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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148237(P2017-148237A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/097 20060101AFI20170804BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   A61B5/08 400
   A61M16/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-33487(P2016-33487)
(22)【出願日】2016年2月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林 裕馬
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昇
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆志
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SU17
4C038SX02
(57)【要約】
【課題】着用時の見映えを良くするとともに着用時の違和感を低減し、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定する。
【解決手段】マスク(1)は、マスク(1)を装着した生体の側に位置している第1シート(2)と、第1シート(2)に対向して配置されている第2シート(3)とを少なくとも含む複数のシートと、第1シート(2)と第2シート(3)とにより形成される空間にガスを供給するためのガス供給口(7)と、第1シート(2)と生体との間に配置され、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入するガスサンプルチューブ(9)を接続するための接続部(10)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気および呼気の少なくとも一方における成分を分析する際に装着されるマスクであって、
上記マスクを装着した生体の側に位置している第1シートと、上記第1シートに対向して配置されている第2シートとを少なくとも含む複数のシートと、
上記第1シートと上記第2シートとにより形成される空間にガスを供給するためのガス供給口と、
上記第1シートと上記生体との間に配置され、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入する導入経路を接続するための接続部と、を備えていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
上記第2シートは、上記第1シートよりもガス透過性が低いことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
上記第1シートと上記生体との間に配置されている第3シートを備え、
上記生体と上記第3シートとの間に、上記接続部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
上記第1シートと上記生体との間に配置されている第3シートを備え、
上記第1シートと上記第3シートとの間に、上記接続部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスク。
【請求項5】
上記接続部の上記生体に対する側は開口部が形成されており、上記生体に対する側と反対側は、上記ガスの侵入を阻止する阻止面が形成されていることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載のマスク。
【請求項6】
上記第1シートにおいて、マスク装着時に上記生体の呼吸器官開口部と対向する範囲を除く位置に、上記空間内に貯留される上記ガスを上記生体内に供給するための孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気および呼気の少なくとも一方における成分を分析する際に装着されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患、神経筋疾患などにより呼吸器機能が正常に機能しない場合は、マスクや鼻カニューラなどを使用して患者の鼻や口元に酸素を加給することが行われる。より高濃度の酸素を必要とする患者に対してはリザーババックを組み合わる方法、さらに呼吸の補助が必要となる患者に対してはマスクを密着させ陽圧換気を付加することにより強制的に肺を膨らませる方法、などが採用されている。
