【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
[リチウムイオン二次電池用電極材料]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.10、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPmnaである粒子を含む。また、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の格子定数b1、c1と、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からアセトニトリル中での硼弗化ニトロソニウムを用いた酸化処理によりLiを脱離させたFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の格子定数b2、c2とから算出されるbc面のmis−fit値[(1−(b2×c2)/(b1×c1))×100]が1.32%以上かつ1.85%以下である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、主に、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いられる。
【0016】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からなる電極活物質の一次粒子の表面が炭素質被膜によって被覆されてなることが好ましい。
【0017】
LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、40nm以上かつ500nm以下であることが好ましく、70nm以上かつ400nm以下であることがより好ましい。
ここで、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子の平均一次粒子径が40nm以上であれば、微細になり過ぎることがなく、結晶性を良好に保つことができる。その結果、LiFe
xMn
1−xMg
yA
zPO
4粒子の結晶格子のa軸方向およびc軸方向の長さを大きく保ったままで、b軸方向の長さを特異的に短縮したLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子が得られる。一方、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子の平均一次粒子径が500nm以下であれば、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子が充分に微細化し、その結果、非常に微細かつ結晶性の良好な粒子が得られる。
【0018】
炭素質被膜の厚みは、1nm以上かつ5nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の厚みを上記の範囲とした理由は、次の通りである。炭素質被膜の厚みが1nm以上であれば、炭素質被膜の厚みが充分であり、所望の抵抗値を有する膜を形成することができる。その結果、導電性が低下することなく、電極材料としての導電性を確保することができる。一方、炭素質被膜の厚みが5nm以下であれば、電池活性、例えば、電極材料の単位質量あたりの電池容量が低下することがない。
【0019】
炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、60nm以上かつ550nm以下であることが好ましく、70nm以上かつ430nm以下であることがより好ましい。
ここで、炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。平均一次粒子径が60nm以上であれば、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることに起因して必要になる炭素の質量が増加することがないため、充放電容量が低減することもない。さらに、炭素被覆が容易であるため、充分な被覆率の一次粒子が得られ、特に低温や高速充放電において良好な質量エネルギー密度が得られる。一方、平均一次粒子径が550nm以下であれば、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動がスムーズであるため、内部抵抗が増加することなく、出力特性が悪化することもない。
【0020】
炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からなる電極活物質の一次粒子の形状は特に限定されないが、球状、特に真球状の粒子からなる電極材料を生成し易いことから、その形状も球状であることが好ましい。
ここで、球状が好ましい理由は、次の通りである。炭素質被膜で被覆されている、電極活物質の一次粒子と、結着剤と、溶媒とを混合して、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができる。さらに、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストの集電体への塗工も容易となる。また、形状が球状であれば、電極活物質の一次粒子の表面積が最小となり、ひいては、添加する結着剤の混合量を最小限にすることができ、得られる電極の内部抵抗を小さくすることができる。
さらに、電極活物質の一次粒子の形状を球状、特に真球状とすることで最密充填し易くなる。これにより、単位体積あたりのリチウムイオン二次電池用電極材料の充填量が多くなり、その結果、電極密度を高くすることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
【0021】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量は、0.5質量%以上かつ3.5質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以上かつ2.5質量%以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素量が0.5質量%以上であれば、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素量が3.5質量%以下であれば、炭素量が多すぎることなく、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が低下することがない。
【0022】
また、電極活物質の一次粒子の比表面積に対する炭素担持量([炭素担持量]/[電極活物質の一次粒子の比表面積])は、0.75以上かつ1.15以下であることが好ましく、0.8以上かつ1.1以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素担持量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素担持量が0.75以上であれば、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素担持量が1.15以下であれば、炭素量が多すぎることなく、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が低下することがない。
【0023】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積は、7m
2/g以上かつ18m
2/g以下であることが好ましく、9m
2/g以上かつ15m
2/g以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。比表面積が7m
2/g以上であれば、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動がスムーズであるため、内部抵抗が増加することなく、出力特性が悪化することもない。一方、比表面積が18m
2/g以下であれば、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることに起因して必要になる炭素の質量が増加することがないため、充放電容量が低減することもない。
【0024】
「電極活物質」
電極活物質は、Li拡散に好適な結晶構造を有するLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.10、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなる。
LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4において、xが、0.05≦x≦0.35を満たすこととした理由は、次の通りである。Feは、電圧3.5V付近で充放電容量を発現するために、CoやZnに比べ固溶に伴うエネルギー密度低下が緩やかであるので、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を改善の見込める比較的多めの量を固溶可能とした。さらに、Feは、炭化触媒元素であり、Fe固溶により炭素質被膜の被覆性を良好にすることで高速充放電特性や低温特性が改善できるため、充分な炭化触媒作用を発現可能な固溶量を固溶範囲とした。特に、0.05≦x≦0.25であることが好ましい。
