【課題】本発明が解決しようとする課題は、およそ23℃〜60℃の常温環境下においては優れた初期接着強度を有する一方で、加熱されることによって速やかに易解体性を発現できることから、例えば光を透過させにくい被着体の接着等に好適に使用することができる易解体性粘着テープを提供することにある。
前記粘着層(A)を温度23℃から5℃/分の昇温速度で加熱したときに、前記粘着層(A)中で前記熱酸発生剤が酸を発生させた時の温度(t)が90℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の易解体性粘着テープ。
ステンレス板(SUS304)と前記易解体性粘着テープとの貼付物を、温度60℃の環境下に500時間静置した後、温度23℃の環境下で測定された180°剥離接着強度が10N/20mm以上であり、かつ、ステンレス板(SUS304)と前記易解体性粘着テープとの貼付物を、温度110℃の環境下に1時間静置した後、温度23℃の環境下で測定された180°剥離接着強度が3N/20mm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の易解体性粘着テープ。
2以上の被着体が請求項1〜7のいずれか1項に記載の易解体性粘着テープによって貼付された構成を有する物品を解体する方法であって、前記易解体性粘着テープを構成する前記粘着層(A)を、90℃以上180℃以下の温度に加熱する工程を経ることによって、前記2以上の被着体を分離することを特徴とする物品の解体方法。
請求項10に記載の画像読み取り装置を構成する前記易解体性粘着テープを、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離することを特徴とする画像読み取り装置の解体方法。
請求項13に記載の携帯電子機器を構成する前記易解体性粘着テープを、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と、レンズ部材またはその他きょう体とを解体することを特徴とする形態電子端末の解体方法。
請求項15に記載の情報表示装置を構成する前記粘着テープを、直接または間接的に加熱することによって、前記情報表示パネルとタッチパネル部材とを分離することを特徴とする情報表示装置の解体方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の易解体性粘着テープは、熱酸発生剤と粘着成分とを含有した粘着層(A)を有することを特徴とする。これによりおよそ23℃〜60℃の常温環境下においては優れた初期接着強度を有する一方で、加熱されることによって速やかに易解体性を発現できる。
【0012】
前記易解体性粘着テープとしては、前記粘着層(A)を温度23℃から5℃/分の昇温速度で加熱したときに、前記粘着層(A)中で前記熱酸発生剤が酸を発生させた時の温度(t)が90℃以上180℃以下であるものを使用することが、常温下はもとより、例えば電子機器の内部等で想定されうるおよそ85℃程度の温度環境下においても優れた初期接着強度を有する一方で、90℃以上に加熱されることによって速やかに易解体性を発現できるため好ましい。
【0013】
前記粘着層(A)は、温度23℃から5℃/分の昇温速度で加熱された際に、前記粘着層(A)中で前記熱酸発生剤が酸を発生させる。この酸が粘着テープに優れた易解体性を付与する。
【0014】
前記熱酸発生剤が酸を発生させた時の温度(t)は、好ましくは90℃以上180℃以下の範囲内であり、より好ましくは90℃〜150℃の範囲内であり、さらに好ましくは90℃〜135℃の範囲である。前記温度(t)を前記範囲内に設定することによって、常温下では優れた初期接着強度を有する一方で、90℃以上に加熱されることによって速やかに易解体性を発現することが可能な易解体性粘着テープを得ることができる。
【0015】
前記粘着層(A)を有する易解体性粘着テープは、生活環境温度(およそ−20℃〜60℃の常温環境温度)及び電子機器の内部温度(およそ−20℃〜85℃)といった実使用環境下では強固な初期接着力を保持できる一方で、およそ90℃を超える温度環境下では、前記粘着層(A)中で発生した酸が前記粘着成分に作用することで粘着力を大きく低減させ、その結果、前記粘着テープによって接着された被着体同士を容易に分離することが可能となる。
【0016】
前記温度(t)は、示差走差熱量計(DSC)を用い以下の方法で測定された値を指す。
【0017】
粘着層(A)4mmgを、内径6mmのアルミニウム製容器に入れ、前記容器の上に外径8mmのアルミニウム製の蓋を載せた後、サンプルシーラーを用いて前記粘着層(A)を前記容器内に密閉したものを試験片とした。
【0018】
日立ハイテク株式会製示差走差熱量計(DSC7020)を用い、前記試験片を23℃から200℃まで5℃/分の昇温速度で昇温させた際に、前記粘着層(A)に含まれる熱酸発生剤の分解生成物に由来する吸熱ピークが検出された温度を、熱酸発生剤が酸を発生させた温度(t)とした。
【0019】
前記粘着層(A)に含まれる熱酸発生剤としては、例えばフッ素化アルキルリン酸オニウム塩、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩を使用することができ、例えば4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル)、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及び3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等から適宜選択して使用することができる。
【0020】
ここで、前記熱酸発生剤として従来知られるおよそ80℃程度から徐々に酸を発生させうる熱酸発生剤を含有する粘着テープは、それを被着体に貼付した後、比較的大きな温度変化を伴う環境下に長期間放置された際に、前記温度変化に伴って徐々に発生した酸の影響で、経時的な接着強度の低下を引き起こす可能性が懸念される。
【0021】
