【解決手段】本発明は、ダイオキシンを含む飛灰と、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み且つセメント製造設備の排ガス中に含まれるダストとを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物をダイオキシンの分解温度以上で加熱する加熱処理工程と、前記加熱された混合物を洗浄する洗浄工程とを備える。
ダイオキシンを含む飛灰と、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み且つセメント製造設備から排出される排ガス中に含まれるダストとを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物をダイオキシンの分解温度以上で加熱する加熱処理工程と、
前記加熱された混合物を洗浄する洗浄工程とを備えており、
前記混合工程では、前記混合物中のカルシウムの含有量が15質量%以上35質量%以下になるように前記飛灰と前記ダストとが混合される飛灰の無害化処理方法。
ダイオキシンを含む飛灰と、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み且つセメント製造設備から排出される排ガス中に含まれるダストとを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物をダイオキシンの分解温度以上で加熱する加熱処理工程と、
前記加熱された混合物を洗浄する洗浄工程とを備えており、
前記混合工程では、前記混合物中のダストに起因するカルシウムの含有量が1.1質量%以上15.7質量%以下となるように前記飛灰と前記ダストとが混合される飛灰の無害化処理方法。
前記混合工程では、前記混合物中のダストに起因するカルシウムの含有量が1.1質量%以上15.7質量%以下となるように前記飛灰と前記ダストとが混合される請求項1に記載の飛灰の無害化処理方法。
前記混合工程において、前記混合物中にダストが5質量%以上40質量%以下含まれるように前記飛灰とダストとを混合する請求項1乃至4の何れか一項に記載の飛灰の無害化処理方法。
【背景技術】
【0002】
ごみ処理設備においてごみを焼却する際に発生する焼却排ガス中に含まれる飛灰は、ダイオキシン等の有害物質を含む場合がある。近年、廃棄物を低減する目的で、飛灰をセメント原料等として利用することが行なわれているが、飛灰を利用するにあたり、飛灰中のダイオキシン等の有害物質を除去して無害化する必要がある。
飛灰からダイオキシンを除去する方法としては、飛灰をダイオキシンの分解温度以上の温度で加熱処理することが行われている。しかしながら一般的に、ダイオキシンを分解する温度は350℃以上の高温であり、かかる高温で飛灰を加熱すると、飛灰が固化して、加熱装置内部等に付着して、装置が損傷するおそれがある。
そこで、このような飛灰の無害化処理において、飛灰に固化を防止する成分を混合してから、加熱処理することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、飛灰に消石灰を混合してからヒーティングドラムで加熱処理することが記載されている。
特許文献2には、水酸化カルシウムを飛灰に添加してから、加熱処理することが記載されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載されている方法によれば、飛灰に消石灰や水酸化カルシウムを混合してから加熱することで、飛灰が固着することを低減することができる。
しかしながら、消石灰や水酸化カルシウムは水分を吸収すると固まる性質があるため、通常の保存状態のままでは、流動性が悪く、飛灰に混合する作業が困難である。従って、予め、乾燥空気で乾燥させる等の乾燥処理を行なってから、使用することが必要であり手間がかかるという問題があった。あるいは、流動性が悪いことから飛灰に均一に混合しにくいことを見越して、確実に固化を防止するために、消石灰や水酸化カルシウムの飛灰への混合量を多めに設定する必要がある。
消石灰や水酸化カルシウムを、必要以上に多く飛灰に混合した場合には、加熱処理後の飛灰にもカルシウムが残留することになる。加熱処理後の飛灰は、通常洗浄液等で洗浄されるが、カルシウムが多く残留した飛灰を洗浄すると、洗浄液中にカルシウムが多く溶解することになり、洗浄装置や配管などにカルシウムが析出しやすくなる、という問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる実施形態について説明する。
