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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-177772(P2017-177772A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】透明積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170908BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20170908BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20170908BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20170908BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20170908BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   B32B27/00 101
   B32B27/08
   B05D1/36 Z
   B05D5/06 F
   C09D183/07
   C09D183/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-73306(P2016-73306)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】西岡 徳真
(72)【発明者】
【氏名】桂 大詞
(72)【発明者】
【氏名】河邉 光祥
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075AE07
4D075AE09
4D075AE27
4D075BB42Z
4D075BB94Z
4D075CA02
4D075CB06
4D075DA06
4D075DB48
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4D075EB22
4D075EB43
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4D075EC53
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4J038DL021
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4J038PA17
4J038PB05
4J038PB07
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】ウェットプロセスが可能であり、熱硬化と比較して短時間での硬化が可能な紫外線硬化を用いて、透明性と優れた耐摩耗性ならびに耐候性を備えた積層体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】透明樹脂基材上に(メタ)アクリレート化合物を含むプライマー組成物を硬化してなるプライマー層(A)が積層され、プライマー層(A)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含む中間層組成物を硬化してなる中間層(B)が積層され、中間層(B)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物を含むハードコート組成物を硬化してなるハードコート層(C)が積層されてなり、JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験前後でのヘイズ変化値が9未満であることを特徴とする透明積層体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材上に(メタ)アクリレート化合物を含むプライマー組成物を硬化してなるプライマー層(A)が積層され、プライマー層(A)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含む中間層組成物を硬化してなる中間層(B)が積層され、中間層(B)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物を含むハードコート組成物を硬化してなるハードコート層(C)が積層されてなり、JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験前後でのヘイズ変化値が9未満であることを特徴とする透明積層体。
【請求項2】
中間層(B)が、少なくとも下記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(B-S)を含む中間層組成物を硬化してなり、0.5〜5μmの厚さを有する請求項1記載の透明積層体。
1Si(OR23 (1)
(式中R1は(メタ)アクリル基を含む炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【請求項3】
ハードコート層(C)が、少なくとも下記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン
1Si(OR23 (1)
(式中R1は(メタ)アクリル基を含む炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)と下記式(2)で示されるアルキルシリケート
【化1】
(式中Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、nは3〜20の整数を示す。)
の加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(C-S)を含むハードコート組成物を硬化してなり、3μm以下の厚さを有する請求項1記載の透明積層体。
【請求項4】
ハードコート層(C)が、粒径5nm〜100nmの無機微粒子を含む請求項1記載の透明積層体。
【請求項5】
プライマー層(A)が、分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むプライマー組成物を硬化してなり、5μm〜50μmの厚さを有し、弾性率が1000〜4000MPaである請求項1記載の透明積層体。
【請求項6】
透明樹脂基材上に(メタ)アクリレート化合物を含むプライマー組成物を硬化してなるプライマー層(A)が積層され、プライマー層(A)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含む中間層組成物を硬化してなる中間層(B)が積層され、中間層(B)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物を含むハードコート組成物を硬化してなるハードコート層(C)が積層されてなり、JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験前後でのヘイズ変化値が9未満である透明積層体の製造方法であって、
透明基材にプライマー組成物を塗布すること、塗布されたプライマー組成物に、活性エネルギー線照射することによりプライマー組成物を硬化させてプライマー層とすること、次いでプライマー層上に中間層組成物を塗布すること、塗布された中間層組成物に、活性エネルギー線照射することにより中間層組成物を硬化させて中間層とすること、次いで中間層上にハードコート組成物を塗布すること、塗布されたハードコート組成物に、活性エネルギー線照射することによりハードコート組成物を硬化させてハードコート層とすることからなる工程を備えることを特徴とする透明積層体の製造方法。
【請求項7】