そこで、前記熱酸発生剤としては、前記粘着層(A)を温度23℃から5℃/分の昇温速度で加熱したときに、前記粘着層(A)中で前記熱酸発生剤が酸を発生させた時の温度(t)が90℃以上180℃以下となるものを選択し使用することが好ましく、90℃以上180℃以下となるものを使用することがより好ましく、90℃〜150℃となるものを使用することがさらに好ましい。
【0022】
前記熱酸発生剤の含有量は、使用する酸発生剤の種類や、易解体性の程度に応じて適宜調整すればよいが、例えば粘着層(A)に含まれる粘着成分がアクリル重合体であれば、前記アクリル系重合体100質量部に対して15質量部以下であることが好ましく、光吸収性の構造を有する光酸発生剤を使用する際には、上記アクリル系重合体100質量部に対し、0.1〜5重量部程度が好ましく、0.2〜3重量部が特に好ましい。一方、光吸収性の構造を有さない光酸発生剤を使用する際には、上記アクリル系重合体100質量部に対し、5〜15重量部程度が好ましく、7〜12重量部が特に好ましい。
【0023】
特に、前記粘着層(A)に含まれる粘着成分がカルボキシル前駆基を有するアクリル重合体の場合、前記熱酸発生剤の含有量は、そのカルボキシル前駆基1モルに対して10モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%の範囲であることがより好ましい。
【0024】
また、前記粘着層(A)において前記熱酸発生剤と組合せ使用する粘着成分としては、前記温度(t)が90℃以上180℃以下となる範囲で適宜選択し使用できるが、なかでも、常温下において優れた初期接着強度を有し、かつ、加熱されたときに速やかに易解体性を発現するうえで、アクリル系重合体を含有するものを使用することが好ましく、カルボキシル前駆基を有するアクリル系重合体を含有するものを使用することがより好ましい。
【0025】
前記カルボキシル前駆基としては、酸によりカルボキシル基を生成するものであれば特に制限されないが、酸によりオレフィン脱離を生じやすい第二級又は第三級炭素原子を有するアルキル基とカルボキシル基とから構成されるエステル基を好ましく使用できる。また、第二級又は第三級炭素原子を有するアルキル基以外の基として、穏和な条件で脱離しやすいベンジル基等も好ましく使用できる。当該側鎖分解時に脱離するカルボキシル前駆基のなかでも、脱離してアルキレン、アルカン等の気体を生じるものは、粘着層(A)の易解体性をより一層向上させるため好ましい。
【0026】
前記カルボキシル前駆基は、好ましくは前記アクリル系重合体の側鎖に存在することが好ましい。前記酸との作用によって形成されたカルボキシル基は、粘着層(A)の凝集力を高くし、またカルボキシル基を生成する際に発泡する場合があるため、粘着層(A)の粘着性を低減させることから、加熱により生じた酸成分により側鎖が分解することで、粘着層(A)の易解体性をより一層向上させるため好ましい。
【0027】
前記アクリル系重合体が有するカルボキシル前駆基を有する構造単位は、好ましくは下式(1)で表わされる構造単位である。
【0029】
上記式(1)中のR1は水素原子又はメチル基を表わし、好ましくは水素原子である。また、X1は酸の影響によって脱離し、前記式(1)中にカルボキシル基を形成しうるアルキル基(好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12)を表わす。X1が第二級又は第三級炭素原子を有するアルキル基である場合には、(メタ)アクリロイルオキシ基の酸素原子と、当該アルキル基の第二級又は第三級炭素原子が結合する。
【0030】
前記アクリル系重合体は、各種単量体成分の重合させることによって製造することができる。
【0031】
前記単量体成分としては、例えば前記カルボキシル前駆基を有するアクリル系重合体を製造する場合であれば、カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体を使用することが好ましい。
【0032】
前記カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば第二級炭素原子を有するアルキル基の第二級炭素原子と、(メタ)アクリロイルオキシ基とが結合した(メタ)アクリレートを使用することができ、具体的にはsec−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ヘキシル(メタ)アクリレート、sec−オクチル(メタ)アクリレート、sec−ノニル(メタ)アクリレート、sec−デシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0033】
また、前記カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体としては、第三級炭素原子を有するアルキル基の第三級炭素原子と、(メタ)アクリロイルオキシ基とが結合した(メタ)アクリレートを使用することができ、具体的には、tert−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、tert−ノニル(メタ)アクリレート、tert−デシル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0034】
また、前記カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体としては、前記したもののほかに、ベンジル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。
【0035】
前記カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体としては、前記したなかでも、(メタ)アクリレートモノマーのなかでも、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートを使用することが、前記熱酸発生剤が発生させた酸によってカルボキシル基を生成しやすいため好ましく、tert−ブチルアクリレートを使用することが特に好ましい。また、イソボルニルアクリレートを使用することが、前記酸の存在下では前記カルボキシル基を生成しやすく、かつ、前記酸の非存在下では熱の影響による剥がれ等を引き起こしにくく、無色で透明性の高い粘着層を得やすいため特に好ましい。