本実施形態にかかる飛灰の無害化処理方法は、ダイオキシンを含む飛灰と、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み且つセメント製造設備から排出される排ガス中に含まれるダストとを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物をダイオキシンの分解温度以上で加熱する加熱処理工程と、前記加熱された混合物を洗浄する洗浄工程とを備えている。
【0018】
(飛灰)
焼却灰は、一般的に、焼却炉の底部などから回収される焼却主灰(ボトムアッシュ)と焼却排ガス中に浮遊する飛灰(フライアッシュ)に分けられる。前記飛灰は、煤、灰など焼却排ガス中に浮遊する固体の粒子状物質であって、集塵灰、ボイラー、ガス冷却室、再燃焼室等で捕集されるものである。
本実施形態の方法で処理される飛灰は、都市ごみ、産業廃棄物などを処理するごみ処理設備において発生する燃焼排ガスに、中和剤を添加することで発生する煤塵である。前記飛灰は、廃棄物を減少する目的で種々の目的で再利用することができ、特に、セメント原料として利用することが好ましい。
飛灰には原料であるごみなどに由来するダイオキシンを含む場合があるため、セメント原料等として利用する場合には、ダイオキシンを除去する必要がある。
【0019】
(ダスト)
本実施形態において、前記飛灰に混合されるダストは、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み、セメント製造設備の排ガス中に含まれるダストである。
前記ダストとしては、セメント製造設備の排ガス、例えば、セメントキルンから排出された排ガス中に含まれるダスト等が挙げられる。
前記セメントキルンから排出される排ガスとは、例えば、セメントキルンの窯尻と仮焼炉を含む熱交換装置との間の位置にあたる位置に配置されたライジングダクト、脱塩バイパスダスト等から排気されたガス、前記予熱機を含む熱交換器から排気されたガス、などが挙げられる。
前記各箇所から排気された排ガスは、サイクロン、バグフィルター、電気集塵機等の固体と気体とを分離する手段によってガス中の固形成分と、気体成分とに分離され、前記固形成分がダストとして得られる。
例えば、前記脱塩バイパスから排出されたガスは、バグフィルター、その他の分離手段によって、固体成分と気体成分とが分離され、固体成分は脱塩バイパスダストとして回収される。
また、前記熱交換器から得られたガスは、電気集塵機によって、固体成分と気体成分とが分離されて、固体成分は電気集塵ダスト(以下、EPダストともいう)として回収される。また、電気集塵機と、気体成分を排出する煙突との間に設けたバグフィルターによってEPダストよりもさらに微細な微粉が回収される。
本実施形態において、前記ダストとしては、これらの脱塩バイパスダスト、電気集塵機ダスト、及び微粉等を用いることができる。
【0020】
前記セメントキルンからの排ガス中に含まれているダストは、酸化カルシウム等のカルシウム化合物を含み、ダスト中のカルシウム含有量は、Caとして、10質量%以上40質量%未満程度である。
ダストが前記脱塩バイパスダストである場合には、一般的には、ダスト中のカルシウム含有量は、Caとして、10質量%以上40質量%未満程度であり、前記EPダストである場合には、一般的には、ダスト中のカルシウム含有量は、Caとして、20質量%以上40質量%未満程度である。
【0021】
尚、本明細書においてダスト中のカルシウム含有量は、イオンクロマトグラフ法、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法等によって測定される量をいい、具体的には後述する実施例に記載する方法で測定される量である。
【0022】
本実施形態で使用される前記ダストは、セメント製造設備の排ガス中に含まれるダストであり、通常高温の排ガス中から分離されたダストであるため、乾燥された状態でガスから分離される。よって、特に、乾燥処理等を施さなくとも、高い流動性を有している。
特に、前記脱塩バイパスダスト、EPダストは、乾燥された状態で得られやすく、且つ微細な粒子であるため、より流動性の高いダストである。よって、本実施形態のダストとして適している。
【0023】
《混合工程》
本実施形態の飛灰の無害化処理方法では、まず、前記ダイオキシンを含む飛灰と、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含み、セメント製造設備の排ガス中に含まれるダストとを混合して混合物を得る混合工程を実施する。
【0024】
飛灰は、ごみ処理施設などから運搬された飛灰を、貯留タンクなどに保管しておき、混合装置へ前記貯留タンクから所定の量を導入してもよい。
