【課題】 フッ素樹脂の粒子が液中で安定して分散し、塗り重ねした際に塗布ムラやハジキを生じにくい硬化物となる樹脂組成物が得られるフッ素樹脂粒子分散体とその樹脂組成物及び、層間密着性に優れる金属張積層板を提供すること。
で表される熱分解性基を有する分散剤(A)と、フッ素樹脂粒子(B)と、水または有機溶剤(C)とを含有するフッ素樹脂粒子分散体、該分散体を含む樹脂組成物、及び該樹脂組成物の含浸基材の硬化物と金属箔との積層体である金属張積層板。
前記樹脂(D)が、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、トリアジン環を有する樹脂又はベンゾオキサジン環を有する樹脂である請求項8記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で用いる分散剤(A)は、下記構造式(a1)
【0018】
【化4】
〔式(a1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜18の有機基であり、R
4はフッ素化アルキル基、またはフッ素化アルキル基が酸素原子を介して複数連結されたフルオロアルキレンエーテル鎖であって且つY
1との結合部位は炭素原子であり、Y
1は酸素原子または硫黄原子である。〕
で表される熱分解性基を有することを特徴とする。
【0019】
前記構造式(a1)中のR
1、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜18の有機基であり、樹脂中に複数の前記熱分解性基を有する場合、それらは同一のものからなるものであっても、異なる構造のものを複数種有するものであってもよい。
【0020】
前記構造式(a1)における炭素原子数1〜18の有機基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を有していてもよい直鎖状あるいは分岐状の脂肪族炭化水素基、一部に脂環構造を含む脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香環を有する炭化水素基、あるいはこれらの1種あるいは複数種がエーテル結合、エステル結合等にて連結されてなるものであってもよい。分散剤(A)の熱分解温度や当該分散剤(A)の製造が容易である観点から、炭素原子数が1〜9の有機基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上にアルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した有機基を挙げることができる。特に原料の容易入手性の観点からは、水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0021】
前記構造式(a1)中のR
4は、フッ素化アルキル基、またはフッ素化アルキル基が酸素原子を介して複数連結されたフルオロアルキレンエーテル鎖であり、分散安定性に優れる観点から、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜6のフッ素化アルキル基、又はフッ素原子が直接結合した炭素原子の数が1〜4のフッ素化アルキル基が酸素原子を介して複数連結されたエーテル鎖であることが好ましい。当該エーテル鎖において、フッ素化アルキル基中の炭素原子数は同一のものが複数連結されるものであっても、異なるものが連結されるものであってもよく、異なるものである場合、所謂ブロック共重合形式であっても、ランダム共重合形式であってもよい。原料の入手容易性と分散剤(A)の製造容易性、及び分散安定性に優れる樹脂組成物が容易に得られる観点から、当該エーテル鎖の分子量としては、200〜5,000の範囲であることが好ましく、300〜2,000の範囲であることが最も好ましい。
【0022】
更に、前記構造式(a1)中のR
4としては、フッ素化アルキル基であることがより好ましく、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が4〜6のフッ素化アルキル基が特に好ましく、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が6のフッ素化アルキル基が最も好ましい。
【0023】
前記構造式(a1)としては、例えば、下記で表されるものが挙げられる。
【0025】
前記構造式(a1)は、当該構造を含む分散剤(A)を加熱することに依り、カルボニルオキシ基と炭素原子との間で分裂が起こり、フッ素原子を含有する部分が揮発しカルボキシル基となると考えられる。この結果、フッ素原子含有部分が除去され、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、分散剤由来のフッ素原子がほぼ存在せず、硬化物上に他の化合物を塗布する等で積層しようとした場合にも、はじき等が発生せずに良好な積層物を得ることが可能となる。
【0026】
本発明で用いる分散剤(A)中の前記構造式(a1)は、前述のようにPTFE等のフッ素樹脂粒子の分散性を発現するために必要である一方で、硬化物から分散剤由来のフッ素原子含有部分を効率良く除去できることも必要である。このような観点から、本発明で用いる分散剤(A)中の前記構造式(a1)で表される部分構造の含有割合は、分散剤(A)中のフッ素原子の含有率として規定することが可能であり、この含有率としては、1〜45質量%の範囲であることが好ましく、特に5〜40質量%の範囲であることが好ましく、10〜35質量%の範囲であることが最も好ましい。尚、フッ素原子の含有率は、燃焼後イオンクロマトグラムにて実測値として測定可能である。
【0027】
更に、本発明の分散体あるいはこれを用いる樹脂組成物における分散安定性、保存安定性の観点から、分散剤(A)に更にオキシアルキレン鎖を含むことが好ましく、分子量200〜2,500のオキシアルキレン鎖を含むことがより好ましく、特にポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖又はポリブチレングルコール鎖を含むことが好ましい。
【0028】
前記分散剤(A)は、前述のように前記構造式(a1)で表される構造単位を有する樹脂であれば良く、その全体構造については特に限定されるものではないが、製造が容易である観点より、下記構造式(a2)又は(a3)
【0029】
【化6】
〔式(a2)、(a3)中、X
1、X
2はそれぞれ直接結合または2価の連結基であり、R
51は水素原子、メチル基、カルボキシル基または前記一般式(a1)で表される基であり、R
52は前記一般式(a1)で表される基であり、R
53は前記一般式(a1)で表される基又はカルボキシル基である。〕
で表される構造単位を有する樹脂であることが好ましい。
【0030】
前記構造式(a2)、(a3)中におけるX
1、X
2で表される2価の連結基としては、例えば、以下の連結基を挙げることができる。
【0031】
【化7】
(式中のm、nは繰り返し数を表し、0〜6の整数である。)
【0032】
これらの中でも、原料の工業的な入手容易性の観点からX
1、X
2で表される2価の連結基としては式(X
2−1)であることが好ましく、また直接結合であることが好ましい。更に式(a2)、(a3)中、R
51は水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0033】
前記分散剤(A)としては、例えば、カルボキシル基を有する樹脂において、当該カルボキシル基の一部ないし全部が前記構造式(a1)となっている化合物を挙げることができる。カルボキシル基の一部が前記構造式(a1)となるように設計した場合、当該化合物の酸価の測定や、
1H又は
13C−NMRによる測定によって、カルボキシ基と構造式(a1)の存在比を測定することが可能である。
【0034】
また前記のようにカルボキシル基を有する樹脂中の当該カルボキシル基において、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば下記構造式(a4)となっている構造部位を更に含んでいてもよい。
【0035】
【化8】
〔式(a4)中、R
11、R
21及びR
31はそれぞれ水素原子または炭素原子数1〜18の有機基、R
41は炭素原子数1〜18の有機基であって、R
31とR
41はたがいに結合してY
11をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、Y
11は酸素原子又は硫黄原子である。〕
【0036】
前記構造式(a4)中の炭素原子数1〜18の有機基としては、前述の構造式(a1)で挙げたものと同様であり、好ましい有機基としても同様である。これらの中でも特にR
11、R
21およびR
31がそれぞれ水素原子で、R
41が炭素原子数1〜18の有機基で、Y
11が酸素原子または硫黄原子であるものが、カルボキシル基との極性の差が大きく、他の化合物を積層した時の積層しやすくなることから好ましく、特に下記構造式(a4−1)
【0037】
【化9】
で表される構造部位を有する樹脂であることがより好ましい。
【0038】
本発明で用いる分散剤(A)の数平均分子量(Mn)は、フッ素樹脂の粒子の分散安定性と、後述する樹脂組成物中の他の成分との相溶性が良好なことから、1,000〜50,000の範囲が好ましく、1,500〜20,000の範囲がより好ましく、2,000〜8,000の範囲がさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、同様に1,000〜100,000の範囲が好ましく、5,000〜70,000の範囲がより好ましい。
【0039】
本発明において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。GPCの測定条件は以下の通り。
【0040】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:RI
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0041】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0042】
本発明での前記分散剤(A)は、加熱することに依って前述のように前記構造式(a1)中のカルボニルオキシ基の酸素原子と炭素原子との間の結合が切れ、前記構造式(a1)をカルボキシル基とすることができる。加熱処理条件によって、結合が切れて、フッ素原子含有部分が揮発するその割合を調製することは可能であるが、本発明の効果をより発現させるためには、本発明の効果をより発現させるためには、180〜300℃の雰囲気下で1〜60分放置することが好ましく、このような加熱処理によって、分散剤(A)中のフッ素原子含有率を0.5質量%以下とすることが可能である。
