特開2017-197663(P2017-197663A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 互応化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 新日鉄住金化学株式会社の特許一覧

特開2017-197663カルボキシル基含有樹脂、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、プリント配線板、及びカルボキシル基含有樹脂の製造方法
<>
  • 特開2017197663-カルボキシル基含有樹脂、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、プリント配線板、及びカルボキシル基含有樹脂の製造方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197663(P2017-197663A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】カルボキシル基含有樹脂、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、プリント配線板、及びカルボキシル基含有樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/16 20060101AFI20171006BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20171006BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20171006BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20171006BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20171006BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   C08G59/16
   G03F7/027 512
   G03F7/027 502
   G03F7/004 512
   G03F7/027 515
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
   H05K3/46 T
   C08F290/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-89898(P2016-89898)
(22)【出願日】2016年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
(72)【発明者】
【氏名】川里 浩信
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 真司
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
4J127
5E314
5E316
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC58
2H225AD02
2H225AD07
2H225AD14
2H225AE12P
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN10P
2H225AN23P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN47P
2H225AN56P
2H225AN65P
2H225AN82P
2H225AN94P
2H225AP09P
2H225AP15P
2H225BA01P
2H225BA02P
2H225BA09P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA33P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J036AC01
4J036AD11
4J036AD12
4J036AF19
4J036AF27
4J036CA19
4J036CA21
4J036CA28
4J036JA08
4J036JA09
4J036JA10
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB121
4J127BB131
4J127BB221
4J127BB281
4J127BB301
4J127BC031
4J127BD141
4J127BD181
4J127BD201
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BE411
4J127BE41Y
4J127BE41Z
4J127BF291
4J127BF301
4J127BF30Y
4J127BF391
4J127BF39Y
4J127BF421
4J127BF42Z
4J127BF451
4J127BF45Z
4J127BG041
4J127BG04Y
4J127BG04Z
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127BG161
4J127BG16Z
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127CB341
4J127CB371
4J127CC111
4J127CC161
4J127DA52
4J127FA18
4J127FA38
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA42
5E314AA45
5E314BB06
5E314BB10
5E314CC01
5E314CC02
5E314CC03
5E314CC07
5E314CC15
5E314DD07
5E314DD10
5E314GG03
5E314GG14
5E314GG24
5E314GG26
5E316AA12
5E316CC09
5E316DD02
5E316DD03
5E316DD22
5E316DD33
5E316EE33
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG28
5E316HH08
5E316HH13
5E316HH33
5E316HH40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】感光性樹脂組成物の硬化物に高い電気絶縁性、耐メッキを付与できるカルボキシル基含有樹脂の提供。
【解決手段】エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との反応物である中間体と、酸無水物と、の反応物である。エポキシ化合物(a1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)。

(R1〜8は各々独立にH、アルキル又はハロゲン)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との反応物である中間体と、酸無水物と、の反応物であり、
前記エポキシ化合物(a1)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有し、
前記ビスフェノールフルオレン骨格は、下記式(1)で示され、
下記式(1)中、R1〜R8は、各々独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又はハロゲンである、
カルボキシル基含有樹脂。
【化1】
【請求項2】
前記エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する、前記不飽和基含有モノカルボン酸(a2)中のカルボキシル基の合計は、0.5〜0.95モルの範囲内である、
請求項1に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項3】
前記多価カルボン酸(a6)は、ジカルボン酸を含有する、
請求項1又は2に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項4】
前記酸無水物は、酸二無水物(a3)を含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項5】
重量平均分子量が1000〜5000の範囲内である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項6】
固形分酸価が60〜140mgKOH/gの範囲内である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項7】
カルボキシル基含有樹脂(A)と、
エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、
光重合開始剤(C)と、
エポキシ化合物(D)とを含有し、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、請求項1から6のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有樹脂を含有する、
感光性樹脂組成物。
【請求項8】
厚み25μmの皮膜に成形された場合に、前記皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能である、
請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記不飽和化合物(B)は、一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有する、
請求項7又は8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の乾燥物を含む、
ドライフィルム。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備える、
プリント配線板。
【請求項12】
請求項7から9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備える、
プリント配線板。
【請求項13】
下記式(1)中、R1〜R8は、各々独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又はハロゲンであるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させ、それにより得られた中間体と、酸無水物とを反応させることによりカルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有樹脂、前記カルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の乾燥物を含むドライフィルム、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備えるプリント配線板、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備えるプリント配線板、及び前記カルボキシル基含有樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の電気絶縁性の層を形成するために電気絶縁性の樹脂組成物が使用されている。このような樹脂組成物は、例えば感光性樹脂組成物である。
【0003】
