(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-173353(P2017-173353A)
(43)【公開日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】光変調器、及び光変調器を用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20170901BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-55655(P2016-55655)
(22)【出願日】2016年3月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA03
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA16
2K102EA26
2K102EB12
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】
ディザ信号が印加されるバイアス電極と、光導波路内を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を同一基板上に備える光変調器において、当該光検出器により検出されるディザ信号成分強度の検知精度を向上して、安定なバイアス制御を行う。
【解決手段】
圧電効果を有する基板(102)と、当該基板上に形成された光導波路(116a等)と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極(158a等)と、前記基板上に形成され、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器(168a等)と、を備え、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝播する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段(190等)が配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電効果を有する基板と、
当該基板上に形成された光導波路と、
当該光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、
前記基板上に形成され、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている、
光変調器。
【請求項2】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に設けられた金属膜で構成される、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記金属膜は、前記光検出器が接続される電極である、請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に塗布された樹脂で構成される、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に形成された金属膜で構成される、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項6】
前記抑制手段は、前記光検出器のエッジ部周辺の前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1、3、又は5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光変調器を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、及び光変調器を用いた光送信装置に関し、特にバイアス電極と、出射光を監視する光検出器と、を同一基板上に形成した光変調器、及びそのような光変調器を用いた光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調器を組み込んだ光送信装置が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO
3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調器は、インジウムリン(InP)、シリコン(Si)、あるいはガリウム砒素(GaAs)などの半導体系材料を用いた変調器に比べて、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLNを用いた光変調器では、マッハツェンダ光導波路と、変調信号である高周波信号を光導波路に印加するためのRF電極部と、当該光変調器における変調特性を良好に保つため種々の調整を行うためのバイアス電極と、が形成されている。このようなバイアス電極として、例えば、環境の温度変化等に起因するバイアス点の変動(いわゆる温度ドリフト現象)を補償すべく光導波路に電界を印加するためのバイアス電極や、光位相調整を行うためのバイアス電極がある。
【0004】
一方、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっている。
【0005】
QPSK変調を行う光変調器(QPSK変調器)やDP−QPSK変調を行う光変調器(DP−QPSK変調器)は、ネスト型の複数のマッハツェンダ光導波路を備え、複数の高周波信号電極及び複数のバイアス電極を備えることから(例えば、特許文献1参照)、デバイスサイズが大型化する傾向があり、特に小型化の要請が強い。
【0006】
従来、このような小型化のための技術として、各電極と光導波路との間の相互作用を高めて、長さの短い電極でも駆動電圧を低減することのできる方法が提案されている。例えば、各導波路に対し、バイアス電極をプッシュ用電極とプル用電極とで構成される櫛形電極(又は、すだれ状電極)として構成し、バイアス電極に印加すべき電圧(バイアス電圧)を低減する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図13は、従来のDP−QPSK変調器の構成の一例を示す図である。このDP−QPSK変調器1300は、例えばZカットのLN基板1302上に形成されたネスト型のマッハツェンダ光導波路(図示太線の点線)と、電極(図示ハッチング部分)とで構成されている。この光変調器では、レーザダイオード等の光源(不図示)からの光が図示右方向から入射し、変調された光が図示左方向から出射する。出射した光は、例えば空間光学系により合波されて、光伝送路につながった光ファイバに入射される。
【0008】
光導波路は、図示右方向からの入射光を受ける入射導波路1304と、当該入射導波路を伝搬する光を分岐する光分岐部1306と、光分岐部1306で分岐されたそれぞれの光を変調する2つのマッハツェンダ光導波路部1310a、1310b、で構成されている。
【0009】
マッハツェンダ光導波路部1310aは、入射導波路1312aと、当該入射導波路1312aを伝搬する光を分岐する光分岐部1314aと、光分岐部1314aで分岐されたそれぞれの光を伝搬させる平行導波路1316a、1318aと、当該平行導波路1316a、1318aを伝搬した光を合波する合波部1320aと、当該合波部1320aで合波された光を外部へ出射する出射導波路1322aと、を有する。また、マッハツェンダ光導波路部1310aは、上記平行導波路1316a及び1318aの一部にそれぞれ形成されたマッハツェンダ光導波路1330a(図示点線で示す矩形内の部分)、1332a(図示2点鎖線で示す矩形内の部分)を有する。
【0010】
マッハツェンダ光導波路1330aの平行導波路1334a、1336aの光出射側(図示左方)と、マッハツェンダ光導波路1332aの平行導波路1338a、1340aの光出射側(図示左方)と、には、それぞれ、電極1342a、1344aで構成されるバイアス電極1346aと、電極1348a、1350aで構成されるバイアス電極1352aが形成されている。また、マッハツェンダ光導波路部1310aの平行導波路1316a、1318aの光出射側(図示左方)には、電極1354a、1356aで構成されるバイアス電極1358aが形成されている。
【0011】
