【課題】水をカートリッジに注入する際に水をこぼしたり、水を注入した後の水が入っていた空容器が廃棄物として残ったりしない水硬性組成物用カートリッジ及びその水硬性組成物用カートリッジの使用方法を提供する。
【解決手段】水硬性組成物用カートリッジ100は、一端に吐出口6を有するシリンダ1と、シリンダ内において、吐出口6に向かって移動可能なピストン壁2と、シリンダ1及びピストン壁2により形成される空間に収容されている水硬性組成物の粉体3と、空間にさらに収容されている、水4を封入したガラス管5とを含む。水硬性組成物用カートリッジの使用方法は、シリンダ内で、水を封入したガラス管を粉砕しながら水硬性組成物の粉体を撹拌することによって、水硬性組成物の粉体及び水を撹拌混合し、水硬性組成物の粉体と水とガラス管を粉砕することにより得られた骨材とを含むスラリーを作製する工程、及び、ピストン壁を吐出口側に移動させて吐出口からスラリーを押出す工程を含む。
前記スラリーを作製する工程は、1本の棒状体から構成され、前記棒状体は、把持部、直線部、前記シリンダ内の側壁に沿って延在しかつ部分的に側壁に接触可能な側壁接触部、前記シリンダ内の底面に沿って延在しかつ部分的に底面に接触可能な底面接触部、及び前記シリンダ内壁の損傷を抑制する先端部の順序で構成され、前記側壁接触部から前記先端部までの各部の曲がりは、前記シリンダの吐出口より挿入することが可能な範囲であり、前記側壁接触部及び該底面接触部は、前記シリンダ内で前記シリンダの内壁に沿うような形状で構成されているカートリッジ用撹拌棒を使用して、前記水硬性組成物の粉体及び水を撹拌混合する請求項4に記載の水硬性組成物用カートリッジの使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ及びその使用方法について以下に詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジは、一端に吐出口を有するシリンダと、シリンダ内において、吐出口に向かって移動可能なピストン壁と、シリンダ及びピストン壁により形成される空間に収容されている水硬性組成物の粉体と、空間にさらに収容されている、水を封入したガラス管とを含むことを特徴とする。
【0012】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの外観図であり、
図1(b)は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの軸方向の断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)のA−A線の断面図である。
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ100は、
図1(b)に示すように、一端に吐出口6を有するシリンダ1と、シリンダ内において、吐出口6に向かって移動可能なピストン壁2と、シリンダ1及びピストン壁2により形成される空間に収容されている水硬性組成物の粉体3と、上記空間にさらに収容されている、水4を封入したガラス管5とを含む。
図1(c)に示すように、シリンダ1の形状は例えば円筒形状であり、ピストン壁2がシリンダ1の吐出口6に向かってシリンダ1の内壁に沿ってシリンダ内を移動できる距離が長くなるような形状、すなわちピストン壁2が可能な限り吐出口6に近づけるような形状を採用する。
これにより、シリンダ内部で液体と混合された水硬性組成物を無駄なく押出して使用することができる。
【0013】
また、シリンダ1の吐出口6を封止してもよい。吐出口6を封止する手段としては、吐出口6をアルミシート等の封止シートを設けることによっても、吐出口6にキャップを備えることによっても、また封止シートを設けるとともにキャップで封止することによっても、いずれの手段を用いてもよい。
このように吐出口6を封止することで、シリンダ1とピストン壁2とにより形成される空間と外気とは遮断され、シリンダ内部に収容されている水硬性組成物の粉体3が空気中に含まれる水分と接触することを回避でき、本発明の水硬性組成物用カートリッジの寿命を長くすることが可能となる。
【0014】
シリンダ1の吐出口6の反対側には、吐出口6に向かって移動するピストン壁2が設けられており、ピストン壁2の形状は、ピストン壁2の外周とシリンダ1の内壁の内周とが等しくなるような形状、ピストン壁2がシリンダ1の内面と密着する形状である。