【0043】
前述の加熱処理によって、本発明の分散剤(A)は、例えば、下記構造式(c1)又は(c2)
【0044】
【化10】
〔式(c1)、(c2)中、X
1、X
2はそれぞれ、直接結合または2価の連結基であり、R
61は水素原子、メチル基、カルボキシル基または下記構造式(a1)
【0045】
【化11】
〔式(a1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1〜18の有機基であり、R
4はフッ素化アルキル基、またはフッ素化アルキル基が酸素原子を介して複数連結されたフルオロアルキレンエーテル鎖であって、Y
1との結合部位は炭素原子であり、Y
1は酸素原子または硫黄原子である。〕
で表される基であり、R
62、R
63はそれぞれ前記構造式(a1)で表される基又はカルボキシル基である。〕
で表される構造単位を有する、カルボキシル基を有する樹脂(但し、カルボキシル基を有する樹脂中のフッ素原子含有率は0.5質量%以下である。)となる。
【0046】
本発明で用いる分散剤(A)は、例えば、下記の方法により効率よく製造することができる。
製法1:カルボキシル基を有する重合性単量体(α)と、下記一般式(1)
【0047】
【化12】
〔式(1)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1〜18の有機基で、R
4はフッ素化アルキル基、またはフッ素化アルキル基が酸素原子を介して複数連結されたフルオロアルキレンエーテル鎖であって且つY
1との結合部位は炭素原子であり、Y
1は酸素原子または硫黄原子である。〕
で表されるビニルエーテル化合物と、を反応させてブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を得た後、該重合性単量体を重合させる方法。
【0048】
製法2:カルボキシル基を有する重合性単量体(α)を用いて得られる重合体と、前記一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物とを反応させる方法。
【0049】
前記製法1で得られる分散剤は、即ち、前記重合性単量体(α)と一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物との反応物であるブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を構成要素とする分散剤である。また、前記製法2で得られる含フッ素分解性フッ素樹脂粒子分散剤は、即ち、前記重合性単量体(α)を原料とする重合体と、一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物とを構成要素とする分散剤である。
【0050】
前記カルボキシル基を有する重合性単量体(α)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸等を好ましく例示できる。中でも、安価で取り扱いが容易であることから(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0051】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0052】
前記一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物としては、例えば、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ビニルオキシヘキサン等が挙げられる。中でも前記重合性単量体(α)との反応性が良好である観点より3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタンが好ましい。
【0053】
前記製造方法1において、ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を得た後、該重合性単量体を重合させる際や、製造方法2においてカルボキシル基を有する重合性単量体(α)を用いて得られる重合体を得る際には、界面活性能等種々の機能の付与等を目的として本発明の効果を損なわない範囲で重合性単量体(α)以外の重合性単量体(γ)を併用して分散剤を得ることもできる。重合性単量体(γ)としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類、フマル酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類、オキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体が挙げられ、さらには、得られる分散体やこれを用いる樹脂組成物の保存安定性を特に向上させることが必要な場合であって、且つ熱処理後のフッ素原子含有率が多少高めであってもよい場合には、フッ素化アルキル基やポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するラジカル重合性単量体を併用してもよい。
【0054】
前記アクリル酸エステル類としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0055】
前記メタクリル酸エステル類としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0056】
前記アクリルアミド類としては、例えば、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0057】
前記メタクリルアミド類としては、例えば、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
前記アリル化合物としては、例えば、アリルエステル類(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0059】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等、ビニルエステル類:ビニルビチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0060】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。フマル酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等、その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレン等も挙げられる。
【0061】
前記オキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール・(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール・(ポリ)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(プロピレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール・(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール・(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(テトラエチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラエチレングリコール・(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール・(ポリ)トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(プロピレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール・(ポリ)トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(トリメチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチレングリコール・(ポリ)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(ブチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコール・(ポリ)トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
なお、前記「ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのランダム共重合物を意味し、「ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック共重合物を意味し、他のものも同様である。「(ポリ)プロピレングリコール」は、プロピレングリコールとポリプロピレングリコールのいずれかを意味し、他のものも同様である。オキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体におけるオキシアルキレン鎖の分子量としては、200〜2,500の範囲であるものが、組成物を構成する他の樹脂との相溶性に優れる観点から好ましいものである。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリブチレングルコールを含有する重合性単量体を用いることが、分散安定性に優れる分散体が容易に得られる点から好ましい。
【0063】
前記オキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体の市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製の「NKエステルAMP−10G」、「NKエステルAMP−20G」、「NKエステルAMP−60G」、日油株式会社製の「ブレンマーPME−100」、「ブレンマーPME−200」、「ブレンマーPME−400」、「ブレンマーPME−4000」、「ブレンマーPP−1000」、「ブレンマーPP−500」、「ブレンマーPP−800」、「ブレンマー70PEP−350B」、「ブレンマー55PET−800」、「ブレンマー50POEP−800B」、「ブレンマー10PPB−500B」、「ブレンマーNKH−5050」、「ブレンマーAP−400」、サートマー社製の「SR604」等が挙げられる。
