【実施例】
【0067】
以下、実施例等に基づいて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。なお、各種評価は次のとおりにして行った。
【0068】
「剥離強度」
東洋精機製作所社製ストログラフを用いて、ポリイミドを短冊状に切断したサンプルについて、180度剥離試験法によるピール強度を測定することにより評価した。
【0069】
「熱膨張係数」
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/min)で30℃から260℃の温度範囲で引張り試験を行い、温度に対するボリイミドフィルムの伸び量から熱膨張係数(×10−6/K)を測定した。
【0070】
「透過率」
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をU4000形分光光度計にて、440nmから780nmにおける光透過率の平均値を求めた。
【0071】
「機能層形成部の剥離性」
ポリイミドと支持体との積層体から、人手により機能層形成領域のポリイミドの剥離を行い、剥離強度が強く人手での剥離が不可の場合を×とし、剥離が可能な場合を△とし、剥離が容易なときは○とし、剥離が極めて容易なときは◎と評価した。
【0072】
「バリアクラック」
80nmのシリコン窒化膜をCVDで成膜し、クラックの発生をヤマト科学社製マイクロスコーフKH−7700で観察した。10mm角の視野において、クラックの数が20個以上の場合は評価結果を×とし、10個以上20個未満の場合は評価結果を○とし、10個未満またはクラックが無い場合を◎とした。
【0073】
「水浸漬」
ポリイミドと支持体との積層体を20℃の水に1時間浸漬した後、水中から取り出しポリイミドと支持体の剥離の有無を目視で確認した。剥離箇所がなかった場合は評価結果を○とし、全面剥離または剥離箇所があった場合は評価結果を×とした。
【0074】
以下の合成例、実施例や参考例、および比較例において取扱われるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液の合成に用いた原料、芳香族ジアミノ化合物、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物、溶剤を以下に示す。
〔芳香族ジアミノ化合物〕
・1,4−フェニレンジアミン(PPD)
・4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)
・2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)
・1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)
・2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)
〔芳香族テトラカルボン酸の無水物化合物〕
・無水ピロメリット酸(PMDA)
・2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)
・4,4‘−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)
〔溶媒〕
・N、N―ジメチルアセトアミド(DMAc)
【0075】
(合成例1)
窒素気流下で、PPD8.0gを300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAcg中に加え加温し、50℃で溶解させた。次いで、BPDAを22.0g加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液aを得た。なお、このポリアミド酸aを加熱することにより茶褐色のポリイミドaが得られる。
【0076】
(合成例2)
窒素気流下で、TFMB18.9gを500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc中に加え溶解させた。次いで、6FDAを26.1g加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液bを得た。なお、このポリアミド酸bを加熱することにより透明なポリイミドbが得られる。
【0077】
(合成例3)
窒素気流下で、TFMB26.3gを500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc中に加え溶解させた。次いで、PMDAを16.1g、6FDAを1.8g加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液cを得た。なお、このポリアミド酸cを加熱することにより透明なポリイミドcが得られる。
【0078】
(合成例4)
窒素気流下で、BAPP29.1gを500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc中に加え溶解させた。次いで、BPDA3.23gおよびPMDA13.6を加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液dを得た。なお、このポリアミド酸dを加熱することにより茶褐色のポリイミドdが得られる。
【0079】
(合成例5)
窒素気流下で、MABA66.5gおよびDAPE34.5gを2Lのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAcg中に加え溶解させた。次いで、PMDA92.6gを加えた。その後、溶液を室温で1.5時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液eを得た。なお、このポリアミド酸eを加熱することにより茶褐色のポリイミドeが得られる。
【0080】
(合成例6)
窒素気流下で、mTB20.3gおよびTPE−R3.1gを500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAcg中に加え溶解させた。次いで、PMDA18.4およびBPDA6.2gを加えた。その後、溶液を室温で4時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液fを得た。なお、このポリアミド酸fを加熱することにより黄褐色のポリイミドfが得られる。
