特開2017-177265(P2017-177265A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-177265(P2017-177265A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20170908BHJP
   B24B 37/22 20120101ALI20170908BHJP
【FI】
   B24B37/00 P
   B24B37/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-66307(P2016-66307)
(22)【出願日】2016年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 透
(72)【発明者】
【氏名】森永 均
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩二
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158AC04
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB03
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB05
3C158EB07
3C158EB11
3C158EB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】研磨スラリー(砥粒を含むスラリー)による研磨を、発泡ポリウレタン等の連続気泡構造を有する多孔質材からなる研磨パッドを用いて行うと、研磨パッドにスラリーがしみ込み、しみ込んだスラリーが飛散して研磨に使用されないため、スラリーの利用効率が低いという問題点がある。この発明の課題は、研磨スラリーによる研磨で使用される研磨パッドとして、従来品よりスラリーの利用効率が高い研磨パッドを提供する。
【解決手段】この発明の研磨パッド1Bは、研磨スラリーによる研磨で使用され、表面の一部または全部に止水部5が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨スラリーによる研磨で使用される研磨パッドであって、
表面の一部または全部に止水部が形成されている研磨パッド。
【請求項2】
研磨層と、前記研磨層の研磨面とは反対面に形成された支持層と、を有し、
前記支持層が前記止水部である請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
連続気泡構造の多孔質材からなる連続気泡層を有し、
前記連続気泡層の研磨面以外の表面に前記止水部が形成されている請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記連続気泡層の側面に前記止水部が形成されている請求項3記載の研磨パッド。
【請求項5】
研磨面と交差する方向に延びて前記連続気泡層を貫通する貫通穴を有し、
前記貫通穴の壁面に前記止水部が形成されている請求項3記載の研磨パッド。
【請求項6】
研磨層と、前記研磨層の研磨面とは反対面に形成された支持層と、を有し、
前記支持層が前記連続気泡層である請求項3記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨面と交差する方向に延びて前記研磨層を貫通する第一貫通穴と、
前記研磨面と交差する方向に延びて、前記支持層を貫通し、前記第一貫通穴と連続する第二貫通穴と、を有し、
前記第二貫通穴の壁面に前記止水部が形成されている請求項6記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨層は、前記支持層より硬い材料で形成されている請求項2、 6、 7のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車体塗装面を平滑化する加工方法として、バフ研磨加工が知られている(例えば特許文献1)。バフ研磨加工は、研磨パッドとして、布製またはその他の材料で作られた研磨輪(バフ)を用い、その周囲(表面)に種々の研磨剤などを付けて回転させ、研磨対象物を研磨する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−251099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨スラリー(砥粒を含むスラリー)による研磨を、発泡ポリウレタン等の連続気泡構造を有する多孔質材からなる研磨パッドを用いて行うと、研磨パッドにスラリーがしみ込み、しみ込んだスラリーが飛散して研磨に使用されないため、スラリーの利用効率が低いという問題点がある。
