特開2017-171525(P2017-171525A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-171525(P2017-171525A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】細骨材、細骨材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 20/00 20060101AFI20170901BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   C04B20/00 B
   C04B14/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-58087(P2016-58087)
(22)【出願日】2016年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中島 有一
(57)【要約】
【課題】吸水率の比較的高くてもセメント硬化体の原料として使用することができる細骨材を提供すると共に、該細骨材の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材であって、吸水率が2%以上であり、0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材であって、
吸水率が2%以上であり、0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%であることを特徴とする細骨材。
【請求項2】
0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径が25質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の細骨材。
【請求項3】
セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材を製造する細骨材の製造方法であって、
吸水率が2%以上の粗骨材を粉砕して砕砂を形成する砕砂形成工程と、砕砂の粒度分布を0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%になるように調整する粒度調整工程とを備えることを特徴とする細骨材の製造方法。
【請求項4】
前記粒度調整工程は、0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径が25質量%以下となるように砕砂の粒度を調整することを特徴とする請求項3に記載の細骨材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材、及び、該細骨材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントと水と骨材(粗骨材及び細骨材)とが混練されて硬化することセメント硬化体が形成される。該セメント硬化体の乾燥収縮ひずみは、骨材(粗骨材及び細骨材)の吸水率に影響されることが知られている。具体的には、吸水率の比較的高い骨材を用いて形成されたセメント硬化体は、吸水率の比較的低い骨材を用いて形成されたセメント硬化体よりも、乾燥収縮ひずみが大きくなることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のような骨材の多くは、天然資源であるため、産地によって吸水率にバラツキがあり、吸水率の比較的高い骨材しか産出されない産地も存在する。また、近年では、吸水率の比較的低い骨材の産地であっても資源の枯渇によって吸水率の比較的低い骨材を産出し難くなっている。
【0004】
そして、吸水率の比較的高い骨材は、上述のように、セメント硬化体の乾燥収縮ひずみを大きくする要因となるため、セメント硬化体の製造には使用されず、他の用途で(道路材料、クッション材、又は、埋め戻し材のような土木材料や、水質を調整するろ過フィルターの一部として)使用される場合がある。また、吸水率の比較的高い骨材をセメント硬化体の製造において使用する場合には、収縮低減剤や膨張剤を添加することで、セメント硬化体に生じる収縮ひずみを低減する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−184350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、吸水率の比較的低い骨材が産出され難くなっているため、吸水率の比較的高い骨材であっても、セメント硬化体の原料として使用することが要求されている。また、収縮低減剤や膨張剤を添加することで乾燥収縮ひずみを低減する方法では、セメント硬化体を形成する際の費用が嵩むことなる。
【0007】
そこで、本発明は、吸水率の比較的高くてもセメント硬化体の原料として使用することができる細骨材を提供すると共に、該細骨材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る細骨材は、セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材であって、吸水率が2%以上であり、0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%であることを特徴とする。
【0009】
斯かる構成によれば、吸水率が2%以上であり、0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%であることで、セメント硬化体の乾燥収縮ひずみを抑制することができる。このため、吸水率が2%以上である(即ち、吸水率の比較的高い)細骨材であってもセメント硬化体の原料として使用することができる。
【0010】
0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径が25質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る細骨材の製造方法によれば、セメント及び水と共に混練されてセメント硬化体を形成する細骨材を製造する細骨材の製造方法であって、吸水率が2%以上の粗骨材を粉砕して砕砂を形成する砕砂形成工程と、砕砂の粒度分布を0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%になるように調整する粒度調整工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
斯かる構成によれば、吸水率が2%以上の粗骨材を粉砕して砕砂を形成する砕砂形成工程と、砕砂の粒度分布を0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%に調整する粒度調整工程とを備えることで、得られる細骨材を用いて形成されるセメント硬化体の乾燥収縮ひずみを抑制することができる。このため、吸水率が2%以上である(即ち、吸水率の比較的高い)粗骨材であってもセメント硬化体の原料である細骨材として使用することができる。
【0013】
前記粒度調整工程は、0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径が25質量%以下となるように砕砂の粒度を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、吸水率の比較的高い細骨材であってもセメント硬化体の原料として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本発明に係る細骨材は、セメントと共にセメント組成物を構成するものである。セメント組成物としては、例えば、セメントと粗骨材と細骨材とが含有されたコンクリート組成物や、粗骨材を含まないモルタル組成物が挙げられる。セメント組成物は、水と混練されて硬化することで、セメント硬化体を形成する。セメント硬化体としては、例えば、上記のようなコンクリート組成物と水とが混練されて硬化することで形成されるコンクリート硬化体や、モルタル組成物が硬化することで形成されるモルタル硬化体等が挙げられる。