感光性樹脂組成物から形成される層に高い耐熱性を付与するために、感光性樹脂組成物にビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を配合することが提案されている。例えば特許文献1には、フルオレンエポキシ(メタ)アクリレートを多価カルボン酸又はその無水物と反応させて得られるフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂を用いることが開示されている。
【0004】
しかし、フルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物の現像性は低い。このため、この感光性樹脂組成物からソルダーレジスト層、層間絶縁層等のための十分な厚みを有する電気絶縁性の層をフォトリソグラフィー法で作製するのは困難であった。特に、近年、作業環境の向上、廃棄物処理の負担軽減などのために、現像液としてアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液を用いることが要請されているが、フルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物をアルカリ性水溶液で現像することは困難であった。また、現像性を向上させるにはフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂の分子量を下げる必要があるが、その場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性が増大したり、ソルダーレジスト層の電気絶縁性及び耐メッキ性が低下したりするという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4508929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、感光性樹脂組成物の成分として好適であり、フルオレン骨格を有しながら、感光性樹脂組成物に優れたアルカリ性水溶液による現像性を付与でき、しかも感光性樹脂組成物の硬化物に高い電気絶縁性及び耐メッキ性を付与できるカルボキシル基含有樹脂、前記カルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の乾燥物を含むドライフィルム、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備えるプリント配線板、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備えるプリント配線板、及びカルボキシル基含有樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るカルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との反応物である中間体と、酸無水物と、の反応物である。前記エポキシ化合物(a1)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有し、前記ビスフェノールフルオレン骨格は、下記式(1)で示される。下記式(1)中、R1〜R8は、各々独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又はハロゲンである。
【0008】
【化1】
【0009】
本発明の一態様に係る感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ化合物(D)とを含有し、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、前記カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する。
【0010】
本発明の一態様に係るドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物の乾燥物を含む。
【0011】
本発明の一態様に係るプリント配線板は、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備える。
【0012】
本発明の一態様に係るプリント配線板は、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るカルボキシル基含有樹脂(A1)の製造方法は、エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)を反応させて、中間体を合成することと、前記中間体と酸無水物とを反応させて、前記カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成することとを含む。前記エポキシ化合物(a1)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。前記ビスフェノールフルオレン骨格は、上記式(1)で示され、式(1)中、R1〜R8は、各々独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、又はハロゲンである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、感光性樹脂組成物の成分として好適であり、フルオレン骨格を有しながら、感光性樹脂組成物に優れたアルカリ性水溶液による現像性を付与でき、しかも感光性樹脂組成物から形成される皮膜に高い電気絶縁性及び耐メッキ性を付与できるカルボキシル基含有樹脂、前記カルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を含有するドライフィルム、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む層間絶縁層を備えるプリント配線板、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含むソルダーレジスト層を備えるプリント配線板、及び前記カルボキシル基含有樹脂の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1A乃至図1Eは、多層プリント配線板を製造する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
【0017】
本実施形態に係るカルボキシル基含有樹脂(A1)は、感光性樹脂組成物の成分として好適である。感光性樹脂組成物は、例えば、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ化合物(D)と、を含有し、カルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する。
【0018】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との反応物である中間体と、酸無水物と、の反応物である。エポキシ化合物(a1)は、下記式(1)で示され、式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンである、ビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させ、それにより得られた中間体と、酸無水物とを反応させることで合成される。
【0020】
【化2】
【0021】
式(1)におけるR1〜R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性或いは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0022】
本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A1)がエポキシ化合物(a1)に由来するビスフェノールフルオレン骨格を有しているから、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。
【0023】
さらに、カルボキシル基含有樹脂(A1)が、エポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との反応物である中間体と、酸無水物と、の反応物であることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、適切な分子量を有するとともに、適切な酸価を有しうる。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する感光性樹脂組成物の現像性を向上でき、感光性樹脂組成物にアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与することも可能となる。また、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性が向上する。
【0024】
カルボキシル基含有樹脂(A1)について、より具体的に説明する。カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するためには、まずエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基(式(2)参照)のうちの一部と、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)とを反応させ、エポキシ基のうちの別の一部と多価カルボン酸(a6)とを反応させることで、中間体を合成する。
【0025】
中間体は、エポキシ基と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた下記式(3)に示す構造(S3)と、エポキシ基と多価カルボン酸(a6)との開環付加反応により生じた下記式(4)に示す構造(S4)とを有する。すなわち、中間体は、構造(S3)中に、エポキシ基と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有するとともに、構造(S4)中に、エポキシ基と多価カルボン酸(a6)との開環付加反応により生じた二級の水酸基とカルボキシル基とを有する。式(3)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、式(4)においてYは多価カルボン酸残基である。なお、エポキシ化合物(a1)の二つの分子のエポキシ基と、多価カルボン酸(a6)の一つの分子とが反応することで、式(4)に示す構造(S4)が生じると、この構造(S4)は二つのエポキシ化合物(a1)の分子間を架橋する。この場合、中間体の分子量が増大しうる。
【0026】
なお、多価カルボン酸(a6)における一部のカルボキシル基がエポキシ基と反応せずに中間体中に残存することもある。すなわち、中間体は、多価カルボン酸(a6)に由来するカルボキシル基を有することがある。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
次に、中間体中の二級の水酸基の少なくとも一部と、酸無水物とを反応させる。酸無水物は、例えば酸二無水物(a3)と酸一無水物(a4)とのうち少なくとも一方を含有する。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有する。
【0031】