これにより、シリンダ1の内壁に沿ってピストン壁2がスムーズに移動することが可能となるとともに、ピストン壁2とシリンダ1との内壁との間がシールされる。
例えば、シリコーンシーラントのカートリッジに用いられるピストン壁2の多くが円錐台状の形状をしており、ピストン壁2の一部の外周がシリンダ1の内壁の内周より小さいと、ピストン壁2とシリンダ1の内壁との間に隙間が形成され、ピストン壁2がシリンダ1の吐出口6の方向に移動する際に、水硬性組成物中に含まれる砂のような骨材が間隙に入って、ピストン壁2の移動を妨げるようになり、好ましくない。したがって、ピストン壁2の外周には、シリンダ1の内壁の内周よりも小さい箇所がないことが好ましい。
【0015】
シリンダ1の吐出口6の形状は、後述のスラリーを排出できるような形状であれば、任意の形状を採用することができる。
【0016】
後述のスラリーがシリンダ1より勢いよく排出できるという観点から、シリンダ1の軸方向に対して垂直方向における吐出口6の断面の面積は、シリンダ1の軸方向に対して垂直方向におけるピストン壁2の断面積の4/25〜2/5であることが好ましく、1/5〜8/25であることがより好ましい。
【0017】
シリンダ1及びピストン壁2により形成される空間には、水硬性組成物の粉体3が収容されており、水4を封入したガラス管5が上記空間にさらに収容されている。
水硬性組成物の粉体3としては、水硬性粉体のみ、水硬性粉体及び非水硬性粉体、さらには、これらの粉体に増粘剤等を添加したものを使用することができる。
水硬性粉体とは、水と接触して硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体が含まれる。
上記水硬性粉体は、成形時の可使時間の点から平均粒径10〜50μm程度のものが好ましく、また、高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm
2/g以上のものであることが好ましい。
【0018】
また、上記非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性もしくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。
非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、珪砂粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体が好ましい。
【0019】
さらに、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ100で用いる水硬性組成物の粉体3には、公知の配合剤や添加剤、例えば増粘剤、減水材、凝結遅延剤、反応促進剤等の粉体を添加することができ、モルタルの練りあがり性状を施工に好ましい状態にさせることができる。
【0020】
シリンダ1及びピストン壁2により形成される空間に、水硬性組成物の粉体3とともに、水4を封入したガラス管5が収容されている。
ガラス管5はガラス製であるので、ガラス管5の肉厚を容易に薄くできる。
また、ガラス管5はガラス製であるので割れやすい。
これにより、水硬性組成物の粉体を撹拌する操作で、水を封入したガラス管を容易に粉砕することができる。
【0021】
ガラス管5の材料は、ガラスであれば特に限定されない。
しかし、ガラス管5を粉砕することによって得られる骨材が膨張材としての機能を有することから、好ましいガラス管5の材料はケイ酸塩ガラスであり、特に好ましいガラス管5の材料はホウケイ酸ガラスである。
【0022】
ガラス管5を割れやすくするために、研磨剤等を用いてガラス管5の表面に細かい傷を付けてもよい。
また、ガラス管5を割れやすくするために、加熱したガラス管5を急冷して歪み応力をガラス管5に生じさせてもよい。
【0023】
ガラス管5の形状は特に限定しないが、製造しやすさの観点から、ガラス管5の形状は、好ましくは円筒形状である。
【0024】
ガラス管5の形状が円筒形状である場合、ガラス管5の内径は、好ましくは8〜14mmであり、より好ましくは8〜13mmであり、さらに好ましくは8〜10mmである。
ガラス管5の内径が8〜14mmであると、シリンダ内で水硬性組成物の粉体3を撹拌する操作によって、ガラス管5を十分に粉砕することができる。
