【実施例】
【0054】
以下、本発明について、実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(合成例)
〈合成例1:シロキサン樹脂B-S1〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)150g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液33.3gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを234g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中100mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S1溶液を調整した。
【0056】
〈合成例2:シロキサン樹脂B-S2〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)50gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)46.8g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液18.5gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを161g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中50mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S2溶液を調整した。
【0057】
〈合成例3:シロキサン樹脂B-S3〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)25gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)46.8g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液12.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを122g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中33mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S3溶液を調整した。
【0058】
〈合成例4:シロキサン樹脂B-S4〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-13)25gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)42.7g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液16.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを99.2g加え、固形分を30w%とした3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを用いないシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S4溶液を調整した。
【0059】
〈合成例5:シロキサン樹脂C-S1〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)50g、メチルシリケート(コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )23.9g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液20.0gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを103g加え、固形分30w%の全珪素原子中50mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中50mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S溶液を得た。
【0060】
〈合成例6:シロキサン樹脂C-S2〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)70g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )14.3g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液20.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを124g加え、固形分30w%の全珪素原子中70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中30 mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S2溶液を得た。
【0061】
〈合成例7:シロキサン樹脂C-S3〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)30g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )33.4g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液19.1gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを81.5g加え、固形分30w%の全珪素原子中30mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中70mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S3溶液を得た。
【0062】
〈合成例8:シロキサン樹脂C-S4〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)30g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )43g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液22.6gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを91g加え、固形分30w%の全珪素原子中25mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中75mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S4溶液を得た。
【0063】
〈合成例9:シロキサン樹脂C-S5〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)60g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )7.2g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液16gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを101g加え、固形分30w%の全珪素原子中75mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中25mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S5溶液を得た。
