【解決手段】酸化アルミニウムと炭化ケイ素とを主成分とする焼結体からなり、物体に電子を照射した際に表面から放出される二次電子について、二次電子のエネルギーと、このエネルギーを有する二次電子の数との対応関係における、2eVから10eVの範囲での二次電子数の最大値をピーク値としたとき、前記焼結体に電子を照射した際の二次電子のピーク値が、単結晶コランダムに電子を照射した際の二次電子のピーク値に対して50%以下である静電チャック部材。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の静電チャック材料は、酸化アルミニウムと炭化ケイ素とを主成分とする焼結体からなり、電子を照射した際に表面から放出される二次電子において、2eVから10eVのエネルギーを有する二次電子数が単結晶コランダムに電子を照射した際に表面から放出される二次電子に対して50%以下である。
【0021】
また、本実施形態の静電チャック装置は、上述の静電チャック部材を備える。
【0022】
以下の説明においては、まず本実施形態の静電チャック部材を適用する静電チャック装置について各構成を説明した後、本実施形態の静電チャック部材について説明する。
【0023】
[静電チャック装置]
以下、
図1を参照しながら、本実施形態に係る静電チャック装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0024】
図1は、本実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。本実施形態の静電チャック装置1は、一主面(上面)側を載置面とした平面視円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある平面視円板状の温度調節用ベース部3と、を備えている。また、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とは、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着されている。
以下、順に説明する。
【0025】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、この載置板11と一体化され該載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極13および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有している。
【0026】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状の部材である。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有するセラミックス焼結体からなる。載置板11および支持板12は、本発明における静電チャック部材に該当する。載置板11および支持板12について、詳しくは後述する。
【0027】
載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。
【0028】
載置板11、支持板12、静電吸着用電極13および絶縁材層14を含めた全体の厚み、即ち、静電チャック部2の厚みは、一例として0.7mm以上5.0mm以下である。
【0029】
例えば、静電チャック部2の厚みが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部2の厚みが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、静電チャック部の横方向の熱伝達の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが難しくなる。なお、ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記範囲に限るものではない。
【0030】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
【0031】
静電吸着用電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
【0032】
静電吸着用電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1μm以上100μm以下の厚みを選択することができ、5μm以上20μm以下の厚みがより好ましい。
【0033】
静電吸着用電極13の厚みが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。静電吸着用電極13の厚みが100μmを越えると、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との間の熱膨張率差に起因し、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる。
【0034】
このような厚みの静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0035】
