmol) を徐々に滴下し、室温で一晩撹拌したのち加熱還流した。2日後、減圧下溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、化合物1 (21.3 g, 125 mmol, 42%) を無色油状物質として得た。
【0052】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.37 (1H, dd, J = 9.3, 4.8 Hz), 4.26 (2H, m), 4.19 (1H, d, J = 9.3 Hz), 2.74 (1H, ddd, J = 7.9, 4.8, 4.8 Hz), 2.09 (1H, dd, J = 7.9, 4.8 Hz), 1.39 (1H, dd, J = 4.8, 4.8 Hz), 1.31 (3H, t, J = 7.1 Hz). 他各種機器スペクトルデータを文献記載のデータと比較して同定した。
【0053】
参考例1-2
(1S,2S)-1-Ethoxycarbonyl-1,2-bis(hydroxymethyl)cyclopropane (2)
アルゴン雰囲気下、化合物1 (19.9 g, 117 mmol) のエタノール溶液 (234 mL) を氷冷下30分間撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム (4.65 g, 123 mmol) を加え2時間撹拌し、反応液にアセトンを加えて反応を停止した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム:メタノール=19:1) で精製し、化合物2 (15.6 g, 89.4 mmol, 76%) を無色油状物質として得た。
【0054】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.53 (1H, d, J = 9.5 Hz), 4.17 (2H, m), 4.09 (1H, m), 3.41 (1H, dd, J = 10.6, 2.3 Hz), 3.32 (1H, m), 3.25-3.16 (2H, m), 2.06 (1H, m), 1.50 (1H, dd, J = 8.9, 4.9 Hz), 1.27 (1H, t, J = 7.1 Hz), 0.77 (1H, dd, J = 6.7, 4.9 Hz),. 他各種機器スペクトルデータを文献記載のデータと比較して同定した。
【0055】
参考例1-3
(1S,2S)-2-(tert-Butyldiphenylsioxy)methyl-1-ethoxycarbonyl-1-(hydroxymethyl)cyclopropane (3)
アルゴン雰囲気下、化合物2 (14.0 g, 80.6 mmol)、イミダゾール (11.6 g, 171 mmol) のジクロロメタン溶液 (720 mL) を−40℃で30分間撹拌し、TBDPSCl (22.0 mL, 84.6 mmol) のジクロロメタン溶液 (80.0 mL) をゆっくりと滴下し、一晩撹拌した。反応液にメタノールを加えて反応を停止し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=4:1) で精製し、化合物3 (27.5 g, 66.6 mmol, 83%) を無色油状物質として得た。
【0056】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.69-7.66 (4H, m), 7.46-7.39 (6H, m), 4.25-4.17 (3H, m), 4.03 (1H, dd, J = 11.9, 5.6 Hz), 3.58 (1H, dd, J = 12.6, 3.4 Hz), 3.51 (1H, dd, J = 11.9, 9.7 Hz), 3.26 (1H, dd, J = 9.7, 3.4 Hz), 2.01 (1H, m), 1.30-1.27 (4H, m), 1.04 (9H, s), 0.74 (1H, dd, J = 6.6, 4.6 Hz),. 他各種機器スペクトルデータを文献記載のデータと比較して同定した。
【0057】
参考例1-4
(1S,2S)-2-(tert-Butyldiphenylsiloxy)methyl-1-ethoxycarbonyl-1-((methoxymethoxymethyl)cyclopropane (4)
アルゴン雰囲気下、化合物3 (10.2 g, 24.7 mmol)、DIPEA (15.0 mL, 86.3 mmol) のジクロロメタン溶液 (247 mL) にクロロメチルメチルエーテル (3.74 mL, 49.3 mmol) を加え、一晩撹拌した。反応液にメタノールを加えて反応を停止し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=6:1) で精製し、化合物4 (10.2 g, 22.3 mmol, 90%) を無色油状物質として得た。
【0058】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.67-7.65 (4H, m), 7.47-7.36 (6H, m), 4.60 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.57 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.14 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.83 (1H, d, J = 10.9 Hz), 3.81-3.73 (2H, m), 3.72 (1H, d, J = 10.9 Hz), 3.25 (3H, s), 1.91 (1H, m), 1.44 (1H, dd, J = 9.2, 4.6 Hz), 1.25 (1H, t, J = 7.2 Hz), 1.05 (9H, s), 0.88 (1H, dd, J = 6.9, 4.6 Hz). 他各種機器スペクトルデータを文献記載のデータと比較して同定した。
【0059】
参考例1-5
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-(tert-butyldiphenylsiloxy)methyl-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (6)
アルゴン雰囲気下、化合物4 (2.36 g, 5.17 mmol) のTHF溶液 (25.8 mL) に水素化ホウ素リチウム (1.10 g, 50.5 mmol) を加え一晩加熱還流した。氷冷下、反応液にメタノール、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルと水で分配し有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。アルゴン雰囲気下、残渣のTHF/DMF (1/1)混合溶液 (25.8 mL) を氷冷下10分間撹拌し、水素化ナトリウム (60% in mineral oil, 310 mg, 7.75 mmol) を加え、10分間撹拌した。臭化ベンジル (922μL, 7.75 mmol)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム (382 mg, 1.03 mmol) を順次加え室温に昇温したのち3時間撹拌した。反応液にメタノール、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルと水で分配し有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=20:1) で精製し、化合物6 (2.03 g, 4.02 mmol, 78%) を無色油状物質として得た。
【0060】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.69-7.65 (4H, m), 7.43-7.26 (11H, m), 4.58-4.50 (4H, m), 3.80 (1H, dd, J = 11.0, 7.0 Hz), 3.69 (1H, dd, J = 11.0, 7.1 Hz), 3.59 (2H, s), 3.37 (2H, s), 3.23 (3H, s), 1.18 (1H, m), 0.69 (1H, dd, J = 8.0, 5.0 Hz), 0.45 (1H, dd, J = 5.6, 5.0 Hz). 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ 138.60, 135.59, 135.58, 133.84, 133.75, 129.55, 128.26, 127.59, 127.57, 127.53, 127.39, 96.32, 74.32, 72.41, 67.64, 63.62, 55.00, 26.81, 24.61, 23.91, 19.16, 13.39. [α]D22 +19.8 (c 1.07, CHCl3).