【0003】
このようなマスクや鼻カニューラは、患者の口、鼻または口および鼻に長時間密接または密着して使用されるために、装着する者に不快感を与えている。この不快感は、リザーババックを組み合わせる方法、陽圧換気を行う方法など治療介入が増えるごとにさらに強くなる。このため、呼吸器機能が正常に機能しない患者に不快感を与えることが少なく、かつ効率的な治療を行うことができるマスクや鼻カニューラなどの酸素加給手段が提案されている。
【0004】
また、正確に酸素が投与されているか確認するために、鼻や口にサンプルチューブを貼り付け、吸気や呼気の酸素量や二酸化炭素量を測定することが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1に、従来の硬いマスクシェルは、人の顔の形に追従し難く加給される気体の漏れや人に不快感を与える恐れがあることから、以下の呼吸マスクが提案されている。すなわち、柔軟な呼吸マスクであって、人の顔の部分における呼吸孔の上に嵌められるよう適合される織布、不織布など柔軟な材料から形成され、上記柔軟な材料の少なくとも一部上に延在する不浸透性コーティングを含むマスクシェルと、上記マスクシェルの上記柔軟な材料を通って延在し、上記柔軟な材料に固定され、気体供給ホースに接続することができるホースコネクタと、人の顔の上記部分の上にマスクシェルを固定するための少なくとも1つの取付部材と、を有する呼吸マスクが提案されている。この呼吸マスクは、材料の柔軟な性質のため人の顔の形または大きさにかかわらずその人の顔に従うことができ、材料の浸透性のため吐出された空気の排出ならびに過剰に供給された気体および吐出されたCOの排出を可能にし、水分を通過可能にするとされる。
【0006】
特許文献2には、鼻孔カニューラは患者の負担が少なく簡易な酸素加給手段であるが、戸外で使用する場合に風などの影響により酸素供給効率が低下する問題があることからこれを解決するため、マスク形状に近づけた鼻孔カニューラが提案されている。すなわち、使用者の外鼻外周面に接し、外鼻を覆うドーム状の隔壁を備えたマスクであり、該隔壁に吸入用ガスを投入する為の吸入用ガス投入ポートを備え、該吸入用ガス投入ポートから使用者の鼻翼部乃至鼻尖部の下方と該隔壁との間に形成される空間部に該吸入用ガスを投入する吸入用ガス投入手段を備えた吸入用ガス供給用マスクが提案されている。
【0007】
特許文献3に、使用者の呼吸に対応して間歇的に陽圧空気を供給する為の呼吸マスクにおいて、鼻長方向の鼻上部から該陽圧空気を供給する陽圧空気供給ポート、鼻孔の下方位置に呼気排出口を有し、かつ該呼気排出口近傍位置に鼻孔方向へ向かって治療用ガスを投入する治療用ガス投入ポートを備えた治療用ガス投入用呼吸マスクが提案されている。この治療用ガス投入用呼吸マスクは、安定した酸素濃度を加給することができ、再呼吸量が少ないとされる。
【0008】
特許文献4では、呼気ガス濃度を正確に測定する事を目的に、患者の鼻と口の少なくとも一方が対向する位置に呼気ガスの排出口を形成する事で、呼気ガスが酸素で希釈されるのを少なくなるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2003−501220号公報(2003年1月14日公表)
【特許文献2】特開2007−181661号公報(2007年7月19日公開)
【特許文献3】特開2000−225191号公報(2000年8月15日公開)
【特許文献4】特開2014−138894号公報(2014年7月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のマスクは、外部から酸素ガスや治療用ガスを供給するための構成については開示があるものの、生体の吸気または呼気を測定するための構成については、何も開示されていない。
【0011】
一方、上記特許文献4に記載のマスクは、呼気ガスが酸素で希釈されるのを少なくするため、マスク本体の所定の位置に呼気ガスの排出口を形成しているが、このマスクは、着用時に見映えが悪くなるとともに、ユーザにとっても着用時に違和感があるという問題点がある。
【0012】
