有機アミノシランが、N−シリルピロール、N−シリル−2,5−ジメチルピロール及び1−シリル−7−アザインドールからなる群より選択される、請求項2に記載の有機アミノシラン。
有機アミノシランが、2,6−ジメチルモルホリノシラン、2−メチルピロリジノシラン、及びN−シリルデカヒドロキノリンからなる群より選択される、請求項4に記載の有機アミノシラン。
N−プロピル−イソプロピルアミノシラン、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン、アリルフェニルアミノシラン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン、アリルシクロペンチルアミノシラン、フェニルシクロヘキシルアミノシラン及び2−(N−シリルメチルアミノ)ピリジンからなる群より選択される、請求項7に記載の有機アミノシラン。
N−(4−メトキシフェニル)ジシラザン、N−(3−メトキシフェニル)ジシラザン、N−(2−メトキシフェニル)ジシラザン、 N−(4−クロロフェニル)ジシラザン、N−(2−クロロフェニル)ジシラザン、N−(2−エチルフェニル)ジシラザン、N−(2,6−ジエチルフェニル)ジシラザン、 N−(2−プロピルフェニル)ジシラザン、N−(4−t−ブチルフェニル)ジシラザン、N−(4−イソ−プロピルフェニル)ジシラザン、N−(2−イソ−プロピルフェニル)ジシラザン、N−(3−エチルフェニル)ジシラザン、N−(4−sec−ブチルフェニル)ジシラザン、N−(4−ビニルフェニル)ジシラザン、N−(3−メチルフェニル)ジシラザン、N−(4−メチルフェニル)ジシラザン、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)ジシラザン、及びN−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ジシラザンからなる群より選択される、請求項22に記載の有機アミノシラン。
1−N−(2−ピリジル)ジシラザン、N,N−ジシリル−2−アミノピリミジン、N−(4−メチル−2−ピリジル)ジシラザン、N−(6−メチル−2−ピリジル)ジシラザン、N−(3−メチル−2−ピリジル)ジシラザン、N−(5−メチル−2−ピリジル)ジシラザン及びN−[2−(4−メチルピリミジノ)アミノ]ジシラザンからなる群より選択される、請求項24に記載の有機アミノシラン。
N−t−ペンチルジシラザン、N−(2−ジメチルアミノ−1−メチルエチル)ジシラザン、N−(2−ジメチルアミノエチル)ジシラザン、N−(1−シクロヘキシルエチル)ジシラザン、N,N−ジシリルクミルアミン、N−[3,3−ジメチルブチル−2]ジシラザン、N,N−ジシリル−2−ピコリルアミン、N,N−ジシリル−2−(2−ピリジル)エチルアミン及びN,N−ジシリル−1−(4−メチルフェニル)エチルアミンからなる群より選択される、請求項26に記載の有機アミノシラン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
窒化ケイ素膜を堆積するのに用いられる前駆体、例えばBTBAS及びクロロシランは、通常、550℃超の温度で膜を堆積させる。半導体デバイスの縮小化及び低いサーマルバジェット(thermal budget)の傾向は、比較的低い処理温度及び比較的高い堆積速度を必要とする。ケイ素含有膜を堆積させる温度は、格子中へのイオン拡散を防ぐために、特に金属化層(metallization layer)を有する基材に関して、また多くの3−5族デバイス及び2−6族デバイスにおいて、格子へのイオン拡散を防ぐために、低下させるべきである。したがって、550℃以下又は更には室温において、CVD、ALD又は他のプロセスにより堆積を可能とするのに化学的に十分に反応性があり、さらに通常の処理及び取扱い性の要件に関して安定で、新規でかつ比較的コスト優位性のある、ケイ素含有膜の堆積用の前駆体、例えば酸化ケイ素又は窒化ケイ素膜の堆積用の前駆体を与える継続的な必要性が、本分野において存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載するものは、例えばアモルファスシリコン、結晶性シリコン、半結晶性シリコン、化学量論的又は非化学量論的酸化ケイ素、化学量論的又は非化学量論的窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素及びこれらの組合せを含むケイ素を含有する膜(本明細書でケイ素含有膜と言及する)を、基材の少なくとも一部に形成するための有機アミノシラン前駆体、並びにこれを用いる方法である。また、本明細書に開示するものは、ケイ素含有膜又はコーティングを、処理する対象に、例えば半導体ウェハーに、形成するための方法である。本明細書に記載した方法の1つの実施態様では、酸化ケイ素層を基材に生成するための条件下の堆積チャンバーで、有機アミノシラン前駆体及び酸化剤を用いて、ケイ素及び酸素を含む層を基材に堆積させる。本明細書に記載した方法の他の1つの実施態様では、窒化ケイ素層を基材に生成するための条件下の堆積チャンバーで、有機アミノシラン前駆体及び窒素含有前駆体を用いて、ケイ素及び窒素を含む層を基材に堆積させる。さらなる実施態様では、本明細書に記載した有機アミノシラン前駆体を、金属含有膜、例えば限定されないが、金属酸化物膜又は金属窒化物膜用のドーパントとして、用いることもできる。
【0012】
本明細書に記載したプロセスでは、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、ケイ素含有前駆体の少なくとも1種として用いる:
【化1】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。)。
式Aのある種の実施態様においては、R及びR
1は、結合して環状基又はアルキル置換環状基を形成することができる。式Cのある種の実施態様においては、R、R
2及びR
1のいずれか1つ以上は、結合して環状基を形成することができる。式A又はCの他の実施態様において、R及びR
1、又はR、R
2及びR
1のいずれか1つは、それぞれ環状基を形成するための結合をしない。1つの特定の実施態様では、有機アミノシラン前駆体は、式Aを有し、Rはn−プロピルであり、かつR
1はイソプロピルである。式Aのこれらの実施態様又は他の実施態様では、R及びR
1は、異なる置換基であり、そして有機アミノシランは、非対称性の分子である。式Aの他の1つの実施態様では、R及びR
1は同じ置換基であり、そして有機アミノシランは、対称性の分子である。式Aの好ましい実施態様では、Rは、C
5〜C
6の環状アルキル基であり、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0013】
1つの態様において、本明細書に記載した有機アミノシラン前駆体は、次の式A、B及びCを有する少なくとも1つの前駆体を含む:
【化2】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。)。
式Aのある種の実施態様においては、R及びR
1は、結合して環状基又はアルキル置換環状基を形成することができる。式Cのある種の実施態様においては、R、R
2及びR
1のいずれか1つ以上は、結合して環状基を形成することができる。式A又はCの他の実施態様において、R及びR
1、又はR、R
2及びR
1のいずれか1つは、それぞれ環状基を形成するための結合をしない。1つの特定の実施態様では、有機アミノシラン前駆体は、式Aを有し、Rはn−プロピルであり、かつR
1はイソプロピルである。式Aのこれらの実施態様又は他の実施態様では、R及びR
1は、異なる置換基であり、そして有機アミノシランは、非対称性の分子である。式Aの他の1つの実施態様では、R及びR
1は同じ置換基であり、そして有機アミノシランは、対称性の分子である。
【0014】
他の1つの態様において、次の工程を含む、基材の少なくとも1つの表面にケイ素含有膜を形成する方法が与えられる:
反応チャンバーに、上記基材の少なくとも1つの表面を与える工程;及び
次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、上記ケイ素含有前駆体の少なくとも1つとして用いて、化学気相成長プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスによって、上記少なくとも1つの表面に上記ケイ素含有膜を形成する工程:
【化3】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。)。
式Aのある種の実施態様においては、R及びR
1は、結合して環状基又はアルキル置換環状基を形成することができる。1つの特定の実施態様では、有機アミノシランは、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0015】
他の1つの態様において、次の工程を含む、原子層堆積プロセスによって酸化ケイ素膜を形成する方法が与えられる:
a.反応器に基材を与える工程;
b.上記ケイ素含有前駆体の少なくとも1つとして用いる、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物から選択される少なくとも1種のケイ素前駆体を、上記反応器に導入する工程:
【化4】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
c.上記反応器をパージガスでパージする工程;
d.酸素源を上記反応器に導入する工程;
e.上記反応器をパージガスでパージする工程;及び
f.上記膜の所望の厚みが得られるまで、b〜eの工程を繰り返す工程。
本明細書に記載された1つの特定の実施態様では、有機アミノシランは、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0016】
さらなる態様において、次の工程を含む、CVDプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面に酸化ケイ素膜を形成する方法が与えられる:
a.反応器に基材を与える工程;
b.次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、上記反応器に導入する工程:
【化5】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);及び
c.酸素源を提供して、上記少なくとも1つの表面に上記酸化ケイ素膜を堆積する工程。
本明細書に記載された1つの特定の実施態様では、有機アミノシランは、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0017】
