(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-171539(P2017-171539A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/44 20060101AFI20170901BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20170901BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20170901BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20170901BHJP
【FI】
C04B7/44ZAB
C10L5/44
C12N1/12 C
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-60164(P2016-60164)
(22)【出願日】2016年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 育子
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4G112
4H015
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA10
4B065AA83X
4B065AC20
4B065BB40
4B065CA55
4G112KA02
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA09
4H015BB10
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セメント製造において、微細藻類をバイオ燃料として利用するとともに、排ガス及び廃熱を、微細藻類の培養のために利用する、エネルギー及び二酸化炭素の一連のサイクルシステムを備えた藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法の提供。
【解決手段】セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程と、培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程と、前記藻類含水物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程とを含む、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程と、
培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程と、
前記藻類含水物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程と
を含む、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【請求項2】
セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程と、
培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程と、
前記藻類含水物を石炭ミルに投入して粉砕し、藻類粉砕物を得る工程と、
前記藻類粉砕物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程と
を含む、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【請求項3】
前記藻類含水物の含水率が70質量%以下である、請求項1又は2に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【請求項4】
前記排ガスは、集塵機を通して煤塵濃度を0.05g/m3N以下とした集塵機通過ガス、及び前記集塵機を通過する前の集塵機前排ガスのいずれか又は両方である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【請求項5】
前記淡水系微細藻類は、緑藻網、珪藻網、渦鞭藻網、褐色鞭毛藻網、黄藻網、ハプト藻網、プラシノ藻網、ラフィド藻網、真正眼点藻網、単細胞真核藻類及び紅藻網のうちから選ばれる少なくともいずれか1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【請求項6】
前記培養槽は、開放型の培養池である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造における燃料として微細藻類を利用する、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油のような化石燃料は、いずれ枯渇することが危惧されており、これを代替する燃料として、バイオ燃料への関心が高まっている。バイオ燃料とは、生物資源を原料として製造される燃料である。バイオ燃料は、燃焼により放出される二酸化炭素量と、生物資源の生産において光合成で吸収される二酸化炭素量とのバランスにより、実質的に二酸化炭素の排出量を抑制することができることから、地球温暖化対策に貢献し得るものとして注目されている。
【0003】