【0064】
前記フッ素化アルキル基やポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、下記一般式(γ1)で表されるものを例示することができる。
【0065】
【化13】
〔上記一般式(γ1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは、下記式(L−1)〜(L−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。〕
【0068】
上記式(Rf−1)〜(Rf−4)中のnは、例えば1〜6の整数であり、好ましくは4〜6の整数である。上記式(Rf−5)中のmは、例えば1〜18の整数であり、nは0〜5の整数であり、かつm及びnの合計は1〜23である。好ましくは、mは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつm及びnの合計は4〜5である。上記式(Rf−6)中のmは例えば1〜6の整数であり、nは1〜3の整数であり、lは1〜20の整数であり、pは0〜5の整数であり、かつ、m、p及びnとlとの積の合計は2〜71である。好ましくは、mは1〜3の整数であり、nは1〜3の整数であり、lは1〜6の整数であり、pは0〜2の整数であり、かつ、m、p及びnとlとの積の合計は2〜23である。
【0069】
前記フッ素化アルキル基やポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有するラジカル重合性単量体の具体的な例として、例えば下記の重合性単量体(γ1−1)〜(γ1−15)等を例示することができる。
【0073】
式(γ1−1)〜式(γ1−11)におけるnは、例えば、0〜5である。また、(γ1−12)〜(γ1−15)におけるnは、例えば、0〜20である。
【0074】
ラジカル重合性単量体(γ)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0075】
また、本発明で用いる分散剤(A)を得る際には、前記一般式(1)で表される化合物以外のビニルエーテル化合物を、一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物と本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。この様なビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物;これらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物;2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウムなどの環状ビニルエーテル化合物;これらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物等が挙げられる。
【0076】
前記製法1では、カルボキシル基を有する重合性単量体(α)と前記一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物とを反応させる。これによりブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体が得られる。反応条件は、例えば、酸触媒の存在下、20〜100℃程度に加熱する条件を挙げることができる。そして、ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を重合させる際には、後述する重合性単量体(α)を重合させる条件と同様の条件にて行うことができる。
【0077】
前記製法2において、重合性単量体(α)を用いて重合体を得る方法としては、特に制限はないが、例えば、重合性単量体(α)及び必要に応じて併用されるその他のラジカル重合性単量体(γ)を有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を使用して重合させる方法等が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。ラジカル重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が例示できる。さらに必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤を使用することができる。
【0078】
前記製法2において、前記重合体と、前記一般式(1)で表されるビニルエーテル化合物とは、例えば、酸触媒の存在下、20〜100℃程度に加熱することにより反応させることができる。この反応により重合体が有するカルボキシル基がブロック化し、前記構造式(a1)で表される構造を有する重合体が得られる。
【0079】
本発明で用いるフッ素樹脂粒子(B)としては、例えば、四フッ化エチレン(以下、「TFE」という。)の重合体であるPTFE、TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体との共重合体(以下、「変性PTFE」という。)等が挙げられる。
【0080】
前記TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体としては、例えば、炭素原子数3以上、好ましくは炭素原子数3〜6のパーフルオロアルケン、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。パーフルオロアルケンとしては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等が挙げられる。また、パーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)等が挙げられる。
【0081】
前記TFEと共重合可能なフッ素原子を有する単量体の中でも、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及びパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が好ましく、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)がより好ましい。また、フッ素樹脂粒子(B)の粒径としては、0.01μm〜5μmの範囲のものを用いることができる。
【0082】
本発明のフッ素樹脂粒子分散体を調製する際の含分散剤(A)の使用量は、フッ素樹脂粒子(B)100質量部に対して、0.5〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。
【0083】
本発明のフッ素樹脂粒子分散体は水または有機溶剤(C)を含有する。有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル類;1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類;パーフルオロメタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0084】
本発明のフッ素樹脂粒子分散体は、例えば、分散剤(A)と、フッ素樹脂粒子(B)と、水または有機溶剤(C)とを混合後、分散撹拌機、ペイントシェイカー、ボールミル、ビーズミル、各種ミキサー等の装置を用いて、分散することにより製造することができる。
【0085】
また、本発明のフッ素樹脂粒子分散体の中でも有機溶剤を分散媒体としたフッ素樹脂粒子分散体は、フッ素樹脂粒子を水に分散したフッ素樹脂粒子分散水性組成物の市販品(例えば、3M社製「ダイニオンPFA6900N」等)に、有機溶剤に分散剤(A)を溶解したものを加えた後、水から有機溶剤に置換することによっても調製することができる。
【0086】
本発明のフッ素樹脂粒子分散体は、そのままフッ素樹脂塗料として用いることができるが、このフッ素樹脂粒子分散体に、例えば、着色剤、充填剤、老化防止剤、防腐剤、防軟剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤などを添加混合することもできる。
【0087】
本発明のフッ素樹脂粒子分散体は、更に、フッ素樹脂粒子分散体に含まれる分散剤(A)以外の樹脂(D)を加えて樹脂組成物とすることもできる。このような樹脂組成物は、例えば、被塗布物の表面を被覆する塗料として用いることもできるし、繊維状の基材に含侵させる含浸用樹脂組成物としても用いることができる。前記含浸用樹脂組成物の具体的な用途としては、例えば、金属張積層板用途を例示することができる。金属張積層板は、樹脂組成物を含む硬化物と金属箔との積層物であり、該硬化物は繊維状の基材に本発明の樹脂組成物を含侵させた後、硬化させて得られる。
【0088】
前記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を例示することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
【0089】
含浸用樹脂組成物とする場合には、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、当該熱硬化性樹脂のガラス転移温度が、好ましくは160℃以上350℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上300℃以下である。このようなガラス転移温度を有する熱硬化性樹脂を用いることにより、積層板としたときの、鉛フリー半田リフロー耐熱性がさらに向上するという効果が得られる。
【0090】
具体的な熱硬化性樹脂として、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用してもよい。
【0091】
これらの中でも、特に耐熱性の観点より、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、トリアジン環を有する樹脂又はベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0092】
