特開2017-176076(P2017-176076A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-176076(P2017-176076A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】スケトウダラタンパクの検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20170908BHJP
   C07K 1/26 20060101ALI20170908BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   C12Q1/37ZNA
   C07K1/26
   G01N27/447 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-70286(P2016-70286)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310010575
【氏名又は名称】地方独立行政法人北海道立総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富 裕孝
(72)【発明者】
【氏名】河崎 美保子
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩郁
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ36
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR72
4B063QS02
4B063QS16
4B063QS39
4B063QX01
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA52
4H045EA01
4H045EA50
4H045FA16
4H045FA70
4H045GA33
4H045HA07
(57)【要約】
【課題】試料中のスケトウダラタンパクを効率的に検出する手段を提供すること。
【解決手段】ペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種のペプチドの存在を指標とする、スケトウダラの検出方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種のペプチドの存在を指標とする、スケトウダラの検出方法。
【請求項2】
試料のαキモトリプシン消化物における前記少なくとも一種のポリペプチドの存在を検出することを含む、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
試料が魚肉を含む食品である、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
αキモトリプシン消化物を電気泳動することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
電気泳動が二次元電気泳動である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
αキモトリプシン消化物が、試料をαキモトリプシンで0.5〜5時間処理することによって得られる、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
αキモトリプシン消化物が、試料をαキモトリプシンで20〜60℃で処理することによって得られる、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
αキモトリプシン消化物が、乾燥重量換算で、αキモトリプシン:試料中のタンパク質=1:100〜1:1000の比率でαキモトリプシンを試料に作用させることによって得られる、請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ペプチドAが配列番号1のアミノ酸配列を含み、ペプチドBが配列番号2のアミノ酸配列を含み、ペプチドCが配列番号3のアミノ酸配列を含み、ペプチドDが配列番号4〜6から成る群より選択される少なくとも1種のアミノ酸配列を含み、ペプチドEが配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スケトウダラの検出方法及びそれに関連する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
一般にヒトの筋肉量は、タンパク質の摂取量増加によって、効果的に筋肉量が増加することが知られている。例えば、牛肉抽出物は、遅筋と速筋の両方を増大させることが報告されている(非特許文献1)。魚肉タンパク質においても生体への様々な作用について研究されており、例えば、スケトウダラ由来タンパク質は、コレステロールおよびトリグリセロールに対して影響を及ぼすことが報告されている(非特許文献2)。また、スケトウダラ魚肉タンパク質に筋肉増強作用を有することも報告されている(特許文献1)。このように、スケトウダラ魚肉タンパク質が有する生理作用が注目されている。
【0003】
これまでに、スケトウダラから粉末状のタンパク質由来の食品素材の開発を目的として、工業的に粉末状のスケトウダラタンパク質を製造する方法が提案されている(特許文献2)。このような状況のもと、品質管理の観点から、食品中にスケトウダラ由来のタンパク質が存在するか否かを効率的に検出する手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5838161号
【特許文献2】特開2015−192641号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Nutr. Sci. Vitaminol, 2006, 52, p.183-193
【非特許文献2】British Journal of Nutrition, 2006, 96, p.674-682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料中のスケトウダラを効率的に検出する手段を提供することが1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者は、特定のペプチドがスケトウダラの存在の指標になることを見出した。斯かる知見に基づき、更なる研究を重ねた結果、下記に代表される発明を提供するに至った。
【0008】
項1.
下記のペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種のペプチドの存在を指標とする、スケトウダラの検出方法。
項2.
試料のαキモトリプシン消化物における前記少なくとも一種のポリペプチドの存在を検出することを含む、項1に記載の検出方法。
項3.
試料が魚肉を含む食品である、項1又は2に記載の検出方法。
項4.
αキモトリプシン消化物を電気泳動することを含む、項2又は3に記載の方法。
項5.
電気泳動が二次元電気泳動である、項4に記載の方法。
項6.
αキモトリプシン消化物が、試料をαキモトリプシンで0.5〜5時間処理することによって得られる、項2〜5のいずれかに記載の方法。
項7.
αキモトリプシン消化物が、試料をαキモトリプシンで20〜60℃で処理することによって得られる、項2〜6のいずれかに記載の方法。
項8.