【0064】
〈合成例10:シロキサン樹脂C-S6〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)100g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液22.2gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを156g加え、固形分30w%の全珪素原子中100mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S6溶液を得た。
【0065】
〈合成例11:シロキサン樹脂C-S7〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)50g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )25.5g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液21.3gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを55.9g加え、固形分30w%のシロキサン樹脂、すなわち、3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを含まず、全珪素原子中50mol%が3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中50mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S7溶液を得た。
【0066】
(プライマー層コーティング剤の調整)
下記表1に記載の重量部で配合し、プライマー組成物の調整を行った。プライマーの弾性率は溶剤を除いたプライマー組成物をガラス板上に塗布し、ロールコーターを用いて厚さ0.2mmになるようにキャスト(流延)し、高圧水銀ランプを用いて400mW/cm
2の照度で積算露光量8000mJ/cm
2の紫外線を酸素濃度1%未満の環境で照射し、弾性率測定用試験片を作成した。引張弾性率(試験片:8mm x 80mm x 0.2mm、試験速度0.5mm/min、チャック間距離50mm)の値を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
なお、使用した材料は、以下のとおり。
P-A:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートDCP-A)
P-B:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートTMP-A)
P-C:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社 UA-306H)
P-D:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートDPE-6A)
P-E:無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社 UF-8001G)
重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社 Irgacure 819)
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社 TINUVIN384-2)
光安定剤:ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社 TINUVIN5100)
溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0069】
(中間層コーティング剤の調整)
下記表2に記載の重量部で配合し、中間層組成物の調整を行った。
【0070】
【表2】
【0071】
なお、合成例のシロキサン樹脂とともに配合した材料は、以下のとおり。
重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社 Irgacure 819)
溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0072】
(ハードコートコーティング剤の調整)
下記表3に記載の重量部で配合し、ハードコート組成物の調整を行った。
【0073】
【表3】
【0074】
なお、合成例のシロキサン樹脂とともに配合した材料は、以下のとおり。
無機微粒子D-1:表面処理した粒径20-25nmシリカ25w%メトキシプロピルアセテート/メトキシプロパノール溶液(ビックケミー・ジャパン株式会社 NANOBYK-3650)
無機微粒子D-2:葉面処理した粒径20-25nmアルミナ30w%メトキシプロピルアセテート溶液(ビックケミー・ジャパン株式会社 NANOBYK-3610)
【0075】
(実施例1)
<プライマー層の成膜>
厚み3mmのポリカーボネート平板(カーボグラスポリッシュ:旭硝子株式会社製)の表面を2-プロパノールを含ませたウエス(拭布)で拭き、乾燥させたポリカーボネート上にプライマーコーティング剤P-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させたプライマー組成物に高圧水銀ランプを用いて140mW/cm
2の照度で積算露光量400mJ/cm
2の紫外線を酸素濃度1〜3%の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時のプライマー層の厚みは15μmであった。
【0076】
<中間層の成膜>
成膜したプライマー層上に中間層コーティング剤M-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させた中間層組成物に高圧水銀ランプを用いて140mW/cm
2の照度で積算露光量200mJ/cm
2の光を酸素濃度1〜3%の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時の中間層層の厚みは2μmであった。
【0077】
<ハードコートの成膜>
成膜した中間層上にハードコートコーティング剤H-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させたハードコート組成物に高圧水銀ランプを用いて400mW/cm
2の照度で積算露光量4000mJ/cm
2の紫外線を酸素濃度1%未満の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時の中間層層の厚みは0.5μmであった。
こうして得られた透明積層体について、各物性を評価し、その結果を表4に示す。
【0078】
(実施例2〜12、比較例1〜8)
下記表の記載のプライマー組成物、中間層コーティング剤組成物、ハードコートコーティング剤組成物の組み合わせで、実施例1と同様に透明積層体の作成と評価を行った。それらの結果を表4及び表5に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
各物性の評価方法は、以下のとおり。
