(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-157908(P2017-157908A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】指向性切替アンテナを用いた無線基地局およびアンテナ指向性切替方法
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20170810BHJP
H04B 7/04 20170101ALI20170810BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20170810BHJP
【FI】
H04J15/00
H04B7/04
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-36999(P2016-36999)
(22)【出願日】2016年2月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】溝口 匡人
(72)【発明者】
【氏名】関 智弘
【テーマコード(参考)】
5K067
5K159
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD42
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
5K067KK02
5K067KK03
5K159CC04
5K159EE02
5K159FF02
5K159FF03
(57)【要約】
【課題】複数の指向性切替アンテナを用いて1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う無線基地局において、指向性切替アンテナごとにマルチキャスト通信、ユニキャスト通信、MU−MIMO通信に最適なアンテナ指向性を切り替える。
【解決手段】複数台の無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャストモード、または1台の無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、または複数台の無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードに応じた無線信号の送受信処理を行う無線信号処理部と、マルチキャストモード、またはユニキャストモード、またはMU−MIMOモードに応じて、複数の指向性切替アンテナごとに、1つのアンテナ指向性を選択する制御を行うアンテナ指向性切替制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ指向性の1つをそれぞれ選択できる複数の指向性切替アンテナを備え、1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、
複数台の前記無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャストモード、または1台の前記無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、または複数台の前記無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードに応じた無線信号の送受信処理を行う無線信号処理部と、
前記マルチキャストモード、または前記ユニキャストモード、または前記MU−MIMOモードに応じて、前記複数の指向性切替アンテナごとに、1つのアンテナ指向性を選択する制御を行うアンテナ指向性切替制御部と
を備えたことを特徴とする指向性切替アンテナを用いた無線基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記マルチキャストモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である
ことを特徴とする指向性切替アンテナを用いた無線基地局。
【請求項3】
請求項1に記載の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記ユニキャストモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、ユニキャスト通信する無線端末に対する受信電力または信号電力対干渉電力比が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である
ことを特徴とする指向性切替アンテナを用いた無線基地局。
【請求項4】
請求項1に記載の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記MU−MIMOモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、MU−MIMO通信の対象となる各無線端末に対する信号電力対干渉電力比の合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である
ことを特徴とする指向性切替アンテナを用いた無線基地局。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、
前記複数の指向性切替アンテナごとにそれぞれ選択されたアンテナ指向性における信号電力について、前記マルチキャストモード、前記ユニキャストモード、前記MU−MIMOモードごとに事前設定される基準値に調整する信号電力調整手段を備えた
ことを特徴とする指向性切替アンテナを用いた無線基地局。
【請求項6】
複数のアンテナ指向性の1つをそれぞれ選択できる複数の指向性切替アンテナを備え、1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、
無線信号処理部は、複数台の前記無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャストモード、または1台の前記無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、または複数台の前記無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードに応じた無線信号の送受信処理を行い、