この発明の課題は、研磨スラリーによる研磨で使用される研磨パッドとして、従来品よりスラリーの利用効率が高い研磨パッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明の一態様の研磨パッドは、研磨スラリーによる研磨で使用される研磨パッドであって、表面の一部または全部に止水部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の態様の研磨パッドによれば、止水部が形成されていない従来品よりスラリーの利用効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図2】第二実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図3】第三実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図4】第四実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図5】第五実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図6】第六実施形態の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図7】第一および第三実施形態に対する比較例の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図8】第二および第四実施形態に対する比較例の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図9】第五実施形態に対する比較例の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
図10】第六実施形態に対する比較例の研磨パッドを示す図であって、研磨面を下に向けて置いた研磨パッドの平面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔発明の態様〕
第一態様の研磨パッドは、研磨スラリーによる研磨で使用される研磨パッドであって、表面の一部または全部に止水部が形成されていることを特徴とする。止水部とは、研磨スラリーが研磨パッドに入ることを妨げる部分である。止水部は、例えば、研磨スラリーを浸透させにくい材料(止水材料)で形成されているか、研磨スラリーを浸透させにくい構造の素材(止水素材)で形成されている。
【0009】
第一態様の研磨パッドは、研磨面の一部または全部が止水部となっている構成も含む。この場合には、止水部を、止水部の研磨面となる部分が研磨機能を発揮できるように構成する。
研磨スラリーによる研磨の一例としては、研磨スラリーを被研磨面に供給し、研磨パッドの研磨面を被研磨面に押し当てた状態で移動する研磨方法が挙げられる。
【0010】
第一態様の研磨パッドによれば、表面の一部または全部に止水部が形成されていない研磨パッドと比較して、研磨パッドに研磨スラリーがしみ込みにくい。
第二態様の研磨パッドは、第一態様の研磨パッドであって、研磨層と、研磨層の研磨面とは反対面に形成された支持層と、を有し、支持層が止水部である。
第二態様の研磨パッドによれば、支持層が止水部であるため、支持層が発泡ポリウレタンなどの連続気泡構造を有する多孔質材からなる研磨パッドと比較して、研磨中に研磨スラリーが研磨パッドの支持層にしみ込みにくい。
【0011】
第三態様の研磨パッドは、第一態様の研磨パッドであって、連続気泡構造の多孔質材からなる連続気泡層を有し、連続気泡層の研磨面以外の表面に止水部が形成されている。第三態様の研磨パッドが単層である場合は研磨層が連続気泡層であり、第三態様の研磨パッドが二層構造である場合は支持層が連続気泡層である。
第四態様の研磨パッドは、第三態様の研磨パッドであって、前記連続気泡層の側面に止水部が形成されている。
【0012】
第五態様の研磨パッドは、第三態様の研磨パッドであって、研磨面と交差する方向に延びて前記連続気泡層を貫通する貫通穴を有し、貫通穴の壁面に止水部が形成されている。連続気泡層を貫通する貫通穴は、例えば、研磨パッドの研磨面とは反対側から研磨スラリーを被研磨面に供給する目的で形成されている。
第六態様の研磨パッドは、第三態様の研磨パッドであって、研磨層と、研磨層の研磨面とは反対面に形成された支持層と、を有し、支持層が前記連続気泡層である。
【0013】
第七態様の研磨パッドは、第六態様の研磨パッドであって、研磨面と交差する方向に延びて研磨層を貫通する第一貫通穴と、研磨面と交差する方向に延びて、前記支持層を貫通し、第一貫通穴と連続する第二貫通穴と、を有し、第二貫通穴の壁面に止水部が形成されている。
第八態様の研磨パッドは、第ニ態様、第六態様、または第七態様の研磨パッドであって、研磨層は支持層より硬い材料で形成されている。
【0014】
〔実施形態〕
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
【0015】
[第一実施形態]
図1に示すように、第一実施形態の研磨パッド1は円板状であり、非連続気泡構造の多孔質材である発泡ゴムで形成されている。研磨パッド1は、非連続気泡構造の多孔質材である発泡ゴムの板状物を、円板状に切り取ることで得られる。円板状に切り取る方法としては、円筒状の刃を有するトムソン型を用いて型抜きする方法が挙げられる。
研磨パッド1の厚さは2.0mm以上50mm以下である。以下に示す方法で測定した研磨パッド1の吸水率は5%以下である。つまり、研磨パッド1は止水素材からなり、表面の全部に止水部が形成されている。
【0016】
<吸水率の測定方法>