プライマー組成物を硬化させる工程、及び中間層組成物を硬化させる工程で照射する活性エネルギー線の照射条件が200nm以上400nm以下の波長域の光で、照度が100〜500mW/cmおよび積算光量が100〜1000mJ/cmであり、ハードコート組成物を硬化させる工程で照射する活性エネルギー線の照射条件が200nm以上400nm以下の波長域の光で、照度が100mW/cm以上よび積算光量が1000mJ/cm以上である請求項6記載の透明積層体の製造方法。
【請求項8】
中間層組成物が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物であって全珪素原子中50mol%以上が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(B-S)と、溶剤と、光硬化開始剤を含むことを特徴とする請求項6記載の透明積層体の製造方法。
【請求項9】
ハードコート組成物が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物であって全珪素原子中5〜70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中30〜95mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(C-S)と、溶剤と、光硬化開始剤を含むことを特徴とする請求項6記載の透明積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、耐候性に優れた透明積層体およびその製造方法に関する。この透明積層体は、例えば保護ガラス、建材用窓ガラス、車両用窓ガラス等に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス代替として、透明樹脂材料を使用することが増えている。特にポリカーボネート樹脂等は、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れることから、広く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂等は、ガラスに比べて、耐擦傷性および耐候性等に劣ることから、その表面を保護するハードコート材が提案されている。
【0003】
特に視認性が求められる自動車窓向けハードコート付樹脂基板(樹脂グレージング)は、ガラス同等の耐摩耗性と屋外暴露に対する耐候性が求められる。これらの性能を満足する樹脂グレージング材として、例えば、ポリカーボネート基材の表面にアクリル樹脂熱硬化膜、オルガノシロキサン系樹脂の熱硬化膜、有機珪素化合物を原料としたプラズマ誘起の化学気相成長法(CVD法)により珪素酸化膜を堆積した構成が提案されている。しかし、この積層体は、耐候性および耐摩耗性が向上するものの、珪素酸化膜を堆積する真空チャンバー等のドライプロセス工程を必要とするためプロセスコストが高く、汎用的な普及への負荷が大きいと言える。また、熱硬化シリコーン樹脂を塗布・硬化する方法も提案されている。この方法は、ウェットプロセスで成膜可能なため、プロセスコストは低いが、硬化に高温かつ長時間を要するため生産性に乏しく、また、耐摩耗性も十分満足できるものではない。
【0004】
従来、ウェットプロセスで成膜可能であり、紫外線硬化により短時間での生産を可能にする有機樹脂基板の表面を保護するコーティング剤として、加水分解性オルガノシランを加水分解して得られる組成物からなるコーティング剤、あるいは該組成物にコロイダルシリカを混合したコーティング剤が知られている。例えば、特開昭63−168470公報(特許文献1)には、オルガノアルコキシシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物、及びコロイダルシリカからなり、過剰の水でアルコキシ基をシラノールに変換してなるコーティング剤が提案されている。しかし、このコーティング剤により得られる塗膜は、硬度が高く、基材保護用として優れているが、得られるシロキサン硬化膜は靭性に乏しく、厚膜においては、加熱硬化中、あるいは、屋外で使用中、急激な温度変化が起こったとき等に容易にクラックが発生するという課題がある。また、特開2005−200546号公報(特許文献2)には、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシラン、ジアルコキシシランの組成比をある範囲で縮合させることにより、硬度が高く、耐擦傷性と耐候性に優れたコーティング剤が提案されている。しかし、高い耐摩耗性が求められる用途には不十分である。
【0005】
一方、特許3339702号公報(特許文献3)では、有機官能基をもつシリケートオリゴマーの製造方法が提示されている。詳しくは、官能基を有し且つGPCで測定したポリスチレンサイズ換算分子量が500〜100000であるシリケートオリゴマーの製造方法であって、官能性アルキルシリケートの加水分解生成物にアルキル基の炭素数が1〜4のテトラアルキルシリケート又はそれを部分加水分解して得られるオリゴマーを添加して重縮合または加水分解を行なうことを特徴とするシリケートオリゴマーの製造方法が開示されている。しかし、これらのシロキサン樹脂組成物を用いて、高い耐摩耗性と耐候性を満足するハードコートはいまだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−168470号公報
【特許文献2】特開2005−200546号公報
【特許文献3】特許3339702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ウェットプロセスが可能であり、熱硬化と比較して短時間での硬化が可能な紫外線硬化を用いて、透明性とともに優れた耐摩耗性および耐候性を備えた透明積層体、およびそれに用いられるコーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、透明樹脂基材上に、(メタ)アクリレート化合物を含むプライマー組成物を硬化してなるプライマー層、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含む中間層組成物を硬化してなる中間層、および(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物を含むハードコート組成物を硬化してなるハードコート層を積層してなる透明積層体により、上記課題を達成することを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、透明樹脂基材上に(メタ)アクリレート化合物を含むプライマー組成物を硬化してなるプライマー層(A)が積層され、プライマー層(A)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含む中間層組成物を硬化してなる中間層(B)が積層され、中間層(B)上に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物を含むハードコート組成物を硬化してなるハードコート層(C)が積層されてなり、JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験前後でのヘイズ変化値が9未満であることを特徴とする透明積層体である。
本発明の透明積層体は、中間層(B)が、少なくとも下記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(B-S)を含む中間層組成物を硬化してなり、0.5〜5μmの厚さを有することが好ましい。
1Si(OR23 (1)
(式中R1は(メタ)アクリル基を含む炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
また、ハードコート層(C)が、少なくとも上記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランと下記式(2)で示されるアルキルシリケート
【化1】