【0081】
[参考例1]
支持体として厚さ30μmのフェライト系ステンレス箔を用い、その4辺の端部から10mmの部分をサンドブラストにより粗化を行った。続いて、フレキシブル基板を形成するために、このステンレス箔上の4辺から内側へ5mmの部分を残して、ポリアミド酸溶液aをアプリケーターを用いて熱処理後の厚みが8μmとなるように塗布した。次いで、熱風オーブンを用いて、100℃で5分加熱した後、370℃まで4℃/分で昇温し、続いて500℃まで20℃/分で昇温し40分保持し、
図1に示したような、ステンレス箔とポリイミドaとの積層体を得た。ここで、ステンレス箔とポリイミドaの積層部分において、粗化が行われた部分が剥離防止部に相当し、粗化が行われていない部分が機能層形成領域に相当する。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。積層体の4
辺を端部から12mmを切断除去した後、残存するポリイミドa(機能層形成領域)は、支持体から極めて容易に剥離可能であった。この積層体の中央部(残存するポリイミドa)の剥離強度は8N/mであり、上記粗化を行った部分(剥離防止部)の剥離強度は80N/mであった。その他、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0082】
[参考例2]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が3μmとなるようにポリアミド酸溶液bを140mm×140mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃、150℃でそれぞれ2分加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次いで、熱処理後の厚みが22μmとなるように、ポリアミド酸溶液bを130mm×130mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、360℃で1分間加熱し、
図2に示したような、支持体であるガラスとフレキシブル基板であるポリイミドbとの積層体を得た。この支持体1上に形成されたポリイミドbは、二層に重ねた厚み25μmの部分が機能層形成領域に相当し(130mm×130mmの大きさを有する)、その周囲に厚さ3μmの張り出し部分が剥離防止部に相当する(約5mmの張り出し幅を有する)。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドbの4辺を端部から8mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドbは中央部(上記切れ目の内側部分)、周辺部(上記切れ目の外側部分)ともに支持体から極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率の評価結果を表1に示した。
【0083】
[参考例3]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が22μmとなるようにポリアミド酸溶液cを130mm×130mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、120℃で5分加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次いで、熱処理後の厚みが3μmとなるように、ポリアミド酸溶液dを140mm×140mmの大きさでポリアミド酸cの層を覆うように塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、360℃で1分間加熱し、
図3に示したような、支持体であるガラスとポリイミドc及びポリイミドdとの積層体を得た。この積層体は、ポリイミドc及びポリイミドdによりフレキシブル基板を形成し、ポリイミドcの厚み22μmとポリイミドdの厚み3μmとからなる厚み25μmの部分が機能層形成領域に相当し(130mm×130mmの大きさを有する)、その周囲にポリイミドdからなる厚さ3μmの張り出し部分が剥離防止部に相当する(約5mmの幅張り出し幅を有する)。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドc及びポリイミドdからなるポリイミドの4辺を端部から8mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分)は極めて容易に剥離可能であり、周辺部(上記切れ目の外側部分)の剥離も可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0084】
[実施例4]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が25μmとなるようにポリアミド酸溶液eを130mm×130mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、90℃で10分間加熱した。次いで、塗布したポリアミド酸溶液eの平行する二辺上に、ポリアミド酸溶液eとガラスの両方にかかるようにポリアミド酸溶液dを熱処理後の厚みが25μmとなるように6mm幅で塗布し、熱風オーブンを用いて、90℃から360℃まで20℃/分で加熱を行ない、
図4に示したような、フレキシブル基板を形成するポリイミドeと支持体であるガラスとの積層体を得た。ポリイミドdは、ポリイミドeの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることが目視で確認され、ポリイミドeとガラスとにそれぞれ約3mm接していた。ここで、ポリイミドeがガラスと接しており、かつポリイミドdと接していない部分が機能層形成領域に相当し、ポリイミドdがガラスと接している部分が剥離防止部に相当する。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドdと接しているポリイミドdの二辺から1mm内側の位置に切れ目を入れた後、中央部(上記切れ目の内側部分)は容易に剥離可能であり、ポリイミドdはガラスから剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0085】