【0025】
yが、0.01≦y≦0.10を満たすこととした理由は、次の通りである。Mgは、電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li
+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーの改善効果が顕著であり、エネルギー密度の改善の効果が高い。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で高速充放電特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0026】
zが、0.0001≦z≦0.001を満たすこととした理由は、次の通りである。
Caは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、少量の添加においては低温特性の改善効果がみられる有用な元素である。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるばかりか、多量に添加した場合では結晶内への固溶ではなく不純物として存在し、電池として作動した際の不純物溶解による寿命特性の悪化をもたらすため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で高速充放電特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0027】
wが、0≦w≦0.02を満たすこととした理由は、次の通りである。CoやZnは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li
+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーの改善効果があり、エネルギー密度の改善の効果があるため、適宜、添加することができる。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で高速充放電特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0028】
LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4は、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaの粒子である。
LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の格子定数b1、c1と、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4からアセトニトリル中での硼弗化ニトロソニウムを用いた酸化処理によりLiを脱離させたFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の格子定数b2、c2とから算出されるbc面のmis−fit値[(1−(b2×c2)/(b1×c1))×100]が1.32%以上かつ1.85%以下であり、1.35%以上かつ1.82%以下であることが好ましい。
ここで、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4のbc面のmis−fit値を上記の範囲とした理由は、次の通りである。mis−fit値が1.32%未満では、Liの脱離が充分に起こらずに材料中に残存する。したがって、このような材料を電池に供した場合には、充分な充放電容量が得られず、エネルギー密度が低下する。一方、mis−fit値が1.85%を超えると、充放電に伴う体積変化が大きく、Li脱挿入にかかる活性化エネルギーが多く必要になり、エネルギー密度が低下する。
【0029】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rに対する、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度3CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Lの比L/Rが0.55以上であることが好ましく、0.57以上であることがより好ましい。
ここで、充電容量の値Rに対する充電容量の値Lの比L/Rを上記の範囲とした理由は、次の通りである。L/Rが0.55以上であれば、低温で充放電容量が著しく低下することがないため、電池を高速で作動させた場合にも充分なエネルギー密度が得られる。
【0030】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4のサイクリックボルタモグラムの3.6V−4.2V間のピークから算出されるLi拡散係数が1.0×10
−12以上かつ1.0×10
−10以下であることが好ましく、2.0×10
−12以上かつ8.0×10
−11以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、Li拡散係数を上記の範囲とした理由は、次の通りである。Li拡散係数が1.0×10
−12以上であれば、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4結晶内部のLi拡散が充分に早く、電池を高速で作動させた場合にも充分なエネルギー密度が得られる。一方、Li拡散係数が1.0×10
−10以下であれば、高速で電池を作動させたことに起因する副反応による異常電流が流れていることがなく、寿命特性が悪くなることもない。
【0032】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rは130mAh/g以上であることが好ましく、135mAh/g以上であることがより好ましい。
ここで、充電容量を上記の範囲とした理由は、次の通りである。充電容量が130mAh/g以上であれば、高速充電容量が充分となり、高速での電池使用にも適する。
【0033】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料によれば、低温や高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0034】
[リチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源を、水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーαを、150℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に加熱することで、加圧下にて、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子を合成する工程と、炭素源を含む水溶媒中にLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子を分散させてなる原料スラリーβを乾燥して、造粒した後、500℃以上かつ860℃以下の範囲の温度に加熱することで、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0035】
LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子の合成方法は特に限定されないが、例えば、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA(Co、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種)源を、水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌してLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の原料を含む原料スラリーαを調製する。
【0036】
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源を、これらのモル比(Li源:Fe源:Mn源:Mg源:Ca源:P源:A源)、すなわち、Li:Fe:Mn:Mg:Ca:P:Aのモル比が2〜3.5:0.05〜0.35:0.94〜0.55:0.01〜0.10:0.00001〜0.001:0.95〜1.10:0〜0.05となるように水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌・混合して原料スラリーαを調製する。
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源は、均一に混合する点を考慮すると、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源をそれぞれ、一旦、水溶液の状態とした後、混合することが好ましい。