前記混合装置としては、例えば、バッチ式混合機であるヘンシェルミキサー(日本コークス工業製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、バッチ及び連続式混合機プロシェアミキサー(大平洋機工社製)等の公知の混合装置が挙げられる。
一方、ダストは、排ガスから分離直後のもの、あるいは、分離後、密閉空間に保管されたものを前記混合装置へ導入することが流動性を維持する観点から好ましい。
さらに、前記ダストは、エアなどを用いて圧送することで、前記混合装置へ導入してもよい。かかる圧送によってダストを導入することで、ダストの流動性をより向上させることができる。
前記混合装置は、例えば、セメント製造設備内に配置しておき、前記ダストを混合装置が配置されたセメント製造設備内で発生するダストを用いてもよい。かかる場合には、ダストの移送コストが低減できるという利点がある。
【0025】
前記混合物中のダストの量は、例えば、5質量%以上40質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下程度である。
ダストの混合量が5質量%以上40質量%以内であることで、加熱処理後の飛灰が固着することを十分に低減でき、且つ、処理後の飛灰中の残留カルシウムを抑制させることができる。
また、前記ダストは流動性が良好であるため、均一に混合することが容易にできる。従って、飛灰に対するダストの量を必要以上に多くすることなく、確実に飛灰の固化を低減することができる。
本実施形態において、前記飛灰とダストとの混合物中のカルシウムは、Ca量として、例えば、15.0質量以上35.0質量%以下、好ましくは、22.5質量%以上26質量%以下程度であることが好ましい。
【0026】
本実施形態において、飛灰とダストとを混合する条件としては、例えば、バッチ式混合装置(プロシェアミキサー等)を用いる場合には、温度5℃〜40℃で、回転数50〜500rpm、1分間〜60分間混合することが好ましい。
【0027】
本実施形態では、前記ダストを飛灰に混合するため、ダストの流動性が良好であり、従って、ダストと飛灰とが均一に混合された混合物を得ることができる。
【0028】
《加熱処理工程》
次に、前記混合物をダイオキシンの分解温度以上で加熱する加熱処理工程を実施する。
前記混合物を、加熱処理を行なうための加熱装置に移送する。
前記加熱装置としては、例えば、JFEハイクリーンDX(JFEエンジニアリング社製)、ロータリーキルン(ジェイテック社製)、マイクロ波ダイオキシン無害化装置(日本スピンドル製造社製)のような公知の加熱装置が挙げられる。
【0029】
加熱処理工程における、飛灰の加熱温度は、ダイオキシンが分解される温度以上であればよい。
一般に、ダイオキシンは、酸素存在雰囲気下では800℃以上の高温、酸素欠乏雰囲気下では350℃〜380℃以上の高温で、分解されることが知られている。
従って、本実施形態の加熱処理工程においても、前記温度以上で加熱することが好ましい。具体的には、酸素欠乏雰囲気下400℃以上500℃以下程度の加熱温度であることが好ましい。
尚、前記酸素欠乏雰囲気下とは、酸素濃度が1体積%以下程度である雰囲気をいう。
【0030】
一方、飛灰は、300℃以上で加熱すると、固化が始まり、400℃を超えると急激に固化が進むことが知られている。
これは、以下のような理由によるものと考えられている。
すなわち、飛灰を加熱すると、飛灰中のCa(OH)
2が、同じく飛灰中のCaCl
2と反応して、CaClOHが生成される。CaClOHは、例えば、300℃以上の高温に加熱されると、緻密で強度の高い焼結体を形成する。この焼結体が、飛灰の固化の原因であると考えられる。
【0031】
一方、飛灰に水酸化カルシウム等のカルシウム成分を混合してから加熱すると、加熱処理工程において、カルシウムの作用でCaCO
3を生成する反応がおきる。すなわち、カルシウム成分を添加することでCa(OH)
2とCaCl
2との反応を阻害して、固化の原因成分であるCaClOHの生成を抑制させることで、固化を低減させることができると考えられる。
しかし、水酸化カルシウム等を多量に飛灰に添加すると、飛灰にカルシウムが多く残留することになり、後述する洗浄工程において、飛灰を洗浄した際に、洗浄液にカルシウムが多く溶解することになる。
【0032】
本実施形態で、飛灰に混合するダストは、カルシウムを10質量%以上40質量%未満含むセメント製造設備の排ガス中に含まれるダストであるため、水酸化カルシウムや消石灰と比較して少ないカルシウム量でも、同等以上の固化抑制効果が得られる。
前記セメント製造設備の排ガス中に含まれるダストが、このような高い固化抑制作用を生じる詳細な理由は不明であるが、おそらく、セメント製造設備の排ガス中に含まれるダスト中に含まれる他の成分が、カルシウムと協働して、より、CaClOHの生成を抑制させる作用があるものと推測できる。