マッハツェンダ光導波路部1310bの構成は、図示のとおり、マッハツェンダ光導波路部1310aの構成と同様である。これにより、光変調器1300は、符号1346a、1352a、1358a、1346b、1352b、1358bで示される6個のバイアス電極を備える。また、光変調器1300には、4つのマッハツェンダ光導波路1330a、1332a、1330b、1332bの8本の平行導波路1334a、1336a、1338a、1340a、1334b、1336b、1338b、1340b上に、それぞれ電極1370、1372、1374、1376、1378、1380、1382、1384、1386で構成されるRF電極も形成されている。
【0012】
ここで、バイアス電極1346a、1352a、1346b、1352bは、それぞれ、マッハツェンダ光導波路1330a、1332a、1330b、1332bで構成された光変調器のバイアス点を調整するためのバイアス電極であり、バイアス電極1358a及び1358bは、それぞれ、出射導波路1322a及び1322bから出射される光の位相を調整するためのバイアス電極である。
【0013】
また、光変調器1300では、バイアス点調整や位相調整のために各バイアス電極1346a、1352a、1358a、1346b、1352b、1358bに印加すべき電圧を低減すべく、これらのバイアス電極が、図示のように櫛形電極として構成されている。
【0014】
ところで、光変調器を実用装置に組み込んで使用する際には、上記温度ドリフトを補償して光伝送特性を良好な状態に維持すべく、バイアス点の変動が生じないようにバイアス電圧を正確に制御する必要がある。このため、温度ドリフトを補償するためのバイアス電極には、バイアス点の変化を検出するための低周波信号(ディザ信号)と、当該変化を補償してバイアス点を所定値に戻すための直流電圧(DCバイアス電圧)と、が印加される。
【0015】
すなわち、ディザ信号をバイアス電極に印加しつつ、光変調器から出力される光信号を光検出器によりモニタし、当該光信号に含まれる当該ディザ信号の強度が最小となるように当該バイアス電極に印加するDCバイアス電圧を調整することで、温度ドリフト等のバイアス点の変化が補償される。
【0016】
このようなDCバイアス電圧の制御のための光検出器は、例えば、
図13に示すように、出射導波路1322a、1322bを伝搬する出射光(変調光)の一部を分岐する分岐導波路1360a、1360bの一部(すなわち、分岐導波路1360a、1360bが形成されたLN基板1302の表面の一部)にそれぞれ配された光検出器1362a、1362bとして実現され得る。光検出器1362a及び1362bの出力は、それぞれ、電極1364a、1366aで構成されるモニタ電極1368a、及び電極1364b、1366bで構成されるモニタ電極1368b、を介して光変調器1300の外部へ出力される。
【0017】
図14は、分岐導波路1360aを伝搬する光の一部を光検出器1362aに入射させるための構成の例を、光検出器1362aが実装されたLN基板1302の部分の、分岐導波路1360aに沿った断面で示した図である。
図14(a)に示す構成では、分岐導波路1360a上に光検出器1362aが配され、光検出器1362aは分岐導波路1360aに対し透明樹脂1400により接着されている。この構成においては、分岐導波路1360aからしみだした光(エバネッセント光)を、光検出器1362aの図示下部エッジ付近に配された受光器(不図示)により入射させて受信している。また、
図14(b)に示す構成では、分岐導波路1360a´上部のLN基板1302´の表面に凹凸部1402を設けて表面粗さを粗くし、分岐導波路1360a´を伝搬する光を当該表面において散乱させて基板外に放射させ、当該放射させた光を光検出器1362aに入射させて受信している。また、
図14(c)に示す構成では、分岐導波路1360a´´が形成されたLN基板1302´´の表面部分に溝1404を形成し、分岐導波路1360a´´を伝搬する光を当該溝の壁面から出射させ、当該出射させた光を光検出器1362aに入射させて受信している。
【0018】
バイアス電極1358a等に印加する上記ディザ信号の周波数は、特に、RF電極に印加される高周波信号よりも低い周波数であって、当該高周波信号に影響が出ないような周波数が選択される。また、バイアス電極が複数使用されている場合には、どのバイアス電極に印加されたディザ信号かを判別しやすいように、バイアス電極毎に異なる周波数のディザ信号が用いられる。
【0019】
この場合、各デバイス電極に印加さるディザ信号は、RF信号周波数(通常は数十GHz)に影響を与えないこと、互いの周波数が近接していないこと、必要な速度のフィードバック制御を行い得ること、等を考慮して数kHzから数百MHzの範囲で選択される。
【0020】
上記の構成を有する従来の光変調器は、一般には、温度ドリフト等が良好に補償されて適切に動作し得る。しかしながら、上記のように複数のバイアス電極を使用する光変調器(例えばDP−QPSK変調器)では、単一のバイアス電極を備える光変調器では見られなかったバイアス電圧制御についての新たな問題が発生し得る。この問題は、複数のバイアス電極を用いる光変調器に特徴的であり、以下のような現象が観測されている。
・一のバイアス電極にディザ信号を印加すると、一つ又は複数の他のバイアス電極における光特性制御(位相調整や温度ドリフト補償)が不安定になる場合がある。この場合、他のバイアス電極に加えて、当該一のバイアス電極でも上記不安定現象が観測される場合がある。
・上記不安定現象は、隣り合った又は接近したバイアス電極間だけでなく、隣り合っていないバイアス電極間や、接近していないバイアス電極間においても発生し得る。
・上記不安定現象は、光変調器の周囲の環境温度に依存して発生したりしなかったりすることがある。
・上記不安定現象は、ディザ信号の周波数を別の周波数に変更すると解消される場合がある。
・上記不安定現象は、各バイアス電極にDC電圧のみを印加した場合には発生しない。
【0021】
上記の不安定現象は、「近接した電極間で発生する電気的な干渉」では説明できない現象であって、長らくその要因は分かっていなかった。
【0022】
本願発明の発明者は、複数のバイアス電極を備える光変調器におけるバイアス制御動作の上記不安定現象を詳細に検討した結果、当該不安定現象の原因が、LN基板上のバイアス電極にディザ信号が印加されることにより発生する表面弾性波(Surface Acoustic Wave : SAW)である、との知見を得た。すなわち、LN基板上に形成された一のバイアス電極にディザ信号が印加されると、基板素材であるLNが有する圧電効果により基板表面に表面弾性波(Surface Acoustic Wave : SAW)が発生し、当該表面弾性波が基板表面を伝搬して他のバイアス電極に達することで、当該他のバイアス電極が上記一のバイアス電極に印加されたディザ信号を受信し、当該受信されたディザ信号が当該他のバイアス電極におけるバイアス制御動作に干渉を与えて悪影響を及ぼすのである。
【0023】
この表面弾性波は、基板表面を伝搬、反射、散乱する音波であって、近接しない離れたバイアス電極にも作用し、また温度変化による基板物性変化(特に、基板表面における音波の伝搬速度や、基板の線膨張)等によって、その強度や周波数が変化する。このため、隣り合っていない又は接近していないバイアス電極間でも上記不安定現象が生じ、また、環境温度に依存して上記不安定現象が発生したりしなかったりするのである。
【0024】
また、バイアス電極として櫛形電極を用いているため、櫛形電極に印加された電気信号が表面弾性波に変換される際の効率(例えば、印加された電気信号のパワーに対する、発生する表面弾性波のパワーの比)を表す電気音響変換効率が最大となる特性周波数に等しい周波数のディザ信号が当該バイアス電極に印加されたときに、上記不安定現象が顕著となる。そして、この特性周波数は、バイアス電極である櫛形電極の電極間隔により定まる。
【0025】
図15は、光変調器のバイアス電極に用いられ得る櫛形電極の構成の一例を示す図である。図示の櫛形電極1500は、2つの電極1502と1504とで構成され、電極1502、1504は、それぞれ、図示水平方向に互いに並行に延在する3本の電極1510、1512、1514、及び1520、1522、1524を有している(以下、電極1510、1512、1514、及び1520、1522、1524のような、櫛形電極が有する互いに並行な電極部分を、「櫛形電極を構成する電極」ともいう)。総計6本の電極1520、1510、1522、1512、1524、1514は、同じ電極幅hを持ち、間隙(電極間隙)aで隔てられている。従って、電極間隔(ピッチ)pは、次式(1)で与えられる。
【数1】
【0026】
