【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1>
〔正極活物質粒子の合成〕
水2L(リットル)に、2molのリン酸リチウム(Li
3PO
4)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)とを、全体量が4L(リットル)になるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。得られた混合物を容量8L(リットル)の耐圧密閉容器に収容し、180℃にて1時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
次いで、この正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール5.5gと、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボール500gとを混合し、ボールミルにて12時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。調製したスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの有機化合物で被覆されたLiFePO
4で構成された造粒体を得た。
得られた造粒体を、700℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、導電性の炭素質被覆を有するLiFePO
4(正極活物質粒子A1)を得た。正極活物質粒子A1の平均一次粒子径は、150nmであった。
なお、正極活物質粒子の平均一次粒子径はSEM(Scanning Electron Microscope)にて撮影された画像において、無作為に選択した100個の一次粒子の長辺の長さを平均化することで測定し、無機リン酸塩粒子の平均一次粒子径(D50)は、株式会社堀場製作所製、LB−550、及び株式会社堀場製作所製、SZ−100を用いて測定した。
【0080】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
水500mL(ミリリットル)に、0.5molのリン酸(H
3PO
4)と、0.5molの炭酸リチウム(Li
2CO
3)とを混合し、均一なスラリー上の混合物を調製した。調製した混合物を150℃で1晩加熱することで、水分を蒸発させ、混合物を乾燥させた。乾燥させた混合物を600℃の大気雰囲気下にて12時間焼成することで、Li
4P
2O
7からなる無機リン酸塩粒子を得た。
次いで、得られた無機リン酸塩粒子を目開き45μmのステンレス篩にて分級し、45μm以下の粒子径を有するLi
4P
2O
7(無機リン酸塩粒子B1)を得た。
無機リン酸塩粒子B1の平均一次粒子径は、18μmであった。
【0081】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A1と無機リン酸塩粒子B1とを、正極活物質粒子A1(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B1の質量(表1中では「(A)100質量部に対する(B)の量」欄に示す量)が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例1のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C1)とした。
【0082】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、正極材料C1と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料C1:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、正極材料ペースト(正極用)を調製した。
調製した正極材料ペースト(正極用)を、厚さ30μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。正極と負極の容量比が1.2(正極/負極)となるように正極合剤層の厚さを調整した。
その後、正極合剤層を、正極密度が2.0g/mLとなるように、所定の圧力にて加圧した後、成形機を用いて正極面積9cm
2の正方形状に打ち抜き、実施例1の正極を作製した。
【0083】
次いで、溶媒である純水に、負極活物質としての天然黒鉛と、結着剤としてのスチレンブタジエンラテックス(SBR)と、粘度調整材としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、ペーストの質量比で、天然黒鉛:SBR:CMC=98:1:1となるように加えて、これらを混合し、負極材料ペースト(負極用)を調製した。
調製した負極材料ペースト(負極用)を、厚さ10μmの銅箔(集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、銅箔表面に負極合剤層を形成した。負極合剤層の目付量が4.4mg/cm
2となるよう塗布厚を調整した。負極密度が1.42g/mLとなるように所定の圧力にて加圧した後、成形機を用いて負極面積9.6cm
2の正方形状に打ち抜き、実施例1の負極を作製した。
【0084】
作製した正極と負極とを、ポリプロピレンからなる厚さ25μmのセパレータを介して対向させ、電解液としての1MのLiPF
6溶液0.5mLに含浸させたのち、ラミネートフィルムにて封止して、実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。LiPF
6溶液としては、炭酸エチレンと、炭酸エチルメチルとを、体積比で1:1となるように混合したものを用いた。
【0085】
<実施例2>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例2の正極活物質粒子A2を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例2の無機リン酸塩粒子B2を得た。
【0086】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A2と無機リン酸塩粒子B2とを、正極活物質粒子A2(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B2の質量が1質量部となるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例2のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C2)とした。
【0087】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例2の正極材料C2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0088】
<実施例3>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例3の正極活物質粒子A3を得た。
【0089】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
水500mL(ミリリットル)に、0.5molのリン酸(H
3PO
4)と、0.75molの炭酸リチウム(Li
2CO
3)とを混合し、均一なスラリー上の混合物を調製した。調製した混合物を150℃で1晩加熱することで、水分を蒸発させ、混合物を乾燥させた。乾燥させた混合物を600℃の大気雰囲気下にて12時間焼成することで、Li
3PO
4からなる無機リン酸塩粒子を得た。
次いで、得られた無機リン酸塩粒子を目開き45μmのステンレス篩にて分級し、45μm以下の粒子径を有するLi
3PO
4(無機リン酸塩粒子B2)を得た。
無機リン酸塩粒子B2の平均一次粒子径は、27μmであった。
【0090】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A3と無機リン酸塩粒子B3とを、正極活物質粒子A3(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B3の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例3のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C3)とした。
【0091】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例3の正極材料C3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
