【課題】UV−A波とUV−B波の分離をより的確に行うと共に、UV−B波の紫外線光量の検知をより正確に行うことの可能な半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】受光した光の強度に応じた光電流を出力する第1の光電変換素子80A及び第2の光電変換素子80Bと、第1の光電変換素子80Aの受光面上に設けられた第1のフィルタ30Aと、第2の光電変換素子80Bの受光面上に設けられた第2のフィルタ30Bと、第2のフィルタ30Bに接して配置されかつ第2の光電変換素子80Bの受光面上に設けられた第3のフィルタ32と、を含み、第1の光電変換素子80Aと第2の光電変換素子80Bとの境界近傍において第2のフィルタ30B及び第3のフィルタ32の端部が第1のフィルタ30Aの端部を被覆している。
前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタ、及び前記第3のフィルタの少なくとも1つは、屈折率が互いに異なる高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した多層膜で構成されている
請求項1に記載の半導体装置。
前記第3のフィルタは、前記第2のフィルタの上部に配置されると共に多層膜で構成され、かつ前記高屈折率膜及び前記低屈折率膜のいずれか一方と同じ屈折率を有すると共に前記高屈折率膜及び前記低屈折率膜よりも厚い厚膜層を備える
請求項2に記載の半導体装置。
前記第1の波長領域が可視光の波長領域であると共に前記第2の波長領域が長波紫外線の波長領域であるか、又は、前記第1の波長領域が長波紫外線の波長領域であると共に前記第2の波長領域が可視光の波長領域である
請求項6に記載の半導体装置。
前記第2のフィルタ及び前記第3のフィルタを形成する工程は、前記第1のフィルタの端部から予め定められた距離だけ後退させてレジストによるマスクを前記第1のフィルタ上に形成する工程と、前記レジストを除去することにより行われるリフトオフ工程と、を含む
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1ないし
図7を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10、及び半導体装置10の製造方法について説明する。半導体装置10は、本発明に係る半導体装置を、半導体装置の一例である紫外線受光素子に適用した形態である。
【0022】
ここで、後述するように、半導体装置10(紫外線受光素子)は、第1のフォトダイオード80A、及び第2のフォトダイオード80Bを含んで構成されている。そこで、以下の記載では、半導体装置10において、第1のフォトダイオード80Aが形成される領域を領域Aとし、第2のフォトダイオード80Bが形成される領域を領域Bとし、同じ構成要素のうち、主として領域Aに属する構成要素には符号の末尾にAを付し、主として領域Bに属する構成要素には符号の末尾にBを付して区別することにする。
【0023】
図1に示す仮想線Xは、上記の領域Aと領域Bとを分離する境界線である。
図1に示すように、半導体装置10は、基板12、埋め込み酸化膜14、第1のフォトダイオード80A、第2のフォトダイオード80B(以下、総称する場合は、「フォトダイオード80」)、P側配線層24A、N側配線層26A、P側配線層24B、N側配線層26B、層間絶縁膜28、第1のフィルタ30A、第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32を含んで構成されている。
【0024】
本実施の形態では、一例としてSOI(Silicon On Insulator)基板を用いており、基板12がSOI基板のSi(シリコン)基板、埋め込み酸化膜14がBOX(Buried Oxide)、フォトダイオード80が形成された層がシリコン層に各々対応している。
【0025】
第1のフォトダイオード80Aは、P−拡散層20A、P+拡散層16A、N+拡散層18A、及び素子分離領域22A、22Cを含んで構成されている。フォトダイオード80Aは、照射される紫外線の強度に応じた光電流を出力する光電変換素子である。すなわち、対向配置されたP+拡散層16AとN+拡散層18A、及びP+拡散層16AとN+拡散層18Aと接して配置されたP−拡散層20Aによって横型(ラテラル型)のPN接合形式のフォトダイオードが構成されている。
【0026】
P+拡散層16Aは、シリコン層に比較的高濃度にP型不純物が拡散されて形成された層であり、P側配線層24Aと伴に第1のフォトダイオード80Aのアノード電極を構成している。一方、N+拡散層18Aは、シリコン層に比較的高濃度にN型不純物が拡散されて形成された層であり、N側配線層26Aと伴に第1のフォトダイオード80Aのカソード電極を構成している。
