【課題】ポリイミドフィルムの生産性向上のためにイミド化触媒を使用する場合に、ポリアミド酸の有機溶媒溶液のハンドリング性の改善と、イミド化に必要な熱処理温度の低温化とを両立させる。
【解決手段】ポリアミド酸を熱処理してイミド化することにより、単層又は積層された複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムを製造する方法において、ポリアミド酸をイミド化してポリイミド層の少なくとも1層を形成するときに、過塩素酸亜鉛をイミド化触媒として用いる。イミド化触媒として、過塩素酸亜鉛と、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,6−ルチジン及びピコリンからなる群より選ばれた少なくとも1種の含窒素複素芳香環化合物を併用してもよい。
前記含窒素複素芳香環化合物が、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,6−ルチジン及びピコリンからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記イミド化触媒を用いて形成される前記ポリイミド層が、低熱膨張性のポリイミド層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[ポリイミドフィルムの製造方法]
<ポリイミドフィルム>
まず、本発明方法で製造されるポリイミドフィルムは、ポリアミド酸を熱処理してイミド化を行い、単層又は複数層のポリイミド層からなるフィルムを形成してなるものである。なお、本発明でいうポリイミドとは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂をいい、その分子骨格中に感光性基、例えばエチレン性不飽和炭化水素基を含有するものも含まれる。
【0017】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法がある。また、本発明で製造されるポリイミドフィルムが、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムである場合、その製造方法の態様としては、例えば[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(以下、キャスト法)、[4]多層押出により、同時にポリアミド酸を多層に積層した状態で支持基材に塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(以下、多層押出法)などが挙げられる。そして、上記[1]〜[4]の方法において、ポリアミド酸を熱処理してイミド化するときに、イミド化触媒として、過塩素酸亜鉛を用いる。
【0018】
上記[1]の方法は、例えば、次の工程1a〜1c;
(1a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0019】
上記[2]の方法は、例えば、次の工程2a〜2c;
(2a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0020】
上記[3]の方法は、上記[1]の方法又は[2]の方法において、工程1a又は工程2aを複数回繰り返し、支持基材上にポリアミド酸の積層構造体を形成する以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0021】
上記[4]の方法は、上記[1]の方法の工程1a、又は[2]の方法の工程2aにおいて、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0022】
<支持基材>
本発明で製造されるポリイミドフィルムが単層又は複数層のいずれの場合であっても、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、寸法精度を維持することができる。
【0023】
本発明で使用される支持基材は、ポリイミドフィルム(又はポリイミド層)を補強する目的と、ポリイミドフィルムの伸縮変化を抑制して、寸法精度を維持する目的で使用されるものである。また、支持基材は、ポリアミド酸の溶液が塗布される対象となり、カットシート状、ロール状又はエンドレスベルト状などの形状を使用できる。生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、ポリイミドフィルムの寸法精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、支持基材は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
【0024】
支持基材の材質としては、金属、セラミックス、樹脂、炭素など耐熱性があるものが挙げられるが、熱伝導性や柔軟性の観点から、金属が好ましい。従って、支持基材としては、金属のフィルム(金属箔)、例えば銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、鉄箔、銀箔、金箔、亜鉛箔、インジウム箔、スズ箔、ジルコニウム箔、タンタル箔、チタン箔、コバルト箔及びこれら合金箔が挙げられる。ポリイミドフィルムを回路配線基板の絶縁層として適用し、また支持基材を回路配線基板の配線層として適用する場合には、支持基材は、銅箔又は銅合金箔が好ましい。また、ポリイミドフィルムを支持基材から剥離して使用する場合には、支持基材としては、平滑なステンレスベルトやステンレスドラムなどが好適に使用可能である。