<実施例4>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例4の正極活物質粒子A4を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例3と同様にして、実施例4の無機リン酸塩粒子B4を得た。
【0093】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A4と無機リン酸塩粒子B4とを、正極活物質粒子A4(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B4の質量が1質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例4のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C4)とした。
【0094】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例4の正極材料C4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0095】
<実施例5>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例5の正極活物質粒子A5を得た。
【0096】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
水500mL(ミリリットル)に、0.5molのリン酸(H
3PO
4)と、0.17molのクエン酸リチウム(Li
3C
6H
5O
7)とを混合し、均一なスラリー上の混合物を調製した。調製した混合物を150℃で1晩加熱することで、水分を蒸発させ、混合物を乾燥させた。乾燥させた混合物を600℃の非酸化性雰囲気下にて12時間焼成することで、LiPO
3からなる無機リン酸塩粒子を得た。
次いで、得られた無機リン酸塩粒子を目開き45μmのステンレス篩にて分級し、45μm以下の粒子径を有するLiPO
3(無機リン酸塩粒子B5)を得た。
無機リン酸塩粒子B5の平均一次粒子径は、21μmであった。
【0097】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A5と無機リン酸塩粒子B5とを、正極活物質粒子A5(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B5の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例5のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C5)とした。
【0098】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例5の正極材料C5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0099】
<実施例6>
〔正極活物粒子質の合成〕
実施例1と同様にして、実施例6の正極活物質粒子A6を得た。
【0100】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例5と同様にして、実施例6の無機リン酸塩粒子B6を得た。
【0101】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A6と無機リン酸塩粒子B6とを、正極活物質粒子A6(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B6の質量が1質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例6のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C6)とした。
【0102】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例6の正極材料C6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0103】
<実施例7>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例7の正極活物質粒子A7を得た。
【0104】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
水500mL(ミリリットル)に、0.5molのリン酸(H
3PO
4)と、0.25molの炭酸リチウム(Li
2CO
3)とを混合し、均一なスラリー上の混合物を調製した。調製した混合物を150℃で1晩加熱することで、水分を蒸発させ、混合物を乾燥させた。乾燥させた混合物を800℃の大気雰囲気下にて12時間焼成することで、非晶質のLiPO
3からなる無機リン酸塩粒子を得た。
次いで、得られた無機リン酸塩粒子を目開き45μmのステンレス篩にて分級し、45μm以下の粒子径を有する非晶質のLiPO
3(無機リン酸塩粒子B7)を得た。
無機リン酸塩粒子B7の平均一次粒子径は、13μmであった。
【0105】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A7と無機リン酸塩粒子B7とを、正極活物質粒子A7(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B7の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例7のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C7)とした。
【0106】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例7の正極材料C7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0107】
<実施例8>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例8の正極活物質粒子A8を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例7と同様にして、実施例8の無機リン酸塩粒子B8を得た。
【0108】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A8と無機リン酸塩粒子B8とを、正極活物質粒子A8(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B8の質量が1質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例8のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C8)とした。
【0109】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例8の正極材料C8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0110】
<実施例9>
〔正極活物質粒子の合成〕
水2L(リットル)に、2molのリン酸リチウム(Li
3PO
4)と、1.4molの硫酸マンガン(II)(MnSO
4)と、0.6molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)とを、全体量が4L(リットル)になるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。調製した混合物を容量8L(リットル)の耐圧密閉容器に収容し、180℃にて1時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。生成した沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
得られた正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール5.5gと、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボール500gとを混合し、ボールミルにて12時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
調製したスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの有機化合物で被覆されたLiMn
0.7Fe
0.3PO
4で構成された造粒体を得た。