この原料スラリーαにおけるLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細なLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子を得る必要があることから、0.8mol/L以上かつ3.5mol/L以下であることが好ましい。
【0037】
Li源としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)等の水酸化物、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO
3)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸水素二リチウム(Li
2HPO
4)、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)等のリチウム無機酸塩、酢酸リチウム(LiCH
3COO)、蓚酸リチウム((COOLi)
2)等のリチウム有機酸塩、および、これらの水和物が挙げられる。Li源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
なお、リン酸リチウム(Li
3PO
4)は、Li源およびP源としても用いることができる。
【0038】
Fe源としては、例えば、塩化鉄(II)(FeCl
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3COO)
2)等の鉄化合物またはその水和物や、硝酸鉄(III)(Fe(NO
3)
3)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、クエン酸鉄(III)(FeC
6H
5O
7)等の3価の鉄化合物や、リン酸鉄リチウム等が用いられる。
【0039】
Mn源としては、Mn塩が好ましく、例えば、塩化マンガン(II)(MnCl
2)、硫酸マンガン(II)(MnSO
4)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO
3)
2)、酢酸マンガン(II)(Mn(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Mn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0040】
Mg源としては、Mg塩が好ましく、例えば、塩化マグネシウム(II)(MgCl
2)、硫酸マグネシウム(II)(MgSO
4)、硝酸マグネシウム(II)(Mg(NO
3)
2)、酢酸マグネシウム(II)(Mg(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Mg源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0041】
Ca源としては、Ca塩が好ましく、例えば、水酸化カルシウム(II)(Ca(OH)
2)、塩化カルシウム(II)(CaCl
2)、硫酸カルシウム(II)(CaSO
4)、硝酸カルシウム(II)(Ca(NO
3)
2)、酢酸カルシウム(II)(Ca(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0042】
P源としては、例えば、オルトリン酸(H
3PO
4)、メタリン酸(HPO
3)等のリン酸、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)、リン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸水素二リチウム(Li
2HPO
4)、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)等のリン酸塩、および、これらの水和物の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0043】
Co源としては、Co塩が好ましく、例えば、塩化コバルト(II)(CoCl
2)、硫酸コバルト(II)(CoSO
4)、硝酸コバルト(II)(Co(NO
3)
2)、酢酸コバルト(II)(Co(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Co源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0044】
Ni源としては、例えば、Ni塩が好ましく、例えば、塩化ニッケル(II)(NiCl
2)、硫酸ニッケル(II)(NiSO
4)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO
3)
2)、酢酸ニッケル(II)(Ni(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Ni源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0045】
Zn源としては、Zn塩が好ましく、例えば、塩化亜鉛(II)(ZnCl
2)、硫酸亜鉛(II)(ZnSO
4)、硝酸亜鉛(II)(Zn(NO
3)
2)、酢酸亜鉛(II)(Zn(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Zn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0046】
Al源としては、例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、酢酸化物、水酸化物等のアルミニウム化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0047】
Ga源としては、例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、酢酸化物、水酸化物等のガリウム化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0048】
水を主成分とする溶媒とは、水単独、あるいは、水を主成分とし、必要に応じてアルコール等の水性溶媒を含む水系溶媒、のいずれかである。
水性溶媒としては、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源を溶解させることのできる溶媒であれば、特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れ、150℃以上かつ250℃以下、好ましくは165℃以上かつ215℃以下の範囲の温度に加熱し、0.5時間以上かつ60時間以下、水熱処理を行い、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子を得る。
この150℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に到達したときの耐圧容器内の圧力は、例えば、0.1MPa以上かつ2MPa以下となる。
この場合、水熱処理時の温度および時間を調整することにより、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子の粒子径を所望の大きさに制御することが可能である。
【0050】
次いで、炭素源を含む水溶媒中に、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子を分散させて、原料スラリーβを調製する。
次いで、この原料スラリーβを、乾燥して、造粒した後、500℃以上かつ860℃以下の範囲の温度にて、0.5時間以上かつ60時間以下加熱し、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆し、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を得る。
【0051】
炭素源としては、特に限定されない。例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子等が用いられる。
これらの炭素源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法において、炭素源の添加量(添加率)は、電極活物質と炭素源の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上かつ12質量%以下がより好ましい。
炭素源の添加量が1質量%以上であれば、リチウムイオン二次電池用電極材料における混合安定性が得られる。一方、炭素源の添加量が15質量%以下であれば、相対的に正極活物質の含有量が多いため、電池特性が低下することがない。
【0053】
「化学的Li脱離」
アセトニトリル中に酸化剤を添加した溶液に、上記のようしにて得られたリチウムイオン二次電池用電極材料を混合し、1時間以上かつ48時間以下撹拌することにより、化学的Li脱離を行う。
酸化剤としては、例えば、硼弗化ニトロソニウムが好適に用いられる。