【0025】
支持基材としての金属箔の厚みは、例えば5〜35μmの範囲内が好ましく、9〜18μmの範囲内がより好ましい。金属箔が35μmより厚いと、ポリイミド層及び金属箔層からなる積層体としての屈曲性や折り曲げ性が悪くなる。一方、金属箔が5μmより薄いと、積層体としての製造工程において、張力等の調整が困難となり、皺等の不良が発生し易くなる。また、これらの金属箔は、接着力等の向上を目的として、その表面に化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよく、防錆を目的とする化学的な表面処理を施してもよい。
【0026】
<ポリアミド酸>
本発明で製造されるポリイミドフィルムを構成するポリイミドの前駆体としては、公知の酸無水物とジアミンから得られる公知のポリアミド酸が適用できる。ポリアミド酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミンをほぼ等モルで有機溶剤中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることで得られる。反応にあたっては、得られるポリアミド酸が有機溶剤中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解することがよい。重合反応する際に用いる有機溶剤については、極性を有するものを使用することがよく、有機極性溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶剤を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
【0027】
合成されたポリアミド酸は溶液として使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶剤に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶剤可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cP〜1000,000cPの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。このように調製したポリアミド酸の溶液に、後述するイミド化触媒を添加し、塗布液として利用することができる。
【0028】
<イミド化触媒>
本発明において使用するイミド化触媒は、過塩素酸亜鉛である。ここで、過塩素酸亜鉛は、下記の式(1)で表されるが、二水和物、六水和物などの水和物も含まれる。
【0030】
過塩素酸亜鉛の亜鉛イオン(Zn
2+)は、ポリアミド酸のカルボキシル基(−COOH)のカルボニル酸素へ配位し負電荷を求引することで、カルボニル炭素の正電荷を増加させ、ポリアミド酸のアミド基(−CONH−)のイミド化を促進させると考えられる。亜鉛イオンのポリアミド酸への配位、イミド化反応促進後の脱離は、過塩素酸亜鉛のルイス酸性や立体構造などに影響を受けると考えられ、特にルイス酸性については、一般的に下記の(1)〜(4)のことが予想される。
(1)中心金属が同じ場合には、中心金属と対アニオンとの距離が遠い程、ルイス酸性が強くなる;
(2)配位子の電子供与性が高くなるほど、ルイス酸として弱くなる;
(3)中心金属の最低空軌道の順位が低くなるほど、ルイス酸として強くなる;
(4)価数の高い金属になるほど、ルイス酸性が強くなる;
しかし、ルイス酸性が強いほどイミド化を促進する訳ではなく、強すぎると副反応を引き起こす可能性があるため、適度なルイス酸性が存在するものと予想できる。このような観点から、本発明では、過塩素酸イオン(ClO
4−)の亜鉛塩とする。例えば、水素化ホウ素イオン(BH
4-)、アルコキシイオン(RO
−)、ハロゲン化物イオン(X
−)及び過塩素酸イオンを例に挙げると、ルイス酸性は、高い順に(BH
4-)>(ClO
4−)>(RO
−)>(X
−)となる。
【0031】
過塩素酸亜鉛の添加量は、テトラカルボン酸二無水物の1モルとジアミン化合物の1モルから生じるポリアミド酸の構成単位1モルに対して、好ましくは0.01〜0.5モルの範囲内、より好ましくは0.05〜0.1モルの範囲内がよい。このような範囲内とすることで、効果的なイミド化の促進とポリアミド酸のハンドリング性を両立することが可能である。なお、ポリアミド酸の構成単位1モルは、ポリイミドの構成単位1モルを与える。
【0032】
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、イミド化触媒として過塩素酸亜鉛を用いるが、含窒素複素芳香環化合物を併用することが好ましい。含窒素複素芳香環化合物は、ポリアミド酸のアミド基(−CONH−)からプロトンを引き抜くことでイミド化促進に寄与しているものと考えられ、過塩素酸亜鉛とは異なる機構でイミド化を促進する。即ち、過塩素酸亜鉛と含窒素複素芳香環化合物との併用により、低温での更なるイミド化促進効果が期待される。また、含窒素複素芳香環化合物をイミド化触媒として用いると、低熱膨張性を保持することが可能となる。含窒素複素芳香環化合物は、ポリアミド酸の分子間に配位することで分子配向を乱すことなく、むしろイミド化促進による配向促進が可能であると考えられる。また、低温でのイミド化促進により、分子が剛直化し配向し易い状態になる為と考えられる。従って、イミド化触媒として過塩素酸亜鉛及び含窒素複素芳香環化合物を併用することで、イミド化促進効果と低熱膨張性の両立が可能になると考えられる。