このとき、櫛形電極1500の特性周波数f
0(すなわち、電気音響変換効率が最大となる周波数)は、次の式(2)で与えられる。
【数2】
ここで、vは、基板表面における表面弾性波の伝搬速度、λは、表面弾性波の波長である。換言すれば、電極間隔pを有する櫛形電極は、式(2)で示される特性周波数f
0を持ち、当該特性周波数f
0に等しい周波数を持つ電圧信号が印加されると、当該特性周波数f
0に等しい周波数の表面弾性波を強く励振する。逆に、特性周波数f
0を持つ櫛形電極に当該特性周波数f
0に等しい周波数の表面弾性波が入射すると、当該櫛形電極には当該特性周波数f
0に等しい周波数を持つ電気信号が強く誘導される。櫛形電極構造を有するバイアス電極では、当該誘導された電気信号が強い雑音信号となってバイアス制御動作に悪影響を与える。
【0027】
式(2)から明らかなように、特性周波数f
0は、電極幅h及び又は電極間隙aを変更して電極間隔pを変えることにより変化させることができる。
【0028】
弾性表面波の伝搬速度vは、基板に用いた材料の種類や、当該材料の分子配列(例えば結晶方位)に対する基板表面の方向、及び弾性表面波の伝搬方向、等に依存して異なる値を持つ。例えば、基板としてYカットのLN基板を用いた場合、Z方向に伝搬する弾性表面波では3500m/s程度、基板として128°YカットのLN基板を用いた場合、X方向に伝搬する弾性表面波では4000m/s程度の伝搬速度となる。
【0029】
電極幅hと電極間隙aとは、光導波路を伝搬する光波の横方向のフィールドパターンやフィールド径(通常約10μm程度)を考慮して定められる。
【0030】
例えば、電極間隔15μm、電極幅20μm、表面弾性波の速度が3500m/sの場合、特性周波数f
0は50MHz程度となる。この場合、図示の櫛形電極1500で構成されたバイアス電極に50MHzに近い周波数成分を持ったディザ信号が印加されると、強い表面弾性波が励振される。この表面弾性波は、当該櫛形電極1500を構成する電極(例えば電極1520)の長さ方向に対し直交する方向(図示上下方向)へ向かって基板表面を伝搬し、他のバイアス電極(櫛形電極)に達する。当該他のバイアス電極では、圧電効果によって当該表面弾性波が電気信号に変換され、上記周波数の雑音信号が生じて、バイアス制御動作に影響を受ける。
【0031】
他のバイアス電極が受ける影響の程度は、当該他のバイアス電極が、当該他のバイアス電極を構成する電極の長さ方向に対し直交する方向から上記弾性表面波が到来する位置に配され、且つ当該弾性表面波の周波数と同じ特性周波数を持っている場合に、最も強くなる。また、当該影響の程度は、当該他のデバイスの当該特性周波数における電気音響変換効率の値にも依存し、当該効率が大きいほど大きい。
【0032】
本願発明の発明者は、上記知見に基づき、表面弾性波を介したバイアス電極間の干渉を抑制又は低減するための新規な構成を考案し、当該構成が当該干渉の抑制に効果的であることを検証した(具体的構成については、特願2016−036962に記載されている)。
【0033】
しかしながら、
図13に示す光変調器1300のように、バイアス電極1358a等に印加されたディザ信号により変調された光信号(より具体的には、出射導波路1322aを伝搬する出射光)に含まれる当該ディザ信号成分の大きさを検知するための(バイアス点検出のための)光検出器1362a、1362bを基板1302上に設けた場合には、さらなる問題として、バイアス電極1358a等において発生した表面弾性波が、LN基板1302の基板表面を伝搬して光検出器1362a、1362bの実装領域まで達し、光検出器1362a、1362bにおいて受信される光のパワーに変動を生じさせ得る。
【0034】
すなわち、光検出器1362a、1362bは、
図14に示すように分岐導波路1360a、1360bの上部に近接して配置されるため、LN基板1302の表面を伝搬する表面弾性波が到来すると、光検出器1362a、1362bと分岐導波路1360a、1360bとの間の幾何学距離が僅かに変動することなり、当該僅かな幾何学距離の変動によって、分岐導波路1360a、1360bから出射して光検出器1362a、1362bにより受信される光の量(受信光量)が変動することとなり得る。
【0035】
また、光導波路に対し表面弾性波が作用すると、光弾性効果(圧力がかかると屈折率が変化する現象)等を介して伝搬光の状態が変化し、光検出器1362a、1362bにより受信される光の量が変動することとなり得る。
【0036】
この受信光量の変動は、伝搬する種々の表面弾性波の周波数成分(すなわち、バイアス電極1358a等に印加されたディザ信号の周波数成分)を含み、したがって、出射導波路1322aを伝搬する出射光(変調光)に含まれるディザ信号成分の強度についての、光検出器1362a、1362bにおける検知誤差を生じさせる。その結果、光検出器1362a、1362bを用いて行われるバイアス電圧制御動作(バイアス制御動作ともいう)に不安定現象が生じ、光変調器1300によって変調される光の伝送品質が悪化することとなる。
【0037】
そして、バイアス電極と同一の基板上に形成された光検出器における、このような表面弾性波に起因するディザ信号成分の検知誤差は、
図13に示すような複数のバイアス電極を含んで多くの表面弾性波を生じ得る光変調器において発生し得るのみならず、単一のバイアス電極のみを有する光変調器においても発生し得るものであり、当該検知誤差の低減を講じることが必要となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2010−237497号公報
【特許文献2】特開2003−233042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
上記背景より、バイアス電圧とディザ信号とが印加されるバイアス電極と、出射光に含まれるディザ信号成分の強度をモニタする光検出器と、を同一基板上に備える光変調器において、当該光検出器により検出されるディザ信号成分強度の検知誤差を低減して、バイアス制御動作の不安定現象を解消することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の一の態様は、光変調器である。本光変調器は、圧電効果を有する基板と、当該基板上に形成された光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、前記基板上に形成され、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を備え、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に設けられた金属膜で構成される。
本発明の他の態様によると、前記金属膜は、前記光検出器が接続される電極である。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に形成された金属膜で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器のエッジ部周辺の前記基板上に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器を備える光送信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調器の、表面弾性波抑制手段であるガードパターンの周辺の部分詳細図である。
【
図3】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第1の変形例を示す図である。
【
図4】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第2の変形例を示す図である。
【
図5】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第3の変形例を示す図である。
【
図6】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第4の変形例を示す図である。
【
図7】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第5の変形例を示す図である。
【
図8】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第6の変形例を示す図である。
【
図9】
