【課題】柔軟性、滑り性、耐ブロッキング性、保温性、水蒸気透過性、撥水性、紡糸性に優れた特性のあるポリウレタン繊維及び前記繊維からなる繊維積層構造体並び前記繊維の製造方法の提供。
【解決手段】ポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)、及びポリイソシアネート(D)の反応生成物からなるシリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂から形成された繊維であって、前記活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)が、片末端のみにカルビノール基を有する活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C−1)を含有する樹脂であって、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂を、エレクトロスピニング装置によって紡糸した繊維。
ポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)、及びポリイソシアネート(D)の反応生成物からなるシリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂から形成された繊維であって、前記活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)が、片末端のみにカルビノール基を有する活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C−1)を含有することを特徴とする繊維。
カルビノール基が、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエタ−1−イル基、2−ヒドロキシプロパ−1−イル基、3−ヒドロキシプロパ−1−イル基、2−ヒドロキシブタ−1−イル基、4−ヒドロキシブタ−1−イル基、5−ヒドロキシペンタ−1−イル基、6−ヒドロキシへキサ−1−イル基、7−ヒドロキシヘプタ−1−イル基、8−ヒドロキシオクタ−1−イル基、9−ヒドロキシノナ−1−イル基、10−ヒドロキシデカ−1−イル基から選ばれる請求項2記載の繊維。
式(1)のオルガノポリシロキサン(C−1)と式(3)のオルガノポリシロキサン(C−2)との割合が質量比として(C−1):(C−2)=100:0〜1:99である請求項4記載の繊維。
前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂が、有機溶媒、水、もしくはそれらの混合物の溶液又は分散液の状態で供給されることを特徴とする請求項10記載の繊維の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の繊維は、シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂から形成された繊維であることを特徴とする。
【0011】
前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂は、ポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)、及びポリイソシアネート(D)を反応させて得られ、(A)〜(D)成分の総量100質量部中、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)を0.1〜50質量部、より好ましくは0.1〜40質量部、更には1〜30質量部含むものであることが好ましい。
【0012】
ここで、本発明において反応生成物とは、前記(A)〜(D)成分のみの反応生成物に限るものではなく、(A)〜(D)成分に加えてポリアミン(E)等の他成分を含んだものの反応生成物であってもよい。
【0013】
本発明において、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂は、公知のポリウレタンの合成方法を利用することによって製造することができる。例えば、ポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)、及びポリイソシアネート(D)の反応によりシリコーン変性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0014】
前記ポリオール(A)は、数平均分子量500以上、好ましくは500〜10,000、より好ましくは700〜3,000の高分子ポリオールであり、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)以外のものを用いることができる。高分子ポリオールの具体例としては、以下に示す(i)〜(vi)の群に属するものを挙げることができる。なお、本発明において、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリメタクリル酸メチル換算の値である。
(i)ポリエーテルポリオール;例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等)、及び/又は、複素環式エーテル(テトラヒドロフラン等)を重合又は共重合して得られるもの、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロック又はランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレングリオール等。
(ii)ポリエステルポリオール;例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸等)及び/又は芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレンングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等)とを縮重合したもの、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール等。
(iii)ポリラクトンポリオール;例えば、ポリカプロラクトンジオール又はトリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール等。
(iv)ポリカーボネートポリオール;例えば、ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリデカメチレンカーボネートジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体等。
(v)ポリオレフィンポリオール;例えば、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール又は、その水素化物等。
(vi)ポリメタクリレートポリオール;例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオール等。
これらの中でも、ポリエーテルポリオールが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【0015】
鎖伸長剤(B)は、数平均分子量500未満、好ましくは60以上500未満、より好ましくは75〜300の短鎖ポリオールであり、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノール類及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);炭素数1〜18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどの多価アルコール系化合物が挙げられる。これらの中で脂肪族グリコール類がより好ましく、更に好ましくはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオールである。