αキモトリプシン消化物が、乾燥重量換算で、αキモトリプシン:試料中のタンパク質=1:100〜1:1000の比率でαキモトリプシンを試料に作用させることによって得られる、項2〜7のいずれかに記載の方法。
項9.
ペプチドAが配列番号1のアミノ酸配列を含み、ペプチドBが配列番号2のアミノ酸配列を含み、ペプチドCが配列番号3のアミノ酸配列を含み、ペプチドDが配列番号4〜6から成る群より選択される少なくとも1種のアミノ酸配列を含み、ペプチドEが配列番号7のアミノ酸配列を含む、項1〜8のいずれかに記載の方法。
項10.
試料をαキモトリプシンで消化する工程(a)、及び
工程(a)で得られたキモトリプシン消化物を二次元電気泳動に供する工程(b)、
を含み、
工程(b)の結果、項1に記載の少なくとも一種のペプチドが検出された場合に、試料にスケトウダラ由来タンパク質が存在すると判定する方法。
【発明の効果】
【0009】
試料中にスケトウダラ由来のタンパク質が含まれるか否かを効率的に検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スケトウダラの二次元電気泳動ゲルイメージ
図2】マダラの二次元電気泳動ゲルイメージ
図3】シロザケの二次元電気泳動ゲルイメージ
図4】ニジマスの二次元電気泳動ゲルイメージ
図5】スケトウダラ1とマダラの重ね合わせ二次元電気泳動ゲルイメージ(Gel No.1)。Cy3:緑(スケトウダラ)、Cy5:赤(マダラ)。両サンプルに同量程度含まれるスポットは黄色で表示される。
図6】マダラとスケトウダラの重ね合わせ二次元電気泳動ゲルイメージ(Gel No.3)。Cy3:緑(マダラ)、Cy5:赤(スケトウダラ)。両サンプルに同量程度含まれるスポットは黄色で表示される。
図7】スケトウダラとニジマスの重ね合わせ二次元電気泳動ゲルイメージ(Gel No.5)。Cy3:緑(スケトウダラ)、Cy5:赤(ニジマス)。両サンプルに同量程度含まれるスポットは黄色で表示される。
図8】スケトウダラで特異的に検出されたスポットの二次元電気泳動ゲルイメージ上の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記分子量及び等電点で特定されるペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種のペプチドの存在を指標とする、スケトウダラの検出方法が提供される。ペプチドA〜Eは、いずれもスケトウダラをαキモトリプシンで処理することによって得られるスケトウダラに特異的なペプチドである。よって、試料中にペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種のペプチドが存在する場合に、当該試料にスケトウダラに由来するタンパク質が含まれると判断することができる。
【0012】
検出の指標とするペプチドは、ペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも一種である限り特に制限されず、2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。一実施形態において、指標とするペプチドは、ペプチドA〜Eから成る群より選択される2種以上、3種以上、4種以上、又は5種全てであり得る。一実施形態において、指標とするペプチドは、ペプチドC〜Eから成る群より選択される一種以上、2種以上、又は3種の組み合わせであることが好ましい。
【0013】
ペプチドAは、NADH dehydrogenase subunit 4の部分ペプチドと考えられ、配列番号1のアミノ酸配列を含むことが好ましい。ペプチドBは、short-wavelength sensitive opsin 2Bの部分ペプチドと考えられ、配列番号2のアミノ酸配列を含むことが好ましい。ペプチドCは、myosin heavy chainの部分ペプチドと考えられ、配列番号3のアミノ酸配列を含むことが好ましい。ペプチドDは、myosin heavy chainの部分ペプチドと考えられ、配列番号4〜6のアミノ酸配列から成る群より選択される1種、2種、又は3種を含むことが好ましい。ペプチドEは、myosin light chain 1の部分ペプチドと考えられ、配列番号7のアミノ酸配列を含むことが好ましい。一実施形態において、ペプチドDは、配列番号4〜6のアミノ酸配列全てを含むことが好ましい。
【0014】