アンテナ指向性切替制御部は、前記マルチキャストモード、または前記ユニキャストモード、または前記MU−MIMOモードに応じて、前記複数の指向性切替アンテナごとに、1つのアンテナ指向性を選択する制御を行う
ことを特徴とする無線基地局のアンテナ指向性制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記マルチキャストモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるアンテナ指向性をそれぞれ選択する
ことを特徴とする無線基地局のアンテナ指向性制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記ユニキャストモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、ユニキャスト通信する無線端末に対する受信電力または信号電力対干渉電力比が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する
ことを特徴とする無線基地局のアンテナ指向性制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、
前記アンテナ指向性切替制御部は、前記MU−MIMOモードのときに、前記複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、MU−MIMO通信の対象となる各無線端末に対する信号電力対干渉電力比の合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する
ことを特徴とする無線基地局のアンテナ指向性制御方法。
【請求項10】
請求項6〜請求項9のいずれかに記載の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、
前記複数の指向性切替アンテナごとにそれぞれ選択されたアンテナ指向性における信号電力について、前記マルチキャストモード、前記ユニキャストモード、前記MU−MIMOモードごとに事前設定される基準値に調整する
ことを特徴とする無線基地局のアンテナ指向性制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の指向性切替アンテナを用いて1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う無線基地局において、複数台の無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャスト通信、または1台の無線端末と1つの無線信号またはシングルユーザMIMO(SU−MIMO)信号を送受信するユニキャスト通信、または複数台の無線端末とマルチユーザMIMO(MU−MIMO)信号を送受信するMU−MIMO通信に対して、複数の指向性切替アンテナごとにそれぞれ最適なアンテナ指向性を選択する指向性切替アンテナを用いた無線基地局およびアンテナ指向性切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやスマートフォン等の持ち運び可能で高性能な無線端末の普及により企業や公共スペースだけではなく、一般家庭でもIEEE802.11標準規格の無線LANが広く使われるようになっている。IEEE802.11標準規格の無線LANには、 2.4GHz帯を用いるIEEE802.11b/g/n 規格の無線LANと、5GHz帯を用いるIEEE802.11a/n/ac規格の無線LANがある。
【0003】
IEEE802.11b規格やIEEE802.11g規格の無線LANでは、2400MHzから2483.5MHz間に5MHz間隔で13チャネルが用意されている。ただし、同一場所で複数のチャネルを使用する際は、干渉を避けるためスペクトルが重ならないようにチャネルを使用すると最大で3チャネル、場合によっては4チャネルまで同時に使用できる。
【0004】
IEEE802.11a規格の無線LANでは、日本の場合は、5170MHzから5330MHz間と、5490MHzから5710MHz間で、それぞれ互いに重ならない8チャネルおよび11チャネルの合計19チャネルが規定されている。なお、IEEE802.11a規格では、チャネル当たりの帯域幅が20MHzに固定されている。
【0005】
無線LANの最大伝送速度は、IEEE802.11b規格の場合は11Mbps であり、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格の場合は54Mbps である。ただし、ここでの伝送速度は物理レイヤ上での伝送速度である。実際にはMAC(Medium Access Control )レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値はIEEE802.11b規格では5Mbps 程度、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格では30Mbps 程度である。また、伝送速度は、情報を送信しようとする無線基地局や無線端末が増えればさらに低下する。
【0006】
そのため、2009年に標準化が完了したIEEE802.11n規格では、これまで20MHzと固定されていたチャネル帯域幅が最大で40MHzに拡大され、また、空間多重送信技術(MIMO:Multiple input multiple output)技術の導入が決定された。IEEE802.11n規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で 600Mbps の通信速度を実現可能である。
【0007】
さらに、2013年に標準化が完了したIEEE802.11ac規格では、チャネル帯域幅を80MHzや最大で 160MHzまで拡大することや、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を適用したMU−MIMO送信方法の導入が決定している。IEEE802.11ac規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で約 6.9Gbps の通信速度を実現可能である。