酸無水物が酸一無水物(a4)を含有する場合は、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(5)に示す構造(S5)と下記式(6)に示す構造(S6)も有する。構造(S5)は、構造(S3)における二級の水酸基に酸一無水物(a4)が付加することで生成する。構造(S6)は、構造(S4)における二級の水酸基に酸一無水物(a4)が付加することで生成する。式(5)及び式(6)において、Bは酸一無水物残基である。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸一無水物(a4)に由来するカルボキシル基を有する。
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(7)に示す構造(S7)と、下記式(8)に示す構造(S8)と、下記式(9)に示す構造(S9)とを有する。構造(S7)〜(S9)は、酸二無水物(a3)中の二つの酸無水物基と、中間体における二つの二級の水酸基とが、それぞれ反応することで生じる。すなわち、構造(S7)〜(S9)は、二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。このうち、構造(S7)は、二つの構造(S3)にそれぞれある二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。構造(S8)は、二つの構造(S4)にそれぞれある二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。構造(S9)は、構造(S3)と構造(S4)にそれぞれある二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。式(7)及び式(8)において、Dは酸二無水物残基である。このようにカルボキシル基含有樹脂(A)が構造(S7)〜(S9)を有すると、カルボキシル基含有樹脂(A)は、酸二無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有する。感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性を特に向上させるためには、カルボキシル基含有樹脂(A1)中のカルボキシル基全量に対する、構造(S8)中のカルボキシル基の量は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であれば更に好ましい。
【0035】
なお、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合とが、ありうる。中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋されると、カルボキシル基含有樹脂(A)の分子量が増大する。
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
中間体の合成時にエポキシ化合物(a1)中のエポキシ基の一部が未反応のまま残存する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は構造(S2)、すなわちエポキシ基を有することがありうる。また、中間体における構造(S3)及び構造(S4)の一部が未反応のまま残存する場合に、カルボキシル基含有樹脂(A1)は構造(S3)及び構造(S4)を有することもありうる。また、構造(S4)における二つの二級の水酸基のうちの一方が未反応のまま残存することもありうる。
【0040】
ただし、本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件を最適化することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)中の構造(S2)に由来するエポキシ基、並びに構造(S3)及び構造(S4)に由来する水酸基の数を低減し、或いはこれらのエポキシ基及び水酸基を殆どなくしうる。
【0041】
また、エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合、すなわち例えば後述する式(10)においてn=1以上である場合には、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基と酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)とのうち少なくとも一方との反応により生じる構造を有することもある。
【0042】
なお、上述のカルボキシル基含有樹脂(A1)の構造は技術常識に基づいて合理的に類推されており、カルボキシル基含有樹脂(A1)の構造を分析によって特定することは現実にはできない。その理由は次の通りである。エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合(例えば式(10)においてnが1以上である場合)には、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基の数によってカルボキシル基含有樹脂(A1)の構造が大きく変化してしまう。また、中間体と酸二無水物(a3)とが反応する際には、上述の通り、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3)で架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3)で架橋される場合とが、ありうる。また、中間体の合成時に多価カルボン酸(a6)のカルボキシル基の一部がエポキシ化合物(a1)と反応せずに中間体に残存し、これがカルボキシル基含有樹脂(A1)に残存することがありうる。また中間体における二級の水酸基の一部が酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)と反応せずに残存することもありうる。また、酸二無水物(a3)における酸無水物基の一部が反応せずに残存することもありうる。これらの場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は更に種々の構造を有しうる。このため、最終的に得られるカルボキシル基含有樹脂(A1)は、互いに構造の異なる複数の分子を含み、カルボキシル基含有樹脂(A1)を分析してもその構造を特定できない。
【0043】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有しているから、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、感光性樹脂組成物に、感光性(具体的には紫外線硬化性)を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物に由来するカルボキシル基を有しているから、感光性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、多価カルボン酸(a6)による架橋の数に依存する。このため、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。すなわち、酸無水物の量、並びに多価カルボン酸(a6)に対する不飽和基含有モノカルボン酸(a2)の量を制御することで、所望の分子量及び酸価を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0044】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は1000〜5000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が1000以上であると、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性が更に抑制されると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性が更に向上する。また、重量平均分子量が5000以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる次の条件での分子量の測定結果から算出される。
【0045】
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF−800P,KF−005,KF−003,KF−001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0046】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の固形分酸価は60〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性が特に向上する。固形分酸価は、より好ましくは80〜135mgKOH/gの範囲内であり、更に好ましくは90〜130mgKOH/gの範囲内である。
【0047】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0048】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(10)に示す構造(S10)を有する。式(10)中のnは、例えば0〜20の範囲内の数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切な値にするためには、nの平均は0〜1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0〜1の範囲内であれば、特に酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合に、酸二無水物(a3)の付加による過剰な分子量の増大が抑制されやすい。
【0049】
【化11】
【0050】
不飽和基含有モノカルボン酸(a2)は、例えば一分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)はアクリル酸を含有する。
【0051】
多価カルボン酸(a6)は、一分子中に二つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。多価カルボン酸(a6)は、一分子中に二つのカルボキシル基を有する化合物であるジカルボン酸を含有することが好ましい。この場合、過剰な分子量の増大を防ぐことができる。多価カルボン酸(a6)は、ジカルボン酸のみを含有してもよい。多価カルボン酸(a6)は、エチレン性不飽和基を有していてもよく、有していなくてもよい。より具体的には、多価カルボン酸(a6)は、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、イタコン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、及びビフェニルテトラカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0052】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えば、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液に不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0053】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、或いは97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。このため、構造(S3)を有する中間体が高い収率で得られる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、同層の絶縁信頼性が更に向上する。
