【解決手段】治療支援装置20は、分光装置C2からデータを取得する制御部21を備える。この制御部21は、第1の測定時に、姿勢を把握できる患者の分光画像を取得し、前記分光画像に基づいて、第1の血管パターンの特徴情報を算出し、第2の測定時に、姿勢を把握できる患者の分光画像を、再度、取得し、前記分光画像に基づいて、第2の血管パターンの特徴情報を算出し、前記第1の血管パターンの特徴情報と前記第2の血管パターンの特徴情報との差異に関する情報を出力する。
前記第1の血管パターンの特徴情報と前記第2の血管パターンの特徴情報との差異に基づいて、デフォメーションの要否を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の治療支援システム。
前記第1の血管パターンの特徴情報と前記第2の血管パターンの特徴情報との差異に基づいて、患者の本人認証を行なうことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の治療支援システム。
前記患者の治療部位を特定し、前記治療部位の血管パターンに基づいて、治療による炎症の有無を判定し、前記炎症を検知した場合には、注意喚起を出力することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の治療支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、
図1〜
図4に従って説明する。本実施形態では、患者の体内の患部に対して放射線を照射して治療を行なう場合を想定する。この場合、患部の検査時(第1の測定時)における患者の姿勢と、治療時(第2の測定時)における患者の姿勢とを一致させる。
【0017】
図1に示すように、この放射線等を用いた治療を支援するために、治療支援システムとして、CT撮影装置10、放射線治療装置15、治療支援装置20、距離センサC1、分光装置C2、治療計画装置50を用いる。
【0018】
CT撮影装置10は、放射線等を利用して物体を走査しコンピュータを用いて処理した物体の内部画像(CT画像データ)を生成するコンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)処理を行なう。このコンピュータ断層撮影においては、患者の身体を、所定の画像間隔で撮影した複数のCT画像が生成される。
【0019】
放射線治療装置15は、放射線を患部に照射することにより、がん等の治療を行なう装置である。この放射線治療装置15には、放射線を発する照射装置(ガントリ)や、患者が仰臥や背臥するための治療台が設けられている。
【0020】
距離センサC1は、3次元計測部として機能し、深度センサ等を備え、被写体の位置を認識する。そして、距離センサC1は、被写体の撮影画像を出力する。この撮影画像には、視野に含まれる各被写体について、深度センサによって計測した距離情報(深度情報)が含まれる。これにより、複数の撮影画像の撮影位置を考慮して、3次元モデルを生成することができる。
【0021】
分光装置C2は、所定の波長における分光画像の撮影手段である。例えば、近赤外領域(例えば850nm)においては、生体を透過しやすく、血中ヘモグロビンの酸化の有無による光吸収の変化率が大きい。この物理現象は、酸化の有無による血中ヘモグロビン分子の光吸収による振動励起状態への遷移確率の相違によって生じる。なお、分光撮影に用いる波長は、皮膚内の血管を顕在化させやすい複数の波長を用いる。この波長は、照明条件などの外乱を受けやすいため、設置時に皮膚や皮膚に準ずる表面特性を持つ装置を用いて、様々な波長による撮影を行ない、統計解析により血管を顕在化させる波長を選定する。本実施形態では、近赤外領域の輝度と近紫外領域の輝度との輝度差に基づいて血管パターンを特定する。
【0022】
治療支援装置20は、患者の放射線治療を支援するコンピュータシステムである。この治療支援装置20は、制御部21、患者情報記憶部22を備えている。更に、この治療支援装置20は、医師が操作に用いるキーボードやポインティングデバイス等の入力部や、ディスプレイ等の出力部を備える。
【0023】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段として機能し、後述する処理(検査支援段階、3次元計測処理段階、分光計測処理段階、治療支援段階、姿勢支援段階等を含む処理)を行なう。このための治療支援プログラムを実行することにより、制御部21は、検査支援部210、3次元計測処理部211、分光計測処理部212、治療支援部213、姿勢支援部214等として機能する。
【0024】
検査支援部210は、検査装置(本実施形態では、CT撮影装置10)から検査画像を取得し、患者情報記憶部22に記録する処理を実行する。
3次元計測処理部211は、距離センサC1から撮影画像を取得する処理を実行する。更に、3次元計測処理部211は、取得した撮影画像を再構成して、患者の身体の3次元モデル(メッシュモデル)を生成する処理を実行する。
【0025】
分光計測処理部212は、分光装置C2から分光画像を取得する処理を実行する。
治療支援部213は、放射線治療を行なう患者を特定し、本人認証処理を実行する。
姿勢支援部214は、患者の姿勢等の位置合わせを支援する処理を実行する。姿勢支援部214は、姿勢の再現を判定するための配置相違量に関するデータと、患者の体型の変化を判定するためのデフォメーション基準値に関するデータを保持している。
【0026】
患者情報記憶部22には、治療対象の患者に関する患者管理データ220が記録される。この患者管理データ220は、検査(CT撮影)時に、距離センサC1や分光装置C2から撮影画像を取得した場合に記録される。患者管理データ220は、患者ID、撮影日時、3次元撮影画像、3次元モデル、血管画像、検査画像に関するデータを含んで構成される。