絶縁材層14は、静電吸着用電極13を囲繞して腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用電極13以外の外周部領域を接合一体化するものであり、載置板11および支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0036】
(温度調整用ベース部)
温度調節用ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整するためのもので、厚みのある円板状のものである。この温度調節用ベース部3としては、例えば、その内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された液冷ベース等が好適である。
【0037】
この温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はない。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。この温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいは酸化アルミニウム(Al
2O
3、アルミナ)等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。以下、本明細書においては、酸化アルミニウムを「Al
2O
3」として示す。
【0038】
温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して絶縁板7が接着されている。接着層6はポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性、および、絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。接着層は例えば厚み5〜100μm程度に形成される。絶縁板7はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの耐熱性を有する樹脂の薄板、シートあるいはフィルムからなる。
【0039】
なお、絶縁板7は、樹脂シートに代え、絶縁性のセラミック板でもよく、またAl
2O
3等の絶縁性を有する溶射膜でもよい。
【0040】
(フォーカスリング)
フォーカスリング10は、温度調節用ベース部3の周縁部に載置される平面視円環状の部材である。フォーカスリング10は、例えば、載置面に載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。このようなフォーカスリング10を配置することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。
【0041】
(その他の部材)
静電吸着用電極13には、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するための給電用端子15が接続されている。給電用端子15は、温度調節用ベース部3、接着剤層8、支持板12を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿入されている。給電用端子15の外周側には、絶縁性を有する碍子15aが設けられ、この碍子15aにより金属製の温度調節用ベース部3に対し給電用端子15が絶縁されている。
【0042】
図では、給電用端子15を一体の部材として示しているが、複数の部材が電気的に接続して給電用端子15を構成していてもよい。給電用端子15は、熱膨張係数が互いに異なる温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されているため、例えば、温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されている部分について、それぞれ異なる材料で構成することとするとよい。
【0043】
給電用端子15のうち、静電吸着用電極13に接続され、支持板12に挿入されている部分(取出電極)の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではないが、熱膨張係数が静電吸着用電極13および支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましい。例えば、Al
2O
3−TaCなどの導電性セラミック材料からなる。
【0044】
給電用端子15のうち、温度調節用ベース部3に挿入されている部分は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料からなる。
【0045】
これら2つの部材は、柔軟性と耐電性を有するシリコン系の導電性接着剤で接続するとよい。
【0046】
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメント5が設けられている。ヒータエレメント5は、一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法やレーザー加工により所望のヒータ形状、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状に加工することで得られる。