(式中Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、nは3〜20の整数を示す。)
の加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(C-S)を含むハードコート組成物を硬化してなり、3μm以下の厚さを有することが好ましい。ハードコート層(C)が、粒径5nm〜100nmの無機微粒子を含むことが好ましい。
また、プライマー層(A)が、分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むプライマー組成物を硬化してなり、5μm〜50μmの厚さを有し、弾性率が1000〜4000MPaであることが好ましい。
【0010】
第2の本発明は、上記透明積層体の製造方法であって、透明基材にプライマー組成物を塗布すること、塗布されたプライマー組成物に、活性エネルギー線照射することによりプライマー組成物を硬化させてプライマー層とすること、次いでプライマー層上に中間層組成物を塗布すること、塗布された中間層組成物に、活性エネルギー線照射することにより中間層組成物を硬化させて中間層とすること、次いで中間層上にハードコート組成物を塗布すること、塗布されたハードコート組成物に、活性エネルギー線照射することによりハードコート組成物を硬化させてハードコート層とすることからなる工程を備えることを特徴とする透明積層体の製造方法である。
この製造方法において、プライマー組成物を硬化させる工程、及び中間層組成物を硬化させる工程で照射する活性エネルギー線の照射条件が200nm以上400nm以下の波長域の光で、照度が100〜500mW/cmおよび積算光量が100〜1000mJ/cmであり、ハードコート組成物を硬化させる工程で照射する活性エネルギー線の照射条件が200nm以上400nm以下の波長域の光で、照度が100mW/cm以上よび積算光量が1000mJ/cm以上であることが好ましい。
また、中間層組成物が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物であって全珪素原子中50mol%以上が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(B-S)と、溶剤と、光硬化開始剤を含み、コーティング剤として使用できることが好ましい。ハードコート組成物が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解縮合物であって全珪素原子中5〜70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中30〜95mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂(C-S)と、溶剤と、光硬化開始剤を含み、コーティング剤として使用できることが好ましい。
【0011】
本発明において、トリアルコキシシランやアルキルシリケートの加水分解縮合物は、加水分解と縮合とが平衡反応であり、部分加水分解の縮合物又は完全加水分解の縮合物のいずれであってもよい。そのため、縮合物中の一部に、加水分解によって生成するシラノール(SiOH)基を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐テーバー摩耗性に優れ、初期ヘイズも小さく透明性であり、付着性、耐熱性および耐候性に優れた積透明層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の透明積層体およびその製造方法について、好適な実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の透明積層体は、板状の透明樹脂基材を有する。透明樹脂基材として、可視光が充分に透過する樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂(アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂など)、PET樹脂など、が挙げられる。好ましい透明樹脂基材として、ポリカーボネート樹脂またはメタクリレート樹脂が挙げられる。
【0015】
本発明のプライマー層(A)は、分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むプライマー組成物を硬化してなり、5μm〜50μmの厚さを有し、弾性率が1000〜4000MPaであることが好ましい。
【0016】
プライマー層(A)に用いられる分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば分子内に2個または3個の(メタ)アクリル基を有する多官能アクリレートが好ましく、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。官能基が多い場合には、体積収縮が大きいため付着性の低下、靱性が低下するため、耐候性の低下の恐れがある。具体的な例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート類。グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーは1種または2種以上使用できる。中でもポリカーボネートに対し、弱い浸食性を示し透明性を維持し基材との付着性が得られやすい点で、ジシクロペンタニルジメチロールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、プライマー層(A)としての弾性率の調整や機械物性、熱物性を調整する目的で、(メタ)アクリル基を有するオリゴマーやポリマーを配合しても良い。
【0017】
プライマー層(A)の厚みは5μm〜50μmの範囲が好ましく、5μmより薄いと透明樹脂基材の湿熱変化による寸法変化挙動が緩衝されず中間層やハードコート層に応力が集中し、耐候性や耐熱性が低下する。ハードコートの耐摩耗性もプライマー層が薄いと耐摩耗性に乏しい透明樹脂基材の性質が露顕し、積層体の耐摩耗性が低下する。一方50μmより厚い場合は、プライマー層の硬化収縮が大きくなりプライマー層を成膜する際にクラックが発生してしまう。透明積層体の耐摩耗性と耐候性や耐熱性を両立するために、プライマー層(A)の厚みは5μm〜50μmの範囲であることが好ましく、10〜40μmの範囲がより好ましい。
【0018】
プライマー層(A)の弾性率は1000MPaより小さいと柔らかすぎる為、積層体の耐摩耗性が確保されない。一方、弾性率が4000MPa以上であると硬すぎ透明樹脂基材の湿熱変化による寸法変化挙動に追従できず、クラックや剥離が発生し、積層体の耐候性や耐熱性が低下してしまう。透明積層体の耐摩耗性と耐候性や耐熱性を両立するために、プライマー層(A)の弾性率は1000〜4000MPaの範囲が好ましく、1500〜3700のMPaの範囲がより好ましい。
【0019】
本発明の中間層(B)は、少なくとも上記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを加水分解して得られるシロキサン樹脂(B-S)を含む中間層組成物を硬化してなり、0.5〜5μmの厚さであることが好ましい。
【0020】
中間層(B)は、プライマー層(A)とハードコート層(C)を強固に付着させ、透明積層体の耐摩耗性と耐候性や耐熱性を両立するための層である。中間層(B)に用いられる(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを加水分解して得られるシロキサン樹脂(B-S)の(メタ)アクリル基が、プライマー層(A) に含まれる多官能(メタ)アクリレートモノマーと結合し、加水分解により生成するシラノール基や未反応のアルコキシル基がハードコート層(C)のシロキサン樹脂(C-S)と結合することで強固な付着性が得られる。
【0021】