【0061】
参考例1-6
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[[(R)-tert-butylsulfinyl]formimidoyl]-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (9)
アルゴン雰囲気下、化合物6 (12.3 g, 24.4 mmol) のTHF溶液 (86 mL) にフッ化テトラブチルアンモニウム (1 M in THF, 36.6 mL, 36.6 mmol) を加え、室温で3時間撹拌し、減圧下溶媒を留去した。アルゴン雰囲気下、残渣のジクロロメタン溶液 (122 mL) にDess-Martin periodinane (12.4 g, 29.3 mmol) を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和重曹水と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧下溶媒を留去した。アルゴン雰囲気下、残渣のトルエン溶液 (122 mL) に無水硫酸第二銅 (19.5 g, 122 mmol)、(R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィナミド (5.92 g, 48.8 mmol) を加え、60℃で一晩撹拌した。反応液をセライト濾過し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、化合物9 (8.72 g, 23.7 mmol, 97%) を黄色油状物質として得た。
【0062】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.82 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.37-7.26 (5H, m), 4.57-4.50 (4H, m), 3.93 (1H, d, J = 10.7 Hz), 3.71 (1H, d, J = 9.9 Hz), 3.53 (1H, d, J = 10.7 Hz), 3.32 (1H, d, J = 9.9 Hz), 3.32 (3H, s), 2.08 (1H, m), 1.35-1.29 (2H, m), 1.19 (9H, s). 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ 168.10, 138.04, 128.36, 127.65, 127.54, 96.41, 72.86, 72.74, 66.64, 56.77, 55.29, 31.79, 26.49, 22.25, 17.68. [α]D18 -82.8 (c 1.15, CHCl3).
【0063】
【化11】
【0064】
参考例1-7
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1S)-1-[(R)-tert-butylsulfinyl]amino-3-methylbutyl]-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (10)
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1R)-1-[(R)-tert-butylsulfinyl]amino-3-methylbutyl]-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (11)
アルゴン雰囲気下、化合物9 (366 mg, 966μmol) のトルエン溶液 (19.9 mL) を110℃で10分間撹拌し、臭化イソブチルマグネシウム (2 M in Et2O, 0.996 mL, 1.99 mmol) を加え10分間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、ジクロロメタンと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、化合物10 (274 mg, 0.644 mmol, 65%) を白色固体として、化合物11 (80 mg, 0.19 mmol, 19%) を黄色油状物質として得た。
【0065】
Data for more polar (major) product : 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34-7.26 (5H, m), 4.61 (1H, d, J = 6.3 Hz), 4.59 (1H, d, J = 6.3 Hz), 4.52 (1H, d, J = 13.1 Hz), 4.49 (1H, d, J = 13.1 Hz), 3.69 (1H, d, J = 10.3 Hz), 3.55 (1H, d, J = 10.3 Hz), 3.38 (1H, d, J = 9.7 Hz), 3.35 (3H, s), 3.15 (1H, d, J = 4.5 Hz), 2.99 (1H, m), 1.80 (1H, m), 1.65-1.53 (2H, m), 1.21 (9H, s), 0.94-0.88 (7H, m), 0.82 (1H, dd, J = 8.4, 5.0 Hz), 0.64 (1H, dd, J = 5.9, 5.0 Hz). 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ 138.51, 128.27, 127.43, 127.40, 96.49, 74.24, 72.73, 67.55, 55.51, 55.23, 54.48, 45.91, 28.95, 25.56, 24.14, 23.73, 22.57, 21.29, 14.80.