先ず、50mm×50mm×厚さ10mmの板片状のサンプルを用意して、このサンプルの質量を測定する。次に、このサンプルが入る容器を用意し、この容器に純水を入れた後、全体が純水に浸漬するようにサンプルを沈めて、24時間静置する。次に、容器内からサンプルを取り出して、表面に付着した純水を乾いた布で軽く拭き取った後に、サンプルの質量を測定する。
【0017】
純水に浸漬させる前のサンプルの質量(W1:g)と、浸漬させて乾いた布による処理を行った後のサンプルの質量(W2:g)を、下記の(1) 式に代入して、吸水率(C)を算出する。
吸水率(%)=((W2−W1)/25)×100…(1) 式
(1) 式中の「25」はサンプルの体積(cm3)であり、(1) 式により、サンプルの1cm3当たりの吸水量(g/cm3)が「吸水率」として算出される。
【0018】
この実施形態の研磨パッド1は、研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1を用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、研磨スラリーを被研磨面に供給し、研磨パッド1の研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1を円板の軸を中心に回転する。
この研磨方法を、発泡ポリウレタン製の研磨パッドを用いて行った場合、スラリーが研磨パッドにしみ込み、このしみ込んだスラリーが外部に飛散する。飛散したスラリーは研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1を用いた場合には、止水素材からなる研磨パッド1にスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0019】
[第二実施形態]
図2に示すように、第ニ実施形態の研磨パッド1Aは、研磨面10を有する円板状の研磨層2と、円板状の支持層3とからなる。支持層3は、研磨層2の研磨面10とは反対面21に接着剤または両面テープで固定されている。
研磨層2は、スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドである。 支持層3は非連続気泡構造の発泡ゴムで形成されている。前述の方法で測定された支持層3の吸水率は5%以下である。つまり、支持層3は止水素材からなり、研磨パッド1Aの表面の一部に止水部が形成されている。
【0020】
研磨層2の厚さは0.5mm以上5.0mm以下である。支持層3の厚さは2.0mm以上50mm以下である。
研磨パッド1Aは、例えば、以下の方法で得ることができる。
スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドを円板状に切り取ることで、研磨層2を得る。非連続気泡構造の多孔質材である発泡ゴムの板状物を円板状に切り取ることで、支持層3を得る。円板状に切り取る方法としては、円筒状の刃を有するトムソン型を用いて型抜きする方法が挙げられる。研磨層2の研磨面10とは反対面21に、支持層3を接着剤または両面テープで貼り付ける。
【0021】
この実施形態の研磨パッド1Aは研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1Aを用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、研磨スラリーを被研磨面に供給し、研磨パッド1Aの研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1を円板の軸を中心に回転する。
この研磨方法を、研磨パッド1Aの支持層3を発泡ポリウレタン製の支持層に代えた研磨パッドを用いて行った場合、スラリーが研磨パッドの支持層にしみ込み、このしみ込んだスラリーが外部に飛散する。飛散したスラリーは研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1Aを用いた場合には、止水素材からなる支持層3にスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0022】
[第三実施形態]
図3に示すように、第三実施形態の研磨パッド1Bは、円板状の本体部4と、その外周面に形成された止水部5とからなる。本体部4は、発泡ポリウレタン(連続気泡構造の多孔質材)製である。止水部5は、発泡ゴム(非連続気泡構造の多孔質材)製である。前述の方法で測定された止水部5の吸水率は5%以下である。つまり、本体部4が連続気泡層であり、連続気泡層の研磨面10以外の表面の一部に止水部5が形成されている。
【0023】
研磨パッド1Bの厚さ、つまり、本体部4の厚さおよび止水部5の軸方向寸法は、2.0mm以上50mm以下である。
研磨パッド1Bは、例えば、以下の方法で得ることができる。
本体部4は、円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ポリウレタンの板状物から円板状に型抜きする方法で得る。止水部5は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ゴムの板状物から円環状に型抜きする方法で得る。外周面に接着剤を付けた本体部4を止水部5の内周面に嵌めて、接着剤を硬化させる。
【0024】
