特開2017-176576(P2017-176576A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧

<>
  • 特開2017176576-生体音取得装置 図000003
  • 特開2017176576-生体音取得装置 図000004
  • 特開2017176576-生体音取得装置 図000005
  • 特開2017176576-生体音取得装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-176576(P2017-176576A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】生体音取得装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20170908BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   A61B7/04 P
   A61B7/04 N
   H04R3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-69973(P2016-69973)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】中居 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】垣内 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】貞森 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】山賀 聡之
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AB01
(57)【要約】
【課題】聴診器の周波数特性に起因するユーザの違和感を低減する。
【解決手段】生体音取得装置(1、2)は、被験者の生体音を取得して電気信号に変換する変換部(11)と、複数の他の生体音取得装置各々の周波数特性を示す複数の周波数特性情報のうち一の周波数特性情報により示される周波数特性に基づいて、電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する信号処理部(12)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体音を取得して電気信号に変換する変換部と、
複数の他の生体音取得装置各々の周波数特性を示す複数の周波数特性情報のうち一の周波数特性情報により示される周波数特性に基づいて、前記電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する信号処理部と、
を備えることを特徴とする生体音取得装置。
【請求項2】
前記電気信号を記憶装置に記憶させる記憶制御部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の生体音取得装置。
【請求項3】
前記複数の周波数特性情報を記憶する記憶部を更に備える請求項1又は2に記載の生体音取得装置。
【請求項4】
前記複数の周波数特性情報は、アナログ聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報と、電子聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報とを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生体音取得装置。
【請求項5】
前記アナログ聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報、及び前記電子聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報は、聴診器メーカ毎にグループ化されていることを特徴とする請求項4に記載の生体音取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子聴診器等の生体音取得装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば集音部により収集した被験者の生体音を示す生体音データと、計測手段によって計測可能な被験者を特定するための情報である付加情報(例えば時刻情報)とを外部装置へ送信する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−29646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、生体音収集装置としての電子聴診器により収集された生体音データの再生環境(例えばスピーカやヘッドホンの特性等)によっては、再生された生体音が、従来の所謂アナログ聴診器を介して聞こえる音と異なり、ユーザが違和感を覚える可能性があるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、ユーザの違和感を低減することができる生体音取得装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体音取得装置は、上記問題点を解決するために、被験者の生体音を取得して電気信号に変換する変換部と、複数の他の生体音取得装置各々の周波数特性を示す複数の周波数特性情報のうち一の周波数特性情報により示される周波数特性に基づいて、前記電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する信号処理部と、を備える。