【0033】
含窒素複素芳香環化合物としては、例えばイミダゾール、ピリジン又はピコリン、あるいは水素原子以外の置換基を有するイミダゾール、同ピリジン、同ピコリン等が挙げられる。置換基を有する場合、その置換基はメチル基が好ましく、置換基数は1又は2がよい。具体例として、ビピリジン、イミダゾール、ピコリン、ルチジン、ピラゾール、トリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、ベンゾシンノリン、ベンゾフタラジン、ベンゾキノキサリン、ベンゾキナゾリン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、ペリミジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,6−ルチジン、2−ピコリン及び4−ピコリンが好ましく、より好ましくはイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールから選択された少なくとも1種であることがよい。
【0034】
含窒素複素芳香環化合物を併用する場合の添加量は、テトラカルボン酸二無水物の1モルとジアミン化合物の1モルから生じるポリアミド酸の構成単位1モルに対して、好ましくは0.01〜1.0モルの範囲内、より好ましくは0.05〜0.5モルの範囲内がよい。このような範囲内とすることで、相乗的なイミド化促進効果とハンドリング性、低熱膨張性を満足することが可能になると考えられる。
【0035】
本発明で用いるイミド化触媒の添加は、公知の方法で行うことが出来る。例えば、有機極性溶媒に溶解したポリアミド酸溶液に、有機極性溶媒へ溶解させたイミド化触媒を添加、混合する方法が好ましい。有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、硫酸ジメチル、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらを2種類以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
【0036】
<イミド化>
ポリアミド酸の溶液は、支持基材上に塗布され、続く熱処理で乾燥及びイミド化(又は硬化)される。加熱処理は、例えば、120〜360℃の範囲内、8〜20分の範囲内で行うことができるが、加熱処理時間は、好ましくは10〜15分である。イミド化触媒によるイミド化促進効果から、ポリアミド酸のイミド化を完結させる為の熱処理温度を例えば180℃程度まで下げることができる。
【0037】
本発明において、単層又は複数層のポリイミド層を有するポリイミドフィルムを得ることができるが、ポリイミド層を形成するポリイミドは、熱可塑性ポリイミド又は非熱可塑性ポリイミドのいずれであってもよい。つまり、上記イミド化触媒は、熱可塑性ポリイミドの形成又は非熱可塑性ポリイミドの形成のいずれにも適用が可能である。特に、低熱膨張性のポリイミド層の形成に上記イミド化触媒を適用することは、得られるポリイミドフィルムに十分な特性、例えば熱処理の増速化を行ってもイミド化の促進とともに配向度が向上することで、低い線熱膨張係数を与えることができるので好ましく、ポリイミドフィルムが多層ポリイミドフィルムである場合、生産設備の簡略化の観点から、低熱膨張性のポリイミド層にのみイミド化触媒を使用することが最も好ましい。
【0038】
<低熱膨張性のポリイミド層>
上記のとおり、過塩素酸亜鉛は、特に低熱膨張性のポリイミド層に適用することが好ましい。低熱膨張性のポリイミド層の線熱膨張係数は、例えば5〜30ppm/K未満の範囲内であり、好ましくは5〜25ppm/Kの範囲内、より好ましくは10〜20ppm/Kの範囲内であることがよい。低熱膨張性のポリイミドは、熱処理時間の短縮化によって線熱膨張係数の急激な上昇を生じやすいが、このようなイミド化触媒を使用することで、ポリイミド層の線熱膨張係数の急激な上昇を抑えることが可能となる。
【0039】
低熱膨張性のポリイミド層を形成するポリイミドの具体例としては、下記式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0041】
式(2)中、Ar
1は下記式(3)〜式(6)で表される2価の基からなる群より選ばれた2価の芳香族基を示し、Ar
2は式(7)〜式(14)で表される4価の基からなる群より選ばれた4価の芳香族基を示す。また、式(3)〜式(6)及び式(14)において、R
3は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n
1は独立に0〜4の整数を示す。式(4)〜式(8)において、Xは独立に単結合又は−C(CH
3)
2−、−(CH
2)m
1−、−O−、−S−、−SO
2−、−NH−、−CO−若しくは-−CONH−から選ばれる2価の基を示す。そして、Ar
1の1モルに対して、式(4)〜式(8)において、Xとして表される基であって、−(CH
2)m
1−、−O−、−S−、−SO