バイオ燃料の代表的なものとしては、木屑や廃材、トウモロコシやサトウキビ等をアルコール発酵させて得られるバイオエタノール、ヤシ油や菜種油、大豆油等の植物性油脂を改質して得られるバイオディーゼル燃料等が知られている。
また、新たなバイオ燃料の原料として、光合成によるオイル生産性が高い、微細藻類の利用も注目されている。微細藻類とは、植物プランクトンとも呼ばれ、その培養は、土地や水の利用の点で、食糧となる植物の生産との競合の可能性が低い等の利点も有している。
【0004】
例えば、特許文献1に、セメント工場から排出される二酸化炭素を含むガスを使用して微細藻類を光合成で培養することによりバイオマスを製造し、得られたバイオマスを発酵させた後、熱化学分解し、バイオ原油を分離することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、石炭火力発電所において、貯炭場の石炭パイルの自然発火や発塵を防止するための散布液に藻類を混入させることにより、藻類を石炭と混焼させるバイオ燃料として利用することができ、また、石炭ボイラーの排ガス処理液を藻類の培養液として使用することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5820878号公報
【特許文献2】特開2011−251782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法では、微細藻類から液体であるバイオ原油を得るために、培養した微細藻類を、発酵、熱化学分解及び分離する工程が必要となるため、工程が煩雑であり、コストも高くなる。また、微細藻類の培養のために供給されるセメント工場から排出されるガスは、重油を燃料とする場合にはSOx及びNOxが多く含まれているが、バイオ原油では、これらの濃度の低減化が求められる。このため、特許文献1に記載の方法においては、NOxは、微細藻類を処理する工程で分解されるが、SOxは、前記ガスからの除去処理を行う必要があるとしている。
【0008】
一方、上記特許文献2においては、藻類を液体燃料にすることなく、藻体のまま、バイオ燃料として利用できるとしている。しかしながら、石炭火力発電所の石炭ボイラーの排ガス処理液を藻類の培養液として使用する場合は、排煙脱硫装置で化学的に脱硫した排ガスを吸収させた培養液とする必要があるとされている。
【0009】
このような状況の下、微細藻類を原料とするバイオ燃料を、セメント製造プラントにおいて利用すべく検討を重ね、エネルギー及び二酸化炭素の一連のサイクルシステムで、セメント製造とバイオ燃料の生産とを効率的に行うことができることを見出した。
すなわち、本発明は、セメント製造において、微細藻類をバイオ燃料として利用するとともに、セメント製造における排ガス及び廃熱を、微細藻類の培養のために利用する、一連のエネルギー及び二酸化炭素のサイクルシステムを備えた藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、セメント製造プラントにおいて、藻類バイオ燃料の調達とセメント製造との間で、エネルギー及び二酸化炭素の一連の効率的なサイクルシステムを見出したことに基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[6]を提供する。
[1]セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程と、培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程と、前記藻類含水物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程とを含む、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
[2]セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程と、培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程と、前記藻類含水物を石炭ミルに投入して粉砕し、藻類粉砕物を得る工程と、前記藻類粉砕物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程とを含む、藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
[3]前記藻類含水物の含水率が70質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
[4]前記排ガスは、集塵機を通して煤塵濃度を0.05g/m
3N以下とした集塵機通過ガス、及び前記集塵機を通過する前の集塵機前排ガスのいずれか又は両方である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
[5]前記淡水系微細藻類は、緑藻網、珪藻網、渦鞭藻網、褐色鞭毛藻網、黄藻網、ハプト藻網、プラシノ藻網、ラフィド藻網、真正眼点藻網、単細胞真核藻類及び紅藻網のうちから選ばれる少なくともいずれか1種である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
[6]前記培養槽は、開放型の培養池である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法によれば、セメント製造において、微細藻類をバイオ燃料として、簡易な工程で、低コストで利用することができるとともに、セメント製造における排ガス及び廃熱を、微細藻類の培養のために利用するという、エネルギー及び二酸化炭素の一連のサイクルシステムが構築される。