【0047】
このようなヒータエレメント5は、静電チャック部2に非磁性金属薄板を接着した後に、静電チャック部2の表面で加工成型することで設けてもよく、静電チャック部2とは異なる位置でヒータエレメント5を加工成形したものを、静電チャック部2の表面に転写印刷することで設けてもよい。
【0048】
ヒータエレメント5は、厚みの均一な耐熱性および絶縁性を有するシート状またはフィルム状のシリコン樹脂またはアクリル樹脂からなる接着層4により支持板12の底面に接着・固定されている。
【0049】
ヒータエレメント5には、ヒータエレメント5に給電するための給電用端子17が接続されている。給電用端子17を構成する材料は先の給電用端子15を構成する材料と同等の材料を用いることができる。給電用端子17は、それぞれ温度調節用ベース部3に形成された貫通孔3bを貫通するように設けられている。
【0050】
また、ヒータエレメント5の下面側には温度センサー20が設けられている。本実施形態の静電チャック装置1では、温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置されている。なお、温度センサー20はできるだけヒータエレメント5に近い位置に設置することが望ましいため、図に示す構造から更に接着剤層8側に突き出るように設置孔21を延在して形成し、温度センサー20とヒータエレメント5とを近づけることとしてもよい。
【0051】
温度センサー20は一例として石英ガラス等からなる直方体形状の透光体の上面側に蛍光体層が形成された蛍光発光型の温度センサーであり、この温度センサー20が透光性および耐熱性を有するシリコン樹脂系接着剤等によりヒータエレメント5の下面に接着されている。
【0052】
蛍光体層は、ヒータエレメント5からの入熱に応じて蛍光を発生する材料からなる。蛍光体層の形成材料としては、発熱に応じて蛍光を発生する材料であれば多種多様の蛍光材料を選択できる。蛍光体層の形成材料は、一例として、発光に適したエネルギー順位を有する希土類元素が添加された蛍光材料、AlGaAs等の半導体材料、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ルビーやサファイア等の鉱物を挙げることができ、これらの材料の中から適宜選択して用いることができる。
【0053】
ヒータエレメント5に対応する温度センサー20はそれぞれ給電用端子などと干渉しない位置であってヒータエレメント5の下面周方向の任意の位置にそれぞれ設けられている。
【0054】
これらの温度センサー20の蛍光からヒータエレメント5の温度を測定する温度計測部22は、一例として、温度調節用ベース部3の設置孔21の外側(下側)に前記蛍光体層に対し励起光を照射する励起部23と、蛍光体層から発せられた蛍光を検出する蛍光検出器24と、励起部23および蛍光検出器24を制御するとともに前記蛍光に基づき主ヒータの温度を算出する制御部25とから構成されている。
【0055】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられたピン挿通孔28を有している。このピン挿通孔28には、板状試料離脱用のリフトピンが挿通される。ピン挿通孔28の内周部には筒状の碍子29が設けられている。
【0056】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられた不図示のガス穴を有している。ガス穴は、例えばピン挿通孔28と同様の構成を採用することができる。ガス穴には、板状試料Wを冷却するための冷却ガスが供給される。冷却ガスは、ガス穴を介して載置板11の上面において複数の突起部11bの間に形成される溝19に供給され、板状試料Wを冷却する。
静電チャック装置1は、以上のような構成となっている。
【0057】
[静電チャック部材]
次に、本実施形態の静電チャック部材について、詳述する。
上述したように、本実施形態の静電チャック部材は、酸化アルミニウムと炭化ケイ素とを主成分とする焼結体からなり、物体に電子を照射した際に表面から放出される二次電子について、二次電子のエネルギーと、このエネルギーを有する二次電子の数との対応関係における、2eVから10eVの範囲での二次電子数の最大値をピーク値としたとき、焼結体に電子を照射した際の二次電子のピーク値が、単結晶コランダムに電子を照射した際の二次電子のピーク値に対して50%以下である。
ただし、1eV=1.602×10
−19Jである。
【0058】
本実施形態の静電チャック部材が上記の要件を満たすことで、絶縁破壊が起こりにくいものとなる。特にそのため、本実施形態の静電チャック部材を備える静電チャック装置では、プラズマ工程などの高温条件下においても電圧を印加した際に絶縁破壊しにくく、信頼性が高いものとなる。
【0059】
本実施形態において、「電子を照射した際に表面から放出される二次電子」は、オージェ電子分光装置を用いて測定した結果に基づいて求めることができる。オージェ電子分光装置としては、例えばJAMP−7800(日本電子社製)を用いることができる。