【0054】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させる際の、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)中のカルボキシル基の合計は、0.5〜0.95モルの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)中のカルボキシル基の合計は、0.8〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、優れた保存安定性を有する感光性樹脂組成物が得られる。また、不飽和基含有モノカルボン酸(a2)中のカルボキシル基1モルに対する多価カルボン酸(a6)中のカルボキシル基の量は、0.05〜2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物は特に良好な感光性を有することができ、感光性樹脂組成物から形成される皮膜は特に良好な感光性を有するとともに特に低いタック性を有することができ、また感光性樹脂組成物の硬化物は特に良好な絶縁信頼性及び耐メッキ性を有することができる。
【0055】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)及び多価カルボン酸(a6)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応が抑制されるから、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な着色を抑制できる。
【0056】
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基と不飽和基含有モノカルボン酸(a2)のカルボキシル基との反応で生成された水酸基、及びエポキシ化合物(a1)のエポキシ基と多価カルボン酸(a6)のカルボキシル基との反応で生成された水酸基を、有する。
【0057】
上述の通り、酸無水物は、酸二無水物(a3)と酸一無水物(a4)とのうち、少なくとも一方を含有できる。
【0058】
酸二無水物(a3)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a3)は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a3)は、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト〔1,2−c〕フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸二無水物(a3)が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるDが3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸二無水物(a3)全体に対する3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の量は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これらの範囲に限られない。
【0059】
酸一無水物(a4)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a4)は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物(a4)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸一無水物(a4)が1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。すなわち、式(4)におけるBが1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸残基を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸一無水物(a4)全体に対する1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸の量は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これらの範囲に限られない。
【0060】
酸二無水物(a3)と酸一無水物(a4)とのうち少なくとも一方が、カルボキシル基を有し、かつ脂環式骨格を有する酸無水物(a5)を含んでもよい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)中に含まれるカルボキシル基の量を増加させることができる。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が更に向上する。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)が酸無水物(a5)に由来する脂環式骨格を有しているから、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性が更に抑制されると共に耐メッキ性及びはんだ耐熱性が更に向上する。
【0061】
酸無水物(a5)は、酸一無水物(a4)に含まれることが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるBが酸無水物(a5)の残基を含むことが好ましい。酸無水物(a5)は、例えばシクロアルカン、シクロアルケン、二環式化合物、多環式化合物、スピロ化合物などの脂環式化合物のうち少なくとも一種を含有する。特に酸無水物(a5)がシクロアルカンを含有する化合物であることが好ましい。シクロアルカンとは、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタンなどがある。酸無水物(a5)がシクロヘキサンを含有する化合物であることがさらに好ましい。また、酸無水物(a5)は、脂環式骨格に直接結合されたカルボキシル基を有することが好ましい。さらに、酸無水物(a5)における酸無水物基は、脂環式骨格に直接結合されていることが好ましい。酸無水物(a5)は、芳香環を含まなくてもよい。また、酸無水物(a5)は、トリカルボン酸の無水物であってよい。
【0062】
酸無水物(a5)がシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を含有することがより好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるBがシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物残基を含むことが好ましい。この場合、構造(S4)が、二つのカルボキシル基と、脂環式骨格とを有することになり、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性が低減され硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性が向上すると共に、良好な現像性が確保される。また、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物は水溶性が高く、反応性もよいから、カルボキシル基含有樹脂(A1)の製造が容易になる。
【0063】
中間体と酸無水物とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。溶剤、触媒及び熱重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び熱重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0064】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。このため、構造(S4)及び構造(S5)を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が高い収率で得られる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、同層の絶縁信頼性が更に向上する。
【0065】
中間体と、酸無水物とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量の増大が抑制されるから、多分散度の過度の増大が抑制され、これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0066】
酸無水物が酸一無水物(a4)及び酸二無水物(a3)を含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a3)の量は、0.05〜0.24モルの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a4)の量は0.3〜0.7モルの範囲内であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。また、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量の増大が抑制される。
【0067】
酸無水物が酸一無水物(a4)及び酸二無水物(a3)を含有する場合、中間体と、酸一無水物(a4)及び酸二無水物(a3)とを一度に反応させてもよい。
【0068】
酸無水物が酸一無水物(a4)及び酸二無水物(a3)を含有する場合、まず中間体と酸二無水物(a3)とを反応させることで生成物を合成してから、この生成物と酸一無水物(a4)とを反応させてもよい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)が、中間体と酸二無水物(a3)との反応物である生成物と酸一無水物(a4)との反応物であってもよい。この場合、中間体と酸二無水物(a3)との反応が、酸一無水物(a4)との反応と競合せずに安定して進行するから、構造(S7)が安定して生成しやすい。さらに、生成物中の分子同士の構造のばらつきが生じにくい。このため、生成物と酸一無水物(a4)とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂(A1)にも、その分子同士の構造のばらつきが生じにくい。このため、例えば重量平均分子量が1000〜5000の範囲内にあり、或いは更に特定の酸価を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を、安定して製造できる。
【0069】
感光性樹脂組成物中の、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外の成分について説明する。
【0070】
上述の通り、感光性樹脂組成物は、例えばカルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ化合物(D)とを含有し、カルボキシル基含有樹脂(A)がカルボキシルキ含有樹脂(A1)を含有する。
【0071】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみを含有してもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂(F)ともいう)を更に含有してもよい。
【0072】