【0016】
鎖伸長剤(B)の使用量は、前記ポリオール(A)100質量部に対して1〜200質量部、特に10〜30質量部であることが好ましい。
【0017】
前記活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)は、式(1)で表される片末端のみにカルビノール基を有するオルガノポリシロキサン(C−1)を含む。
R
1R
2R
3SiO(SiR
2R
3O)
nSiR
2R
3R
4 (1)
[式(1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のアリール基、又はビニル基から選択される基であり、R
4は下記式(2)
R
5−X−CH
2CR
6(R
7)
2 (2)
(式(2)中、R
5は鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数2〜10の2価のアルキレン基であり、R
6は水素原子、アミノ基、又は炭素数1〜10の1価のアルキル基であり、R
7は炭素数1〜10のカルビノール基であり、Xは単結合又は−O−結合である。)であり、nは1〜200の整数である。]
【0018】
前記式(1)におけるR
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のアリール基、又はビニル基から選択される基である。
【0019】
前記の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキサ−1−イル基、2−フェニルエタ−1−イル基、2−メチル−2−フェニルエタ−1−イル基等が挙げられる。
【0020】
前記の水素原子の一部がフッ素原子置換された直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−ウンデカフルオロヘプチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ペンタデカフルオロノニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
【0021】
置換基を有していてもよい炭素数5〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチル−1−フェニル基、3−メチル−1−フェニル基、4−メチル−1−フェニル基、2,3−ジメチル−1−フェニル基、3,4−ジメチル−1−フェニル基、2,3,4−トリメチル−1−フェニル基、2,4,6−トリメチル−1−フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0022】
前記のR
2、R
3のうち、好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基又はビニル基である。
【0023】
前記のR
4を示す式(2)において、R
5は鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数2〜10の2価のアルキレン基であり、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−へキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、2−(3−プロパ−1−オキシ)エタ−1−イレン基、3−(3−プロパ−1−オキシ)プロパ−1−イレン基、4−(3−プロパ−1−オキシ)ブタ−1−イレン基、5−(3−プロパ−1−オキシ)ペンタ−1−イレン基、6−(3−プロパ−1−オキシ)ヘキサ−1−イレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロヘプチレン基、1,4−ジオキサシクロヘキサ−2,5−イレン基等から選択される基である。より好ましくは、入手の容易性から1,3−プロピレン基である。
【0024】
式(2)においてR
6は、水素原子、又は炭素数1〜10の1価のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキサ−1−イル基、2−フェニルエタ−1−イル基、2−メチル−2−フェニルエタ−1−イル基等が挙げられる。好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0025】
式(2)においてR
7は、炭素数1〜10の2価のカルビノール基であり、具体的にはヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエタ−1−イル基、2−ヒドロキシプロパ−1−イル基、3−ヒドロキシプロパ−1−イル基、2−ヒドロキシブタ−1−イル基、4−ヒドロキシブタ−1−イル基、5−ヒドロキシペンタ−1−イル基、6−ヒドロキシへキサ−1−イル基、7−ヒドロキシヘプタ−1−イル基、8−ヒドロキシオクタ−1−イル基、9−ヒドロキシノナ−1−イル基、10−ヒドロキシデカ−1−イル基等が挙げられる。好ましくはヒドロキシメチル基や2−ヒドロキシエタ−1−イル基である。
【0026】
式(2)のXは、単結合又は−O−結合である。
【0027】
前記式(1)のnは、1〜200の整数であり、好ましくは10〜160の整数である。
【0028】
このようなオルガノポリシロキサン(C−1)は、それぞれ必要な置換基に応じて合成してもよいが、具体的には下記化合物(1−1)〜(1−6)等が挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Buはブチル基を示す(以下、同様)。
【化1】
但し、上記化合物(1−1)及び(1−2)は、n
1=nで、n
1は1以上であり、上記化合物(1−3)〜(1−6)では、n
1+n
2=nであり、n
1は1以上、n
2も1以上である。
このような化合物は片末端ハイドロジェンポリジメチルシロキサンとトリメチロールプロパンモノアリルエーテルとをヒドロシリル化反応することで合成が可能である。
【0029】
また、前記活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)は、前記式(1)のオルガノポリシロキサン(C−1)のみから構成されていてもよいが、オルガノポリシロキサン(C−1)の他に任意に下記式(3)で表される活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C−2)を更に含むことが可能である。
R
8SiR
2R
3O(SiR
2R
3O)
mSiR
2R
3R
8 (3)
(式(3)中、R
2、R
3は前記と同じであり、R
8はそれぞれ独立して、水酸基又はメルカプト基を有し、鎖中に酸素原子を介していてもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基、又は第1級アミノ基もしくは第2級アミノ基を有する炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは1〜60の整数である。)
【0030】