【0060】
具体的には、オージェ電子分光装置を用い、静電チャック部材または静電チャック部材と同じ形成材料からなる試験片に、一次電子を加速電圧100Vにて照射した際に放出される二次電子を「電子を照射した際に表面から放出される二次電子」とする。
【0061】
評価においては、静電チャック部材または試験片に対し、一次電子を加速電圧100Vにて照射した際に放出される二次電子のエネルギーを横軸、測定される電流量(電子の数)を縦軸にプロットしてグラフを作成する。一方、リファレンス試料として、単結晶コランダムからなる試験片(サファイアガラス)を用いて同様の測定を行い、結果をプロットしてグラフを作成する。
【0062】
得られるグラフにおいて、静電チャック部材および単結晶コランダムの、二次電子エネルギーが2eVから10eVの範囲における電流量(電子数)を比較することで、本願発明の要件を満たすか否かを判断することができる。
【0063】
静電チャック部材の「電子を照射した際に表面から放出される二次電子」は、焼結体全体に対する炭化ケイ素の添加量により制御することができる。
【0064】
たとえば、焼結体全体に対する炭化ケイ素の添加量を4質量%未満とすると、測定される電流量のピーク値(ピーク電流量)は、単結晶コランダムについて同様に測定したときに測定される電流値のピーク値の50%を超えるものとなる。
【0065】
また、焼結体全体に対する炭化ケイ素の添加量を増やすと、放出される二次電子が減り、サファイアのピーク電流値に対する焼結体のピーク電流値の比は低減する。しかし、焼結体全体に対する炭化ケイ素の添加量が18質量%を超えると、焼結体は導電体としての特性を強く示すようになる。すると、焼結体は、体積固有抵抗率が低下し、耐電圧も低下する。
【0066】
以上の観点から、本実施形態の静電チャック部材は、焼結体全体に対する炭化ケイ素の含有量が4質量%以上18質量%以下であることが好ましい。
【0067】
本実施形態の本実施形態の静電チャック部材は、焼結体全体に対する炭化ケイ素の含有量が5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の静電チャック部材は、焼結体全体に対する炭化ケイ素の含有量が15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。
上記焼結体全体に対する炭化ケイ素の含有量について、上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0068】
また、静電チャック部材の「体積固有抵抗率」は、酸化アルミニウム中の金属不純物含有量を制御することで調整可能である。酸化アルミニウム中の不純物量が高い場合、酸化アルミニウムは、共有結合性が低下し、格子欠陥が増加する。これにより、酸化アルミニウムの高温での体積固有抵抗率が減少する。
【0069】
そのため、酸化アルミニウム中のアルミニウムおよびシリコン以外の金属不純物含有量を200ppm以下に抑制することで、酸化アルミニウムの高温での体積固有抵抗率を増加させることができる。結果として、焼結体の高温での体積固有抵抗率を増加させる方向に調整することができる。
酸化アルミニウム中の金属不純物含有量を低減することで、結果として静電チャック部材中の金属不純物含有量も低減させることができる。静電チャック部材を構成する焼結体中のアルミニウムおよびシリコン以外の金属不純物含有量は200ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。
【0070】
また、本実施形態の静電チャック部材は、直流電圧10kV/mmの体積固有抵抗率が、直流電圧1kV/mmの体積固有抵抗率の1/2以下であることが好ましい。本実施形態の静電チャック部材において、直流電圧10kV/mmの体積固有抵抗率は、直流電圧1kV/mmの体積固有抵抗率の1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることがさらに好ましい。静電チャック部材の直流電圧10kV/mmの体積固有抵抗率は、直流電圧1kV/mmの体積固有抵抗率の1/50であってもよい。
【0071】
このような物性値を示す静電チャック部材は、高電圧下においてバリスタ材料の挙動を示す。すなわち、上記物性値を示す静電チャック部材は、低電圧下においては、セラミックス基材として絶縁体のように振る舞うが、高電圧下においては急激に抵抗値が低下する。抵抗値が低下した静電チャック部材では、溜まっていた電荷が逃げる。そのため、上記物性値を示す静電チャック部材を用いた静電チャック装置では、高電圧印加時に静電チャック部材の破損を起こしにくくなる。
【0072】
また、本実施形態の静電チャック部材は、室温から130℃までの全範囲における体積固有抵抗率が、1×10
14Ω・cm以上であることが好ましい。本実施形態の静電チャック部材において、室温から130℃までの全範囲における体積固有抵抗率は1×10
15Ω・cm以上であることがより好ましく、1×10
16Ω・cm以上であることがさらに好ましい。
【0073】
静電チャック部材において、室温から130℃までの全範囲における体積固有抵抗率が、1×10