この実施形態の研磨パッド1Bは研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1Bを用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、研磨スラリーを被研磨面に供給し、研磨パッド1Bの研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1Bを円板の軸を中心に回転する。
この研磨方法を、止水部5のない発泡ポリウレタン製の研磨パッドを用いて行った場合、研磨パッドの外側に存在するスラリーが研磨パッドの外周部から研磨パッドにしみ込み、このしみ込んだスラリーが外部に飛散する。飛散したスラリーは研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1Bを用いた場合には、外周面に止水部5が形成されていることで、発泡ポリウレタン製の本体部4に外周部からスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0025】
[第四実施形態]
図4に示すように、第四実施形態の研磨パッド1Cは、円板状の研磨層2と、円板状の支持層6と、支持層6の外周面に形成された止水部5と、からなる。
研磨層2は、スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドである。 支持層6は、発泡ポリウレタン(連続気泡構造の多孔質材)製である。止水部5は、発泡ゴム(非連続気泡構造の多孔質材)製である。前述の方法で測定された止水部5の吸水率は5%以下である。つまり、支持層6が連続気泡層であり、連続気泡層の研磨面10以外の表面の一部に止水部5が形成されている。
【0026】
研磨層2の厚さは0.5mm以上5.0mm以下である。支持層6の厚さは2.0mm以上50mm以下である。止水部5の軸方向寸法は支持層6の厚さと同じである。
研磨パッド1Cは、例えば、以下の方法で得ることができる。
研磨層2は、スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドを円板状に切り取ることで得る。支持層6は、円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ポリウレタンの板状物から円板状に型抜きする方法で得る。止水部5は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ゴムの板状物から円環状に型抜きする方法で得る。
【0027】
得られた研磨層2と支持層6と止水部5を用い、先ず、外周面に接着剤を付けた支持層6を止水部5の内周面に嵌めて一体化する。次に、この一体化されたものを、研磨層2の研磨面10とは反対面21に接着剤または両面テープで貼り付ける。
この実施形態の研磨パッド1Cは研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1Cを用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、研磨スラリーを被研磨面に供給し、研磨パッド1Cの研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1Cを円板の軸を中心に回転する。
【0028】
この研磨方法を、発泡ポリウレタン製の支持層6のみが研磨層2の研磨面とは反対面21に形成されている研磨パッドを用いて行った場合、スラリーが研磨パッドの支持層にしみ込み、このしみ込んだスラリーが外部に飛散する。飛散したスラリーは研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1Cを用いた場合には、発泡ポリウレタン製の支持層6の外周面に止水部5が形成されていることで、支持層6に外周部からスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0029】
[第五実施形態]
図5に示すように、第五実施形態の研磨パッド1Dは、円板状で中心穴41を有する本体部4と、中心穴41の壁面に形成された円環状の止水部51とからなる。本体部4は、発泡ポリウレタン(連続気泡構造の多孔質材)製である。中心穴41は、研磨面10に対して垂直に延びる貫通穴である。止水部51は、発泡ゴム(非連続気泡構造の多孔質材)製である。前述の方法で測定された止水部5の吸水率は5%以下である。
【0030】
止水部51の中心穴51aは、研磨面10に対して垂直に延びる貫通穴である。止水部51の中心穴51aが研磨パッド1Dの中心穴として存在する。つまり、本体部4が連続気泡層であり、連続気泡層の研磨面10以外の表面の一部に止水部51が形成されている。また、中心穴41が、連続気泡層を貫通する貫通穴である。
研磨パッド1Dの厚さ、つまり、本体部4の厚さおよび止水部51の軸方向寸法は、2.0mm以上50mm以下である。
【0031】
研磨パッド1Dは、例えば、以下の方法で得ることができる。
本体部4は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ポリウレタンの板状物から、中心穴41を有する円板状に型抜きする方法で得る。止水部51は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ゴムの板状物から円環状に型抜きする方法で得る。外周面に接着剤を付けた止水部51を本体部4の中心穴41に嵌めて、接着剤を硬化させる。