前記ポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(2)
【0093】
【化19】
〔一般式(2)中、R
71はジアミンからアミノ基を除いた残基、又は、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を示し、R
72は芳香族テトラカルボン酸誘導体からカルボン酸誘導体部分を除いた残基を示す。nは、1以上の整数である。〕
で表されるもの等が挙げられる。
【0094】
前記ポリイミド樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物と酸無水物とを反応させることにより得ることができる。
【0095】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物等が使用可能である。
【0096】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0097】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、ノルボヌレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0098】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物と各種ポリオール成分をイソシアネート基過剰で予め反応させたイソシアネートプレポリマーを使用、併用することも可能である。
【0099】
前記ポリイソシアネート化合物としては、また、イソシアヌレート体であるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0100】
前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物は、例えば、1種または2種以上のジイソシアネート化合物を第4級アンモニウム塩等のイソシアヌレート化触媒の存在下あるいは非存在下において、イソシアヌレート化することにより得られるものであって、3量体、5量体、7量体等のイソシアヌレートの混合物からなるもの等が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体の具体例としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等脂肪族系ポリイソシアネート類やジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0101】
前記酸無水物としては、例えば、1個の酸無水物基を有する酸無水物や2個の酸無水物基を有する酸無水物等が挙げられる。前記1個の酸無水物基を有する酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等の芳香族トリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0102】
前記2個の酸無水物基を有する酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、
【0103】
エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレンレングリコールビスアンヒドロトリメリテートやその他アルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテートなどが挙げられる。
【0104】
無水物としては、これらの1種又は2種以上を用いることが可能である。また、芳香族テトラカルボン酸二酸無水物に芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸一酸無水物を混合して使用してもよい。
【0105】
前記ポリイミド樹脂は例えば、反応容器にポリイソシアネート化合物と酸無水物とを仕込み、攪拌を行いながら昇温することで脱炭酸を生じながら反応を進行させることにより製造することができる。
【0106】
前記製造の際の反応温度としては、50℃から250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の面から70℃から180℃の温度で行うことが好ましい。
【0107】
反応は、イソシアネート基がほぼ全て反応するまで行った方が得られるポリイミド樹脂の安定性が良好となることから好ましい。また、若干残存するイソシアネート基に対して、アルコールや、フェノール化合物を添加し反応させても良い。
【0108】
前記ポリイミド樹脂を製造する際は、有機溶剤を使用することと均一な反応を進行できるため好ましい。ここで有機溶剤は、系中にあらかじめ存在させてから化反応を行っても、途中で導入してもよい。また、この反応に際して適切な反応速度を維持するために系中の有機溶剤の割合は、反応系の80質量%以下であるが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。かかる有機溶剤としては、原料成分としてイソシアネート基を含有する化合物を使用するため、水酸基やアミノ基等の活性プロトンを有しない非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
【0109】
前記非プロトン性極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を使用することができる。また、溶解可能であれば、その他エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、石油系溶剤等を使用しても良い。また、各種溶剤を混合して使用しても良い。
【0110】
前記エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0111】
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0112】
前記エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、石油系溶剤として、トルエン、キシレンやその他高沸点の芳香族溶剤等や、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、脂環族溶剤を使用することも可能である。
【0113】
また、前記ポリイミド樹脂としては、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸から得られるものも使用できる。前記ポリアミック酸としては、例えば、下記一般式(3)
【0114】
【化20】
〔一般式(3)中、R
71、R
72及びnは、前記と同様である。〕
で表されるものが挙げられる。ポリアミック酸を加熱することで、構造中のアミド基とカルボキシル基との反応が進行してイミド基が形成され、これにより上述したようなポリイミド樹脂が得られる。
【0115】
前記ポリアミック酸は、例えば、ジアミン及び/又はジイソシアネートと、テトラカルボン酸又はその誘導体とを反応させることによって得ることができる。
【0116】
前記ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)メタン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、等の芳香族ジアミン;
【0117】
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.0
2,7]−ウンデシレンジメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、等の脂肪族及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0118】
前記ジイソシアネートとしては、例えば、前記したジイソシアネート等を使用する事ができる。
【0119】
前記テトラカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、2つのカルボキシル基を隣り合う位置に有している構造を2組含む構造を有するものを好ましく例示することができる。このようなテトラカルボン酸の具体例としては、例えば、ピロメリット酸、2,3,3’,4’−テトラカルボキシジフェニル、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニル、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3,3’,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン、2,3,3’,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7−テトラカルボキシナフタレン、1,2,5,6−テトラカルボキシナフタレン、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルスルホン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0120】
また、テトラカルボン酸の誘導体としては、上述したテトラカルボン酸のエステル化物、酸無水物、塩化物等が挙げられる。
【0121】
ポリアミック酸を合成するためのジアミン及び/又はジイソシアネートと、テトラカルボン酸又はその誘導体との反応においては、テトラカルボン酸又はその誘導体に対する、ジアミン及び/又はジイソシアネートのモル比を0.95〜1.05とすることが好ましい。この比率で反応を行うと、生成するポリアミック酸やこれから得られるポリイミド樹脂の分子量が十分に大きくなる。
【0122】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。反応時間は好ましくは2〜24時間であり、より好ましくは2〜12時間である。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が好ましい。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30質量%になるような量であることが好ましい。
【0123】
また、溶解性に問題がない範囲で、その他の有機溶媒を併用しても良い。その他の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルを挙げることができる。