14Ω・cm以上であることにより、高温下においても、安定したウエハ吸着性を維持することができる。
【0074】
[静電チャック部材の製造方法]
上述のような静電チャック部材は、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを、それぞれ高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する工程と、混合する工程で得られたスラリーから分散媒を除去した後、成形する工程と、得られる成形体を、非酸化性雰囲気下、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する工程と、得られるセラミックス焼結体を研削して静電チャック部材(例えば、載置板11および支持板12)を形成する工程と、を有する製造方法により製造することができる。
【0075】
本実施形態に係る静電チャック部材の製造方法では、用いる酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウムの含有量が99.99%以上であることが好ましい。このような高純度の酸化アルミニウム粒子は、ミョウバン法を用いることにより調整可能である。ミョウバン法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子は、例えばバイヤー法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子と比べると、金属不純物であるナトリウム原子の含有量を大幅に低減することが可能である。また、所望の純度の酸化アルミニウム粒子が得られるのであれば、種々の方法を採用可能である。
【0076】
混合する工程においては、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用い、分散媒に分散させた酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とをそれぞれ加圧することで高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する。これにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが粉砕され、これらの粉砕粒子を含む分散液が得られる。
【0077】
酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを衝突させる際、大きい粒子は、衝突時の運動エネルギーが大きく、粉砕されやすい。一方、小さい粒子は、衝突時の運動エネルギーが小さく、粉砕されにくい。そのため、上記粉砕混合装置を用いて得られる酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子は、粗大粒子や過粉砕の粒子の少ない、粒度分布幅の狭い粒子となる。したがって、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した混合粒子を用いると、焼結工程において、粗大粒子を核とする異常粒成長を抑制することができる。
【0078】
また、このような粉砕混合装置を用いて粉砕混合する場合、例えば、ボールミルやビーズミル等のメディアを用いて粉砕混合する方法と比べると、各メディアの破損に起因した不純物の混入を抑制することが可能である。
【0079】
成形する工程においては、まず、粉砕混合装置で得られた分散液をスプレードライすることにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子との混合粒子からなる顆粒を得る。
【0080】
次いで、目的とする焼結体の形状に応じて、得られた顆粒を一軸成形(一軸プレス成形)する。
【0081】
次いで、得られた成形体を不活性ガス雰囲気下、常圧で(プレスすることなく)例えば500℃に加熱し、成形体に含まれる水分や分散媒等の夾雑物を除去する。不活性ガスとしては、窒素またはアルゴンを用いることができる。この操作においては、成形体を変性することなく成形体から夾雑物を除去できるならば、加熱温度は500℃に限られない。
【0082】
さらに、夾雑物を除去した成形体を、大気中、例えば400℃で加熱して成形体を構成する混合粒子を、酸化処理する酸化工程を有することが好ましい。このような操作によれば、酸化処理において混合粒子に含まれる炭化ケイ素粒子の表面には酸化膜が形成される。酸化膜には、混合粒子に含まれる金属不純物が溶け出しやすいため、混合粒子に含まれる金属不純物が粒子表面に偏って存在することになる。すると、後述する加圧焼結する工程において、金属不純物を除去しやすいため好ましい。
【0083】
加圧焼成する工程においては、まず、上述の成形体を、真空雰囲気(第1の非酸化性雰囲気)において、1600℃よりも低い温度且つ常圧で(プレスすることなく)加熱(予備加熱)する。このような操作によれば、予備加熱時の温度を適宜設定することにより、混合粒子に含まれるアルカリ金属等の金属不純物が蒸発し、金属不純物を容易に除去できる。そのため、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積固有抵抗率を制御しやすくなる。