前記の水酸基又はメルカプト基を有し、鎖中に酸素原子を介していてもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエタ−1−イル基、2−ヒドロキシプロパ−1−イル基、3−ヒドロキシプロパ−1−イル基、2−ヒドロキシブタ−1−イル基、3−ヒドロキシブタ−1−イル基、4−ヒドロキシブタ−1−イル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−(ヒドロキシメトキシ)エタ−1−イル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エタ−1−イル基、2−(2−ヒドロキシプロポキシ)エタ−1−イル基、2−(3−ヒドロキシプロポキシ)エタ−1−イル基、2−(2−ヒドロキシブトキシ)エタ−1−イル基、2−(3−ヒドロキシブトキシ)エタ−1−イル基、2−(4−ヒドロキシブトキシ)エタ−1−イル基、3−(ヒドロキシメトキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロパ−1−イル基、3−(3−ヒドロキシプロポキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−ヒドロキシブトキシ)プロパ−1−イル基、3−(3−ヒドロキシブトキシ)プロパ−1−イル基、3−(4−ヒドロキシブトキシ)プロパ−1−イル基、メルカプトメチル基、2−メルカプトエタ−1−イル基、2−メルカプトプロパ−1−イル基、3−メルカプトプロパ−1−イル基、2−メルカプトブタ−1−イル基、3−メルカプトブタ−1−イル基、4−メルカプトブタ−1−イル基、2−(メルカプトメトキシ)エタ−1−イル基、2−(2−メルカプトエトキシ)エタ−1−イル基、2−(2−メルカプトプロポキシ)エタ−1−イル基、2−(3−メルカプトプロポキシ)エタ−1−イル基、2−(2−メルカプトブトキシ)エタ−1−イル基、2−(3−メルカプトブトキシ)エタ−1−イル基、2−(4−メルカプトブトキシ)エタ−1−イル基、3−(メルカプトメトキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−メルカプトエトキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−メルカプトプロポキシ)プロパ−1−イル基、3−(3−メルカプトプロポキシ)プロパ−1−イル基、3−(2−メルカプトブトキシ)プロパ−1−イル基、3−(3−メルカプトブトキシ)プロパ−1−イル基、3−(4−メルカプトブトキシ)プロパ−1−イル基等が挙げられる。
【0031】
前記の第1級アミノ基もしくは第2級アミノ基を有する炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、例えば、アミノメチル基、2−アミノエタ−1−イル基、2−アミノプロパ−1−イル基、3−アミノプロパ−1−イル基、2−アミノブタ−1−イル基、3−アミノブタ−1−イル基、4−アミノブタ−1−イル基、N−メチルアミノメチル基、N−メチル−2−アミノエタ−1−イル基、N−メチル−2−アミノプロパ−1−イル基、N−メチル−3−アミノプロパ−1−イル基、N−メチル−2−アミノブタ−1−イル基、N−メチル−3−アミノブタ−1−イル基、N−メチル−4−アミノブタ−1−イル基、N−エチルアミノメチル基、N−エチル−2−アミノエタ−1−イル基、N−エチル−2−アミノプロパ−1−イル基、N−エチル−3−アミノプロパ−1−イル基、N−エチル−2−アミノブタ−1−イル基、N−エチル−3−アミノブタ−1−イル基、N−エチル−4−アミノブタ−1−イル基、N−ブチルアミノメチル基、N−ブチル−2−アミノエタ−1−イル基、N−ブチル−2−アミノプロパ−1−イル基、N−ブチル−3−アミノプロパ−1−イル基、N−ブチル−2−アミノブタ−1−イル基、N−ブチル−3−アミノブタ−1−イル基、N−ブチル−4−アミノブタ−1−イル基等が挙げられる。
【0032】
式(3)のR
8のうち、好ましくは第1級水酸基もしくは第2級水酸基を有し、鎖中に酸素原子を介していてもよい炭素数2〜6の1価炭化水素基、又は第1級アミノ基もしくは第2級アミノ基を有する炭素数2〜6の1価炭化水素基であり、より好ましくは2−ヒドロキシエタ−1−イル基、3−ヒドロキシプロパ−1−イル基、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロパ−1−イル基又は3−アミノプロパ−1−イル基である。
【0033】
式(3)のR
2、R
3は、前記と同じであるが、好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基又はビニル基である。
【0034】
式(3)において、mは1〜60の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
【0035】
このようなオルガノポリシロキサン(C−2)は、それぞれ必要な置換基に応じて合成してもよいが、市販品を使用してもよい。具体的には下記化合物(3−1)、(3−2)等が挙げられる。
【化2】
(mは上記の通りである。)
【0036】
ここで、求める性質により適宜配合を変えることで、式(1)のオルガノポリシロキサン(C−1)と式(3)のオルガノポリシロキサン(C−2)との質量比は、100:0〜1:99であることが好ましく、オルガノポリシロキサン(C−2)を配合する場合は99:1〜1:99であることが好ましい。
なお、(A)成分全体の使用量は、上述した通りである。
【0037】
ポリイソシアネート(D)としては、従来公知のいずれのものも使用できるが、例えば、好ましいものとして、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども使用することができる。
【0038】
ポリイソシアネート(D)の使用量は、前記(A)〜(C)成分由来の活性水素基に対するイソシアネート基の当量比が、0.9〜1.1となる配合量が好ましく、より好ましくは0.95〜1.05となる範囲、特に好ましくは0.99〜1.01となる範囲である。
【0039】
本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂の合成において、ポリアミン(E)を添加してもよい。ポリアミン(E)としては、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系ジアミン、芳香族系ジアミン、長鎖ジアミン類及びヒドラジン類等が挙げられ、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)以外のものが使用できる。短鎖ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン及びオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及びイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。長鎖ジアミン類としては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)の重合体又は共重合体から得られるものが例示され、具体的にはポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられる。ヒドラジン類としては、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド及びフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。また、アミノ変性タイプのシランカップリング剤を使用すれば、自己硬化反応型の塗料の設計が可能になる。例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−602)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−603)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−602)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−603)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−903)、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
