【課題】誘電特性が優れたエポキシ樹脂硬化剤の溶解性を高めることができ、誘電特性、接着力等の特性バランスを向上させた硬化剤組成物、及びこれを使用したエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式構造を有するビスフェノール化合物(A)と下記一般式(2)で示されるフェノール化合物(B)を、非芳香族系溶剤から選ばれる有機溶剤(C)に溶解してなり、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)の質量比が、(A):(B)=5:95〜95:5であるエポキシ樹脂硬化剤組成物。
ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)の合計量(A+B)と非芳香族系溶剤(C)との質量比が、(A+B):(C)=45:55〜85:15である請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物は、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)を、溶剤に溶解してなる。
【0019】
ビスフェノール化合物(A)は、上記一般式(1)で示される。式中、水酸基の位置は、シクロアルキリデン基と結合する炭素原子に対して、オルソ位、パラ位、又はメタ位のいずれであってもよいが、オルソ位又はパラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0020】
R
1はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれるが、環境対応のため、ハロゲンフリー基板とする場合にはハロゲン原子以外が好ましく、誘電特性の観点からは大きな置換基であることが好ましい。しかし、大きな置換基は置換位置にもよるが立体障害によりフェノール性水酸基の反応性を低下させてしまい、うまく硬化できずに特性が悪化する場合もあるので選択には注意が必要である。
R
1の置換位置は、シクロアルキリデン基と結合する炭素原子に対して、オルソ位、パラ位、メタ位のいずれであってもよい。また、水酸基に対してはオルソ位が好ましい。R
1の全部又は2〜3個は水素原子であることが好ましい。
【0021】
R
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基からなる群から選ばれ、少なくとも1つは水素原子以外の基(置換基)である。すなわち、R
2は2m個存在するが、そのうちの少なくとも1個、好ましくは1〜4個は上記脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基又はハロゲン化アルキル基である。
ハロゲンフリー基板とする場合にはハロゲン化アルキル基以外が好ましく、誘電特性の観点からは大きい分子構造であることが好ましい。
R
2が水素以外の置換基である場合、その置換位置はどこでも良いが、シクロアルキリデン基の1位に近い炭素原子が好ましい。この位置であれば、フェノール性水酸基への反応性の影響は少なく、立体障害により骨格の剛直化を行うことによって耐熱性の向上に寄与する場合がある。
mは3〜9の整数であるが、4〜7が好ましく、4〜5がより好ましい。
【0022】
R
1及びR
2において、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜20の脂環族炭化水素基としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数6〜13のアリール基又は炭素数7〜14のアラルキル基が好ましく、フェニル基、トリル基、o−キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基等が挙げられる。
R
2において、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基が好ましく、臭化メチル基等が挙げられる。R
1において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
R
1及びR
2が水素原子以外の基(置換基)であり、これを分子中に複数有する場合、これらの置換基は各々同一でも異なっていても良い。より好ましい置換基としては、入手の容易性及び硬化物物性の観点から、メチル基又はフェニル基である。
【0023】
ビスフェノール化合物(A)の具体例としては、下記に示すようなフェノール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
これら例示したフェノール化合物は、市販品としても入手可能であり、例えば、BisP−TMC、BisOC−TMC、BisP−MZ、BisP−3MZ、BisP−IPZ、BisCR−IPZ、Bis26X−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−nBZ、BisOEP−2HBP(以上、商品名、本州化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
上記ビスフェノール化合物(A)は、特性が良好なエポキシ樹脂組成物又は硬化物を与えるが、プリント配線基板として用いるプリプレグを作成する際には、溶剤に溶解したエポキシ樹脂組成物を用意しなければならない。これにはビスフェノール化合物(A)を溶剤に安定して溶解しなければならないが、ビスフェノール化合物(A)は結晶性が高く、限られた条件でしか溶解できないため、後の工程で問題を生じることが分かった。
【0027】
溶剤溶解可能な限られた条件とはビスフェノール化合物(A)の溶解可能な量が非常に少なく、ガラスクロスに含浸、溶剤乾燥をした際にエポキシ樹脂組成物が低粘度となり、樹脂分が少なくなってしまうことである。また、加熱により溶解量を増やすこともできるが、加温保存や配合時の温度低下による結晶析出の懸念、高い温度での配合によるエポキシ樹脂組成物の保存安定性等の課題が新たに生じる。
【0028】
本発明者はこの課題に対して鋭意検討した結果、上記一般式(2)で示されるフェノール化合物(B)を混合することで、溶剤溶解性を高め、室温においても安定して保管、管理可能であり、これにエポキシ樹脂を配合して得られるエポキシ樹脂組成物も良好なものとなることを見出した。
【0029】
一般式(2)で示されるフェノール化合物(B)は、特許文献3や特許文献4等で知られているものが使用できる。
【0030】
一般式(2)中、R
3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示すが、水素原子、メチル基、tert−ブチル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。R