【0025】
ガラス管5の肉厚は、シリンダ内での水硬性組成物の粉体を撹拌する操作でガラス管5を粉砕することができる程度のガラス管5の肉厚であれば、特に限定されない。
水硬性組成物用カートリッジが未使用のときにガラス管5が割れることを抑制できるとともに、シリンダ内での水硬性組成物の粉体を撹拌する操作でガラス管5を粉砕することができるという観点から、ガラス管5の肉厚は、好ましくは0.6〜1.4mmであり、より好ましくは0.6〜1.2mmであり、さらに好ましくは0.8〜1.0mmである。
【0026】
カートリッジ用撹拌棒210等の撹拌子が、ガラス管5が収容されているシリンダ内に容易に挿入できるという観点から、ガラス管5の内径が8〜14mmであり、かつガラス管5の肉厚が0.6〜1.4mmであることが好ましく、ガラス管5の内径が8〜13mmであり、かつガラス管5の肉厚が0.6〜1.2mmであることがより好ましい。
【0027】
シリンダの長さ方向におけるガラス管5の長さは、吐出口6のピストン壁側の端からピストン壁までの長さの7/10〜14/15であることが好ましい。
これにより、水硬性組成物の粉体3を硬化させるのに十分な量の水をガラス管5に収容させることができる。
この場合、シリンダ1及びピストン壁2により形成される空間に収容されるガラス管5の本数は、好ましくは3〜6本であり、より好ましくは4〜6本である。
ガラス管5の本数が3〜6本であると、シリンダ内での水硬性組成物の粉体を撹拌する操作でガラス管5を十分に粉砕することができる。
なお、ガラス管5の長さは、ミキサーをカートリッジ内に入れる時に、ミキサーの挿入を阻害しない空間ができるような長さであることが好ましい。
また、シリンダ1の長さ方向における吐出口6のピストン壁側の端からガラス管5の端までの距離は20mm以上であることが好ましい。
また、ピストン壁2からガラス管5の端までの距離は5mm以内の範囲であることが好ましい。
【0028】
ガラス管5に封入されている水は、必要に応じて、ポリマーや、凝結遅延剤等含んでもよい。
【0029】
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの使用方法は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの使用方法であって、シリンダ内で、水を封入したガラス管を粉砕しながら水硬性組成物の粉体を撹拌することによって、水硬性組成物の粉体及び水を撹拌混合し、水硬性組成物の粉体と水とガラス管を粉砕することにより得られた骨材とを含むスラリーを作製する工程、及び、ピストン壁を吐出口側に移動させて吐出口からスラリーを押出す工程を含む。
【0030】
図2(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの使用方法におけるスラリーを作製する工程を説明する図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジの使用方法におけるスラリーを押出す工程を説明するための図である。
【0031】
(スラリーを作製する工程)
図2(a)に示すように、スラリーを作製する工程では、水4を封入したガラス管5を粉砕しながら水硬性組成物の粉体3を撹拌する。
ガラス管5が粉砕されると、ガラス管5に封入されていた水4は開放され、水硬性組成物の粉体3及び水4は撹拌混合されることになる。
粉砕されたガラス管5は骨材となる。
そして、
図2(b)に示すように、水硬性組成物の粉体と水とガラス管を粉砕することによって得られた骨材10aとを含むスラリー10が作製される。
これにより、水硬性組成物用カートリッジに水を注入する必要がなくなる。
その結果、水をカートリッジに注入する際に水をこぼしたり、水を注入した後の水が入っていた空容器が廃棄物となったりすることを防止することができる。
【0032】
図2(a)に示すようにカートリッジ用撹拌棒210は、把持部P1、直線部P2、側壁接触部P3、底面接触部P4、先端部P5の順序で、金属製等の棒状体により構成されている。
カートリッジ用撹拌棒210は、1本の棒状体から構成されている。
棒状体は、把持部P1、直線部P2、シリンダ内の側壁に沿って延在しかつ部分的に側壁に接触可能な側壁接触部P3、シリンダ内の底面に沿って延在しかつ部分的に底面に接触可能な底面接触部P4、及びシリンダ内壁の損傷を抑制する先端部P5の順序で構成される。