得られた造粒体を、700℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、導電性炭素被覆を有するLiMn
0.7Fe
0.3PO
4(正極活物質粒子A9)を得た。
正極活物質粒子A9の平均一次粒子径は、100nmであった。
【0111】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例9の無機リン酸塩粒子B9を得た。
【0112】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A9と無機リン酸塩粒子B9とを、正極活物質粒子A9(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B9の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例9のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C9)とした。
【0113】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例9の正極材料C9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0114】
<実施例10>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例9と同様にして、実施例10の正極活物質粒子A10を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例3と同様にして、実施例10の無機リン酸塩粒子B10を得た。
【0115】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A10と無機リン酸塩粒子B10とを、正極活物質粒子A10(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B10の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例10のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C10)とした。
【0116】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例10の正極材料C10を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0117】
<実施例11>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例9と同様にして、実施例11の正極活物質粒子A11を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例5と同様にして、実施例11の無機リン酸塩粒子B11を得た。
【0118】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A11と無機リン酸塩粒子B11とを、正極活物質粒子A11(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B11の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例11のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C11)とした。
【0119】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例11の正極材料C11を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0120】
<実施例12>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例9と同様にして、実施例12の正極活物質粒子A12を得た。
実施例7と同様にして、実施例12の無機リン酸塩粒子B12を得た。
【0121】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A12と無機リン酸塩粒子B12とを、正極活物質粒子A12(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B12の質量が5.3質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例12のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C12)とした。
【0122】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
実施例12の正極材料C12を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0123】
<比較例1>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、比較例1の正極活物質粒子A21を得た。
【0124】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、比較例1の正極活物質粒子A21を正極材料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0125】
<比較例2>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例9と同様にして、比較例2の正極活物質粒子A22を得た。
【0126】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、比較例2の正極活物質粒子A22を正極材料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0127】
<実施例13>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例13の正極活物質粒子A23を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例13の無機リン酸塩粒子B23を得た。
【0128】
〔正極活物質粒子と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A23と無機リン酸塩粒子B23とを、正極活物質粒子A23(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B23の質量が0.1質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例13のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C23)とした。
【0129】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例13の正極材料C23を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0130】
<実施例14>
〔正極活物質粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例14の正極活物質粒子A24を得た。
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例14の無機リン酸塩粒子B24を得た。
【0131】
〔正極活物質と無機リン酸塩粒子の混合〕
正極活物質粒子A24と無機リン酸塩粒子B24とを、正極活物質粒子A24(100質量部)に対する無機リン酸塩粒子B24の質量が8.7質量部になるよう均一に混合し、得られた粉末を実施例14のリチウムイオン二次電池用正極材料(正極材料C24)とした。
【0132】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例14の正極材料C24を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例14のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0133】
<実施例15>
【0134】
〔無機リン酸塩粒子の合成〕
実施例1と同様にして、実施例15の無機リン酸塩粒子B25を得た。
【0135】
〔正極活物質前駆体の合成〕
水2L(リットル)に、2molのリン酸リチウム(Li
3PO