カルボキシル基含有樹脂(F)は、例えば、カルボキシル基を有し光重合性を有さない化合物(以下、(F1)成分という)を含有できる。(F1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
【0073】
カルボキシル基含有樹脂(F)は、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、(F2)成分という)を含有してもよい。またカルボキシル基含有樹脂(F)は、(F2)成分のみを含有してもよい。(F2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(g1)とエチレン性不飽和化合物(g2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の群から選択される少なくとも一種の化合物(g3)との反応物である樹脂(第一の樹脂(g)という)を含有する。第一の樹脂(g)は、例えばエポキシ化合物(g1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(g2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた中間体に化合物(g3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(g1)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の適宜のエポキシ樹脂を含有できる。エポキシ化合物(g1)は、エチレン性不飽和化合物(h)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(h)は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する化合物(h1)を含有し、或いは更に2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート等のエポキシ基を有さない化合物(h2)を含有する。エチレン性不飽和化合物(g2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。化合物(g3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
【0074】
(F2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂(第二の樹脂(i)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。第二の樹脂(i)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0075】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみ、又はカルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(F)とを含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、100質量%含有することが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を特に向上させることができる。また、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を十分に低減できる。更に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性を確保できる。
【0076】
不飽和化合物(B)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。不飽和化合物(B)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0077】
特に不飽和化合物(B)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0078】
不飽和化合物(B)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド)との付加反応物である品番HFA−6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド)との付加反応物である品番HFA−3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0079】
不飽和化合物(B)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0080】
光重合開始剤(C)は、例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。すなわち、感光性樹脂組成物は例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。この場合、感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有するにもかかわらず、感光性樹脂組成物に、紫外線に対する高い感光性を付与できる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、同層の絶縁信頼性が更に向上する。
【0081】
また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は硬化物の電気絶縁性を阻害しにくい。このため、感光性樹脂組成物を露光硬化することで、電気的絶縁性に優れた硬化物が得られ、この硬化物は、例えばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層として好適である。
【0082】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含有することが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのみを含有することも好ましい。
【0083】
光重合開始剤(C)はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に加えてヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。すなわち感光性樹脂組成物はヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。この場合、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有しない場合と比べて、感光性樹脂組成物に更に高い感光性を付与できる。これにより、感光性樹脂組成物から形成される塗膜に紫外線を照射して硬化させる場合、塗膜をその表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。
【0084】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)とヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)との質量比は、1:0.01〜1:10の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の表面付近における硬化性と深部における硬化性とを、バランス良く向上させることができる。
【0085】
光重合開始剤(C)は、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。すなわち、感光性樹脂組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有し、或いはアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合、露光されない部分の硬化が抑制されるから、解像性が特に高くなる。このため、非常に微細なパターンの感光性樹脂組成物の硬化物を形成できる。特に、感光性樹脂組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の穴をフォトリソグラフィー法で設ける場合(図1参照)、小径の穴を精密且つ容易に形成できる。
【0086】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対するビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)の量は、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対するビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)の量が0.5質量%以上であると、解像性が特に高くなる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対するビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)の量が20質量%以下であると、感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性をビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が阻害しにくい。
【0087】
感光性樹脂組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えば感光性樹脂組成物は、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)と共に、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤等を含有してもよい。感光性樹脂組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)と共に、レーザ露光法用増感剤である7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0088】
エポキシ化合物(D)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ化合物(D)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ化合物(D)は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物(D)はフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ハイドロキノン型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学社製の品番YDC−1312)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE))、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−136)、並びに特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
【0089】