【0066】
Data for less polar (minor) product : 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34-7.26 (5H, m), 4.66 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.63 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.52 (2H, s), 4.37 (1H, s), 4.08 (1H, d, J = 10.4 Hz), 3.77 (1H, d, J = 9.5 Hz), 3.37 (3H, s), 3.28 (1H, d, J = 10.4 Hz), 3.02 (1H, m), 3.01 (1H, d, J = 9.5 Hz), 1.90 (1H, m), 1.77 (1H, m), 1.41 (1H, m), 1.18 (9H, s), 0.94-0.79 (8H, m), 0.54 (1H, dd, J = 5.2, 5.0 Hz). 13C-NMR (125 MHz, CDCl3) δ 138.33, 128.29, 127.50, 127.50, 96.35, 74.15, 72.81, 67.33, 55.40, 54.82, 52.32, 44.73, 27.46, 24.62, 24.02, 23.93, 22.58, 22.40, 14.90.
【0067】
【化12】
【化13】
【0068】
参考例1-8
(1S,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1S)-1-tert-butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-1-(hydroxymethyl)cyclopropane (12)
化合物10 (744 mg, 1.75 mmol) に2 N HCl MeOH (17.5 mL, 35.0 mmol) を加えて室温で24時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、エタノールで共沸し、過分な塩酸を取り除いた。残渣のメタノール溶液 (17.5 mL) にトリエチルアミン (730μL, 5.24 mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル (482μL, 2.10 mmol) を加えて室温で一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=4:1) で精製し、化合物12 (663 mg, 1.65 mmol, 94%) を白色固体として得た。
【0069】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.26 (5H, m), 4.55 (1H, d, J = 12.2 Hz), 4.51 (1H, d, J = 12.2 Hz), 4.40 (1H, m), 3.91 (1H, br d, J = 10.0 Hz), 3.69 (1H, m), 3.50 (1H, d, J = 9.6 Hz), 3.47 (3H, m), 3.26 (1H, d, J = 9.6 Hz), 2.62 (1H, m), 1.69 (1H, m), 1.55-1.44 (11H, s), 0.91 (6H, d, J = 6.6 Hz), 0.82 (1H, m), 0.68 (1H, m), 0.56 (1H, m).
【0070】
参考例1-9
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1S)-1-tert-butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-1-[trans-2-(ethoxycarbonyl)ethenyl]cyclopropane (16)
アルゴン雰囲気下、塩化オキサリル (240μL, 2.79 mmol) のジクロロメタン溶液 (7.0 mL) を−78℃で撹拌し、ジメチルスルホキシド (396μL, 5.58 mmol) のジクロロメタン溶液 (3.5 mL) を滴下し、1時間撹拌した。反応液に化合物12 (527 mg, 1.40 mmol) のジクロロメタン溶液 (3.5 mL) を加えて1時間撹拌し、トリエチルアミン (1.56 mL, 11.2 mmol) を加えて1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し得た。アルゴン雰囲気下、残渣のトルエン溶液 (7.0 mL) にPh3PCHCO2Et (2.43 g, 6.98 mmol) を加えて110℃で一晩撹拌した。反応液を酢酸エチルと水で分配し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル:ヘキサン=6:1) で精製し、化合物16 (613 mg, 1.38 mmol, 99%) を白色固体として得た。
【0071】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.26 (5H, m), 6.85 (1H, d, J = 15.6 Hz), 5.98 (1H, d, J = 15.6 Hz), 4.53 (1H, d, J = 12.3 Hz), 4.48 (1H, d, J = 12.3 Hz), 4.36 (1H, m), 4.18 (2H, m), 3.42 (1H, d, J = 10.0 Hz), 3.38 (1H, d, J = 10.0 Hz), 1.63 (1H, m), 1.44 (9H, s), 1.35 (1H, m), 1.26 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.21 (2H, m), 1.11 (1H, m), 1.07 (1H, m), 0.86-0.82 (6H, m).
【0072】
参考例1-10
(1R,2S)-2-[(1S)-1-tert-Butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-1-[2-(ethoxycarbonyl)ethyl]cyclopropanecarbaldehyde (17)
化合物16 (1.35 g, 3.04 mmol) の酢酸エチル溶液 (15.1 mL) に酸化白金 (275 mg, 1.22 mmol) を加え、水素雰囲気下で一晩撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下溶媒を留去した。残渣のメタノール溶液 (60.7 mL) に10%パラジウム炭素 (405 mg) を加え、水素雰囲気下で1時間撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下溶媒を留去した。アルゴン雰囲気下、残渣のジクロロメタン溶液 (15.1 mL) にDess-Martin periodinane (1.42 g, 3.34 mmol) を加え氷冷下30分間撹拌した後、室温で1時間撹拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、ジクロロメタンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1) で精製し、化合物17 (794 mg, 2.23 mmol, 74%) を無色油状物質として得た。
【0073】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.63 (1H, s), 4.43 (1H, m), 4.13 (2H, q, J = 7.1 Hz), 3.47 (1H, m), 2.57 (1H, m), 2.39 (2H, m), 1.67 (1H, m), 1.61-1.52 (2H, m), 1.45 (9H, s), 1.35 (1H, m), 1.29-1.20 (3H, m), 1.25 (3H, t, J = 7.1 Hz), 0.92-0.89 (6H, m).