【0032】
この実施形態の研磨パッド1Dは研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1Dを用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、被研磨面の上側に研磨パッド1Dを配置し、中心穴51aから研磨スラリーを被研磨面に滴下しながら、研磨パッド1Dの研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1Dを円板の軸を中心に回転する。
【0033】
この研磨方法を、止水部51がなく、中心穴を有する発泡ポリウレタン製の研磨パッドを用いて行った場合、スラリーが研磨パッドにしみ込み、このしみ込んだスラリーが強い遠心力により外部に飛散するため、多くのスラリーが研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1Dを用いた場合には、中心穴41の壁面に止水部51が形成されていることで、発泡ウレタン製の本体部4にスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0034】
[第六実施形態]
図6に示すように、第六実施形態の研磨パッド1Eは、円板状で中心穴(第一貫通穴)22を有する研磨層2と、円板状で中心穴(第二貫通穴)61を有する支持層6と、中心穴61の壁面に形成された円環状の止水部51と、からなる。研磨層2の中心穴22の中心と支持層6の中心穴61の中心は同じである。止水部51の中心穴51aおよび研磨層2の中心穴22は同じであり、これらの穴が研磨パッド1Eの中心穴として存在する。
【0035】
研磨層2は、スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドである。 支持層6は、発泡ポリウレタン(連続気泡構造の多孔質材)製である。止水部51は、発泡ゴム(非連続気泡構造の多孔質材)製である。前述の方法で測定された止水部5の吸水率は5%以下である。つまり、支持層6が連続気泡層であり、連続気泡層の研磨面10以外の表面の一部に止水部51が形成されている。
【0036】
研磨層2の厚さは0.5mm以上5.0mm以下である。支持層6の厚さは2.0mm以上50mm以下である。止水部51の軸方向寸法は支持層6の厚さと同じである。
研磨パッド1Eは、例えば、以下の方法で得ることができる。
研磨層2は、スエードタイプまたは不織布タイプの研磨パッドを、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、中心穴22を有する円板状に型抜きする方法で得る。支持層6は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ポリウレタンの板状物から、中心穴61を有する円板状に型抜きする方法で得る。止水部51は、直径が異なる二つの円筒状の刃を有するトムソン型を用いて、発泡ゴムの板状物から円環状に型抜きする方法で得る。
【0037】
得られた研磨層2と支持層6と止水部51を用い、先ず、外周面に接着剤を付けた止水部51を、支持層6の中心穴61に嵌めて一体化する。次に、この一体化されたものを、研磨層2の研磨面10とは反対面21に接着剤または両面テープで貼り付ける。
この実施形態の研磨パッド1Eは研磨スラリーによる研磨方法で使用される。例えば、研磨パッド1Eを用いて、研磨面10より大きな被研磨面を研磨する。具体的には、被研磨面の上側に研磨パッド1Eを配置し、止水部51の中心穴51aから研磨層2の中心穴22を介して研磨スラリーを被研磨面に滴下しながら、研磨パッド1Eの研磨面10を被研磨面に押し当てて、研磨パッド1Eを円板の軸を中心に回転する。
【0038】
この研磨方法を、止水部51がなく、研磨層2の中心穴22と同じ位置に中心穴を有する発泡ポリウレタン製の支持層が、研磨層2の研磨面とは反対面21に形成されている研磨パッドを用いて行った場合、スラリーが研磨パッドの支持層にしみ込む。しみ込んだスラリーが強い遠心力により外部に飛散するため、多くのスラリーが研磨に使用されない。これに対して、この実施形態の研磨パッド1Eを用いた場合には、中心穴61の壁面に止水部51が形成されていることで、発泡ウレタン製の支持層6にスラリーがしみ込みにくいため、スラリーが外部に飛散する量が減少する。よって、スラリーの利用効率が高くなる。
【0039】
<止水部について>
止水部は、前述の方法で測定された吸水率が5%以下であることが好ましい。また、研磨パッドが単層で、連続気泡構造の多孔質材からなる連続気泡層である場合、止水部は連続気泡層と同じか類似の硬さであることが好ましい。よって、この場合、止水部は非連続気泡構造の多孔質材からなることが好ましい。
【0040】
また、研磨パッドが研磨層と支持層とからなる二層構造で、支持層が連続気泡構造の多孔質材からなる連続気泡層である場合、止水部は支持層と同じか類似の硬さであることが好ましい。よって、この場合、止水部は非連続気泡構造の多孔質材からなることが好ましい。また、この場合、研磨層の一部が連続気泡層であっても、研磨層の連続気泡層の厚さは支持層の厚さと比較して極薄いため、研磨層に止水部を設ける必要はない。