【0036】
前記カルボキル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体は、アクリル系重合体を構成する単量体成分の全量に対して1質量%〜75質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜60質量%の範囲で使用することがより好ましく、2質量%〜50質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、3質量%〜40質量%の範囲で使用することが、常温下において優れた初期接着強度を有し、かつ、加熱されたときに速やかに易解体性を発現するうえで特に好ましい。
【0037】
また、前記アクリル系重合体としては、前記カルボキシル前駆基の他に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基又はアミド基等の極性基を有するものを使用することができる。
【0038】
前記極性基は、アクリル系重合体の分子間相互作用により、初期接着性や解体時の粘着層の凝集力の向上に寄与すると考えられるため、アクリル系重合体中に存在することが好ましい。なかでも、前記極性基を有するアクリル系重合体としては、水素結合を形成できるものを使用することが好ましく、水酸基を有するアクリル系重合体を使用することが、初期接着性の向上や、接着後の粘着層(A)の経時安定性に優れ、また解体時には粘着層の凝集力を確保しやすいことから被着体/粘着層界面や粘着層/基材界面での解体に寄与し、好適な解体性を得やすいため特に好ましい。
【0039】
前記極性基を有するアクリル系重合体は、それを構成する単量体成分として、極性基を有する単量体を使用することによって製造することができる。
【0040】
前記極性基として水酸基を有する単量体は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、及び12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等を使用することができ、なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好ましく使用することができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを特に好ましく使用することができる。
【0041】
前記極性基としてカルボキシル基を有する単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸ダイマー、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記極性基としてアミド基を有する単量体は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられ、アミノ基を有する単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、イミノ基を有する単量体としては、例えばシクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等が挙げられる。
【0043】
前記極性基を有する単量体は、アクリル系重合体を構成する単量体成分の全量に対して1質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%〜30質量%の範囲で使用することがより好ましく、8質量%〜25質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、10質量%〜20質量%の範囲で使用することが、初期接着力を向上できると共に、高い接着力であっても好適な解体性を実現できる。また、前記極性基を有する単量体の含有量を5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上とすることで、解体する際に、前記粘着層(A)と被着体との界面、または、前記粘着層(A)と中芯基材との界面において、より一層軽い力で剥離することが可能となる。
【0044】
前記アクリル系重合体としては、前記した単量体成分の他に、2−エチルヘキシルアクリレートを使用することが、良好な接着性を得やすくなることから好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートは、前記アクリル系重合体を構成する単量体成分の全量に対して20質量%以上の範囲で使用することが好ましく、30質量%〜95質量%の範囲で使用することがより好ましく、40質量%〜90質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、50質量%〜80質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0045】
また、前記単量体成分としては、前記した単量体成分の他に、2−エチルヘキシルアクリレート以外の炭素原子数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用してもよい。炭素原子数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等を使用することができる。また、前記した単量体成分としては、スチレン、酢酸ビニル等を使用することもできる。
【0046】
前記カルボキシル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体、極性基を有する(メタ)アクリル単量体及び2−エチルヘキシルアクリレート以外の単量体成分を使用する場合、その単量体の使用量は、前記2−エチルヘキシルアクリレートの使用量と同一またはそれ未満であることが好ましく、前記アクリル系重合体を構成する単量体成分の全量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