【0008】
上記に示す標準化技術に加えて、無線基地局がアンテナ指向性の切り替えが可能な指向性切替アンテナを搭載し、無線端末の受信状況に合わせてアンテナ指向性を最適化する検討が進んでいる(非特許文献1,2)。これにより、無線端末における受信電力の向上により、通信速度の向上も可能になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lopez, Alfred R. "Performance predictions for cellular switched-beam intelligent antenna systems." Communications Magazine, IEEE 34.10 (1996): 152-154.
【非特許文献2】Li, Yingjie, Martin J. Feuerstein, and Douglas O. Reudink. "Performance evaluation of a cellular base station multibeam antenna." Vehicular Technology, IEEE Transactions on 46.1 (1997): 1-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、無線LANでは、SU−MIMO通信やMU−MIMO通信など様々な通信モードを利用しながら無線通信が行われている。ここで、SU−MIMO通信は1つの無線端末に対して1つの無線信号を伝送し、MU−MIMO通信は無線端末ごとに異なる無線信号を伝送するが、その他に無線LANにはビーコン信号などのように同一の無線信号をマルチキャスト伝送する形態も利用されている。各通信モードにおける通信品質を向上させるためには、各通信モードに応じた対策が必要となる。
【0011】
また、通信品質を向上させる方法の1つとして、上記のように指向性切替アンテナを用いる方法があるが、複数の指向性切替アンテナを用いる構成において、指向性切替アンテナごとに様々な通信モードに合わせたアンテナ指向性の切替制御に関する検討は行われていない。
【0012】
本発明は、複数の指向性切替アンテナを用いて1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う無線基地局において、指向性切替アンテナごとにマルチキャスト通信、ユニキャスト通信、MU−MIMO通信に最適なアンテナ指向性を切り替えることができる指向性切替アンテナを用いた無線基地局およびアンテナ指向性切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、複数のアンテナ指向性の1つをそれぞれ選択できる複数の指向性切替アンテナを備え、1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、複数台の無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャストモード、または1台の無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、または複数台の無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードに応じた無線信号の送受信処理を行う無線信号処理部と、マルチキャストモード、またはユニキャストモード、またはMU−MIMOモードに応じて、複数の指向性切替アンテナごとに、1つのアンテナ指向性を選択する制御を行うアンテナ指向性切替制御部とを備える。
【0014】
第1の発明の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、アンテナ指向性切替制御部は、マルチキャストモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である。
【0015】
第1の発明の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、アンテナ指向性切替制御部は、ユニキャストモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、ユニキャスト通信する無線端末に対する受信電力または信号電力対干渉電力比が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である。
【0016】
第1の発明の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、アンテナ指向性切替制御部は、MU−MIMOモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、MU−MIMO通信の対象となる各無線端末に対する信号電力対干渉電力比の合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する構成である。
【0017】
第1の発明の指向性切替アンテナを用いた無線基地局において、複数の指向性切替アンテナごとにそれぞれ選択されたアンテナ指向性における信号電力について、マルチキャストモード、ユニキャストモード、MU−MIMOモードごとに事前設定される基準値に調整する信号電力調整手段を備える。
【0018】
第2の発明は、複数のアンテナ指向性の1つをそれぞれ選択できる複数の指向性切替アンテナを備え、1台以上の無線端末と同一周波数帯を共有して無線通信を行う無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、無線信号処理部は、複数台の無線端末に同一の無線信号を送信するマルチキャストモード、または1台の無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、または複数台の無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードに応じた無線信号の送受信処理を行い、アンテナ指向性切替制御部は、マルチキャストモード、またはユニキャストモード、またはMU−MIMOモードに応じて、複数の指向性切替アンテナごとに、1つのアンテナ指向性を選択する制御を行う。