酸化剤の添加量は、脱離するLi量に対して1.1倍等量とする。
Li脱離処理後に、ろ過による固液分離を行い、アセトンで洗浄した後、真空乾燥機内で25℃以上かつ70℃以下の範囲の温度にて、1時間以上かつ48時間以下乾燥させる。
以上の処理により、LiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4から化学的にLiが脱離し、Fe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4を得ることができる。
【0054】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法によれば、低温や高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0055】
[リチウムイオン二次電池用電極]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、電極集電体と、その電極集電体上に形成された電極合剤層(電極)と、を備え、電極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含有するものである。
すなわち、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、主に、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる。
【0056】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極を形成できる方法であれば特に限定されない。本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合してなる、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する。
【0057】
「結着剤」
結着剤としては、水系で使用できれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、酢酸ビニル共重合体や、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、フッ素系ラテックス、シリコン系ラテックス等の群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0058】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける結着剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上かつ6質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
「導電助剤」
導電助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0060】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける導電助剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上かつ10質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
「溶媒」
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストでは、集電体等の被塗布物に対して塗布し易くするために、溶媒を適宜添加してもよい。
主な溶媒は水であるが、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の特性を失わない範囲内で、アルコール類やグリコール類、エーテル類等の水系溶媒が含有されていてもよい。
【0062】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける溶媒の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤と溶媒の合計質量を100質量%とした場合に、80質量%以上かつ300質量%以下であることが好ましく、100質量%以上かつ250質量%以下であることがより好ましい。
上記の範囲で溶媒が含有されることにより、電極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを得ることができる。
【0063】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合する方法としては、これらの成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、ボールミル、サンドミル、プラネタリー(遊星式)ミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等の混錬機を用いた方法が挙げられる。
【0064】
次いで、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、電極集電体の一主面に塗布して塗膜とし、この塗膜を乾燥し、次いで、加圧圧着することにより、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されたリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。
【0065】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極(正極)と、負極と、セパレータと、電解液と、とを備えてなる。
【0066】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、負極、電解液、セパレータ等は特に限定されない。
負極としては、例えば、金属Li、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いることができる。
また、電解液とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
【0067】
電解液は、例えば、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を、例えば、濃度1モル/dm
3となるように溶解することで作製することができる。
セパレータとしては、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
【0068】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を正極として用いたので、高容量かつ高エネルギー密度である。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料によれば、電子伝導性およびイオン伝導性が向上するため、低温や高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.1898Mn
0.80Mg
0.01Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.1898:0.80:0.01:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、185℃にて16時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、得られた粉体(粒子)の95質量%に対し、あらかじめ10質量%に調整したポリビニルアルコール2質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーβを乾燥造粒後、740℃にて4時間熱処理を行うことにより、粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、実施例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0072】
[実施例2]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.1848Mn
0.80Mg
0.01Ca
0.0002Co
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液、Co源としてCoSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.1848:0.80:0.01:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0073】
[実施例3]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.1448Mn
0.80Mg
0.05Ca
0.0002Co