図1に示す光変調器に用いることのできる、表面弾性波抑制手段の第7の変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図11】
図10に示す光変調器の、表面弾性波抑制手段である溝部の周辺の部分詳細図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【
図14】光変調器における、分岐導波路を伝搬する光の一部を光検出器に入射させるための構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、本実施形態に示す光変調器は、例えばDP−QPSK変調器であるが、本発明は、これに限らず、バイアス電極と、出射光(変調光)をモニタする(監視する)光検出器と、を同一基板上に備える種々のタイプの光変調器により実施することができる。
【0043】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。上述したように、本実施形態に係る光変調器100は、例えばDP−QPSK変調器であり、その基本構成は
図13に示す従来のDP−QPSK変調器1300と同様である。すなわち、本光変調器100は、例えばZカットのLN基板102上に形成されたネスト型のマッハツェンダ光導波路(図示太線の点線)と、電極(図示ハッチング部分)とで構成されている。この光変調器では、レーザダイオード等の光源(不図示)からの光が図示右方向から入射し、変調された光が図示左方向から出射する。出射した光は、例えば空間光学系により合波されて、光伝送路につながった光ファイバに入射される。
【0044】
光導波路は、図示右方向からの入射光を受ける入射導波路104と、当該入射導波路104を伝搬する光を分岐する光分岐部106と、光分岐部106で分岐されたそれぞれの光を変調する2つのマッハツェンダ光導波路110a、110bと、で構成されている。
【0045】
マッハツェンダ光導波路110aは、入射導波路112aと、当該入射導波路112aを伝搬する光を分岐する光分岐部114aと、光分岐部114aで分岐されたそれぞれの光を伝搬させる平行導波路116a、118aと、当該平行導波路116a、118aを伝搬した光を合波する合波部120aと、当該合波部120aで合波された光を外部へ出射する出射導波路122aと、を有する。また、マッハツェンダ光導波路110aは、上記平行導波路116a及び118aの一部にそれぞれ形成されたマッハツェンダ光導波路130a(図示点線で示す矩形内の部分)、132a(図示2点鎖線で示す矩形内の部分)を有する。
【0046】
マッハツェンダ光導波路130aの平行導波路134a、136aの光出射側(図示左方)と、マッハツェンダ光導波路132aの平行導波路138a、140aの光出射側(図示左方)と、には、それぞれ、電極142a、144aで構成されるバイアス電極146aと、電極148a、150aで構成されるバイアス電極152aが形成されている。また、マッハツェンダ光導波路110aの平行導波路116a、118aの光出射側(図示左方)には、電極154a、156aで構成されるバイアス電極158aが形成されている。そして、各バイアス電極146a、152a、158a、146b、152b、158bは、それぞれ、図示のように櫛形電極を構成している。
【0047】
マッハツェンダ光導波路110bの構成は、図示のとおり、マッハツェンダ光導波路110aの構成と同様である。また、光変調器100には、4つのマッハツェンダ光導波路130a、132a、130b、132bの8本の平行導波路134a、136a、138a、140a、134b、136b、138b、140b上に、それぞれ電極170、172、174、176、178、180、182、184、186で構成されるRF電極も形成されている。
【0048】
ここで、バイアス電極146a、152a、146b、152bは、それぞれ、マッハツェンダ光導波路130a、132a、130b、132bで構成された光変調器のバイアス点を調整するためのバイアス電極であり、バイアス電極158a及び158bは、それぞれ、出射導波路122a及び122bから出射される光の位相を調整するためのバイアス電極である。
【0049】
また、光変調器100は、さらに、合波部120a、120bからそれぞれ延在して出射導波路122a、122bを伝搬する出射光の一部をそれぞれ分岐する分岐導波路160a、160bと、分岐導波路160a、160bが形成されたLN基板102の基板面上に配された光検出器162a、162bと、を備える。ここで、光検出器162a、162bは、例えばホトダイオード(PD、Photo Diode)を光検出素子(不図示)として用いて構成されており、当該光検出素子により分岐導波路160a、160bからの光をそれぞれ検出すべく、当該光検出素子が分岐導波路160a、160bと対面する位置となるように配されている。
【0050】
また、光検出器162a、162bは、LN基板102の基板表面の、分岐導波路160a、160bが形成された部分に対し、例えば透明樹脂を用いた接着剤により固定されており、例えば
図14(a)に示す構成と同様に、それぞれ分岐導波路160a、160bからしみだした光(エバネッセント光)を受信する。
【0051】
光検出器162a及び162bの出力は、それぞれ、電極164a、166aで構成されるモニタ電極168a、及び電極164b、166bで構成されるモニタ電極168b、を介して光変調器100の外部へ出力される。
【0052】
特に、本実施形態の光変調器100は、LN基板102上の、表面弾性波を発生する櫛形電極構造を有するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162a、162bが配されている部分(又は領域)と、の間に、金属膜で構成されるガードパターン190がLN基板102上に形成されている。このガードパターン190は、LN基板102の表面を伝搬する表面弾性波の吸収体として作用し、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから生じて光検出器162a、162bの実装部分に到達する表面弾性波を抑制(又は阻止)する抑制手段(以下、表面弾性波抑制手段ともいう)を構成する。
【0053】
図2は、
図1に示す光変調器100のガードパターン190の周辺の部分詳細図である。ガードパターン190より図示右側の、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域から到来する表面弾性波(図示波線矢印により模式的に示す)は、ガードパターン190によって吸収され、光検出器162a、162bの実装部分への到達が阻止又は抑制される。なお、ガードパターン190は、表面弾性波を発生する櫛形電極構造を有するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162a、162bが配されている部分(又は領域)と、の間に配される限りにおいて、任意の位置に設けるものとすることができる。
【0054】
このガードパターン190は、例えば金(Au)を用いて構成することができ、ガードパターン190による表面弾性波の吸収効果は、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域から光検出器162a、162bが配されている領域に向かう方向に沿って測ったガードパターン190の幅d20が広いほど高く、またガードパターン190の膜厚が厚いほど高い。したがって、ガードパターン190のサイズ(厚さを含む)は、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の強度に応じて決定することが好ましい。特に、ガードパターン190の幅d20は、表面弾性波を効果的に吸収する観点から少なくとも表面弾性波の波長より長いことが望ましく、従って、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の最も長い波長λmaxより広いこと(すなわち、d20≧λmax)が特に望ましい。
【0055】
また、一般に、光導波路上に金属膜を形成した場合、当該光導波路を伝搬する光が当該金属膜により吸収されて減衰することが知られている。したがって、このような光の減衰を防止すべく、例えば、ガードパターン190とLN基板102の表面との間に、当該LN基板102上に形成された光導波路(例えば116a、116b等)よりも屈折率の低い材料(例えばSiO
2)を用いたバッファ層を形成するものとしてもよい。また、上記光の減衰を防止する他の構成として、
