特開2017-158477(P2017-158477A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-158477中華麺の風味向上剤、中華麺の製造方法、及び中華麺の風味向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-158477(P2017-158477A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】中華麺の風味向上剤、中華麺の製造方法、及び中華麺の風味向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20170818BHJP
【FI】
   A23L1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-45924(P2016-45924)
(22)【出願日】2016年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】徐 暁敏
(72)【発明者】
【氏名】乾 真也
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LC17
4B046LG20
4B046LG26
4B046LG29
4B046LG30
4B046LP01
(57)【要約】
【課題】中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、製造工程や、流通又は保存中も中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる中華麺の風味向上剤、並びにこれを用いる中華麺の製造方法及び中華麺の風味向上方法を提供すること。
【解決手段】穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを有効成分として含有する中華麺の風味向上剤、並びに前記風味向上剤を用いる中華麺の製造方法、及び中華麺の風味向上方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを有効成分として含有することを特徴とする中華麺の風味向上剤。
【請求項2】
中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対して、前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドが、0.05質量%〜5質量%配合される請求項1に記載の風味向上剤。
【請求項3】
前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドが、小麦アルブミン、米アルブミン、米ペプチド、及び小麦グルテン加水分解物からなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の風味向上剤。
【請求項4】
更に、穀物胚芽を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の風味向上剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を含むことを特徴とする中華麺の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を含むことを特徴とする中華麺の風味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華麺の風味向上剤、並びにこれを用いる中華麺の製造方法及び中華麺の風味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華麺は、製麺原料に添加するアルカリ性のかんすいが小麦粉中のタンパク質、色素、澱粉などに作用して、中華麺独特の腰の強さ、色調、及び風味を示す麺類である。そして、この中華麺の風味は、喫食時におけるスープ中の種々の風味と合わさって、他では得られない独特の風味を醸し出している。
【0003】
中華麺の生麺を茹で上げてすぐに喫食される場合には、中華麺独特の風味が失われるという問題はない。しかしながら、生麺を茹で上げた後、冷蔵状態や冷凍状態で保存又は流通され、スーパーやコンビニエンスストアで販売される冷蔵麺(いわゆるチルド麺)や冷凍麺、生麺を蒸し処理した後、乾燥する即席麺、特に熱風乾燥されるノンフライ即席麺では、中華麺独特の風味に乏しいという問題がある。この問題は、老化抑制や冷凍耐性のために加工澱粉が使用されるチルド麺や冷凍麺、特にチルド麺で顕著である。
【0004】
前記中華麺に中華麺の風味を保持乃至向上させるために、かんすいの量を多くすることが考えられる。しかしながら、製麺時にかんすいを通常より多く添加すると、かんすいのアルカリ性により麺類に褐変が生じたり、好ましくないアルカリ臭が生じたりしてしまい、却って中華麺の風味が失われ、商品価値が著しく低下してしまうという問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、水、小麦粉及びかんすい原料を混合して懸濁液を調製し、この懸濁液を、穀粉を含む麺原料含有物に加えて混捏し、麺生地を調製する方法(例えば、特許文献1参照)、α化処理後乾燥処理して製造された即席麺の麺塊に、かんすいを含む液を吸着させ、該かんすいを含む液を吸着させた麺塊を蒸煮する方法(例えば、特許文献2参照)、麺線をα化処理後、乾燥処理して乾燥麺塊とした後に、105℃以上とした前記乾燥麺塊にかんすいを含む液を吸着させる方法(例えば、特許文献3参照)、原料粉にかんすいを添加して製麺し、蒸煮工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を少なくとも1回行う方法(例えば、特許文献4参照)、小麦粉、かんすい及び水との混合物を加熱し、タンパク質を変性させると共に、澱粉をα化せしめた後、乾燥し、引き続いて粉末化した調味料を用いる方法(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案でも、十分な効果が得られているとはいえず、特に、チルド麺や冷凍麺、ノンフライ即席麺では、満足できる効果とはいえないのが現状である。
したがって、製造工程や、流通又は保存中も中華麺の風味(特にかんすい風味)を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる技術の開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−124127号公報
【特許文献2】特開2006−166766号公報
【特許文献3】特開2006−271274号公報
【特許文献4】特開2012−60998号公報