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液、Co源としてCoSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.1448:0.80:0.05:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0074】
[実施例4]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.2848Mn
0.70Mg
0.01Ca
0.0002Co
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液、Co源としてCoSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.2848:0.70:0.01:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0075】
[実施例5]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.2498Mn
0.70Mg
0.05Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2498:0.70:0.05:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0076】
[実施例6]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.2448Mn
0.70Mg
0.05Ca
0.0002Co
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液、Co源としてCoSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.2448:0.70:0.05:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0077】
[比較例1]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.20Mn
0.80PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:P=3:0.20:0.80:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0078】
[比較例2]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.19Mn
0.80Mg
0.01PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:P=3:0.19:0.80:0.01:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0079】
[比較例3]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.0798Mn
0.80Mg
0.12Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.0798:0.80:0.12:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0080】
[比較例4]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.1998Mn
0.80Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.1998:0.80:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0081】
[比較例5]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.30Mn
0.70PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:P=3:0.30:0.70:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0082】
[比較例6]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.29Mn
0.70Mg
0.01PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.29:0.70:0.01:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0083】
[比較例7]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.1798Mn
0.70Mg
0.12Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Mg源としてMgSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.1798:0.70:0.12:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0084】
[比較例8]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.2998Mn
0.70Ca
0.0002PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4、Fe源としてFeSO
4水溶液、Mn源としてMnSO
4水溶液、Ca源としてCa(OH)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.2998:0.70:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0085】
「リチウムイオン二次電池用電極材料の評価」
(1)炭素量
炭素分析計(商品名:EMIA−220V、HORIBA社製)を用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0086】
(2)比表面積
比表面積計(商品名:BELSORP−mini、日本ベル社製)を用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を、窒素(N
2)吸着によるBET法により測定した。評価結果を表1に示す。
【0087】
(3)平均一次粒子径
リチウムイオン二次電池用電極材料を、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)により観察し、得られた走査型電子顕微鏡像から、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料の平均一次粒子径を得た。評価結果を表1に示す。
【0088】
「化学的Li脱離」
アセトニトリル中に酸化剤としてNOBF
4を添加した溶液に、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料を混合し、15時間撹拌することにより、化学的Li脱離を行った。
NOBF
4の添加量は、脱離するLi量に対して1.1倍等量とした。
Li脱離処理後に、ろ過による固液分離を行い、アセトンで洗浄した後、真空乾燥機内で50℃にて24時間乾燥させてサンプルとした。
【0089】
「リチウムイオン二次電池用電極材料およびその化学的Li脱離物の評価」
(1)X線回折
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料を、X線回折装置(商品名:X’Pert PRO MPS、PANalytical社製、線源:CuKa)を用いて同定した。
その結果、実施例1のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.1898Mn
0.80Mg
0.01Ca
0.0002PO
4が生成していることが確認された。また、実施例2のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.1848Mn
0.80Mg
0.01Ca
0.0002Co
0.005PO
4が生成していることが確認された。また、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.20Mn
0.80PO
4が生成していることが確認された。また、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.19Mn
0.80Mg
0.01PO
4が生成していることが確認された。また、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.0798Mn
0.80Mg
0.12Ca
0.0002PO
4が生成していることが確認された。また、比較例4のリチウムイオン二次電池用電極材料では、単相のLiFe
0.1998Mn
0.80Ca
0.0002PO
4が生成していることが確認された。