【0027】
P−拡散層20Aは第1のフォトダイオード80Aにおける主たる受光領域であり、シリコン層にP型不純物を比較的低濃度に拡散されて形成されている。第1のフォトダイオード80Aでは、このP−拡散層20Aに形成される空乏層に紫外線が吸収されて、電子−正孔対が発生する。この電子−正孔対を光電流として取り出すことにより、紫外線の光量が測定(検知)される。P−拡散層20Aの厚さは、P+拡散層16A及びN+拡散層18Aよりも薄く、例えば、36nm以下とされる。このように、受光領域となるP−拡散層20Aの厚さを36nm以下とすることで、第1のフォトダイオード80Aは、UV−A波及びUV−B波を含む紫外線の波長より長い波長の光に対する感度を低下させることが可能となる。その結果、第1のフォトダイオード80Aは、紫外線センサとして好適な分光感度特性を備えることができる。
【0028】
素子分離領域22A、22Cは、シリコン酸化膜(SiO
2膜)等の絶縁体で構成され、第1のフォトダイオード80Aの外周を囲むことによって、フォトダイオード80Aを、フォトダイオード80B等の他の素子から絶縁している。第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bは、素子分離領域22Cを間に挟んで、隣接して設けられている。
【0029】
P側配線層24A及びN側配線層26Aは、各々配線L、コンタクトプラグPを含んで構成された配線層であり、第1のフォトダイオード80Aを半導体装置10を構成する他の回路素子、配線等に接続している。なお、
図1では4層配線の例を示しているが、これに限られず、配線層の層数は半導体装置10において必要となる層数としてよい。
【0030】
第2のフォトダイオード80Bは、P−拡散層20B、P+拡散層16B、N+拡散層18B、及び素子分離領域22B、22C、P側配線層24B、及びN側配線層26Bを含んで構成されている。第2のフォトダイオード80Bも、第1のフォトダイオード80A同様、照射される紫外線の強度に応じた光電流を出力する光電変換素子である。従って、同様の構成には、末尾に符号Bを付した同じ数字を付すことによって詳細な説明を省略する。なお、以下では、P側配線層24A、N側配線層26A、P側配線層24B、及びN側配線層26Bを総称して、単に「配線層」という場合がある。また、素子分離領域22A、22B、及び22Cを総称して、「素子分離領域22」という場合がある。
【0031】
層間絶縁膜28は、第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bを覆って形成された絶縁膜であり、シリコン酸化膜等の絶縁体で形成されている。P側配線層24A、N側配線層26A、P側配線層24B、及びN側配線層26Bの各々は、この層間絶縁膜28の内部に形成されている。層間絶縁膜28の厚さは、例えば4層配線の場合4μm程度とされる。
【0032】
第1のフィルタ30Aは、第1のフォトダイオード80Aの上方、すなわち第1のフォトダイオード80Aの光入射側を覆って形成されている。第1のフィルタ30Aは、基本的に可視光を遮断(カット)する機能を有する光学フィルタであるが、半導体装置10では、上記のようにフォトダイオード80自身が紫外線より波長の長い可視領域の光をカットする構造となっている。従って、本実施の形態に係る第1のフィルタ30Aは、紫外光と可視光との境界領域近傍の紫色及び青色の可視光を主としてカットするように構成されている。これは、紫外光と可視光との分離をより確実にするためである。第1のフィルタ30Aによって、第1のフォトダイオード80Aには紫外光の全体(主として、UV−A波とUV−B波)が入射される。つまり、第1のフォトダイオード80Aにより、紫外光の総量が検知される。以下、紫色及び青色の可視光を「PB光」、紫色及び青色の可視光をカットする光学フィルタを、「PBカットフィルタ」という。
【0033】
第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32は、第2のフォトダイオード80Bの上方、すなわち第2のフォトダイオード80Bの光入射側を覆って形成されている。第2のフィルタ30Bは、第1のフィルタ30A同様、基本的に可視光を遮断(カット)する機能を有する光学フィルタである。一方、本実施の形態では、第3のフィルタ32はUV−A波をカットするフィルタ(UV−Aカットフィルタ)とされている。第2のフィルタ30B及び第3のフィルタ32によって、第2のフォトダイオード80Bには、主として紫外光のうちのUV−B波が入射される。つまり、第2のフォトダイオード80Bにより、UV−B波が検知される。