4は上記一般式(3)で表される置換基を示す。kは繰り返し数で1〜20の数であることがよく、その平均値(数平均)は1〜20であり、1.5以上であること好ましく、1.7〜10がより好ましく、2.0〜5.0が更に好ましく、2.2〜4.0が更により好ましい。また、pは平均値(数平均)で0.1〜2.5の数を示すが、0.5〜2.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましい。
【0031】
一般式(3)中、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示すが、水素原子又はメチル基が好ましく、R
5及びR
6の一方が水素原子であり、他方がメチル基であることがより好ましい。R
7はそれぞれ独立に、炭素数1〜6の炭化水素基を示すが、メチル基、tert−ブチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。qは0〜5の整数を示すが、0又は1が好ましい。
一般式(3)で示される置換基の具体例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、イソプロピルベンジル基、tert−ブチルベンジル基、シクロヘキシルベンジル基、フェニルベンジル基、ジメチルベンジル基、1−フェニルエチル基、1−トリルエチル基、1−キシリルエチル基、α−クミル基(2−フェニルプロパン−2−イル基)、2−トリルプロパン−2−イル基、2−キシリルプロパン−2−イル基等が挙げられる。
【0032】
フェノール化合物(B)の具体例としては、例えば、フェノールノボラック樹脂に芳香族系変性剤を付加反応させた樹脂や、アラルキル置換フェノール等を必要に応じてその他のフェノール類とともにホルムアルデヒドによりノボラック化した樹脂が挙げられる。
アラルキル置換フェノールとしては、スチレン化フェノール、クミルフェノール等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドを反応に用いる際の好ましい形態としては、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。
芳香族系変性剤としてはスチレン類やベンジル化剤が挙げられる。スチレン類としては不純物として、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、インデン、クマロン、ベンゾチオフェン、インドール、ビニルナフタレン等の不飽和結合含有成分を少量含んでいてもよい。ベンジル化剤としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、メチルベンジルクロライド、エチルベンジルクロライド、イソプロピルベンジルクロライド、tert−ブチルベンジルクロライド、シクロヘキシルベンジルクロライド、フェニルベンジルクロライド、メチルベンジルクロライド、α ,α−ジメチルベンジルクロライド等や、ベンジルメチルエーテル、メチルベンジルメチルエーテル、エチルベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルブチルエーテル等や、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、プロピルベンジルアルコール、ブチルベンジルアルコール、シクロヘキシルベンジルアルコール、フェニルベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルアルコール等が挙げられる。
【0033】
ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)の配合比(質量比)を、(A):(B)=5:95〜95:5の範囲とすることで、溶剤に高い濃度で安定して溶解可能となる。溶解性の観点からは、上記配合比であればよいが、誘電正接を低くする場合は、フェノール化合物(B)が多い方がよく(A):(B)=60:40〜5:95が好ましい。また、接着力を高くする場合はビスフェノール化合物(A)が多い方がよく(A):(B)=40:60〜95:5がより好ましい。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物に使用する溶剤は非芳香族系溶剤であり、好ましくは、非芳香族系の極性溶剤である。
非芳香族系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類や、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、メトキシプロパノール、エトキトプロパノール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、モノグライム、ダイグライム等のグリコールエーテル類や、セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、メトキシプロピルアセテート、エチルカルビトールアセテート等のグリコールエステル類や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類や、γ−ブチロラクトン等のラクトン類や、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類や、テトラメチル尿素等のウレア類や、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン等のハロゲン化炭化水素類や、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、1種類でも複数併用しても良い。これらの非芳香族系溶剤の沸点は、30〜230℃が好ましく、50〜200℃がより好ましく、65〜180℃が更に好ましく、75〜160℃が特に好ましい。
溶剤の選択は、溶解性以外にプリプレグ作成の際に加熱除去可能な沸点や蒸発速度を有していることが重要であり、プロセス温度に応じて選択可能である。これらの非芳香族系溶剤の中では、ケトン系溶剤(C1)及びグリコール系溶剤(C2)が好ましく、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、及びメトキシプロパノールが蒸発性や沸点の観点から特に好ましい。なお、グリコール系溶剤(C2)にはグリコール類、グリコールエーテル類、及びグリコールエステル類の全てを含む。
【0035】