【0124】
その他の有機溶媒の使用割合は、前述の有機溶媒と他の有機溶媒との合計に対して、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に40質量%以下であることが好ましい。
【0125】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま樹脂組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで樹脂組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで樹脂組成物の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回又は数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0126】
ポリイミド樹脂は、上記のようにして得られたポリアミック酸を脱水閉環することにより合成することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。ポリイミドのイミド化率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは80%以上である。ここで「イミド化率」とは、ポリイミドにおけるアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の割合を百分率で表した数値をいう。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0127】
ポリアミック酸の脱水閉環反応は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法、又は(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行うことができる。
【0128】
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
【0129】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0130】
上記方法(i)において得られるポリイミド樹脂は、これをそのまま樹脂組成物の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで樹脂組成物の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま樹脂組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで樹脂組成物の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで樹脂組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで樹脂組成物の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換等の方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0131】
本発明の樹脂組成物において樹脂(D)としてポリイミド樹脂を用いるには、硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂を使用することができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を有しているエポキシ樹脂を例示することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2′,6,6′−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂やこれら芳香族系エポキシ樹脂の水素添加物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0132】
前記ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の配合量は、樹脂分の質量比として(ポリイミド樹脂)/(エポキシ樹脂)が1/100から50/1の割合で使用することができ、さらに好ましくは、1/10から20/1である。
【0133】
前記ポリイミド樹脂はポリアミドイミドであってもよい。更に、イミド構造の一部が、イソイミドとなっているものを含んでいてもよい。
【0134】
前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は溶剤溶解性が良好な樹脂組成物が得られ、且つ、種々の物性に優れる硬化物が得られることから800〜50,000が好ましく、1,000〜20,000がより好ましい。
【0135】
また、前記樹脂(D)として、前述のエポキシ樹脂を主成分として用いることができる。エポキシ樹脂を主成分とする場合には、前記で挙げたエポキシ樹脂であってもよく、さらに、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0136】
更に、前記樹脂(D)として、シアネート樹脂を用いることもできる。シアネート樹脂としては、芳香族シアネート樹脂が好ましく、具体的にはノボラック型シアネート樹脂(フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型)、フェニルアラルキル型、ビフェニルアラルキル型、ナフタレンアラルキル型)、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。シアネート樹脂は前記エポキシ樹脂と併用してもよい。
【0137】
前記エポキシ樹脂、前記シアネート樹脂と併用できる樹脂として、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などの触媒型の硬化剤が挙げられる。
【0138】
更に、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などの重付加型の硬化剤も用いることができる。
【0139】
さらに、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などの縮合型の硬化剤も用いてもよい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。
【0140】
また樹脂(D)として、マレイミド樹脂を主成分として、あるいは、前述のエポキシ樹脂、シアネート樹脂と併用して用いることができる。
【0141】
前記マレイミド樹脂としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)核酸のうち2個のマレイミド基を有する化合物を挙げることができ、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0142】
前記マレイミド系樹脂は、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂であってもよく、前記マレイミド系樹脂は、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂と芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物であってもよい。
【0143】
分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂と芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物を形成させる場合には、芳香族ポリアミンとして、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,3−ビス[4−アミノフェノキシ]ベンゼン、3−メチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジクロロ−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(2,3−ジメチル−4−アミノフェニル)フェニルエタン、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン等を、樹脂組成物に添加して用いて樹脂層を形成することが好ましい。
【0144】
また、樹脂(D)として、トリアジン環を有する樹脂を、主成分として、あるいは、前記エポキシ樹脂、シアネート樹脂等と組み合わせて用いることもできる。トリアジン環を有する樹脂としては、例えば、ビニルジアミノトリアジン、トリアジン化合物とフェノール類、ホルムアルデヒド類を縮合させた化合物を主成分とするトリアジン変性フェノールノボラック樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。
【0145】
更にまた、樹脂(D)として、ベンゾオキサジン環を有する樹脂を主成分として、あるいは、前述のエポキシ樹脂、シアネート樹脂等と併用して用いることもできる。ベンゾオキサジン樹脂としては、ベンゾオキサジンモノマーのオキサジン環の開環重合によって得られるものが挙げられる。ベンゾオキサジンモノマーとしては特に限定されず、例えば、オキサジン環の窒素にフェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等の官能基が結合したもの等であってもよい。
【0146】
ベンゾオキサジン環を有する樹脂としては、分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であることが好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルマリンおよび1級アミンから合成することができる。
【0147】
より具体的には、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンとの混合物を、70℃以上に加熱したホルマリンなどのアルデヒド中に添加して、70〜110℃、好ましくは90〜100℃で20〜120分反応させ、その後120℃以下の温度で減圧乾燥することにより、合成することができる。