中間層(B)に用いられる上記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとしては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0022】
中間層(B)組成物は、少なくとも(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの加水分解縮合物を含み、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを含めば、その他のアルコキシシラン化合物を混合して加水分解縮合して用いることができる。その他のアルコキシシラン化合物として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのオルガノシランは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0023】
中間層(B)組成物に用いられるシロキサン樹脂(B-S)は、全珪素原子中50mol%以上が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分縮合物であることが好ましい。一般的に入手しやすく、加水分解性も良好であり、得られる加水分解縮合物の弾性率も高いことから、3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを用いることが良い。3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの量が全珪素原子中50mol%未満の場合、加水分解縮合物の弾性率が不十分であり積層体の耐摩耗性が低下する。
【0024】
中間層(B)の厚みは0.5μm〜5μmの範囲が好ましく、0.5μmより薄いとプライマー層(A)とハードコート(C)を強固に付着できず、耐候性や耐熱性が低下し、剥離が発生したり、耐摩耗性に乏しい透明樹脂基材の性質が露顕し、透明積層体の耐摩耗性が低下する。5μmより厚い場合は、中間層の硬化収縮量が大きく脆い材料になってしまう。湿熱の寸法変化によって発生する応力が高いためクラックが発生しやすく透明積層体の耐候性や耐熱性が低下してしまうことから、中間層(B)の厚みは0.5μm〜5μmの範囲が好ましく、1〜3μmの範囲がより好ましい。
【0025】
本発明のハードコート層(C)は、少なくとも上記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランと上記式(2)で示されるアルキルシリケートを加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂(C-S)を含むハードコート組成物を硬化してなり、3μm以下の厚さであることが好ましい。
【0026】
ハードコート層(C)に用いられる上記式(1)で示される(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとしては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0027】
ハードコート層(C)組成物は、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含み、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを含めば、その他のアルコキシシラン化合物を混合して加水分解縮合して用いることができる。その他のアルコキシシラン化合物として、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを含めば、その他のアルコキシシラン化合物を混合して加水分解縮合して用いることができるその他のアルコキシシラン化合物として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのオルガノシランは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0028】
ハードコート層(C)に用いられるシロキサン樹脂(C-S)には、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとして、一般的に入手しやすく、加水分解性も良好であり、得られる加水分解縮合物の弾性率も高いことから、3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを用いることが良い。
【0029】
ハードコート層(C)に用いられる上記式(2)で示されるアルキルシリケートとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、イソブチルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等の加水分解縮合物が挙げられる。より好ましくは、加水分解・縮合の反応が速い点で、メチルシリケートあるいはエチルシリケートまたはその加水分解縮合物が好ましい。
【0030】
ハードコート層(C)組成物に用いられる(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン成分とアルキルシリケート成分は、シロキサン樹脂(C-S)を構成する珪素原子のうち、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン成分は5〜70mol%が好ましく、アルキルシリケート成分は全珪素原子中30〜95mol%の範囲が好ましい。(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン成分が少ない場合は、無機成分であるアルキルシリケートの架橋密度が高くなり靱性が低下し、加熱環境下、または環境試験中にクラックが発生しやすくなる。一方(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン成分が多い場合は、架橋密度が低く、所望の耐摩耗性が得られなくなる。透明積層体に求められる性能によって、シロキサン樹脂(C-S)の(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン成分とアルキルシリケート成分の比率、その他のアルコキシシラン化合物の配合や無機微粒子の配合によって、耐摩耗性と耐候性や耐根熱性のバランスを調整することができる。
【0031】
ハードコート層(C)の厚みは、3μm以下が良い。シロキサン樹脂(C-S)の硬化物は耐摩耗性に優れるが脆性に乏しい。よって厚い場合は、自らの硬化収縮量によってクラックや剥離が発生する。ハードコート膜が成膜された場合でも、厚い場合では湿熱の寸法変化によって発生する応力が高いためクラックが発生しやすく透明積層体の耐候性や耐熱性が低下してしまう。
【0032】
ハードコート層(C)組成物には、5nm〜100nmの無機微粒子をシロキサン樹脂(C-S)100重量部に対し、1〜400重量部配合することができる。無機微粒子を配合することで耐摩耗性や耐候性を高めることができる。一方、無機微粒子の量が多すぎると、架橋構造の構築が不十分になり、靱性が低下し、加熱環境下、または環境試験中にクラックが発生しやすくなる。無機微粒子の大きさが100nmを超える場合、透明性が悪化する。
【0033】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属酸化物微粒子類が挙げられ、耐摩耗性や耐候性を高めるために配合することができる。
【0034】
本発明の中間層(B)やハードコート層(C)として用いられるシロキサン樹脂(B-S)やシロキサン樹脂(C-S)の製造方法について説明する。
【0035】