検出の対象となる試料の種類は特に制限されず、任意に選択することができる。一実施形態において、試料は、スケトウダラに由来するタンパク質が存在する可能性があると考えられる試料であり得る。試料は、例えば、魚(例えば、魚のすり身)を原料とする食品であり得る。そのような食品としては、例えば、かまぼこ、ちくわ、ソーセージ、麺類等を挙げることができる。また、試料は、魚肉蛋白だけを粉末化した顆粒製剤、粉末製剤、及び錠剤等、並びにそれらを配合した粉末スープ、おかき、煎餅、及びスティック状の食品などであってもよい。
【0015】
ペプチドA〜Eから成る群から選択される少なくとも1種のペプチドは、スケトウダラ由来のタンパク質(例えば、筋肉)を含む試料を、例えば、αキモトリプシンで処理(消化)することによって得ることができる。よって、検出に供する試料は、試料のαキモトリプシン消化物であることが好ましい。
【0016】
試料をαキモトリプシンで消化する手順及び条件は、ペプチドA〜Eから成る群から選択される少なくとも1種のペプチドが得られる限り特に制限されず、適宜設計することができる。反応温度は、例えば、下限を10℃、20℃、30℃、又は35℃に設定でき、上限を70℃、60℃、50℃、45℃に設定することができる。一実施形態において、反応温度は20〜60℃、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜45℃であり得る。反応時間は、例えば、30分以上3時間以下の範囲で適宜設定でき、好ましくは1時間〜2.5時間である。反応温度が20℃以下の低温になると、αキモトリプシンの消化性は低下し、十分な消化に要する時間は長くなる。一方、反応温度が高すぎると酵素の失活が生じ得るか、反応速度が速すぎて適切な消化断片が得られない場合がある。このような観点から、一実施形態において、35〜45℃で約1時間半〜2時間半消化反応を行うことが好ましい。
【0017】
試料に添加するαキモトリプシンの量は、ペプチドA〜Eから成る群から選択される少なくとも1種のペプチドが得られる限り特に制限されず、適宜設定することができる。一実施形態において、αキモトリプシンは、乾燥重量換算で次の比率でαキモトリプシン:試料中タンパク質=1:100〜1:1000、好ましくはαキモトリプシン:試料中タンパク質=1:200〜1:500の比率で試料に配合されることが好ましい。αキモトリプシンは、市販されているαキモトリプシンを適宜選択して使用することができる。一実施形態において、αキモトリプシンは40ユニット/mg以上の活性を有するものが好ましい。
【0018】
試料のαキモトリプシン消化は、試料を適当な緩衝液に懸濁し、αキモトリプシンを添加して上記の反応時間静置又は緩やかに撹拌することにより実施することができる。緩衝液はαキモトリプシンの働きが阻害されない限り特に制限されず、例えば、TRIS-Maleate緩衝液、Tris-HCl緩衝液、MOPS緩衝液、TES緩衝液、及びHEPES緩衝液等を挙げることができる。緩衝液のpHは、αキモトリプシンの活性が維持される限り特に制限されないが、例えば、pH5〜10、好ましくは7〜9に設定することができる。
【0019】
試料中のペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも1種のペプチドの検出は任意の手法で行うことができ特に制限されない。ペプチドA〜Eは、分子量及び等電点で特定されるため、検出方法は分子量及び等電点を指標にペプチドを検出できる限り特に制限されない。一実施形態において、電気泳動を用いてペプチドA〜Eから成る群から選択される少なくとも1種のペプチドを検出することが好ましく、二次元電気泳動を用いることがより好ましい。
【0020】
二次元電気泳動を用いてペプチドA〜Eから成る群より選択される少なくとも1種のペプチドを検出する場合、等電点分離及び分子量分離のいずれを先に(一次元電気泳動)行っても良い。一実施形態において、一次元電気泳動で等電点分離を行い、二次元電気泳動で分子量分離を行うことが好ましい。電気泳動を用いた等電点分離及び分子量分離は常法に従って行うことができ、市販されているキット及び装置を用いることができる。例えば、キャピラリーゲル又はストリップゲルなどを分離媒体として等電点電気泳動を行い、泳動を終了したゲルを平面状のゲル(例えば、SDS−ポリアクリルアミドゲル)を用いて等電点電気泳動の展開方向に対して直角の方向に電気泳動を行って分子量分離することができる。二次元電気泳動を行ったゲルを常法に従って染色することにより、ペプチドA〜Eの有無を確認することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0022】
1.魚肉の前処理