【0034】
図2は、
図1に示す半導体装置10を紙面上方より見た平面図を示している。
図2に示すように、半導体装置10を覆う第2のフィルタ30B及び第3のフィルタ32には開口42が設けられており、開口42から第1のフィルタ30Aが露出する構成となっている。
【0035】
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係る第1のフィルタ30A、第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32(以下、総称する場合は「フィルタ群」)の各々の構成についてより詳細に説明する。本実施の形態では、フィルタ群の各々は、一例として、
図3に示すような多層膜フィルタ90を用いて形成されている。多層膜フィルタ90とは、屈折率が相対的に高い高屈折率膜94と、屈折率が相対的に低い低屈折率膜96とが交互に積層されて形成された光学フィルタである。
【0036】
多層膜フィルタ90を構成する高屈折率膜94の屈折率をn
1、膜厚をd
1、低屈折率膜96の屈折率をn
2、膜厚をd
2とし、カットしたい光の波長域の中心波長をλ
cとすると、高屈折率膜94、及び低屈折率膜96の各々は、以下の(式1)及び(式2)を満たすように構成されている。
n
1・d
1=λ
c/4 ・・・ (式1)
n
2・d
2=λ
c/4 ・・・ (式2)
【0037】
上記(式1)及び(式2)を充足するように高屈折率膜94及び低屈折率膜96を積層して多層膜フィルタ90を構成することで、各層の境界で反射した光が打ち消しあい、中心波長λ
cの光を中心に透過率が減少する。すなわち、カットする光の中心波長をUV−A波帯の略中心波長(例えば、約360nm)としたUV−Aカットフィルタを例にとると、多層膜フィルタ90に入射し、高屈折率膜94と低屈折率膜96との界面で反射されたUV−A波は、位相が反転して弱め合う一方、透過方向に進むUV−B波は位相が揃って強め合う。すなわち、カットする光の中心波長をUV−A波帯の略中心波長としたUV−Aカットフィルタによれば、UV−A波をUV−B波よりも低い透過率で透過させる波長選択性を備えることができる。換言すれば、UV−A波に対する透過率を所定値以下に抑える波長選択性を備えることができる。なお、カットオフする中心波長λ
cは複数設定してもよく、例えばUV−Aカットフィルタの場合は、中心波長λ
cを350nm、及び380nmとすることができる。また、(式1)及び(式2)の右辺はλ
c/4に限られず、λ
c/4の整数倍としてもよい。
【0038】
高屈折率膜94及び低屈折率膜96の屈折率に関しては、高屈折率膜94と低屈折率膜96との屈折率差が0.4以上あり、高屈折率膜94の屈折率は2以下であることが好ましい。この点を勘案して、高屈折率膜94の材料としては、屈折率1.8程度のシリコン窒化膜(Si
3N
4)を好適に用いることができる。低屈折率膜96の材料としては、屈折率1.4程度のシリコン酸化膜を好適に用いることができる。また、高屈折率膜94の材料としては、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ランタン(La2O3)のいずれか一つまたは各材料の混合材等を用いることが出来る。低屈折率膜96の材料としては、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化シリコン(SiO2)や、酸化シリコン(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)の混合材を用いることも可能である。
【0039】
例えば、PBカットフィルタである第1のフィルタ30A及び第2のフィルタ30Bの場合は、シリコン窒化膜(高屈折率膜94)の膜厚を60nm、シリコン酸化膜(低屈折率膜96)の膜厚を75nmとし、5ペアないし10ペア程度積層すればよい。ここで、ペアとは、高屈折率膜94と低屈折率膜96との1対の組合せをいい、ペア数とは、多層膜フィルタ90におけるペアの数をいう。例えば、
図3は5ペアの場合を例示している。一方、UV−Aカットフィルタである第3のフィルタ32の場合は、シリコン窒化膜(高屈折率膜94)の膜厚を40nm、シリコン酸化膜(低屈折率膜96)の膜厚を50nmとし、5ペアないし10ペア程度積層すればよい。
【0040】
なお、上記実施の形態では、高屈折率膜の材料をシリコン窒化膜とする形態を例示して説明したが、これに限られず、例えば屈折率が1.8〜2.2程度の酸化金属膜等を用いてもよい。
【0041】
以下、