図1及び
図2に示すガードパターン190のうち、光導波路(例えば、116a、116b等)上に形成される部分を除去して、ガードパターン190を複数の金属膜部分で構成するものとしてもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、表面弾性波を発生するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162a、162bが配されている部分(領域)と、の間に、表面弾性波を吸収する金属膜で構成されたガードパターン190を、表面弾性波抑制手段として設けるものとしたが、これに限らず、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生して光検出器162a、162bに到達する表面弾性波を抑制又は阻止できる限りにおいて、種々の表面弾性波抑制手段を用いるものとすることができる。
【0057】
以下、本実施形態についての表面弾性波抑制手段の変形例を、
図3〜
図9を用いて説明する。
図3〜
図9には、ガードパターン190に代えて用いることのできる種々の表面弾性波抑制手段を示している。なお、
図3〜
図9では、光検出器162aの周辺部分を例にとり、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示しているが、
図3〜
図9に示す構成は、光検出器162bの周辺部分にも同様に適用して、光検出器162bに到達する表面弾性波を抑制又は阻止することができる。
【0058】
〔第1の変形例〕
まず、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第1の変形例について説明する。本変形例では、表面弾性波抑制手段として、ガードパターン190に代えて表面弾性波を吸収する樹脂が用いられている。
【0059】
図3は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図3において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0060】
図3に示す変形例では、表面弾性波抑制手段として、LN基板102上の、表面弾性波を発生する櫛形電極構造を有するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162aが配されている部分(領域)と、の間に、LN基板102上に樹脂390が塗布されている。この樹脂390は、LN基板102の表面を伝搬する表面弾性波の吸収体として作用し、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから生じて光検出器162aの実装部分に到達する表面弾性波を抑制又は阻止する表面弾性波抑制手段を構成する。樹脂390は、例えば、紫外線硬化型の接着剤及び又はエポキシ系の接着剤であるものとすることができる。
【0061】
なお、樹脂390による表面弾性波の吸収効果は、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域から光検出器162a、162bが配されている領域に向かう方向に沿って測った樹脂390の幅d30が広いほど高く、また樹脂390の厚さが厚いほど高い。したがって、樹脂390のサイズ(厚さを含む)は、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の強度に応じて決定することが好ましい。特に、樹脂390の幅d30は、表面弾性波を効果的に吸収する観点から少なくとも表面弾性波の波長より長いことが望ましく、従って、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の最も長い波長λmaxより広いこと(すなわち、d30≧λmax)が特に望ましい。
【0062】
〔第2の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第2の変形例について説明する。
図4は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図4において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0063】
本変形例では、
図4に示すように、表面弾性波抑制手段として、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域に対し光検出器162aの実装部分(又は実装領域)を囲うように、表面弾性表面波を吸収する金属(例えば金(Au))による矩形枠状のガードパターン490がLN基板102上に形成されている。このガードパターン490により、光検出器162aの四方から当該光検出器162aに到達する表面弾性波が効果的に抑制又は阻止される。
【0064】
ガードパターン490による表面弾性波の抑制(阻止)効果は、当該ガードパターン490を構成する帯状金属パターンの幅d40及び厚さに依存する。光検出器162aの周辺には、
図4に示すように当該光検出器162aに接続する電極164a、166a等が近接して配されるため、幅d40を十分大きく確保できない場合には、当該帯状金属パターンの厚さを厚くする必要がある。ただし、表面弾性波を効果的に抑制するためには、ガードパターン490を構成する帯状金属パターンの幅d40は、少なくとも到来する表面弾性波より長いことが望ましく、従って、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の最も長い波長λmaxより広いこと(すなわち、d40≧λmax)が特に望ましい。
【0065】
〔第3の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第3の変形例について説明する。
図5は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図5において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0066】
本変形例では、
図5に示すように、表面弾性波抑制手段として、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域に対し光検出器162aの実装部分(又は実装領域)を囲うように、表面弾性表面波を吸収する樹脂590がLN基板102上に塗布されている。この樹脂590により、光検出器162aの四方から当該光検出器162aに到達する表面弾性波が効果的に抑制又は阻止される。樹脂590の幅及び厚さについての望ましい条件は
図3に示す第1の変形例である樹脂390と同様であり、特にd50≧λmax(λmaxは、発生し得る表面弾性波の最も長い波長)であることが望ましい。
【0067】
〔第4の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第4の変形例について説明する。
図6は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図6において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0068】
本変形例では、
図6に示すように、光検出器162aに接続されるモニタ電極368aを構成する電極366a、366bが、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域と光検出器162aが配されている領域との間まで延在して形成され、電極366a、366bが表面弾性波抑制手段として機能する。ここで、表面弾性波を効果的に抑制する観点からは、電極366a、366bの幅d60、d62のうち少なくとも一方が、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bから発生し得る表面弾性波の最も長い波長λmaxより広いことが特に望ましい。
【0069】
〔第5の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第5の変形例について説明する。
図7は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図7において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0070】
図7(a)は、光検出器162a周辺の部分詳細図であり、