エポキシ化合物(D)は、結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。なお、結晶性エポキシ樹脂とは、融点を有するエポキシ樹脂のことである。結晶性エポキシ樹脂は、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX−4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0090】
エポキシ化合物(D)に対する結晶性エポキシ樹脂の量は、10〜100質量%の範囲内であることが好ましく、30〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、35〜100質量%の範囲内であることが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の熱硬化前までの工程においてカルボキシル基含有樹脂とエポキシ樹脂の熱硬化反応が抑制され、現像性を向上させることができる。
【0091】
特に結晶性エポキシ樹脂は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。すなわち、エポキシ化合物(D)は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0092】
エポキシ化合物(D)はトリグリシジルイソシアヌレートを含有してもよい。トリグリシジルイソシアヌレートは、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体であることが好ましく、或いはこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物であることが好ましい。
【0093】
結晶性エポキシ樹脂は、融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂を含有することも好ましい。すなわち、エポキシ化合物(D)は、融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性を更に向上させることができる。また、融点が100℃未満の結晶性エポキシ樹脂は、感光性樹脂組成物中のエポキシ樹脂(D)以外の成分や溶媒等との相溶性が高いから、感光性樹脂組成物中で分散されて、均一化されやすい。さらに、感光性樹脂組成物が融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂を含有すると、低温でも結晶化が生じにくい。このため、感光性樹脂組成物に高い保存安定性を付与できる。さらに、低温では感光性樹脂組成物中のカルボキシル基とエポキシ基の架橋反応が抑制されるから、感光性樹脂組成物の良好な現像性を維持しつつ、感光性樹脂組成物に高い保存安定性を付与できる。
【0094】
融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂は、例えばビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0095】
エポキシ化合物(D)が融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂を含有する場合、融点100℃未満の結晶性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量は、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して、0.2〜2.0の範囲内であれば好ましく、0.25〜1.7の範囲内であればより好ましく、0.3〜1.5の範囲内であれば更に好ましい。
【0096】
エポキシ化合物(D)はリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等である。
【0097】
感光性樹脂組成物はメラミンを含有してもよい。感光性樹脂組成物は、メラミンとメラミン誘導体とのうち少なくとも一方を含有する成分(E)を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物と銅などの金属との間の密着性が高くなる。このため、感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の絶縁材料として特に適する。また、感光性樹脂組成物の硬化物の耐メッキ性、すなわち無電解ニッケル/金メッキ処理時の白化耐性が向上する。
【0098】
メラミンは、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジンであり、一般的に市販されている化合物から入手可能である。また、メラミン誘導体は、その一分子中に1つのトリアジン環と、アミノ基とを有する化合物であるとよい。メラミン誘導体としては、例えばグアナミン;アセトグアナミン;ベンゾグアナミン;2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体;並びにメラミン−テトラヒドロフタル酸塩等のメラミンと酸無水物との反応物が、挙げられる。メラミン誘導体の、より詳細な具体例として、四国化成工業株式会社の製品名VD−1、製品名VD−2、製品名VD−3が挙げられる。
【0099】
感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、感光性樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0100】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0101】
感光性樹脂組成物中の成分の量は、感光性樹脂組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0102】
感光性樹脂組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の量は、5〜85質量%の範囲内であれば好ましく、10〜75質量%の範囲内であればより好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0103】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する不飽和化合物(B)の量は、1〜50質量%の範囲内であれば好ましく、10〜45質量%の範囲内であればより好ましく、21〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)に対する不飽和化合物(B)の量が21〜40質量%の範囲内であると、感光性樹脂組成物に優れた光硬化性を付与させながら、感光性樹脂組成物の現像性をさらに向上させることができると共に、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性をさらに低減できる。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する不飽和化合物(B)の量が21質量%以上であると、感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させながら、感光性樹脂組成物の現像性をさらに向上させることができる。また、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する不飽和化合物(B)の量が40以下であると、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性がさらに低減される。
【0104】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合開始剤(C)の量は、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0105】
エポキシ化合物(D)の量に関しては、エポキシ化合物(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.7〜2.5の範囲内であることが好ましく、0.7〜2.3の範囲内であればより好ましく、0.7〜2.0の範囲内であれば更に好ましい。
【0106】
感光性樹脂組成物がメラミンを含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A)に対するメラミンの量は、0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0107】
感光性樹脂組成物が、メラミン及びメラミン誘導体のうち少なくとも一方を含有する成分(E)を含有する場合は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する成分(E)の量は、0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0108】
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散して無くなるように、すなわち有機溶剤が皮膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全体に対する有機溶剤の量は、0〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。なお、有機溶剤の好適な割合は塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0109】
なお、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0110】
本実施形態の効果を阻害しない限りにおいて、感光性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0111】
例えば、感光性樹脂組成物は無機充填材を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される膜の硬化収縮が低減される。無機充填材は、例えば、硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。無機充填材に酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有させることで、感光性樹脂組成物及びその硬化物を白色化してもよい。感光性樹脂組成物中の無機充填材の割合は適宜設定されるが、カルボキシル基含有樹脂(A)に対する無機充填材の量は0〜300質量%の範囲内であることが好ましい。
【0112】
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有してもよい。
【0113】
感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。これらの成分の市販品は、例えば、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)である。
【0114】
感光性樹脂組成物は、成分(E)以外の密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤は、例えば、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体である。
【0115】
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;熱重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0116】