また、従来の一般的な呼吸マスクにて、マスクと生体との間に呼吸成分を分析するためのガスサンプルチューブの接続部をそのまま配置すると、供給ガスが直接接続部に流れるため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈され、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定できないという問題点がある。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用時の見映えを良くするとともに着用時の違和感を低減し、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することができるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るマスクは、吸気および呼気の少なくとも一方における成分を分析する際に装着されるマスクであって、上記マスクを装着した生体の側に位置している第1シートと、上記第1シートに対向して配置されている第2シートとを少なくとも含む複数のシートと、上記第1シートと上記第2シートとにより形成される空間にガスを供給するためのガス供給口と、上記第1シートと上記生体との間に配置され、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入する導入経路を接続するための接続部と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、第1シートおよび第2シートを含む複数のシートで構成されるシート構造を採用しているため、マスク着用時に、サージカルマスクを装着した場合と同様の外観とすることができ、見映えが良くなる。さらに、シート構造を採用しているためマスクの一部だけがユーザの肌に強く接触することもないので、着用時の違和感も低減できる。
【0016】
また、上記構成によれば、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入する導入経路を接続するための接続部が、第1シートと生体との間に配置されている。また、第1シートの存在により、第1シートと第2シートとの間に貯留されるガス(供給ガス)が、直接接続部に流れるのが低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0017】
以上により、着用時の見映えを良くするとともに着用時の違和感を低減し、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係るマスクは、上記構成に加えて、上記第2シートは、上記第1シートよりもガス透過性が低くても良い。
【0019】
上記の構成によれば、第1シートおよび第2シートにより形成される空間内に貯留した気体は、第1シートを透過して当該空間の外へ排出され易くなる。このため、第1シートがユーザ(生体)の口側となるようにマスクがユーザに装着された場合、マスクにガスが供給されると、当該空間内に貯留したガスが第1シートを透過してユーザに供給され易くなる。このため、マスクによる供給ガスの生体への供給機能を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係るマスクは、上記構成に加えて、上記第1シートと上記生体との間に配置されている第3シートを備え、上記生体と上記第3シートとの間に、上記接続部が配置されていても良い。
【0021】
上記構成によれば、上記接続部が、生体と第3シートとの間に配置されている。また、第1シートおよび第3シートの存在により、第1シートと第2シートとの間に貯留されるガスが、直接接続部に流れるのがより低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0022】
また、本発明の一態様に係るマスクは、上記第1シートと上記生体との間に配置されている第3シートを備え、上記第1シートと上記第3シートとの間に、上記接続部が配置されていても良い。
【0023】
上記構成によれば、接続部が、第1シートと第3シートとの間に配置されているため、第3シートの存在により、接続部が生体に直接接触しないようにすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係るマスクは、上記構成に加えて、上記接続部の上記生体に対する側は開口部が形成されており、上記生体に対する側と反対側は、上記ガスの侵入を阻止する阻止面が形成されていても良い。
【0025】
上記構成によれば、上記接続部の生体に対する側は開口部が形成されている。このため、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入し易くなる。また、上記構成によれば、接続部の生体に対する側と反対側は、ガスの侵入を阻止する阻止面が形成されている。これにより、供給ガスが、直接接続部の開口部に流れるのがより低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0026】
