特開2017-167301(P2017-167301A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-167301(P2017-167301A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20170825BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20170825BHJP
   G02B 6/126 20060101ALI20170825BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20170825BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
   G02F1/01 F
   G02B6/12 361
   G02B6/126
   G02B6/32
   G02B6/30
   G02F1/01 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-51986(P2016-51986)
(22)【出願日】2016年3月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000246
【氏名又は名称】特許業務法人OFH特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AA05
2H137AB08
2H137BA01
2H137BA48
2H137BA54
2H137BC02
2H137BC07
2H137BC08
2H137BC12
2H137BC44
2H137BC50
2H137CA22C
2H137CA34
2H137CA67
2H137HA01
2H147AB02
2H147AB11
2H147AB21
2H147BD01
2H147BD10
2H147BE01
2H147CA01
2H147CA08
2H147CA22
2H147CB01
2H147CD02
2H147EA05A
2H147EA05C
2H147GA10
2H147GA26
2K102AA22
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD02
2K102CA20
2K102DA04
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EB10
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB14
2K102EB16
(57)【要約】
【課題】
複数の光変調素子を備えて、各変調素子からそれぞれ出射される変調された2つの直線偏波光を偏波合成して出力する集積型の光変調デバイスにおいて、光学特性の更なる向上及び安定化、小型化、低コスト化を図る。
【解決手段】
2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子(120a、120b)と、2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズ(140a等)と、を備え、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と、
2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと、
を備え、
前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている、
光変調デバイス。
【請求項2】
少なくとも一の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光をそれぞれ受ける2つの前記レンズの光軸が、当該2つの直線偏波光のそれぞれの光軸に対し所定の距離だけ変位していることにより、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記光変調素子は、基板上に形成された光導波路で構成されており、
前記基板の端面から出射する一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記基板の端面から出射する他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように、少なくとも一つの前記光変調素子の前記2つの直線偏波光を出射する前記光導波路が、前記基板の端面の法線に対し所定の角度を成すように形成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記2つの光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記2つの光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記4つのレンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光、及び前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波を、それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器と、2つの当該偏波合成器から出力される2つの前記光ビームをそれぞれ光ファイバに結合させる2つの結合レンズと、
を更に備える、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の
光変調デバイス。
【請求項8】
前記偏波合成器は、半波長板と、偏波合成プリズムと、で構成されている、
請求項7に記載の光変調デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の光ファイバから入射した光を光変調素子により変調して他の光ファイバから出射する光変調デバイスに関し、特に、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型の光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLNを用いた光変調素子では、LN基板上に例えばマッハツェンダ型光導波路が形成され、当該光導波路上に形成された電極に高周波信号を印加することにより、当該高周波信号に応じた変調信号光(以下、変調光)が出力される。また、このような光変調素子を光伝送装置内で使用する場合には、光変調素子を収容した筺体と、光源からの光を光変調素子に入射する入射光ファイバと、光変調素子から出力される光を筺体外部へ導く出射光ファイバと、で構成される光変調デバイスが用いられる。