他の1つの態様では、次の工程を含む、原子層堆積プロセスによって窒化ケイ素を形成する方法が与えられる:
a.反応器に基材を与える工程;
b.上記ケイ素含有前駆体の少なくとも1つとして、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、上記反応器に導入する工程:
【化6】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
c.上記反応器をパージガスでパージする工程;
d.窒素含有源を上記反応器に導入する工程;
e.上記反応器をパージガスでパージする工程;及び
f.上記窒化ケイ素膜の所望の厚みが得られるまで、b〜eの工程を繰り返す工程。
本明細書に記載された1つの特定の実施態様では、有機アミノシラン前駆体は、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0018】
さらなる態様では、CVDプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面に窒化ケイ素膜を形成する方法が与えられる:
a.反応器に基材を与える工程;
b.上記ケイ素含有前駆体の少なくとも1つとして、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を、上記反応器に導入する工程:
【化7】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
c.窒素含有源を提供する工程であって、上記少なくとも1種の有機アミノシラン及び上記窒素含有源を反応させて、ケイ素と窒素との両方を含む上記膜を上記少なく少なくとも1つの表面に堆積させる工程。
本明細書に記載された1つの特定の実施態様では、有機アミノシランは、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0019】
他の1つの態様について、式A、B及びCを有する1種以上の有機アミノシラン又はこれらの混合物を含む、ケイ素含有膜を堆積させるための容器が、本明細書に記載される。1つの特定の実施態様では、その容器は、CVDプロセス又はALDプロセス用の反応器への1種以上の前駆体の供給を可能とするのに適切なバルブ及び治具を備えた、少なくとも1つの耐圧容器(好ましくはステンレス鋼製)を含む。
【0020】
さらなる他の1つの実施態様では、次を含む、ケイ素含有膜堆積用の前駆体組成物が与えられる:
次の式A、B及びCを有する有機アミノシラン又はこれらの混合物
【化8】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);及び
エーテル、第三級アミン、ニトリル、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル及びこれらの混合物からなる群より選択される、溶媒。
本明細書に記載した前駆体組成物の1つの特定の実施態様では、有機アミノシランは、式Aの前駆体を含み、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基から選択され、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
有機アミノシラン、シラン又はケイ素含有前駆体を、前駆体として用いて、化学量論的なケイ素含有膜及び非化学量論的なケイ素含有膜、例えば限定されないが、酸化ケイ素、酸炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素及び酸窒化炭化ケイ素を形成する。また、これらの前駆体を、例えば、金属含有膜のためのドーパントとして用いることもできる。有機アミノシラン前駆体は、通常、高純度の揮発性液体前駆体化学物質であり、これらを気化させ、そして堆積チャンバー又は反応器にガスとして提供して、CVD又はALDプロセスによって、半導体デバイス用のケイ素含有膜を堆積させる。堆積のための前駆体材料の選択は、所望の生成誘電体材料又は生成誘電体膜に依存する。例えば、前駆体材料を、その化学元素の内容、化学元素の化学量論比及び/又はCVD下で形成する生成ケイ素含有膜若しくは生成ケイ素含有コーティングに関して、選択することができる。また、前駆体材料を、様々な他の特徴、例えばコスト、比較的低い毒性、取扱い性、室温で液相を維持する性能、揮発性、分子量及び/又は他の考慮事項に関して選択することができる。ある種の実施態様では、本明細書に記載した前駆体を、堆積チャンバー又は反応器への前駆体の液相での提供を可能とするあらゆる手段で反応器システムに提供することができ、好ましくは適切なバルブ及び治具を備えた耐圧ステンレス鋼容器を用いて、反応器システムに提供することができる。
【0023】
本明細書に記載した前駆体は、CVD又はALDの前駆体としてそれらを理想的に適切とする、反応性及び安定性のバランスを示す。反応性に関して、ある種の前駆体では沸点が高すぎて、気化させ、そして反応器に提供して基材に膜として堆積させることができない場合がある。比較的高い沸点を有する前駆体では、供給容器及び供給ラインを前駆体の沸点以上に加熱して、容器、ライン又はこの両方への凝縮物又は粒子の形成を防ぐ必要がある。安定性に関して、他の前駆体は、分解するにしたがって、シラン(SiH
4)を形成する場合がある。シランは、室温で自然発火性であり、又はそれは自発的に燃焼することがあり、これは安全性の問題と取扱いの問題を提示する。さらに、シラン及び他の副生成物の形成は、前駆体の純度を低下させる。また、1〜2%程の小さな化学的純度の変化が、信頼性のある半導体製造のためには許容できないものとみなされる場合がある。ある種の実施態様では、本明細書の記載した式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体は、6ヶ月以上又は1年以上の期間で保存した後に、2wt%未満、1wt%未満又は0.5wt%未満の副生成物(例えば、対応するビス−シランの副生成物)を含み、これは保存安定性を示す。上記の利点に加えて、ある種の実施態様、例えばALD堆積法又はPEALD堆積法を用いて酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜を堆積する実施態様では、本明細書に記載された有機アミノシラン前駆体は、比較的低い堆積温度で、例えば500℃以下、400℃以下、300℃以下、200℃以下、100℃以下又は50℃以下で、高密度材料を堆積できる場合がある。
【0024】
1つの態様において、次の式A、B又はCによって表される、ある種の前駆体又は有機アミノシランが与えられる:
【化9】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環若しくは複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。)。
式Aのある種の実施態様においては、R及びR
1は、結合して環状基又はアルキル置換環状基を形成することができる。1つの特定の実施態様では、有機アミノシラン前駆体は、式Aを有する化合物であり、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基であり、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0025】
式Aの有機アミノシランのある種の実施態様では、R
1及びR
2は、共に結合して環を形成することができる。これらの実施態様又は他の実施態様では、環は、複素環を含む。この環、あるいは複素環は、飽和している場合があり、又は不飽和の場合がある。
【0026】
式Aの有機アミノシランの別の実施態様では、R
1及びR
2は、環を形成するための結合を共にしない。
【0027】
式Cのある種の実施態様では、R、R
2及びR
1のいずれか1つ以上は、結合して環状基を形成することができる。これらの実施態様では、環状基は、炭素環又は複素環となることができる。この環状基は、飽和している場合があり、又は不飽和の場合がある。
【0028】
式Cの他の実施態様では、R及びR
1、又はR、R
2及びR
1のいずれか1つ以上は、それぞれ環状基を形成するための結合をしない。
【0029】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「アルキル」は、1〜20、1〜10、3〜10又は1〜6の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の官能基を意味する。典型的な直鎖アルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基が挙げられる。ある種の実施態様では、アルキル基は、自身に結合している1つ以上の官能基、例えば限定されないが、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はこれらの組み合わせを有する場合がある。他の実施態様では、アルキル基は、自身に結合する1つ以上の官能基を有さない。アルキル基は、飽和している場合が有り、又は不飽和の場合がある。
【0030】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「環状アルキル」は、4〜20又は5〜10の原子を有する環状基を意味する。典型的な環状アルキル基としては、限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が挙げられる。ある種の実施態様では、環状アルキル基は、C
1〜C
10の直鎖の置換基、分岐鎖の置換基、又は酸素原子若しくは窒素原子を有する置換基の1以上を有することがある。この実施態様又は他の実施態様では、環状アルキル基は、置換基として、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルコキシ基、例えばメチルシクロヘキシル基又はメトキシシクロヘキシル基、の一以上を有することがある。
【0031】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「アリール」は、5〜10の炭素原子又は6〜10の炭素原子を有する芳香族の環状官能基を意味する。典型的なアリール基としては、限定されないが、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo−トリルが挙げられる。