溶剤の量は溶解することと、プリプレグ作成の際にガラスクロスへの含浸性に支障が無い粘度となること、プリプレグ化した場合に樹脂分が必要量保持されることが重要である。また、輸送や保管を行うことや、プリプレグ化の際に除去するエネルギーが必要であることから、できるだけ少ないことが好ましい。ビスフェノール化合物(A)の溶解性は、フェノール化合物(B)を併用することで大幅に改善されるため、エポキシ樹脂硬化剤組成物中の溶剤量は、25℃における溶液粘度が15mPa・s〜5000mPa・sの範囲となる量が好ましい。溶液粘度が高すぎると基材ガラスクロスへの含浸性が低下する傾向となる。この溶液粘度は、溶剤の種類や量の他、フェノール化合物(B)の分子量や粘度により変化するため調整が必要である。そのため、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)の合計量(A+B)と非芳香族系溶剤(C)との質量比は、(A+B):(C)=45:55〜85:15が好ましく、50:50〜80:20がより好ましく、55:45〜75:25が更に好ましく、60:35〜70:30が特に好ましい。ビスフェノール化合物(A)だけでは樹脂分(不揮発分)45%以上にすると結晶が析出するが、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)との混合物とすることで、不揮発分45%以上、より好ましくは50%以上でも結晶が析出しない。
本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物は、上記溶剤に溶解した溶液(ワニス状)であることが好ましい。均一溶液であることがより好ましい。
【0036】
上記エポキシ樹脂硬化剤組成物には、硬化促進剤(D)を含有しても良い。硬化促進剤としては、フェノール硬化系で用いられる一般的な硬化促進剤が使用可能であり、具体的にはイミダゾール系、ホスフィン系、アミン系、DBU系等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
硬化促進剤(D)の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)の合計100質量部に対して0.02〜15質量部が必要に応じて用いられる。好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部であり、更に好ましくは0.5〜5質量部である。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
【0038】
上記エポキシ樹脂硬化剤組成物に、エポキシ樹脂(E)を配合することで、エポキシ樹脂組成物を得ることができる。使用可能なエポキシ樹脂(E)は、特に制限はなく、これまで慣用的に使用されているエポキシ樹脂であり、エポキシ基を2個以上含有する多官能エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
ポリグリシジルアミン化合物としては、具体的には、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0041】
ポリグリシジルエステル化合物としては、具体的には、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0043】
その他変性エポキシ樹脂としては、具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0044】
特に誘電率を低下させる目的では、エポキシ樹脂(E)を、脂肪族置換基を含むエポキシ樹脂にすることが好ましく、耐熱性をより向上する目的では多官能性であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、粘度を低下させる目的ではビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂がそれぞれ好ましいが、これらに限定するものではない。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、物性を損なわない範囲で、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)以外の硬化剤を併用しても良い。併用できる硬化剤としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、上記以外のフェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、リン含有硬化剤等のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、同一系の硬化剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の硬化剤を組み合わせて使用してもよい。なお、エポキシ樹脂組成物が物性を損なわない範囲とは、その他の硬化剤を含んだエポキシ樹脂組成物100質量部に対し、ビスフェノール化合物(A)とフェノール化合物(B)との混合物について、ビスフェノール化合物(A)の量としては、5質量部以上含まれることであり、好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上である。
【0046】
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0047】
また、加熱により開環してフェノール化合物となるベンゾオキサジン化合物も硬化剤として有用である。具体的には、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型、ビスフェノールS型等のベンゾオキサジン化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0048】
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、水素添加トリメリット酸無水物、無水メチルナジック酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等や、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、水素添加ピ口メリッ卜酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0049】
アミン系硬化剤としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや、ダイマージアミンや、ジシアンジアミド及びその誘導体や、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0050】
ヒドラジド系硬化剤としては、具体的には、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