また、これらのリチウムイオン二次電池用電極材料のX線回折図形から、結晶格子定数および格子体積を算出した。結果を表1に示す。
【0090】
(2)化学的Li脱離物の評価
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料の化学的Li脱離物について、X線回折装置(商品名:X’Pert PRO MPS、PANalytical社製、線源:CuKa)を用いて評価した。また、これらのリチウムイオン二次電池用電極材料のX線回折図形から、結晶格子定数および格子体積を算出した。結果を表1に示す。
【0091】
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、電極材料:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に電極合剤層を形成した。その後、電極合剤層を、所定の密度となるように、所定の圧力にて加圧し、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用正極を、成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、真空乾燥後、乾燥アルゴン雰囲気下、ステンレススチール(SUS)製の2016コイン型セルを用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を作製した。
負極としては金属リチウムを、セパレータとしては多孔質ポリプロピレン膜を、電解液としては1MのLiPF
6溶液を用いた。LiPF
6溶液としては、炭酸エチレンと、炭酸エチレンとを、体積比で1:1となるように混合したものを用いた。
【0092】
「リチウムイオン二次電池の評価」
(1)電池特性
リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値0.1CAにて定電流充電を行い、4.3Vに到達した後、電流値が0.01CAになるまで定電圧充電を行った。このうち、電流値0.1CAでの定電流充電で得られた充電容量をRとした。
その後、1分間休止した後、環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して2.0Vになるまで0.1CAの定電流放電を行った。その後、環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値3CAにて定電流充電を行った。この電流値3CAでの定電流充電で得られた充電容量をLとした。本実施例で得られるような格子体積の変化が抑制された電極材料を用いることにより、電流値3CAでの充電においても十分な充電容量を確保することができ、その後の放電容量および放電電圧双方の低下を抑制することができる。その結果、質量エネルギー密度の低下の抑制を達成可能となる。結果を表1に示す。
【0093】
(2)充電時Mn領域のLi拡散係数
電気化学測定システム(商品名:HZ−3000、北斗電工社製)を用いて、リチウムイオン二次電池のサイクリックボルタンメトリーを測定した。
サイクリックボルタンメトリーの測定は、電圧範囲2.0−5.0V、電圧走査速度を5、3、1、0.5mV/secの各速度で行った。測定は次の順で行った。測定の最初に、電池のエージングを目的として、初期電圧を開回路電圧、電圧走査速度5mV/secにて充電側、放電側の順で初回サイクルを行った。以降のサイクルでは、2.0Vを初期電圧とし、5、3、1、0.5mV/secで充電側、放電側の順で測定を行った。この測定で得られる各電圧走査速度の充電側の3.6V−4.2V間のピークを、充電時Mn領域の反応に由来する電流ピークとした。この電流ピークの値と電圧走査速度の1/2乗とをプロットした傾きから、下記のRandles−Sevcik式(下記の式(1))を拡散係数について解いた式を用いて、充電時Mn領域のLi拡散係数を算出した。評価結果を表1に示す。
I
p=0.4463n
3/2F
3/2C
LiSR
−1/2T
−1/2D
Li1/2ν
1/2・・・(1)
(I
p:ピーク電流[A]、n:電荷移動数、F:ファラデー定数、C
Li:モル濃度[mol/cm
3]、S:電極面積[cm
2]、R:気体定数、T:絶対温度[K]、D
Li:Li拡散係数[cm
2/sec]、ν:電圧走引速度[V/s])
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果から、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池用電極材料は、bc面のmis−fit値が1.53%以上かつ1.82%以下であるため、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rに対する、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度3CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Lの比L/Rが0.575以上であり、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rが140.2mAh/g以上であることが分かった。
一方、比較例1〜8のリチウムイオン二次電池用電極材料は、bc面のmis−fit値が1.29以下、かつ、1.87以上であるため、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rに対する、25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度3CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Lの比L/Rが0.460以上かつ0.539以下であり、かつ25℃で測定されるLiFe
xMn
1−w−x−y−zMg
yCa
zA
wPO
4の電流密度0.1CA、上限電圧4.3Vにおける定電流充電容量の値Rが143.9mAh/g以下であることが分かった。
の格子定数b2、c2とから算出されるbc面のmis−fit値[(1−(b2×c2)/(b1×c1))×100]が1.32%以上かつ1.85%以下であることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法であって、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源を含む原料スラリーαを、150℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に加熱することにより、加圧下にて、LiFe
粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆し、リチウムイオン二次電池用電極材料を得る工程と、アセトニトリル中に酸化剤として硼弗化ニトロソニウムを添加した溶液に、前記リチウムイオン二次電池用電極材料を混合することにより、化学的Li脱離を行
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.1898:0.80:0.01:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、得られた粉体(粒子)の95質量%に対し、あらかじめ10質量%に調整したポリビニルアルコール2質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーβを乾燥造粒後、740℃にて4時間熱処理を行うことにより、粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.1848:0.80:0.01:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.1448:0.80:0.05:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.2848:0.70:0.01:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2498:0.70:0.05:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Co:P=3:0.2448:0.70:0.05:0.0002:0.005:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.0798:0.80:0.12:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.1998:0.80:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.1798:0.70:0.12:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.2998:0.70:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。