【0032】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「アルケニル基」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有し、且つ2〜20、2〜10又は2〜6の炭素原子を有する基を意味する。
【0033】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合しているアルキル基であって(例えばR−O)、1〜20、1〜12又は1〜6の炭素原子を有することができるアルキル基を意味する。典型的なアルコキシ基としては、限定されないが、メトキシ(−OCH
3)、エトキシ(−OCH
2CH
3)、n−プロポキシ(−OCH
2CH
2CH
3)及びイソ−プロポキシ(−OCHMe
2)が挙げられる。
【0034】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、本明細書で用いられる場合、用語「不飽和」は、1以上の炭素二重結合若しくは三重結合を有する官能基、置換基、環又は架橋を意味する。不飽和環の例は、限定されないが、芳香環、例えばフェニル環となることができる。用語「飽和」は、1以上の炭素二重結合若しくは三重結合を有さない官能基、置換基、環又は架橋を意味する。
【0035】
式A、B及びCにおいて、また明細書を通じて、用語「アルキルアミノ基」は、窒素原子に結合している1つ以上のアルキル基を有し、且つ1〜20、2〜12又は2〜6の炭素原子を有する基を意味する。アルキルアミノ基の例は、限定しないが、ピペリジン基となることができる。
【0036】
ある種の実施態様では、式A、B又はC中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリール基及び/又は芳香族基の1つ以上を、置換することができ、又は例えば水素原子の代わりに置換した1つ以上の原子若しくはその原子の基を有することができる。典型的な置換基の例としては、限定されないが、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、I又はBr)、窒素及びリンが挙げられる。他の実施態様では、式A、B又はC中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノアルキル基、芳香族基及び/又はアリール基の1つ以上を、置換しなくてよい。
【0037】
ある種の実施態様では、式A、B又はCを有する上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体は、酸素原子を有する1以上の置換基を有する。これらの実施態様では、堆積プロセスの間の酸素源の必要性を回避することができる。他の実施態様では、式A、B又はCを有する前記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体は、酸素原子を含む置換基を1つ以上有し、かつ酸素源も用いる。
【0038】
本明細書に記載したケイ素化合物の1つの種類は、有機アミノシラン前駆体で有り、これは以下の式Aによって示される:
【化10】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。)。
式Aを有する有機アミノシラン前駆体の他の1つの実施態様において、Rは、置換基を有する又は有さない芳香族基であり、かつR
1は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基である。式Aを有する化合物の1つの特定の実施態様では、ここでRは、C
5〜C
6の環状アルキル基であり、かつR
1は、直鎖又は分岐鎖のC
1〜C
3のアルキル基及びC
5〜C
6の環状アルキル基からなる群より選択される。
【0039】
式Aのさらなる実施態様において、R及びR
1は、結合して、ピロール、アルキル置換ピロール、イミダゾ−ル、アルキル置換イミダゾ−ル、ピラゾール、又はアルキル置換ピラゾールの1つ以上から誘導された、5員又は6員の複素環式の、置換した芳香環若しくは非置換の芳香環を形成することもできる。このような実施態様の例としては、限定されないが、N−シリルピロール(表3、no.24)、N−シリル−2,5−ジメチルピロール(表3、no.19)及び1−シリル−7−アザインドール(表3、no.27)が挙げられる。
【0040】
式Aのさらなる実施態様において、R及びR
1は、結合して、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、又はこれらのアルキル置換誘導体の1つ以上から誘導された、5員又は6員の複素環式の、置換した脂肪族環若しくは非置換の脂肪族環を形成することもできる。このような実施態様の例としては、限定されないが、2,6−ジメチルモルホリノシラン(表3、no.10)、2−メチルピロリジノシラン(表3、no.12)及びN−シリルデカヒドロキノリン(表3、no.16)が挙げられる。
【0041】
式Aのさらなる実施態様において、R及びR
1は、同じ置換基で有り、そして有機アミノシランは対称的な分子となるが、R及びR
1は、次の基とはならない:エチル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ペンチル及びsec−ペンチル。そのような実施態様の例としては、限定されないが、ジシクロヘキシルアミノシラン(表3、no.7)が挙げられる。
【0042】
式Aの他の実施態様において、R及びR
1は、異なる置換基であり、そして有機アミノシランは非対称の分子となる。そのような実施態様の例としては、限定されないが、N−プロピル−イソプロピルアミノシラン(表3、no.4)、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン(表3、no.5)、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン(表3、no.5)、アリルフェニルアミノシラン(表3、no.15)、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン(表3、no.17)、アリルシクロペンチルアミノシラン(表3、no.18)、フェニルシクロヘキシルアミノシラン(表3、no.22)及び2−(N−シリルメチルアミノ)ピリジン(表3、no.25)が挙げられる。
【0043】
酸化ケイ素層の製造に用いるのに適切な有機アミノシラン前駆体の第二の種類は、次の式Bによって表されるような、1つの窒素原子からぶらさがっている2つのシリル基を有する有機アミノシランである:
【化11】
式Bにおいて、Rは、フェニル以外のC
6〜C
10の置換若しくは非置換の芳香族基;置換若しくは非置換のC
3〜C
10の環状アルキル基;直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換のC
2〜C
10のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシアルキル基;又はC
1〜C
10のアルキルアミノ基若しくはジアルキルアミノ基から選択される。Rは、非置換のtert−ブチル、t−ペンチル又はシクロヘキシル基以外の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換のC
4〜C
10のアルキル基となることもできる。
【0044】
式Bのある種の実施態様では、Bは、置換したC
5〜C
10の芳香族基であり、この芳香族基は、次の1つ以上で置換されている:アルキル基、アルケニル基、アミノ基又はアルコキシ基。そのような実施態様の例としては、限定されないが、N−(4−メトキシフェニル)ジシラザン(表4、no.11)、N−(3−メトキシフェニル)ジシラザン(表4、no.12)、N−(2−メトキシフェニル)ジシラザン(表4、no.13)、 N−(4−クロロフェニル)ジシラザン(表4、no.14)、N−(2−クロロフェニル)ジシラザン(表4、no.15)、N−(2−エチルフェニル)ジシラザン(表4、 no.21)、N−(2,6−ジエチルフェニル)ジシラザン(表4、no.22)、 N−(2−プロピルフェニル)ジシラザン(表4、no.23)、N−(4−t−ブチルフェニル)ジシラザン(表4、no.24)、N−(4−イソ−プロピルフェニル)ジシラザン(表4、no.25)、N−(2−イソ−プロピルフェニル)ジシラザン(表4、 no.26)、N−(3−エチルフェニル)ジシラザン(表4、no.30)、N−(4−sec−ブチルフェニル)ジシラザン(表4、no.31)、N−(4−ビニルフェニル)ジシラザン(表4、no.32)、N−(3−メチルフェニル)ジシラザン(表4、 no.33)、N−(4−メチルフェニル)ジシラザン(表4、no.34)、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)ジシラザン(表4、no.35)、及びN−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ジシラザン(表4、no.36)が挙げられる。
【0045】
式Bのある種の実施態様では、Rは、C
5〜C
10の複素環基であり、この複素環基は、N又はOを環内に有しており、かつ次の1つ以上で置換されている:アルキル基、アルケニル基、アミノ基又はアルコキシ基。そのような実施態様の例としては、限定されないが、1−N−(2−ピリジル)ジシラザン(表4、no.1)、N,N−ジシリル−2−アミノピリミジン(表4、no.2)、N−(4−メチル−2−ピリジル)ジシラザン(表4、no.16)、N−(6−メチル−2−ピリジル)ジシラザン(表4、no.17)、N−(3−メチル−2−ピリジル)ジシラザン(表4、no.18)、N−(5−メチル−2−ピリジル)ジシラザン(表4、no.19)及びN−[2−(4−メチルピリミジノ)アミノ]ジシラザン(表4、no.37)が挙げられる。
【0046】
式Bのある種の実施態様では、Rは、置換されたC
2〜C
10のアルキル基であり、このアルキル基は、次の1つ以上で置換されている:ヘテロ原子(例えば、N、Cl、O)、アルキル基、芳香族基、アルキル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基。そのような実施態様の例としては、限定されないが、N−t−ペンチルジシラザン(表4、no.6)、N−(2−ジメチルアミノ−1−メチルエチル)ジシラザン(表4、no.7)、N−(2−ジメチルアミノエチル)ジシラザン(表4、no.8)、N−(1−シクロヘキシルエチル)ジシラザン(表4、no.27)、N,N−ジシリルクミルアミン(表4、no.29)、N−[3,3−ジメチルブチル−2]ジシラザン(表4、no.39)、N,N−ジシリル−2−ピコリルアミン(表4、no.40)、N,N−ジシリル−2−(2−ピリジル)エチルアミン(表4、no.41)及びN,N−ジシリル−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン(表4、no.42)が挙げられる。