図7(b)は、光検出器162aの部分のAA断面矢視図である。なお、
図7(b)においては、分岐導波路160aの記載を省略している。
【0071】
本変形例では、
図7(a)(b)に示すように、光検出器162aの、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域に面する側(すなわち、図示右側)のエッジ(以下、「表面弾性波到来方向のエッジ」ともいう)の部分に、樹脂790が、当該エッジから長さd70に亘って塗布されている。この樹脂790は、表面弾性波抑制手段として機能し、バイアス電極146a等が形成された領域から光検出器162aに到来する表面弾性波を抑制する。
【0072】
樹脂790の塗布長さd70は、光検出器162aの表面弾性波到来方向のエッジから測った樹脂790の端部までの長さであり、表面弾性波を効果的に阻止する観点から、到来する表面弾性波のうち最も長い波長λmax以上(すなわち、d70≧λmax)であることが望ましい。なお、樹脂790は、
図3に示す第1の変形例に係る樹脂390と同様に、例えば、紫外線硬化型の及び又はエポキシ系の接着剤であるものとすることができる。
【0073】
更に本接着剤は光検出器162aを基板上に固定する接着剤と同じ材料を使うことができる。この場合、光検出器162aを基板上に固定する通常の接着剤量より多くの量を塗布し、固定時に光検出器エッジ部周辺に接着剤がはみ出すようにする。このようにすると組立工数を増加させる事無く表面弾性波の影響を抑圧する構成を実現する事が出来、好適である。
【0074】
なお、
図7に示す構成では、光検出器162aの、表面弾性波到来方向のエッジに対向するエッジ部分にも、表面弾性波到来方向のエッジ部分に塗布された樹脂790と等量の樹脂が塗布されている。これは、例えば接着材である樹脂790と等量の樹脂を相対向するエッジ部分に塗布することで、相対向するエッジ部分に塗布されたこれら樹脂部分が環境温度変動時にほぼ等量だけ熱膨張/収縮するようにして、分岐導波路160aと光検出器162aとの間の光結合効率の、環境温度変動に起因する変動を抑制するためである。
【0075】
また、
図7に示す本変形例では、光検出器162aの、表面弾性波到来方向のエッジと、当該エッジに対向するエッジに樹脂を塗布する構成としたが、これに限らず、光検出器162aの全周囲のエッジに樹脂を塗布するものとしてもよい。この場合、光検出器162aのエッジから外側に向かって広がる樹脂塗布部分の距離は、上記長さd70と同様に、到来する表面弾性波のうち最も長い波長λmax以上であることが望ましい。これにより、光検出器162aに向かって四方から到来する表面弾性波を効果的に抑制することができる。
【0076】
〔第6の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第6の変形例について説明する。
図8は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図8において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0077】
本変形例は、
図4に示す第2の変形例に係るガードパターン490と、
図7に示す第5の変形例に係る樹脂790と、を組み合わせた構成である。すなわち、本変形例では、
図8に示すように、光検出器162aの実装部分を囲うように、幅d80の帯状金属膜(例えば金(Au))で構成される矩形枠状のガードパターン890が形成され、さらに、光検出器162aの、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域の方向の側のエッジ部に、樹脂892が、当該エッジから距離d82に亘って塗布されている。すなわち、本変形例では、ガードパターン890と、樹脂892と、が表面弾性波抑制手段として機能し、到来する表面弾性波をより効果的に阻止することができる。なお、表面弾性波を効果的に阻止する観点から、幅d80及び距離d82のうち少なくとも一方が、到来する表面弾性波のうち最も長い波長λmax以上であることが望ましい。
【0078】
〔第7の変形例〕
次に、
図1に示す光変調器100に用いられる表面弾性波抑制手段の第6の変形例について説明する。
図9は、本変形例に係る、ガードパターン190に代えて用いることのできる表面弾性波抑制手段を示す図である。なお、
図9において、
図1及び
図2に示す構成要素と同じ構成要素については、
図1及び
図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0079】
本変形例は、
図6に示す第4の変形例に係るモニタ電極668aと、
図7に示す第5の変形例に係る樹脂790と、を組み合わせた構成である。すなわち、本変形例では、
図9に示すように、光検出器162aに接続されるモニタ電極968aを構成する電極964a、966aが、それぞれ幅d90、d92をもって、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域と光検出器162aが配されている部分(領域)との間にまで延在して形成されていると共に、光検出器162aの、表面弾性波を発生するバイアス電極146a等が形成された領域に面する側(すなわち、図示右側)のエッジ部(すなわち、表面弾性波到来方向のエッジ部)に、樹脂990が、当該エッジから長さd94に亘って塗布されている。すなわち、本変形例では、電極964a、966aと、樹脂990と、が表面弾性波抑制手段として機能し、到来する表面弾性波をより効果的に抑制する。
【0080】
なお、表面弾性波を効果的に阻止する観点から、d90、d92、d94の少なくとも一つは、到来する表面弾性波のうち最も長い波長λmax以上であることが望ましい。
【0081】
なお、本変形例では、
図9に示すように、樹脂990が、光検出器162aの、表面弾性波到来方向のエッジ部に塗布されているが、これに限らず、例えば電極964a、966aにより当該エッジ部に到来する表面弾性波を十分に阻止できる場合には、当該電極964a、966aの端部(図示下方の端部)から回り込んで光検出器162aに到来する表面弾性波を更に阻止すべく、光検出器162aの図示下方のエッジ部に、樹脂990を塗布するものとしてもよい。
【0082】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
図10において、
図1に示す第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素については、
図1における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した第1の実施形態についての説明を援用するものとする。
【0083】
図10に示す本実施形態に係る光変調器1000は、第1の実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、LN基板102代えてLN基板1002を有し、LN基板1002は、ガードパターン190に代えて、合波部120a及び120bの近傍に溝部1090a、1090b、及び1090c(総称して、溝部1090ともいう)を有する。
【0084】
溝部1090は、光変調器100のガードパターン190と同様に、表面弾性波を発生する櫛形電極構造を有するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162a、162bが配されている領域と、の間に配されており、光変調器1000における表面弾性波抑制手段を構成する。
【0085】
図11は、
図10に示す光変調器1000の溝部1090周辺の部分詳細図である。溝部1090(すなわち、溝部1090a、1090b、1090c)より図示右側の、バイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域から到来する表面弾性波(図示波線矢印により模式的に示す)は、溝部1090によってその伝搬が阻止され、光検出器162a、162bの実装部分への到達が抑制される。
【0086】
なお、溝部1090は、LN基板1002上における光導波路の形成部分を避けて形成されるが、光導波路の幅は10μm程度と非常に狭いので、光導波路の形成部分を避けて溝部1090が形成されていない部分(すなわち、溝部1090aと1090bの間、及び溝部1090bと1090cの間)を通り抜けて光検出器162a、162bに到達する表面弾性波の強度はほとんど無視できる。