活性エステル系硬化剤としては、特許5152445号公報に記載されているような多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類の反応生成物が挙げられ、市販品では、エピクロンHPC−8000−65T(DIC株式会社製)等があるがこれらに限定されるものではない。
【0052】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤の割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、フェノール性水酸基が0.2〜1.5モルであることが好ましい。硬化剤として、フェノール系硬化剤以外の硬化剤を併用する場合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、硬化剤の活性水素基は0.2〜1.5モルが好ましい。フェノール性水酸基又は硬化剤の活性水素基の割合が、上記範囲より低くても、高くても、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。好ましい範囲は0.3〜1.5モルであり、より好ましい範囲は0.5〜1.5モルであり、更に好ましい範囲は0.8〜1.2モルである。
別の観点からは、エポキシ樹脂(E)のエポキシ基1モルに対し、ビスフェノール化合物(A)及びフェノール化合物(B)のフェノール性水酸基の合計は0.8〜1.2モルが好ましく、0.9〜1.1モルがより好ましく、0.95〜1.05モルが更に好ましい。エポキシ樹脂組成物において、ビスフェノール化合物(A)及びフェノール化合物(B)以外の硬化剤を併用する場合は、併用するエポキシ樹脂又は硬化剤の最適な配合量を加味した上で配合量を決めることが好ましい。例えば、フェノール系硬化剤やアミン系硬化剤や活性エステル系硬化剤を併用した場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合し、酸無水物系硬化剤を併用した場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5〜1.2モル、好ましくは、0.6〜1.0モル配合することがよい。
【0053】
上記活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、カルボキシル基(−COOH)やフェノール性水酸基(−OH)は1モルと、アミノ基(−NH
2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ当量が既知のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0054】
エポキシ樹脂組成物にはフィラー(充填材)を配合することもできる。具体的には溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液等の酸化性化合物により、分解又は溶解しないものが好ましく、特に溶融シリカや結晶シリカが微細な粒子が得やすいため好ましい。また、充填材の配合量を特に大きくする場合には溶融シリカを用いることが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高めつつ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、充填材は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理を行ってもよい。一般的に充填材を用いる理由としては、硬化物の耐衝撃性の向上効果や、硬化物の低線膨張性化が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。導電ペースト等の用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0055】
充填材の配合量は、硬化物の低線膨張性化や難燃性を考慮した場合、高い方が好ましい。エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、1〜90質量%が好ましく、10〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%が更に好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、更に硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
【0056】
また、充填材の平均粒子径は、0.05〜1.5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。充填材の平均粒子径がこの範囲であれば、エポキシ樹脂組成物の流動性を良好に保てる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
【0057】
エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、慣用公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(難燃剤としてのリン化合物)、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は使用に際してもなんら制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、硬化促進剤、充填材以外に、熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等のその他の添加剤を配合することができる。更に、粘度調整用として反応性希釈剤等を配合することができる。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、熱可塑性樹脂を配合することもできる。特に、エポキシ樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成型する場合に有効である。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂との相溶性の面からはフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0060】