【0047】
第三の種類の有機アミノシラン化合物は、次の式Cによって表される:
【化12】
式Cにおいて、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の、炭素環基若しくは複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環若しくは複素環;SiR
2;又はSiH
2を表す。ある種の実施態様では、R及びR
1は同じである。別の実施態様では、R及びR
1は異なる。R
2基は、窒素原子を架橋する。R
2が単結合である実施態様では、これは、化合物中のN原子に直接的に結合するN原子となることができる。ある種の実施態様では、R
2基は、窒素原子の間の単結合にすぎない。別の実施態様では、R
2基は、架橋する基となることができ、例えばSiR
2、SiH
2、鎖、環、又はC
1〜C
10の直鎖アルキル基若しくはC
3〜C
10の分岐鎖アルキル基となることができる。式Cのさらなる実施態様では、R及びR
1は共に結合することができる。その実施態様では、式CのR及びR
1は、炭素−炭素の単結合若しくは二重結合、又は酸素原子若しくは窒素原子による結合の形成によって、複素環基に結合することができる。
【0048】
理論に拘束されないが、有機アミノシラン前駆体、例えば1以上の−SiH
3基を有し、かつ本明細書に記載した式A、B及びCを有する有機アミノシラン前駆体は、ヒドロキシル化している半導体表面に反応するための比較的低い活性化障壁、比較的少ない不純物及び堆積後の比較的高いフィルム密度の点で、SiH
2又はSiHを有する他の有機アミノシラン前駆体よりも、有利である。しかし、−SiH
3基を有するある種の有機アミノシラン前駆体、例えば、ジメチルアミノシラン(DMAS)又はジエチルアミノシラン(DEAS)は、不均化反応を経て自然発火性のシラン、及びそれぞれビス(ジメチルアミノ)シラン又はビス(ジエチルアミノ)シランを形成するので、熱的に安定ではない。さらに、これらの特定の有機アミノシラン前駆体を用いて堆積させた膜は、窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素のネットワーク中に適切なレベル及び種類の炭素を含み、これは一定の誘電率を維持しながら、ウェットのエッチングレートを大幅に低下させることを可能とすると考えられる。
【0049】
ある種の実施態様では、有機溶媒又は溶媒混合物中で、モノハロゲン化シラン(XSiH
3、ここでX=Cl,Br又はI)又は低級分子のジアルキルアミノシラン、例えばジ−イソ−プロピルアミノシランと、次の表1(式A)及び表2(式B及びC)で与えられる1種以上のアミンとを反応させることによって、式A、B又はCを有する有機アミノシランを調製することができる。
【0052】
次の式(1)〜(6)は、本明細書に記載した式A、B又はCを有する有機アミノシランを作るために用いることができる反応機構又は合成ルートの例を与える。式(1)〜(6)において、置換基R、R
1及びR
2は、式A、B又はCに関して本明細書に記載したものと同じであり;Mは、Li、N又はKであり;かつXは、Cl、Br又はIであり;式(5)のR’は、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基から選択される。さらに、式(2)でR’
3Nを用いて、RR
1N−HClの代りにR’
3N−HClを形成して、RR
1NHの用いる量を減らすこともできる。式(1)〜(6)の反応機構を、有機溶媒を用いて(例えば、有機溶媒の存在下で)又は有機溶媒を用いずに、実行することができる。有機溶媒を用いる実施態様において、適切な有機溶媒の例としては、限定されないが、炭化水素、例えばヘキサン、オクタン、トルエン及びテトラヒドロフラン(THF)を挙げることができる。これらの実施態様又は他の実施態様において、反応温度は、約−70℃から、溶媒を用いる場合には用いる溶媒の沸点までの範囲である。生成する有機アミノシランを、全ての副生成物と共に存在する場合には溶媒を除去した後、減圧蒸留によって精製することができる。式(1)〜(5)は、式A又はBを有する前駆体を作るための異なる実施態様である。式(5)は、式Bの化合物をより適切に作るための式(2)の変形である。式(6)は、式Cに関する合成方法を表している。
【0054】
ケイ素含有膜又はケイ素含有コーティングを形成するために用いる方法は、堆積プロセスである。本明細書で開示した方法に関して適切な堆積プロセスの例としては、限定されないが、サイクリックCVD(CCVD)、MOCVD(有機金属CVD)、熱化学気相成長、プラズマ強化化学気相成長(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)、高密度PECVD、光支援CVD(photon assisted CVD)、プラズマ−光支援(PPECVD)、低温化学気相成長、化学支援気相成長(chemical assisted vapor deposition)、ホットフィラメント化学気相成長、液体ポリマー前駆体のCVD、超臨界流体からの堆積、及び低エネルギーCVD(LECVD)が挙げられる。ある種の実施態様では、金属含有膜を、原子層堆積(ALD)プロセス、プラズマ強化ALD(PEALD)プロセス、又はプラズマ強化サイクリックCVD(PECCVD)プロセスによって堆積させる。本明細書で用いられる場合、用語「化学気相成長プロセス」は、基材表面で反応及び/又は分解して所望の堆積物を生成する1種以上の揮発性前駆体に、基材を曝露する、あらゆるプロセスについて言及している。本明細書で用いられる場合、用語「原子層堆積プロセス」は、様々な組成の基材に膜の材料を堆積させる、自己制限的な(例えば、各反応サイクルで堆積する膜材料の量が一定である)、順次的な表面化学反応について言及している。本明細書で用いられる前駆体、試薬及び物質源は、「ガス状」として記載される場合があるが、前駆体は、不活性ガスを用いて又は不活性ガスを用いずに、直接気化、バブリング又は昇華によって、反応器に輸送される、液体又は固体のいずれかであってよいことが理解される。いくつかの場合では、揮発した前駆体は、プラズマ発生器を通過することができる。1つの実施態様では、ケイ素含有膜を、ALDプロセスを用いて堆積させる。他の一つの実施態様では、ケイ素含有膜を、CCVDプロセスを用いて堆積させる。さらなる実施態様では、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積させる。本明細書で用いる場合、用語「反応器」は、限定しないが、反応チャンバー又は堆積チャンバーを含む。
【0055】
ある種の実施態様では、本明細書に開示した方法は、反応器に導入する前に且つ/又は導入中に、前駆体を分離しておくALD法又はCCVD法を用いることによって、前駆体の前反応を回避する。これに関連して、堆積技術、例えばALDプロセス又はCCVDプロセスを用いて、ケイ素含有膜を堆積させる。1つの実施態様では、基材表面を、ケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、又は他の前駆体若しくは試薬の1種以上に交互に曝露することによって、ALDプロセスを通じて、膜を堆積させる。膜の成長は、表面反応の自己制限的な制御、各前駆体又は試薬のパルス長さ、及び堆積温度によって進む。しかし、基材の表面が飽和すると、膜の成長は停止する。
【0056】
上述したように、ある種の実施態様、例えばALD堆積法又はPEALD堆積法を用いて酸化ケイ素膜又は窒化ケイ素膜を堆積する実施態様では、本明細書に記載した式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体は、比較的低い堆積温度で、例えば500℃以下、400℃以下、300℃以下、200℃以下、100℃以下、50℃以下又は室温で、膜を堆積することができる場合がある。これらの実施態様又は他の実施態様では、基材(堆積)温度は、次の任意の1つ以上の端点を範囲とすること、又は沸点の差を範囲とすることができる:25℃、50℃、100℃、200℃、300℃、400℃又は500℃。これらの範囲の例は、限定されないが、25〜50℃、100〜300℃又は100〜500℃である。
【0057】
ある種の実施態様において、本明細書に記載した方法は、上記式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体以外の、1種以上の追加のケイ素含有前駆体をさらに含む。追加のケイ素含有前駆体の例としては、限定されないが、有機ケイ素化合物、例えばシロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)及びジメチルシロキサン(DMSO));有機シラン(例えばメチルシラン、ジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジシリルメタン、2,4−ジシラペンタン、1,4−ジシラブタン、2,5−ジシラへキサン、2,2−ジシリルプロパン、1,3,5−トリシラシクロヘキサン及びこれら化合物のフッ素化された誘導体);フェニル含有有機ケイ素化合物(例えば、ジメチルフェニルシラン及びジフェニルメチルシラン);酸素含有有機ケイ素化合物(例えば、ジメチルジメトキシシラン;1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン;1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン;1,3,5,7−テトラシラ−4−オキソ−へプタン、2,4,6,8−テトラシラ−3,7−ジオキソ−ノナン、2,2−ジメチル−2,4,6,8−テトラシラ−3,7−ジオキソ−ノナン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、[1,3,5,7,9]−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7−テトラシラ−2,6−ジオキソ−シクロオクタン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,3−ジメチルジシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン及びこれら化合物のフッ素化された誘導体)が挙げられる。
【0058】