シロキサン樹脂の製造方法は、ケイ素化合物(アルコキシシランまたはその加水分解縮合物の混合物)を、pH1〜7、より好ましくは2〜5の水で(共)加水分解縮合させる。このpH調整には、フッ化水素、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸及び無機酸を使用でき、あるいは表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒を触媒に用いてもよい。その使用量は、生成物(反応物)に対して0.0001〜20重量%であることが好ましい。
【0036】
加水分解反応においては、水の存在が必要である。水量としては、反応物としてのケイ素化合物における加水分解性基を加水分解するのに十分な質量以上であればよく、使用するケイ素化合物質量から算出される加水分解性基の数の理論量(モル)の0.5〜2.0倍モルに相当する質量であることが好ましい。なお、酸性触媒の水溶液に含有される水を用いてもよい。水が少ない場合は、十分な加水分解が進行せず、多い場合には、残存する水により塗工性や乾燥効率が低下する。
【0037】
なお、ケイ素化合物の加水分解縮合反応は、反応溶媒としてコーティング剤組成物で用いられる溶剤で反応物を予め希釈した状態で加水分解縮合を行っても良い。
【0038】
シロキサン樹脂を縮合させる温度は、常温または120℃以下の加熱条件下であり、より好ましくは30℃以上100℃以下である。温度が低い場合には、加水分解および縮合反応の時間が長く、生産性が低くなり、温度が範囲を超えて高い場合には、不溶化する恐れがある。
【0039】
本発明の透明積層体を構成する各層は、プライマー層(A)の場合は多官能(メタ)アクリレートモノマー、中間層(B)ではシロキサン樹脂(B-S)、およびハードコート層(C)ではシロキサン樹脂(C-S)に、例えば、光重合開始剤、溶剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤を混合して調整したコーティング剤組成物を塗装、乾燥、硬化させることによって得ることができる。
【0040】
重合開始剤としての光重合開始剤の添加量は、樹脂組成物(水および溶剤を除いた樹脂成分)の合計100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲であることが好ましい。この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、所望する表面高度が得られない。反対にこの範囲を超えて含有しても更なる反応率の向上は望めない。
【0041】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイル系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光重合開始助剤や鋭感剤を併用する事もできる。
【0042】
溶剤としては、固形分濃度調整、分散安定性向上、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒が挙げられる。例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類及び芳香族化合物類が挙げられる。具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0043】
耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛など無機系の酸化物微粒子やチタン、亜鉛、ジルコニウムなどの金属キレート化合物、及びこれらの(部分) 加水分解物、縮合物の無機系のものや有機系のものを用いることができる。有機系の例として、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系である化合物誘導体が好ましい。更に側鎖にこれら紫外線吸収剤を含有する重合体、及び反応性官能基を有する紫外線吸収剤、又はシリル化変性された紫外線吸収剤、その(部分)加水分解縮合物でもよい。具体的には、2−(2−ヒドロキシー5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(TINUVIN PS)、2−[5−クロロー(2H)−ベンゾトリアゾールー2−イル]−4−メチル-6−(t−ブチル)フェノール(TINUVIN384-2)、2−(2H−ベンゾトリアゾールー2−イル)6−(1−メチルー1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN928)、2−[4−[(2−ヒドロキシー3−(2‘−エチル)へキシル)オキシ]―2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4―ジメチルフェニル)―1,3,5−トリアジン(TINUVIN405)、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノンの(共)重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの(共)重合体などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は2種以上を併用してもよい。
【0044】
紫外線安定剤としては、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有するものが好ましい。具体的には、ビス(2,2,6,6―テトラメチル-1−(オクチロキシ)−4−ピペリジル)エステル(TINUVIN123)、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(TINUVIN292)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられ、これらの紫外線安定剤は2種以上併用してもよい。
【0045】
なお、本発明の透明積層体を構成する各層のコーティング剤組成物には、上述した成分の他に、例えば機能を低下させない範囲で、各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として、レベリング剤、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等を例示する事ができる。
【0046】
なお、本発明の透明積層体は、上述したプライマー層(A)組成物、中間層(B)組成物、およびハードコート層(C)組成物を、順次塗布し、光硬化して成膜することにより製造することができる。すなわち、各層の成膜は、同時硬化ではなく、逐次硬化で行うことが好ましい。
【0047】
第一に透明樹脂基材にプライマー組成物を塗布してなるプライマー塗布膜に、活性エネルギー線照射することによりプライマー塗布膜を硬化させるプライマー成膜工程、第二に硬化したプライマー塗布膜上に中間層組成物を塗布してなる中間層塗布膜に、活性エネルギー線照射することにより中間層塗布膜を硬化させる中間層成膜工程、第三に硬化した中間層塗布膜にハードコート組成物を塗布してなるハードコート塗布膜に、活性エネルギー線照射することによりハードコート塗布膜を硬化させるハードコート成膜工程からなる。
【0048】
透明基板上に紫外線硬化組成物からなるプライマー層、中間層およびハードコート層を形成する方法として、例えば、流涎法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法およびディッピング法が挙げられる。なお、塗工膜厚は、乾燥・活性エネルギー線の照射による硬化後の形成膜厚を考慮して、固形分濃度により調整する。
【0049】
塗布後は、溶剤を乾燥等により除去することが好ましい。乾燥温度は、用いる基材が変形しない条件が好ましく、乾燥時間は、生産性の観点から1時間以下が好ましい。
【0050】
次に、活性エネルギー線の照射により紫外線硬化組成物を硬化する光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光重合開始剤の種類に応じて選定される。
【0051】