その他の添加剤としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、シラン系、チタン系等のカップリング剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、反応性希釈剤を配合することもできる。反応性希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の単官能グリシジル化合物、レゾルシノールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジル化合物、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物は繊維状の補強基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられるプリプレグを作成することができる。繊維状の補強基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶剤を含むため、好ましくはワニス状であるため、更に有機溶剤を配合して適切な粘度に調整した樹脂ワニスに作成し、その樹脂ワニスを上記繊維状基材に含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって得られる。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。この際、用いるエポキシ樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80質量%となるように調整することが好ましい。なお、この場合のエポキシ樹脂組成物は、全体が溶解した均一溶液であることが好ましいが、充填材や補強基材を配合した場合等は粒子や結晶が存在してもよく、このような場合は、これらが均一に分散していることが望ましい。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、積層板の接着剤層として、シート状又はフィルム状に成形して用いることもできる。この場合、従来公知の方法を用いてシート化又はフィルム化することが可能である。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記樹脂ワニスに溶解しない支持ベースフィルム上に、樹脂ワニス状のエポキシ樹脂組成物をリバースロールコータ、コンマコータ、ダイコーター等の塗布機を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分をBステージ化することで得られる。また、必要に応じて、塗布面(接着剤層)に別の支持ベースフィルムを保護フィルムとして重ね、乾燥することにより接着剤層の両面に保護フィルムを有する接着シートが得られる。
支持ベースフィルムとしては、銅箔等の金属箔、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフインフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シリコンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、これらの中では、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、積層板の多層化が容易な金属箔、特に銅箔が好ましい。支持ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、支持体としての強度があり、ラミネート不良を起こしにくいことから10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが一般的である。なお、成型された接着シートを容易に剥離するため、あらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくことが好ましい。また、樹脂ワニスを塗布する厚みは、乾燥後の厚みで、5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁性を有する絶縁接着シートとなるが、エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることもできる。なお、上記支持ベースフィルムは、回路基板にラミネートした後に、又は加熱硬化して絶縁層を形成した後に、剥離される。接着シートを加熱硬化した後に支持ベースフィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。
【0064】
本発明のプリプレグや上記絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化、一体化させて、積層板を得ることができる。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。加熱温度は、160〜250℃が好ましく、170〜220℃がより好ましい。加圧圧力は、0.5〜10MPaが好ましく、1〜5MPaがより好ましい。加熱加圧時間は、10分間〜4時間が好ましく、40分間〜3時間がより好ましい。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
【0065】
絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成する。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。
【0066】
また、上記プリプレグを用いて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層体を形成する。そしてこの積層体を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができる。
【0067】
また、積層板に本エポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面に上記エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で、好ましくは150〜200℃で、1〜120分間、好ましくは30〜90分間、加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜150μm、好ましくは5〜80μmに形成することが望ましい。なお、エポキシ樹脂組成物の粘度は、十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから、25℃において10〜40000mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは200〜30000mPa・sである。このようにして形成された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができる。
【実施例】
【0068】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
分析方法、測定方法を以下に示す。
【0069】