図4ないし
図6を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。
図4及び
図6は、半導体装置10の製造方法の一例を示す縦断面図である。本実施の形態では、SOI基板を用いた半導体装置10の製造方法を例示して説明するが、むろんSOI基板を用いない製造方法を採用してもよい。また、配線層は2層配線とした形態を例示して説明する。さらに、本実施の形態においてある層が「他の層上」あるいは「基板上」に形成されるとは、ある層が他の層上、又は基板上に直接形成される場合に限らず、第3の層を介して形成される場合を含む。
【0042】
初めに、シリコンによる基板12上に、埋め込み酸化膜14(BOX)、及びシリコン層15を積層したSOI基板を準備する。本実施の形態では、シリコン層15はP型のシリコンで構成されている。続いて、シリコン層15における、第1のフォトダイオード80AのP−拡散層20Aに対応する領域Aの部分、第2のフォトダイオード80BのP−拡散層20Bに対応する領域Bの部分に、P型不純物を低濃度で拡散するイオン注入処理を実施する。
【0043】
次に、
図4(a)に示すように、シリコン層15に、第1のフォトダイオード80A、及び第2のフォトダイオード80Bの形成領域を囲む素子分離領域22(素子分離領域22A、22B、22C)を形成する。素子分離領域22は、例えば公知のSTI(Shallow Trench Isolation)プロセスを用いて形成することができる。STIプロセスは、シリコン層15に埋め込み酸化膜14に達する溝を形成する工程、この溝にシリコン酸化膜等の絶縁体を埋め込む工程、及びシリコン層15の表面に堆積した不要な絶縁体をCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって除去する工程を含む。なお、公知のLOCOS法(Local Oxidation of Silicon)によって素子分離領域22を形成してもよい。
【0044】
次に、
図4(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて、シリコン層15を部分的にエッチングすることにより、第1のフォトダイオード80AのP−拡散層20Aに対応する領域に凹部44A、第2のフォトダイオード80BのP−拡散層20Bに対応する領域に凹部44Bを各々形成する。本工程により、シリコン層15のP−拡散層20Aに対応する領域、及びP−拡散層20Bに対応する領域における厚さを36nm程度に薄化する。P−拡散層20A、20Bに対応する領域の厚さを36nm以下とすることで、第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bにおいて、UV−A波及びUV−B波を含む紫外線の波長より大きい波長の光に対する感度を低下させることが可能となり、紫外線センサとして好適な分光感度特性を得ることが可能となる。
【0045】
次に、
図4(c)に示すように、公知のイオン注入法により、リン又はヒ素などのV族元素をシリコン層15に注入することにより、第1のフォトダイオード80AのP+拡散層16A、及び第2のフォトダイオード80BのP+拡散層16Bを形成する。その後、公知のイオン注入法により、ボロンなどのIII族元素をシリコン層15に注入することにより、第1のフォトダイオード80AのN+拡散層18A、及び第2のフォトダイオード80BのN+拡散層18Bを形成する。第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bでは、P−拡散層20A、20Bが各々、凹部44A、44Bの形成位置に配置され、P+拡散層16A、N+拡散層18Aの組、及びP+拡散層16B、N+拡散層18Bの組が、各々P−拡散層20A、20Bを挟む位置に配置される。
【0046】
次に、
図4(d)に示すように、CVD法等を用いて、第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bが形成されたシリコン層15の表面にシリコン酸化膜等の絶縁体で構成される層間絶縁膜28を形成する。
【0047】
次に、層間絶縁膜28を貫通させてP+拡散層16A、16B、N+拡散層18A、18Bに達するビアホールを形成した後、該ビアホールを埋めつつ層間絶縁膜上に金属膜を形成し、その後フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて該金属膜を加工し、コンタクトプラグP、配線Lを形成する。以上の工程を配線層分だけ繰り返して、
図5(a)に示すように配線層、すなわち、P側配線層24A、24B、N側配線層26A、26Bを形成する。