なお、ポリアミン(E)の使用量は、これを配合する場合、前記(A)〜(D)成分の合計量100質量部に対して1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部である。
【0041】
本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂の合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズビス(メチルマレエート)、ジブチルスズビス(エチルマレエート)、ジブチルスズビス(ブチルマレエート)、ジブチルスズビス(オクチルマレエート)、ジブチルスズビス(トリデシルマレエート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレエート)、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジオクチルスズビス(エチルマレエート)、ジオクチルスズビス(オクチルマレエート)、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチルスズオキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセテート)、又は塩化チタン等に酒石酸等のジオールを反応させた錯体などの金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン(Et
3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン(NMO)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルイミダゾール(NMI)、ピリジン、2,6−ルチジン、1,3,5−コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピラジン、キノリン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(DABCO)等の第三級有機塩基触媒等が挙げられる。
【0042】
触媒の使用量は、触媒量であり、好ましくは前記(A)〜(E)成分全体の量に対して0.01〜10モル%であり、より好ましくは0.1〜5モル%である。
【0043】
なお、本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂は無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましい溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、又は反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メントンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−メシチレン、1,2,3−メシチレン、1,2,4−メシチレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、i−ペンチルベンゼン、sec−ペンチルベンゼン、t−ペンチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、i−ヘキシルベンゼン、sec−ヘキシルベンゼン、t−ヘキシルベンゼン、スワゾール(コスモ石油(株)製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学(株)製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、i−ブチルシクロヘキサン、sec−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、n−ペンチルシクロヘキサン、i−ペンチルシクロヘキサン、sec−ペンチルシクロヘキサン、t−ペンチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、i−ヘキシルシクロヘキサン、sec−ヘキシルシクロヘキサン、t−ヘキシルシクロヘキサン、リモネン)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、s−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジフェニルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン(THP)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)など)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなど)が挙げられる。これらの内、溶媒回収、ウレタン合成時の溶解性、反応性、沸点、水への乳化分散性を考慮すれば、DMF、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、及びテトラヒドロフランなどが好ましい。
【0044】
本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂の合成工程において、ポリマー末端にイソシアネート基が残った場合、更にイソシアネート末端の停止反応を行ってもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのような単官能性の化合物のほか、イソシアネートに対して異なる反応性をもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン等が挙げられ、このなかでもアルカノールアミン類が反応制御し易いという点で好ましい。
【0045】
前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましい。シリコーン変性ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記範囲中にあれば、ポリマー溶液中で高分子鎖同士が十分に絡み合い、繊維化しやすくなる。また、ポリマー溶液がエレクトロスピニング法による紡糸に適した粘度を発現させる点からも、数平均分子量の範囲は前記範囲であることが好ましい。特に好ましい数平均分子量は40,000〜120,000である。
【0046】
本発明においては、得られる繊維の種々の特性を改善する目的で、無機もしくは有機物フィラー等の各種添加物を配合することもできる。添加物を配合する場合は、所定量をシリコーン変性ポリウレタン樹脂製造時の反応系中に予め添加しておくと均一にフィラー等の添加物分散した不織布が得られるので好ましい。
また、本発明の効果を害さない範囲で、その他の樹脂を混合した樹脂組成物としてもよい。更に、発明の効果を害さない範囲で、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与することができる。
【0047】
本発明に係る繊維は、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂から形成されるものであり、該樹脂は前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂のみから形成されていることが好ましいが、必要に応じビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を単独で又は2種以上併用して0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%含有してもよい。