【0027】
患者IDデータ領域には、患者を特定するための識別子に関するデータが記録される。
撮影日時データ領域には、検査(CT撮影)を行なった年月日及び時刻に関するデータが記録される。
【0028】
3次元撮影画像データ領域には、距離センサC1から取得した撮影画像に関するデータが記録される。この撮影画像には、画像に含まれる各ピクセルに対して、距離センサC1から被写体までの距離(深度)に関するデータが埋め込まれている。
【0029】
3次元モデルデータ領域には、この3次元撮影画像を用いて生成された3次元モデル(3次元身体データ)が記録される。
血管画像データ領域には、分光装置C2から取得した撮影画像に関するデータが記録される。ここでは、撮影画像に含まれる血管パターン(第1の血管パターン)が記録される。
検査画像データ領域には、CT撮影装置10において撮影された検査画像(CT画像)が記録される。
【0030】
治療計画装置50は、患部に対して放射線の入射方法を検討し、適切な線量が処方できているか確認するためのシミュレータである。この治療計画装置50においては、患部の体表面形状、患部の形状、位置、放射線の照射を避けるべきリスク臓器との位置関係によって、治療ビームの線質、入射方向、照射範囲、線量・照射回数等を決定する。この治療計画装置50は、医師が用いるキーボードやポインティングデバイス等の入力部や、ディスプレイ等の出力部を備える。
【0031】
次に、上記のように構成された治療支援装置20において、治療支援システムの動作方法について説明する。
(検査支援処理)
まず、
図2を用いて、検査支援処理を説明する。
ここでは、治療支援装置20の制御部21は、CT撮影処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、CT撮影装置10を用いて、患者の特定領域についてコンピュータ断層撮影処理を行ない、CT画像(DICOMデータ)を作成する。そして、治療支援装置20の検査支援部210は、患者IDに関するデータとともに、CT撮影装置10からCT画像を取得する。そして、検査支援部210は、患者ID、撮影日時、検査画像(CT画像)を含めた患者管理データ220を生成し、患者情報記憶部22に記録する。
【0032】
次に、治療支援装置20の制御部21は、体表面の3D撮影処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、距離センサC1を用いて、CT撮影装置10の治療台上の患者の姿勢(検査時の姿勢)を撮影する。この場合、CT撮影装置10の治療台も含めて撮影する。そして、制御部21の3次元計測処理部211は、距離センサC1から3次元撮影画像を取得する。この3次元撮影画像には、各ピクセルに対して深度情報が設定されている。そして、3次元計測処理部211は、患者ID、撮影日時に関連付けた患者管理データ220に3次元撮影画像を記録する。
【0033】
次に、治療支援装置20の制御部21は、3Dモデルの生成処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21の3次元計測処理部211は、3次元撮影画像を、仮想空間内で、深度情報を用いて再構成することにより、3次元モデルを生成する。そして、3次元計測処理部211は、生成した3次元モデルを、患者ID、撮影日時に関連付けられた患者管理データ220に記録する。
【0034】
次に、治療支援装置20の制御部21は、分光画像の取得処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、分光装置C2を用いて、CT撮影装置10の治療台上の患者の姿勢(検査時の姿勢)を撮影する。この場合、距離センサC1によって撮影された3次元撮影画像に対応させて同じ範囲を撮影する。そして、制御部21の分光計測処理部212は、患者IDとともに、分光装置C2から分光画像(本実施形態では、複数の波長での画像)を取得する。
【0035】
次に、治療支援装置20の制御部21は、血管パターンの特定処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の分光計測処理部212は、分光画像において、血管のパターン認識を行なう。ここでは、分光画像において、予め想定される血管の太さや配置、形状に基づいて、血管と認識される血管パターンを特定する。そして、分光計測処理部212は、特定した血管パターンを含む血管画像(第1の血管パターン)を、患者ID、撮影日時に関連付けた患者管理データ220に記録する。
【0036】
次に、治療計画装置50を用いて、治療計画処理を実行する(ステップS1−6)。
具体的には、治療計画装置50のディスプレイに、CT画像を出力する。そして、医師は、CT画像を確認して、放射線を照射する患部領域(標的)を指定する。この患部の疾患の種類により、放射線治療装置15において照射する治療ビームの線質を決める。
【0037】
次に、治療計画装置50を用いて、放射線がリスク臓器に照射されず、患部領域(標的)に照射できる照射位置を検索する(照射位置のシミュレーション)。この場合、放射線治療装置15のガントリが患者の身体に接触しない照射位置(入射方向、照射範囲)を考慮する。
【0038】
更に、治療計画装置50は、この照射位置において、治療に必要な放射線の照射量を計算する(照射量のシミュレーション)。ここでは、患部の体積や深さに応じて、線量・照射回数を決定する。
そして、治療計画装置50は、放射線治療装置15における治療に用いる放射線の照射位置、線種、線量・照射回数、治療計画を出力する。
【0039】
(治療支援処理)
次に、
図3、