【0084】
また、成形する工程において、上述したように夾雑物を除去した成形体に対し酸化処理を施すと、真空雰囲気下で予備加熱することにより、粒子表面に形成された酸化膜が揮発する。同時に、酸化膜に含まれる金属不純物が蒸発する。そのため、成形体から金属不純物を容易に除去できる。したがって、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積固有抵抗率を制御しやすくなる。
【0085】
なお、本実施形態において「真空」とは、「大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」のことであり、JIS規格において工業的に利用できる圧力として定義された状態のことを指す。本実施形態においては、真空雰囲気は、低真空(100Pa以上)であってもよいが、中真空(0.1Pa〜100Pa)であると好ましく、高真空(10
−5Pa〜0.1Pa)であるとより好ましい。
【0086】
本実施形態の静電チャック部材の製造方法においては、例えば、真空雰囲気下、1200℃で4時間以上予備加熱した後、大気圧までアルゴンで気圧を戻す。
【0087】
次いで、予備加熱を施した成形体を、アルゴン雰囲気(第2の非酸化性雰囲気)において、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する。このような操作によれば、成形体に含まれる酸化アルミニウム粒子や炭化ケイ素粒子の焼結が進行し、気孔の少ない緻密な焼結体が得られる。
【0088】
本実施形態の静電チャック部材の製造方法においては、例えば、アルゴン雰囲気下、1600℃以上1850℃以下で、焼結圧力25MPa以上50MPa以下の範囲で焼結する。
【0089】
このような方法で製造して得られた焼結体は、金属不純物含有量が低減し高純度なものとなる。金属不純物含有量が目標値に達しない場合には、予備加熱の時間を長くする、または予備加熱の温度を高くするとよい。
【0090】
次いで、静電チャック部材を形成する工程では、得られた焼結体を研削し、所望の静電チャック部材を形成する。
本実施形態の静電チャック部材は、以上のようにして製造することができる。
【0091】
上述したように、静電チャック装置においてウエハを載置する基体をセラミックス焼結体とした場合、静電チャック装置を高周波(RF)の電場で用いると、ウエハと、基体(セラミックス焼結体)と、静電チャック装置が収容される真空チャンバー内の気体(例えばヘリウム)と、のトリプルジャンクションでは、ウエハから基体へ電子の流入が生じやすい。基体の表面では、電子の衝突に伴い、二次電子が放出される。基体において二次電子が放出された箇所は、電圧印加後も局所的に正(プラス)に帯電し、沿面放電(破壊)や、絶縁破壊の原因となっていた。
【0092】
これに対して、本願の静電チャック部材においては、Al
2O
3とSiCとを主成分とする焼結体において、2eVから10eVのエネルギーを有する二次電子数が単結晶コランダムに電子を照射した際に表面から放出される二次電子に対して50%以下であるように電気的特性を調製することで、静電チャック部材(基体)の表面に溜まった電荷を徐々に逃がすことができる。これにより、静電チャック装置に用いて使用する際に、沿面破壊や、絶縁破壊を起こしにくい静電チャック部材とすることができる。
【0093】
したがって、以上のような構成の静電チャック部材によれば、絶縁破壊が起こりにくい静電チャック部材を提供することができる。
【0094】
また、以上のような静電チャック装置によれば、上記静電チャック部材を備え、絶縁破壊が起こりにくい静電チャック装置を提供することができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0096】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
[金属不純物量]
本実施例においては、ICP−MS法にて測定した値を金属不純物量として採用した。
【0098】
測定においては、原料および焼結体ともに、適切な濃度の酸に溶解させた後、ICP−MSを用い不純物の定量を行った。
【0099】
[焼結体の結晶粒径]
焼結体の結晶粒径は、粉末X線回折法により求めた。X線回折装置として、PANalytial社製、機種名「X’ Pert PRO MPD」を用い、結晶粒径を得た。
【0100】
[二次電子]
本実施例においては、オージェ電子分光装置(JAMP−7800(日本電子社製))を用い、後述の実施例および比較例で得られた焼結体からなる試験片に、一次電子を加速電圧100Vにて照射した際に放出される二次電子を測定した。
【0101】
測定された二次電子のエネルギーを横軸、測定される電流量(電子の数)を縦軸にプロットしてグラフを作成した。一方、リファレンス試料として、単結晶コランダムからなる試験片(サファイアガラス)を用いて同様の測定を行い、結果をプロットしてグラフを作成した。
【0102】