側壁接触部P3から先端部P5までの各部の曲がりは、シリンダ1の吐出口6より挿入することが可能な範囲である。
側壁接触部P3及び底面接触部P4は、シリンダ内でシリンダの内壁に沿うような形状で構成されている。
このようなカートリッジ用撹拌棒210を使用して、水4を封入したガラス管5を粉砕しながら水硬性組成物の粉体3を撹拌してもよい。
なお、シリンダ1の底面はピストン壁2により構成される。
【0033】
撹拌棒を構成する際には、例えば把持部P1、直線部P2を一本の棒状体で構成し、側壁接触部P3、底面接触部P4、先端部P5を別の一本の棒状体で構成して、両者をつなぎ合わせて一本の撹拌棒とすることも可能であるが、その際にはつなぎ目に水硬性組成物が詰まる等の不具合が起こりやすくなってしまうため、一本の棒状体より構成することが好適である。
【0034】
そして、カートリッジ用撹拌棒210は、好ましくは、側壁接触部P3と、底面接触部P4とが、直線部P2の延長方向に向かって螺旋状に連続的に曲がる曲線部で構成されている。
このような曲線構造を採用することにより、カートリッジ用撹拌棒210と、シリンダ内の水硬性組成物との接触部が大きくなり、効率よく撹拌することができる。
ただし、曲線部が長くなり過ぎると、逆に水硬性組成物との接触部が大きくなって抵抗が大きくなり過ぎてしまい、撹拌時に労力を要するようになってしまうため、曲線部は、延長方向を軸として2周以内の範囲に収めることが好適である。
【0035】
さらに、側壁接触部P3及び底面接触部P4の形状を、その一部分のみがシリンダ1の側壁又は底面に接触するような構成とした場合には、シリンダ内の側壁又は底面などの内壁近くに滞留する水硬性組成物の粉体3を効率よく撹拌することができなくなる。
従って、シリンダ内の側壁及び底面などの内壁近くに滞留する水硬性組成物の粉体3を効率よく撹拌するために、側壁接触部P3及び底面接触部P4の形状は、シリンダ内でシリンダ1の内壁に沿うような形状で構成することが好適である。
【0036】
従って、上記したように、カートリッジ用撹拌棒210は、把持部P1、直線部P2、側壁接触部P3、底面接触部P4、先端部P5の順序で、金属製等の一本の棒状体であり、望ましくは、側壁接触部P3と、底面接触部P4とが、直線部P2の延長方向に向かって螺旋状に連続的に曲がる曲線部で構成される撹拌棒である。
【0037】
次に、カートリッジ用撹拌棒210の各部分について説明する。
把持部P1は、カートリッジ用撹拌棒210を使用する際に把持する部分であり、直線部P2と特に構成上異なる点はない。
ただし、カートリッジ用撹拌棒210を使用する際に、把持しやすくなるように把持部を太くしたり、クッション等を巻いたり、又は把持部にジョイント部を設けて、機械と接続させる等することは適宜可能である。
直線部P2は、使用時や、水硬性組成物用カートリッジ100にカートリッジ用撹拌棒210を挿入する際に、直線部P2が吐出口6に引っかかったり、直線部P2がねじれたり、直線部P2が曲がったり、直線部P2が折れたりする等の不都合が生じるようなものでなければ、その長さや太さは特に限定されない。
【0038】
側壁接触部P3は、使用時にシリンダ内部の側壁と接触させて摩擦させることにより、側壁にこびりついた水硬性組成物をこそぎ落とし、側壁近くに滞留する水硬性組成物を効率よく撹拌することができる。
側壁接触部P3は、その一部が側壁と接触している程度に、曲線状にすれば十分にその目的を達することができるが、側壁近くに滞留した水硬性組成物を効率よく撹拌するために、側壁に沿うような形状で構成することが望ましい。
【0039】
底面接触部P4は、使用時に底面と接触させて回転、摩擦させることにより、底面にこびりついた水硬性組成物をこそぎ落とし、底面近くに滞留する水硬性組成物を効率よく撹拌することができる。
底面接触部P4も、側壁接触部P3と同様、十分な撹拌効果を確保するために、底面に沿うような形状で構成することが望ましく、さらに好適には、底面接触部P4の、シリンダ底面と接触可能な部分の長さは、直線に換算してシリンダ底面の直径の4分の1以上あることが好ましい。
【0040】
そして先端部P5は、シリンダ内壁と接触して損傷させることを防止するために、端面を丸く形成するか、又は端面がシリンダ内壁から離れる曲率でカートリッジ用撹拌棒210の先端部を曲げることで形成する。