前記アクリル系重合体は、上記単量体成分のランダム重合体であってもブロック重合体であってもよい。ランダム重合体であると初期の接着力を確保しやすくなるため好ましい。またブロック重合体であると、前記粘着層(A)と被着体との界面、または、前記粘着層(A)と中芯基材との界面で剥離する際に、スティックスリップが生じにくくなり、より一層軽い一定の力で剥離することが可能となるため好ましい。
【0048】
前記アクリル系重合体としてブロック重合体を使用する場合には、前記カルボキシル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体からなるポリ(メタ)アクリレート鎖(a)と、2−エチルヘキシルアクリレート及び極性基を有する単量体を含有する単量体からなるポリ(メタ)アクリレート鎖(b)とのブロック共重合体を使用することが、常温下では優れた初期接着性を有し、かつ、加熱した後にはより一層軽い一定の力で剥離することが可能な易解体粘着テープを得るうえで好ましい。
【0049】
前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(a)は、粘着テープに好適な解体性を付与するうえで、粘着層(A)に存在することが好ましい。また、前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(b)は、前記粘着テープに好適な接着性を付与するうえで好ましい。
【0050】
前記ブロック共重合体は、一つのポリ(メタ)アクリレート鎖(a)と一つのポリ(メタ)アクリレート鎖(b)とのブロック共重合体(ab型ブロック共重合体)であっても、複数のポリ(メタ)アクリレート鎖(a)や複数のポリ(メタ)アクリレート鎖(b)がランダムにブロック重合されたブロック共重合体(aba型、bab型、abab型、ababa型等)であっても良い。
【0051】
また、ポリ(メタ)アクリレート鎖(a)は、カルボキシル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体からなる繰り返し単位数が10以上であることが、熱酸発生剤が発生する酸成分により側鎖が分解し、前記粘着層(A)の解体のしやすさの向上に寄与することができる。当該繰り返し単位数は、重合可能な繰り返し単位数であり、粘着特性を実現できるものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは10以上、より好ましくは20以上であり、上限については好ましくは10万以下である。
【0052】
前記ブロック共重合体としては、ポリ(メタ)アクリレート鎖(a)と、2−エチルヘキシルアクリレート及び極性基を有する単量体を含有する単量体からなるポリ(メタ)アクリレート鎖(b)とのモル比[(a)/(a)+(b)]が75モル%以下であることが好ましい。また、モル比[(b)/(a)+(b)]は、75/25〜1/99であることが好ましく、65/35〜3/97であることがより好ましく、50/50〜10/90であることがさらに好ましく、40/60〜15/85であることが、常温下では優れた初期接着性を有し、かつ、加熱した後にはより一層軽い一定の力で剥離することが可能な易解体粘着テープを得るうえで好ましい。
【0053】
前記アクリル系重合体の重量平均分子量は、1万〜200万程度の範囲で使用態様に応じて適宜調整すればよく、後述するリビングラジカル重合法によって前記アクリル系重合体を製造する場合には、良好な生産効率を維持する観点から1万〜10万程度とすることが好ましく、解体前の良好な粘着強度を長期間にわたり維持する観点では15万以上とすることが好ましく、30万以上とすることがより好ましく、45万〜100万程度とすることが特に好ましい。また、特に常温下におけるは優れた初期接着性を発現させる場合には、重量平均分子量が60万以上であるものを使用することが好ましい。また、前記アクリル系重合体の数平均分子量が15万以上である場合に、高い初期接着力と好適な解体性を実現しやすいため、好ましい。
【0054】
前記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0055】
前記分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0056】
前記アクリル系重合体は、例えば前記アクリル単量体の混合物を、ラジカル重合反応することによって製造することができる。前記アクリル系重合体の製造方法としては具体的には、リビングラジカル重合法や、アゾ系開始剤または過酸化物を用いて行う従来知られたラジカル重合法が挙げられる。なかでも、リビングラジカル重合法を採用することが、ラジカル重合過程における連鎖移動反応や停止反応等の副反応を引き起こさず、低分子量成分の生成を抑制でき、分子量分布の狭いアクリル系重合体を製造できるため好ましい。
【0057】
前記リビングラジカル重合法としては、例えば原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、高周期15族または16族元素を含む有機ヘテロ化合物を触媒として用いるリビングラジカル重合法(有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法)(TERP法等)、ニトロキシドを介したリビングラジカル重合法(NMP法)、可逆的付加開裂連鎖移動重合反応法(RAFT法)等が挙げられる。
【0058】
前記原子移動ラジカル重合法(ATRP法)は、例えば遷移金属錯体と、有機ハロゲン化物との存在下で、前記したアクリル単量体を重合する方法である。
【0059】
前記遷移金属錯体を構成する遷移金属としては、例えばCu、Ru、Fe、Rh、V、Niや、それらのハロゲン化物を使用することができる。また、前記遷移金属に配位する配位子としては、ビピリジル誘導体、メルカプタン誘導体、トリフルオレート誘導体、3級アルキルアミン誘導体等が挙げられる。
【0060】