【0148】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、多官能フェノール、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。より具体的に、多官能フェノールとしては、例えば、カテコール、ヒドロキノン、レゾルキノールなどが挙げられ、ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びその位置異性体、ビスフェノールSなどが挙げられ、フェノール樹脂としては、例えば、レゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ベンゾグアナミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエンなどが挙げられる。また、上記1級アミンとしては、具体的にメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、置換アニリン等が挙げられる。
【0149】
本発明の硬化物は、前述の樹脂組成物を用いて得られるものであり、好ましくは、加熱硬化によって得ることができる。加熱条件は、用いる樹脂に応じて適宜設定できるものであるが、本発明で用いる分散剤を加熱によって分解し、分散剤由来のフッ素原子を硬化物から除去する場合には、180〜300℃の温度で5分以上加熱、好ましくは、当該温度に設定した雰囲気下で放置することが好ましい。
【0150】
このような加熱条件下で硬化物を得ると、当該硬化物は、分散剤(A)の熱分解後の化合物であるカルボキシル基を有する樹脂と、フッ素樹脂粒子(B)と、前記樹脂組成物で用いた樹脂(D)の硬化物を含有するものとなる。このうちフッ素樹脂粒子(B)は硬化物中に均一に分散してなるため、特段硬化物表面に偏析するものではないことから、当該硬化物に他の物質を積層する場合であっても、はじき等が発生せず、良好な積層体を得ることができる。
【0151】
このような観点から、本発明の樹脂組成物は、金属張積層板に用いるプリプレグの含浸用樹脂組成物として好適に用いることができる。前記プリプレグは、フッ素樹脂粒子が均一に分散されていることで、成形性や熱時安定性に優れると共に、誘電特性にも優れたものとなる。
【0152】
金属張積層板に用いるプリプレグの含浸用樹脂組成物とする場合には、該組成物中に更に無機充填材を含んでいてもよい。これにより、金属張積層板を薄型化しても、より一層優れた機械的強度を付与することができる。さらに、金属張積層板の低熱膨張化をより一層向上させることができる。
【0153】
充填材としては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
【0154】
充填材として、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、とくにシリカが好ましく、溶融シリカ(とくに球状溶融シリカ)が低熱膨張性に優れる点で好ましい。溶融シリカの形状には破砕状および球状がある。繊維基材への含浸性を確保するためには、樹脂組成物の溶融粘度を下げるため球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法を採用することができる。
【0155】
また、ゴム成分も配合することができ、例えば、ゴム粒子を用いることができる。ゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
【0156】
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成社製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン社製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。
【0157】
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0158】
シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であればとくに限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、および二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子などが挙げられる。シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学社製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング社製)などの市販品を用いることができる。
【0159】
このほか、必要に応じて、カップリング剤、有機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。本実施形態で用いられる樹脂組成物は、上記成分を有機溶剤などにより溶解および/または分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0160】
カップリング剤の使用により、熱硬化性樹脂と充填材との界面の濡れ性が向上し、繊維基材に対して樹脂組成物を均一に定着させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、耐熱性、とくに吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
【0161】
カップリング剤としては、カップリング剤として通常用いられるものであれば使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることができる。
【0162】
カップリング剤の添加量の下限は、充填材の比表面積に依存するのでとくに限定されないが、充填材100質量部に対して0.05質量部以上、とくに0.1質量部以上が好ましい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、充填材を十分に被覆することができ、耐熱性を向上させることができる。また、添加量の上限は、とくに限定されないが、3質量部以下が好ましく、とくに2質量部以下が好ましい。含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、曲げ強度などの低下を抑制することができる。
【0163】
前記のように含浸させる場合に、樹脂組成物には、溶媒を含むことが好ましく、溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系など等が挙げられる。溶媒を含む樹脂組成物の固形分は、特に限定されないが、樹脂組成物の不揮発分が50質量%〜90質量%の範囲であると含浸性が良好となり好ましい。プリプレグは、このような樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80℃以上200℃以下等で乾燥させることにより得ることができる。この時の温度条件により、得られる半硬化物は前記分散剤(A)を含むものまたは、分散剤(A)の分解物であるカルボキシル基を有する樹脂を含むものとなる。
【0164】
その他、前記の熱硬化性樹脂に加え、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマ−、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエンなどのジエン系エラストマーを併用してもよい。
【0165】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0166】
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂と金属との密着性を向上させることができる。その結果、積層板の耐熱性の向上を図ることができるとともに、プリント配線基板を製造する際に、積層板に対する配線層の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。これにより、プリント配線基板の製造時に、配線層の積層板への密着性をさらに向上させることができる。
【0167】
さらに、樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤などの上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0168】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青などの無機顔料、フタロシアニンなどの多環顔料、アゾ顔料などが挙げられる。
【0169】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチンなどが挙げられる。
【0170】
本発明の金属張積層板は、本発明の樹脂組成物の含浸基材の硬化物と金属箔との積層体であり、通常、繊維基材に本発明の樹脂組成物を含侵させた後、これを半硬化させてなるプリプレグを得て、これを単一、あるいは複数積層させた後、さらに金属箔を積層し、加熱加圧硬化させることで得ることができる。
【0171】
前記繊維基材としては、金属箔張積層板として適用されるものであれば特に制限無く適用することができ、織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材としては、ガラスクロスなどのガラス繊維基材、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維などのポリアミド系樹脂繊維基材、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維などのポリエステル系樹脂繊維基材、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維などを主成分として構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙などを主成分とする紙基材などの有機繊維基材などが挙げられる。これらの中でも、強度、吸水率の点からガラス繊維基材がとくに好ましい。また、ガラス繊維基材を用いることにより、絶縁層の熱膨張係数をさらに小さくすることができる。
【0172】
ガラス繊維基材としては、坪量(1m
2あたりの繊維基材の質量)が4g/m
2以上150g/m
2以下であることが好ましく、8g/m
2以上110g/m