【0004】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、互いに直交する方向に偏光した2つの直線偏波光をそれぞれ位相偏移変調又は直交振幅変調して1本の光ファイバで伝送するDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QAM(Dual Polarization - Quadrature Amplitude Modulation)等、偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となりつつある。
【0005】
このようなDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調デバイスでは、一の光源から出力された直線偏波光を光変調素子に入射し、当該光変調素子において当該入射された直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれを独立な2つの高周波信号を用いて変調し、それらの変調された2つの直線偏波光を偏波合成して一つの光ファイバに結合させて出力する。
【0006】
一方、光伝送システムの伝送容量を更に増加させるためには、例えば互いに異なる波長を持つ複数の光に対しそれぞれDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行った後、変調された異なる波長を持つ複数の光を波長合成器により一つの光ビームにまとめて一本の光ファイバにより伝送する、波長多重システムが考えられる。このような、複数の光をそれぞれ変調して一本の光ファイバにより伝送する光伝送装置では、当該装置の小型化等の観点から、一つの入力光を変調して一つの変調光を出力する光変調デバイスを複数用いるのではなく、一つの筺体内に複数の光変調素子(又は複数の光変調素子を一つのLN基板上に形成した集積型光変調素子)を備えて、複数の入力光をそれぞれ変調して複数の変調光を出力し得る集積型の光変調デバイスが望ましい。
【0007】
この場合、複数の光変調素子からそれぞれ2つずつ出射される光(直線偏波光)を偏波合成するための偏波合成器や、当該偏波合成器を出射したビームを光ファイバに結合させるレンズ等の光学部品を設けるスペースを確保する必要性から、一の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出射する2つの直線偏波光と、の間の距離を拡げる必要がある。
【0008】
このような集積型の光変調デバイスとして、従来、2つの光変調素子を備え、一の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、他の光変調素子から出力される2つの直線偏波光と、の間の距離を、2つの光路シフト用プリズム(光路を平行移動させるためのプリズム)により拡げた後、それぞれの2つの直線偏波光を偏波合成プリズム等により偏波合成して、それぞれ1本の光ファイバにより筺体外へ出力させる集積型の光変調デバイスが知られている(特許文献1)。
【0009】
この光変調デバイスでは、2つの光変調素子から2つの光路シフト用プリズムまでの距離を互いに異ならせることで、上記2つの光路シフト用プリズムが互いに接触すること等による光学部品の損傷が防止される。
【0010】
しかしながら、光変調デバイスを構成する場合、光変調素子と出射光ファイバとの間の光結合効率の向上の観点、及び当該光結合効率の温度変動や経年変化の安定化の観点、並びにデバイスサイズの小型化やデバイスコストの低減の観点からは、光路内に挿入する光学部品の数を極力減らすことが望ましい。
【0011】
すなわち、上記従来の集積型光変調デバイスは、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015−172630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、個別の基板上にそれぞれ形成された又は一つの基板上に並べて形成された複数の光変調素子を備え、当該複数の光変調素子からそれぞれ出力される2つの変調された直線偏波光を偏波合成してそれぞれ一本の光ファイバから出力する、集積型光変調デバイスにおいて、光学特性の向上及びその安定化、並びに小型化、低コスト化等の観点から更なる改善を図ることのできる構成の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と、2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと、を備える光変調デバイスであって、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている。
本発明の他の態様によると、少なくとも一の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光をそれぞれ受ける2つの前記レンズの光軸が、当該2つの直線偏波光のそれぞれの光軸に対し所定の距離だけ変位していることにより、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている。
本発明の他の態様によると、前記光変調素子は、基板上に形成された光導波路で構成されており、前記基板の端面から出射する一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記基板の端面から出射する他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように、少なくとも一つの前記光変調素子の前記2つの直線偏波光を出射する前記光導波路が、前記基板の端面の法線に対し所定の角度を成すように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記2つの光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である。
本発明の他の態様によると、前記2つの光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている。
本発明の他の態様によると、前記4つのレンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである。