4)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)とを、全体量が4L(リットル)になるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。調製した混合物を容量8L(リットル)の耐圧密閉容器に収容し、180℃にて1時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。生成した沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
【0136】
〔正極活物質粒子の合成、及び正極活物質粒子表面への無機リン酸塩被覆〕
得られた正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール5.5gと、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボール500gとを混合し、ボールミルにて12時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。調製したスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの有機化合物で被覆されたLiFePO
4で構成された造粒体を得た。
得られた造粒体と、実施例15の無機リン酸塩粒子を混合し、得られた混合物を700℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、導電性の炭素質被覆と無機リン酸塩被覆を有するLiFePO
4(正極活物質粒子A25)を得た。
正極活物質粒子A25の平均一次粒子径は、160nmであった。
【0137】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例15の正極活物質粒子A25を正極材料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例15のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0138】
<実施例16>
〔正極活物質前駆体の合成〕
水2L(リットル)に、2molのリン酸リチウム(Li
3PO
4)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)とを、全体量が4L(リットル)になるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。調製した混合物を容量8L(リットル)の耐圧密閉容器に収容し、180℃にて1時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。生成した沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
【0139】
〔正極活物質粒子の合成、及び正極活物質粒子表面への無機リン酸塩被覆〕
得られた正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール5.5gと、リン酸(H
3PO
4)として9.31g含むリン酸水溶液と、炭酸リチウム(Li
2CO
3)7.02gと、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボール500gとを混合し、ボールミルにて12時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
調製したスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの有機化合物で被覆されたLiFePO
4で構成された造粒体を得た。
得られた造粒体を、700℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、導電性の炭素質被覆と無機リン酸塩被覆を有するLiFePO
4(正極活物質粒子A26)を得た。
正極活物質粒子A26の平均一次粒子径は、180nmであった。
【0140】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
正極材料C1に代えて、実施例16の正極活物質粒子A26を正極材料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例16のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0141】
<リチウムイオン二次電池の評価>
実施例1〜16及び比較例1〜2のリチウムイオン二次電池について、以下の通り、充放電試験と過充電試験を行った。
(1)サイクル試験
60℃環境下で、電流値2Cにて電池電圧が4.1Vになるまで定電流充電した後、電流値2Cにて電池電圧が2Vになるまで放電したところまでを1サイクルとし、
前記1サイクル中において、電流値2Cにて電池電圧が4.1Vになるまで定電流充電した際の充電容量を充電容量Aとし、その後、電流値2Cにて電池電圧が2Vになるまで放電した際の放電容量を放電容量Bとした際、1サイクル中の放電容量Bと充電容量Aの差(放電容量B−充電容量A)を500サイクルにわたって積算した際の積算値を積算不可逆容量として評価し、表1に示した。
また、1サイクル目の放電容量Bを放電容量として評価した。
また、1サイクル目の放電容量Bを分子とし、500サイクル目の放電容量Bを分母としたときの割合を容量維持率として評価した。
【0142】
(2)負極Fe定量試験
(1)のサイクル試験で500サイクル経過後のラミネートセルを大気中で開封し、負極を3gのジエチルカーボネート(DEC)ですすいだのち、50℃12時間真空下で乾燥させた。次いで、乾燥した負極上の黒鉛をセラミック製のへらでこそぎ落とし、負極上のすべての黒鉛を回収した。次いで、回収した黒鉛を白金坩堝に入れ、蓋をして電気炉で700℃まで徐々に温度を上げて、試料を灰化した。次いで、灰化試料に四ほう酸リチウムを加え、電気炉にて925℃まで加熱し溶融させた。次いで、溶融した試料を白金坩堝ごとトールビーカーに入れ、温水及び硝酸を加え撹拌溶解した。この溶解液を検液としてICP−AESにてFe量を測定した。得られた負極中のFe割合(Fe質量/500サイクル経過後の負極上の黒鉛全質量)を負極Fe量[mg/kg]として評価した。
【0143】
<評価結果>
実施例1〜16及び比較例1〜2のリチウムイオン二次電池の評価結果を表1に示す。
また、実施例1及び比較例1におけるサイクル試験時の積算不可逆容量値変動を
図1に示す。
図1に示す曲線は、縦軸を積算不可逆容量〔mAh/g〕、横軸をサイクル数とした積算不可逆容量値変動曲線である。
図1中、実線が実施例1のサイクル試験時の積算不可逆容量値変動を表し、点線が比較例1のサイクル試験時の積算不可逆容量値変動を表す。
また、表1には、正極活物質粒子が無機リン酸塩粒子で被覆されているか否かを、「無機リン酸塩粒子被覆有無」欄に示した。正極活物質粒子が無機リン酸塩粒子で被覆されているものを「有」として示した。
【0144】
【表1】
【0145】
表1の結果から、実施例1〜12と、比較例1及び2とを比較すると、無機リン酸塩粒子を加えた実施例1〜12のリチウムイオン二次電池は、無機リン酸塩粒子を加えていない比較例1及び2のリチウムイオン二次電池に比べて負極Fe量が低減していること、積算不可逆容量が低減していること、容量維持率が60%以上であることが確認できた。
また、実施例1及び2と、実施例13及び14とを比較すると、質量比(無機リン酸塩粒子/正極活物質粒子)の小さい実施例13は負極Fe量が多く、積算不可逆容量が大きく、容量維持率が低いことが確認できた。また、正極活物質粒子(A)100質量部に対する無機リン酸塩粒子(B)の質量(表1中の「(A)100質量部に対する(B)の量」)の大きい実施例14は負極Fe量が少ないものの、放電容量が低いことが確認できた。実施例14の放電容量が低いのは、電子伝導性の低い無機リン酸塩粒子の割合が増えすぎたことで正極合剤層の電子伝導性が損なわれ過ぎたことと、無機リン酸塩粒子に電気化学的活性がないので単に容量が低下していることの2点が要因と考えられる。
【0146】
また、実施例1と、実施例15及び16とを比較すると、正極活物質粒子表面に無機リン酸塩が被覆した形態をとっている実施例15及び16においては、負極Fe量が多く、正極から遷移金属の溶出を抑制する効果が十分に発揮されていないことが分かる。
また、
図1の結果から、実施例1のリチウムイオン二次電池は、サイクル初期に増加した不可逆容量以外は増加の傾向が見えず、正極からのFe溶出が少ないことを示唆しており、リチウムイオン二次電池としての特性に優れることが分かるが、比較例1のリチウムイオン二次電池は、サイクル中常に不可逆容量が生じており、正極からのFe溶出が多いことを示唆しており、リチウムイオン二次電池としての特性が実施例1に比べ劣ることが分かる。