2以下であることがとくに好ましい。上記ガラス繊維基材の中でも、とくに、線膨張係数が6ppm/℃以下のガラス繊維基材であることが好ましく、3.5ppm/℃以下のガラス繊維基材であることがより好ましい。このような線膨張係数を有するガラス繊維基材を用いることにより、金属張積層板の反りをさらに抑制することができる。
【0173】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上60μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上し、とくに反り低減効果が顕著である。
【0174】
また、繊維基材の使用枚数は、一枚に限らず、薄い繊維基材を複数枚重ねて使用することも可能である。なお、繊維基材を複数枚重ねて使用する場合は、その合計の厚みが上記の範囲を満たせばよい。
【0175】
前記積層体は、例えば、本発明の樹脂組成物を繊維状の基材に含浸して得ることができる。具体的には、例えば、まず、前記樹脂組成物中に繊維状の基材を浸漬するなどして、樹脂組成物を繊維質基材に含浸させる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行うことができる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。またこの際に組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成および樹脂量に調整することも可能である。
【0176】
前記樹脂組成物が含浸された繊維状の基材を、その後、所望の加熱条件(例えば、100〜180℃で3〜10分間)で加熱乾燥し、溶剤を除去するとともに樹脂成分を硬化させ硬化物を得る。このとき硬化物中の樹脂量は、硬化物全量に対して30〜80質量%であることが好ましい。
【0177】
硬化物のガラス転移温度は、特に限定されないが、210℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましい。また、弾性率の低下も抑えられ金ワイヤーのボンディング性、半導体チップのバンプ接続性も向上させることが出来る。ガラス転移温度は、例えば硬化物を熱機械分析装置(TMA)、動的粘弾性分析装置(DMA)、熱示差分析(DSC)を用いて測定することができる。なお、プリプレグを硬化する条件は、例えばプリプレグを190℃以上250℃以下で、30分以上120分以下加熱する場合を挙げることができる。このような条件で硬化させることに依り、分散剤(A)中にフッ素原子を含有する熱分解性基が除去され、プリプレグ中の分散剤(A)由来のフッ素原子が効果的に除去されることになり、プリプレグを積層させたり、金属箔と積層したりする際の密着性が良好となる。
【0178】
上述のようにして得られた硬化物を用いて金属張積層板を作製する方法としては、前記硬化物(プリプレグ)を一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面または片面に金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張りまたは片面金属箔張りの積層体を作製する方法が挙げられる。
【0179】
前記金属箔の種類としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブテン、タングステン、ジルコニウム、金、コバルト、チタン、タンタル、亜鉛、鉛、錫、シリコン、ビスマス、インジウム、及びこれらの合金からなる箔が挙げられる。これらの中では、銅箔を好ましく使用する事ができる。
【0180】
前記金属箔には、前記硬化物(プリプレグ)との接着力を向上させるために、本発明において用いられる金属箔に化学的又は物理的な表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えば、サイディング、ニッケルめっき、銅−亜鉛合金めっき、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤を用いた表面処理が挙げられる。更にはプライマー樹脂を予め塗布した金属箔を用いてもよい。
【0181】
前記加熱加圧成形する際の加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を150〜250℃、圧力を5〜50kg/cm
2、時間を30〜240分間とすることができる。
【実施例】
【0182】
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0183】
合成例1〔分散剤(A)の合成〕
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、アクリル酸26.8gと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン30.0gとを仕込み、乾燥空気気流下、室温(20〜28℃)にて21時間攪拌した。次いで、メトキノン0.003gとジイソプロピルエーテル107.6gを加え、飽和炭酸ナトリウム水溶液161.4g、イオン交換水161.4gを加えて分液した。次いで、上層を取り出した後、イオン交換水161.4gを加えて分液した。更に、上層を取り出した後、脱溶剤し、前記一般式(1)で表されるブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を得た。
【0184】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、前記ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体17.5g、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート32.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40.0gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)1.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を80℃に保ちながら同時に滴下を開始し、それぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で10時間攪拌した後、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、含フッ素熱分解性フッ素樹脂粒子分散剤(A1)を20質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られた含フッ素熱分解性フッ素樹脂粒子分散剤(A1)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量2,500、重量平均分子量9,000、最大分子量90,000であった。
【0185】
合成例2(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、アクリル酸26.8gと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン30.0gとを仕込み、乾燥空気気流下、室温(20〜28℃)にて21時間攪拌した。次いで、メトキノン0.003gとジイソプロピルエーテル107.6gを加え、飽和炭酸ナトリウム水溶液161.4g、イオン交換水161.4gを加えて分液した。次いで、上層を取り出した後、イオン交換水161.4gを加えて分液した。更に、上層を取り出した後、脱溶剤し、前記一般式(1)で表されるブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を得た。
【0186】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート75gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、前記ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体18.0g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート32.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)50.0gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)2.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を80℃に保ちながら同時に滴下を開始し、それぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で10時間攪拌した後、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、含フッ素熱分解性フッ素樹脂粒子分散剤(A2)を20質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られた含フッ素熱分解性フッ素樹脂粒子分散剤(A2)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量1,500、重量平均分子量10,000、最大分子量90,000であった。
【0187】
合成例3(同上)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、アクリル酸26.8gと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン30.0gとを仕込み、乾燥空気気流下、室温(20〜28℃)にて21時間攪拌した。次いで、メトキノン0.003gとジイソプロピルエーテル107.6gを加え、飽和炭酸ナトリウム水溶液161.4g、イオン交換水161.4gを加えて分液した。次いで、上層を取り出した後、イオン交換水161.4gを加えて分液した。更に、上層を取り出した後、脱溶剤し、前記一般式(1)で表されるブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を得た。