【0082】
(耐テーバー摩耗性)
JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験を行い試験前後のヘイズ値より耐テーバー摩耗性の評価を行った。ΔH(%)が小さいものほど耐磨耗性良好と評価した。
ΔH=(テーバー摩耗試験後のヘイズ)―(試験前のヘイズ)
〇:0<ΔH≦5
△:5<ΔH≦9
×:ΔH>9%以上
【0083】
(透明性)
ヘイズ(%)はJIS K7136に準拠、全光線透過率(%)はJIS K7361に準拠して濁度計NDH−2000(日本電色工業製)を用いて測定した値で透明性評価を行った。
〇:H<1
×:H≧1
【0084】
(付着性)
硬化塗膜にカッターナイフで縦横各11本の2mm間隔の切り込みを入れて100マスの碁盤目を形成し、この碁盤目上にニチバン(株)製のセロハンテープを貼り付け、JIS K5400に準じてセロハンテープを剥離した。セロハンテープ剥離後の剥離したマス目数/100マスで付着性を評価した。
〇:0/100
×:1/100〜100/100
【0085】
(耐熱性)
各温度のオーブンに入れた試験片を1時間後に取り出し、クラックの発生の有無を目視で評価しクラックの発生しない温度を評価した。
〇:130℃
△:120℃
×:110℃
【0086】
(耐候性)
ダイプラウィンテス社メタルウェザー、フィルター:KF−1、放射照度:80W/cm
2 ⇒800W/m2 、運転モード:L/R/D=4時間/4時間/4時間
L:照射、R:休止、D:湿潤
L条件 BP 63℃、40%
R条件 BP 60℃、80%
D条件 BP 30℃、98%
水噴霧 D条件の直前 10秒
でL−R−Dを1サイクルとして所定試験サイクル数毎に試験片を取り出し、目視でクラックや変色、剥離の有無について評価し異常が見られないサイクル数を耐候性の評価とした。
〇:30サイクル
△:20サイクル
×:10サイクル
【0087】
[総合判定]
上記評価結果から下記に示す方法で判定した。
〇:すべての評価項目が「〇」。
△:「△」が一つ以上あり、「×」がないもの。
×:「×」が一つ以上あるもの。
【0088】
(実施例、比較例の考察)
実施例1〜12ではプライマー層に分子量500未満の(メタ)アクリレートモノマーが10%以上含まれ弾性率が1000〜4000MPa、厚みが5〜50μmの範囲であり、中間層が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを加水分解したシロキサン樹脂が用いられた膜厚0.5〜5μmであり、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解物からなるシロキサン樹脂も用い膜厚3μm未満のハードコートが用いられた積層体であり、耐テーバー摩耗性に優れ、初期ヘイズも小さく透明性であり、付着性、耐熱性と耐候性に優れた積層体であった。実施例の中でも実施例1〜9は、実施例10〜12に比べ総合的に良い評価結果が得られた。
実施例10では実施例1〜9比べ、耐熱性と耐候性が低い結果であった。耐熱性と耐候性は全珪素原子中に含まれるアルキルシリケートの割合が少ない方が良いことが実施例10より言える。このことはアルキルシリケートの縮合によって形成される緻密なシロキサン結合の架橋体は硬く、脆い特性を持っているために耐熱および耐候性試験環境下で発生する湿熱寸法変化に追従できずクラックが発生しているといえる。
一方で実施例11では耐テーバー摩耗性が実施例1〜10に比べ劣る結果であった。耐テーバー摩耗性は、全珪素原子中に含まれるアルキルシリケートの割合が多いと、アルキルシリケートの縮合によって形成される緻密なシロキサン結合の架橋体が耐テーバー摩耗性に効果があると言える。
実施例10、11からハードコート組成物として用いられるシロキサン樹脂(C-S)は3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランとアルキルシリケートに最適な比率があり、耐テーバー摩耗性と耐熱性、耐候性を高いレベルで両立できる範囲は、全珪素原子中30〜70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランであり、全珪素原子中30〜70mol%がアルキルシリケートであると言える。
実施例12では実施例1〜9に比べ、耐テーバー摩耗性が低い結果であった。中間層に全珪素原子中の33mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランと他の実施例より少なく柔らかい中間層であり、耐テーバー摩耗性が劣る結果になったと言える。実施例9の結果を含め、中間層として良好な耐テーバー摩耗性を得るためには中間層の全珪素原子中の50mol%以上が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランであると言える
【0089】
比較例1ではアルキルシリケートが含まれず、比較例2では(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランが含まれないハードコート組成物であり、テーバー摩耗性が劣る結果が得られている。高いテーバー摩耗性を発現するためには、アルキルシリケートと(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの両方を加水分解したシロキサン樹脂を用いることで強固なシロキサン結合とアクリルの架橋構造体が構築されことが必要であると言える。
比較例3ではハードコートの膜厚が実施例に比べ10μmと厚く、耐摩耗性と付着性は得られているが、耐熱試験および耐候性試験でクラックが発生していることから耐熱性や耐候性試験に優れる積層体としてハードコート膜厚を3μm以下に薄くする必要がある。
比較例4では、中間層に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを用いられておらず、(メタ)アクリル基が無い分トリアルコキシシランで形成されるシロキサン架橋構造が柔軟になってしまい中間層が柔らかくなったため耐テーバー摩耗性の値が悪化している。よって中間層には(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン含む加水分解縮合物からなるシロキサン樹脂を用いる必要がある。
中間層が厚い実施例に比べ10μmと厚い比較例5では、耐摩耗性と付着性は得られているが、耐熱試験および耐候性試験でクラックが発生している。このこと耐熱性や耐候性に優れる積層体としては、中間層の膜厚を比較例5よりも薄くする必要がある。
比較例6では弾性率の高いプライマーを用いた積層体であり、耐熱性と耐候性に劣る。プライマーの弾性率が高いために、耐熱および耐候試験環境下で発生する透明樹脂基材であるポリカーボネートとの寸法変化挙動に追従できずクラックが発生してしまっている。また弾性率が低いプライマーを用いた比較例8では、プライマーが柔らかい為、ハードコート層や中間層が硬い場合でも、十分な耐テーバー摩耗性が得られていない結果になっている。比較例6、7よりプライマーの弾性率は1000〜4000MPaの範囲でなければ、耐熱性や耐候性、耐テーバー摩耗性を両立することができない。
比較例9ではプライマー組成物に透明樹脂基材であるポリカーボネートを浸食する分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーが含まれていない為に十分な付着性を得ることができない。十分な付着性を得るためには分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む必要がある。