本発明の他の態様によると、前記光変調デバイスは、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光、及び前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波を、それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器と、2つの当該偏波合成器から出力される2つの前記光ビームをそれぞれ光ファイバに結合させる2つの結合レンズと、を更に備える。
本発明の他の態様によると、前記偏波合成器は、半波長板と、偏波合成プリズムと、で構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。
図2図1に示す光変調デバイスにおける、光変調器の光出射側である基板端面周辺の部分詳細図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。
図4図3に示す光変調デバイスにおける、光変調器の光出射側である基板端面周辺の部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る光変調デバイスについて説明する。
図1は、本実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。本光変調デバイス100は、光変調器102と、光変調器102に光源(不図示)からの光を入射する光ファイバである入射光ファイバ104a、104bと、マイクロレンズアレイ106と、偏波合成器108a、108bと、結合レンズ110a、110bと、出射光ファイバ112a、112bと、筺体114と、を有する。
【0017】
入射光ファイバ104a、104bは、それぞれ、2つの光源(不図示)からの、例えば互いに異なる波長を有する直線偏波光を、光変調器102に入射する。
光変調器102は、一枚のLN基板上に形成された、光導波路で構成される2つの光変調素子120a、120bを有する。これらの光変調素子120a、120bは、例えばDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調素子である。
【0018】
光変調素子120aは、入射光ファイバ104aから入射される直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれ異なる電気信号により変調した2つの直線偏波光を、それぞれ出射導波路130a、132aから出力する。同様に、光変調素子120bは、入射光ファイバ104bから入射される直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれ異なる信号により変調した2つの直線偏波光を、それぞれ出射導波路130b、132bから出力する。
【0019】
光変調器102の光出射側の基板端面170(出射導波路130a、132a、130b、132bが形成されている側(すなわち、図示左側)の基板端面)には、4つのマイクロレンズ140a、142a、140b、142bから成るマイクロレンズアレイ106が配されている。
【0020】
光変調素子120aの出射導波路130a、132aから出力される光は、マイクロレンズ140a、142aにより、例えばコリメートされ、それぞれ偏波合成器108aに入射する。同様に、光変調素子120bの出射導波路130b、132bから出力される光は、マイクロレンズ140b、142bにより、例えばコリメートされ、それぞれ偏波合成器108bに入射する。
【0021】
偏波合成器108a、108bは、それぞれ、例えば半波長板150a、150bと偏波合成プリズム152a、152bとにより構成されており、光変調素子120a及び120bからそれぞれ出射された同一方向に偏光する2つの直線偏波光を偏波合成して、それぞれ一つの光ビームとして出射する。
【0022】
すなわち、偏波合成器108aは、光変調素子120aの出射導波路130a、132aから出力されマイクロレンズ140a、142aによりコリメートされた2つの直線偏波光を偏波合成して一つの光ビームとして出力する。同様に、偏波合成器108bは、光変調素子120bの出射導波路130b、132bから出力されマイクロレンズ140b、142bによりコリメートされた2つの直線偏波光を偏波合成して一つの光ビームとして出力する。
【0023】
偏波合成器108a、108bから出力された光ビームは、それぞれ、結合レンズ110a、110bにより集光されて出射光ファイバ112a、112bに入り、筺体114の外部へ導かれる。
【0024】
特に、本実施形態に係る光変調デバイス100では、光変調素子120aの出射導波路130a、132aからそれぞれ出力される2つの直線偏波光をそれぞれコリメートするマイクロレンズ140a、142aの光軸が、当該マイクロレンズ140a、142aに入射する直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路130a、132aの中心軸に等しい)に対し所定の距離だけ当該光軸に直交する方向へ変位している。また、同様に、光変調素子120bの出射導波路130b、132bからそれぞれ出力される2つの直線偏波光をそれぞれコリメートするマイクロレンズ140b、142bの光軸が、当該マイクロレンズ140b、142bに入射する直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路130b、132bの中心軸に等しい)に対し当該光軸に直交する方向へ所定の距離だけ変位している。
【0025】
そして、マイクロレンズ140a、142aの光軸についての上記所定の距離の変位、及びマイクロレンズ140b、142bの光軸についての上記所定の距離の変位により、マイクロレンズ140a、142aをそれぞれ通過した光変調素子120aからの2つの直線偏波光と、マイクロレンズ140b、142bをそれぞれ通過した光変調素子120bからの2つの直線偏波光と、が光伝搬方向に沿って(即ち、光が伝搬するにつれて)互いの距離が離れるように構成されている、
【0026】
図2は、図1に示す光変調器102の光出射側の基板端面170周辺の部分詳細図である。マイクロレンズアレイ106のマイクロレンズ140aの光軸202aは、当該マイクロレンズ140aに入射する出射導波路130aからの直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路130aの中心軸に等しい)200aに対し、所定の距離dだけ図示上方へ変位している。このため、マイクロレンズ140aから出射する直線偏波光は、光軸204aに沿って出射導波路130aの中心線200aに対し所定の角度θだけ図示左上方へ向かって出射することとなる。同様に、マイクロレンズ142aの光軸212aは、当該マイクロレンズ142aに入射する出射導波路132aからの直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路132aの中心軸に等しい)210aに対し、所定の距離dだけ図示上方へ変位している。このため、マイクロレンズ142aから出射する直線偏波光も、光軸214aに沿って出射導波路132aの中心線210aに対し所定の角度θだけ図示左上方へ向かって出射することとなる。