また、本発明の一態様に係るマスクは、上記構成に加えて、上記第1シートにおいて、マスク装着時に上記生体の呼吸器官開口部と対向する範囲を除く位置に、上記空間内に貯留される上記ガスを上記生体内に供給するための孔が少なくとも1つ形成されていても良い。
【0027】
上記構成によれば、第1シートおよび第2シートにより形成される空間内に貯留したガスは、第1シートに形成された孔を通過して当該空間の外へ排出され易くなる。このため、第1シートがユーザ(生体)の口側となるようにマスクがユーザに装着された場合、マスクにガスが供給されると、当該空間内に貯留したガスが第1シートに形成された孔を通過してユーザに供給され易くなる。また、上記構成によれば、マスクの呼吸器官開口部と対向する範囲には孔を形成していないため、供給ガスが、直接接続部に流れるのがより低減される。このため、マスクによる供給ガスの生体への供給機能を向上させつつ、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、着用時の見映えを良くするとともに着用時の違和感を低減し、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係るマスクの正面図である。
図2】上記マスクのA−A断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るマスクにおいて気体の流れを示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係るマスクにおいて気体の流れを示す図である。
図5】(a)は、本発明の実施形態3に係るマスクにおいて気体の流れを示す図であり、(b)は、本発明の実施形態4に係るマスクにおいて気体の流れを示す図である。
図6】(a)は、本発明の実施形態5に係るマスクにおいて気体の流れを示す図であり、(b)は、本発明の実施形態6に係るマスクにおいて気体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図1図6に基づいて説明すれば、次の通りである。以下、説明の便宜上、特定の実施形態にて説明した構成と同一の機能を有する構成については、同一の符号を付記し、その説明を省略する場合がある。
【0031】
〔実施形態1〕
図1および図2は、本発明の実施形態1に係るマスク1の模式図であり、図1は平面図、図2はマスク1のA−A断面を示す断面図である。本実施形態のマスク1は、図1に示すように、重ねてなる複数の第1シート(マスクが備える複数のシートのうちの1つ)2の上面を第2シート(マスクが備える複数のシートのうちの1つ)3で覆い、これらの周縁部を接合してなるマスク本体11と、そのマスク本体11を身体に取り付ける装着部15と、第1シート2と第2シート3との間に設けられるガス貯留部4に酸素ガス(ガス)を加給するガス供給経路6と、を有している。そして、ガス貯留部4は、ガス供給経路6を通じて加給される酸素ガス(マスクの外部から供給されるガス)により拡張・形成されてなるものである。第1シート2は、マスク1を装着した生体の側に位置している。また、第2シート3は、第1シート2に対向して配置されている。
【0032】
本実施形態では、第1シート2が、繊維シートであり、第2シート3がフィルムシートである場合について説明するがこれに限定されない。また、第1シート2は、第2シート3よりも高いガス透過性を有することが好ましいが、第1シート2は、第2シート3と同じガス透過性を有していても良い。また、第1シート2は、繊維シートを複数枚重ねて形成されたものであってもよいし、多孔性材質(料)であってもよい。
【0033】
マスク1によれば、第1シート2および第2シート3により形成される空間内に貯留した気体は、第1シート2を透過して当該空間の外へ排出され易くなる。このため、第1シート2がユーザ(生体)の口側となるようにマスク1がユーザに装着された場合、マスク1にガスが供給されると、当該空間内に貯留したガスが第1シート2を透過してユーザに供給され易くなる。
【0034】
また、例えば、第2シート3は、フィルムシートであってもよいし、繊維シートを複数枚重ねて形成されたものであってもよいし、第1シート2と同等のガス透過性を有するシートを複数枚重ねて形成されたものであってもよい。
【0035】