【0074】
参考例1-11
(1R,2S)-2-[(1S)-1-tert-butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-1-[2-(ethoxycarbonyl)ethyl]cyclopropanecarboxylic acid (18)
アルゴン雰囲気下、化合物17 (790 mg, 2.22 mmol) のアセトン/水 (= 3/1) 溶液 (22.2 mL) に2-メチル-2-ブテン (1.06 mL, 8.74 mmol)、リン酸二水素一ナトリウム二水和物 (347 mg, 2.22 mmol)、亜塩素酸ナトリウム (704 mg, 7.78 mmol) を加えて、室温で一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、クロロホルムと1 N HCl aq.で分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホル:メタノール=19:1) で精製し、化合物18 (773 mg, 2.08 mmol, 93%) を白色固体として得た。
【0075】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.41 (1H, d, J = 9.0 Hz), 4.12 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.43 (1H, m), 2.61 (1H, m), 2.47-2.31 (2H, m), 1.68 (1H, m), 1.60-1.39 (13H, m), 1.29 (1H, m), 1.25 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.98-0.90 (7H, m).
【0076】
参考例1-12
(1R,2S)-2-[(1S)-1-tert-Butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-1-[2-(ethoxycarbonyl)ethyl]-1-[[(1S)-1-benzyloxycarbonyl-3-methylbutyl]carbamoyl]cyclopropane (19)
アルゴン雰囲気下、化合物18 (770 mg, 2.07 mmol) のジクロロメタン溶液 (20.7 mL) にTsOH・Leu-OBn (857 mg, 2.18 mmol) を加えて氷冷下10分間撹拌したのちEDC・HCl (437 mg, 2.28 mmol)、HOBt (308 mg, 2.28 mmol)、トリエチルアミン (318μL, 2.28 mmol) を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を酢酸エチルと1 N HCl aq.で分配し、有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=4:1) で精製し化合物19 (1.20 g, 2.09 mmol, 101%) を無色油状物質として得た。
【0077】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.32 (5H, m), 6.50 (1H, d, J = 7.0 Hz), 5.18 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.11 (1H, d, J = 12.2 Hz), 4.60 (1H, m), 4.40 (1H, d, J = 9.9 Hz), 4.14 (2H, t, J = 7.2 Hz), 3.41 (1H, m), 2.48 (2H, dd, J = 7.6, 7.4 Hz), 2.24 (1H, m), 1.80 (1H, m), 1.67-1.55 (4H, m), 1.44-1.38 (10H, m), 1.29-1.24 (6H, m), 0.93-0.89 (12H, m), 0.74 (1H, m).
【0078】
参考例1-13
(1S,3S)-1-[(1S)-1-tert-Butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-benzyloxycarbonyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione (20)
アルゴン雰囲気下、化合物19 (563 mg, 0.979 mmol) のDMF溶液 (19.6 mL) に炭酸カリウム (1.35 g, 9.79 mmol) を加えて60℃で一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル:ヘキサン=6:1) で精製し、化合物20 (460 mg, 0.870 mmol, 89%) を無色非結晶性固体として得た。
【0079】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.26 (5H, m), 5.34 (1H, dd, J = 9.5, 5.0 Hz), 5.17 (1H, d, J = 12.3 Hz), 5.02 (1H, d, J = 12.3 Hz), 4.45 (1H, d, J = 9.9 Hz), 3.41 (1H, m), 2.79-2.69 (2H, m), 2.06-1.99 (2H, m), 1.89-1.74 (3H, m), 1.65 (1H, m), 1.49-1.42 (11H, m), 1.26-1.14 (2H, m), 0.97 (1H, m), 0.92-0.87 (12H, m).
【0080】
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.25 (1H, dd, J = 9.3, 5.3 Hz), 3.02 (1H, m), 2.83 (1H, dd, J = 9.9, 4.7 Hz), 2.20 (1H, m), 2.01 (1H, m), 1.96-1.84 (2H, m), 1.76-1.70 (3H, m), 1.53 (1H, m), 1.35 (1H, dd, J = 9.0, 4.5 Hz), 1.07 (1H, dd, J = 6.7, 4.5 Hz), 0.98-0.94 (6H, m), 0.91-0.87 (9H, m).