【0027】
逆に、マイクロレンズアレイ106のマイクロレンズ140bの光軸202bは、当該マイクロレンズ140bに入射する出射導波路130bからの直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路130bの中心軸に等しい)200bに対し、所定の距離dだけ図示下方へ変位している。このため、マイクロレンズ140bから出射する直線偏波光は、光軸204bに沿って出射導波路130bの中心線200bに対し所定の角度θだけ図示左下方へ向かって出射することとなる。同様に、マイクロレンズ142bの光軸212bは、当該マイクロレンズ142bに入射する出射導波路132bからの直線偏波光の光軸(本実施形態では、出射導波路132bの中心軸に等しい)210bに対し、所定の距離dだけ図示下方へ変位している。このため、マイクロレンズ142bから出射する直線偏波光も、光軸214bに沿って出射導波路132bの中心線210bに対し所定の角度θだけ図示左下方へ向かって出射することとなる。
【0028】
これにより、出射導波路130a、132aを出射してマイクロレンズ140a、142aを通過した2つの直線偏波光と、出射導波路130b、132bを出射してマイクロレンズ140b、142bを通過した2つの直線偏波光とは、互いに2θの角度を為して、光伝搬方向に沿って(即ち、光が伝搬するにつれて)互いの距離が離れるように構成される。
【0029】
すなわち、上記の構成を有する光変調デバイス100は、2つの光変調素子120a、120bからそれぞれ出射される出射光が、それぞれ伝搬するに従って互いに離れる方向に出射されるので、従来技術のような光路シフト用プリズムを用いることなく、互いの出射光の距離を拡げて偏波合成器108a、108b及び結合レンズ110a、110bを配置するスペースを確保することができる。したがって、光変調器102から出射光ファイバ112a、112bに至るまでに用いられる光学部品の数を減らして、光変調素子120a、120bから出射光ファイバ112a、112bに至るまでの光結合効率等の光学特性を向上させ、及びその安定化を図ることができると共に、光変調デバイス100を小型且つ低コストで実現することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、光変調素子120a、120bの双方について、それぞれ2つずつ出射される直線偏波光が、出射導波路130a、132a及び130b、132bの中心軸に対して互いに異なる方向へ角度θだけ傾いて出射されるように構成したが、これに限らず、光変調素子120a、120bからそれぞれ出射する直線偏波光が、伝搬方向に沿って互いに距離が離れるように構成される限りにおいて、他の構成を用いるものとすることができる。例えば、光変調素子120aのみについて、当該光変調素子120aから出射される直線偏波光が、出射導波路130a、132aの中心軸に対し出射導波路130b、132bから離れる方向へ角度θだけ傾いて出射されるように、光変調デバイス100を構成するものとすることもできる。
【0031】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る光変調デバイスについて説明する。
本実施形態の光変調デバイスでは、基板上に形成された2つの光変調素子の出射導波路が、当該基板の光出射側端面の法線に対し、互いに逆方向に所定の角度を持つように形成され、一方の光変調素子からの直線偏波光と他方の光変調素子からの直線偏波光とが、光伝搬方向に沿って互いの距離が離れる方向へ向かって上記基板端面から出射される。
【0032】
図3は、本実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。なお、図3において、図1に示す第1の実施形態に係る光変調デバイス100と同じ構成要素については、図1における符号と同一の符号を用いて示すものとし、上述した光変調デバイス100についての説明を援用するものとする。
【0033】
本光変調デバイス300は、第1の実施形態に係る光変調デバイス100と同様の構成を有するが、光変調器102及びマイクロレンズアレイ106に代えて、光変調器302及びマイクロレンズアレイ306を有する点が異なる。
【0034】
光変調器302は、一枚のLN基板上に形成された、光導波路で構成される2つの光変調素子320a、320bを有する。これらの光変調素子320a、320bは、例えばDP−QPSK変調やDP−QAM変調を行う光変調素子である。
【0035】
光変調素子320aは、入射光ファイバ104aから入射される直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれ異なる電気信号により変調した2つの直線偏波光を、それぞれ出射導波路330a、332aから出力する。同様に、光変調素子320bは、入射光ファイバ104bから入射される直線偏波光を2つの光に分岐してそれぞれ異なる信号により変調した2つの直線偏波光を、出射導波路330b、332bから出力する。
【0036】
特に、本実施形態に係る光変調デバイス300で用いられる光変調器302では、光変調素子320aの出射導波路330a、332aと、光変調素子320bの出射導波路330b、332bと、が、基板端面370の法線に対しそれぞれ所定の角度だけ、互いに異なる方向へ傾いて形成されている。
【0037】
そして、光変調素子320aの出射導波路330a、332aから出力される光は、マイクロレンズアレイ306を構成するマイクロレンズ340a、342aにより、例えばコリメートされ、それぞれ偏波合成器108aに入射する。同様に、光変調素子320bの出射導波路330b、332bから出力される光は、マイクロレンズアレイ306を構成するマイクロレンズ340b、342bにより、例えばコリメートされ、それぞれ偏波合成器108bに入射する。
【0038】
ここで、マイクロレンズアレイ306を構成する4つのマイクロレンズ340a、342a、340b、342bは、それぞれ、出射導波路330a、332a、330b、332bから出射される出射光を、それぞれ当該出射光の出射方向に沿って伝搬するコリメート光に変換するよう構成されている。
【0039】