本実施形態において繊維シートとは、織布、不織布、不織紙など紡糸や抄紙された樹脂系繊維またはセルロース系繊維を織り、融着あるいは絡めるなどにより形成されたシート状に形成したものをいう。本実施形態の第1シート2は、上記の繊維シートを重ねたものであり、表裏を形成する包被材21、芯材22からなり、マスク1が鼻上部に密着するとともに、その形状を保持するための強度部材としての紐材25を有している。第1シート2は、これを形成する繊維間に適度の隙間を有している。このため、マスク1を装着した患者に以下に説明するガス貯留部4に貯留された酸素を繊維間の隙間を通して容易に供給することができるとともに、ガス貯留部4に貯留された酸素の散逸を防止することができるようになっている。なお、第1シート2は、公知のサージカルマスクに使用されるものであって、所用のものを使用することができる。また、紐材25は、マスク1の辺縁部に適度に設けることができる。これによりマスク1の強度向上を図り、患者の装着感を高めることができる。
【0036】
本実施形態の第2シート3は、その内部に加給された酸素が保持できるようなポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などから形成される。第2シート3は、透明であるのがよい。マスク1の第2シート3が透明であると、これを装着した外観がほとんどサージカルマスクを装着した様子と変わらないという利点がある。
【0037】
上記の第1シート2および第2シート3は、それらの周縁が接合されて一体になり、マスク本体11を形成する。マスク本体11には、第1シート2と第2シート3との間に酸素ガスを加給するガス供給経路6が設けられている。ガス供給経路6は、マスク本体11の隅部に管部が接合されてマスク本体11と一体になり、その一端においてガス供給口7がマスク本体11の中央部分に開口している。これにより、効果的にガス貯留部4を形成することができ、また、患者に酸素ガスを効率的に供給することができる。ガス供給経路6の他方側は、マスク本体11から延伸し、端部にコネクタ8を有している。コネクタ8は、酸素供給装置の酸素供給配管(図示せず)に連結することによりガス供給経路6に酸素が供給される。
【0038】
本実施形態においては、ガス供給経路6に酸素が供給され、第1シート2と第2シート3との間に酸素ガスが加給されると、第1シート2と第2シート3とはほとんど重なった状態から図2に示すように次第に離隔して空間が形成され、その空間が拡張する。そして、酸素を貯留することができるガス貯留部4が形成される。すなわち、ガス貯留部4が拡張・形成されるようになる。マスク1は、このようにいわばリザーババッグを有する呼吸マスクとしての機能を有している。
【0039】
簡単な構造で酸素をできるだけ多く貯留することができるガス貯留部4を形成するには、プリーツ加工をした第1シート2および第2シート3からガス貯留部4を形成するのがよい。例えば、フィルムシートに施したプリーツのひだ幅寸法または/およびひだ数を繊維シートに施したプリーツ加工のひだ幅寸法または/およびひだ数よりも大きくする。このようにして、ガス貯留部4を形成すれば、簡単な構造で、異なる容量の酸素ガスを貯留するリザーババッグを形成することができる。
【0040】
マスク1に供給される酸素ガスは酸素供給装置からガス供給経路6を通じて供給されるので、ガス供給経路6は、この所用の大きさと重量を必要とする酸素供給装置との連結が容易で、取り扱いおよび使用感のよいものにする必要がある。このために、ガス供給経路6は、マスク本体11から延伸し、適度の長さを有するものであるのがよい。例えば、酸素供給装置の酸素供給配管と連結されるコネクタ8が、頭後あるいは首下にくるような長さのガス供給経路6にするのがよい。
【0041】
また、マスク本体11には、第1シート2と生体(呼吸器官開口部)との間に、生体の吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入するガスサンプルチューブ(導入経路)9が設けられている。ガスサンプルチューブ9は、その一端において接続部10の開口部がマスク本体11の中央部分(生体の呼吸器官開口部に対向する位置)において開口している(本実施形態では、紙面に対して左方向に開口している)。マスク1は、このように、生体の吸気および呼気の少なくとも一方における成分を分析する際に装着される呼吸成分分析マスクとしての機能を合わせ持っている。なお、ガスサンプルチューブ9は、第1シート2に対して溶着して接合しても良いし、粘着テープを用いて第1シート2に対して貼り付けるようにして接合しても良い。
【0042】
本実施形態のマスク1の装着部15は、耳かけタイプになっている。この耳かけタイプは、マスク1を通常のサージカルマスクとほとんど同等の感覚で使用することができる利点を有する。しかしながら、マスク1のより確実な装着・固定を行うために、頭部および首部にかけ回すようにすることができる。
【0043】