プライマー成膜工程および中間層成膜工程は、活性エネルギー線の照度が100〜500mW/cmおよび積算光量が100〜1000mJ/cmの条件で照射することが好ましい。照射量が低い場合には、十分な硬化膜が得られず、次に塗装させるコーティング剤組成物の溶剤により溶解し、白化や厚みむらが生じる恐れがある。また、照射量が多い場合には、中間層との付着性が低下する。
【0052】
ハードコート成膜工程の活性エネルギー線は照度が100mW/cm以上および積算光量が1000mJ/cm以上の条件で照射することが好ましい。照射量が低い場合は、架橋形成が不十分であり、所望の耐摩耗性および耐候性等の性能が得られない。
【0053】
成膜工程は、大気開放下で実施してもよく、窒素パージして酸素濃度を低下させた雰囲気下実施しても良い。また、酸素分圧を大気より小さくした気体、例えば大気に窒素を混合した気体等を塗料組成物表面にふきかけながら光硬化工程を実施してもよい。さらに、上部に透明部材、例えば透明フィルム、塗料組成物と硬化反応しない有機組成物、ラミネート又はガラス等を配置して実施してもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について、実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(合成例)
〈合成例1:シロキサン樹脂B-S1〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)150g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液33.3gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを234g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中100mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S1溶液を調整した。
【0056】
〈合成例2:シロキサン樹脂B-S2〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)50gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)46.8g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液18.5gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを161g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中50mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S2溶液を調整した。
【0057】
〈合成例3:シロキサン樹脂B-S3〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)25gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)46.8g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液12.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを122g加え、固形分を30w%とした全珪素原子中33mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S3溶液を調整した。
【0058】
〈合成例4:シロキサン樹脂B-S4〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-13)25gと3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)42.7g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液16.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを99.2g加え、固形分を30w%とした3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを用いないシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂B-S4溶液を調整した。
【0059】
〈合成例5:シロキサン樹脂C-S1〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)50g、メチルシリケート(コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )23.9g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液20.0gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを103g加え、固形分30w%の全珪素原子中50mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中50mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S溶液を得た。
【0060】
〈合成例6:シロキサン樹脂C-S2〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)70g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )14.3g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液20.9gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを124g加え、固形分30w%の全珪素原子中70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中30 mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S2溶液を得た。
【0061】
〈合成例7:シロキサン樹脂C-S3〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)30g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )33.4g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液19.1gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを81.5g加え、固形分30w%の全珪素原子中30mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中70mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S3溶液を得た。
【0062】
〈合成例8:シロキサン樹脂C-S4〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)30g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )43g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液22.6gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを91g加え、固形分30w%の全珪素原子中25mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中75mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S4溶液を得た。