【0041】
単層の場合の研磨パッドおよび二層構造の場合の支持層を構成する連続気泡構造の多孔質材としては、発泡ポリウレタンまたは発泡ポリエチレンを用いることが好ましい。
止水部を構成する非連続気泡構造の多孔質材としては、発泡ゴム(クロロプレンゴムフォーム、エチレン・プロピレンゴムフォーム、シリコーンゴムフォーム、フッ素ゴムフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等)が挙げられる。これらのうち、クロロプレンゴムフォームおよびエチレン・プロピレンゴムフォームは、非連続気泡構造が得られやすいため好ましい。
止水部の形成方法としては、上述の実施形態に記載された方法以外に以下の方法が挙げられる。止水材料を含む液体を塗布して乾燥させる方法、連続気泡層に接着剤などを含浸させて硬化することで連続気泡層の穴を塞ぐ方法、止水材料からなるテープを貼り付ける方法などである。
【0042】
<支持層について>
研磨パッドが研磨層と支持層とからなる二層構造の場合、つまり、研磨層の研磨面とは反対面に支持層が形成されている場合、研磨層は支持層より硬い材料からなることが好ましい。つまり、支持層は研磨層より軟質であることが好ましく、これにより、被研磨面が曲面の場合に、研磨層の研磨面が被研磨面に追従し易くなる。
研磨パッドが、研磨層と支持層を有する場合、研磨層の硬さはC硬度で40以上80以下であり、支持層の硬さは、F硬度で30以上90以下であることが好ましい。F硬度90はC硬度10未満である。
【0043】
C硬度とは、JIS K7312:1996の付属書2「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」で規定された試験方法による加圧面が密着した直後の硬さである。この試験方法では、スプリング硬さ試験機として、試験片の表面に試験機の加圧面を密着させたとき、加圧面の中心の孔からばね圧力で突き出ている押針が試験片によって押し戻される距離を、硬さとして目盛に示す構造のものを用いる。試験片の測定面は、少なくとも試験機の加圧面以上の大きさのものとする。
F硬度とは、高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計F型」で測定された硬度である。アスカーゴム硬度計F型は、特に軟らかい試料の硬さ測定で適切な指示値が得られるよう、大きなインデンタと加圧面を持ったデュロメータであり、押針の形状は高さ2.54mm直径25.2mmの円筒形である。
【0044】
<好ましい形態など>
研磨パッドが研磨層と支持層とからなる二層構造の場合、つまり、研磨層の研磨面とは反対面に支持層が形成されている場合、研磨層の厚さは0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、研磨層がうねりを除去し易く、研磨層が支持層と同様に変形しやすい。
【0045】
研磨面の直径は10mm以上200mm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、スラリーが研磨面の外縁部から中央部まで行き渡るまでにかかる時間が短くできるとともに、曲面状の被研磨面に研磨面が追従し易い。
被研磨面は、合成樹脂からなる面だけでなく、金属面、シリコンウェーハ面、ガラス面、サファイア面などであってもよい。
【0046】
<研磨層の製造方法の例示>
スエードタイプ:例えば合成繊維と合成ゴム等からなる不織布や編織布、もしくはポリエステルフィルム等を基材にする。基材の上面に、ポリウレタン系溶液を塗布し、湿式凝固法によりポリウレタン系溶液を凝固することで、連続気孔を有する多孔層の表皮層を形成する。必要に応じてその表皮層の表面を研削、除去する。
【0047】
不織布タイプ:例えばポリエステル短繊維よりなるニードルパンチされた不織布に、ポリウレタンエラストマー溶液を含浸させる。この状態の不織布を、水に浸漬して湿式凝固した後、水洗、乾燥し、乾燥後に両表面を研削処理する。あるいは、例えばポリエステル短繊維よりなるニードルパンチされた不織布に、熱硬化性ウレタン樹脂溶液を含浸させる。この状態の不織布を乾燥することで、不織布に熱硬化性ウレタン樹脂を固着させた後、両表面をサンディング加工して、凹凸を除去する。
【0048】
<研磨方法>
この発明の研磨パッドは、研磨スラリーによる研磨方法であって、研磨面より大きな被研磨面を研磨する方法で使用されることが好ましい。また、研磨パッドの研磨面を被研磨面に押し当てて、研磨パッドを移動する研磨方法で使用されることが好ましい。なお、研磨スラリーによる研磨方法であれば、これら以外の方法で使用されてもよい。
【0049】
この発明の研磨パッドが研磨面と交差する方向に延びる貫通穴を有する場合、被研磨面の上側に研磨パッドを配置し、この貫通穴から研磨スラリーを被研磨面に滴下しながら、研磨パッドの研磨面を被研磨面に押し当てて、研磨パッドを回転する研磨方法を採用することができる。この研磨方法では、貫通穴から連続気泡層にしみ込んだ研磨スラリーが、研磨パッド回転時の強い遠心力で研磨パッドの外部に飛散し易い。そのため、この発明の止水部を有する研磨パッドを用いることで、スラリーの利用効率を効果的に上げることができる。
また、研磨スラリーの被研磨面への供給方法としては、上述の貫通穴を介して滴下する方法、研磨パッドの外側に滴下する方法、スラリーを噴霧する方法などが挙げられる。