マスク1によれば、第1シート2および第2シート3を含む複数のシートで構成されるシート構造を採用しているため、マスク着用時に、サージカルマスクを装着した場合と同様の外観とすることができ、見映えが良くなる。さらに、シート構造を採用しているためマスク1の一部だけがユーザの肌に強く接触することもないので、着用時の違和感も低減できる。
【0044】
また、マスク1によれば、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入するガスサンプルチューブ9を接続するための接続部10が、第1シート2と生体との間に配置されている。また、第1シート2の存在により、第1シート2と第2シート3との間に貯留されるガスが、直接接続部10に流れるのが低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0045】
以上により、着用時の見映えを良くするとともに着用時の違和感を低減し、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することができる。
【0046】
次に、図3の(a)および(b)は、マスク1において気体の流れを示す図である。
【0047】
図3の(a)に示すように、マスク1は、マスク1の外部から酸素(ガス)が供給される構成である。具体的には、ガスを供給するガス供給経路6が、第1シート2と第2シート3との間に配置され、ガス供給経路6のガス供給口7が、マスク1の中央部に配置されている。
【0048】
マスク1の外部から供給される酸素(ガス)は、ガス供給経路6を通り、ガス供給口7からマスク1の中央部に供給される。そして、マスク1を装着しているユーザの呼気は、マスク1の周縁部から外部に排出される。
【0049】
なお、以下ではガス供給経路6を通過するガス(マスク1の外部から供給されるガス)を酸素として説明するがこれに限定されない。例えば、ガス供給経路6を通過するガスは、ヘリウムを含んでいてもよいし、麻酔薬を含む気体であってもよいし、ユーザの治療に必要な薬剤を含む気体であってもよい。
【0050】
また、マスク1は、生体の吸気または呼気を呼吸成分分析器に導入する構成である。具体的には、生体の吸気または呼気を呼吸成分分析器に導入するガスサンプルチューブ9が、第1シート2と生体との間に配置され、ガスサンプルチューブ9の接続部10が、マスク1の中央部に配置されている。
【0051】
(気体の流れ)
図3の(a)を用いて吸気時の気体の流れを説明する。マスク1に酸素が供給されると、図示のように第1シート2と第2シート3との間(複数のシートにより形成された空間内)に酸素が貯留し、周囲よりも圧力の高いガス貯留部4が形成される。第1シート2と第2シート3はガス貯留部を構成するが、第1シート2のガス透過性がより高いため、酸素ガスは常に、第1シート2を通して生体側に流れることとなる。ここで、マスク1を装着したユーザが息を吸うと、生体側の圧力がさらに低下することから、ガス貯留部4内に貯留した酸素が、ユーザの吸気の吸引力により第1シート2を透過してユーザの体内に効率的に供給される。なお、ユーザの吸気には、マスク1の外部にある空気(外気)が含まれていてもよい。
【0052】
図3の(b)を用いて呼気時の気体の流れを説明する。マスク1を装着したユーザが息を吐くと、ユーザの呼気は、第1シート2に当たり、ユーザの顔とマスク1との間に生じる隙間からマスク1の外部に排出される。
【0053】
すなわち、ガス貯留部4には酸素が供給され続けているため、ガス貯留部4内の気圧が増加し、ガス貯留部4内の酸素は、第1シート2を透過してガス貯留部4の外へ漏出しようとする。一方、ユーザの呼気は、第1シート2に対してガス貯留部4外から吹き付けられる。このように、ガス貯留部4内の気圧の方向は、ユーザの呼気がガス貯留部4に対して加える圧力の方向と対向する。このため、ユーザの呼気が、第1シート2を透過してガス貯留部4内の気体と混合することが防止される。さらには、ユーザが息を吐いている場合に、ガス貯留部4に貯留された酸素が、第1シート2を透過してガス貯留部4の外に漏出することが防止される。それゆえ、ガス貯留部4内の酸素濃度が、ユーザの呼気および酸素の漏出により低下するということを防止できる。
【0054】
以上のように、第1シート2は所定のガス透過性を有するため、マスク1は、マスク1を装着したユーザが呼吸した場合、ユーザの吸気時においてガス貯留部4内の酸素をユーザに供給させ易いものとなる。そして、マスク1は、上述した通り、マスク1を装着したユーザの呼気時において、ユーザの呼気をガス貯留部4の外から内に透過させ難いものとなるとともに、ガス貯留部4内の酸素をガス貯留部4の外に漏出させ難いものとなっている。そのため、酸素の供給が呼気時ではなく、酸素を必要とする吸気時に集中的に行われることとなるため、効率的な酸素供給が可能となる。
【0055】