堆積方法に応じて、ある種の実施態様では、1種以上のケイ素含有前駆体を、所定のモル体積で又は約0.1〜約1000マイクロモルで、反応器に導入することができる。この実施態様又は他の実施態様では、ケイ素含有前駆体及び/又は有機アミノシラン前駆体を、所定の時間間隔で反応器に導入することができる。ある種の実施態様では、その時間間隔は、約0.001〜約500秒の範囲となる。
【0059】
ある種の実施態様では、本明細書に記載した方法を用いて堆積させるケイ素含有膜を、酸素源、試薬又は酸素を含む前駆体を用いて、酸素の存在下で形成させる。酸素源は、少なくとも1種の酸素源の形態で反応器に導入させることができ、且つ/又は堆積プロセスで用いる他の前駆体に付随して存在させることができる。適切な酸素源ガスとしては、例えば水(H
2O)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、水プラズマ、酸素(O
2)、過酸化物(O
3)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、NO、NO
2、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)及びこれらの組合せを挙げることができる。ある種の実施態様では、酸素源は、約1〜約2000sccm又は約1〜約1000sccmの範囲の流量で反応器に導入する酸素源を含む。酸素源を、約0.1秒〜約100秒の範囲の時間で導入することができる。1つの特定の実施態様では、酸素源は、10℃以上の温度を持つ水を含む。膜をALDプロセス又はサイクリックCVDプロセスによって堆積させる実施態様において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス時間を有することができ、且つ酸素源が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができ、さらに水のパルス時間が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができる。さらなる他の1つの実施態様では、パルスとパルスの間のパージ時間は、0秒程度まで小さくすることができ、又はその間にパージをしないで連続的なパルスにすることができる。酸素源又は試薬を、分子の総量について、ケイ素前駆体に対する比を1:1より小さくして与えて、それにより少なくとも一定量の炭素を、堆積させるケイ素含有膜に保持させる。
【0060】
ある種の実施態様では、ケイ素含有膜は、ケイ素及び窒素を含む。これらの実施態様では、本明細書に記載した方法を用いて堆積させるケイ素含有膜を、窒素含有源の存在下で形成させる。窒素含有源は、少なくとも1種の窒素含有源の形態で反応器に導入させることができ、且つ/又は堆積プロセスで用いる他の前駆体に付随して存在させることができる。適切な窒素含有源としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ及びこれらの混合物が挙げられる。ある種の実施態様において、窒素含有源は、約1〜約2000sccm又は約1〜約1000sccmの範囲の流量で反応器に導入するアンモニアプラズマ、又は水素/窒素プラズマ源ガスを含む。窒素含有源を、約0.1秒〜約100秒の範囲の時間で導入することができる。膜をALDプロセス又はサイクリックCVDプロセスによって堆積させる実施態様において、前駆体パルスは、0.01秒超であるパルス時間を有することができ、且つ窒素含有源が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができ、さらに水のパルス時間が、0.01秒未満であるパルス時間を有することができる。さらなる他の1つの実施態様では、パルスとパルスとの間のパージ時間は、0秒程度まで小さくすることができ、又は間にパージをしないで連続的なパルスにすることができる。
【0061】
本明細書で開示した堆積方法は、1種以上のパージガスを伴う場合がある。未反応の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために用いるパージガスは、不活性ガスであり、これは前駆体と反応しない。典型的なパージガスとしては、限定されないが、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H
2)及びこれらの混合物が挙げられる。ある種の実施態様では、パージガス、例えばArを、約0.1秒〜1000秒の間に、約10〜約2000sccmの範囲の流量で反応器に供給することができ、それにより反応器に残留している場合がある未反応の材料及びあらゆる副生成物を、パージすることができる。
【0062】
前駆体、酸素源、窒素含有源並びに/又は他の前駆体、他の物質源ガス及び/若しくは試薬を供給する各工程を、それらを供給する時間を変えることによって実行し、生成ケイ素含有膜の化学両論的な組成を変えることができる。
【0063】
エネルギーを、前駆体、窒素含有源、還元剤、他の前駆体又はこれらの組合せの少なくとも1つに適用して、反応を誘導し、そしてケイ素含有膜又はケイ素含有コーティングを基材に形成させる。そのようなエネルギーは、限定されないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子線、光子、リモートプラズマ法及びこれらの組合せによって与えることができる。ある種の実施態様では、二次高周波(secondary rf frequency)源を用いて、プラズマ特性を基材表面で変えることができる。堆積にプラズマを伴う実施態様では、プラズマ生成プロセスは、プラズマを反応器で直接的に生成させる直接プラズマ生成プロセス、あるいはプラズマを反応器の外部で生成させて反応器に供給するリモートプラズマ生成プロセスを、含むことができる。
【0064】
有機アミノシラン前駆体及び/又は他のケイ素含有前駆体を、反応チャンバー、例えばCVD反応器又はALD反応器に、様々な方法で提供することができる。1つの実施態様では、液体提供システムを用いることができる。別の実施態様では、液体提供プロセスとフラッシュ気化プロセスが組み合わされたユニット、例えばターボ気化器(MSP Corporation製、ショアビュー、ミネソタ州、米国)を用いて、低揮発度物質を容量分析的に供給することを可能とする。これは、前駆体の熱的分解のない状態で再現性のある輸送及び堆積をもたらすことができる。液体提供配合物又は液体提供組成物中において、本明細書に記載された前駆体は、そのままの液体形態で提供することができ、あるいは、この前駆体を含む溶媒配合物中又は組成物中で使用することができる。それゆえ、ある種の実施態様において、その前駆体配合物は、基材上に膜を形成する特定の最終用途において所望であり且つ有利となるような、適切な特性を有する溶媒成分を含むことができる。
【0065】
本明細書に記載した式A、B又はCを有する有機アミノシラン及び溶媒を含む組成物中で、式A、B又はCを有する前駆体を用いる実施態様に関して、選択する溶媒又は溶媒混合物は、その有機アミノシランと反応しない。その組成物中の重量%による溶媒の量は、0.5〜99.5wt%又は10〜75wt%の範囲である。この実施態様又は他の実施態様において、溶媒は、式A、B又はCの有機アミノシランの沸点(b.p.)に近いb.p.を有し、又は溶媒のb.p.と式A、B又はCの有機アミノシランのb.p.との差は、40℃以下、30℃以下、20℃以下、又は10℃である。あるいは、その沸点の差は、次を任意の端点とする範囲になる:0℃、10℃、20℃、30℃又は40℃。b.p.差の適切な範囲の例としては、限定されないが、0〜40℃、20〜30℃、又は10〜30℃である。組成物中の適切な溶媒の例としては、限定されないが、エーテル(例えば、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル)、第三級アミン(例えば、ピリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、ニトリル(例えば、ベンゾニトリル)、アルキル炭化水素(例えば、オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、メシチレン)、第三級アミノエーテル(例えば、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル)又はこれらの混合物が挙げられる。非限定的ないくつかの典型的な組成物の例としては、限定されないが、ジ−イソ−プロピルアミノシラン(b.p.約116℃)及びオクタン(b.p.125〜126℃)を含む組成物;ジ−イソ−プロピルアミノシラン(b.p.約116℃)及びピリジン(b.p.115℃)を含む組成物;ジ−イソ−プロピルアミノシラン(b.p.約 116℃)及びトルエン(b.p.110℃)を含む組成物;N−メチルシクロヘキシルアミノシラン(b.p.約171℃)及びデカン(b.p.174℃)を含む組成物;N−メチルシクロヘキシルアミノシラン(b.p.約171℃)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(b.p.162℃)を含む組成物;N−イソ−プロピルシクロヘキシルアミノシラン(b.p.約199℃)及びビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(b.p.189℃)を含む組成物;N−イソ−プロピルシクロヘキシルアミノシラン(b.p.約199℃)及びベンゾニトリル(b.p.191℃)を含む組成物が挙げられる。
【0066】
他の1つの実施態様における、式A、B又はCを有する1種以上の有機アミノシラン前駆体を含むケイ素含有膜を堆積するための容器について、本明細書で記載する。1つの特定の実施態様では、その容器は、CVDプロセス又はALDプロセスのための反応器に1種以上の前駆体を提供することを可能とするための適切なバルブ及び治具を備えた、少なくとも1つの耐圧容器(好ましくはステンレス鋼製)を有する。この実施態様又は他の実施態様では、式A、B又はCの有機アミノシラン前駆体を、ステンレス鋼から構成された耐圧容器で与え、そしてその前駆体の純度は、大部分の半導体用途に適切となる98wt%以上、又は99.5wt%以上である。ある種の実施態様では、そのような容器が、前駆体と、望むのであれば1種以上の追加の前駆体とを混合するための手段を有することもできる。これらの実施態様又は他の実施態様では、容器の内容物を、追加の前駆体と事前に混合することができる。あるいは、有機アミノシラン前駆体及び/又は他の前駆体を、別個の容器に保持することができ、又は有機アミノシラン前駆体と他の前駆体との分離を保存中に維持するための分離手段を有する単一の容器に、保持することができる。