【0087】
なお、溝部1090は、表面弾性波を発生する櫛形電極構造を有するバイアス電極146a、152a、146b、152b、158a、158bが形成された領域と、光検出器162a、162bが配されている領域と、の間である限り、任意の位置に配されるものとすることができる。ただし、上述したように、溝部1090は、光導波路の形成部分を避けて形成する必要があるため、光導波路形成部分によって分断される個所が少なくなるように配されることが望ましい。例えば、
図10に示す例では、溝部1090は、合波部120a、120bのみを避ければよい位置に配されている(すなわち、当該位置より、図示左右方向にずれた位置では、4つの光導波路(116a、118a、116b、118b、又は160a、122a、122b、160b)の形成部分(すなわち、4か所)において分断されるのに対し、
図10に示した溝部1090の位置では分断される個所は2か所となる)。
【0088】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1及び第2実施形態に示した光変調器100(
図3〜
図9に示す任意の変形例を含む)及び1000のいずれかを搭載した光送信装置である。
【0089】
図12は、本実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。本光送信装置1200は、光変調器1210を含む光変調ユニット1220と、光変調器1210に光を入射する光源1230と、光変調ユニット1220から出力された光を伝送する光ファイバ1240と、を有する。
【0090】
光変調ユニット1220は、また、光変調器1210から出力される2つの直交2偏光光の一部をそれぞれ分岐する光分岐器1250及び1252と、光分岐器1250及び1252により分岐された一方の光をそれぞれ受ける受光器1260及び1262を備える。受光器1260及び1262の出力は、フィードバック信号としてバイアス制御部1280(後述)に出力される。
【0091】
さらに、光変調ユニット1220は、偏波合成器1270を備える。
光変調ユニット1220に含まれる光変調器1210は、
図1及び
図10に示す光変調器100(
図3〜
図9に示す任意の変形例を含む)及び1000のいずれかであり、偏波合成器1270は、光変調器1210から出力されて光分岐器1250及び1252をそれぞれ通過した2つの直交2偏光光を合波して、光ファイバ1240に入力する。
【0092】
光送信装置1200は、また、光変調器1210が備えるバイアス電極を制御する制御装置であるバイアス制御部1280を有する。バイアス制御部1280は、バイアス点制御のための直流電圧にバイアス点の変動を検出するためのディザ信号を重畳したバイアス電圧を、光変調器1210が備えるバイアス電極に印加する。そして、バイアス制御部1280は、光変調ユニット1220内の受光器1260、1262から出力されるフィードバック信号内のディザ信号周波数成分の強度をモニタすることにより、光変調器1210が備えるバイアス電極に印加する上記直流電圧の大きさを制御する。
【0093】
バイアス制御部1280は、また、光変調器1210が複数のバイアス電極を備えるときは、バイアス電極毎に異なる周波数のディザ信号を用いたバイアス電圧を、それぞれのバイアス電極に印加する。
【0094】
なお、ディザ信号は、正弦波に限らず、こぎり波、パルス波、三角波、階段波等、任意の波形を有する信号をすることができる。
【0095】
また、ディザ信号は必ずしも常時印加する信号である必要は無く、バイアス点を検出する目的で間欠的に印加される電気信号であっても良い。
また前述実施例では光検出器が2分岐された導波路の一つの上に設置されている構成を例示したが、光検出器が基板上に構成されていれば良く、導波路の分岐数に関係なくまた導波路上でない部分に光検出器を設置しても良い。
【0096】
以上、説明したように、上述した実施形態に示す光変調器(100、1000)は、複数のバイアス電極(158a等)と出射光(変調光)の強度を監視するための光検出器(162a等)を同一の基板(102等)上に備え、当該基板上の、バイアス電極が形成された領域と光検出器が配された部分との間に、バイアス電極から発生して光検出器に到達する表面弾性波を抑制するための表面弾性波抑制手段(190等)を備える。
【0097】
これにより、本光変調器100、1000では、光検出器162a等により検出される出射光の強度は、バイアス電極158a等に印加されたディザ信号により当該バイアス電極158a等から発生する表面弾性波に起因した変動を生じない。その結果、光検出器162a等を用いて当該出射光に含まれるディザ信号成分強度を精度よく検知することができるので、安定なバイアス制御動作を行うことができ、当該光変調器100、1000を用いた光信号伝送の伝送品質を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0098】
100、1000・・・光変調器、102、1002・・・基板、104、112a、112b・・・入射導波路、106、114a、114b・・・光分岐部、110a、110b、130a、130b、132a、132b・・・マッハツェンダ光導波路、116a、116b、134a、134b、136a、136b・・・平行導波路、120a、120b・・・合波部、122a、122b・・・出射導波路、146a、146b、152a、152b、158a、158b・・・バイアス電極、160a、160b・・・分岐導波路、162a、162b・・・光検出器、168a、168b、668、968・・・モニタ電極、190、490、890・・・ガードパターン、170、172、174、176、178、180、182、184、186・・・RF電極、390、590、790、892、990・・・樹脂、1090・・・溝部、1200・・・光送信装置、1210・・・光変調器、1220・・・光変調ユニット、1230・・・光源、1240・・・光ファイバ、1250、1252・・・光分岐器、1260、1262・・・受光器、1270・・・偏波合成器、1280・・・バイアス制御部。
【手続補正書】
【提出日】2017年1月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
前記光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、
前記基板上に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されており、
前記抑制手段は、前記表面弾性波が伝搬する方向の長さが、前記バイアス電極から発生する前記表面弾性波が持つ波長より長く構成されている、
光変調器。
【請求項2】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
当該光導波路を伝搬する光波を制御するための、ディザ信号が印加されるバイアス電極と、
前記基板面上に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている、
光変調器。
【請求項3】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
前記光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、
前記基板上に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されており、
前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間には電気回路を構成する金属パターンがなく、前記抑制手段は電気回路要素と直流的に接続されていない金属又は樹脂である、
光変調器。
【請求項4】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
当該光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、
前記基板面上に、空間を介することなく配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上において、前記バイアス電極が形成された領域に対して前記光検出器が配された部分を囲うように配された、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている、
光変調器。