【0019】
第2の発明の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、アンテナ指向性切替制御部は、マルチキャストモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるアンテナ指向性をそれぞれ選択する。
【0020】
第2の発明の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、アンテナ指向性切替制御部は、ユニキャストモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、ユニキャスト通信する無線端末に対する受信電力または信号電力対干渉電力比が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する。
【0021】
第2の発明の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、アンテナ指向性切替制御部は、MU−MIMOモードのときに、複数の指向性切替アンテナごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、MU−MIMO通信の対象となる各無線端末に対する信号電力対干渉電力比の合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性をそれぞれ選択する。
【0022】
第2の発明の無線基地局のアンテナ指向性制御方法において、複数の指向性切替アンテナごとにそれぞれ選択されたアンテナ指向性における信号電力について、マルチキャストモード、ユニキャストモード、MU−MIMOモードごとに事前設定される基準値に調整する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、複数の指向性切替アンテナごとにアンテナ指向性を切り替えることにより、マルチキャストモードでは広範囲なアンテナ指向性を実現して広範囲に点在する無線端末への送信が可能となり、ユニキャストモードでは宛先の無線端末に対するアンテナ指向性を実現して通信品質を向上させ、MU−MIMOモードでは宛先の複数の無線端末に対して全体的に良好なアンテナ指向性を実現して通信品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の無線基地局の実施例1〜3に対応する構成例を示す図である。
【
図2】マルチキャストモードのアンテナ指向性選択例を示す図である。
【
図3】ユニキャストモードのアンテナ指向性選択例を示す図である。
【
図4】RSSIまたはSIRによるユニキャストモードのアンテナ指向性選択基準を説明する図である。
【
図5】MU−MIMOモードのアンテナ指向性選択例を示す図である。
【
図6】SIRによるMU−MIMOモードのアンテナ指向性選択基準を説明する図である。
【
図7】本発明の無線基地局の実施例4に対応する構成例を示す図である。
【
図8】本発明の無線基地局の実施例4における信号電力調整例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の無線基地局の実施例1〜3に対応する構成例を示す。
図1において、無線基地局10は、有線インタフェース11、通信モード切替部12、無線信号処理部13、記憶部14、アンテナ指向性切替制御部15、指向性切替アンテナ16−1〜16−N(Nは2以上の整数)により構成される。以下に示す実施例の指向性切替アンテナ16−1〜16−Nは、それぞれ4つのアンテナ指向性d1〜d4の選択が可能な例を示すが、切替可能なアンテナ指向性の方向および選択数はアンテナごとに任意であってもよい。無線基地局10の周辺には、無線端末20−1〜20−M(Mは1以上の整数)が配置される。
【0026】
有線インタフェース11は、ネットワークから入力する信号を無線基地局内で処理できる信号に変換し、変換した信号を通信モード切替部12および無線信号処理部13に出力する。また、無線信号処理部13から入力する信号をネットワークで処理できる信号に変換し、変換した信号をネットワークに出力する。
【0027】
通信モード切替部12は、有線インタフェース11から入力する信号または無線基地局内で生成される信号に応じた通信モードを選択してアンテナ切替制御部15に通知する。通信モードは、無線基地局10が複数台の無線端末に同一の無線信号(例えばビーコン信号、制御信号、映像信号等)を送信するマルチキャストモード、無線基地局10が1台の無線端末との間で1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送受信するユニキャストモード、無線基地局10が複数台の無線端末との間でMU−MIMO信号を送受信するMU−MIMOモードである。
【0028】
無線信号処理部13は、有線インタフェース11から入力する信号や無線基地局内で生成する信号を通信モードに対応する無線信号に変換し、送受信端子1〜Nから指向性切替アンテナ16−1〜16−Nに出力する。マルチキャストモードでは、送受信端子1〜Nから同一の無線信号が出力される。ユニキャストモードでは、送受信端子1〜Nから1台の無線端末宛の同一の無線信号またはSU−MIMO信号が出力される。マルチキャストモードでは、送受信端子1〜Nから複数台の無線端末宛のMU−MIMO信号が出力される。また、無線信号処理部13は、送受信端子1〜Nに入力する無線信号を通信モードに対応して受信処理し、有線インタフェース11に出力する。さらに、無線端末ごとに各指向性切替アンテナの各アンテナ指向性における受信電力情報を取得し、記憶部14に出力する。
【0029】
記憶部14は、無線端末ごとに各指向性切替アンテナの各アンテナ指向性における受信電力情報をリスト化して記憶する。また、通信モード切替部12からの指示に応じて受信電力情報を通信モード切替部12に出力する。
【0030】
アンテナ指向性切替制御部15は、通信モード切替部12から入力する通信モードの情報に基づき、各指向性切替アンテナにおけるアンテナ指向性を選択する制御を行う。
【0031】