【0048】
本発明において、繊維積層構造体とは、得られた単数又は複数の繊維が積層され、織る、編むもしくはその他の手法により形成された立体構造体を指す。具体的な繊維積層構造体の形態としては、例えば不織布、チューブ、メッシュ等が挙げられる。
【0049】
本発明からなる不織布について、弾性率は1〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaであり、表面の動摩擦係数は0.5〜2.0、より好ましくは0.5〜1.0であり、熱伝導率は0.001〜0.02W/mK、より好ましくは0.01〜0.02W/mKであり、水接触角は100°以上(撥水性)、より好ましくは120〜160°であり、水分率は150%以下、より好ましくは50〜120%であり、破断伸びは80%以上であり、より好ましくは100%以上である。
【0050】
本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂からなる繊維は、下記三つの工程を経て製造されることが好ましい。第一工程は、シリコーン変性ポリウレタン樹脂を製造する工程であり、第二工程は、有機溶媒、水、もしくはそれらの混合物を用いて、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む溶液又は分散液を調製する工程であり、第三工程は、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂の溶液又は分散液を紡糸する工程である。
【0051】
第一工程のシリコーン変性ポリウレタン樹脂を製造する工程としては、例えば、分子内に活性水素基を含まない有機溶剤の存在下、又は溶剤の不存在下に、ポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、活性水素基含有オルガノポリシロキサン(C)、及びポリイソシアネート(D)を、イソシアネート基と活性水素基との当量比が、通常0.9〜1.1となる配合で、ワンショット法、又は多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは50〜110℃で反応し、生成した樹脂を水と中和剤で乳化した後、必要に応じて脱溶剤工程を経て本発明のシリコーン変性ポリウレタン樹脂(又はその水中乳化体)を得ることができる。
【0052】
前記第二工程は、有機溶媒、水、もしくはそれらの混合物を用いて、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂の溶液又は分散液を調製する工程である。前記溶液又は分散液の固形分濃度は10〜50質量%であることが好ましい。固形分濃度が10質量%より小さいと、繊維を形成することが困難で、粒子状もしくはビーズ状となり好ましくない。また、50質量%より大きいと、得られる繊維の繊維径が大きくなり、また、液の粘度が高くなることにより、紡糸装置中において送液不良やノズル詰まりが起こりやすくなるために好ましくない。より好ましい固形分濃度は20〜40質量%である。
【0053】
前記第二工程において使用する溶媒は、1気圧下での沸点が300℃以下であり、25℃で液体である物質であり、シリコーン変性ポリウレタン樹脂及び必要に応じて添加する樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、シリコーン変性ポリウレタン樹脂の重合の際に用いた溶媒を用いることが可能で、重合で得られたシリコーン変性ポリウレタン樹脂溶液をそのまま用いることもできる。それ以外の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン等を代表とする有機溶媒(エーテル系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物、アミド系化合物、ニトリル系化合物、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素)、及び水から選ばれた少なくとも1種類以上の混合溶媒が挙げられる。
【0054】
エーテル系化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジフェニルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン(THP)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、特に好ましくはTHFである。アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−メルカプトメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール等が挙げられ、特に好ましくはメタノール、エタノール、エチレングリコールである。ケトン系化合物としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、リモネン等が挙げられ、特に好ましくはメチルエチルケトンである。アミド系化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)等が挙げられ、特に好ましくはジメチルホルムアミドである。ニトリル系化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられ、特に好ましくはアセトニトリル又はプロピオニトリルである。脂肪族及び芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−メシチレン、1,2,3−メシチレン、1,2,4−メシチレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、i−ペンチルベンゼン、sec−ペンチルベンゼン、t−ペンチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、i−ヘキシルベンゼン、sec−ヘキシルベンゼン、t−ヘキシルベンゼン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、i−ブチルシクロヘキサン、sec−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、n−ペンチルシクロヘキサン、i−ペンチルシクロヘキサン、sec−ペンチルシクロヘキサン、t−ペンチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、i−ヘキシルシクロヘキサン、sec−ヘキシルシクロヘキサン、t−ヘキシルシクロヘキサン、リモネン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
【0055】
混合溶媒の組み合わせとしては、エーテル系化合物と水、エーテル系化合物とアルコール系化合物、ケトン系化合物と水、又はアミド系化合物とケトン系化合物との組み合わせが好ましい。より好ましくは、アミド系化合物とケトン系化合物の混合溶媒であり、混合比率としては、低沸点のケトン系化合物を用いると蒸発速度が上がり、紡糸し難くなるため、アミド系化合物とケトン系化合物の場合は50:50〜80:20(いずれも質量比)がより好ましい。
【0056】
前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂を含む樹脂の溶液又は分散液の粘度は1〜1,500dPa・sの範囲であることが好ましい。特に好ましい粘度は200〜800dPa・sである。なお、粘度は回転粘度計による25℃の粘度である。
【0057】
前記第三工程は、前記シリコーン変性ポリウレタン樹脂の溶液又は分散液を紡糸する工程である。紡糸方法としては特に限定されないが、エレクトロスピニング法(静電紡糸法・電界紡糸法・溶融法)が好ましい。