得られたグラフにおいて、静電チャック部材およびサファイアガラスの、二次電子エネルギーが2eVから10eVの範囲における電流量(電子数)を比較し、サファイアガラスおよび試験片に一次電子を加速電圧100Vにて照射した際に放出される二次電子の比率を求めた。
【0103】
[体積固有抵抗率]
本実施例においては、直流三端子法により円盤状の試験片の体積固有抵抗率(単位:Ω・cm)を測定した。
【0104】
(使用機器)
スクリーン印刷機:MODEL MEC−2400、ミタニマイクロニクス株式会社製
抵抗測定装置:西山製作所製
絶縁計:デジタル絶縁計(型式DSM−8103、日置電気株式会社製)
【0105】
(測定条件)
温度:室温(24℃)、130℃
雰囲気:窒素(純度99.99995%、流量200ml/分)
印加電圧:0.5kV、1kV、10kV
【0106】
(測定方法)
スクリーン印刷機を用いて、銀ペースト(NP−4635、株式会社ノリタケカンパニーリミテッド製)を試験片の上面及び下面に印刷し、大気中100℃で12時間乾燥させた後、大気中450℃で1時間焼き付け、主電極、ガード電極、対極を形成した。体積固有抵抗率については、電流値による変化と、温度による変化の2つの項目を調べた。
【0107】
図2は、本実施例で体積固有抵抗率を測定する際の試験片の様子を示す模式図である。図において、符号100は試験片、符号110は主電極、符号120はガード電極、符号130は対極を示す。
【0108】
このとき、主電極直径は1.47cmであり、ガード電極の内径は1.60cmであった。
【0109】
上述のように電極を形成した試験片に対し、各測定温度において直流電圧を印加し、1分間充電後の電流を測定して、試験片の体積抵抗値を求めた。その後、試験片の厚み、および電極面積を用いて下記式(1)より体積固有抵抗率(ρv)を算出した。
ρv=S/t×Rv=S/t×V/I …(1)
(S:電極の有効面積(cm
2)、t:試験片の厚み(cm)、Rv:体積抵抗値(Ω)、V:直流電圧(V)、I:電流(A))
【0110】
[耐電圧]
本実施例においては、以下のようにして耐電圧を測定した。
【0111】
まず、後述の実施例および比較例で作製した焼結体を基体として備える静電チャック装置を用意した。この静電チャック装置にシリコンウエハを載せない状態で、静電吸着用電極に2500Vの電位を印加した状態で、RF電力を印加し、静電チャック装置の吸着面にプラズマを発生させた状態を2時間保持した。
【0112】
プラズマ発生の雰囲気は、以下のようなものとした。
混合ガス:CF
4とH
2との1:1混合ガス
混合ガス供給量:流量30sccm、ガス圧5Pa
PF投入電力:5kW
【0113】
上記プラズマ雰囲気下で静電吸着用電極への印加電圧を3000Vとし、同条件で10分保持した。この状態で、静電チャック装置の載置面における放電の有無を確認した。
【0114】
以後同様に、印加放電の上昇を500V間隔で行い、各印加電圧において10分間保持して、静電チャック部材(基体)に10μAの電流が観測されるまで試験を実施した。なお、耐電圧の値は、10μAの電流が観測されない印加電圧のうち最大値(最大電圧値)とした。本実施例においては、各印加電圧にて10分保持する間に、基体に10μA以上の電流が観測された場合、静電チャック装置が「破損」したものと判断した。
【0115】
なお、静電チャック装置の温度は、温度調節用ベース部を用いて、130℃となるように管理した。
【0116】
(実施例1)
出発原料として、平均粒子径が0.1μmである酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子と、平均粒子径が0.03μmであり熱プラズマCVDで合成されたβ−SiC型の炭化ケイ素(β−SiC)粒子と、を用いた。
【0117】
用いたAl
2O
3粒子の金属不純物含有量は150ppm、用いたβ−SiC粒子の金属不純物含有量は50ppmであった。
【0118】
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が5質量%となるように秤量し、分散剤が入った蒸留水に投入した。β−SiC粒子とAl
2O
3粒子とを投入した分散液について、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した。
【0119】
得られた混合溶液をスプレードライ装置にて噴霧乾燥させ、β−SiCとAl
2O
3との混合粒子とした。
【0120】
混合粒子をプレス圧8MPaで一軸プレス成形し、直径320mm×15mm厚の成形体とした。
【0121】
次いで、成形体を窒素雰囲気下、プレス圧を加えることなく500℃まで昇温させ、水分および分散剤(夾雑物)を除去した。その後、夾雑物を除去した成形体を大気中400℃に加熱し、成形体に含まれるβ−SiC粒子の表面を酸化した。
【0122】
得られた成形体を黒鉛製のモールドにセットし、加圧焼結を行った。まず、成形体を、真空雰囲気下、プレス圧を加えることなく1200℃まで昇温させた。その後、アルゴン雰囲気下、プレス圧40MPa、1800℃で焼結を行い、実施例1の焼結体からなる試験片を得た。
【0123】
実施例1の焼結体の金属不純物含有量は、50ppmであった。
【0124】
(実施例2)
出発原料であるAl
2O