指向性切替アンテナ16−1〜16−Nは、アンテナ指向性切替制御部15が選択する通信モードに対応するアンテナ指向性を設定し、無線端末との間で無線信号を送受信する。具体例は、以下に示す実施例1〜実施例3として説明する。
【0032】
(実施例1)
図2は、マルチキャストモードのアンテナ指向性選択例を示す。
本発明におけるマルチキャストは、複数の指向性切替アンテナを有する無線基地局が様々な場所に広範囲に点在する1つ以上の無線端末に同一の無線信号(例えばビーコン信号、制御信号、映像信号等)を送信する形態である。
【0033】
図2において、通信モード切替部12は、ネットワークから入力する信号または無線基地局内で生成される信号からマルチキャストモードを検出するとアンテナ指向性切替制御部15に通知する。アンテナ指向性切替制御部15は、指向性切替アンテナ16−1〜16−Nごとに選択可能なアンテナ指向性d1〜d4の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるように選択する。例えば、指向性切替アンテナ16−1〜16−4に対してアンテナ指向性d1〜d4がそれぞれ順番に選択される。
【0034】
無線信号処理部13は、マルチキャストモードに対応する1つの無線信号を生成すると、当該1つの無線信号は指向性切替アンテナ16−1〜16−4からそれぞれ選択された全体で広範囲のアンテナ指向性で送信される。これにより、指向性切替アンテナ16−1〜16−4が形成する通信エリアに対して効率よくマルチキャスト通信が可能となり、広範囲に点在する無線端末20−1〜20−Mに受信させることができる。
【0035】
また、マルチキャストモードに対して各指向性切替アンテナが選択する全体で広範囲なアンテナ指向性は、無線基地局が広範囲に点在する無線端末から送信された信号を受信する受信モード、無線信号の有無を検出するセンシングモードにも適用することができる。すなわち、無線基地局が受信モードまたはセンシングモードになるときに、指向性切替アンテナ16−1〜16−Nごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、全体で広範囲のアンテナ指向性が得られるように選択する。
【0036】
(実施例2)
図3は、ユニキャストモードのアンテナ指向性選択例を示す。
本発明におけるユニキャストは、複数の指向性切替アンテナを有する無線基地局が、宛先の無線端末に対して1つの無線信号またはSU−MIMO信号を送信する形態である。このとき、各指向性切替アンテナのアンテナ指向性を宛先の無線端末に対して良好な特性が得られるように選択する。ここでは、指向性切替アンテナの数Nを4とし、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとにアンテナ指向性d1〜d4を選択するものとして説明する。
【0037】
図3において、通信モード切替部12はネットワークから入力する信号から、ここでは無線端末20−3を宛先とするユニキャストモードを検出するとアンテナ指向性制御部15に通知する。アンテナ指向性切替制御部15は、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性d1〜d4の中から、ユニキャスト通信する無線端末20−3に対する受信電力(RSSI)または信号電力対干渉電力比(SIR)が最大となるアンテナ指向性を選択する。
【0038】
ここで、無線信号処理部13は、無線端末20−1〜20−Mごとに、指向性切替アンテナ16−1〜16−4のそれぞれのアンテナ指向性d1〜d4におけるRSSIを取得し、SIRを求めてリスト化して記憶部14に格納しておく。無線端末20−1〜20−4に対するRSSIおよびSIRのリスト例を
図4に示す。なお、例えば無線端末20−1に対して、指向性切替アンテナ16−1のアンテナ指向性d1におけるSIRは、アンテナ指向性d1のRSSIを所望信号とし、アンテナ指向性d2〜d4のRSSIの合計を干渉信号としたときの所望信号と干渉信号との比である場合や、予め設定した電力量を干渉信号とした場合の計算結果である。
【0039】
図4に示す例では、無線基地局10が無線端末20−3とユニキャスト通信するときに、無線端末20−3における指向性切替アンテナ16−1〜16−4のアンテナ指向性d1〜d4ごとのRSSIまたはSIRが参照される。指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性d1〜d4の中から、無線端末20−3に対するRSSIが最大となるアンテナ指向性として、指向性切替アンテナ16−1〜16−4はそれぞれアンテナ指向性d4,d3,d2,d2が選択される。または、無線端末20−3に対するSIRが最大となるアンテナ指向性として、指向性切替アンテナ16−1〜16−4はそれぞれアンテナ指向性d4,d3,d2,d2が選択される。なお、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性の中で、無線端末20−3に対するRSSIまたはSIRの最大値が同じものがあれば、その1つが任意に選択される。
【0040】
無線信号処理部13は、ユニキャストモードに対応する1つの無線信号を生成し、または指向性切替アンテナ16−1〜16−4の各アンテナ指向性に対して得られる無線端末20−3との伝搬チャネル情報に基づいてSU−MIMO信号を生成すると、当該1つの無線信号またはSU−MIMO信号は指向性切替アンテナ16−1〜16−4からそれぞれ選択されたアンテナ指向性で送信され、宛先の無線端末20−3に受信される。このように、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、ユニキャスト通信する無線端末20−3に対するRSSIまたはSIRが最大となるアンテナ指向性を選択することにより、ユニキャスト通信する無線端末20−3の通信品質を向上させることができる。
【0041】
(実施例3)
図5は、MU−MIMOモードのアンテナ指向性選択例を示す。