【0063】
〈合成例9:シロキサン樹脂C-S5〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)60g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )7.2g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液16gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを101g加え、固形分30w%の全珪素原子中75mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中25mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S5溶液を得た。
【0064】
〈合成例10:シロキサン樹脂C-S6〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ダウコーニング製 XIAMETER(R) OFS-6030 Silane)100g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液22.2gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを156g加え、固形分30w%の全珪素原子中100mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S6溶液を得た。
【0065】
〈合成例11:シロキサン樹脂C-S7〉
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ダウコーニング製 Z-6033)50g、メチルシリケート( コルコート株式会社製、平均約7 量体、平均分子量約789 、メチルシリケート53A )25.5g、滴下ロートに 0.05w%塩酸水溶液21.3gを入れ、反応溶液を撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃で1時間撹拌し、次いで室温で1時間撹拌した。反応液に1-メトキシ-2-プロパノールを55.9g加え、固形分30w%のシロキサン樹脂、すなわち、3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランを含まず、全珪素原子中50mol%が3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解縮合物であり、全珪素原子中50mol%がアルキルシリケートの加水分解縮合物であるシロキサン樹脂C-S7溶液を得た。
【0066】
(プライマー層コーティング剤の調整)
下記表1に記載の重量部で配合し、プライマー組成物の調整を行った。プライマーの弾性率は溶剤を除いたプライマー組成物をガラス板上に塗布し、ロールコーターを用いて厚さ0.2mmになるようにキャスト(流延)し、高圧水銀ランプを用いて400mW/cmの照度で積算露光量8000mJ/cmの紫外線を酸素濃度1%未満の環境で照射し、弾性率測定用試験片を作成した。引張弾性率(試験片:8mm x 80mm x 0.2mm、試験速度0.5mm/min、チャック間距離50mm)の値を示す。
【0067】
【表1】


【0068】
なお、使用した材料は、以下のとおり。
P-A:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートDCP-A)
P-B:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートTMP-A)
P-C:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社 UA-306H)
P-D:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社 ライトアクリレートDPE-6A)
P-E:無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社 UF-8001G)
重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社 Irgacure 819)
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社 TINUVIN384-2)
光安定剤:ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社 TINUVIN5100)
溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0069】
(中間層コーティング剤の調整)
下記表2に記載の重量部で配合し、中間層組成物の調整を行った。
【0070】
【表2】


【0071】
なお、合成例のシロキサン樹脂とともに配合した材料は、以下のとおり。
重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社 Irgacure 819)
溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0072】
(ハードコートコーティング剤の調整)
下記表3に記載の重量部で配合し、ハードコート組成物の調整を行った。
【0073】
【表3】


【0074】
なお、合成例のシロキサン樹脂とともに配合した材料は、以下のとおり。
無機微粒子D-1:表面処理した粒径20-25nmシリカ25w%メトキシプロピルアセテート/メトキシプロパノール溶液(ビックケミー・ジャパン株式会社 NANOBYK-3650)
無機微粒子D-2:葉面処理した粒径20-25nmアルミナ30w%メトキシプロピルアセテート溶液(ビックケミー・ジャパン株式会社 NANOBYK-3610)
【0075】
(実施例1)
<プライマー層の成膜>
厚み3mmのポリカーボネート平板(カーボグラスポリッシュ:旭硝子株式会社製)の表面を2-プロパノールを含ませたウエス(拭布)で拭き、乾燥させたポリカーボネート上にプライマーコーティング剤P-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させたプライマー組成物に高圧水銀ランプを用いて140mW/cmの照度で積算露光量400mJ/cmの紫外線を酸素濃度1〜3%の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時のプライマー層の厚みは15μmであった。
【0076】
<中間層の成膜>
成膜したプライマー層上に中間層コーティング剤M-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させた中間層組成物に高圧水銀ランプを用いて140mW/cmの照度で積算露光量200mJ/cmの光を酸素濃度1〜3%の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時の中間層層の厚みは2μmであった。
【0077】
<ハードコートの成膜>
成膜した中間層上にハードコートコーティング剤H-1をバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで6分間乾燥させた。乾燥させたハードコート組成物に高圧水銀ランプを用いて400mW/cmの照度で積算露光量4000mJ/cmの紫外線を酸素濃度1%未満の環境で照射しプライマー層を成膜した。その時の中間層層の厚みは0.5μmであった。
こうして得られた透明積層体について、各物性を評価し、その結果を表4に示す。
【0078】
(実施例2〜12、比較例1〜8)