【0081】
【化14】
【化15】
【化16】
【0082】
参考例1-15
(1S,3S)-1-[(1S)-1-tert-Butoxycarbonylamino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-carbamoyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione (21)
化合物20 (128 mg, 243μmol) のメタノール溶液 (4.86 mL) に10%パラジウム炭素 (39 mg) を加え、水素雰囲気下で10分間撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下溶媒を留去した。残渣のTHF溶液 (2.43 mL) にトリエチルアミン (41μL, 0.29 mmol)、クロロギ酸エチル (28μL, 0.29 mmol) を加え、1時間撹拌した。さらに28%アンモニア水溶液 (169μL, 2.43 mmol) を加え、一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルと1 N HCl aq. で分配した。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム:メタノール=99:1) で精製し、化合物21 (61 mg, 0.14 mmol, 57%) を白色固体として得た。
【0083】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.87 (2H, s), 5.24 (1H, dd, J = 10.2, 5.0 Hz), 4.65 (1H, d, J = 9.5 Hz), 3.44 (1H, m), 2.85-2.77 (2H, m), 2.13 (1H, m), 1.99 (1H, m), 1.87-1.59 (4H, m), 1.55-1.22 (13H, m), 1.04 (1H, m), 0.96-0.89 (12H, m).
【0084】
実施例1-1
(1S,3S)-1-[(1S)-Amino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-carbamoyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione trifluoroacetate (Im-I-2)
化合物21 (29 mg, 67μmol) に氷冷下ジクロロメタン (0.67 mL)、トリフルオロ酢酸 (0.67 mL) を加えて一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、ジクロロメタンで共沸して過分なトリフルオロ酢酸を除いたのち、ジエチルエーテルでトリチュレーションし、化合物Im-I-2のトリフルオロ酢酸塩 (31 mg, 68μmol, 102%) を白色粉末として得た。
【0085】
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.24 (1H, dd, J = 10.4, 4.8 Hz), 3.02 (1H, m), 2.93-2.79 (2H, m), 2.21 (1H, m), 2.06-1.94 (2H, m), 1.85-1.71 (4H, m), 1.54 (1H, m), 1.35-1.31 (2H, m), 1.10 (1H, dd, J = 6.7, 4.7 Hz), 0.99-0.90 (12H, m).
【0086】
参考例1-16
(1S,3S)-1-[(1S)-1-Acetylamino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-benzyloxycarbonyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione (22)
化合物20 (205 mg, 389μmol) に4 N HCl ジオキサン溶液 (3.89 mL, 15.6 mmol) を加え、一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、エタノールで3回、トルエンで1回共沸した。残渣のジクロロメタン溶液 (0.26 mL) にトリエチルアミン (136μL, 972μmol)、無水酢酸 (44μL, 0.47 mmol) を加え、1時間撹拌した。メタノールを加えて反応を停止し、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルと1 N HCl aq. で分配し、有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、化合物22 (167 mg, 355μmol, 91%) を無色非結晶性固体として得た。
【0087】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.35-7.30 (5H, m), 5.34 (1H, dd, J = 9.5, 4.6 Hz), 5.34 (1H, m), 5.17 (1H, d, J = 12.5 Hz), 5.02 (1H, d, J = 12.5 Hz), 3.80 (1H, m), 2.79-2.67 (2H, m), 2.11-2.00 (2H, m), 2.00 (3H, s), 1.88-1.75 (3H, m), 1.61-1.43 (3H, m), 1.22 (1H, m), 1.14 (1H, dd, J = 9.2, 4.0 Hz), 0.96-0.89 (13H, m).
【0088】
実施例1-2
(1S,3S)-1-[(1S)-Acetylamino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-carboxyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione (Im-I-3)
化合物22 (136 mg, 289μmol) のメタノール溶液 (5.78 mL) に10%パラジウム炭素 (41 mg) を加え、水素雰囲気下で1時間撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム:メタノール=19:1) で精製し、化合物Im-I-3 (111 mg, 291μmol, 101%) を白色固体として得た。
【0089】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.80 (1H, br), 6.24 (1H, d, J = 8.6 Hz), 5.30 (1H, dd, J = 9.3, 5.0 Hz), 3.79 (1H, m), 2.84-2.72 (2H, m), 2.12 (1H, m), 1.98 (3H, s), 1.95 (1H, m), 1.87-1.74 (3H, m), 1.59-1.50 (2H, m), 1.44 (1H, m), 1.26-1.18 (2H, m), 0.90-0.85 (12H, m).
【0090】
実施例1-3
(1S,3S)-1-[(1S)-1-Acetylamino-3-methylbutyl]-5-[(1S)-1-carbamoyl-3-methylbutyl]-5-azaspiro[2,5]octan-4,6-dione (Im-I-4)
化合物Im-I-3 (55 mg, 0.15 mmol) のTHF溶液 (2.9 mL) にトリエチルアミン (15μL, 0.16 mmol)、クロロギ酸エチル (22μL, 0.16 mmol) を加え、1時間撹拌した。さらに28%アンモニア水溶液 (1.0 mL, 1.5 mmol) を加え、一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルと1 N HCl aq. で分配した。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム:メタノール=19:1) で精製し、化合物Im-I-4 (39 mg, 0.10 mmol, 71%) を白色固体として得た。
【0091】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 6.00 (1H, d, J = 9.2 Hz), 5.94-5.80 (2H, br), 5.25 (1H, dd, J = 10.0, 4.9 Hz), 3.81 (1H, m), 2.83-2.80 (2H, m), 2.15 (1H, m), 2.00 (3H, s), 1.97 (1H, m), 1.89-1.82 (2H, m), 1.76 (1H, m), 1.61 (1H, m), 1.55 (1H, m), 1.37 (1H, m), 1.29-1.23 (2H, m), 0.99 (1H, dd, J = 5.3, 5.3 Hz), 0.92-0.88 (12H, m).