【0058】
エレクトロスピニング法では、ポリマー溶液を、ノズルとコレクター間の電極間に高電圧を印加することで形成された静電場中に吐出し、形成される繊維を捕集基板に積層することによって不織布を得ることができる。ここで、不織布とは既に溶媒が蒸発及び除去された状態のみに限定されず、溶媒を含んでいる状態も指す。
【0059】
本発明において好ましく用いられるエレクトロスピニング法による紡糸装置について説明する。前記電極は、金属、無機物、又は有機物のいかなるものでも導電性を示すものが使用できる。また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、又は有機物の薄膜を持つものであってもよい。前記静電場はノズルとターゲット間に高電圧を印加することで形成されるもので、一対又は複数の電極間で形成されたものでもよい。例えば、電圧値が異なる電極が2つ(例えば15kVと10kV)と、アースに接続された電極との合計3つの電極を用いる場合も含み、又はそれ以上の複数電極を使う場合も含む。
【0060】
エレクトロスピニング法により繊維を製造する際に用いる溶媒は、単独で使用してもよく複数の溶媒を組み合わせてもよい。また、溶剤の蒸発速度を調節する方法として、ノズル形状を調整する方法、混合溶媒を用いる方法、紡糸環境温度又は湿度を調整する方法等が挙げられ、適宜組み合わせて使用できる。これらの中でも、混合溶媒を用いる解決方法が簡便で有効である。
【0061】
調製したポリマー溶液をノズルより静電場中へ吐出するには、任意の方法を用いることができる。例えば、
図1において、ポリマー溶液2をノズル1を備えたポリマー溶液槽へ供給し、静電場中に固定したポリマー溶液槽のノズルからポリマー溶液を噴出させ繊維化させる。このためには適宜な装置を用いることができ、例えば筒状の注射器シリンジ3のポリマー溶液保持部分の先端部に、適宜の手段、例えば高電圧発生器5により電圧をかけた注射針状のノズル1を、電極を接地した捕集基板4から適当な距離に設置する。ポリマー溶液2がノズル1の先端から噴出するときに、ノズル1の先端と捕集基板4の間に繊維を形成することができる。
【0062】
ポリマー溶液を静電場中に導入する他の方法としては、公知の方法を使用でき、例えば、ノズルを有するポリマー溶液の入ったシリンジに直接、繊維状構造体を捕集する電極と対になる電極を挿入してもよい。シリンジでは容量が小さい場合が多いため、シリンジの代わりにタンクを使用してもよく、タンクの上部から圧力を掛けることで底部のノズルから紡糸してもよく、逆のタンクの下部から圧力を掛けることでタンク上部のノズルから紡糸してもよい。この時、電極をノズルに直接付着させず、吹き出し口の近くに電極を配し、アシストエアーで捕集基盤に積層することも可能である(特開2010−121221号公報)。一方、ノズルを使用しない他の紡糸方法として、回転ロールを使った静電紡糸法が提案されている。例えば、回転ロールをポリマー溶液で満たした浴に浸漬し、ロール表面上にポリマー溶液を付着させ、この表面に高電圧を印加し、静電紡糸を行う方法である。
【0063】
ポリマー溶液をノズルから静電場中に供給する場合、数個のノズル(特開2007−303031号公報)やアシストエアーの吹付部を設けること(特開2014−47440号公報)で繊維状構造体の生産速度を増加させることも可能である。また、品質を向上させるためにノズルと捕集基板の間に電極体を配置し、所定の電位を付与することで、ナノファイバーの配向性を高める方法(特開2008−223186号公報)、複数個のノズルにアシストエアー吹出口を設け、ノズル間の位置を制御したノズルを使用すること(特開2014−177728号公報)や、混合溶液を複数のノズルへ送液する時にギヤポンプを使用することで、均一な繊維径と処理速度を高速化することも可能である(特開2010−189771号公報)。電極間の距離は、電圧、ノズル寸法(直径)、紡糸液流量、紡糸液濃度等に依存するが、コロナ放電を抑えるためにも、例えば印加電圧が10〜20kVのときには5〜30cmの距離が適当である。コロナ放電を抑える他の方法として真空下で紡糸することも可能である。
【0064】
印加する電圧の大きさは特に限定されないが、印加する電圧は3〜100kVであることが好ましい。印加電圧が3kV未満になると、クーロン反発が小さくなり繊維化が困難になる傾向があるため好ましくなく、100kVを超えると、電極間でスパークが発生し、紡糸できない場合があるので好ましくない。より好ましくは5〜30kVである。
【0065】
ポリマー溶液が噴出するノズルの寸法は、特に限定されないが、生産性と得られる繊維径とのバランスを考慮すると、0.05〜2mmが好ましく、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0066】
ポリマー溶液の供給速度(又は押出速度)は、特に限定されないが、目的とする繊維径に影響を与えるため、適当な値を設定することが好ましい。供給速度が速すぎると、溶媒の蒸発が不十分となる、クーロン反発が不足する等の影響で、望む繊維が得られない場合がある。供給速度が遅すぎると、繊維の生産性が低下するため好ましくない。ポリマー溶液の供給速度は、1個のノズル当たり0.01〜0.1ml/minが好ましい。
【0067】
前記は、電極が捕集基板を兼ねる場合であるが、電極間に設置した捕集基板に繊維を捕集することも可能である。この場合、例えばベルト状の補修基板を電極間に設置することで、連続的な生産も可能となる。
【0068】
ポリマー溶液を捕集基板へ積層させる際、溶媒が蒸発して繊維状構造体が形成される。一般的に、室温であれば捕集基板上に捕集されるまでの間に溶媒は蒸発するが、溶媒の蒸発が不十分な場合は減圧条件下で紡糸してもよい。また、紡糸環境温度は、使用する溶媒によって異なり、溶媒の蒸発やポリマー溶液の粘度に依存する。一般的には0〜50℃で行うが、揮発性の低い溶媒を用いた場合は、50℃を超える温度であってもよく、紡糸装置や得られる繊維積層構造体の機能を損なわない範囲であればよい。湿度は0〜50%RHが適当であるが、ポリマー濃度や溶媒の種類等によって適宜変更可能である。このためにポリマー溶液供給用のシリンジやタンクに温度制御機構や湿度制御機構を設けることも可能である。
【0069】
本発明の繊維は、単独で用いてもよいが、取扱い性やその他の要求事項に合わせて、他の部材と組み合わせて使用してもよい。例えば、捕集基板として不織布、織布、フィルム等の支持基材を用い、その上に本発明の繊維を積層することで、支持基材と本発明の繊維積層構造体を組み合わせた複合材を製造することも可能である。
【0070】
本発明の繊維又は繊維積層構造体の用途としては、フィルター、衣料用、生体適合性材料やその他、各種用途に使用できる。
【0071】
前記フィルター用途としては、例えば、HEPAやULPA等の構成部材としてのエアフィルター、ガス透過膜、ガス分離膜、微細孔を必要とする電池セパレーターや燃料電池の高分子電解膜等が挙げられる。
【0072】
前記衣料用の用途としては、例えば、ネックウォーマーやフェイスマスクの口や鼻を直接覆う保護具に使用でき、呼気由来の蒸れの不快感を防止できる。汗を素早く放出するスポーツウェア、低熱伝導率による保温性があるために登山用ウェア、冬季用インナーウェア素材やアウターウェアの裏地素材のファブリック等が挙げられる。
【0073】
前記生体適合性材料の用途としては、例えば、カテーテル、人工血管等の衣料用チューブ、キズパット等の擦傷材料、ガーゼ、再生医療工学の培地等が挙げられる。
【0074】
その他の用途としては、例えば、ガラスや金属ケイ素等の研磨パット、パフ等の化粧用道具、汚れ除去等に使われるクリーンクロス、人工皮革の表面部材。水溶性ナノファイバーを使用することで食品添加物等を封入し、徐放できるシート素材等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例と比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、以下の各実施例及び比較例における評価項目は以下の通りの手法にて実施した。