また、曲げにおいても、滑らかに曲げるだけでなく、折れ曲げるなどの加工を施してもよい。
先端を丸く形成するには、撹拌棒を形成する前又は形成した後に、やすり等で先端を削って丸く形成する。
また、先端部P5にシリコン等の保護材を被せることにより、先端を丸く形成することも可能である。
【0041】
そして、先端部P5がシリンダ内壁から離れる曲率で曲げられているとは、カートリッジ用撹拌棒210の使用時には、カートリッジ用撹拌棒210を種々の角度に傾けるため、先端部P5も種々の方向を向くことになるが、そのいずれの場合にも、先端部P5がシリンダ1の内壁と接触しないような角度に曲げ又は折り曲げられている、という意味である。
【0042】
次に、カートリッジ用撹拌棒210の使用例について説明する。カートリッジ用撹拌棒210を使用する際には、カートリッジ用撹拌棒210の把持部P1に、カートリッジ用撹拌棒210を回転させる駆動装置、例えば充電式インパクトドライバ220を取り付ける。
そして、先端部P5よりシリンダ1の吐出口6に挿入し、カートリッジ用撹拌棒210の曲率に合わせて角度を調整して、
図2(a)のようにカートリッジ用撹拌棒210が水硬性組成物用カートリッジ100内に収まるようにする。
このとき、カートリッジ用撹拌棒210の、側壁接触部P3から先端部P5までの各部の曲がりは、カートリッジ用撹拌棒210をシリンダ1の吐出口6より挿入することが可能な範囲であるため、容易にカートリッジ用撹拌棒210を水硬性組成物用カートリッジ100内に挿入することができる。
そして、カートリッジ用撹拌棒210を、カートリッジ用撹拌棒210の軸を中心に回転させ、シリンダ1の軸方向に上下させて水硬性組成物の粉体3を撹拌する。
また、カートリッジ用撹拌棒210を左右方向や斜め方向に動かしたり、カートリッジ用撹拌棒上の一点を中心として振り子状運動をさせる等、種々の撹拌方法も採用できる。
【0043】
回転しているカートリッジ用撹拌棒210がガラス管5と衝突すると、ガラス管5は破壊される。
ガラス管5が破壊されることにより生成するガラス片は、カートリッジ用撹拌棒210と何度も衝突し、その結果、ガラス片は、微細な骨材10aとなる。
【0044】
そして、カートリッジ用撹拌棒210の側壁接触部P3は、シリンダ1の側壁に沿うような形状で構成されているため、カートリッジ用撹拌棒210の側壁接触部P3をシリンダ1の側壁13に接触させながら撹拌することで、シリンダ1の側壁にこびりついた水硬性組成物をこそぎ落とし、側壁近くの水硬性組成物を効率よく撹拌することができる。
また、カートリッジ用撹拌棒210の底面接触部P4は、シリンダ1の底面に沿うような形状で構成されているため、底面接触部P4をシリンダ1の底面に接触させながら撹拌することで、底面にこびりついた水硬性組成物をこそぎ落とし、底面近くの水硬性組成物を効率よく撹拌することができる。
【0045】
なお、シリンダ1の吐出口6の形状やシリンダ内に収容する水硬性組成物の性質等によって、シリンダ1の吐出口6の周りの内壁付近に水硬性組成物がこびりついたり滞留してしまうような場合には、カートリッジ用撹拌棒210の、側壁接触部P3の直線部側を、シリンダ1の吐出口6の周りの内壁から側壁に沿って接触可能なように曲げて構成することで、シリンダ内の吐出口6の周りの内壁にこびりついたり滞留している水硬性組成物も、効率よく撹拌することができる。
また、上記構成を採用しない場合にも、カートリッジ用撹拌棒210の底面接触部P4の部分を、シリンダ1の吐出口6の周りの内壁に接触させながら撹拌することで、吐出口6の周りの内壁にこびりついたり滞留している水硬性組成物を、効率よく撹拌することができる。
【0046】
(スラリーを押出す工程)
スラリー10を押出す工程では、
図3に示すように、ピストン壁2を吐出口6側に移動させて吐出口6からスラリー10を押出す。
そして、
図4に示すように、スラリー10を所望する箇所に、例えばアンカー筋を挿入するための孔300の中に適用する。
【0047】
特に、吐出口6から得られたスラリー10を押出すには、
図3に示すように、水硬性組成物用カートリッジ100を、一般にシーリングガンまたはコーキングガンと称される吐出機20に装着して行うことができる。
吐出機20は、本発明の水硬性組成物用カートリッジ100を装着するカートリッジ用ガンとして使用することができる。