【0092】
【化17】
【0093】
参考例2-1
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1S)-1-[(R)-tert-butylsulfinyl]amino-2-phenylethyl]-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (25)
(1R,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1R)-1-[(R)-tert-butylsulfinyl]amino-2-phenylethyl]-1-(methoxymethoxymethyl)cyclopropane (26)
アルゴン雰囲気下、化合物9 (671 mg, 1.82 mmol) のトルエン溶液 (36.5 mL) を110℃で10分間撹拌し、臭化ベンジルマグネシウム (0.6 M in THF, 6.08 mL, 3.65 mmol) を加え10分間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルと水で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、化合物25 (735 mg, 1.60 mmol, 88%) を黄色油状物質として、化合物26 (104 mg, 0.226 mmol, 12%) を黄色油状物質として得た。
【0094】
Data for more polar (major) product : 1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.20 (10H, m), 4.65 (1H, d, J = 6.7 Hz), 4.63 (1H, d, J = 6.7 Hz), 4.55 (1H, d, J = 12.2 Hz), 4.52 (1H, d, J = 12.2 Hz), 3.73 (1H, d, J = 10.3 Hz), 3.57 (1H, d, J = 10.3 Hz), 3.51 (1H, d, J = 9.6 Hz), 3.36 (3H, s), 3.34 (1H, d, J = 4.3 Hz), 3.30 (1H, d, J = 9.6 Hz), 3.29-3.21 (2H, m), 2.88 (1H, m), 1.13 (9H, s), 0.89 (2H, m), 0.73 (1H, m).
【0095】
Data for less polar (minor) product : 1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.34-7.19 (10H, m), 4.63 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.60 (1H, d, J = 6.6 Hz), 4.48 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.45 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.41 (1H, s), 3.99 (1H, d, J = 10.5 Hz), 3.71 (1H, d, J = 9.6 Hz), 3.35 (3H, s), 3.28 (1H, dd, J = 13.2, 4.3 Hz), 3.19 (1H, d, J = 10.5 Hz), 3.15 (1H, m), 2.95 (1H, d, J = 9.6 Hz), 2.80 (1H, d, J = 13.2, 8.0 Hz), 1.20 (9H, s), 0.86 (1H, m), 0.62 (1H, dd, J = 8.6, 5.4 Hz), 0.06 (1H, dd, J = 5.4, 5.4 Hz).
【0096】
参考例2-2
(1S,2S)-1-(Benzyloxymethyl)-2-[(1S)-1-tert-butoxycarbonylamino-2-phenylethyl]-1-(hydroxymethyl)cyclopropane (27)
化合物12を得た時(参考例1-8)と同様にして、化合物25 (693 mg, 1.51 mmol) から化合物27 (578 mg, 1.40 mmol, 93%) を白色固体として得た。
【0097】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.19 (10H, m), 4.56 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.54 (1H, m), 4.51 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.73 (1H, dd, J = 11.9, 4.7 Hz), 3.53 (1H, m), 3.46 (1H, d, J = 9.5 Hz), 3.40 (1H, m), 3.26 (1H, d, J = 9.5 Hz), 3.08-2.96 (2H, m), 2.48 (1H, m), 1.41 (9H, s), 0.88 (1H, m), 0.58 (2H, m).
【0098】
【化18】
【0099】
参考例2-3
α,β-Unsaturated ester 31
化合物16を得た時(参考例1-9)と同様にして、化合物27 (1.22 g, 2.97 mmol) から化合物31 (1.32 g, 2.76 mmol, 93%) を無色油状物質として得た。
【0100】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.13 (10H, m), 6.51 (1H, d, J = 15.8 Hz), 5.82 (1H, d, J = 15.8 Hz), 4.52 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.50 (1H, m), 4.48 (1H, d, J = 12.0 Hz), 4.19 (1H, d, J = 7.0 Hz), 3.47 (1H, m), 3.38 (1H, d, J = 9.7 Hz), 3.31 (1H, d, J = 9.7 Hz), 2.90-2.73 (2H, m), 1.42 (9H, s), 1.31 (1H, t, J = 7.0 Hz), 1.20 (1H, m), 1.10-1.05 (2H, m).
【0101】
参考例2-4
Aldehyde 32
化合物17を得た時(参考例1-10)と同様にして、化合物31 (203 mg, 0.423 mmol) から化合物32 (110 mg, 0.282 mmol, 67%) を無色油状物質として得た。
【0102】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.62 (1H, s), 7.31-7.09 (10H, m), 4.61 (1H, m), 4.11 (1H, q, J = 7.1 Hz), 3.61 (1H, m), 2.90-2.80 (2H, m), 2.50 (1H, m), 2.27 (1H, m), 2.00 (1H, m), 1.50-1.23 (15H, m), 1.06 (1H, m).