2−、−NH−、−CO−及び−CONH−から選ばれる2価の基、並びに−O−が、合計で0.2〜0.6モル含まれる。m
1は1〜5の整数を示す。式(12)〜式(13)において、Zは独立に−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−NH−、−CO−又は−CONH−から選ばれる2価の基を示す。
【0043】
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
【0044】
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。
【0045】
本実施の形態において、低熱膨張性のポリイミド層とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
【0046】
<高熱膨張性のポリイミド層>
また、線熱膨張係数30ppm/K以上の高熱膨張性のポリイミド層とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。
【0047】
<積層構造>
また、ポリイミド層を低熱膨張性のポリイミド層と高熱膨張性のポリイミド層との積層構造とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層と高熱膨張性のポリイミド層との厚み比(低熱膨張性のポリイミド層/高熱膨張性のポリイミド層)が2〜15の範囲内であるのがよい。この比の値が、2に満たないとポリイミド層全体に対する低熱膨張性のポリイミド層が薄くなるため、ポリイミドフィルムの寸法特性の制御が困難となり、銅箔をエッチングして回路配線層を形成した際の寸法変化率が大きくなり、15を超えると高熱膨張性のポリイミド層が薄くなるため、ポリイミド層と回路配線層との接着信頼性が低下する。
【0048】
本発明で製造されるポリイミドフィルムを、例えば回路配線基板の絶縁層として適用する場合、ポリイミドフィルムは金属箔との接着性を良好なものとするために、金属箔と接するポリイミド層には高熱膨張性のポリイミドを選択することが好ましい。このような高熱膨張性のポリイミドは、熱可塑性のポリイミドとして知られているが、そのガラス転移温度は350℃以下であるものが好ましく、より好ましくは200〜320℃である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0050】
[粘度の測定]
樹脂の粘度は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0051】
[分子量の測定]
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC−8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
【0052】
[イミド化率の評価]
ポリイミドフィルムのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、商品名FT/IR)を用い、一回反射ATR法にてポリイミドフィルムの赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1009cm
−1のベンゼン環炭素水素結合を基準とし、1778cm
−1のイミド基由来の吸光度から算出した。なお、触媒添加を行わずに120℃から360℃までの段階的な熱処理を行い、360℃熱処理後のポリイミドフィルムのイミド化率を100%とした。
【0053】
[線熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から250℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
【0054】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、tanδが最大となる温度をガラス転移温度とした。
【0055】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
4,4’−DAPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
Zn:過塩素酸亜鉛六水和物
IM:イミダゾール
【0056】
合成例1
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、3.376gの4,4’−DAPE(0.0168モル)、14.324gのm‐TB(0.0673モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.143gのBPDA(0.0208モル)及び13.656gのPMDA(0.0625モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。得られたポリアミド酸溶液aの重量平均分子量(Mw)は120,000であった。
【0057】
合成例2