したがって、本発明によれば、セメント製造において、エネルギーの有効利用を図ることができ、かつ、二酸化炭素排出量が抑制されるため、環境負荷の低減化に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の形態の方法]
本発明の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法の第1の形態は、セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程(1)と、培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程(2)と、前記藻類含水物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程(3)とを含むものである。
【0014】
このような工程(1)〜(3)を経ることにより、セメント製造プラントからの排ガス及び廃熱を有効利用することができ、その有効利用によって得られた藻類バイオ燃料を、簡易かつ低コストな形態でセメント製造プラントにおいて還元利用することができる。すなわち、セメント製造プラントと藻類バイオ燃料の調達との間で、エネルギー及び二酸化炭素の一連のサイクルシステムが構築される。なお、本発明では、製造するセメントの種類は特に限定されるものではない。
以下、前記工程(1)〜(3)を順次説明する。
【0015】
(工程(1))
工程(1)においては、セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する。
【0016】
微細藻類は、光合成による大気中の二酸化炭素の固定能力が高く、しかも、オイル生産能力が高いため、優れたバイオ燃料である。さらに、微細藻類は、通年での収穫が可能であるため、他の植物系バイオ燃料に比べて、安定的に供給することができるという利点も有している。
本発明で用いる微細藻類は、淡水系微細藻類である。セメント製造においては、セメントの物性の観点から、燃料中に塩分が含まれていることは好ましくない。海水又は汽水培養される微細藻類は、セメント製造におけるバイオ燃料として用いるためには、塩分を除去する必要があるため、工程及びコストの増大を招くため好ましくない。
【0017】
前記淡水系微細藻類としては、光合成による生育及び増殖が速いものが好ましく、例えば、緑藻網、珪藻網、渦鞭藻網、褐色鞭毛藻網、黄藻網、ハプト藻網、プラシノ藻網、ラフィド藻網、真正眼点藻網、単細胞真核藻類、紅藻網等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。具体的には、増殖速度や培養のしやすさ、培養液からの分離のしやすさ等の観点から、ボトリオコッカス、シュードコリシスティス、イカダモ等が好適に用いられる。
【0018】
セメント製造プラントからの排ガスには、二酸化炭素が約10体積%と高濃度で含まれており、この排ガスを微細藻類の培養槽に供給することにより、前記排ガスを該微細藻類の光合成による培養に有効利用することができる。
前記排ガスには、NOxも含まれるが、NOx中の窒素分は、微細藻類の生育における栄養分となる。また、排ガス中に含まれるリンやカリウムも、微細藻類の栄養分となる。また、SOxも含まれるが、石炭のような硫黄含有量の少ない燃料を使用するセメント製造プラントからの排ガスにおいては、重油を燃料とする燃焼ガスに比べて、SOxの含有量は0.1〜100ppmと少なく、また、微細藻類の生育には影響しない。
したがって、前記排ガスから二酸化炭素のみを分離した上で、培養槽に供給する必要はない。
【0019】
前記排ガスとしては、集塵機を通して煤塵濃度を0.05g/m
3N以下とした集塵機通過ガス、及び前記集塵機を通過する前の集塵機前排ガスのいずれか又は両方を用いることができる。
前記集塵機前排ガスは、セメント煤塵を、通常、煤塵濃度1〜50g/m
3Nで含んでいる。このため、セメント製造における排ガスを大気中に排出する際には、大気汚染防止のため、集塵機に通して煤塵濃度を低減させたガス、すなわち、集塵機通過ガスが排出される。
【0020】
培養する微細藻類の種類によって、培養槽のpHや温度等の好適な環境条件が異なる。集塵機前排ガスと集塵機通過ガスとで、培養槽に供給する排ガスの種類を適宜調整することにより、培養槽の環境条件を、培養する微細藻類の適性に合わせることができる。
例えば、集塵機通過ガスのみを培養槽に供給した場合、二酸化炭素濃度が約10体積%と高濃度であるため、該培養槽をpH5.0〜5.8の酸性にすることができる。
一方、集塵機前排ガスはセメント煤塵による煤塵濃度が高いため、集塵機通過ガスと適宜混合供給することにより、該培養槽のpHを5.0〜8.5の範囲で調整することができ、アルカリ性にすることも可能である。
また、微細藻類の培養温度は、通常、10〜30℃であることが好ましく、培養槽の温度が低い場合には、70〜140℃と高温である集塵機前排ガス、又は、集塵機通過ガスを適宜供給することにより、温度調整を行うこともできる。
【0021】
前記培養槽は、閉鎖型又は開放型のいずれでもよいが、開放型の培養池が好ましい。閉鎖型の光バイオリアクター等では、人工光のためのエネルギーが必要となり、設備コストが高い。これに対して、開放型の培養池、いわゆるオープンポンドでは、自然光を利用して、低コストで大量培養することができるため好ましい。