【請求項5】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に設けられた金属膜で構成される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項6】
前記金属膜は、前記光検出器が接続される電極である、請求項1、2又は4に記載の光変調器。
【請求項7】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に形成された金属膜で構成される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
前記抑制手段は、前記光検出器のエッジ部周辺の前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項10】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の光変調器を備える光送信装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明の一の態様は、
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器である。本光変調器は
、前記光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、前記基板上に
配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を備え、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されて
おり、前記抑制手段は、前記表面弾性波が伝搬する方向の長さが、前記バイアス電極から発生する前記表面弾性波が持つ波長より長く構成されている。
本発明の他の態様は、基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、当該光導波路を伝搬する光波を制御するための、ディザ信号が印加されるバイアス電極と、前記基板面上に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を備え、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている。
また、本発明の他の態様は、基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、前記光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、前記基板上に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を備え、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されており、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間には電気回路を構成する金属パターンがなく、前記抑制手段は電気回路要素と直流的に接続されていない金属又は樹脂である。
本発明の更に他の態様は、基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、当該光導波路を伝搬する光波を制御するバイアス電極と、前記基板面上に、空間を介することなく配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、を備え、前記基板上において、前記バイアス電極が形成された領域に対して前記光検出器が配された部分を囲うように配された、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されている。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に設けられた金属膜で構成される。
本発明の他の態様によると、前記金属膜は、前記光検出器が接続される電極である。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に形成された金属膜で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器のエッジ部周辺の前記基板上に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様によると、前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に塗布された樹脂で構成される。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器を備える光送信装置である。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
前記光導波路を伝搬する光波を制御するための、ディザ信号が印加されるバイアス電極と、
前記基板上の光導波路上部に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されており、
前記抑制手段は、前記表面弾性波が伝搬する方向の長さが、前記バイアス電極の電極間隔の2倍の値で表される前記バイアス電極から発生する前記表面弾性波が持つ波長より長く構成されている、
光変調器。
【請求項2】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
前記光導波路を伝搬する光波を制御するための、ディザ信号が印加されるバイアス電極と、
前記基板上の光導波路上部に配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分との間に、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配されており、
前記抑制手段は、前記表面弾性波が伝搬する方向の長さが、前記バイアス電極の電極間隔の2倍の値で表される前記バイアス電極から発生する前記表面弾性波が持つ波長より長く構成され、
前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間には電気回路を構成する金属パターンがなく、前記抑制手段は電気回路要素と直流的に接続されていない金属又は樹脂である、
光変調器。
【請求項3】
基板上に形成された光導波路を伝搬する光を、当該基板が有する電気光学効果により変調する光変調器であって、
当該光導波路を伝搬する光波を制御するための、ディザ信号が印加されるバイアス電極と、
前記基板面上の光導波路上部に、空間を介することなく配された、前記光導波路を伝搬する光信号を監視する光検出器と、
を備え、
前記基板上において、前記バイアス電極が形成された領域に対して前記光検出器が配された部分を囲うように配された、前記バイアス電極から前記光検出器へ伝搬する表面弾性波を抑制する少なくとも一つの抑制手段が配され、
前記抑制手段は、前記表面弾性波が伝搬する方向の長さが、前記バイアス電極の電極間隔の2倍の値で表される前記バイアス電極から発生する前記表面弾性波が持つ波長より長く構成されている、
光変調器。
【請求項4】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に設けられた金属膜で構成される、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記金属膜は、前記光検出器が接続される電極である、請求項1又は3に記載の光変調器。
【請求項6】
前記抑制手段は、前記基板上の、前記バイアス電極が形成された領域と、前記光検出器が配された部分と、の間に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項7】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に形成された金属膜で構成される、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記抑制手段は、前記光検出器のエッジ部周辺の前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
前記抑制手段は、前記光検出器の周囲を囲むように前記基板上に塗布された樹脂で構成される、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の光変調器を備える光送信装置。