図4は、図3に示す光変調器302の基板端面370周辺の部分詳細図である。光変調素子320aの出射導波路330aは、基板端面370の法線380aに対し所定角度+ψ(時計方向回りの角度を正とする)だけ傾けて形成されており、出射導波路330aから出射する光は、図示左上方へ向かう光軸390aに沿って伝搬する。同様に、光変調素子320aの出射導波路332aは、基板端面370の法線382aに対し所定角度+ψだけ傾けて形成されており、出射導波路332aから出射する光は、図示左上方へ向かう光軸392aに沿って伝搬する。
【0040】
逆に、光変調素子320bの出射導波路330bは、基板端面370の法線380bに対し所定角度−ψだけ傾けて形成されており、出射導波路330bから出射する光は、図示左下方へ向かう光軸390bに沿って伝搬する。同様に、光変調素子320bの出射導波路332bは、基板端面370の法線382bに対し所定角度−ψだけ傾けて形成されており、出射導波路332bから出射する光は、図示左下方へ向かう光軸392bに沿って伝搬する。
【0041】
これにより、出射導波路330a、332aを出射する2つの直線偏波光と、出射導波路330b、332bを出射する2つの直線偏波光とは、光伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成される。
【0042】
すなわち、上記の構成を有する光変調デバイス300は、第1の実施形態に係る光変調デバイス100と同様に、2つの光変調素子320a、320bからそれぞれ出射される出射光が、それぞれ伝搬するに従って互いに離れる方向に出射されるので、従来技術のような光路シフト用プリズムを用いることなく、互いの出射光の間隔を拡げて偏波合成器108a、108b及びレンズ160a、110bを配置するスペースを確保することができる。したがって、光変調器302から出射光ファイバ112a、112bに至るまでに用いられる光学部品の数を減らして、光変調素子320a、320bから出射光ファイバ112a、112bに至るまでの光結合効率等の光学特性を向上させ、及びその安定化を図ることができると共に、光変調デバイス100を小型且つ低コストで実現することができる。
【0043】
また、本実施形態の光変調デバイス300では、特に、出射導波路330a、332a、330b、332bが基板端面370の法線方向に対して傾いているので、出射導波路330a、332a、330b、332bを伝搬したあと基板端面370で反射して出射導波路330a、332a、330b、332b内を逆方向に伝搬する光(反射戻り光)を抑制して、良好な光変調動作を得ることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、光変調素子320a及び320bの双方について、それぞれの出射導波路330a、332a及び330b、332bが、当該光変調素子320a、320bが形成された基板の端面法線に対し、それぞれ逆方向に所定の角度を成すように形成されるものとしたが、これに限らず、光変調素子320a、320bからそれぞれ出射する出射光が、光伝搬方向に沿って(光が伝搬するにつれて)互いに距離が離れるように構成される限りにおいて、他の構成を用いるものとすることができる。例えば、一方の光変調素子320aの出射導波路330a、332aのみが、基板端面370の法線に対して所定の角度だけ傾いて形成されるものとしてもよい。この場合、他方の光変調素子320bの出射導波路330b、332bは、基板端面370の法線方向に沿って形成されるものとすることができる。
【0045】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、共に、2つの光変調素子(120a、120b、及び320a、320b)が一枚の基板上に形成された1つの光変調器(102及び302)を用いるものとしたが、これに限らず、個別の基板上に形成された1つの光変調素子で構成される光変調器を2つ用いるものとしてもよい。
【0046】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、4つのマイクロレンズで構成されるマイクロレンズアレイ106、306を用いる構成としたが、これに限らず、個別の4つのレンズを用いたり、それぞれが2つのマイクロレンズで構成される2つのマイクロレンズアレイを用いて構成することもできる。
【0047】
さらに、上述した第1及び第2の実施形態では、偏波合成器108a、108bは、半波長板150a、1510bと偏波合成プリズム152a、152bで構成されるものとしたが、これに限らず、同一方向に偏光した2つの直線偏波光を偏波合成できる限りにおいて、例えば偏波合成プリズムに代えて複屈折性結晶を用いる等、任意の構成の偏波合成器とすることができる。
【0048】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、図1及び図3に示すように、出射光ファイバ112a、112bの、結合レンズ110a、110b側の端面における光軸の方向と、偏波合成器108a、108bから出射する光ビームの光軸の方向とが一致しない構成としたが、これに限らず、出射光ファイバ112a、112bの当該端面における光軸の方向が、偏波合成器108a、108bから出射する光ビームの光軸の方向と一致するように、出射光ファイバ112a、112bを傾けて構成するものとすることもできる。
【0049】
以上、説明したように、第1及び第2の光変調デバイス100、300は、2つの光変調素子(120a、120b、又は320a、320b)からの出射光が、光伝搬方向に沿って(すなわち、光が伝搬するにつれて)互いの距離が離れる方向へ伝搬するよう構成されている。このため、第1及び第2の光変調デバイス100、300では、光路シフト用プリズムを用いることなく、偏波合成器108a、108b及びレンズ160a、110bを配置するスペースを確保することができるので、使用する光学部品の数を減らして、光結合効率等の光学特性を向上させ、及びその安定化を図ることができると共に、光変調デバイス100、300を小型且つ低コストで実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
100、300・・・光変調デバイス、102、302・・・光変調器、104a、104b・・・入射光ファイバ、106、306・・・マイクロレンズアレイ、108a、108b・・・偏波合成器、120a、120b、320a、320b・・・光変調素子、130a、132a、130b、132b、330a、332a、330b、332b・・・出射導波路、140a、142a、140b、142b、340a、342a、340b、342b・・・マイクロレンズ、150a、150b・・・半波長板、152a、152b・・・偏波合成プリズム、160a、110b・・・結合レンズ、112a、112b・・・出射光ファイバ、370・・・基板端面。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2017年1月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と、