【0067】
上述したように、有機アミノシランの純度は、信頼性のある半導体の製造を可能とするのに十分に高い。ある種の実施態様では、本明細書に記載した式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体は、次の不純物の1種以上を2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下で有する:遊離アミン、ハロゲン化物及び比較的高い分子量の物質。本明細書に記載した有機アミノシランの比較的高い純度は、次の1以上のプロセスを通じて得ることができる:精製、吸着及び/又は蒸留。
【0068】
本明細書に記載した方法の1つの実施態様では、サイクリック堆積プロセス、例えばCCVD、ALD又はPEALDを用いることができ、ここでは、式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体から選択される少なくとも1種のケイ素含有前駆体、及び随意に窒素含有源、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマを用いることができる。
【0069】
本明細書に記載したある種の実施態様では、堆積プロセスで還元剤を用いる。還元剤の例としては限定されないが、水素、ヒドラジン又は水素プラズマが挙げられる。
【0070】
ある種の実施態様では、前駆体容器から反応チャンバーに連結するガスラインを、プロセスの必要性に応じて、1以上の温度に加熱し、式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体の容器を、バブリングのために1以上の温度で維持する。他の実施態様では、式A、B又はCを有する少なくとも1種のケイ素含有前駆体を含有する溶液を、直接液体注入(direct liquid injection)のために1以上の温度で維持した気化器に注入する。
【0071】
アルゴン及び/又は他のガスの流れを、キャリアガスとして用いて、前駆体パルスの間の反応チャンバーへの少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体の蒸気の提供を促進することができる。ある種の実施態様では、反応チャンバーのプロセス圧力は、約1Torrである。
【0072】
典型的なALD又はCCVDプロセスでは、基材、例えば酸化ケイ素基材を、反応チャンバー内のヒーター台で加熱し、これを始めにケイ素含有前駆体にさらして、錯体を基材の表面に化学的に吸着させる。
【0073】
パージガス、例えばアルゴンは、未吸着の余分な錯体をプロセスチャンバーからパージする。十分なパージの後で、窒素含有源を、反応チャンバーに導入して、吸着した表面と反応させた後で、他の1つのパージガスによって、チャンバーから反応副生成物を除去することができる。このプロセスサイクルを、所望の膜厚さを得るように繰り返すことができる。
【0074】
この実施態様、又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法の工程を、様々な順番で実行でき、順次的に又は同時に(例えば、他の1つの工程の少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び窒素含有前駆体源ガスを提供するそれぞれの工程を、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成するケイ素含膜の化学量論的組成を変えることができる。
【0075】
本明細書に開示した方法の他の1つの実施態様では、ケイ素及び窒素の両方を含有する膜を、次の工程を含むALD堆積法を用いて形成する:
基材をALD反応器に与える工程;
上記ALD反応器に、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体又はこれらの混合物を導入する工程:
【化14】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体を、基材に化学吸着させる工程;
未吸着の上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体を、パージガスを用いてパージする工程;
窒素含有源を、加熱した上記基材上の上記有機アミノシラン前駆体に与えて、上記吸着した少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と反応させる工程;及び
随意に、あらゆる未反応の窒素含有源をパージする工程。
【0076】
本明細書に開示した方法の他の1つの実施態様では、次の工程を含むALD堆積法を用いて、シリコン含有膜を形成する:
基材を反応器に与える工程;
上記反応器に、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体又はこれらの混合物を導入する工程:
【化15】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体を、基材に化学吸着させる工程;
上記未吸着の少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体を、パージガスを用いてパージする工程;
酸素含有源を、加熱した上記基材上の上記有機アミノシラン前駆体に与えて、上記吸着した少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と反応させる工程;及び
随意に、あらゆる未反応の酸素含有源をパージする工程。
【0077】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様において、アモルファスシリコン膜、結晶性シリコン膜又はこれらの組合せであるケイ素含有膜を堆積するために、有機アミノシラン前駆体を用いる。これらの実施態様では、次の工程を含む、ALD及びサイクリックCVDから選択される堆積法を用いて、ケイ素含有膜を形成する:
周囲温度から約700℃の範囲の温度に加熱され、かつ1Torr以下の圧力で維持されている反応器に基材を置く工程;
上記反応器に、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体又はこれらの混合物を導入する工程:
【化16】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
水素、水素プラズマ及び塩化水素からなる群より少なくとも1種選択される還元剤を、上記反応器に導入して、上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させて、そして1以上の上記基材にケイ素含有膜を堆積する工程。
【0078】
本明細書に記載した方法に関して、上記の工程は1サイクルを構成し;このサイクルを、所望の厚みのケイ素含有膜を得るまで繰り返すことができる。この実施態様又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法の工程を、様々な順番で実行することができ、順次的に又は同時に(例えば、他の1つの工程の少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び酸素源を提供するそれぞれの工程を、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成するケイ素含有膜の化学量論的組成を変えることができる。ただし、ここでは、利用可能なケイ素に対して、常に酸素を化学量論量よりも少なくして用いる。
【0079】
多成分のケイ素含有膜に関して、他の前駆体、例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、酸素源、還元剤及び/又は他の試薬を、反応チャンバーに交互に導入することができる。
【0080】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様では、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積させる。この実施態様では、この方法は、次のステップを含む:
周囲温度から約700℃までの範囲の温度に加熱し、且つ1Torr以下の圧力で維持した反応器に、1以上の基材を置くステップ;
次の式A、B及びC又はこれらの組合せを有する少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体を導入するステップ:
【化17】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基;C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基;C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);
酸素源を、上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして上記1以上の基材にケイ素含有膜を堆積させるステップ。
このCVD法のある種の実施態様では、上記反応器を、上記導入ステップの間に100mTorr〜600mTorrの範囲の圧力で維持する。
【0081】
本明細書に記載した方法に関して、上記のステップは1サイクルを構成し;このサイクルを、ケイ素含有膜の所望の厚みを得るまで繰り返すことができる。この実施態様又は他の実施態様において、本明細書に記載した方法のステップを、様々な順番で実行することができ、順次的に又は同時に(例えば、他の1つのステップの少なくとも一部の間に)実行でき、そしてこれらのあらゆる組合せで実行することができると理解される。前駆体及び酸素源を提供するそれぞれのステップを、それらを供給するための時間の持続時間を変えることによって実行して、生成するケイ素含有膜の化学量論的組成を変えることができる。ただし、ここでは、利用可能なケイ素に対して、常に酸素を化学量論量よりも少なくして用いる。
【0082】
多成分のケイ素含有膜に関して、他の前駆体、例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、酸素源、還元剤及び/又は他の試薬を、反応チャンバーに交互に導入することができる。
【0083】
本明細書に記載した方法のさらなる実施態様では、ケイ素含有膜を、熱CVDプロセスを用いて堆積させる。この実施態様では、この方法は、次のステップを含む:
周囲温度から約700℃までの範囲の温度に加熱し、且つ1Torr以下の圧力で維持した反応器に、1以上の基材を配置するステップ;