下記表の記載のプライマー組成物、中間層コーティング剤組成物、ハードコートコーティング剤組成物の組み合わせで、実施例1と同様に透明積層体の作成と評価を行った。それらの結果を表4及び表5に示す。
【0079】
【表4】


【0080】
【表5】



【0081】
各物性の評価方法は、以下のとおり。
【0082】
(耐テーバー摩耗性)
JIS K7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS-10Fを用いた荷重500g、500回転の試験を行い試験前後のヘイズ値より耐テーバー摩耗性の評価を行った。ΔH(%)が小さいものほど耐磨耗性良好と評価した。
ΔH=(テーバー摩耗試験後のヘイズ)―(試験前のヘイズ)
〇:0<ΔH≦5
△:5<ΔH≦9
×:ΔH>9%以上
【0083】
(透明性)
ヘイズ(%)はJIS K7136に準拠、全光線透過率(%)はJIS K7361に準拠して濁度計NDH−2000(日本電色工業製)を用いて測定した値で透明性評価を行った。
〇:H<1
×:H≧1
【0084】
(付着性)
硬化塗膜にカッターナイフで縦横各11本の2mm間隔の切り込みを入れて100マスの碁盤目を形成し、この碁盤目上にニチバン(株)製のセロハンテープを貼り付け、JIS K5400に準じてセロハンテープを剥離した。セロハンテープ剥離後の剥離したマス目数/100マスで付着性を評価した。
〇:0/100
×:1/100〜100/100
【0085】
(耐熱性)
各温度のオーブンに入れた試験片を1時間後に取り出し、クラックの発生の有無を目視で評価しクラックの発生しない温度を評価した。
〇:130℃
△:120℃
×:110℃
【0086】
(耐候性)
ダイプラウィンテス社メタルウェザー、フィルター:KF−1、放射照度:80W/cm2 ⇒800W/m2 、運転モード:L/R/D=4時間/4時間/4時間
L:照射、R:休止、D:湿潤
L条件 BP 63℃、40%
R条件 BP 60℃、80%
D条件 BP 30℃、98%
水噴霧 D条件の直前 10秒
でL−R−Dを1サイクルとして所定試験サイクル数毎に試験片を取り出し、目視でクラックや変色、剥離の有無について評価し異常が見られないサイクル数を耐候性の評価とした。
〇:30サイクル
△:20サイクル
×:10サイクル
【0087】
[総合判定]
上記評価結果から下記に示す方法で判定した。
〇:すべての評価項目が「〇」。
△:「△」が一つ以上あり、「×」がないもの。
×:「×」が一つ以上あるもの。
【0088】
(実施例、比較例の考察)
実施例1〜12ではプライマー層に分子量500未満の(メタ)アクリレートモノマーが10%以上含まれ弾性率が1000〜4000MPa、厚みが5〜50μmの範囲であり、中間層が(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを加水分解したシロキサン樹脂が用いられた膜厚0.5〜5μmであり、(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランとアルキルシリケートの加水分解物からなるシロキサン樹脂も用い膜厚3μm未満のハードコートが用いられた積層体であり、耐テーバー摩耗性に優れ、初期ヘイズも小さく透明性であり、付着性、耐熱性と耐候性に優れた積層体であった。実施例の中でも実施例1〜9は、実施例10〜12に比べ総合的に良い評価結果が得られた。
実施例10では実施例1〜9比べ、耐熱性と耐候性が低い結果であった。耐熱性と耐候性は全珪素原子中に含まれるアルキルシリケートの割合が少ない方が良いことが実施例10より言える。このことはアルキルシリケートの縮合によって形成される緻密なシロキサン結合の架橋体は硬く、脆い特性を持っているために耐熱および耐候性試験環境下で発生する湿熱寸法変化に追従できずクラックが発生しているといえる。
一方で実施例11では耐テーバー摩耗性が実施例1〜10に比べ劣る結果であった。耐テーバー摩耗性は、全珪素原子中に含まれるアルキルシリケートの割合が多いと、アルキルシリケートの縮合によって形成される緻密なシロキサン結合の架橋体が耐テーバー摩耗性に効果があると言える。
実施例10、11からハードコート組成物として用いられるシロキサン樹脂(C-S)は3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランとアルキルシリケートに最適な比率があり、耐テーバー摩耗性と耐熱性、耐候性を高いレベルで両立できる範囲は、全珪素原子中30〜70mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランであり、全珪素原子中30〜70mol%がアルキルシリケートであると言える。
実施例12では実施例1〜9に比べ、耐テーバー摩耗性が低い結果であった。中間層に全珪素原子中の33mol%が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランと他の実施例より少なく柔らかい中間層であり、耐テーバー摩耗性が劣る結果になったと言える。実施例9の結果を含め、中間層として良好な耐テーバー摩耗性を得るためには中間層の全珪素原子中の50mol%以上が3-メタクリロキシプロピルトリメトシキシシランであると言える
【0089】
比較例1ではアルキルシリケートが含まれず、比較例2では(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランが含まれないハードコート組成物であり、テーバー摩耗性が劣る結果が得られている。高いテーバー摩耗性を発現するためには、アルキルシリケートと(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランの両方を加水分解したシロキサン樹脂を用いることで強固なシロキサン結合とアクリルの架橋構造体が構築されことが必要であると言える。
比較例3ではハードコートの膜厚が実施例に比べ10μmと厚く、耐摩耗性と付着性は得られているが、耐熱試験および耐候性試験でクラックが発生していることから耐熱性や耐候性試験に優れる積層体としてハードコート膜厚を3μm以下に薄くする必要がある。
比較例4では、中間層に(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシランを用いられておらず、(メタ)アクリル基が無い分トリアルコキシシランで形成されるシロキサン架橋構造が柔軟になってしまい中間層が柔らかくなったため耐テーバー摩耗性の値が悪化している。よって中間層には(メタ)アクリル基を有するトリアルコキシシラン含む加水分解縮合物からなるシロキサン樹脂を用いる必要がある。
中間層が厚い実施例に比べ10μmと厚い比較例5では、耐摩耗性と付着性は得られているが、耐熱試験および耐候性試験でクラックが発生している。このこと耐熱性や耐候性に優れる積層体としては、中間層の膜厚を比較例5よりも薄くする必要がある。
比較例6では弾性率の高いプライマーを用いた積層体であり、耐熱性と耐候性に劣る。プライマーの弾性率が高いために、耐熱および耐候試験環境下で発生する透明樹脂基材であるポリカーボネートとの寸法変化挙動に追従できずクラックが発生してしまっている。また弾性率が低いプライマーを用いた比較例8では、プライマーが柔らかい為、ハードコート層や中間層が硬い場合でも、十分な耐テーバー摩耗性が得られていない結果になっている。比較例6、7よりプライマーの弾性率は1000〜4000MPaの範囲でなければ、耐熱性や耐候性、耐テーバー摩耗性を両立することができない。
比較例9ではプライマー組成物に透明樹脂基材であるポリカーボネートを浸食する分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーが含まれていない為に十分な付着性を得ることができない。十分な付着性を得るためには分子量500以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む必要がある。