図4を用いて、治療支援処理を説明する。ここでは、患者は、放射線治療装置15の治療台に仰臥又は背臥する。
【0040】
まず、治療支援装置20の制御部21は、体表面の3D撮影処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、治療支援部213は、放射線治療装置15から患者IDに関するデータを取得する。更に、ステップS1−2と同様に、距離センサC1を用いて、放射線治療装置15内の患者の姿勢(治療時の姿勢)を撮影する。この場合、制御部21の3次元計測処理部211は、患者IDとともに、距離センサC1から3次元撮影画像を取得する。
【0041】
次に、治療支援装置20の制御部21は、ステップS1−3と同様に、3Dモデルの生成処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21の3次元計測処理部211は、3次元撮影画像を再構成することにより、現在(治療時)の3次元モデルを生成する。
【0042】
次に、治療支援装置20の制御部21は、ステップS1−4と同様に、分光画像の取得処理を実行する(ステップS2−3)。
次に、治療支援装置20の制御部21は、ステップS1−5と同様に、治療時の血管パターンの特定処理を実行する(ステップS2−4)。この処理により、治療時の血管パターン(第2の血管パターン)を特定する。
【0043】
次に、治療支援装置20の制御部21は、検査時の血管パターンの呼出処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、患者情報記憶部22から、患者IDに関連付けられた血管画像(第1の血管パターン)を取得する。なお、患者IDに関連付けられて複数の血管画像が登録されている場合には、任意の画像を選択して取得する。
【0044】
次に、治療支援装置20の制御部21は、パターン照合処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、画像による認証処理で用いて、治療時の血管パターン(第2の血管パターン)の特徴量と、検査時の血管パターン(第1の血管パターン)の特徴量とを算出し、特徴量の比較を行なう。
【0045】
次に、治療支援装置20の制御部21は、認証完了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、治療時の血管パターンの特徴量と、検査時の血管パターンの特徴量とが一致した場合には認証完了と判定する。
【0046】
血管パターンの特徴量が一致せず、認証できないと判定した場合(ステップS2−7において「NO」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、エラー処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、患者が異なる可能性があることを示すメッセージをディスプレイに出力する。
【0047】
一方、血管パターンの特徴量が一致し、認証完了と判定した場合(ステップS2−7において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、治療時及び検査時において、対応する特徴点の特定処理を実行する(ステップS2−9)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、ステップS2−2において生成した3Dモデルに対して、ステップS2−4で取得した血管パターンを付加する。更に、姿勢支援部214は、患者情報記憶部22の患者管理データ220に記録されている3Dモデルに、血管撮影画像の血管パターンを付加する。そして、姿勢支援部214は、各3Dモデルに付加された血管パターンにおいて特徴点(例えば、分岐点等)を特定する。
【0048】
次に、治療支援装置20の制御部21は、治療時と検査時とで位置がずれている特徴点の特定処理を実行する(ステップS2−10)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、それぞれの3Dモデルにおいて血管パターンの特徴点の位置を比較し、相対的に位置がずれている特徴点を特定する。この場合、ICP(Iterative Closest Point)法や3次元特徴量(Spin ImageやSHOT特徴量等)を用いての位置合わせを行なう。
【0049】
次に、
図4に示すように、治療支援装置20の制御部21は、体型の変化があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、検査時の3次元モデル上の特徴点の位置を、治療時の3次元モデル上の特徴点の位置にフィッティングするために必要な変形量をプロクラステス解析法などの手法を用いて算出する。ここでは、特徴点間の距離の拡大や縮小に応じて、体型の変化を判定する。そして、姿勢支援部214は、特徴点間の距離の拡縮の変形量とデフォメーション基準値とを比較する。変形量がデフォメーション基準値以下の場合には、許容範囲内と判定する。
【0050】
変形量がデフォメーション基準値を越えており、体型の変化があると判定した場合(ステップS3−1において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、デフォメーション処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、検査時の特徴点の位置を、治療時の特徴点の位置にフィッティングするために必要な変化量を用いて、治療時の3Dモデルを修正する。
【0051】
一方、体型の変化がないと判定した場合(ステップS3−1において「NO」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、デフォメーション処理(ステップS3−2)をスキップする。