スケトウダラ、マダラ、シロザケ、及びニジマスの背肉をミンチ処理(φ5mm)し、ミンチ肉を得た。スケトウダラ、マダラ、及びシロザケは冷凍フィレを解凍して使用した。ニジマスは鮮魚を使用した。各魚種について、ミンチ肉を8〜10倍量の冷蒸留水に懸濁および撹拌(1分間)した。撹拌後、遠心分離により沈殿を回収し、蒸留水に懸濁する操作を合計3回実施した。最終的に得られた沈殿中に含まれている夾雑物(骨、皮、鱗、及びスジなど)の除去を目的として、裏ごし機またはホモジナイザーで均質化した。これを遠心分離により脱水し、脱水肉を得た。この脱水肉を真空凍結乾燥により粉末の魚肉素材を得た。乾燥した魚肉素材は、試験に供するまで-30℃にて保管した。
【0023】
2.魚肉のキモトリプシン消化
-30℃で保管していた各魚種の魚肉素材をデシケータを用いて減圧下で室温に戻した。室温に戻した魚肉素材(500mg)を精秤し、20mM Tris-maleate(pH7.0)、50mM NaCl、1mM EDTA・2Naを含む溶液に添加して49.8mLの魚肉素材溶液を調製した。この溶液を40℃の恒温槽にて溶液温度を馴化(5分間)させ、5mg/mLに調製したαキモトリプシン溶液を0.2mL添加して消化を開始した。αキモトリプシン溶液は、室温に戻したキモトリプシン(≧40unit/mg protein, SIGMA-Aldrich)を秤量し、終濃度5mg/mLとなるように冷蒸留水に添加して調製した。消化2時間後に終濃度が1mMとなるように100mM Phenylmethanesulfonyl fluoride (SIGMA-Aldrich, PMSF)を添加後、100℃で5分間加熱して消化を停止して消化液を得た。消化液を遠心分離(2500×g, 10分, 20℃.遠心機:H-1500FR KOKUSAN、ローター:RM-151)し消化液上清を得た。上清を分注し、分析試料として-30℃で保管した。
【0024】
3.ラベリング
各魚種の分析試料をAmicon Ultra-0.5で濃縮し、下記の表1に従って、200 pmolのCy3(DMF溶液、1μl)又はCy5(DMF溶液、1μl)の蛍光色素を添加した。また、評価用試料を全て混合したものをプール試料とし、200 pmolのCy2(DMF溶液、1μl)を添加後に氷上にて30分静置してラベリング反応を実施した。反応液に過剰量のリジン溶液(10mM、2μlを添加し、10分間保持して反応を終了した。反応終了後に反応液総量と等量の2×サンプルバッファー(8Mウレア、4%(w/v)CHAPS,20mg/ml DTT、2%(v/v)LPG Buffer 3-11 NL)を添加して更に10分間氷上に保持したものを2D-DIGE解析用の試料とした。
【0025】
【表1】
【0026】
4.二次元電気泳動
二次元電気泳動を次の条件で行った。表1に示した各蛍光色素に対応した試料とCy2でラベルしたプール試料を混合した後に試料を展開した。
【0027】
一次元目電気泳動は、MultiphoreII (GEヘルスケアバイオサイエンス社)及びIPG(Immobilized pH Gradient)Strips(24cm,pI3-11NL, GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、試料はカップローディングホルダーから添加した。フォーカシングは、トータルで36kVh(300V;5h, 300-3500 V; 1,5 hr, 3500 V; 10hr)で行った。泳動後、平衡化溶液(50mM Tris、pH8.8、6M尿素、30%グリセロール、2%SDS)に0.25%(w/v)DTTを添加したA液及び同様に4.5(w/v)ヨードアセトアミドを添加したB液に対して各々10分間ずつ平衡化を行った。
【0028】
二次元目電気泳動は、平衡化終了後、Ettan DALT IIシステム(GEヘルスケア バイオサイエンス社)及び15%均一ゲルを用いてSDS-PAGEゲル電気泳動を行った。泳動は3W(15℃)一定で泳動先端が完全に溶出するまで(約15時間)行った。
【0029】
5.解析
電気泳動後のゲルは、直ちにTyphoon 9400(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を使用して下記表2の条件で画像の読み込みを行った。
【0030】
【表2】
【0031】
二次元電気泳動のゲルイメージは、Decyder Ver7.0(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、電気泳動ゲルの画像品質確認および定量比較解析を行った。
【0032】
6.二次元電気泳動結果
Typhoonで取得した各魚種に関する二次元電気泳動ゲルイメージの代表例を図1図4に示した。また、2種類の試料を併せたゲルNo.1〜3のゲルイメージを図5図7に示した。Decyder DIAソフトを使用して自動検出されたスポット数を表3に示した。
【0033】