前記有機ハロゲン化物は、重合開始剤であって、例えば2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸エチル、塩化(または臭化)1−フエニルエチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸4−ヒドロキシブチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸4−ヒドロキシブチル等を使用することができる。
【0061】
有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法は、有機ヘテロ化合物とラジカル開始剤存在下で、前記したアクリル単量体を重合する方法である。当該有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法によれば、アクリル系重合体の分子量を高分子量化しやすく、初期接着力を向上させやすいため好ましい。
【0062】
有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法に使用する有機ヘテロ化合物としては、有機テルル化合物、有機ジテルリド化合物、有機ビスマス化合物、有機アンチモン化合物を好ましく使用できる。これら有機ヘテロ化合物の具体例としては、特開2004−323693号公報、WO2004/14818公報、特開2006−225524号公報、特開2006−299278号公報、特開2008−291216号公報、特開2009−149877号公報等に開示のある有機テルル化合物、有機ジテルリド化合物、特開2009−149877号公報、WO2006/62255公報等に開示のある有機ビスマス化合物、特開2009−149877号公報、WO2006/1496公報等に開示のある有機アンチモン化合物等の周知の化合物を適宜使用できる。具体的には、例えば、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−n−ブチル−2−フェニルテラニルプロピオン酸エチル、2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチル−2−ジメチルビスムタニルプロピオン酸メチルエステル、2−メチル−2−ジフェニルビスムタニルプロピオニトリル、2−メチル−2−ジメチルフェニルビスムタニルプロピオニトリル、2−メチル−2−ジメチルスチバニルプロピオン酸メチル、2−メチル−2−ジメチルスチバニルプロピオニトリル、1−ジメチルスチバニル−1−フェニルエタン、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド等の化合物を好ましく例示できる。
【0063】
また、前記アクリル系重合体のうちブロック共重合体は、例えば、前記カルボキシル前駆基を有する(メタ)アクリル単量体を重合させることによって前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(a)を製造する工程、2−エチルヘキシルアクリレート及び極性基を有する単量体を含有する単量体を含む単量体成分を重合させることによって前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(b)を製造する工程、ならびに、前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(a)及び前記ポリ(メタ)アクリレート鎖(b)が有する官能基同士を反応させ結合を形成する工程を経ることによって製造することができる。
【0064】
前記結合を形成し得る官能基の組合せとしては、例えばアセチレン基とアジド基との組合せが挙げられる。アセチレン基とアジド基とは、環化付加反応等のクリック反応により結合を形成する。
【0065】
前記粘着層(A)は、前記アクリル系重合体、前記熱酸発生剤、必要に応じて使用可能な粘着付与樹脂、架橋剤及び溶媒等を含有する粘着剤組成物を用いて形成することができる。
【0066】
ここで、前記粘着層(A)としては、前記熱酸発生剤以外の酸発生剤(例えば光酸発生剤)を含有するものを使用することが、被着体が紫外線等を透過するものであるか否か不明である場合に、好適に使用することができる。
【0067】
前記粘着層(A)に含まれる酸発生剤の全量に対する熱酸発生剤の含有割合は、40%〜100%の範囲であることが好ましく、80%〜100%であることが、被着体が紫外線を透過できない場合に加熱のみで好適な解体性を発現できるためより好ましい。
【0068】
前記粘着付与樹脂は、前記粘着層(A)の強接着性を調整するうえで使用することができ、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂等を使用することができる。
【0069】
前記架橋剤は、前記粘着層(A)の凝集力を向上させる目的で使用することができ、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が使用できる。
【0070】
前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用できる。また、水系粘着剤組成物とする場合には、水又は、水を主体とする水性溶媒を使用することができる。
【0071】
前記粘着剤組成物としては、前記したもののほかに、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。前記発泡剤は、粘着剤の解体を進行するうえで使用することができ、例えば加熱することにより体積膨張する、無機発泡剤、有機発泡剤及び熱膨張性中空球体等を使用することができる。
【0072】
本発明の易解体性粘着テープとしては、単層または複層の粘着層(A)からなる、いわゆる基材レスの粘着テープが挙げられる。かかる粘着テープは、例えば前記粘着剤組成物を剥離ライナーの表面に塗工し乾燥させることによって製造することができる。
【0073】
また、本発明の易解体性粘着テープとしては、基材(中芯)の片面または両面に前記粘着層(A)を有するものを使用することができる。
【0074】