【特許文献5】特開平5−30937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、製造工程や、流通又は保存中も中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる中華麺の風味向上剤、並びにこれを用いる中華麺の製造方法及び中華麺の風味向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、中華麺の製造時に、穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加(「配合」と称することもある)することにより、製造工程や、流通又は保存中も中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺が得られることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを有効成分として含有することを特徴とする中華麺の風味向上剤である。
<2> 中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対して、前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドが、0.05質量%〜5質量%配合される前記<1>に記載の風味向上剤である。
<3> 前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドが、小麦アルブミン、米アルブミン、米ペプチド、及び小麦グルテン加水分解物からなる群から選択される1種以上である前記<1>又は<2>に記載の風味向上剤である。
<4> 更に、穀物胚芽を含有する前記<1>〜<3>のいずれかに記載の風味向上剤である。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれかに記載の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を含むことを特徴とする中華麺の製造方法である。
<6> 前記<1>〜<4>のいずれかに記載の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を含むことを特徴とする中華麺の風味向上方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、製造工程や、流通又は保存中も中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる中華麺の風味向上剤、並びにこれを用いる中華麺の製造方法及び中華麺の風味向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(中華麺の風味向上剤)
本発明の中華麺の風味向上剤(以下、「風味向上剤」と称することがある)は、穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0013】
<穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチド>
<<穀物由来の水溶性タンパク質>>
前記穀物由来の水溶性タンパク質としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦アルブミン、米アルブミン、大麦アルブミン、ライ麦アルブミン、ソバアルブミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記穀物由来の水溶性タンパク質の中でも、中華麺の風味保持効果や入手の容易性等の点で、小麦アルブミン、米アルブミンが好ましく、小麦アルブミンが特に好ましい。
前記穀物由来の水溶性タンパク質は、市販品を使用してもよいし、穀物から調製したものを使用してもよい。前記穀物から調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0014】
<<穀物由来のペプチド>>
前記穀物由来のペプチドとしては、特に制限はなく、適宜選択することができ、米ペプチド(米タンパク質加水分解物)、小麦タンパク質加水分解物(グルテン加水分解物を含む)、トウモロコシペプチドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記穀物由来のペプチドの中でも、中華麺の風味保持効果や、より中華麺らしい風味の付与、入手の容易性等の点で、米ペプチド、小麦グルテン加水分解物が特に好ましい。
前記穀物由来のペプチドは、市販品を使用してもよいし、穀物から調製したものを使用してもよい。前記穀物から調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0015】
本発明において、前記穀物由来の水溶性タンパク質、及び前記穀物由来のペプチドは、それぞれを単独で用いてもよいが、中華麺の風味保持の効果や、より中華麺らしい風味の付与の観点から、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、小麦アルブミンと小麦グルテン加水分解物、小麦アルブミンと米ペプチド、小麦グルテン加水分解物と米ペプチドの組合せなどが挙げられる。
前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドは、小麦アルブミン、米アルブミン、米ペプチド、及び小麦グルテン加水分解物からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0016】
前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドの前記風味向上剤における含有量としては、特に制限はなく、後述する中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対する配合量などに応じて適宜選択することができる。
【0017】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、穀物胚芽、賦形剤・分散剤、色素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の前記風味向上剤における含有量としては、特に制限はなく、後述する中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対する配合量などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記その他の成分の中でも、中華麺の風味保持の効果や、より中華麺らしい風味の付与の観点から、穀物胚芽を含有することが好ましい。
【0019】
<<穀物胚芽>>