本発明におけるMU−MIMOは、複数の指向性切替アンテナを有する無線基地局が、複数台の無線端末と互いに異なる情報を伝送するMU−MIMO信号を送受信する形態である。このとき、各指向性切替アンテナのアンテナ指向性をMU−MIMO通信の対象となる各無線端末に対して全体として良好な特性が得られるように選択する。ここでは、指向性切替アンテナの数Nを4とし、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとにアンテナ指向性d1〜d4を選択するものとして説明する。
【0042】
図5において、通信モード切替部12はネットワークから入力する信号から、ここでは無線端末20−1〜20−4に対するMU−MIMOモードを検出するとアンテナ指向性切替制御部15に通知する。アンテナ指向性切替制御部15は、指向性切替アンテナ16−1〜16−Nごとに選択可能なアンテナ指向性d1〜d4の中から、MU−MIMO通信の対象となる無線端末20−1〜20−4に対するSIRの合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性を選択する。
【0043】
ここで、無線信号処理部13がリスト化して記憶部14に格納したRSSIおよびSIRのリストのうち、MU−MIMO通信の対象となる無線端末20−1〜20−4に対する例を
図6に示す。なお、各数値は、
図4のものと同じである。
【0044】
図6に示す例では、無線基地局10が無線端末20−1〜20−4とMU−MIMO通信するときに、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性d1〜d4の中から、無線端末20−1〜20−4に対するSIRの合計値が最大となるアンテナ指向性として、指向性切替アンテナ16−1〜16−4はそれぞれアンテナ指向性d3,d2,d2,d2が選択される。または、無線端末20−1〜20−4に対するSIRの最小値が最大となるアンテナ指向性として、指向性切替アンテナ16−1〜16−4はそれぞれアンテナ指向性d3,d2,d2,d2が選択される。なお、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性の中で、無線端末20−1〜20−4に対するSIRの合計値または最小値の最大が同じものがあれば、その1つが任意に選択される。
【0045】
無線信号処理部13は、指向性切替アンテナ16−1〜16−4の各アンテナ指向性に対して得られる無線端末20−1〜20−4との伝搬チャネル情報に基づいてMU−MIMO信号を生成すると、当該MU−MIMO信号は指向性切替アンテナ16−1〜16−4からそれぞれ選択されたアンテナ指向性で送信され、宛先の無線端末20−1〜20−4に受信される。このように、指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとに選択可能なアンテナ指向性の中から、MU−MIMO通信の対象となる無線端末20−1〜20−4に対するSIRの合計値または最小値が最大となるアンテナ指向性を選択することにより、MU−MIMO通信する無線端末20−1〜20−4の通信品質を向上させることができる。
【0046】
(実施例4)
実施例1〜実施例3に示すように、各通信モードに応じて指向性切替アンテナごとに最適なアンテナ指向性が選択されるが、実施例4では、各指向性切替アンテナで送受信する信号電力を各通信モードに応じて調整することにより、干渉電力の低減を図る例を示す。
【0047】
図7は、本発明の無線基地局の実施例4に対応する構成例を示す。
図7において、実施例4の無線基地局は、
図1に示す実施例1〜3の無線基地局の構成に加えて、無線信号処理部13の各送受信端子1〜Nと、指向性切替アンテナ16−1〜16−Nとの間に、信号電力制御部17の制御により信号電力を調整する信号電力調整部18−1〜18−Nを接続する。信号電力制御部17は、通信モード切替部12から通知される通信モードの情報に応じた信号電力調整値を設定する。その一例を
図8に示す。その他の構成は、
図1に示す実施例1〜3の無線基地局と同様である。
【0048】
図8には、実施例1のマルチキャストモードで選択された指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとのアンテナ指向性と、当該アンテナ指向性ごとに無線端末20−1〜20−4に対するRSSIの最小値を示す。また、実施例2のユニキャストモードで選択された指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとのアンテナ指向性と、当該アンテナ指向性でユニキャスト通信する無線端末20−3に対するRSSIを示す。また、実施例3のMU−MIMOモードで選択された指向性切替アンテナ16−1〜16−4ごとのアンテナ指向性を示し、当該アンテナ指向性ごとにMU−MIMO通信する無線端末20−1〜20−4に対するRSSIの最小値を示す。
【0049】
信号電力制御部17は、通信モードごとに予め設定した基準値を信号電力調整部18−1〜18−4に通知する。ここでは、通信モードごとの基準値を−70dBmとしているが、通信モードごとに異なる値を用いてもよい。信号電力調整部18−1〜18−4は、信号電力制御部17から通知される通信モードごとの基準値に応じて、選択されたアンテナのRSSIやその最小値に対する調整値が算出され、各指向性切替アンテナで送受信される信号電力が基準値に基づいて調整される。
【0050】
なお、信号電力の増幅および減衰の一方のみしかできない場合は、基準値として信号電力の上限値および下限値を設けることになる。
【0051】
以上説明した実施例1〜実施例4の処理は、
図1に示す通信モード切替部12、無線信号処理部13、記憶部14およびアンテナ指向性切替制御部15、さらに
図7に示す信号電力制御部17において、専用のハードウェアで実現するだけでなく、各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行することにより実現させることができる。また、当該プログラムは記録媒体に記録するだけでなく、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 無線基地局
11 有線インタフェース
12 通信モード切替部
13 無線信号処理部
14 記憶部
15 アンテナ指向性切替制御部
16−1〜16−N 指向性切替アンテナ
17 信号電力制御部
18−1〜18−N 信号電力調整部
20−1〜20−M 無線端末