【0076】
また、以下の実施例において、数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の値である。なお、GPC測定は、装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)、溶剤:テトラヒドロフラン(THF)、樹脂濃度:0.1%の条件にて行った。
【0077】
<シリコーングラフト変性ポリウレタン樹脂の合成>
(合成例1:SiPU1の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=10)50g、ジメチルホルムアミド(DMF)686.4gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)169.6gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF61.0g及びメチルエチルケトン(MEK)320.3gを添加して、シリコーン含有率10.9%、数平均分子量(Mn)71,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU1の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0078】
(合成例2:SiPU2の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=25)48g、ジメチルホルムアミド(DMF)669.0gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)160.6gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF59.5g及びメチルエチルケトン(MEK)312.6gを添加して、シリコーン含有率10.7%、数平均分子量70,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU2の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0079】
(合成例3:SiPU3の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)0.5g、ジメチルホルムアミド(DMF)591.8gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)156.0gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF52.6g及びメチルエチルケトン(MEK)276.1gを添加して、シリコーン含有率0.13%、数平均分子量76,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU3の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0080】
(合成例4:SiPU4の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)4.5g、ジメチルホルムアミド(DMF)598.2gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)156.3gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF53.2g及びメチルエチルケトン(MEK)279.2gを添加して、シリコーン含有率1.1%、数平均分子量75,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU4の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0081】
(合成例5:SiPU5の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)48g、ジメチルホルムアミド(DMF)668.6gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)159.7gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF59.4g及びメチルエチルケトン(MEK)312.0gを添加して、シリコーン含有率10.8%、数平均分子量72,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU5の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0082】
(合成例6:SiPU6の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)22.5g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)177.5g、ジメチルホルムアミド(DMF)544.7gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)125.1gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF48.4g及びメチルエチルケトン(MEK)254.2gを添加して、シリコーン含有率48.9%、数平均分子量70,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU6の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0083】
(合成例7:SiPU7の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=120)47g、ジメチルホルムアミド(DMF)662.9gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)156.9gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF58.9g及びメチルエチルケトン(MEK)309.3gを添加して、シリコーン含有率10.6%、数平均分子量78,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU7の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0084】
(合成例8:SiPU8の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)150g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)50g、ジメチルホルムアミド(DMF)186.0gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でイソホロンジイソシアネート(IPDI)196.1g(イソシアネートと水酸基の比が1.5)を添加し、次いで、100℃に昇温して反応させた。NCO%が所定の数値(3.99%)になるまで反応させた後、DMF943.8gを添加し、40℃とした。ここにイソホロンジアミン(IPDA)50.1gを添加し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させ、シリコーン含有率10.3%、数平均分子量80,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU8の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0085】