【0007】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
図2】聴診器の周波数特性の一例を示す図である。
図3】第1実施例に係る周波数特性記憶部に記憶されている周波数特性情報の一例である。
図4】第2実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の生体音取得装置に係る実施形態について説明する。
【0010】
実施形態に係る生体音取得装置は、被験者の生体音を取得して電気信号に変換する変換部と、複数の他の生体音取得装置各々の周波数特性を示す複数の周波数特性情報のうち一の周波数特性情報により示される周波数特性に基づいて、前記電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する信号処理部と、を備える。
【0011】
変換部は、例えばマイクや振動素子等であり、生体音に起因して生じる振動を電気信号に変換する。例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる信号処理部は、複数の周波数特性情報のうち一の周波数特性情報により示される周波数特性に基づいて、変換部により変換された電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する。
【0012】
複数の周波数特性情報は、当該生体音取得装置に格納されていてもよいし、例えばサーバ装置等の外部の記憶装置に格納されていてもよい。外部の記憶装置に複数の周波数特性情報が格納されている場合、ネットワーク等を介して周波数特性情報を取得するように信号処理部を構成すればよい。
【0013】
複数の周波数特性情報は、夫々、当該生体音取得装置とは異なる複数の他の生体音取得装置の周波数特性を示す情報である。「生体音取得装置の周波数特性」は、生体音取得装置の一例としての聴診器の場合、イヤピースにおける(つまり、ユーザが聴くであろう音の)周波数特性を意味する。
【0014】
このような周波数特性情報は、実験により又はシミュレーションにより、例えば、白色雑音(ホワイトノイズ)が生体音取得装置に入力された場合に、ユーザが聴くであろう音の周波数特性を求めることにより構築すればよい。
【0015】
尚、信号処理部は、出力信号を生成する際に、一の周波数特性情報に加えて、例えば当該生体音取得装置に取り付けられたイヤホンやスピーカ等の特性も考慮して、電気信号の周波数特性を変更するように構成されてよい。
【0016】
本実施形態に係る生体音取得装置によれば、信号処理部により電気信号の周波数特性を変更することができるので、ユーザの違和感を低減することができる。
【0017】
実施形態に係る生体音取得装置の一態様では、当該生体音取得装置は、電気信号を記憶部に記憶させる記憶制御部を更に備える。
【0018】
この態様によれば、記憶制御部により、生体音に係る電気信号を記憶部に記憶させる(つまり、生体音を録音する)ことができ、実用上非常に有利である。尚、記憶部は、当該生体音取得装置に内蔵されていてもよいし、外部に設置されていてもよい。
【0019】
実施形態に係る生体音取得装置の他の態様では、複数の周波数特性情報は、アナログ聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報と、電子聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報とを含む。
【0020】
この態様では、アナログ聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報、及び電子聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報は、聴診器メーカ毎にグループ化されていてよい。
【0021】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、医師等のユーザが聴診器を介して聴く音は、用いる聴診器によって又は聴診器メーカによって異なる。これは、聴診器を構成する、例えばチェストピース、チューブ、イヤピース等の構成材料や構造が、聴診器毎に又は聴診器メーカ毎に異なるからである。このため、ユーザが、普段とは異なる聴診器を用いると、違和感を覚える可能性がある。
【0022】
上述の如く、複数の周波数特性情報に、アナログ聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報と、電子聴診器の周波数特性を示す一又は複数の周波数特性情報とが含まれていれば、当該生体音取得装置の信号処理部により、ユーザが普段用いている聴診器の周波数特性を再現することができる。この結果、ユーザの違和感を低減することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の生体音取得装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例では、生体音取得装置の一例として電子聴診器に係る実施例について説明する。
【0024】
<第1実施例>
電子聴診器に係る第1実施例について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、第1実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。図2は、聴診器の周波数特性の一例を示す図である。図3は、第1実施例に係る周波数特性記憶部に記憶されている周波数特性情報の一例である。
【0025】
図1において、電子聴診器1は、生体音取得部11、イコライザ(EQ)付与部12、出力部13、記憶制御部14、生体情報記憶部15、周波数特性記憶部16及び設定部17を備えて構成されている。