前記基材としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネート、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリビニルアルコール等からなるプラスチック系フィルム、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなる不織布、紙、布、又は金属箔等を用いることができ、再剥離性と接着性を両立しやすいことから、ポリエステル系フィルムや不織布を好適に用いることができる。
【0075】
前記基材の表面には、基材と粘着層との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等が施されていてもよい。
【0076】
前記基材を有する易解体性粘着テープは、例えば前記粘着剤組成物をロールコーターやダイコーター等を用い、直接基材に塗布した後、乾燥工程を経て、セパレーターを貼り合わせる直塗り法や、セパレーター上にいったん粘着剤組成物をコーティングし、乾燥工程を経た後、基材に転写する転写法により製造できる。
【0077】
本発明の易解体性粘着テープは、上記易解体性粘着剤組成物をギャップ8milliinchのアプリケータを使用して、厚さが50μmのPETフィルム上に塗布・乾燥し
て粘着テープを形成し、23℃50%環境下で、SUS板上に、重さ2kgのハンドロー
ラーを1往復させて圧着して1時間静置後、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で、180°方向に引き剥がした際の接着力が、12N/20mm以上であることが好ましく、12〜30N/20mmであることがより好ましく、15〜30N/20mmであることが特に好ましい。
【0078】
また、本発明の易解体性粘着テープは、23℃50%環境下で、SUS板上に、重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着後、110℃環境下に1時間放置後、23℃下で放冷し、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で、180°方向に引き剥がした際の接着力が、2.5N/20mm以下であることが好ましく、2N/20mm以下であることがより好ましく、0.5N/20mmであることが好適な解体性を実現できることから特に好ましい。
【0079】
(解体方法)
本発明の易解体性粘着テープは、貼付け時には良好に被着対象への接着や、部品間固定
がなされ、解体、剥離を行う際には、例えば電磁誘導に誘導加熱、活性エネルギー線を照射する輻射熱、加熱炉の伝熱による外部刺激により良好に剥離が可能となる。熱の外部刺激は、使用する酸発生剤により適宜調整されれば良いが、貼付け時の通常の使用態様において発生しない温度や強度の熱にて容易に剥離可能となることが好ましい。
【0080】
加熱温度は熱酸発生剤が酸を生じる温度に加熱をすればよい。
【0081】
前記加熱方法としては、例えば電磁誘導で加熱する方法、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
【0082】
前記活性エネルギー線としては、紫外線、赤外線、可視光線、α線、β線、ガンマ線等が挙げられる。
【0083】
前記活性エネルギー線としては、赤外線を使用することが、粘着テープを短時間で解体可能な温度にまで加熱できるため、解体作業効率を向上させるうえで好ましい。
【0084】
前記加熱方法としては、例えば易解体性粘着テープや被着体にハロゲンランプヒーター、電磁誘導加熱装置、レーザー照射装置等の加熱装置を接近または接触させる方法が挙げられる。
【0085】
前記加熱の際、前記粘着テープの端部が前記被着体の端部よりも外側に出ている場合、前記易解体性粘着テープの端部にハロゲンランプを接近または接触させてもよい。
【0086】
前記加熱工程では、前記加熱装置を用い、前記易解体性粘着テープの温度が90℃〜180℃になるまで加熱することが好ましく、90℃〜160℃になるまで加熱することがより好ましく、90℃〜150℃になるまで加熱することがさらに好ましく、90℃〜135℃に加熱することが特に好ましい。
【0087】
また、前記加熱時間は、被着体が熱の影響によって変形等することを防止するうえで、20秒以内であることが好ましく、15秒以内であることがより好ましく、10秒以内であるという比較的短時間に行うことがさらに好ましい。
【0088】
前記赤外線を照射することにより粘着テープを加熱する方法としては、ハロゲンランプを備えた加熱装置を使用する方法が挙げられる。ハロゲンランプとしては、例えば一定面積を短時間で加熱可能な平行光型ハロゲンランプヒーター、局所的な加熱が可能な集光型ハロゲン型ランプ等を使用することができ、平行光型ハロゲンランプヒーターを使用することが、広い範囲を一度に加熱することができるため、加熱時間を上記した時間にまで短縮することができる。
【0089】
前記平行光型ハロゲンランプヒーターが一度に加熱可能な面積は、10cm
2〜500cm
2程度であることが好ましい。また、平行光型ハロゲンランプヒーター等の加熱装置は、携帯可能な大きさ及び重さであることが、上記物品の解体作業の効率化を向上させるうえで好ましい。前記重さは、3kg以下であることが好ましく、2kg以下であることが好ましく、0.1kg〜1kgであることがさらに好ましい。
【0090】
本発明の易解体性粘着テープは、各種被着体の貼り合わせに使用することができる。本発明の易解体性粘着テープは、加熱によって容易に解体することができるため、紫外線等の光の透過率が低い被着体の貼り合わせに好適に使用することができる。
【0091】
前記被着体としては、例えば波長330nm及び350nmの光線透過率がそれぞれ40%以下であるものを使用することができる。前記被着体の光線透過率は、日本分光株式会社製V−570等の紫外−可視分光光度計を用いて測定することができる。
【0092】