【0033】
本実施形態の処理方法における加熱処理工程の処理条件は、例えば、300℃以上600℃以下、好ましくは400℃以上500℃以下の温度で、10分以上180分間以下、好ましくは、30分以上60分間以下程度である。
前記範囲の処理条件であることで、飛灰中のダイオキシンを十分に分解できると同時に、固化を効果的に抑制することができる。
【0034】
《洗浄工程》
前記加熱処理工程の後に、前記加熱された混合物を洗浄する洗浄工程を実施する。
本実施形態の洗浄工程は、前記加熱処理後の飛灰とダストの混合物を、例えば、洗浄槽内に洗浄液と共に導入して、攪拌することで飛灰中の塩素等を除去することができる。
洗浄水は、上水、処理水、蒸留水などの水の他、これらの水に各種成分を配合した洗浄液等が挙げられる。
前記洗浄液としては、塩酸、硫酸、硝酸等の酸の水溶液等が挙げられる。
前記飛灰には、アルカリ成分が含まれるため、洗浄水で洗浄するときに、スラリーは強アルカリになり、飛灰中に金属が含まれている場合には、該金属が洗浄液中に溶出しやすくなる。かかる金属の溶出を低減するために、前記加熱処理後の混合物と、洗浄液とのスラリーがpH8〜10程度の弱アルカリ性、好ましくは、pH7.0前後の中性になるように、pH3程度に調整された酸性溶液を洗浄液として用いることが特に好ましい。
【0035】
前記洗浄工程は、例えば、洗浄槽中で、5℃以上40℃以下の洗浄液中に混合物を混合したスラリーを1分以上300分間以下の時間、所定の強さで攪拌しながら洗浄することが挙げられる。
【0036】
前記洗浄工程を実施した後、本実施形態の飛灰の無害化処理方法では、前記スラリーを固液分離する固液分離工程を実施してもよい。
固液分離をする手段は、フィルタープレス、ベルトプレス、遠心分離機、デカンター等の公知のろ過装置を用いることができる。
かかる固液分離工程で、固体成分として分離された処理済の飛灰は、セメント原料としてセメントキルンなどに投入することで利用することができる。
本実施形態の処理方法で処理された飛灰は、ダイオキシンが十分に分解されているため、セメント原料として利用した場合でも、セメントにダイオキシンが混入することが抑制できる。
一方、固液分離工程で分離された液体成分の洗浄液は、飛灰の固化防止のために水酸化カルシウムや消石灰を添加した場合に比べて、カルシウムの溶出量を少なくすることができる。従って、洗浄掃装置、洗浄液の排出管等にカルシウム成分が析出することを抑制できる。
【0037】
本実施形態の飛灰の無害化処理方法は、処理後の飛灰をセメント原料として利用する場合に、前記セメント原料からセメントが製造されるセメント製造設備内において実施してもよい。
この場合、処理後の飛灰を同一セメント製造設備内で原料として利用することができ、処理後の飛灰の移送コスト等が低減できるという利点がある。
また、本実施形態の飛灰の無害化処理方法は、ダストが発生するセメント製造設備と同一のセメント製造設備内で実施してもよい。この場合、同じセメント製造設備内において発生した前記各ダストを用いることができ、ダストの移送コストが低減できるという利点がある。
さらに、本実施形態の飛灰の無害化処理方法は、一つのセメント製造設備内で実施し、該セメント製造設備内から発生するダストを利用して飛灰の処理を行い、処理後の飛灰を該セメント製造設備内でセメント原料として利用してもよい。
【0038】
尚、本実施形態にかかる飛灰の無害化処理方法は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0040】
(ダスト)
本実施例では、セメント製造設備のキルンの窯尻に設けられた脱塩バイパスから排出されたガスを冷却して、サイクロンで分離されたダスト(脱塩バイパスダスト)及び電気集塵機ダスト(EPダスト)を準備した。
前記各ダストは、サイクロンまたは電気集塵機で分離された後は、貯留槽に密閉状態で保管したものを用いた。
本実施例で用いたダストの成分については、表1に、脱塩バイパスダストの成分を、表2にEPダストの成分を示す。
尚、ダストの成分は、前処理として、酸溶解あるいはアルカリ溶融し、ICP発光分光分析装置(ICP:スペクトロ社製)、フレーム原子吸光装置(原子吸光分析装置:日立ハイテクノロジーズ社製)等を用いて測定できる。
本実施例においては、装置は前記ICP発光分光分析装置を用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
(水酸化カルシウム)
比較例の飛灰に前記各ダストに代えて混合する水酸化カルシウムとして以下のものを準備した。
水酸化カルシウム:純度95%以上、関東化学株式会社製、試薬1級
【0044】