少なくとも1種のケイ素含有前駆体として用いる、次の式A、B及びCを有する少なくとも1種の有機アミノシラン又はこれらの混合物を導入するステップ:
【化18】
(式中、Rは、C
1〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は式Cにおいては置換基のある若しくは置換基のないシリル基から独立して選択され;R
1は、C
3〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基;C
3〜C
10の環状アルキル基;C
5〜C
10の芳香族基;C
3〜C
10の飽和若しくは不飽和の複素環基;水素原子;C
2〜C
10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基;C
1〜C
10のアルコキシ基;C
1〜C
10のアルキルアミノ基;又は置換基のあるシリル基から独立して選択され;かつR
2は、単結合;飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖であって炭素数が1〜10の範囲の炭化水素鎖;飽和若しくは不飽和の炭素環又は複素環;SiR
2;又はSiH
2を表し;かつ式A中のR及びR
1は、結合して環状基を形成することもできる。);及び
窒素含有源を、上記反応器に与えて、上記少なくとも1種の有機アミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、そして上記1以上の基材にケイ素含有膜を堆積させるステップ。
このCVD法のある種の実施態様では、上記反応器を、上記導入ステップの間に100mTorr〜600mTorrの範囲の圧力で維持する。
【0084】
ある種の実施態様では、本明細書に記載した式A、B又はCを有する有機アミノシラン前駆体を、金属含有膜、例えば限定されないが、金属酸化物膜又は金属窒化物膜のドーパントとして用いることもできる。これらの実施態様では、金属含有膜を、ALDプロセス又はCVDプロセス、例えば本明細書に記載したプロセスによって、金属アルコキシド前駆体、金属アミド前駆体又は有機金属前駆体を用いて堆積する。本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な金属アルコキシド前駆体の例としては、限定されないが、第3族〜第6族の金属アルコキシド、アルコキシ配位子とアルキル置換したシクロペンタジエニル配位子との両方を有する第3族〜第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とアルキル置換したピロリル配位子との両方を有する第3族〜第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とジケトナート配位子との両方を有する第3族〜第6族の金属錯体、アルコキシ配位子とケトエステル配位子との両方を有する第3族〜第6族の金属錯体が挙げられ;本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な金属アミド前駆体の例としては、限定されないが、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert−ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル (TBTDET)、tert−ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert−ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert−アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル (TAIMAT)、tert−アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、tert−アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン及びこれらの組合せが挙げられる。本明細書に開示した方法と共に用いることができる適切な有機金属前駆体の例としては、限定されないが、第3族金属シクロペンタジエニル又は第3族金属アルキルシクロペンタジエニルが挙げられる。ここでの典型的な第3族〜第6族金属としては、限定されないが、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu、Ti、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWが挙げられる。
【0085】
ある種の実施態様では、生成するケイ素含有膜又はコーティングを、堆積後処理、例えば限定されないが、プラズマ処理、化学的処理、紫外線照射、電子線照射、及び/又は膜の1つ以上の特性に影響を与える他の処理にさらすことができる。
【0086】
ある種の実施態様では、本明細書に記載したケイ素含有膜は、6以下の誘電率を有する。これらの実施態様又は他の実施態様では、膜は、約5以下、約4以下又は約3.5以下の誘電率を有する場合がある。しかし、他の誘電率(例えば、より高い値又は低い値)を有する膜を、膜の所望の最終用途に応じて形成できることが想定される。本明細書に記載した有機アミノシラン前駆体及びプロセスを用いて形成されるケイ素含有膜の例は、式Si
xO
yC
zN
vH
wを有し、ここで、原子百分率重量%で、Siは約10〜約40%の範囲を有し;Oは約0%〜約65%の範囲を有し;Cは約0%〜約75%又は約0%〜約50%の範囲を有し;Nは約0%〜約75%又は約0%〜約50%の範囲を有し;Hは約0%〜約50%の範囲を有し、且つx+y+z+v+w=100原子重量%であり、これは例えばXPS又は他の手段で測定される。
【0087】
上述したように、本明細書に記載した方法を用いて、ケイ素含有膜を、基材の少なくとも一部に堆積させることができる。適切な基材の例としては、限定されないが、ケイ素、SiO
2、Si
3N
4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化した炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化した窒化ケイ素、炭化窒化ケイ素、水素化した炭化窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料、金属(例えば銅及びアルミニウム)、及び拡散バリア層(例えば限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWN)が挙げられる。この膜は、様々な続く処理ステップ、例えば化学機械平坦化(CMP)処理及び異方性エッチング処理と適合する。
【0088】
堆積させた膜は、限定されないが、コンピューターチップ、光学デバイス、磁気情報ストレージ、支持材料又は支持基材へのコーティング、微小電気機械素子(MEMS)、ナノ電気機械素子、薄膜トランジスター(TFT)及び液晶ディスプレイを含む用途を有する。
【0089】
次の実施例は、有機アミノシラン前駆体の調製方法と共に、本明細書に記載した堆積させたケイ素含有膜の調製方法を例証し、決して限定することを意図していない。
【実施例】
【0090】
例1:N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン及び式Aを有する他の有機アミノシラン前駆体の合成
500mlのシュレンクフラスコで、247.3g(1.75mol)のN−イソプロピルシクロヘキシルアミン及び229.9g(1.75mol)のジ−イソプロピルアミノシランを、窒素下で8日間還流させた。副生成物のジ−イソプロピルアミンを、40mmHgの圧力及び50℃で減圧除去した。減圧分留により、50gの純粋なN−イソプロピルシクロヘキシルアミノシランを得た。示差走査熱量計(DSC)によって測定される通常の沸点(1気圧で測定される)は、約199℃である。最終生成物を、質量分析(MS)によって特徴付けた。これを
図1に与えるが、これは特に171(M+)、156(M−CH
3)でピークを有する。
【0091】
2つの10ccのステンレス鋼のアンプルを、入念に洗浄し、そして使用前に175℃で焼付けをした。5gのN−イソプロピルシクロヘキシルアミンのサンプルを、グローブボックス内で個々にアンプルに装填した。そして、これらのアンプルを、80℃±2℃で設定している実験室用オーブンを用いて、一週間及び二週間間隔で、一定温度の環境内に貯蔵した。これらのサンプルを、ガスクロマトグラフィー(GC)によって評価して、分解の範囲を測定した。GCの結果は、一週間で約0.20wt%及び二週間で約0.27wt%のみ分析値が低下したことを示し、これが優れた安定性を有すること、及び信頼性のある半導体プロセスに関して適切な前駆体として使用できることを示した。
【0092】
式Aのさらなる有機アミノシラン前駆体を、ジ−イソ−プロピルアミノシラン及び表1に与えられた次の1種以上のアミンを用いて、本明細書に記載した式(1)の反応機構に従って作製した。式Aを有する所望の有機アミノシラン前駆体を、減圧蒸留によって得て、そして質量分析(MS)によって特徴付けた。その同一性を確認するために、それぞれの有機アミノシラン前駆体の分子量(MW)、構造及び対応するMSフラグメンテーションピークを表3に与える。
【0093】
【表5】
【表6】
【表7】
【0094】
例2:N−2−ピリジルジシラザン及び式Bを有する他の有機アミノシラン前駆体の合成
500mlのシュレンクフラスコで、57(0.5mol)の2−アミノピリジン及び196.5g(1.5mol)のジ−イソプロピルアミノシランを、周囲温度において窒素雰囲気下で12時間攪拌した。比較的低い沸点の副生成物ジ−イソプロピルアミンを、20mmHgの圧力及び室温(25℃)で減圧除去した。反応混合物を、さらに12時間攪拌した。生成物のN−2−ピリジルジシラザン(65g、収率84.5%)を、60℃の沸点で、6mmHgで減圧蒸留によって得た。最終生成物を、質量分析(MS)によって特徴付けた。これを、
図1に与える。これは、特に153(M−CH
3)、123(M−SiH
3)、121、106、94及び80でピークを示している。N−2−ピリジルジシラザンの分子量は、154.32であった。
【0095】