3粒子として、金属不純物含有量が200ppm、平均粒子径が0.1μmのものを用い、β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が10質量%となるように秤量したこと、および、夾雑物を除去した成形体を、室温から焼結温度に至るまで真空雰囲気に曝すことなく、アルゴン雰囲気下で熱処理(焼結)を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の焼結体からなる試験片を得た。
実施例2の焼結体の金属不純物含有量は、180ppmであった。
【0125】
(実施例3)
出発原料であるAl
2O
3粒子として、金属不純物含有量が200ppm、平均粒子径が0.1μmのものを用い、β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が10質量%となるように秤量したこと、以外は実施例1と同様にして、実施例3の焼結体からなる試験片を得た。
実施例3の焼結体の金属不純物含有量は、80ppmであった。
【0126】
(実施例4)
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が15質量%となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の焼結体からなる試験片を得た。
実施例3の焼結体の金属不純物含有量は、50ppmであった。
【0127】
(比較例1)
出発原料として、平均粒子径が1.0μmであり金属不純物含有量が150ppmのAl
2O
3粒子のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の焼結体からなる試験片を得た。
比較例1の焼結体の金属不純物含有量は、50ppmであった。
【0128】
(比較例2)
出発原料であるAl
2O
3粒子として、金属不純物含有量が800ppm、平均粒子径が0.5μmのものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の焼結体からなる試験片を得た。
比較例2の焼結体の金属不純物含有量は、500ppmであった。
【0129】
(比較例3)
出発原料であるAl
2O
3粒子として、金属不純物含有量が800ppm、平均粒子径が0.5μmのものを用い、出発原料であるβ−SiC粒子として、金属不純物含有量が1000ppm、平均粒子径が1.0μmのものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例3の焼結体からなる試験片を得た。
比較例3の焼結体の金属不純物含有量は、900ppmであった。
【0130】
(比較例4)
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が20質量%となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の焼結体からなる試験片を得た。
比較例4の焼結体の金属不純物含有量は、50ppmであった。
【0131】
図3は、実施例3および比較例1の結果を示すグラフである。
図3においては、横軸が二次電子のエネルギー(単位:eV)、縦軸が電流値(単位:pA)を示している。図に示すように、実施例3の焼結体においては、2eVから10eVのエネルギーを有する二次電子数がサファイアガラス(単結晶コランダム)に対して50%以下となっている。
【0132】
実施例1〜4、比較例1〜4で得られた焼結体の作製条件、焼結体の組成について表1、2に示す。また、実施例1〜4、比較例1〜4についての評価結果を表3に示す。なお、表3に記載した「二次電子ピーク電流値」は、ファイアガラスについての二次電子のピーク電流の測定値に対する、各サンプルのピーク電流の測定値の比である。各ピーク電流はいずれも、対応する二次電子のエネルギーが、2eVから10eVの範囲に含まれることを確認した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
評価の結果、実施例1〜4の静電チャック部材は、いずれも130℃における耐電圧が10kV以上となった。そのため、実施例1〜3の静電チャック部材は、高温での耐久性に優れたものであると判断できる。
【0138】
対して、比較例1〜4の静電チャック部材は、いずれも130℃における耐電圧が5kV未満となった。そのため、比較例1〜4の静電チャック部材は、高温での耐久性が不足していると判断できる。
【0139】
実施例2と実施例3の差異は、真空熱処理の有無である。真空熱処理を行った実施例3は、真空熱処理を行わなかった実施例2と比べて、不純物が100ppm低減した。これは、焼結工程においての酸化工程で、酸化珪素を生成することで、焼結材料内の金属不純物が酸化珪素に取り込まれ、その後の真空熱処理工程において、不純物とともに酸化珪素が焼結体の系外に移動するためと考えられる。
【0140】
以上から真空熱処理を工程に含めることにより、従来では不純物が多く、求められた特性を得られない焼結体についても、使用できる可能性が示唆された。
【0141】
以上の結果から、本発明が有用であることが確かめられた。