[参考例5]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が2μmとなるようにポリアミド酸溶液dを、ガラスの四辺に沿って10mm幅で塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃で20秒加熱した。次いで、ポリアミド酸溶液fを140mm×140mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、90℃から360℃まで20℃/分で加熱を行ない、
図5に示したような、フレキシブル基板を形成するポリイミドfと支持体であるガラスとの積層体を得た。このとき、ポリイミドdはポリイミドfに約5mm接していた。ここで、ポリイミドfがガラスと接している部分が機能層形成領域に相当し、ポリイミドdが剥離防止部に相当する。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドfの4辺を端部から8mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分、機能層形成部に相当)は極めて容易に剥離可能であり、周辺部(上記切れ目の外側部分)の剥離も可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0086】
[参考例6]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が10μmとなるようにポリアミド酸溶液cを140mm×140mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃で加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次いで、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、360℃で1分間加熱し、支持体であるガラスとフレキシブル基板であるポリイミドcとの積層体を得た。次いで、
図6に示したように、この積層体のポリイミドc側の全面に、厚さ80nmのシリコン窒化膜をCVDで成膜した。シリコン窒化膜からなるバリア層は機能層であって、ポリイミドcの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。ここで、ポリイミドc上にシリコン窒化膜が成膜されている部分が機能層形成領域に相当し、ガラス表面にシリコン窒化膜が成膜されている部分が剥離防止部に相当する。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドcの4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0087】
[参考例7]
支持体として厚さ0.5mm、150mm×150mmの大きさの無アルカリガラスを用いて、その上にアプリケーターにより、熱処理後の膜厚が25μmとなるようにポリアミド酸溶液cを140mm×140mmの大きさで塗布し、熱風オーブンを用いて、130℃で5分加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次いで、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、360℃で1分間加熱し、支持体であるガラスとフレキシブル基板であるポリイミドcとの積層体を得た。次に、ポリイミドcの4辺をポリイミドの端部から5mmの位置でカミソリの刃を用いて、ガラス表面まで切れ目を入れた後、周辺部のポリイミドを4辺ともガラスから剥離した。この周辺部の剥離は極めて容易であった。次いで、
図7に示したように、この積層体上にポリイミドcを覆うように、成膜後の厚みが5μmとなるようにガラスペーストを140×140mmの大きさで塗布し、100℃で10分、150℃で2分、380℃で2分、400℃で10分加熱を行った。ガラスペーストから形成したバリア層は、ポリイミドcの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。ここで、ポリイミドc上にガラスペーストが成膜されている部分が機能層形成領域に相当し、ガラス表面にガラスペーストが成膜されている部分が剥離防止部に相当する。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドcの4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0088】
[参考例8]
ポリアミド酸溶液bをガラス上に二層重ねて塗布した後の加熱処理として、130℃、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、360℃で6分間加熱したこと以外は参考例2と同様にして、ガラスとポリイミドbの積層体を得た。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドbの4辺を端部から8mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドbは中央部(上記切れ目の内側部分)、周辺部(上記切れ目の外側部分)ともに極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率の評価結果を表1に示した。
【0089】
[参考例9]
ポリアミド酸溶液cをガラス上に塗布した後の加熱処理として、130℃で5分加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去し、次いで、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、320℃で1分間加熱したこと以外は、参考例6と同様にして、ガラスとポリイミドcの積層体を作成し、更に参考例6と同様にシリコン窒化膜を製膜した。シリコン窒化膜からなるバリア層は、ポリイミドcの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドの4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0090】
[参考例10]