(1)不揮発分:JIS K6910規格(5.6不揮発分)に準拠した。具体的には、サンプル量を1gとし、試験温度150℃、試験時間を1時間とした時の溶剤を留去して残った固形分を不揮発分とした。
(2)溶解性:所定の比率にて配合し、室温で1週間放置後撹拌により衝撃を加えても結晶の析出が見られない場合を「○」で示し、均一に溶解できない場合や、溶解しても1週間以内に結晶が析出したものを「×」で示した。
(3)溶液粘度:上記溶解性試験後の溶液(ワニス)をE型粘度計により25℃での粘度を測定した。具体的にはE型粘度計(東京東機産業製、RE85H)を用い、コーンNo.1又は、No.6を使用した。なお、結晶等が析出して測定できない場合は「NG」と表記した。
(4)ガラス転移温度:IPC−TM−650 2.4.25.c規格に準じて示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 DSC6200)にて20℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC・Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)で表した。
(5)誘電率及び誘電正接:IPC−TM−650 2.5.5.9規格に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
(6)銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481規格に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
【0070】
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び滴下装置を備えたガラス製セパラブルフラスコに、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量(g/eq.)105、軟化点130℃)を105部、p−トルエンスルホン酸を0.1部仕込み、150℃まで昇温した。同温度を維持しながら、スチレン94部を3時間かけて滴下し、更に同温度で1時間撹拌を継続した。その後、メチルイソブチルケトン(MIBK)500部に溶解させ、80℃にて5回水洗を行った。続いて、MIBKを減圧留去した後、下記式(4)で表されるスチレン変性フェノールノボラック樹脂(b−1)を得た。得られた(b−1)のフェノール性水酸基当量は199であり、軟化点は110℃で、式(4)におけるp(平均値)は0.9である。
【0071】
【化5】
【0072】
合成例2
合成例1と同様の装置に、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、軟化点67℃)を105部、p−トルエンスルホン酸を0.13部仕込み150℃に昇温した。同温度を維持しながら、スチレン156部を3時間かけて滴下し、更に同温度で1時間撹拌を継続した。その後、合成例1と同様な処理を行った後、スチレン変性フェノールノボラック樹脂(b−2)を得た。得られた(b−2)のフェノール性水酸基当量は261であり、軟化点は75℃でpは1.5である。
【0073】
実施例及び比較例で使用した略号の説明は、以下のとおりである。
(1)ビスフェノール化合物(A):
BisP−TMC:4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(本州化学工業株式会社製、BisP−TMC、フェノール性水酸基当量155、融点206℃)
(2)フェノール化合物(B):
(b−1):合成例1で得られたフェノール化合物
(b−2):合成例2で得られたフェノール化合物
(3)それ以外のフェノール化合物:
PN:フェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、BRG−557、フェノール性水酸基当量105、軟化点80℃)
DCPD:ジシクロペンタジエン・フェノール化合物(群栄化学株式会社製、GDP9140、フェノール性水酸基当量196、軟化点130℃)
(4)溶剤
ケトン系溶剤(C1):メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン(CP)
グリコール系溶剤(C2):メチルセロソルブ(MC)、メトキシプロパノール(PM)
芳香族系溶剤:トルエン(TL)
(5)硬化促進剤(D):
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
(6)エポキシ樹脂(E):
TX−1466:ウレタン変性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、TX−1466、エポキシ当量298、軟化点87℃)
【0074】
実施例1〜7
表1に記載の配合比率(部)により、ビスフェノール化合物(A)、フェノール化合物(B)、及び溶剤を配合し、必要に応じで加熱撹拌を行い溶解し、所定の不揮発分の硬化剤組成物(ワニス)を得た。溶解性及び溶解粘度の結果を表1に示した。
【0075】
比較例1〜9
表2及び表3に記載の配合比率(部)により、各成分を配合し、必要に応じ、加熱撹拌を行い溶解し、所定の不揮発分濃度の硬化剤組成物(ワニス)を得た。溶解性及び溶解粘度の結果を表2及び表3に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
表1に示すように、ビスフェノール化合物(A)はフェノール化合物(B)を配合することにより、溶液としての安定性が高まり、高い固形分での取り扱いが容易となっている。一方、表2の比較例に示すように、ビスフェノール化合物(A)はフェノール化合物(B)に代えてその他のフェノール化合物を使用しても溶剤溶解性は改善されていない。ビスフェノール化合物(A)にフェノール化合物(B)を配合しても、トルエンのような芳香族系溶媒の場合には、樹脂ワニスとして要求される溶解性が不十分となる。
【0080】
実施例8及び比較例10〜14
表4に記載の配合処方(固形分値)によりエポキシ樹脂組成物を調整した。硬化剤組成物としては、実施例2、比較例1、3、7、8、9で得られた硬化剤組成物(ワニス)使用した。必要に応じて溶剤で希釈し、エポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(ISO7628タイプ、厚み0.16mm)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、1.6mm厚の積層板を得た。積層板の銅箔剥離強さ、層間接着力、ガラス転移温度の結果を表4に示した。
【0081】
また、得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、50mm角×2mm厚の試験片を得た。試験片の誘電率及び誘電正接の結果を表4に示した。
【0082】
【表4】