【0017】
前記セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントや、速硬性セメント(例えば、超速硬セメント、アルミナセメント等)等の少なくとも一つを用いることができる。
【0018】
セメント組成物中のセメントの含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、10質量%以上35質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
前記粗骨材は、5mmを超える粒径(換言すれば、5mmのふるい目を通過しないもの)が85質量%以上含まれるものである。また、粗骨材としては、例えば、砕石、玉砂利(川砂利)、天然軽量粗骨材(パーライト、ヒル石等)、副産軽量粗骨材、人工軽量粗骨材、再生骨材等の少なくとも一つを用いることができる。粗骨材の吸水率としては、特に限定されるものはないが、2%未満であることが好ましい。
【0020】
前記細骨材は、10mmのふるい目を全量が通過し、5mm以下の粒径(換言すれば、5mmのふるい目を通過するもの)が85質量%以上となるものである。また、細骨材は、0.15mm以下の粒径(換言すれば、0.15mmのふるい目を通過するもの)が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径(換言すれば、0.6mmのふるい目を通過して0.15mmのふるい目を通過しないもの)が40質量%以下(好ましくは、25質量%以上36質量%以下)、5mmを超える粒径(換言すれば、5mmのふるい目を通過しないもの)が0質量%であるものである。また、細骨材は、0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径(換言すれば、0.3mmのふるい目を通過して0.15mmのふるい目を通過しないもの)が25質量%以下であってもよく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。また、細骨材は、吸水率が2%以上になるものである。
【0021】
上記の細骨材は、粗骨材を粉砕することによって形成することができる。具体的には、細骨材を形成する方法としては、吸水率が2%以上の粗骨材を粉砕して砕砂を形成する砕砂形成工程と、砕砂の粒度分布を0.15mm以下の粒径(換言すれば、0.15mmのふるい目を通過するもの)が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径(換言すれば、0.6mmのふるい目を通過して0.15mmのふるい目を通過しないもの)が40質量%以下(好ましくは、25質量%以上36質量%以下)、5mmを超える粒径(換言すれば、5mmのふるい目を通過しないもの)が0質量%に調整する粒度調整工程とを備える。また、粒度調整工程では、0.15mmを超えて0.3mm以下の粒径(換言すれば、0.3mmのふるい目を通過して0.15mmのふるい目を通過しないもの)が25質量%以下となるように砕砂の粒度が調整されてもよく、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように砕砂の粒度が調整されてもよい。なお、細骨材としては、上記のような粗骨材を粉砕することで得られるものでなくてもよい。例えば、川砂、山砂、海砂、天然軽量細骨材(パーライト、ヒル石等)等の天然細骨材や、人工軽量細骨材、高炉スラグ細骨材等の人工細骨材、副産軽量細骨材等の少なくとも一つを細骨材として用いてもよい。
【0022】
上記の粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A 1102に従う骨材のふるい分け試験方法によって測定されるもので、JIS Z 8801−1の試験用ふるいの目開きを表したものである。また、粗骨材及び細骨材の吸水率とは、JIS A 1109(細骨材),JIS A 1110(粗骨材)に規定する方法で測定されるもの(骨材が絶乾状態から表面乾燥飽水状態に至る過程で吸水した水の質量を骨材の絶乾状態の質量で除した値を百分率で表したもの)である。
【0023】
また、前記セメント組成物には、混和材が含有されてもよい。混和材としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
また、前記セメント組成物には、混和剤が含有されてもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を使用することができる。
【0025】
以上のような細骨材、及び、細骨材の製造方法によれば、吸水率の比較的高い細骨材や粗骨材であってもセメント硬化体の原料として使用することができる。
【0026】
即ち、上記の細骨材は、吸水率が2%以上であり、0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%であることで、セメント硬化体の乾燥収縮ひずみを抑制することができる。このため、吸水率が2%以上である(即ち、吸水率の比較的高い)細骨材であってもセメント硬化体の原料として使用することができる。
【0027】
また、上記の細骨材の製造方法は、吸水率が2%以上の粗骨材を粉砕して砕砂を形成する砕砂形成工程と、砕砂の粒度分布を0.15mm以下の粒径が0質量%、0.15mmを超えて0.6mm以下の粒径が40質量%以下、5mmを超える粒径が0質量%に調整する粒度調整工程とを備えることで、得られる細骨材を用いて形成されるセメント硬化体の乾燥収縮ひずみを抑制することができる。このため、吸水率が2%以上である(即ち、吸水率の比較的高い)粗骨材であってもセメント硬化体の原料である細骨材として使用することができる。
【0028】
なお、本発明に係る細骨材の製造方法収縮低減剤及びセメント組成物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
<使用材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・水:上水道水
・細骨材A1,A2:山砂(掛川産)
・細骨材B1,B2:山砂(君津産)
・細骨材C1,C2:砕砂(鳥形山産)
・細骨材D1〜D6:砕砂(上山産)
・細骨材E1,E2:砕砂(奥多摩産)
・粗骨材A:砕石(笠間産)
・粗骨材B:砕石(鳥形山産)
・粗骨材C:砕石(奥多摩産)
・AE減水剤:マスターポリヒード1500(BASFジャパン社製)
※粗骨材及び細骨材の吸水率については、下記表2に示す。
【0031】
<乾燥収縮ひずみの測定>
上記の使用材料を用いて下記表1に記載の配合で、JIS A 1129に準拠して供試体を作製し、該供試体に対して乾燥収縮ひずみの測定を行った。測定結果については、下記表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
<まとめ>
比較例1と比較例2とを比較すると、乾燥収縮ひずみの値に大きな変化がないことが認められる。また、比較例3と比較例4との関係、比較例5と比較例6との関係においても同様のことが認められる。つまり、吸水率が2%未満となる細骨材を用いた場合には、細骨材の粒度分布のみを本願発明の範囲に調整することでは、乾燥収縮ひずみが抑制されないことが認められる。
【0035】
また、比較例7〜9と実施例1〜3とを比較すると、各実施例の方が乾燥収縮ひずみが小さいことが認められる。また、比較例10と実施例4とを比較すると、実施例4の方が乾燥収縮ひずみが小さいことが認められる。つまり、吸水率が2%以上である細骨材を用いた場合であっても、細骨材の粒度分布を本願発明の範囲に調整することで、乾燥収縮ひずみを抑制することができる。
また、実施例1〜4を比較すると、0.15mmを超え0.3mm以下の粒径が15質量%以下となるように細骨材の粒度分布を調整することで、乾燥収縮ひずみをより抑制することができ、0.15mmを超え0.3mm以下の粒径が10質量%以下となるように細骨材の粒度分布を調整することで、乾燥収縮ひずみを更に抑制することができる。