【0050】
<研磨スラリー>
研磨スラリーによる研磨方法では、砥粒を含むスラリーを使用する。スラリーに含まれる砥粒としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、酸化鉄及び酸化マンガン等のケイ素または金属元素の酸化物からなる粒子や、熱可塑性樹脂からなる有機粒子、又は有機無機複合粒子などから選ばれる砥粒が挙げられる。
【0051】
例えば、アルミナ粒子を含むアルミナスラリーを用いると、高研磨速度が可能になり、容易に入手が可能であるため好ましい。
アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナなどの結晶形態が異なるものがあり、また水和アルミナと呼ばれるアルミニウム化合物も存在する。研磨速度の観点からは、α−アルミナを主成分とする粒子を砥粒として含むスラリーを使用することがより好ましい。
【0052】
砥粒の平均粒子径は0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上5.0μm以下である。平均粒子径が大きくなるにつれて、研磨速度は向上する。平均粒子径が上記の範囲内にある場合、研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることが容易となる。平均粒子径が小さくなるにつれて、砥粒の分散安定性は向上し、研磨面のスクラッチ(傷)発生が抑制される。
【0053】
平均粒子径が上記の範囲内にある場合、砥粒の分散安定性と、研磨面の表面精度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることが容易となる。
スラリー中の砥粒の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨速度は向上する。砥粒の含有量が上記の範囲内にある場合、コストを抑えつつ、研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることが容易となる。また、研磨後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。
【0054】
スラリーは、砥粒とその分散剤の他、必要に応じて潤滑油、有機溶剤、界面活性剤、増粘材などの他の成分を適宜含んでもよい。潤滑油は、合成油、鉱物油、植物性油脂又はそれらの組み合わせであってよい。有機溶剤は、炭化水素系溶剤の他、アルコール、エーテル、グリコール類やグリセリン等であってよい。界面活性剤は、いわゆるアニオン、カチオン、ノニオン、両性界面活性剤であってよい。増粘材は、合成系増粘材、セルロース系増粘材、又は天然系増粘材であってよい。
【実施例】
【0055】
以下に示すサンプルNo.1〜No.10 の各研磨パッドを用意した。
[サンプルNo.1]
サンプルNo.1の研磨パッドは、図1に示す第一実施形態の研磨パッド1に対応し、直径が90mmで厚さが10mmの円板状である。前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。つまり、研磨パッドの全体が止水素材で形成されている。
【0056】
[サンプルNo.2]
サンプルNo.2の研磨パッドは、図2に示す第ニ実施形態の研磨パッド1Aに対応し、研磨層2と支持層3とからなる。
研磨層2は、不織布タイプの研磨パッドであり、直径が90mmで厚さが1.3mmの円板状である。支持層3は、研磨層2の研磨面10とは反対面21に固定されている。支持層3は、直径が90mmで厚さが10mmの円板状である。
支持層3は、前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。つまり、支持層3の全体が止水素材で形成されている。
【0057】
[サンプルNo.3]
サンプルNo.3の研磨パッドは、図3に示す第三実施形態の研磨パッド1Bに対応し、本体部4と、本体部4の外周面に固定された止水部5とからなる。つまり、研磨パッドの外周部に止水部5が形成されている。
【0058】
本体部4は、発泡ポリウレタン製で直径が80mmで厚さが10mmの円板状である。止水部5は、内径が80mmで、外径が90mmで、軸方向寸法が10mmの円環状である。止水部5は、前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。
【0059】
[サンプルNo.4]
サンプルNo.4の研磨パッドは、図4に示す第ニ実施形態の研磨パッド1Cに対応し、研磨層2と支持層6と止水部5からなる。
研磨層2は、不織布タイプの研磨パッドであり、直径が90mmで厚さが1.3mmの円板状である。支持層6は、発泡ポリウレタン製で直径が80mmで厚さが10mmの円板状である。止水部5は、内径が80mmで、外径が90mmで、軸方向寸法が10mmの円環状である。止水部5は、前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。
止水部5の内周面に支持層6が固定されている。つまり、支持層6の外周部に止水部5が形成されている。支持層6と止水部5は、研磨層2の研磨面10とは反対面21に固定されている。
【0060】
[サンプルNo.5]