本発明の易解体性粘着テープは、常温環境下において非常に優れた接着力を有するため、電子機器の内部温度が比較的高温になった場合であっても、前記粘着テープの接着力の低下による部品の脱落等を引き起こしにくい。とりわけ、本発明の易解体性粘着テープのうち、熱酸発生剤と粘着成分とを含有する粘着層(A)を有する粘着テープであって、前記粘着層(A)を温度23℃から5℃/分の昇温速度で加熱したときに、前記粘着層(A)中で前記熱酸発生剤が酸を発生させた時の温度(t)が90℃以上180℃以下である易解体性粘着テープであれば、常温下はもとより、例えば電子機器の内部等で想定されうるおよそ85℃程度の温度環境下においても優れた接着強度を長期間にわたり維持できる一方で、90℃以上に加熱されることによって速やかに易解体性を発現することができる。
【0093】
前記2以上の被着体を本発明の易解体性粘着テープで貼付することによって得られた物品としては、例えばコピー機能やスキャナ機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置、車載用ディスプレイ等の情報表示装置、携帯電子機器等の電子機器が挙げられる。
【0094】
前記電子機器に使用される高価な部品をリサイクル等する際には、加熱によって電子機器から前記部品を容易に分離することができる。
【0095】
そのため、本発明の易解体性粘着テープは、電子機器のなかでも、コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置、夏場等に高温環境にさらされやすい車載用ディスプレイの製造場面等で好適に使用することができる。
【0096】
前記コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置においては、それを構成する透明天板と、そのきょう体との固定に本発明の易解体性粘着テープを好適に使用することができる。
【0097】
前記透明天板としては、一般のコピー機能やスキャン機能を搭載した複写機や複合機に設置される透明天板を使用することができる。
【0098】
前記透明天板としては、例えばガラスまたはプラスチックからなる透明板状剛体を使用することができ、透明ガラス板を使用することが好ましい。前記プラスチックとしては、例えばアクリル板、ポリカーボネート板等を使用することができる。
【0099】
前記透明天板としては、それが設置される複写機等の形状に合ったものを使用できるが、通常は、正方形または長方形であるものを使用することが好ましい。
【0100】
前記易解体性粘着テープは、例えば長方形の前記透明天板であれば、対向する2辺の端部に沿って、貼付されることが好ましい。その際、前記粘着テープは、前記透明天板の辺の長さに対応した覆記載に裁断したものを使用できるが、例えば幅が0.5mm〜20mmで、長さが0.1mm〜2.0mmであるものを使用することが好ましい。
【0101】
前記画像読み取り装置を解体する方法としては、それを構成する前記粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離する方法が挙げられる。
【0102】
前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置の製造場面においては、例えばそれを構成する液晶表示パネル等とタッチパネル部材とを固定する際に、本発明の易解体性粘着テープを好適に使用することができる。
【0103】
前記前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置を解体する方法としては、それを構成する前記易解体性粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、液晶表示パネル等の情報表示パネルと、タッチパネル部材とを分離する方法が挙げられる。
【0104】
また、本発明の易解体性粘着テープは、もっぱら、携帯電子機器を構成する部材の固定に使用することができる。前記部材としては、例えば電子機器を構成する2以上のきょう体またはレンズ部材が挙げられる。
【0105】
前記携帯電子機器としては、例えば前記部材としてきょう体と、レンズ部材またはその他きょう体の一方とが、前記易解体性粘着テープを介して接合された構造を有するものが挙げられる。
【0106】
前記部材の固定は、例えば、前記きょう体またはレンズ部材の一方と、他方のきょう体またはレンズ部材とを、前記粘着テープを介して積層した後、一定期間養生させる方法が挙げられる。
【0107】
前記携帯電子機器を解体する方法としては、それを構成する前記易解体性粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離する方法が挙げられる。
【0108】
本発明の易解体性粘着テープは、作業工程における接着不備や、リサイクル時の部材間の分離に際して、加熱により容易に解体できる再剥離性を有する。このため、自動車、建材、OA、家電業界などの工業用途における各種製品の部品間固定を行う粘着テープとして好適に使用できる。
【実施例】
【0109】
(製造例1)
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)1.21mg、t-ブチルアクリレート1.33gおよび酢酸エチル2.66gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。次に、有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させて、ポリt−ブチルアクリレート(1)の反応溶液を得た。1H−NMR(300MHz)分析より、重合率は79%であった。またGPC分析より、数平均分子量=73,800、PD=1.26であった。
【0110】
上記で得られたポリt−ブチルアクリレート(1)の反応溶液に、あらかじめ30分間のアルゴンガスバブリングを行ったn−ブチルアクリレート(nBA)3.07gおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート0.92gの混合溶液を添加し、50℃で3時間反応させた。1H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は90%、n−ブチルアクリレートの重合率は49%、2−エチルヒドロシキルアクリレートの重合率は42%であった。
【0111】