《カルシウム量の算出》
前記脱塩バイパスダスト、EPダストおよび水酸化カルシウムのカルシウム量を表1および表2より以下の式(1)を用いて算出した。
その結果、脱塩バイパスダストのカルシウム量は22質量%であり、EPダストのカルシウム量は39質量%であり、水酸化カルシウムのカルシウム量は51質量%であった(水酸化カルシウムの純度を95%として計算)。
Ca量=CaO成分(%)×Caの原子量(40.1)/CaOの分子量(56.1)・・・(1)
【0045】
(飛灰)
都市ごみ焼却処理設備から排出された飛灰を準備した。
本実施例で用いた飛灰の成分は表3に示す通りである。
尚、成分の量は前記各ダストと同様に測定した。
さらに、強熱減量はJIS R 5202に準じて、950℃の電気炉にて加熱し、減少した質量を測定した。
【0046】
【表3】
【0047】
《飛灰の加熱による硬度の変化》
前記飛灰を電気炉(装置名:小型ボックス炉、光洋サーモシステム社製)で1時間加熱した後の飛灰の硬度を測定した。加熱温度は、350℃、400℃、450℃、500℃である。
硬度は、土壌硬度計(装置名:中山式土壌硬度計、藤原製作所製)を用いた。結果を
図1に示す。
図1に示された結果から、温度が高くなるにつれて硬度は上がるが、特に450℃を超えると急激に硬度が上がることがわかる。
硬度が高いということは、すなわち、飛灰の固化が進んでいることを示している。
【0048】
《ダスト/水酸化カルシウムの混合量による硬度の変化》
次に、前記飛灰に脱塩バイパスダスト、EPダストまたは水酸化カルシウムの混合量を変えて混合した混合物を加熱した場合の硬度を測定した。
実施例として、脱塩バイパスダストまたはEPダストを、飛灰との混合物の全体量に対して、0質量%〜40質量%まで5質量%刻みで混合した混合サンプルを作製し(実施例1、2)、それぞれ、500℃、1時間で、前記電気炉を用いて加熱した後、前記土壌硬度計を用いて硬度を測定した。
比較例としては、実施例の脱塩バイパスダストまたはEPダストに代えて水酸化カルシウムを混合した混合サンプルを作製し、同様に加熱後の硬度を測定した。
尚、混合サンプル中に含まれるカルシウム量から添加カルシウム量を換算し、該添加カルシウム量による硬度への影響を、
図2乃至4に示す。
また、水酸化カルシウム単独の硬度をゼロとして、水酸化カルシウムをダストに添加した場合に予想される硬度低下の基準線を
図2乃至4中に直線で示した。
また、表4に、飛灰に各ダスト又は水酸化カルシウムを、5質量%、10質量%、20質量%混合した場合の、添加カルシウム量を換算した値を示す。
【0049】
【表4】
【0050】
図2乃至4および表4から明らかなように、実施例1及び2では、水酸化カルシウムを飛灰に混合した比較例よりも添加Ca量が少なくても、同等の硬度に抑制できていた。
【0051】
《流動性の測定1》
実施例1で使用した脱塩ダスト、EPダスト及び比較例で使用した水酸化カルシウムの流動性についてかさ比重を測定して比較した。
流動性の測定方法は、まず、口径85mm、足外径8.3mm、足長81mmの漏斗を用いて、高さ100mmから容量50mlの円筒形の容器に、ダスト又は水酸化カルシウムを落下させながら、自然状態で詰めた場合の重量を測定し、軽圧縮時のかさ比重を求める。次に、その容器を20回地面に軽く叩き、ダストまたは水酸化カルシウムを充填し、次に漏斗からさらに、ダスト又は水酸化カルシウムを落下させ、山盛りにし、また20回容器を地面に軽く叩き、ダスト又は水酸化カルシウムを充填し、容器上面が均一になるよう、へらですりきり、高さを一定にする。その後充填したときのかさ比重測定し、重圧縮時かさ比重として求める。
重圧縮時かさ比重から、軽圧縮時のかさ比重を引いた値を、かさ比重差として求める。
かさ比重差が小さいほど、詰まりづらく、流動性が高い粉体である。
結果を表5に示した。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示す結果より、脱塩バイパスダストおよびEPダストは、水酸化カルシウムに比べ流動性が高いことがあきらかである。
【0054】
《流動性の測定2》
実施例で使用した脱塩バイパスダスト、EPダスト及び比較例で使用した水酸化カルシウムの流動性について、安息角を測定して比較した。
ダスト、水酸化カルシウムを30gずつ準備し、漏斗(口径85mm、足外径8.3mm、足長81mm)を用いてそれぞれ高さ100mmからプラスチック板上に落下させ、山型に層を形成した時の斜面が水平面となす角度(
図5に示す角度)を測定する。
【0055】
結果は、脱塩ダスト22°、EPダスト35°、水酸化カルシウム50°であった。すなわち、各ダストの方が水酸化カルシウムよりも流動性が高いことがあきらかである。