【0103】
参考例2-5
Carboxylic acid 33
化合物18を得た時(参考例1-11)と同様にして、化合物32 (466 mg, 1.20 mmol) から化合物33 (408 mg, 1.01 mmol, 84%) を無色非結晶性固体として得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.31-7.15 (5H, m), 4.60 (1H, m), 4.11 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.59 (1H, m), 3.00-2.86 (2H, m), 2.57 (1H, m), 2.34 (1H, m), 1.93 (1H, m), 1.59-1.53 (2H, m), 1.42-1.35 (10H, m), 1.26 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.85 (1H, m).
【0104】
参考例2-6
Amide 34
アルゴン雰囲気下、化合物33 (53 mg, 0.13 mmol) のジクロロメタン溶液 (1.3 mL) にHCl・Lys(Z)-OBn (56 mg, 0.14 mmol) を加えて氷冷下10分間撹拌したのちEDC・HCl (28 mg, 0.14 mmol)、HOBt (19 mg, 0.14 mmol)、トリエチルアミン (20μL, 0.14 mmol) を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を酢酸エチルと1 N HCl aq.で分配し、有機層を飽和重層水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=2:1) で精製し化合物34 (90 mg, 0.12 mmol, 90%) を無色油状物質として得た。
【0105】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.31 (9H, m), 7.26-7.18 (6H, m), 6.14 (1H, d, J = 6.9 Hz), 5.25 (1H, d, J = 12.0 Hz), 5.16 (1H, d, J = 12.0 Hz), 5.08 (2H, s), 4.95 (1H, m), 4.63 (1H, m), 4.51 (1H, dd, J = 12.9, 7.7 Hz), 4.06 (2H, m), 3.48 (1H, m), 3.12 (2H, m), 2.97 (1H, dd, J = 12.9, 4.0 Hz), 2.68 (1H, dd, J = 12.9, 8.0 Hz), 2.26 (2H, m), 1.83 (1H, m), 1.67 (1H, m), 1.47-1.19 (20H, m), 0.50 (1H, m).
【0106】
参考例2-7
Imide 35
アルゴン雰囲気下、化合物34 (300 mg, 0.396 mmol) のDMF溶液 (7.9 mL) に炭酸カリウム (547 mg, 3.96 mmol) を加えて40℃で一晩撹拌した。反応液を酢酸エチルと水で分配し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル:ヘキサン=2:1) で精製し、化合物35 (268 mg, 0.377 mmol, 95%) を無色非結晶性固体として得た。
【0107】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.35-7.11 (15H, m), 5.17 (1H, d, J = 12.3 Hz), 5.17 (1H, m), 5.08 (2H, s), 5.01 (1H, d, J = 12.3 Hz), 4.78 (1H, m), 4.71 (1H, m), 3.46 (1H, m), 3.22-3.17 (2H, m), 2.96 (1H, dd, J = 13.0, 5.0 Hz), 2.70 (1H, dd, J = 3.0, 8.6 Hz), 2.47 (1H, m), 2.38 (1H, m), 2.19 (1H, m), 1.90 (1H, m), 1.83 (1H, m), 1.54 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.36 (1H, m), 1.28 (2H, m), 1.09 (1H, m), 0.98 (1H, dd, J = 9.7, 4.0 Hz), 0.75 (1H, m).
【0108】
実施例2-1
Target compound Im-II
化合物35 (70 mg, 99μmol) のメタノール溶液 (0.99 mL) に10%パラジウム炭素 (15 mg) を加えて、水素雰囲気下10分間撹拌した。反応液をセライトろ過し、減圧下溶媒を留去した。残渣に氷冷下ジクロロメタン (0.50 mL)、トリフルオロ酢酸 (0.50 mL) を加えて一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、ジクロロメタンで共沸して過分なトリフルオロ酢酸を除いたのち、逆相HPLC (25% MeOH/H2O including 0.1% TFA) で精製することで、化合物Im-IIのトリフルオロ酢酸塩 (53 mg, 86μmol, 88%) を白色粉末として得た。
【0109】
Data for Im-II: 1H-NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.31-7.22 (5H, m), 5.12 (1H, dd, J = 8.6, 5.4 Hz), 3.20 (1H, m), 3.14 (1H, m), 2.97-2.91 (3H, m), 2.54 (1H, m), 2.27-2.13 (3H, m), 1.79 (1H, m), 1.69 (2H, m), 1.37-1.23 (4H, m), 0.98 (1H, dd, J = 6.6, 4.6 Hz), 0.74 (1H, m).