図5(a)では2層の配線層を例示しているが、配線層の層数は2層に限られず、半導体装置10の回路素子数等に応じて適宜な層数としてよい。層間絶縁膜28の膜厚は、例えば、配線層の層数が例えば4層の場合で4μm程度とされる。
【0048】
次に、
図5(b)に示すように、PBカットフィルタである第1のフィルタ30Aを形成するための第1フィルタ膜34を、層間絶縁膜28上に形成する。第1フィルタ膜34は、
図3に示すように、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層して形成する(図示省略)。高屈折率膜は、例えば、シラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を材料ガスとして用いたプラズマCVD法によって形成されるシリコン窒化膜で成膜することができる。シランの流量を制御することで、高屈折率膜の屈折率を制御することが可能である。低屈折率膜は、TEOS(Tetraethyl orthosilicate)及び酸素(O
2)を材料ガスとして用いたプラズマCVD法によって形成されるシリコン酸化膜で成膜することができる。シリコン酸化膜で構成される低屈折率膜の屈折率は、1.4程度である。
【0049】
より具体的には、中心波長λ
cをPB光の波長帯の中心波長とし、高屈折率膜の膜厚d
1及び低屈折率膜の膜厚d
2が、それぞれ、上記の(式1)及び(式2)を満たすように、高屈折率膜及び低屈折率膜を成膜する。これにより、可視光域に対する透過率を所定値以下に抑える波長選択性を備えた第1フィルタ膜34が形成される。
【0050】
次に、
図5(c)に示すように、第1フィルタ膜34上にレジスト36を塗布すると共に露光並びに現像を行うことで、主として第1のフォトダイオード80Aを覆うマスクを領域Aに形成する。
【0051】
次に、
図5(d)に示すように、上記マスクを介し、主として第2のフォトダイオード80B上の(領域Bの)第1フィルタ膜34をエッチングにより除去する。本工程により、第1のフィルタ30Aが形成される。その後、
図6(a)に示すように、レジスト36を除去する。
【0052】
次に、
図6(b)に示すように、全面にレジスト38を塗布すると共に露光並びに現像を行うことで、主として第1のフォトダイオード80Aを覆うマスクを領域Aに形成する。その際、
図6(b)に示すように、レジスト38は、レジスト38の端部が第1のフィルタ30Aから予め定められた距離dだけ後退するように形成する。
【0053】
次に
図6(c)に示すように、PBカットフィルタである第2のフィルタ30Bを形成するための第2フィルタ膜35、及びUV−Aカットフィルタである第3のフィルタ32を形成するための第3フィルタ膜40を成膜する。第2フィルタ膜35、及び第3フィルタ膜40は、第1フィルタ膜34同様、高屈折率膜であるシリコン窒化膜と、低屈折率膜であるシリコン酸化膜とを交互に積層して形成する(図示省略)。形成方法の詳細は第1フィルタ膜34と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0054】
次に、
図6(d)に示すように、領域Aにおける第2フィルタ膜35及び第3フィルタ膜40を除去する。本除去工程は、例えばリフトオフによって行うことができる。本工程により、第2のフィルタ30B及び第3のフィルタ32が形成される。ここで、上記の距離dに起因して、第2のフィルタ30Bの端部E1、及び第3のフィルタ32の端部E2が、第1のフィルタ30Aの端部を被覆して(覆って)いる。換言すれば、距離dを変えることによって被覆の程度を制御することができる。以上の工程によって、本実施の形態に係る半導体装置10が製造される。
【0055】
以上、詳述したように、半導体装置10におけるフォトダイオード80Aは紫外線光量の全体を検知し、フォトダイオード80Bは、紫外線のうちのUV−B波を検知する。このことにより、UV−A波とUV−B波の分離をより的確に行うと共に、UV−B波の紫外線光量の検知をより正確に行うことが可能となる。
【0056】
<第1の実施の形態の変形例>
図7を参照して、上記第1の実施の形態の変形例について説明する。
【0057】
上記第1の実施の形態では、第1のフィルタ30A、及び第2のフィルタ30BをPBカットフィルタ、第3のフィルタ32をUV−Aカットフィルタとする形態と例示して説明したが、これに限られない。第1のフィルタ30A、第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32の各々の特性の組み合わせを、