熱処理後の膜厚が4μmとなるようにポリアミド酸溶液cを塗布したこと以外は、参考例6と同様にして、ガラスとポリイミドcの積層体を作成し、更に参考例6と同様にシリコン窒化膜を製膜した。シリコン窒化膜からなるバリア層は、ポリイミドcの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドの4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、ポリイミドの中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は極めて容易に剥離可能であった。その他、剥離強度、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0091】
[比較例1]
サンドブラストにより粗化を行わなかったこと以外は、参考例1と同様にしてステンレス箔とポリイミドaの積層体を得た。この積層体の水浸漬試験の結果、ポリイミドaはステンレス箔から剥離した。その他、剥離強度、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0092】
[比較例2]
熱処理をイナートオーブンで行ったこと以外は、参考例1と同様にしてステンレス箔とポリイミドaの積層体を得た。オーブン中の酸素濃度は約1%であった。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。積層体の4辺を端部から12mmを切断除去した後、残存するポリイミドaは人手では剥離はできなかった。この積層体の中央部(残存するポリイミドa)の剥離強度は1800N/mであり、剥離防止部の剥離強度は高すぎて測定不能であった。その他、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0093】
[比較例3]
参考例3と同様にして、ガラスとポリイミドc、ポリイミドdの積層体を得た後、ポリイミドに切れ目を入れずに、ポリイミドc及びdの剥離を行った結果、剥離は可能であったが、剥離中にポリイミドc及びdにしわが生じた。その他、剥離強度、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0094】
[比較例4]
参考例7と同様にして、4辺を剥離したポリイミドcとガラスの積層体を得た後、この積層体のポリイミドc側の全面に、80nmのシリコン窒化膜をCVDで成膜した。その結果、
図8に示したように、シリコン窒化膜からなるバリア層は連続的に形成されず、ポリイミドcの側面にはシリコン窒化膜が成膜されていないことがSEMによる観察で確認された。つまり、剥離防止部は存在しない。この積層体の水浸漬試験の結果、ポリイミドcがガラスから剥離した。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0095】
[比較例5]
ポリイミドの4辺に切れ目を入れなかったこと以外は、参考例6と同様にしてガラスからポリイミドを剥離した後、シリコン窒化膜を観察した結果、参考例6におけるポリイミドの中央部に対応する箇所にはクラックはなかったものの、周辺部から約20mmの範囲には多数のクラックが確認された。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0096】
[比較例6]
ポリアミド酸溶液cの代わりにポリアミド酸溶液dを塗布したこと以外は、参考例6と同様にして、ガラスとポリイミドdの積層体を作成し、さらに参考例6と同様にシリコン窒化膜を製膜した。シリコン窒化膜からなるバリア層は、ポリイミドdの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。ポリイミドの4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、積層体の中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は人手で剥離は可能であったものの、剥離時にポリイミドに伸び、しわが発生することが観察された。その他、剥離強度、熱膨張係数、バリアクラックの評価結果を表1に示した。
【0097】
[比較例7]
ガラス上にポリアミド酸溶液cを塗布して130℃で5分加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去し、次いで、150℃、200℃、250℃で合計30分加熱後、270℃で1分間加熱したこと以外は、参考例6と同様にして、ガラスとポリイミドcの積層体を作成し、更に参考例6と同様にシリコン窒化膜を製膜した。シリコン窒化膜からなるバリア層は、ポリイミドcの表面からガラス表面まで連続的に形成されていることがSEMによる観察で確認された。この積層体の水浸漬試験の結果、剥離は見られなかった。積層体の4辺を端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、積層体の中央部(上記切れ目の内側部分)および周辺部(上記切れ目の外側部分)は人手では剥離はできなかった(剥離強度は200N/m超)。その他、剥離強度、熱膨張係数、透過率の評価結果を表1に示した。
【0098】
[比較例8]
ポリアミド酸溶液aを用いて、別途ガラス上に塗布して参考例1と同様の硬化条件でポリイミドaのフィルムを得た。得られたポリイミドaのフィルムの4辺の端部から5mmの部分に粘着剤を塗布したのち、粘着剤を塗布した面を厚さ30μmのフェライト系ステンレスに圧着し、ステンレス箔とポリイミドaの積層体を得た。この積層体の水浸漬試験の結果、ステンレスとポリイミドの界面へ水が浸入し、ステンレスからのポリイミドの浮きが見られた。その他、剥離強度、熱膨張係数の評価結果を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
[参考例11]
上記参考例6と同様にして、ガラスとポリイミドcの積層体を得て、この積層体のポリイミドc側の全面に厚さ80nmのシリコン窒化膜をCVDで成膜した。このシリコン窒化膜が透湿を阻止するガスバリア層として機能し、その上面にカラーフィルター層を形成した。そして、ポリイミドcの4辺に対して、端部から3mmの箇所に切れ目を入れた後、カラーフィルター層が形成された部分にあたるポリイミドcの中央部(上記切れ目の内側部分)を剥離したところ、ガスバリア層やカラーフィルター層にクラック等が発生することなく、極めて容易に剥離することができ、ポリイミドcをフレキシブル基板に用いたカラーフィルター基板を得ることができた。