サンプルNo.5の研磨パッドは、図5に示す第五実施形態の研磨パッド1Dに対応し、中心穴41を有する本体部4と、中心穴41の壁面に形成された止水部51とからなる。
本体部4は、発泡ポリウレタン製で、直径が90mmで、中心穴が20mmで、厚さが10mmである。止水部51は、内径(中心穴51aの直径)が10mmで、外径が20mmで、軸方向寸法が10mmの円環状である。止水部51は、前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。
【0061】
[サンプルNo.6]
サンプルNo.6の研磨パッドは、図6に示す第六実施形態の研磨パッド1Eに対応し、中心穴22を有する研磨層2と、中心穴61を有する支持層6と、中心穴61の壁面に形成された止水部51とからなる。
研磨層2は、不織布タイプの研磨パッドであり、外径が90mmで、中心穴22が10mmで、厚さが1.3mmである。支持層6は、発泡ポリウレタン製で、直径が90mmで、中心穴が20mmで、厚さが10mmである。止水部51は、内径(中心穴51aの直径)が10mmで、外径が20mmで、軸方向寸法が10mmの円環状である。止水部51は、前述の方法で測定した吸水率が5%以下のクロロプレンゴムフォーム製板状物から、トムソン型を用いて型抜きされたものである。
支持層6の内周面に止水部5が固定されている。支持層6と止水部5は、研磨層2の研磨面10とは反対面21に固定されている。
【0062】
[サンプルNo.7]
図7に示すように、サンプルNo.7の研磨パッド100は、発泡ポリウレタン製で、直径が90mmで厚さが10mmの円板状である。
[サンプルNo.8]
図8に示すように、サンプルNo.8の研磨パッド100Aは、研磨層2と支持層3とからなる。
研磨層2は、不織布タイプの研磨パッドであり、直径が90mmで厚さが1.3mmの円板状である。支持層3は、発泡ポリウレタン製で、直径が90mmで厚さが10mmの円板状であり、研磨層2の研磨面10とは反対面21に固定されている。
【0063】
[サンプルNo.9]
図9に示すように、サンプルNo.9の研磨パッド100Bは、発泡ポリウレタン製で、中心穴101を有する円板状である。研磨パッド100Bの直径は90mmで、中心穴は20mmで、厚さは10mmである。
[サンプルNo.10 ]
図10に示すように、サンプルNo.10 の研磨パッド100Bは、中心穴22を有する研磨層2と、中心穴61aを有する支持層6とからなる。
研磨層2は、不織布タイプの研磨パッドであり、外径が90mmで、中心穴22が10mmで、厚さが1.3mmである。支持層6は、発泡ポリウレタン製で、直径が90mmで、中心穴が10mmで、厚さが10mmである。支持層6は、研磨層2の研磨面10とは反対面21に固定されている。
【0064】
[試験方法]
各サンプルの研磨パッドを用い、以下の方法で研磨試験を行った。
研磨対象物は、合成樹脂塗料で塗装された300×250mmの金属板であり、塗膜の厚さは20μmである。つまり、被研磨面は合成樹脂からなる平面状の塗膜面であり、研磨面は被研磨面より小さい。
【0065】
使用した研磨装置は、ファナック(株)製の産業用ロボット「M−20i」のアームの先端に、ダブルアクションポリッシャを取り付けた装置である。アームに付与された押し付け力で各サンプルの研磨パッドを、水平に保持された被研磨面に押し付けながら、スラリーを被研磨面に滴下しながら、ポリッシャを回転することで研磨を行った。
スラリーの滴下は、No.1〜No.4およびNo.7,10では研磨パッドの外側(外周面から30mm離れた位置)に対し行い、No.5,6,9,10では、研磨パッドの中心穴から行った。これ以外の研磨条件は、全てのサンプルについて同じにした。
【0066】
使用したスラリーは、平均粒径が0.4μmであるアルミナ砥粒を含む。使用したスラリーの粘度は25℃で0.11Pa・s(1.1cP)である。砥粒の平均粒径は、(株)堀場製作所製の粒子径分布測定装置「Horiba L−950」を用いて測定した。
この研磨を、各サンプルで3セット行ない、滴下したスラリーが研磨パッドにしみ込んでいるかと、しみ込んだスラリーが外部に飛散しているかを調べた。その結果、止水部を有するNo.1〜No.6の研磨パッドでは、しみ込みが認められなかったため、飛散も認められなかった。これに対して、止水部を有さないNo.7〜No.10 の研磨パッドでは、しみ込みが認められ、しみ込んだスラリーの飛散も認められた。
各サンプルの研磨パッドの構成(相違点)と、試験結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
この結果から、止水部を有することで、研磨パッドへスラリーがしみ込みにくくなり、スラリーの利用効率が高くなることが分かる。
【符号の説明】
【0068】
1 研磨パッド
1A 研磨パッド
1B 研磨パッド
1C 研磨パッド
1D 研磨パッド
1E 研磨パッド
10 研磨面
2 研磨層
21 研磨層の研磨面とは反対面
22 研磨層の中心穴(第一貫通穴)
3 支持層
4 研磨パッドの本体部
41 本体部の貫通穴(連続気泡層を貫通する貫通穴)
5 止水部
51 止水部
51a 止水部の中心穴
6 支持層
61 支持層の中心穴(第二貫通穴)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10