図7に示すような組み合わせとする形態としてもよい。以下、第1のフィルタ30A、第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32の各々の特性の組み合わせを、特性(第1のフィルタ30Aの特性、第2のフィルタ30Bの特性、第3のフィルタ32の特性)と表記する。
【0058】
図7に示す形態1は、第1の実施の形態に係るフィルタの特性の組み合わせ、つまり、フィルタの特性の組み合わせを、特性(PBカット、PBカット、UV−Aカット)とする組み合わせである。
【0059】
形態2は、フィルタの特性の組み合わせを、特性(PBカット、UV−Aカット、PBカット)とする組み合わせ、形態3は特性(UV−Aカット、UV−Aカット、PBカット)とする組み合わせ、形態4は特性(UV−Aカット、PBカット、UV−Aカット)とする組み合わせである。
【0060】
形態2ないし形態4の各々の製造においては、
図5(b)における第1フィルタ膜34、
図6(c)における第2フィルタ膜35、及び第3フィルタ膜40の成膜において、各々の形態に対応する多層膜フィルタを選択すればよい。
【0061】
[第2の実施の形態]
図8を参照して、本実施の形態に係る半導体装置60について説明する。半導体装置60は、上記の半導体装置10(
図1参照)において、フィルタ群(PBカットフィルタ、UV−Aカットフィルタ)の構成を変更した形態である。
【0062】
図8に示すように、半導体装置60は、基板12、埋め込み酸化膜14、第1のフォトダイオード80A、第2のフォトダイオード80B、P側配線層24A、N側配線層26A、P側配線層24B、N側配線層26B、及び層間絶縁膜28を含んで構成されている。以上の構成は半導体装置10と同様なので、同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、半導体装置60では、半導体装置10の第1のフィルタ30A、第2のフィルタ30B、及び第3のフィルタ32に代えて、第1のフィルタ31、及び第2のフィルタ33を含んで構成されている。本実施の形態において、第1のフィルタ31はPBカットフィルタであり、第2のフィルタ33はUV−Aカットフィルタである。つまり、半導体装置60では、半導体装置10において第1のフィルタ30A及び第2のフィルタ30Bの2つに分かれていたPBカットフィルタを一体型の第1のフィルタ31として形成している。フィルタ群このように構成しても、半導体装置60の第1のフォトダイオード80Aには紫外線の全体が入射され、第2のフォトダイオード80Bには紫外線のうちのUV−B波が入射される。
【0064】
従って、本実施の形態に係る半導体装置60によっても、UV−A波とUV−B波の分離をより的確に行うと共に、UV−B波の紫外線光量の検知をより正確に行うことが可能となる。さらに本実施の形態に係る半導体装置60によれば、第1のフィルタ30Aと第2のフィルタ30Bが一体型の第1のフィルタ31とされているので、製造がより容易であるという効果がある。
【0065】
[第3の実施の形態]
図9を参照して、本実施の形態に係る半導体装置70について説明する。半導体装置70は、上記の半導体装置10(
図1参照)において、フィルタ群(PBカットフィルタ、UV−Aカットフィルタ)形成位置を変更した形態である。
図9(a)は、半導体装置70の縦断面図を、
図9(b)は平面図を各々示している。
【0066】
図9(a)に示すように、第1のフォトダイオード80Aの形成領域である領域Aが、断面視で領域Aと領域A’に分割され、領域Aと領域A’との間に、第2のフォトダイオード80Bの形成領域である領域Bが配置されている。領域A及び領域A’に対応して、第1のフィルタ30Aも断面視で第1のフィルタ30Aと、第1のフィルタ30A’に分割されている。第2のフィルタ30Bは、第1のフィルタ30A、30A’に接して層間絶縁膜28上に設けられている。また、第2のフィルタ30B上に、第3のフィルタ32が設けられている。
【0067】
図9(b)に示すように、半導体装置70を平面視すると、第3のフィルタ32に設けられた開口72から第1のフィルタ30A、30A’が露出している。
図9(b)に示す仮想線Yは、第1のフィルタを領域Aと領域A’とに分割する境界線を便宜的に示す線である。そして、第1のフィルタ30A、30A’、及び第2のフィルタ30Bは多層膜フィルタによるPBカットフィルタとされ、第3のフィルタ32は多層膜フィルタによるUV−Aカットフィルタとされている。
【0068】