【0052】
次に、治療支援装置20の制御部21は、姿勢を再現できているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、治療時の3次元モデルと検査時の3次元モデルとの差異を算出する。ここでは、3次元モデルに付加された血管パターンの特徴点の配置に基づく配置相違量を算出する。そして、3次元モデルの差異及び配置相違量が基準値以下の場合には、姿勢を再現していると判定する。
【0053】
姿勢を再現していると判定した場合(ステップS3−3において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、放射線治療処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、制御部21の姿勢支援部214は、治療計画装置50から治療計画を取得し、放射線治療装置15に供給する。この場合、デフォメーション処理(ステップS3−2)を実行した場合には、変化量に基づいて治療計画を調整する。そして、放射線治療装置15は、治療計画に基づいて、放射線照射を行なう。
【0054】
一方、配置相違量が基準値を超えており、姿勢を再現していないと判定した場合(ステップS3−3において「NO」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、患者位置の調整指示処理を実行する(ステップS3−5)。この場合、姿勢支援部214は、治療時の3次元モデルと検査時の3次元モデルとを重畳させて、ディスプレイに出力する。医師は、3次元モデルのずれを考慮して、患者の姿勢を修正する指示を行なう。
【0055】
次に、治療支援装置20の制御部21は、ステップS2−1〜ステップS2−4と同様に、体表面の3D撮影処理(ステップS3−6)、3Dモデルの生成処理(ステップS3−7)、分光画像の取得処理(ステップS3−8)、治療時の血管パターンの特定処理(ステップS3−9)を実行する。そして、治療支援装置20の制御部21は、治療時及び検査時において、対応する特徴点の特定処理(
図3のステップS2−9)から、各処理をやり直す。
【0056】
本実施形態の治療支援システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、体表面の3D撮影処理(ステップS1−2)、3Dモデルの生成処理(ステップS1−3)を実行する。これにより、検査時の姿勢を、3次元モデルを用いて特定することができる。
【0057】
(2)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、分光画像の取得処理(ステップS1−4)、血管パターンの特定処理(ステップS1−5)を実行する。これにより、検査時の体表面上にマーカ(血管パターン)を特定することができる。そして、この血管パターンを基準として利用して、患者の身体状況を把握することができる。例えば、3次元モデルでは、起伏が少なく、身体の特徴を把握し難い形状を、身体に本来的に存在する血管パターンを用いて、身体部位や姿勢を特定することができる。特に、近赤外線の場合には、体内への透過性が高く、条件によっては体表面から10mm深度近くまでの光吸収効果の観察が可能である。このため、患者は、服を着たままの状態で、人体情報を取得することができる。
【0058】
(3)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、体表面の3D撮影処理(ステップS2−1)、3Dモデルの生成処理(ステップS2−2)を実行する。これにより、治療時における姿勢を、3次元モデルを用いて特定することができる。
【0059】
(4)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、分光画像の取得処理(ステップS2−3)、治療時の血管パターンの特定処理(ステップS2−4)を実行する。これにより、治療時の体表面のマーカ(血管パターン)を特定することができる。そして、この血管パターンを基準として利用して、患者の身体状況を把握することができる。
【0060】
(5)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、検査時の血管パターンの呼出処理(ステップS2−5)、パターン照合処理(ステップS2−6)を実行する。そして、認証できないと判定した場合(ステップS2−7において「NO」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、エラー処理を実行する(ステップS2−8)。これにより、体表面の血管パターンに基づいて、治療対象の患者を特定することができる。
【0061】
(6)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、体型の変化があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−1)。体型の変化があると判定した場合(ステップS3−1において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、対応する特徴点を用いてデフォメーション処理を実行する(ステップS3−2)。これにより、患者の体型変化を考慮して治療を行なうことができる。
【0062】