<シリコーングラフト/ブロック変性ポリウレタン樹脂の合成>
(合成例9:SiPU9の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)24g、両末端型シリコーンジオール(化合物(3−1),m=30)24g、ジメチルホルムアミド(DMF)670.7gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)161.1gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF59.6g及びメチルエチルケトン(MEK)313.0gを添加して、シリコーン含有率10.7%、数平均分子量78,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU9の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0086】
(合成例10:SiPU10の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)150g、1,4−ブタンジオール38g、片末端型シリコーンジオール(式(1)、(2)において、化合物(1−1),n=30)24g、ジメチルホルムアミド(DMF)173.7gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でイソホロンジイソシアネート(IPDI)193.4g(イソシアネートと水酸基の比が1.5)を添加し、次いで、100℃に昇温して反応させた。NCO%が所定の数値(4.21%)になるまで反応させた後、DMF937.4gを添加し、40℃とした。ここに両末端型シリコーンジアミン(化合物(3−2),m=20)24g、続いてイソホロンジアミン(IPDA)46.8gを添加し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させ、シリコーン含有率10.1%、数平均分子量81,000、固形分30%のシリコーンポリウレタン樹脂SiPU10の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0087】
<シリコーン非含有ポリウレタン樹脂の合成>
(比較合成例1:PU1の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及び開口部を備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリテトラメチレングリコール(商品名「PolyTHF1000」、BASFジャパン社製、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g)200g、1,4−ブタンジオール38g、ジメチルホルムアミド(DMF)590.9gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)156.0gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。その後、DMF52.5g及びメチルエチルケトン(MEK)275.2gを添加して、シリコーン含有率0%、数平均分子量75,000、固形分30%のシリコーン非含有ポリウレタン樹脂PU1の溶液を得た。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
<実施例1:SiPU1の繊維化>
N,N−ジメチルホルムアミド7.7gとメチルエチルケトン4.3gからなる混合溶媒に合成例1で合成されたSiPU1を3.0g溶解した。この溶液を24時間、室温で撹拌を行い、均一な乳白色の溶液を得た。
図1に示す装置を用いて、ポリマー溶液を繊維状構造体の捕集基板4へ10時間吐出した。ノズル1の内径は0.6mm、電圧は20kV、ノズル1から繊維状構造体の捕集基板4までの距離は10cmであった。得られた不織布のSEM画像より繊維径を測定し、平均繊維径は0.93μmであり、1μm以上の繊維は観察されなかった。不織布表面の走査型電子顕微鏡写真を
図2に示す。
【0090】
<実施例2:SiPU5の繊維化>
実施例1のSiPU1を合成例5のSiPU5に代えた以外は同じ条件で繊維化を行い、得られた不織布の繊維径は0.81μmであり、1μm以上の繊維は観察されなかった。不織布表面の走査型電子顕微鏡写真を
図3に示す。
【0091】
<実施例3:SiPU7の繊維化>
実施例1のSiPU1を合成例7のSiPU7に代えた以外は同じ条件で繊維化を行い、得られた不織布の繊維径は0.82μmであり、1μm以上の繊維は観察されなかった。不織布表面の走査型電子顕微鏡写真を
図4に示す。
【0092】
<比較例1:PU1の繊維化>
N,N−ジメチルホルムアミド10.9gとメチルエチルケトン6.1gからなる混合溶媒に比較合成例1で得られたPU1(シリコーン非含有ポリウレタン樹脂)を3.0g溶解した。この溶液を24時間、室温で撹拌を行い、均一な乳白色の溶液を得た。
図1に示す装置を用いて、ポリマー溶液を繊維状構造体の捕集基板4へ10時間吐出した。ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、ノズル1から繊維状構造体の捕集基板4までの距離は10cmであった。得られた不織布の平均繊維径は0.72μmであり、1μm以上の繊維は観察されなかった。不織布表面の走査型電子顕微鏡写真を
図5に示す。
【0093】
実施例、比較例で得られた不織布について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0094】
<弾性率>
各不織布を幅5mm、長さ10mmの試験片とし、小型卓上試験機EZTest/EZ−S((株)島津製作所製)を使用して、引張速度10mm/分で測定し、応力−歪み曲線から弾性率を求めた。
【0095】
<破断伸び>
各不織布を幅5mm、長さ10mmの試験片とし、小型卓上試験機EZTest/EZ−S((株)島津製作所製)を使用して、引張速度10mm/分で測定し、応力―歪み曲線から破断伸びを求めた。
【0096】
<動摩擦係数>
水平方向引っ張り試験機AGS−X((株)島津製作所製)を用いて、荷重200g、移動速度0.3m/分の条件における動摩擦係数を求めた。
条件:不織布基材−人工皮革(サプラーレ(登録商標)、出光テクノファイン社製)間の動摩擦係数
【0097】
<耐ブロッキング性>
同種の不織布同士を重ね合わせ、36℃、80%RHで24時間置いた後、不織布同士をスライドさせた。
○:不織布同士が密着せず、滑り性がよい
△:不織布同士が密着せず、滑り性が中程度
×:不織布同士が密着せず、滑り性が悪い
【0098】
<熱伝導率>
KES−F7精密迅速熱物性測定装置サーモラボIIB(カトーテック(株)製)を使用し、熱伝導率を測定した。
【0099】
<水接触角>
自動接触角計DM−501Hi(協和界面科学(株)製)を使用し、純水の静的接触角を測定した。
【0100】
<水蒸気透過性>
L80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を使用して、40℃(JIS K7129A)の条件にて測定した。
【0101】
<水分率>
各不織布を24時間水中で浸透し、その後24時間60℃(JIS L1096)の条件で乾燥した。
水分率(%)=(乾燥前の質量(g)−乾燥後の質量(g))/乾燥後の質量(g)×100
【0102】
<酸素透過性>
気体透過測定率測定装置K−315−N(東洋理化(株)製)を使用し、40℃で測定を行った。
【0103】
<紡糸性>
走査型電子顕微鏡により繊維径を観察し、下記の通り評価した。
○:繊維径が均一
×:繊維径が不均一
【0104】
【表2】