前記穀物胚芽としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦胚芽、米胚芽、大麦胚芽、コーン胚芽などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記穀物胚芽の中でも、中華麺の風味保持効果や、やより中華麺らしい風味の付与、入手の容易性等の点で、小麦胚芽、米胚芽がより好ましい。
前記穀物胚芽の形状としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、粉末が好ましい。
また、前記穀物胚芽は、全脂胚芽、脱脂胚芽のいずれでもよいが、より中華麺らしい風味の付与の点で、脱脂胚芽が好ましい。
前記穀物胚芽は、市販品を使用してもよいし、穀物から調製したものを使用してもよい。前記穀物から調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0020】
前記穀物胚芽の前記風味向上剤における含有量としては、特に制限はなく、後述する中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対する配合量などに応じて適宜選択することができる。
【0021】
<<賦形剤・分散剤>>
前記賦形剤・分散剤としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、澱粉、穀粉類、糖類、デキストリン、セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記賦形剤・分散剤は、市販品を使用することができる。
【0022】
前記賦形剤・分散剤の前記風味向上剤における含有量としては、特に制限はなく、上記有効成分の量などに応じて適宜選択することができる。
【0023】
<配合量>
前記風味向上剤の中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対する配合量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
なお、本発明において、中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対する配合量は、ベーカーズパーセントで表したものである。
【0024】
−穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチド−
前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドの配合量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対して、0.05質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜2質量%がより好ましく、0.5質量%〜1.5質量%特に好ましい。前記配合量が、0.05質量%未満であると、十分な効果が得られない可能性があり、5質量%を超えると、配合するタンパク質やペプチド自体の風味が感じられるようになり、その結果として中華麺として異質の風味となってしまう可能性がある。
【0025】
−穀物胚芽−
前記穀物胚芽の配合量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対して、0.05質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜2質量%がより好ましい。前記配合量が、0.05質量%未満であると、前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドとの組合せの効果(相乗効果)が十分に奏されないことがあり、5質量%を超えると、効果はそれ以上向上せず、また穀物胚芽自体の風味が感じられるようになり、その結果として中華麺として異質の風味となってしまう可能性がある。
【0026】
−穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチド、及び穀物胚芽−
前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチド、及び穀物胚芽の合計配合量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、中華麺の製造に用いる小麦粉を主体とする穀粉類に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.4質量%〜4質量%がより好ましく、0.5質量%〜2質量%が特に好ましい。前記配合量が、0.1質量%未満であると、前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドとの組合せの効果(相乗効果)が十分に奏されないことがあり、10質量%を超えると、効果はそれ以上向上せず、また配合するタンパク質やペプチド自体の風味や、穀物胚芽自体の風味が感じられるようになり、その結果として中華麺として異質の風味となってしまう可能性がある。
【0027】
<態様>
前記風味向上剤は、前記穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドと、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に混合する態様であってもよい。
【0028】
本発明の風味向上剤によれば、中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、中華麺の風味、特にかんすい風味が製造工程中や流通・保存中において低減しやすいチルド麺や冷凍麺、ノンフライ麺などの中華麺においても良好な中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる。
【0029】
(中華麺の製造方法)
本発明の中華麺の製造方法は、本発明の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0030】
前記中華麺の製造方法としては、前記製麺原料の混合から生地の混捏の間のいずれかの段階で前記風味向上剤を配合する以外は、特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
【0031】
<製麺原料>
前記製麺原料は、前記小麦粉を主体とする穀粉類と、かんすいとを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
【0032】
−小麦粉を主体とする穀粉類−