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が12重量%となるように、19.660gのBAPP(0.0478モル)及び220.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.331gのPMDA(0.0473モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。得られたポリアミド酸溶液bの粘度は1600cP、重量平均分子量(Mw)は116,000であった。ポリアミド酸溶液bのポリアミド酸をイミド化して形成した厚み25μmの高熱膨張性ポリイミドフィルムの線熱膨張係数(CTE)は、55ppm/K、ガラス転移温度(Tg)は320℃であった。
【0058】
[実施例1]
合成例1で得られたポリアミド酸溶液aのポリアミド酸の構成単位1モルに対して0.05モルとなるZnの所定量を、配合後のポリアミド酸溶液の固形分濃度が12重量%となるような所定量のDMAcへ溶解させた。これをポリアミド酸溶液aに配合し、ポリアミド酸組成物1を得た。得られたポリアミド酸組成物1の粘度は、6550cPであった。このポリアミド酸組成物1を厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;1.5μm)に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層体について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルム1を得た。得られた樹脂フィルム1の線熱膨張係数は23.1ppm/K、220℃で50秒間の熱処理後におけるイミド化率は100%であった。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
表1に記載の割合(モル)で各イミド化触媒を配合し、実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物2を得、樹脂フィルム2を作製した。各ポリアミド酸組成物の粘度、各樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の各評価結果を表1に示す。
【0060】
[参考例1]
イミド化触媒として、表1に記載の割合(モル)でIMを配合した以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液aを用いて、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
表2に記載の割合(モル)でイミド化触媒を配合し、ポリアミド酸溶液bを用い実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物3を得、樹脂フィルム3を作製した。銅箔への塗布及び熱処理後、銅箔の腐食は無かった。ポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルム3の180℃で1分間の熱処理後におけるイミド化率を表2に示す。
【0063】
[比較例2]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例3と同様にしてポリアミド酸溶液bを用いて、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムの180℃で1分間の熱処理後におけるイミド化率を表2に示す。
【0064】
以上の結果をまとめて表1及び表2に示す。なお、表中の粘度はイミド化触媒配合後のポリアミド酸組成物の粘度を示し、CTEは線熱膨張係数を示し、220℃または180℃熱処理後のイミド化率は各温度で50秒間又は1分間の熱処理後にサンプリングした樹脂フィルムのイミド化率を意味する。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1及び2の結果より、イミド化触媒としてZn、すなわち過塩素酸亜鉛を配合することによって粘度上昇が確認されたが、触媒混合時においてイミド化は進行していないことを確認している。従って、過塩素酸亜鉛を用いた場合、ポリアミド酸溶液の状態でハンドリング性に優れていることが分かる。また、過塩素酸亜鉛を用いる場合は、IM、すなわちイミダゾールを用いる場合よりも高いイミド化率を示すことが分かり、イミド化触媒として優れた効果を確認することが出来た。イミド化触媒としてIMを用いた場合、イミド化率100%にまで到達する為には、おおよそ280℃以上の熱処理が必要であるが、本触媒により低温でのイミド化達成が可能となる。ポリイミドフィルムの線熱膨張係数は、過塩素酸亜鉛の配合により増加しているが、30ppm/K未満に抑えることができ、低熱膨張性のポリイミドフィルムとして使用可能である。
【0068】
[実施例4]
実施例1で使用した電解銅箔の片面に、実施例3で得られたポリアミド酸組成物3を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、120℃で30秒間乾燥した。その上に実施例1で得られたポリアミド酸組成物1を硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、120℃の範囲で2分間乾燥した。更にその上に、実施例3で得られたポリアミド酸組成物3を、硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、120℃で30秒間乾燥した後、120〜360℃の温度で10分間熱処理を行い、イミド化を完了し、高熱膨張性ポリイミド/低熱膨張性ポリイミド/高熱膨張性ポリイミドの厚みがそれぞれ2μm/21μm/2μmの金属張積層体1を得た。得られた金属張積層体1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、積層樹脂フィルム1を得た。得られた積層樹脂フィルム1の線熱膨張係数は25.5ppm/Kであった。