感光性樹脂組成物中のアミン化合物の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。このようにすれば、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層の電気絶縁性が損なわれにくい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)に対するアミン化合物の量は6質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であれば更に好ましい。
【0117】
上記のような感光性樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、感光性樹脂組成物が調製され得る。感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性樹脂組成物を調製してもよい。
【0118】
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち、不飽和化合物(B)、有機溶剤の一部、及び熱硬化性成分を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、感光性樹脂組成物の成分のうち、残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
【0119】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料に適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層の材料に適している。
【0120】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、厚み25μmの皮膜であっても炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるような性質を有することが好ましい。この場合、十分に厚い電気絶縁性の層を感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるから、感光性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、感光性樹脂組成物から厚み25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
【0121】
厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるかどうかは、次の方法で確認できる。適当な基材上に感光性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を形成し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てた状態で、皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して露光を行う。露光後に、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する処理を行う。この処理後に皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、厚み25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であると判断できる。
【0122】
以下に、本実施形態による感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を、図1Aから図1Eを参照して説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィー法でスルーホールを形成する。
【0123】
まず、図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導体配線3とを備える。コア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。図1Bに示すように、コア材1の一面上に、感光性樹脂組成物から皮膜4を形成する。皮膜4の形成方法は、例えば、塗布法とドライフィルム法とがある。
【0124】
塗布法では、例えばコア材1上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、皮膜4を得ることができる。
【0125】
ドライフィルム法では、まずポリエステルなどでできた適宜の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に感光性樹脂組成物の乾燥物であるドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える積層体が得られる。この積層体におけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる皮膜4が設けられる。
【0126】
皮膜4を露光することで図1Cに示すように皮膜4を部分的に硬化させる。そのために、例えばネガマスクを皮膜4に当ててから、皮膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
【0127】
なお、露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば光源から発せられる紫外線を皮膜4の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜4を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0128】
また、ドライフィルム法では、積層体におけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を通して紫外線をドライフィルムからなる皮膜4に照射することで皮膜4を露光し、続いて現像処理前に皮膜4から支持体を剥離してもよい。
【0129】
続いて、皮膜4に現像処理を施すことで、図1Cに示す皮膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0130】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0131】
続いて、皮膜4を加熱することで硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜200℃の範囲内、加熱時間30〜120分間の範囲内である。このようにして皮膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
【0132】
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜4の光硬化を更に進行させることができる。
【0133】
以上により、コア材1上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの公知の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図1Eにおいて、ホールめっき9は穴6の内面を覆う筒状の形状を有するが、穴6の内側全体にホールめっき9が充填されていてもよい。
【0134】
本実施形態による感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0135】
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜を形成する。皮膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。皮膜を露光することで部分的に硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、皮膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上の皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
【0136】
以上により、コア材上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。
【実施例】
【0137】
(1)実施例A−1〜A−7及び比較例B−1〜B−2
以下のようにして、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液である実施例A−1〜A−7及び比較例B−1〜B−2を合成した。
【0138】
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、表1中の「第一反応」欄の「原料成分」欄に示す原料成分を加えて、これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物を四つ口フラスコ内でエアバブリング下で攪拌しながら、「第一反応」欄の「反応条件」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0139】
続いて、四つ口フラスコ内の中間体の溶液に表1の「第二反応」欄の「原料成分」欄に示す原料成分を投入し、エアバブリング下で四つ口フラスコ内の溶液を攪拌しながら「第二反応」欄の「反応条件(1)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。続いて、実施例A−5の場合は、エアバブリング下で四つ口フラスコ内の溶液を攪拌しながら「第二反応」欄の「反応条件(2)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量及び酸価は表1中に示す通りである。
【0140】
なお、表1中のエポキシ樹脂1は式(2)で示され、R1〜R8がすべて水素であるエポキシ当量252のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂
であり、エポキシ樹脂2は式(2)で示され、R1〜R8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂である。
【0141】
(2)感光性樹脂組成物の調製
以下のようにして、感光性樹脂組成物である実施例1〜9及び比較例1〜2を調製した。
【0142】
後掲の表2の「組成」の欄に示す成分を3本ロールで混練してから、これらの成分をフラスコ内で撹拌混合することで、感光性樹脂組成物を得た。なお、成分の詳細は次の通りである。
・不飽和化合物A:1分子あたり2個のカプロラクトンで変性されたジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPCA−20。
・不飽和化合物B:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure TPO。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure 184。
・光重合開始剤C:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
・エポキシ樹脂A:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社社製、品番YX4000。融点105℃。
・エポキシ樹脂溶液B:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番EPICLON N−695)を、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて調製した、固形分濃度75質量%の溶液。