【0026】
生体音取得部11は、例えばマイク、振動素子等を含んでおり、電子聴診器1のチェストピースの一部を構成している。生体音取得部11は、被験者の生体音を取得して電気信号に変換する。生体音取得部11から出力された電気信号は、イコライザ付与部12を介して、例えばイヤホン、スピーカ等を含む出力部13に入力される。
【0027】
尚、生体音取得部11及び出力部13には、既存の技術を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0028】
周波数特性記憶部16には、複数の周波数特性情報が予め記憶されている(図3参照)。設定部17は、周波数特性記憶部16に記憶されている複数の周波数特性情報のうち、ユーザインターフェイス(図示せず)を介してユーザにより選択された一の周波数特性情報を示す信号を、イコライザ付与部12に送信する。尚、周波数特性記憶部16に記憶されている周波数特性情報は、例えば外部の装置と通信等することで、適宜追加、更新されるような構成としてもよい。
【0029】
イコライザ付与部12は、周波数特性記憶部16から該一の周波数特性情報に対応するイコライザ設定値を取得し、該一の周波数特性情報により示される周波数特性となるように、生体音取得部11から出力された電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する。
【0030】
ここで、電子聴診器、アナログ聴診器を問わず聴診器の周波数特性は、聴診器によって又は聴診器メーカによって異なる(図2参照)。このため、例えば図2(a)に示す周波数特性を有する聴診器を使用しているユーザが、図2(b)に示す周波数特性を有する聴診器を使用すると違和感を覚えることが多い。
【0031】
特に、聴診は、医師等のユーザの経験に負うところが大きいので、ユーザが普段使用している聴診器とは異なる他の聴診器を用いて聴診すると、聴診知見に影響が出る可能性がある。
【0032】
当該電子聴診器1では、ユーザにより選択された一の周波数特性情報に基づいて、イコライザ付与部12により、生体音取得部11から出力された電気信号の周波数特性が変更されるので、ユーザの違和感を低減することができる。この結果、聴診器に起因する聴診知見への影響を低減する又はなくすことができる。
【0033】
周波数特性記憶部16に記憶されている複数の周波数特性情報は、例えば図3に示すように、聴診器メーカ毎に(ここでは、A社、B社、C社、…)、グループ化されていることが望ましい。また、当該電子聴診器1が、ユーザインターフェイスとして表示画面を備えている場合には、周波数特性記憶部16に記憶されている複数の周波数特性情報に基づいて、聴診器メーカと機種名とが、該表示画面に表示されてよい。
【0034】
再び図1に戻り、記憶制御部14は、生体音取得部11から出力された電気信号を、例えば不揮発性メモリ等である生体情報記憶部15に記憶する(つまり、録音する)。このように構成すれば、生体情報記憶部15に記憶された電気信号を随時再生することができ、特に、ユーザが、診断支援ソフト等を用いて被験者の生体音を解析する場合に有用である。
【0035】
尚、被験者の生体音の解析には、生体音取得部11から出力された電気信号(所謂生信号)が望ましいことが、本願発明者の研究により判明している。
【0036】
本実施例に係る「生体音取得部11」、「イコライザ付与部12」及び「生体情報記憶部15」は、夫々、本発明に係る「変換部」、「信号処理部」及び「記憶装置」の一例である。
【0037】
<第2実施例>
電子聴診器の第2実施例について、図4を参照して説明する。第2実施例では、周波数特性記憶部及び生体情報記憶部が、電子聴診器とは異なる外部装置に設けられている以外は、上述した第1実施例と同様である。よって、第2実施例について、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図4を参照して説明する。図4は、図1と同趣旨の、第2実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
【0038】
図4において、電子聴診器2は、生体音取得部11、イコライザ付与部12、出力部13、記憶制御部14、設定部17、通信部21及びRAM22を備えて構成されている。
【0039】
設定部17は、通信部21を介して、サーバ30の周波数特性記憶部31に記憶されている複数の周波数特性情報のうち、ユーザインターフェイス(図示せず)を介してユーザにより選択された一の周波数特性情報を示す信号を、イコライザ付与部12に送信する。
【0040】
イコライザ付与部12は、通信部21を介して、周波数特性記憶部31から該一の周波数特性情報に対応するイコライザ設定値を取得し、該一の周波数特性情報により示される周波数特性となるように、生体音取得部11から出力された電気信号の周波数特性を変更して、出力信号を生成する。
【0041】
記憶制御部14は、生体音取得部11から出力された電気信号を、通信部21を介して、パーソナルコンピュータ(PC)40の生体情報記憶部41に記憶する。
【0042】
尚、周波数特性記憶部及び生体情報記憶部のうち一方が電子聴診器に内蔵されており、周波数特性記憶部及び生体情報記憶部の他方が、外部装置に設けられていてもよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体音取得装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1、2…電子聴診器、11…生体音取得部、12…イコライザ付与部、13…出力部、14…記憶制御部、15、41…生体情報記憶部、16、31…周波数特性記憶部、17…設定部、21…通信部、22…RAM、30…サーバ、40…パーソナルコンピュータ
図1
図2
図3
図4