【0110】
【化19】
【0111】
参考例3-1
Lactam 49
アルゴン雰囲気下、化合物32 (71 mg, 0.18 mmol)、HCl・H-Lys(Z)-OBn (149 mg, 366μmol) のジクロロメタン溶液 (3.7 mL) にトリエチルアミン (51μL, 0.37 mmol)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム (78 mg, 0.37 mmol) を加え、60℃で2日間撹拌した。飽和重層水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、化合物49 (71 mg, 0.10 mmol, 55%) を無色油状物質として得た。
【0112】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.35-7.13 (15H, m), 5.12 (1H, m), 5.15-5.04 (4H, m), 4.94 (1H, m), 4.71 (1H, m), 3.37 (1H, m), 3.18 (2H, m), 3.08 (1H, d, J = 11.5 Hz), 3.06 (1H, m), 2.63 (1H, dd, J = 12.9, 8.3 Hz), 2.36 (2H, m), 2.23 (1H, d, J = 11.5 Hz), 1.91 (1H, m), 1.65 (1H, m), 1.53 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.23 (2H, m), 1.12 (1H, m), 0.93 (1H, m), 0.70 (1H, m), 0.50 (1H, m), 0.34 (1H, m).
【0113】
実施例3-1
Target compound Lac-II
化合物49 (27 mg, 38μmol) のメタノール溶液 (0.99 mL) に10%パラジウム炭素 (15 mg) を加えて、水素雰囲気下10分間撹拌した。反応液をセライトろ過し、減圧下溶媒を留去した。残渣に氷冷下ジクロロメタン (0.50 mL)、トリフルオロ酢酸 (0.50 mL) を加えて一晩撹拌した。減圧下溶媒を留去し、ジクロロメタンで共沸して過分なトリフルオロ酢酸を除いたのち、ジエチルエーテルでトリチュレーションし、化合物Lac-IIのトリフルオロ酢酸塩 (23 mg, 39 mmol, 101%) を白色粉末として得た。
【0114】
Target compound Lac-II
1H-NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.39-7.29 (5H, m), 4.95 (1H, dd, J = 10.9, 4.9 Hz), 3.21 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.20 (1H, m), 3.10 (1H, m), 3.00-2.86 (3H, m), 2.42 (1H, d, J = 12.0 Hz), 2.34 (1H, m), 2.21 (1H, m), 1.98 (1H, m), 1.79 (1H, m), 1.71 (2H, m), 1.31 (2H, m), 1.12 (1H, m), 1.00 (1H, m), 0.95 (1H, m), 0.63 (1H, m), 0.56 (1H, dd, J = 5.2, 4.9 Hz).
【0115】
試験例
プロレニン受容体応答試験
ヒト培養網膜ミューラー細胞(MIO-M1細胞)を96well plateに播種し培養後、翌日に無血清培地に交換した。さらに24時間後、本発明の化合物Im-I-2、Im-I-3、Im-I-4、Im-II、Lac-II及び対照として、ペプチドRIFLKRMPSI(decoy)、IFLKR(HRP)、IFAKR、さらには、HFRW(negative control)を最終濃度1uMとなるように培地中に添加した。そして15分後、組換えヒトプロレニンタンパク質を最終濃度10nMとなるように添加し、24時間培養を行った。その後、SuperPrep Cell Lysis & RT Kit for qPCRキット(東洋紡)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、標的遺伝子FGF2遺伝子発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子発現量を測定した。前記FGF2遺伝子発現量は、前記GAPDH遺伝子発現量により補正した。
【0116】
前記PCRは、試薬としてGoTaq qPCR Master Mix(Promega)、機器としてStepOne Plus(Life Techonologies)を用いた。FGF2遺伝子およびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
ヒトFGF2遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号1) 5’- ACGGCGTCCGGGAGAA -3’
(配列番号2) 5’- ACACTCCCTTGATGGACACAACT -3’
ヒトGAPDH遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号3) 5’- CCTGGCCAAGGTCATCCATG -3’
(配列番号4) 5’- GGAAGGCCATGCCAGTGAGC -3’
【0117】
補正後のFGF2遺伝子の発現量について、コントロール(未処理)の細胞における発現量を1として、各処理細胞での発現量の相対値を求めた。
結果を図2に示す。
【0118】
図2に示す結果から、プロレニンタンパク質添加により約2倍にまでFGF2遺伝子発現量は惹起され、阻害剤のポジティブコントロールのPRRB(RIFLKRMPSI(decoy))やHRP(IFLKR)の前処理により有意に抑制された。さらにPRRBペプチドミメティック化合物Im-IIにおいても有意な抑制が認められた(図2)。一方、PRRBペプチドミメティック化合物Im-I-2、Im-I-3、Im-I-4、及びLac-II有意なFGF2遺伝子発現量の増進が認められた。
【0119】
PRRBペプチドミメティック化合物Im-IIは、PRRBと同様もしくはそれ以上の抑制効果を示すことを見いだした。新規(プロ)レニン受容体阻害薬(つまり世界初の低分子化合物でのRAPS抑制薬)としての可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、プロレニン受容体リガンドとして機能する物質に関する分野に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0121】
配列番号1及び2:ヒトFGF2遺伝子用PCRプライマーセット
配列番号3及び4:ヒトGAPDH遺伝子用PCRプライマーセット
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]