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ100は、例えば、
図3に示すように、ノズル11の先端をカットし吐出口6に取り付け、吐出機20に装着されて、施工に用いられる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ100を、吐出機20に装着する際には、ノズル11を装着した水硬性組成物用カートリッジ100が、ピストン壁2の移動方向に移動しないように先端支持部材21で移動が規制され、さらには胴体支持部材22により水硬性組成物用カートリッジ100が保持されるように装着する。
先端支持部材21や胴体支持部材22、又は後述するボディ23などは必要に応じて一体的に形成することも可能である。
胴体支持部材22は、先端支持部材21と連結されている側とは逆側で、ボディ23と連結されている。さらに、ボディ23には把持部24が固定され、ボディの支点29を中心に可動するレバー25を片手でも動作させやすいよう構成されている。
レバー25の動きに連動する連動部26が設けられ、連動部26の移動により押圧軸27がカートリッジ方向に移動するよう構成されている。
押圧軸27は、連動部26の動作によりカートリッジ方向のみに移動可能とされている。
また、ピストン壁2は、その外気側、すなわちスラリー10と接しているピストン壁2の面とは逆の面側で、吐出機20の押圧軸27の押圧部28と接している。
【0049】
上記のように、水硬性組成物用カートリッジ100からスラリー10を吐出させる場合、使用者は、本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジ100を装着した吐出機20の把持部24とレバー25とを手で握り、支点29を中心にレバー25を把持部24の方向に引き寄せる。
これにより、支点29でレバー25に連動するように構成されている連動部26がカートリッジ方向のノズル側に移動し、そして、連動部26と連結されている押圧軸27も移動する。
これにより、押圧軸27と一体となっている押圧部28がカートリッジ方向のノズル側へ移動し、ピストン壁2は同様にカートリッジ方向のノズル側へ移動し、シリンダ内のスラリー10が吐出口6及びノズル11より吐出する。
レバー25と連動部26とは自動的に元の位置に戻るよう構成されているが、連動部26が戻る際には、押圧軸27は移動しないよう構成されている。
これにより、レバー25を把持部24側に引き寄せるたび毎に、押圧軸27がカートリッジ方向のノズル側のみに移動する。
そして、使用者が水硬性組成物用カートリッジ100を装着した吐出機20の把持部24とレバー25とを手で握り、支点29を中心にレバー25を把持部24の方向に引き寄せる度に、スラリー10を水硬性組成物用カートリッジ100から吐出させることができる。
【0050】
本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジ100を例えば以下のように変形することができる。
【0051】
本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジ100のガラス管5の本数は4であったが、ガラス管5の本数は3以下でもよいし、5以上であってもよい。
例えば、
図5(a)に示す水硬性組成物用カートリッジ100Aのように、ガラス管5Aの本数は2であってもよいし、
図5(b)に示す水硬性組成物用カートリッジ100Bのように、ガラス管5Bの本数は6であってもよい。
なお、
図5(a)は、シリンダ1Aの軸方向に対して垂直方向における水硬性組成物用カートリッジ100Aの断面図であり、
図5(b)は、シリンダ1Bの軸方向に対して垂直方向における水硬性組成物用カートリッジ100Bの断面図である。
また、符号1A及び1Bはシリンダを示し、符号3A及び3Bは水硬性組成物の粉体を示し、符号4A及び4Bは水を示す。
【0052】
本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジ100のガラス管5の軸に対して垂直方向のガラス管5の断面は円形であったが、ガラス管5の軸に対して垂直方向のガラス管5の断面の形状は円形に限定されない。
例えば、
図5(c)に示す水硬性組成物用カートリッジ100Cのように、ガラス管5Cの軸に対して垂直方向のガラス管5Cの断面は正方形等の多角形であってもよい。
なお、