前記小麦粉を主体とする穀粉類としては、小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、デュラム小麦粉)を主体とし、更に米粉、ソバ粉、ライ麦粉、大麦粉、コーンフラワー、各種澱粉を添加してもよい。前記小麦粉以外の穀粉類を使用する場合、それらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記澱粉としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉などが挙げられ、それらの加工澱粉を用いてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記加工澱粉としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、熱処理澱粉、α化澱粉、酸処理澱粉、架橋澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などが挙げられる。また、複数の加工処理を施された澱粉、例えば、エーテル化架橋澱粉やエステル化架橋澱粉であってもよい。
【0034】
−かんすい−
「かんすい」とは、食品衛生法上においては「炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩のカリウム塩、ナトリウム塩の1種もしくは2種以上を含むもの」と規定されている。
本発明において、中華麺の製造に用いるかんすいとしては、通常、中華麺の製造に用いられているものであれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、市販品の粉末かんすいを水に溶解させたものを適宜用いることができる。
前記粉末かんすいの配合量は、製造する中華麺類の麺線の太さや、流通・保存の形態などにより異なるが、通常は原料の前記小麦粉を主体とする穀粉類100質量部に対して0.3質量部〜3質量部であり、0.5質量部〜2質量部が好ましい。
【0035】
−その他の成分−
前記製麺原料におけるその他の成分(以下、「副資材」と称することもある)としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、食塩;全卵、卵白、卵白粉、全卵粉などの卵類;グルテン;キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸エステル、寒天、ゼラチン、ペクチンなどの増粘剤;油脂類;エチルアルコールなどが挙げられる。
前記副資材の配合量としては、特に制限はなく、使用目的などに応じて適宜選択することができる。
【0036】
<風味向上剤の配合量>
前記風味向上剤の配合量としては、上記した本発明の風味向上剤の<配合量>の項目に記載したものと同様である。
【0037】
本発明の中華麺の製造方法によれば、中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、中華麺の風味、特にかんすい風味が製造工程中や流通・保存中において低減しやすいチルド麺や冷凍麺、ノンフライ麺などの中華麺においても良好な中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を製造することができる。
【0038】
(中華麺の風味向上方法)
本発明の中華麺の風味向上方法は、本発明の風味向上剤を、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に配合する工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記中華麺の風味向上方法は、上記した本発明の中華麺の製造方法と同様にして行うことができる。また、前記中華麺の風味向上方法における本発明の風味向上剤の配合量も、上記した本発明の中華麺の製造方法の項目に記載したものと同様である。
【0039】
本発明の中華麺の風味向上方法によれば、中華麺の製造時に、小麦粉を主体とする穀粉類を含む製麺原料に添加するだけで、中華麺の風味、特にかんすい風味が製造工程中や流通・保存中において低減しやすいチルド麺や冷凍麺、ノンフライ麺などの中華麺においても良好な中華麺の風味を保持させることができ、良好な風味の中華麺を提供することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例、比較例、及び試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例及び試験例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜10、及び比較例1〜5:中華麺の風味向上剤の製造)
下記表1〜2の配合にて、実施例1〜10、及び比較例1〜5の風味向上剤を製造した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
(試験例1:中華麺の製造)
前記実施例1〜10、又は比較例1〜5の風味向上剤を用い、下記の配合及び工程で、中華麺(調理麺)を製造した。なお、風味向上剤を用いなかった以外は同様にして製造した中華麺を対照とした。
<配合>
・ 小麦粉(準強力粉) ・・・ 85質量部
・ 加工澱粉(タピオカ) ・・・ 15質量部
・ 風味向上剤 ・・・ 2質量部
・ 食塩 ・・・ 2質量部
・ 粉末かんすい(青)(オリエンタル酵母工業株式会社製) ・・・ 1.5質量部
・ 水 ・・・ 38質量部
<工程>
・ ミキシング時間 ・・・ 高速6分低速7分
・ 捏上温度 ・・・ 25℃
・ 複合回数 ・・・ 1回
・ 熟成 ・・・ 30分
・ 圧延・切出し ・・・ 20番角刃、1.4mm
・ 茹で ・・・ 99℃、2分30秒(歩留まりが180%になるように)
・ 水冷 ・・・ 氷水で30秒
【0045】
<評価>
製造直後の中華麺の風味を下記評価基準A(D0)により官能試験にて評価した。また、製造した中華麺をパックに入れ、5℃で3日間保存した後の風味を下記評価基準B(D+3)により評価し、風味増強(「風味保持」と称することもある)効果を評価した。なお、風味向上剤無添加を対照とした。結果を表3〜4に示す。
−評価基準A:かんすい風味(D0)−
4点 : 中華麺本来の風味である(対照)。
3点 : 中華麺の風味がやや強い。
2点 : 中華麺の風味が強いが、やや異質な風味がある。
1点 : 中華麺として異質な風味がある。
なお、評価基準Aでは、かんすい風味と異質な風味を評価した。
−評価基準B:かんすい風味増強効果(D+3)−
4点 : 茹で立てのような中華麺の風味である。
3点 : 中華麺の風味がやや弱い。
2点 : 中華麺の風味が弱い。
1点 : 中華麺の風味が僅かである。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表3〜4の結果から、穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドを含む風味向上剤を用いて製造した中華麺は、中華麺本来の風味に近い良好な風味を有し、保存後も中華麺の風味が保持されていることが確認された。
また、穀物由来の水溶性タンパク質及び/又は穀物由来のペプチドと、小麦胚芽とを含む風味向上剤を用いて製造した中華麺は、より優れた効果を奏することが確認された。