複数の培養池で、時期をずらして培養を開始することにより、いずれかの培養池には、必ず、十分に培養された微細藻類がある状態としておくことができる。このような状態を維持して、各培養池での微細藻類の培養を繰り返すことにより、藻類バイオ燃料を安定的に供給することが可能となる。
【0022】
(工程(2))
工程(2)においては、前記工程(1)で培養した微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る。
【0023】
微細藻類の培養液から分離する方法は、特に限定されるものではない。例えば、網等ですくい取ることによる固形分の採取、ろ過、遠心分離、凝集剤で固形分を沈降させた後、デカンテーションを行う等の方法が挙げられる。これらの方法の中でも、簡便で低コストである観点から、微細藻類を網ですくい取る方法が好ましい。
なお、凝集剤としては、無機系及び有機系のいずれか一方又は両方を用いることができるが、藻類バイオ燃料中の成分が製造するセメント成分に与える影響を考慮すると、カチオン性高分子凝集剤等の有機系凝集剤を用いることが好ましい。
【0024】
培養液から分離された微細藻類は、含水物の状態で藻類バイオ燃料としてセメント製造プラントに供することができるが、運搬等の作業性や燃焼効率の観点から、含水率70質量%以下まで水分を除去することが好ましい。
水分を除去する方法は、特に限定されるものではないが、1〜数週間程度の自然乾燥、好ましくは天日乾燥することが簡便であり、コストの点からも好ましい。また、セメント製造における廃熱を利用してもよく、加熱乾燥することにより、さらに含水率を低下させてもよい。
【0025】
(工程(3))
工程(3)においては、前記工程(2)で得られた藻類含水物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する。
【0026】
前記藻類含水物は、精製や粉砕等の処理を要することなく、また、液体燃料とすることなく、そのままの固形状の状態で、藻類バイオ燃料として供することができる。
このような形態の藻類バイオ燃料のセメント製造プラントにおける投入箇所は、通常、石炭燃料が投入される箇所と同様でよく、具体的には、プレヒータ、仮焼炉又はセメントキルンである。これらのうちの1ヶ所のみでも、2ヶ所以上に投入してもよい。これらのうち、藻類バイオ燃料中の水分による燃費低下の影響が少ない、仮焼炉又はセメントキルンの窯尻がより好ましい。
【0027】
[第2の形態の方法]
本発明の藻類バイオ燃料を用いたセメント製造方法の第2の形態は、セメント製造プラントからの排ガスを微細藻類の培養槽に供給し、前記培養槽内で淡水系微細藻類を培養する工程(1)と、培養した前記微細藻類を培養液と分離し、藻類含水物を得る工程(2)と、前記藻類含水物を石炭ミルに投入して粉砕し、藻類粉砕物を得る工程(4)と、前記藻類粉砕物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する工程(5)と含むものである。
【0028】
第2の形態に係る方法は、上記のような工程(1)、(2)、(4)及び(5)を経るものであり、上述した第1の形態に係る方法の工程(3)に代えて、工程(4)及び(5)を経る。このように、石炭ミルに投入することにより、藻類バイオ燃料を、粉砕される石炭と同様の取り扱いで用いることが可能となる。
なお、工程(1)及び(2)は、第1の形態に係る方法と同様であるため、説明を省略する。以下、前記工程(4)及び(5)について、順次説明する。
【0029】
(工程(4))
工程(4)においては、前記工程(2)で得られた藻類含水物を石炭ミルに投入して粉砕し、藻類粉砕物を得る。
石炭ミルに投入される藻類含水物は、石炭ミル内の石炭と混合され、粉砕される。石炭ミルは排熱を用いた乾燥機能を備えており、石炭ミルに投入することにより含水率を低下させることができるため、含水率が比較的高い状態であっても差し支えない。
石炭ミルとしては、一般に、セメント製造の燃料用石炭を粉砕するために用いられているミルであれば、特に限定されるものではなく、例えば、竪型ローラミル、チューブミル等が挙げられる。
石炭ミルへの藻類含水物の投入量は、石炭の粉砕条件に過度の変更を生じさせない範囲であることが好ましい。好ましくは、石炭量に対して0〜20質量%である。
【0030】
(工程(5))
工程(5)においては、前記工程(4)で得られた藻類粉砕物を藻類バイオ燃料として、セメント製造プラントの、プレヒータ、仮焼炉及びセメントキルンのうちの少なくともいずれか1ヶ所に投入する。
【0031】
藻類粉砕物は、石炭ミル内で石炭と同等程度まで含水量が低減される。具体的には、含水量は5〜20質量%になる。
セメント製造においては、前記藻類含水物又は前記藻類粉砕物のいずれの形態でもバイオ燃料として使用することができる。微細藻類からオイル成分を抽出及び精製したりして液体状のバイオ原油とする必要はなく、固形の状態で燃料として使用することができるため、コスト及び生産性においても優れたバイオ燃料であると言える。燃料としての燃焼効率や生産性の観点から、藻類粉砕物の形態である方が、より効率的に含水率を低くすることができるため好ましい。
【0032】
前記藻類粉砕物の投入箇所は、第1の形態における藻類バイオ燃料である藻類含水物の投入箇所と同様に、通常、石炭燃料が投入される箇所であり、石炭との混合物として投入される。このように、該藻類バイオ燃料は、セメント製造において、石炭燃料と同等の固形物燃料として取り扱うことができるため、取り扱い性にも優れている。