また、マスク1によれば、第1シート2の存在により、第1シート2と第2シート3との間に貯留されるガス(供給ガス)が、直接接続部10に流れるのが低減される。このため、このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。具体的には、マスク1によれば、二酸化炭素を検出する際に、検出精度に対して供給ガスが与える影響を低減することができる。また、マスク1によれば、吸気または呼気が供給ガス(酸素)で希釈されるのを少なくして、吸気ガスまたは呼気ガスの濃度の正確な測定が可能になる。
【0056】
(湿度)
マスク1が備える第1シート2および第2シート3は、柔軟性を有するシートである。このため、ユーザがマスク1を装着した場合、ユーザの顔とマスク1との間に空間が生じる構成となる。このような空間が生じることにより、マスク1は、湿度についての不快感をユーザに与えることがない。
【0057】
より具体的には、図3の(b)に示すように、ユーザの呼気の大半は、マスク1の外部に排出される一方、ユーザの呼気の一部は、ユーザの顔とマスク1との間の空間に滞留する。そして、図3の(a)に示すように、ユーザの吸気は、ガス貯留部4内に貯留する酸素だけでなく、当該空間に滞留するユーザの呼気を含む。
【0058】
ユーザの呼気は、ガス貯留部4内の気体よりも二酸化炭素を多く含む一方、ガス貯留部4内の気体よりも高い湿度を有する。このため、ユーザが息を吐いた後における吸気は、当該ユーザの呼気を含むことにより適切な湿度を保持することが可能となる。それゆえ、ユーザの口腔内が、マスク1の外部から供給される酸素により過度に乾燥するということが防止される。
【0059】
また、第1シート2および第2シート3は柔軟性を有するシートであるため、ユーザの呼気時におけるマスク1は、ユーザの顔とマスク1との間に隙間が生じる構成となる。このため、ユーザの呼気は、当該隙間からマスク1の外部へ排出される。それゆえ、マスク1で覆われるユーザの顔とマスク1との間の空間における気体の湿度は、ユーザの呼気により過度に上昇することが防止される。
【0060】
以上により、ユーザの吸気について適正な湿度が保持されるとともに、マスク1で覆われるユーザの顔とマスク1との間の空間において適正な湿度が保持されることが可能となる。それゆえ、マスク1は、快適な状態でユーザに長時間装着されることが可能となる。
【0061】
〔実施形態2〕
次に、図4に基づき、本発明の実施形態2に係るマスク1aの構成について説明する。図4の(a)および(b)は、マスク1aにおいて気体の流れを示す図である。
【0062】
本実施形態のマスク1aは、第1シート2と生体との間に配置されている第3シート5を備え、生体と第3シート5との間に、ガスサンプルチューブ9の接続部10が配置されている点で、実施形態1のマスク1と異なっている。
【0063】
本実施形態では、第3シート5は、ガス不透過性を有する不透過性シートで構成されているものとして説明するが、これに限定されず、第3シート5を上述した繊維シートまたはフィルムシートで構成しても良い。
【0064】
図4の(a)に示すように、第2シート3が第1シート2とガスサンプルチューブ9との間に配置されていると、ガス貯留部4に貯留された供給ガスは、第3シート5の端部を迂回して生体の呼吸器官開口部に流れる。このように、供給ガスは、ガスサンプルチューブ9の接続部10に直接吹き付けられる(直接流れる)ことが無くなるため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0065】
上述したように、マスク1aでは、接続部10が、生体と第3シート5との間に配置されている。また、第1シート2および第3シート5の存在により、第1シート2と第2シート3との間に貯留されるガス(供給ガス)が、直接接続部10に流れるのがより低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0066】
〔実施形態3〕
次に、図5の(a)に基づき、本発明の実施形態3に係るマスク1bの構成について説明する。図5の(a)は、マスク1bにおいて気体の流れを示す図である。
【0067】
本実施形態のマスク1bは、接続部10の生体に対する側は開口部12が形成されており、生体に対する側と反対側は、ガスの侵入を阻止する阻止面13が形成されている点で、上述した形態と異なっている。このような構成とするためには、ガスサンプルチューブのチューブの延在方向に対して斜めに切断すれば良い。
【0068】