図5(c)は、シリンダ1Cの軸方向に対して垂直方向における水硬性組成物用カートリッジ100Cの断面図である。
また、符号1Cはシリンダを示し、符号3Cは水硬性組成物の粉体を示し、符号4Cは水を示す。
【0053】
本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジ100のガラス管5は、吐出口6近傍からピストン壁2近傍まで延在していた。
しかし、ガラス管5はそこまで長くなくてもよい。
例えば、
図5(d)に示す水硬性組成物用カートリッジ100Dのように、短いガラス管5Dがシリンダ1D内に分散していてもよい。
なお、
図5(d)は、本発明の一実施形態に係る水硬性組成物用カートリッジ100Dの軸方向の断面図である。
また、符号2Dはピストン壁を示し、符号3Dは水硬性組成物の粉体を示し、符号4Dは水を示し、符号6Dは吐出口を示す。
【0054】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0055】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0057】
以下の試験により、本発明の一実施形態の水硬性組成物用カートリッジを用いてスラリーを吐出できることを確認した。
[試験方法]
(1)下記の表1に示す量の水硬性組成物の粉体と、表1に示すガラス外径、内径、肉厚及び長さを有し、水が封入された、表1に示す本数のガラス管とを、
図1に示すシリンダに収容した後、
図1に示すピストン壁でシリンダの吐出口の反対側を閉鎖して参考例1〜11のカートリッジを作製した。なお、カートリッジのシリンダの寸法等は以下のとおりである。
シリンダの長さ:229.05mm
シリンダの外径:φ50.1mm
シリンダの内径:φ47.8mm
吐出口の内径:φ16.5mm
吐出口の入口側端からシリンダの端までの距離:216.8mm
(2)シリンダの吐出口より、
図2(a)に示す撹拌棒を底部まで押し込みインパクトドリルにて撹拌し、ガラス管を粉砕するとともに水硬性組成物及び水を撹拌混合した。
(3)30秒撹拌後、撹拌棒を取り出し、カートリッジを
図3に示す吐出機に取り付けた。
(4)カートリッジからスラリーを排出した。
【0058】
[評価基準]
(撹拌棒の挿入性)
撹拌棒がシリンダの底部まで入れば、○と評価した。しかし、底部まで入らなければ×と評価した。
(排出性)
シリンダ内のスラリーをほぼ全て排出できた場合は○と評価し、スラリーがシリンダ内に大分残ってしまう場合は×と評価した。
【0059】
[評価結果]
評価結果を下記の表1に示す。
この結果より、ガラス管の肉厚及び内径並びにガラス管の本数を適宜選択することによって、シリンダにガラス管を収容した場合でも撹拌棒を挿入することができ、シリンダ内のガラス管を粉砕でき、そしてシリンダ内のスラリーを排出できることがわかった。
上記実施例では、ガラス管の内径は8〜13mmであり、ガラス管の肉厚は1.2mm以下であることが好ましかった。
また、この試験では、ガラス管の本数は3〜6本であることが好ましかった。
【0060】
【表1】
【0061】
また、以下の試験により、撹拌棒を使用してガラス管を粉砕することによって得られた骨材を含むスラリーを穿孔内に注入した後、アンカー筋を穿孔に挿入できることを確認した。なお、上述の参考例4のカートリッジを用いて作製されたスラリーを使用して試験を行った。
[試験方法]
(1)
図3に示すカートリッジ用ガンを使用して、穿孔内にスラリーを注入した。
(2)スラリーが注入された穿孔にアンカー筋を差し込んだ。
なお、試験条件の詳細は、下記の表2に示す。
【0062】
[評価基準]
○:アンカー筋が手で差し込める。
△:アンカー筋をハンマーで打ち込みが必要。
×:アンカー筋をハンマーで打ち込んでも定着長まで入らない。
【0063】
なお、コンクリート強度の測定は、JIS A1108に準拠して行った。また、供試体寸法がφ100×200mmである供試体を使用してコンクリート強度を測定した。
【0064】
[評価結果]
評価結果を下記の表2に示す。この結果より、撹拌棒を使用してガラス管を粉砕することによって得られた骨材を含むスラリーを注入した穿孔に、アンカー筋を差し込めることがわかった。
この試験では、有効埋め込み長さは15d以下(アンカー筋の直径の15倍の長さ以下)が好ましかった。
【0065】
【表2】