(7)本実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、姿勢を再現できているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−3)。そして、姿勢を再現したと判定した場合(ステップS3−3において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、放射線治療処理を実行する(ステップS3−4)。これにより、検査時の姿勢を考慮して、同じ姿勢で的確な治療を行なうことができる。
【0063】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、治療支援装置20、治療計画装置50を用いて、治療計画時や治療時の支援を行なう。ハードウェア構成は、これに限定されるものではない。例えば、治療支援装置20に治療計画装置50の機能を持たせるようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、距離センサC1及び分光装置C2を用いる。これらを一つのセンサにより構成することも可能である。この場合には、分光された光線を被写体に照射し、反射する位置と、反射して戻ってくるまでの時間計測(TOF法:Time of flight)や特定のパターンを照射し、対象に投影された大きさからの距離計測(Light Coding法)等により、3次元空間位置を特定する。
【0065】
・上記実施形態では、治療支援装置20の制御部21は、姿勢を再現できているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−3)。ここでは、3次元モデルに付加された血管パターンの特徴点の配置に基づいて判定する。ここで、特徴点の変動を考慮するようにしてもよい。例えば、呼吸による体表の3次元移動量を検出できる。
【0066】
この場合には、
図5に示すように、呼吸に応じて、血管B1の特徴点FPの位置も変動する。ここでは、血管B1の分岐点を特徴点FPと設定している。この特徴点FPの変動範囲を比較して、姿勢を確認するようにしてもよい。具体的には、変動範囲内で、血管パターンの特徴点FPの配置が一致する場合には、治療支援装置20の制御部21は、同じ姿勢と判定する。一方、変動範囲を考慮しても、血管パターンの特徴点FPの配置が一致しない場合には、治療支援装置20の制御部21は、患者位置の調整指示処理を実行する。
【0067】
・上記実施形態では、血管撮影画像を、検査時及び治療時の姿勢の確認のために用いる。この血管撮影画像の利用方法は、姿勢の確認に限定されるものではない。例えば、血管状態の判定に用いることも可能である。この場合には、放射線治療時に、患者情報記憶部22の患者管理データ220に、放射線の照射部位に関する情報(座標)を記録しておく。
【0068】
図6(a)を用いて、検査時や治療時に実行する観察処理を説明する。
(観察処理)
まず、治療支援装置20の制御部21は、照射部位の血管画像の撮影処理を実行する(ステップS4−1)。具体的には、制御部21の分光計測処理部212は、患者情報記憶部22を用いて、患者管理データ220に記録されている照射部位に関する情報を取得する。そして、分光計測処理部212は、分光装置C2から照射部位の血管画像を取得する。
【0069】
次に、治療支援装置20の制御部21は、皮膚炎症かどうかについての判定処理を実行する(ステップS4−2)。具体的には、制御部21の分光計測処理部212は、過去の血管撮影画像と直近の血管撮影画像とを比較する。ここで、過去の血管撮影画像に対して、直近の血管撮影画像において、毛細血管の拡張を検出した場合には、皮膚炎症と判定する。
【0070】
皮膚炎症と判定した場合(ステップS4−2において「YES」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、注意喚起処理を実行する(ステップS4−3)。具体的には、制御部21の分光計測処理部212は、ディスプレイに注意喚起メッセージを出力する。
【0071】
一方、皮膚炎症でないと判定した場合(ステップS4−2において「NO」の場合)、治療支援装置20の制御部21は、注意喚起処理(ステップS4−3)をスキップして、観察処理を終了する。
これにより、検査時や治療時において、放射線治療によって生じる患者の皮膚炎症を、分光画像に基づいて判定することができる。
【0072】
・上記実施形態では、血管撮影画像を、検査時及び治療時の姿勢の確認のために用いる。この血管撮影画像を脈拍判定に用いることも可能である。
【0073】
図6(b)を用いて、検査時や治療時に実行する観察処理を説明する。
(観察処理)
まず、治療支援装置20の制御部21は、血管画像の撮影処理を実行する(ステップS5−1)。具体的には、制御部21の分光計測処理部212は、血管撮影画像において、血管の位置を特定する。そして、分光計測処理部212は、血管位置において、所定の時間間隔で分光撮影画像を取得する。この時間間隔としては、動きを特定できる時間(例えば30m秒)を用いる。
【0074】
次に、治療支援装置20の制御部21は、バンドフィルタリング処理を実行する(ステップS5−2)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、連続的に撮影した分光撮影画像において、血管位置の時間的変動を特定する。この場合、治療支援部213は、一般的な心拍数範囲の周波数で、変動位置についてバンドパスのフィルタリングを行なう。
【0075】
次に、治療支援装置20の制御部21は、脈拍検出処理を実行する(ステップS5−3)。具体的には、制御部21の治療支援部213は、バンドフィルタリングに基づいて算出した脈拍を、ディスプレイに出力する。
【0076】
これにより、検査時や治療時において、分光画像に基づいて、脈拍を特定することができる。そして、この脈拍により、患者の心身状態を把握することができる。