【表3】
【0034】
7.2D-DIGE解析結果
Decyder BVAソフトを使用して統計解析を実施した結果、スケトウダラに特異的なスポットとして5スポットが検出された(表4)。図8において、二次元電気泳動ゲルイメージ上にスポットの位置を示した。
【0035】
【表4】
*1:Student’s P-value
*2: スポット容積比(スケトウダラ/他の魚種)の平均値、−Xは1/Xを示す。
*3: :二次元電気泳動上のスポット位置から推定したpI及びMw
【0036】
8.ゲル内酵素消化及び質量分析
2D-DIGE解析で確認した5スポットのゲルイメージとRuby 画像をマッチングした後、スポットピッカー(GE ヘルスケアバイオサイエンス社)を用いて、MS解析用スポットとしてピッキングした。ピッキングしたゲルプラグを50%メタノール溶液で洗浄した後、トリプシン消化液 2μL及び50mM炭酸水素アンモニウム10μLを加え、30℃に設定したドライバス上で一晩インキュベートして消化した。消化後のゲルからペプチド抽出液(50%アセトニトリル、5%ぎ酸溶液)30μL を用いて消化ペプチド断片を回収した。回収液を含むチューブを遠心乾燥した後、LC-MS/MS 測定用の溶媒(1%ぎ酸)20μLを加えてVortexし、MS 解析に供した。nanoLC-MS/MS分析は、LC部分にUltiMate(登録商標)3000HPLC(ダイオネクス社)、質量分析装置にQ-Exactive Plus(サーモサイエンティフィック社)を用い、Xcalibur(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)でLC 及びMS を制御して測定した。LC、MS の分析条件を以下に示す。データベースは、Mascot(マトリックスサイエンス社)を使用しSwiss-Prot の最新版に対して検索を行った。
【0037】
NC_Pump.Flow = 0.300 [μl/min]
A 液: 0.1% Formic Acid, Water, B 液: 0.1% Formic Acid, Acetnitrile
【0038】
MS/MS の設定
Full MS / dd-MS2 (TopN)
Runtime:0 to 150min
Polarity:Positive
In-source CID:0.0eV
Default charge state:2
【0039】
Full MS
Microscans:1
Resolution:70,000
AGC target:3.00E+06
Maximum IT :60ms
Number of scan ranges:1
Scan range:350 to 1800m/z
【0040】
Mascot 検索条件
1. Input Data:
Enzyme Name: Trypsin
Maximum Missed Cleavage Sites: 2
Instrument: Default
Taxonomy: Otophysa (bony fishes)
1.1 Peptide Scoring Options:
Peptide Cut Off Score: 10
Peptide Without Protein Cut Off Score: 5
1.2 Protein Scoring Options:
Use MudPIT Scoring: Automatic
Protein Relevance Threshold: 20
Protein Relevance Factor: 1
2. Tolerances:
Precursor Mass Tolerance: 10 ppm
Fragment Mass Tolerance: 0.8 Da
Use Average Precursor Mass: False
3. Dynamic Modifications:
Dynamic Modification: Oxidation (M)
4. Static Modifications:
Static Modification: Carbamidomethyl (C)
【0041】
9.検索結果
取得したMS/MS データをNCBInr データベース内で検索した結果を表5に示した。
【0042】
【表5】
*1: 登録されている全長配列のMw
*2: スコア値は、The Mowse scoring algorithmに基づいて計算した値である。スコアが高い方が間違いである可能性が低いことを示す。
*3: ヒットしたペプチド断片の数
【0043】
下記の表6に各スポットのペプチドについて同定されたアミノ酸配列を示す。
【0044】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]