【0188】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、前記ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体17.5g、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート32.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)40gに溶解したモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17gに溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を80℃に保ちながら同時に滴下を開始し、モノマー溶液を3時間、開始剤溶液を4時間かけてそれぞれ滴下した。滴下終了後、80℃で10時間攪拌した後、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、分散剤(A3)を20質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られた含フッ素熱分解性フッ素樹脂粒子分散剤(A3)の分子量をGPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した結果、数平均分子量2,900、重量平均分子量28,000、最大分子量300,000であった。また、分散剤(A1)中のフッ素原子含有率は燃焼後イオンクロマトで測定した結果、18%であった。
【0189】
合成例4〔樹脂(D)の調製〕
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)540.3gと、トリレンジイソシアネート15.7gと、4,4´−ジイソシアネート−3,3´−ジメチル−1,1´−ビフェニル95.0gと、無水トリメリット酸76.8gと、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物32.2gとを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて140℃まで昇温した後、この温度で22時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は黄色の透明液体となった。25℃での粘度が9Pa・sの樹脂固形分28%で溶液酸価が10(mgKOH/g)のポリアミドイミド樹脂(D1)のDMI溶液を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定の結果、重量平均分子量は10,000であった。
【0190】
実施例1(フッ素樹脂粒子分散体)
ガラス製容器に、フッ素樹脂粒子〔ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微粒子(平均一次粒子径0.3μm)、株式会社喜多村製「KTL−500F」)30部、分散剤(A1)を固形分換算で1.5部及びブチルセロソルブを加えて、100部とした。自転・公転真空ミキサー(株式会社シンキー製「ARE−250」)を用いて2000回転で2分間処理し、フッ素樹脂粒子分散体(1)を得た。
【0191】
得られたフッ素樹脂粒子分散体(1)中のPTFEの微粒子の分散安定性を下記基準に従って評価した。評価はフッ素樹脂粒子分散体(1)を調製した後、室温で1時間静置後と、室温で1日静置後に行った。評価結果を第1表に示す。
【0192】
4:PTFEの微粒子の沈殿が確認されない。
3:PTFEの微粒子のわずかな沈殿が確認されるが、振とうすると再分散可能。
2:PTFEの微粒子の沈降が確認されるが、振とうすると再分散可能。
1:PTFEの微粒子が沈降し、振とうしても再分散できない(ハードケーキ化)。
【0193】
実施例2(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりに分散剤(A2)を用いた以外は実施例1と同様にしてフッ素樹脂粒子分散体(2)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0194】
実施例3(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりに分散剤(A3)を用いた以外は実施例1と同様にしてフッ素樹脂粒子分散体(3)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0195】
比較例1(比較対照用フッ素樹脂粒子分散体)
分散剤(A1)を用いるかわりに非熱分解性のフッ素系化合物(DIC株式会社製のフッ素系界面活性剤 メガファックF−555)を用いた以外は実施例1と同様にして比較対照用フッ素樹脂粒子分散体(1’)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0196】
比較例2(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりに非熱分解性のフッ素系化合物(DIC株式会社製のフッ素系界面活性剤 メガファックF−558)を用いた以外は実施例1と同様にして比較対照用フッ素樹脂粒子分散体(2’)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0197】
比較例3(同上)
分散剤(A1)を用いなかった以外は実施例1と同様にして比較対照用フッ素樹脂粒子分散体(3’)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
実施例4(樹脂組成物)
ポリアミドイミド樹脂(D1)のDMI溶液100部、硬化剤としてビスフェノール型エポキシ樹脂〔DIC株式会社製EPICLON850−S、エポキシ当量184〕7.25部、触媒として1,2−ジメチルイミダゾールを固形分に対し0.1質量%を混合し、DMIを用いて35質量%に希釈した樹脂溶液を作成した。この溶液5.0部に対し、分散剤(A1)を1.2質量部、DMI4.3部を配合して、樹脂組成物(1)を調製した。得られた樹脂組成物(1)を用いて硬化膜を得て、その硬化膜の水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びn−メチルピロリドン(NMP)の接触角(°)を測定した。評価結果を第2表に示す。
【0200】
<硬化膜の作成方法>
樹脂組成物(1)を7cm×7cmのガラス板上に回転数1000rpmで10秒間スピンコーティングした後、100℃で30分乾燥した後、200℃で1時間の条件で加熱して硬化膜を形成した。
【0201】
実施例5(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりに分散剤(A2)を用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物(2)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0202】
実施例6(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりに分散剤(A3)を用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物(3)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0203】
比較例4(比較対照用樹脂組成物)
分散剤(A1)を用いるかわりにDIC株式会社製のフッ素系界面活性剤 メガファックF−555を用いた以外は実施例4と同様にして比較対照樹脂組成物(1’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0204】
比較例5(同上)
分散剤(A1)を用いるかわりにDIC株式会社製のフッ素系界面活性剤 メガファックF−558を用いた以外は実施例4と同様にして比較対照用樹脂組成物(2’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0205】
比較例6(同上)
分散剤(A1)を用いなかった以外は実施例4と同様にして比較対照用樹脂組成物(3’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0206】
【表2】
【0207】
実施例7(プリプレグ及び銅張積層板の作製)
実施例1で得られたフッ素樹脂粒子分散体(1)をフッ素樹脂粒子として20質量%、シリカ粒子(アドマテックス社製、SO25R、平均粒子径0.5μm)39.7質量%、エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC3000、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量:276g/eq)11.2質量%、シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30、フェノールノボラック型シアネート樹脂)20.0質量%、フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH7851)8.8質量%、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー社製、A187)0.3質量%を、メチルエチルケトンに溶解・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、固形分基準で70質量%の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に嵩比重45g/cm
2のガラス繊維を含浸して引き上げたのち、室温にて乾燥させたのち、180℃で10分間加熱することに依りプリプレグを得た。このプリプレグ4枚を更に積層し、その外側両面に厚さ3μmの銅箔を積層し、金型に挟持して圧力1MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形して銅張積層板を得た。この銅張積層板の引きはがし強さをJIS C6481に準拠して測定したところ、1.0kN/m以上となり、良好であることを確認した。
【0208】
実施例8〜9
実施例7において、分散体(1)の代わりに分散体(2)、分散体(3)を用いる以外は実施例7と同様にして銅張積層板を得た。これらの積層板における引きはがし強さを同様にして測定したところ、いずれも1.0kN/m以上であった。
【0209】
比較例7
実施例7において、分散体(1)の代わりに分散体(1’)を用いる以外は実施例7と同様にして銅張積層板を得た。これを用いて引きはがし強さを測定したところ、0.7kN/mであり、実施例よりも密着性に劣ることが確認できた。