2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと、
を備え、
前記レンズの2つにはそれぞれ一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され、前記レンズの他の2つにはそれぞれ他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され、前記2つのレンズから出射する前記2つの直線偏波光と、前記他の2つのレンズから出射する前記2つの直線偏波光とは、互いに間に角度を持って、伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されている、
光変調デバイス。
【請求項2】
少なくとも一の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光をそれぞれ受ける2つの前記レンズの光軸が、当該2つの直線偏波光のそれぞれの光軸に対し所定の距離だけ変位していることにより、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記光変調素子は、基板上に形成された光導波路で構成されており、
前記基板の端面から出射する一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記基板の端面から出射する他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬するにつれて互いの距離が離れるように、少なくとも一つの前記光変調素子の前記2つの直線偏波光を出射する前記光導波路が、前記基板の端面の法線に対し所定の角度を成すように形成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記2つの光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記2つの光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記4つのレンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光、及び前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波を、それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器と、2つの当該偏波合成器から出力される2つの前記光ビームをそれぞれ光ファイバに結合させる2つの結合レンズと、
を更に備える、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の 光変調デバイス。
【請求項8】
前記偏波合成器は、半波長板と、偏波合成プリズムと、で構成されている、
請求項7に記載の光変調デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2017年7月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と、
2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと、
を備え、
前記レンズの2つにはそれぞれ一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され、前記レンズの他の2つにはそれぞれ他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され、前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と、前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは、互いに間に角度を持って、伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されており更に、
前記互いの間に角度を持った前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を、それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有する、
光変調デバイス。
【請求項2】
少なくとも一の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光をそれぞれ受ける2つの前記レンズの光軸が、当該2つの直線偏波光のそれぞれの光軸に対し所定の距離だけ変位していることにより、前記レンズの2つをそれぞれ通過した一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記レンズの2つをそれぞれ通過した他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記光変調素子は、基板上に形成された光導波路で構成されており、
前記基板の端面から出射する一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、前記基板の端面から出射する他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と、が伝搬するにつれて互いの距離が離れるように、少なくとも一つの前記光変調素子の前記2つの直線偏波光を出射する前記光導波路が、前記基板の端面の法線に対し所定の角度を成すように形成されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記2つの光変調素子は、位相偏移変調又は直交振幅変調を行う光変調素子である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記2つの光変調素子は、それぞれ別の基板上に形成されているか、又は同一の基板上に並べて形成されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記4つのレンズは、一体に形成されたマイクロレンズアレイである、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記偏波合成器は、半波長板と、偏波合成プリズムと、で構成されている、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光変調デバイス。