【0069】
[参考例2]
実施例1で得られたポリアミド酸組成物1に代えてイミド化触媒を配合しない比較例1のポリアミド酸組成物を用い、実施例3で得られたポリアミド酸組成物3に代えてイミド化触媒を配合しない比較例2のポリアミド酸組成物を用いること以外は、実施例4と同様にして積層樹脂フィルム2を作製した。得られた積層樹脂フィルム2の線熱膨張係数は19.6ppm/Kであった。
【0070】
[実施例5]
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、実施例3で得られたポリアミド酸組成物3/実施例1で得られたポリアミド酸組成物1/実施例3で得られたポリアミド酸組成物3の順の3層構造で、実施例1で使用した電解銅箔上に押出し流延塗布した。その後、120〜360℃の温度で10分間熱処理を行い、イミド化を完了し、高熱膨張性ポリイミド/低熱膨張性ポリイミド/高熱膨張性ポリイミドの厚みがそれぞれ2μm/21μm/2μmの金属張積層体3を得た。得られた金属張積層体3について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、積層樹脂フィルム3を得た。得られた積層樹脂フィルム3の線熱膨張係数を測定したところ、26.7ppm/Kであった。
【0071】
[参考例3]
実施例1で得られたポリアミド酸組成物1に代えてイミド化触媒を配合しない比較例1のポリアミド酸組成物を用い、実施例3で得られたポリアミド酸組成物3に代えてイミド化触媒を配合しない比較例2のポリアミド酸組成物を用いること以外は、実施例5と同様にして積層樹脂フィルム4を作製した。得られた積層樹脂フィルム4の線熱膨張係数は20.1ppm/Kであった。
【0072】
[実施例6]
実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物6を得た。このポリアミド酸組成物6を厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;1.5μm)に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、温度180℃又は200℃で熱処理を行い、金属張積層体を得た。得られた金属張積層体について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルム6を得た。ポリアミド酸組成物6について、上記各温度でイミド化率が100%となる熱処理時間の評価結果を表3に示す。
【0073】
[比較例3]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例6と同様にして樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の上記各温度でイミド化率が100%となる熱処理時間の評価結果を表3に示す。
【0074】
以上の結果をまとめて表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3より、イミド化触媒を配合しない場合でも低温の熱処理においてイミド化率が100%に到達するが、過塩素酸亜鉛を使用した場合についてイミド化完結温度の低下が可能であることが分かった。
【0077】
[実施例7]
ポリアミド酸溶液aを用い、表4に記載の割合(モル)でイミド化触媒を配合した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸組成物7を得、樹脂フィルム7を作製した。ポリアミド酸組成物7の粘度、樹脂フィルム7のイミド化率、線熱膨張係数を表4に示す。
【0078】
[比較例4]
イミド化触媒を配合しないこと以外は、実施例7と同様にしてポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表4に示す。
【0079】
[比較例5]
表4に記載の割合(モル)でイミド化触媒を配合すること以外は、実施例7と同様にしてポリアミド酸組成物を得、樹脂フィルムを作製した。このポリアミド酸組成物の粘度、樹脂フィルムのイミド化率、線熱膨張係数の評価結果を表4に示す。
【0080】
以上の結果をまとめて表4に示す。なお、表中の粘度はイミド化触媒配合後のポリアミド酸組成物の粘度を示し、加熱処理後のイミド化率は、180℃で10分間または15分間の熱処理後にサンプリングした樹脂フィルムのイミド化率を示し、CTEは線熱膨張係数を意味する。
【0081】
【表4】
【0082】
表4より、IMのみを添加した場合よりも過塩素酸亜鉛を併用した方が増粘は小さく、イミド化率の促進効果が高いことが分かる。低熱膨張性に関しては、表1における過塩素酸亜鉛のみを添加した場合よりも低CTEであることが分かり、過塩素酸亜鉛に含窒素複素環化合物を併用することが低熱膨張性の保持に対して効果的であることを示している。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。