マスク1bでは、接続部10の生体に対する側は開口部12が形成されている。このため、吸気および呼気の少なくとも一方を呼吸成分分析器に導入し易くなる。また、マスク1では、接続部10の生体に対する側と反対側は、ガスの侵入を阻止する阻止面が形成されている。これにより、供給ガスが、直接接続部10の開口部12に流れるのがより低減される。このため、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0069】
〔実施形態4〕
次に、図5の(b)に基づき、本発明の実施形態4に係るマスク1cの構成について説明する。図5の(b)は、マスク1cにおいて気体の流れを示す図である。
【0070】
本実施形態のマスク1cは、第1シート2において、マスク1c装着時に生体の呼吸器官開口部と対向する範囲を除く位置に、第1シート2と第1シート2との間の空間内に貯留されるガスを生体内に供給するための孔14が複数形成されている点で、上述した形態と異なっている。本実施形態のマスク1cでは、合計10個の孔14が形成されているが、第1シート2に形成する孔の数はこれに限定されない。第1シート2に形成する孔の数は、少なくとも1個であれば良い。
【0071】
図5の(b)に示すように、第1シート2および第2シート3により形成される空間内に貯留したガスは、第1シート2に形成された孔14を通過して当該空間の外へ排出され易くなる。このため、第1シート2がユーザ(生体)の口側となるようにマスク1cがユーザに装着された場合、マスク1cにガスが供給されると、当該空間内に貯留したガスが第1シート2に形成された孔14を通過してユーザに供給され易くなる。また、マスク1cの呼吸器官開口部と対向する範囲には孔を形成していないため、供給ガスが、直接接続部10に流れるのがより低減される。このため、マスク1cによる供給ガスの生体への供給機能を向上させつつ、吸気または呼気が、供給ガスで希釈されるのを低減して、吸気または呼気のガス濃度を正確に測定することが可能になる。
【0072】
〔実施形態5〕
次に、図6の(a)に基づき、本発明の実施形態5に係るマスク1dの構成について説明する。図6の(a)は、マスク1dにおいて気体の流れを示す図である。
【0073】
本実施形態のマスク1dは、ガスサンプルチューブ9が、第1シート2と第2シート3との間を水平方向に沿って延在し、中央付近で下側に折れ曲がり、第1シート2の中央付近に生成された孔および第3シート5の中央付近に形成された孔を通り、生体側に開口している点で、図4に示すマスク1aと異なっている。
【0074】
マスク1dによれば、ガスサンプルチューブ9が第1シート2と第2シート3との間を水平方向に沿って延在しているため、ガスサンプルチューブ9が生体に触れることによる不快感を低減することができる。
【0075】
〔実施形態6〕
次に、図6の(b)に基づき、本発明の実施形態6に係るマスク1eの構成について説明する。図6の(b)は、マスク1eにおいて気体の流れを示す図である。
【0076】
本実施形態のマスク1eは、ガスサンプルチューブ9が第1シート2と第3シート5との間を水平方向に沿って延在し、接続部10も第1シート2と第3シート5との間に存在している点で、図4に示すマスク1aと異なっている。
【0077】
マスク1eによれば、接続部10が、第1シート2と第3シート5との間に配置されているため、第3シート5の存在により、接続部10が生体に直接接触しないようにすることができる。なお、生体の吸気または呼気を正確に測定する観点では、第3シート5のガス透過性を、第1シート2および第2シート3よりも高くすることが好ましい。
【0078】
〔変形例〕
図4の(a)および(b)に示すマスク1aならびに図5の(b)に示すマスク1cにおいて、ガスサンプルチューブ9の接続部10を、図5の(a)に示すマスク1bの接続部10のように、生体に対する側に開口部12を形成し、生体に対する側と反対側に、ガスの侵入を阻止する阻止面13を形成しても良い。
【0079】
また、図4の(a)および(b)に示すマスク1aならびに図5の(a)に示すマスク1bにおいて、図5の(b)に示すマスク1cのように、第1シート2に孔14を形成しても良い。
【0080】
また、図4の(a)および(b)に示すマスク1aにおいて、ガスサンプルチューブ9の接続部10を、図5の(a)に示すマスク1bの接続部10と同様の構造とし、かつ、図5の(b)に示すマスク1cのように、第1シート2に孔14を形成しても良い。
【0081】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0082】
1,1a〜1e マスク
2 第1シート
3 第2シート
5 第3シート
9 ガスサンプルチューブ(導入経路)
10 接続部
12 開口部
13 阻止面
14 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6