反応終了後、上記混合溶液を、メタノールと水との混合物(メタノール:水=80:20体積分率)中に注ぐことで、前記混合溶液に含まれるポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。次に、上記沈澱物をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぐことで、上記ポリマーを再沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。
【0112】
次に、前記沈殿物を減圧下40℃で10時間真空乾燥させることで、アクリル系ブロック共重合体(1)を得た。GPC分析より、数平均分子量=266,300、重量平均分子量=570,000、PD[重量平均分子量/数平均分子量]=2.14であった。前記アクリル系ブロック共重合体(1)を構成する単量体成分の質量比は、tBA/nBA/HEA=33.2/53.1/13.7であった。
【0113】
(実施例1)
前記アクリル系ブロック共重合体(1)100質量部に対し、熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−100)を0.9質量部加え、アセトンで希釈して30重量%アセトン溶液からなる粘着剤組成物を得た。
【0114】
前記粘着剤組成物をギャップ8milli−inchのアプリケータを使用して、厚さ50μmの黒顔料練り込みポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製X30ルミラー)上に乾燥後の粘着層の厚みが65μmになるように塗布し、75℃下に設定した乾燥機で5分乾燥し粘着テープを作製した。
【0115】
(実施例2)
前記熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−100)の使用量を0.9質量部から0.3質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0116】
(比較例1)
前記熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−100)0.9質量部の代わりに、前記熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−60)0.9質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0117】
(比較例2)
前記熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−100)0.9質量部の代わりに、p−トルエンスルホン酸一水和物(TS)を0.9質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0118】
(比較例3)
前記熱酸発生剤(サンアプロ株式会社製、TA−100)0.9質量部の代わりに、光酸発生剤(SIGMA−ALDRICH社製、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフラート(NIT))を0.3質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0119】
(比較例4)
熱酸発生剤を加えなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0120】
<酸発生の開始温度>
実施例及び比較例に使用した粘着層を分取しDSC(示走査熱量計)を用いて、昇温速度5℃/分で150℃まで昇温させた際に酸発生剤の分解に由来するピークが確認された温度を酸発生の開始温度とした。
【0121】
<貼付初期の接着性>
実施例及び比較例で作製した粘着テープを幅20mm、長さ100mmに切断して試験片を作成した後、幅30mm長さ130mm、厚さ2mmのSUS板上に23℃環境下で、重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着した。圧着した試験片を23℃環境下に1時間静置した後、23℃環境下で引張り試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がし接着力を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0122】
評価基準
○ 10N/20mm<
△ 5N/20mm<〜10N/20mm≦
× 5N/20mm≧
【0123】
<長期放置後の接着性>
実施例及び比較例で作製した粘着テープを幅20mm、長さ100mmに切断して試験片を作成した後、幅30mm長さ130mm、厚さ2mmのSUS板上に23℃環境下で、重さ2kgのハンドローラーを一往復させて圧着した。圧着した試験片を60℃環境下で500時間静置した後、23℃下で放冷したものを用い、23℃環境下で引張り試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がし接着力を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0124】
評価基準
○ 10N/20mm<
△ 5N/20mm<〜10N/20mm≦
× 5N/20mm≧
【0125】
<加熱時の解体性>
実施例及び比較例で作製した粘着テープを幅20mm、長さ100mmに切断して試験片を作成した後、幅30mm長さ130mm、厚さ2mmのSUS板上に23℃環境下で、重さ2kgのハンドローラーを一往復させて圧着した。圧着した試験片を110℃環境下で1時間静置した後、23℃下で放冷したものを用い、23℃環境下で引張り試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がし接着力を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0126】
評価基準
◎ 1N/20mm>
○ 1N/20mm≦〜3N/20mm<
△ 3N/20mm≦〜5N/20mm<
× 5N/20mm<
【0127】
【表1】