以上の構成を有する半導体装置70では、フォトダイオード80Aが紫外線光量の全体を検知し、フォトダイオード80Bが紫外線のうちのUV−B波を検知する。このことにより、半導体装置70によっても、UV−A波とUV−B波の分離をより的確に行うと共に、UV−B波の紫外線光量の検知をより正確に行うことが可能となる。さらに、本実施の形態に係る半導体装置70によれば、半導体装置における第1のフォトダイオード80A及び第2のフォトダイオード80Bの形成位置の自由度が増すという効果がある。
【0069】
[第4の実施の形態]
図10を参照して、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。本実施の形態は、上記各実施の形態において、フィルタ群を構成する多層膜フィルタの膜構成を変えた形態である。従って、多層膜フィルタ以外の半導体装置の構成は上記各実施の形態と同じであるので、多層膜フィルタ以外の半導体装置の説明については省略する。
【0070】
図10(a)は、本実施の形態に係る第4のフィルタ92を示す断面図である。第4のフィルタ92は、
図1に示す半導体装置10の第1のフィルタ30A及び第3のフィルタ32の少なくとも一方、
図8に示す第2のフィルタ33、あるいは
図9に示す第1のフィルタ30A(30A’)及び第3のフィルタ32の少なくとも一方に置き換えて適用される。
図10(a)に示すように、第4のフィルタ92は、高屈折率膜94と低屈折率膜96とが所定のペア数(
図10(a)では、5ペアの場合を例示している)積層された積層体の一部に、高屈折率膜94及び低屈折率膜96より厚い膜厚の厚膜層98を備えている。
【0071】
厚膜層98は、高屈折率膜94及び低屈折率膜96の層厚の2倍〜2.5倍程度の厚さを有していることが好ましい。例えば、高屈折率膜94の層厚を45nm程度、低屈折率膜96の層厚を40nm程度とした場合、厚膜層98の層厚を、例えば100nm程度とすることができる。
【0072】
厚膜層98は、低屈折率膜96と同じ屈折率を有していることが好ましい。すなわち、厚膜層98は、低屈折率膜96と同じシリコン酸化膜で構成され得る。また、厚膜層98は、
図10(a)に示すように、第4のフィルタ92の最上部(すなわち、光入射側の端部)に配置されることが好ましい。
【0073】
上記の構成を有する第4のフィルタ92は、上記各実施の形態におけるUV−Aカットフィルタ又はPBカットフィルタを構成することができる。むろん、必要に応じ第4のフィルタ92は、UV−B波をカットするUV−Bカットフィルタを構成することもできる。第4のフィルタ92は、厚膜層98を備えることで、厚膜層98を備えない上記各実施の形態に係るフィルタと比較して、UV−A波に対するカット性能(UV−B波に対する透過性能)、あるいはUV−B波に対するカット性能(UV−A波に対する透過性能)を向上させることができる。
【0074】
以下、UV−Bカットフィルタ(UV−A透過フィルタ)を例にとって、第4のフィルタ92の特性について説明する。
図10(b)は、厚膜層98を備えない比較例に係るフィルタの透過率及び反射率の波長特性をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。一方、
図10(c)は、厚膜層98を備える第4の実施の形態に係る第4のフィルタ92によるUV−A透過フィルタの透過率及び反射率の波長特性をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。なお、
図10(b)及び
図10(c)のいずれの場合においても、高屈折率膜94の層厚を45nm、低屈折率膜96の層厚を40nm、高屈折率膜94の屈折率を1.8、低屈折率膜96の屈折率を1.4とした。また、厚膜層98の層厚を100nm、厚膜層98の屈折率を低屈折率膜96と同じ1.4とした。また、厚膜層98を第4のフィルタ92の最上部(光入射側の端部)に配置した。
【0075】
図10(b)に示すように、厚膜層98を備えない比較例に係るフィルタによれば、UV−A波の波長領域である波長400nm付近において透過率が低下しており(
図10(b)中の矢印Dで示す部分)、この波長領域における反射率が0.3以上となっている。一方、
図10(c)に示すように、厚膜層98を備える第4のフィルタ92よれば、UV−A波の波長領域である波長400nm付近において透過率は低下しておらず、この波長領域における反射率が0.1以下に抑えられている。このように、厚膜層98を有する第4のフィルタ92によれば、厚膜層98を備えない比較例に係るフィルタと比較して、UV−A波に対する透過性能を向上させることができる。
【0076】
なお、上記各実施の形態では可視光域の光をカットするフィルタとして、主に紫色と青色の光をカットするPBカットフィルタを例示して説明たが、これに限られず、例えばさらに長波長側の可視光をカットするフィルタとしてもよい。