・エポキシ樹脂溶液C:長鎖炭素鎖含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番エピクロンEXA−4816)を、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて調製した、固形分濃度90質量%の溶液。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製、品番IRGANOX 1010。
・青色顔料:フタロシアニンブルー。
・黄色顔料:1,1’−[(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10−アントラセンジオン)。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB31。
・タルク:日本タルク株式会社製、品番SG−2000。
・ベントナイト:レオックス社製、品番ベントンSD−2
・消泡剤:信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・レオロジーコントロール剤:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、品番BYK−430。
・溶剤A:芳香族系混合溶剤(石油ナフサ)、丸善石油化学株式会社製、品番スワゾール1500。
・溶剤B:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・溶剤C:メチルエチルケトン。
【0143】
(3)テストピースの作製
実施例1〜8及び比較例1〜2については、次のようにしてテストピースを作製した。
【0144】
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。このコア材の一面全面に感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、塗膜を形成した。この塗膜を80℃で40分加熱して予備乾燥することで、厚み25μmの皮膜を形成した。この皮膜に、直径40μm及び60μmの円形状の非露光部を有するネガマスクを直接当てた状態で、ネガマスクを介して皮膜に、実施例1〜7及び比較例1〜2を用いる場合は500mJ/cm2の条件で、実施例8を用いる場合は300mJ/cm2の条件で、紫外線を照射した。露光後の皮膜に、現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射することで皮膜を洗浄した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、穴を形成した。この皮膜を160℃で60分間加熱した後、1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、コア材上に感光性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成した。これによりテストピースを得た。
【0145】
実施例9については、次のようにしてテストピースを作製した。
【0146】
感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み25μmのドライフィルムを形成した。
【0147】
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。このコア材にドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートしてコア材の一面全面にドライフィルムを重ねた。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、コア材上にドライフィルムからなる膜厚25μmの皮膜を形成した。この皮膜に対し、実施例8の場合と同じ条件で、露光、現像及び紫外線照射の処理を施した。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。これにより、コア材上に感光性樹脂組成物の硬化物(ドライフィルムの硬化物ともいえる)からなる層を形成した。これによりテストピースを得た。
【0148】
(4)評価試験
(4−1)タック性
実施例1〜8及び比較例1〜2について、テストピースの作製時に、皮膜の露光後に皮膜からネガマスクを取り外す際の皮膜のタック性の程度を、次に示すように評価した。
A:皮膜からネガマスクを取り外す際に抵抗が感じられず、ネガマスクを取り外した後の皮膜には貼付痕が認められない。
B:皮膜からネガマスクを取り外す際に抵抗が感じられ、ネガマスクを取り外した後の皮膜には貼付痕が認められた。
C:皮膜からネガマスクを取り外すことが困難であり、無理にネガマスクを取り外すと皮膜が破損した。
【0149】
(4−2)現像性
実施例1〜8及び比較例1〜2について、プリント配線板の一面全面に感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で40分又は60分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成した。この皮膜に、露光することなく現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。処理後のプリント配線板を観察し、その結果を次のように評価した。
A:湿潤塗膜の加熱時間が40分、60分のいずれの場合でも、皮膜が全て除去されている。
B:湿潤塗膜の加熱時間が40分である場合には皮膜が全て除去されたが、60分では皮膜の一部がプリント配線板上に残存した。
C:湿潤塗膜の加熱時間が40分、60分のいずれの場合でも、皮膜の一部がプリント配線板上に残存した。
【0150】
なお、現像性評価がCである比較例1については、下記(4−3)〜(4−8)の評価を行っていない。また、実施例9の場合は、ドライフィルムから皮膜を形成したため、現像性の評価を行っていない。実施例9の場合は、露光後の現像工程において、問題なく現像できている。
【0151】
(4−3)解像性
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースにおける硬化物からなる層に形成された穴を観察し、その結果を次のように評価した。
A:直径40μmの非露光部に対応する穴と、直径60μmの非露光部に対応する穴とが、いずれも形成されている。
B:直径60μmの非露光部に対応する穴は形成されているが、直径40μmの非露光部に対応する穴は形成されていない。
C:直径40μmの非露光部に対応する穴と、直径60μmの非露光部に対応する穴とが、いずれも形成されていない。
【0152】
(4−4)はんだ耐熱性
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースに水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布してから、このテストピースを260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬し、続いてこれを水洗した。この一連の操作を3回繰り返した後のテストピースにおけるソルダーレジスト層の外観を観察し、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:ソルダーレジスト層の変色が少し見られる。
C:ソルダーレジスト層に大きな変色が見られる。あるいは、ソルダーレジスト層の剥離が見られる。
【0153】
(4−5)耐メッキ性
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースの導体配線における外部に露出する部分の上に、市販の無電解ニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ層を形成してから、市販の無電解金メッキ浴を用いて金メッキ層を形成した。これにより、ニッケルメッキ層及び金メッキ層からなる金属層を形成した。硬化物からなる層及び金属層を目視で観察した。また、硬化物からなる層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次のように評価した。
A:硬化物からなる層及び金属層の外観に異常は認められず、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離は生じなかった。
B:硬化物からなる層に変色が認められるが、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離は生じなかった。
C:硬化物からなる層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離が生じた。
【0154】
(4−6)線間絶縁性
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースにおける導体配線(くし型電極)にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを121℃、97%R.H.の試験環境下に150時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から150時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から120時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から150時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から120時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
【0155】
(4−7)層間絶縁性
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースにおける硬化物からなる層の上に導電テープを貼り付けた。この導電テープにDC100Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを121℃、97%R.H.の試験環境下に50時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層の導体配線と導電テープとの間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から50時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から40時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から50時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から40時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
【0156】
(4−8)PCT
実施例1〜9及び比較例2について、テストピースを121℃、100%R.H.の環境下で100時間放置した後、硬化物からなる層の外観を次の評価基準により評価した。
A:硬化物からなる層に異常は見られなかった。
B:硬化物からなる層に変色が見られた。
C:硬化物からなる層に大きな変色が見られ、一部膨れが発生していた。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
図1