さらなる有機アミノシラン前駆体を、ジ−イソ−プロピルアミノシラン及び表2(式B)に与えられた次の1種以上のアミンを用いて、本明細書に記載した式(5)の反応機構に従って作製して、反応混合物を与えた。この反応混合物を、周囲温度において窒素雰囲気下で12時間攪拌する。選ばれるアミンの選択は、所望の生成する最終生成物の前駆体に影響した。例えば、N−アダマンチルジシラザンを、ジ−イソ−プロピルアミノシラン及び1−アダマンチルアミンを含む反応混合物から作製した。比較的低い沸点の副生成物ジ−イソプロピルアミンを、20mmHgの圧力及び室温(25℃)で減圧除去した。反応混合物を、さらに12時間攪拌した。式Bを有する所望の有機アミノシラン前駆体を、減圧蒸留によって得た。最終生成物を、質量分析(MS)によって特徴付けた。その同一性を確認するために、それぞれの最終生成物のピーク及び分子量(MW)を表4に与える。
【0096】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0097】
例3:N,N’−ジシリル−トランス−2,5−ジメチルピペリジン及び式Cを有する他の有機アミノシラン前駆体の合成
500mlのシュレンクフラスコで、57(0.5mol)のトランス−2,5−ジメチルピペリジン及び196.5g(1.5mol)のジ−イソプロピルアミノシランを、周囲温度において窒素雰囲気下で12時間攪拌した。比較的低い沸点の副生成物ジ−イソプロピルアミンを、20mmHgの圧力及び室温(25℃)で減圧除去した。反応混合物を、さらに12時間攪拌した。生成物のN,N’−ジシリル−トランス−2,5−ジメチルピペリジン(78g、収率90%)を、54℃の沸点で、10mmHgで減圧蒸留によって得た。最終生成物を、質量分析(MS)によって特徴付けた。これを、
図2に与える。これは、特に174(M+)、159(M−CH
3)、143(M−SiH
3)、131、117、100、83、72及び58でピークを示している。N,N’−ジシリル−トランス−2,5−ジメチルピペリジンの分子量は、174.39であった。
【0098】
ジ−イソ−プロピルアミノシラン及び表2(式B又はC)に与えられた次の1種以上のアミンを用いて、さらなる有機アミノシラン前駆体を本明細書に記載した式(6)の反応機構に従って作製して、反応混合物を与えた。この反応混合物を、周囲温度において窒素雰囲気下で12時間攪拌する。選ばれるアミンの選択は、所望の生成する最終生成物の前駆体に影響した。例えば、N,N’−ジ(2−ピリミジノ)トリシラザンを、ジ−イソ−プロピルアミノシラン及び2−アミノピリジンを含む反応混合物から作製した。比較的低い沸点の副生成物ジ−イソプロピルアミンを、20mmHgの圧力及び室温(25℃)で減圧除去した。反応混合物を、さらに12時間攪拌した。式Cを有する所望の有機アミノシラン前駆体を、減圧蒸留によって得た。最終生成物を、質量分析(MS)によって特徴付けた。その同一性を確認するために、それぞれの最終生成物のピーク及び分子量(MW)を表5に与える。
【0099】
【表12】
【表13】
【0100】
例4:式Aの前駆体の相対的な化学的安定性のコンピューターシミュレーション
堆積プロセスに関する前駆体候補物質の熱安定性を理解するために、次の式Aの前駆体について量子力学計算を実行した:N−シリルデカヒドロキノリン、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン及びジシクロヘキシルアミノシラン。密度汎関数理論(DFT)を用いて量子力学計算結果を得て、次のスクランブリング反応の速度論挙動及び熱力学挙動を評価した:
2SiH
3L→SiH
4+SiH
2L
2
(式中、L=デカヒドロキノリン基、N−メチルシクロヘキシルアミノ基、N−エチルシクロヘキシルアミノ基、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノ基及びジシクロヘキシルアミノ基である)。
シリンダーのヘッドスペースでの圧力上昇によって、安全性に潜在的な危険があるシラン(SiH
4)が形成するという実験的な証拠によって、この特定の反応がシミュレーションのために選ばれた。この反応は、最終生成物としてSiX
4及びSiH
4を生成する一連の類似の工程において、速度制限的であると第一にかつ一般的に受け入れられている。Accelrys 社のMaterials Studio(商標)のDmol
3モジュールで実行されるような、二重数値分極基底関数(double numerical polarized basis set)及び4.0
oAのグローバルカットオフ(global cutoff)と共に(B. Delley, J. Chem. Phys. 92, 508 1990; B. Delley, J. Chem. Phys. 113, 7756 2000)、B88交換汎関数(Becke, Phys. Rev. A 38, 3098 1988)及びLYP相関汎関数(Lee Yang Parr, Phys. Rev. B 37, 785 1988)からなるBLYP密度関数を用いて全ての電子近似について計算を行った。
【0101】
計算結果を表6に与える。全ての反応が熱的に好ましく、又は熱的に中立に近いことが、表6から理解できる(これは、反応エネルギーE
rxnが負又はゼロに近いことから示唆される)。また、表6は窒素原子に結合する炭素原子の嵩高さが高くなることが、スクランブリング反応の活性化エネルギーEaを高めることを示しており、これは、反応速度を低下させることで、この熱分解機構に関して熱安定性を向上させることを示唆している。活性化エネルギーを高めることは、反応物と生成物との間のエネルギー障壁を越えるのに十分なエネルギーを有する分子をより少なくする(そうでない場合には、この形成が熱力学的に有利となるであろう)。この結果は、一定の温度での化学反応の減速となり、あるいはこの機構による分解が一定の速度に到達するのに必要な温度の上昇となる。
【0102】
【表14】
【0103】
例5:酸化ケイ素膜の原子層堆積
酸化ケイ素膜の原子層堆積を、次の式Aの前駆体を用いて行った:N−メチルシクロヘキシルアミノシラン、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン、及びN−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン。堆積を、実験室スケールのALDプロセスツールで行った。全てのガス(例えば、パージガス、反応ガス又は前駆体及び酸素源)を、堆積ゾーンに入る前に100℃に余熱した。ガス及び前駆体の流量を、高速作動するALDダイアフラムバルブで制御した。堆積に用いた基材は、基材の温度を確認するためにサンプルホルダーに取り付けた熱電対を有する12インチの長さのシリコンストリップであった。酸素源ガスとしてオゾンを用いて、400サイクルを基準として用いて、堆積を行った。また、堆積のプロセスパラメーターを表7に与える。
【0104】
【表15】
【0105】
生成したSiO
2膜を、堆積速度及び屈折率に関して特徴付けた。膜の厚み及び屈折率を、エリプソメーター(FilmTek 2000SE)を用いて、膜からの反射データを所定の物理的モデル(例えば、ローレンツ振動子モデル)にフィッティングすることによって、測定した。屈折率に関して、おおよそ1.44〜1.47の値が、通常のCVDの酸化ケイ素膜を反映するであろう。試験した全ての前駆体は、約1.4〜約1.5の範囲の屈折率を有する膜を堆積させた。
【0106】
酸化ケイ素膜をALDによって、150℃の基材温度で、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン及びオゾンを用いて堆積させた。オゾンの流れを4秒で5000sccmに固定しながら、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン前駆体を、17Torrで1秒〜15秒の範囲のパルス時間を用いて供給した。
図7は、N−メチルシクロヘキシルアミノシランの膜に関する堆積速度が、前駆体のパルス時間に依存しないことを示しており、2Å/サイクルでの自己制限的な挙動を示している。この膜の屈折率は、1.45〜1.47であり、これは通常の酸化ケイ素膜のものである。
【0107】
酸化ケイ素膜をALDによって、75℃、100℃及び150℃の温度で、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン及びオゾンを用いて堆積させた。オゾンの流れを4秒で5000sccmに固定しながら、N−メチルシクロヘキシルアミノシラン前駆体を、17Torrで2秒間供給した。表8は、基材温度の関数としての堆積速度を与える。
【0108】
酸炭化ケイ素膜をALDによって、45℃〜150℃の範囲の温度で、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン及びオゾンを用いて堆積させた。オゾンの流れを4秒で5000sccmに固定しながら、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン前駆体を、9Torrで2秒間供給した。表8は、基材温度の関数としての堆積速度を与える。堆積した膜の屈折率も表8に与える。N−エチルシクロヘキシルアミノシランで堆積した膜の屈折率は、温度を上げると1.60から1.45に低下した。屈折率が高いほど、酸化ケイ素膜中により多い炭素ドーパントの存在が示唆される。
【0109】
酸炭化ケイ素膜をALDによって、45℃〜300℃の範囲の様々な温度で、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン及びオゾンを用いて堆積させた。オゾンの流れを2秒で5000sccmに固定しながら、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン前駆体を、3Torrで4秒間供給した。表8は、基材温度の関数としての堆積速度を与える。堆積した膜の屈折率も表8に与える。N−エチルシクロヘキシルアミノシランで堆積した膜の屈折率は、温度を上げると1.77から1.50に低下した。N−メチルシクロヘキシルアミノシラン、N−エチルシクロヘキシルアミノシラン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシランを用いて堆積させた膜に関する堆積速度対温度の比較を、表8に与える。イソプロピルのような比較的大きなR置換基は、堆積プロセス中に立体障害を与え、これは、比較的低い堆積速度と共に、比較的多くの炭素の包含をもたらすということを表8は示している。このことは、メチルのような比較的小さなR置換基を用いる場合よりも高い屈折率によって証明されている。しかし、ALD条件を調整することによって、例えばオゾン以外の酸化剤を用いることによって、炭素含量を低くできる可能性が高く、これはN−エチルシクロヘキシルアミノシラン又はN−イソプロピルシクロヘキシルアミノシランを用いて、高純度の酸化ケイ素を堆積させることを可能とする。
【0110】
【表16】