【解決手段】研削された一方の面を有する半導体基板WAFの他方の面と支持基板22の一方の面とが接着された対象基板OBの支持基板22の他方の面側に接触して支持基板22の他方の面を洗浄する洗浄部26と、多孔性物質により構成された吸着部を備えると共に吸着部により対象基板OBの半導体基板WAFの一方の面側を保持する置載部18と、を含む。
研削された一方の面を有する半導体基板の他方の面と支持基板の一方の面とが接着された対象基板の前記支持基板の他方の面側に接触して前記支持基板の他方の面を洗浄する洗浄部と、
多孔性物質により構成された吸着部を備えると共に前記吸着部により前記対象基板の前記半導体基板の一方の面側を保持する置載部と、
を含む半導体製造装置。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を製造する半導体製造工程では、各工程で発生する異物(パーティクル)を、各工程に適した異物除去装置を用いて除去することが行われてきた。例えば、リソグラフィ工程の前工程などでは、ブラシを用いて半導体基板(ウェハ)の表面に付着したパーティクルを除去するブラシスクラバが使用されてきた。
【0003】
他方、近年では、製造される半導体素子の特性上等の理由から、半導体素子が形成されるウェハの薄型化の要求が高まっている。そのような半導体素子の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のウェハの厚さ(縦)方向に電流を流す電力用半導体素子がある。IGBT等の電力用半導体素子では、ウェハの裏面に電極を有するので、ウェハの厚さそのものによる抵抗成分が無視できない。そのため、ウェハの厚さに起因する半導体装置のオン特性あるいはオフ特性の劣化等を回避するように、ウェハに薄化加工を施し、ウェハの厚さをより薄くすることが求められている。
【0004】
ウェハの薄化加工の一例として、半導体素子が形成されたウェハの表面に支持体を貼り合わせた後、ウェハの裏面を研削することによりウェハを薄膜化する技術がある。これは、ウェハを薄膜化(例えば、100μm以下)すると、ウェハの自重により撓みが発生し、ハンドリング(取り扱い)が困難になる等の理由による。この薄膜化技術において、研削を行った後に支持体が貼り合わされていたウェハの表面に付着した糊剤などを除去する異物除去装置として、不活性ガスと洗浄液との混合物(2流体)をウェハの表面に吹き付けることで除去するジェットスクラバが知られている。
【0005】
上記従来技術に関連して、特許文献1には、支持基板でウェハを保持し、ウェハの裏面を研削することにより60μm程度の厚さとした薄型ウェハを用いてIGBTを形成する半導体素子の製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、回転ブラシを用いたスクラバ洗浄装置が開示されている。特許文献2に開示されたスクラバ洗浄装置では、オゾン水噴出を伴った回転ブラシによるスクラブ洗浄を採用することにより有機物の除去が容易になるとされている。特許文献2に開示されたスクラバ洗浄装置では、ウェハ裏面を真空吸着するスピンチャックを支持台に配置してウェハを置載している。
【0007】
一方、特許文献3には、ウェハの裏面を研削した後、ウェハの表面に不活性ガスと洗浄液の混合物(2流体)を供給して、支持体が接着されていたウェハの表面に付着したパーティクルを除去する洗浄装置(ジェットスクラバ)が開示されている。特許文献3に開示されたジェットスクラバでは、洗浄工程においてウェハを保持し回転させるチャックとしてポーラスチャック、又はスピンチャックを用いている。
【0008】
ポーラスチャックとは、ウェハを置載するステージの置載面にポーラス(多孔質体)を配置し、該多孔質体を介して真空ポンプなどによりウェハに負圧を印加することによりウェハを吸着する装置(真空チャック)である。また、ここでいうスピンチャックとは、ウェハを置載するステージの置載面に真空ポンプ等に接続された吸引口を設け、この吸引口を介してウェハに負圧を印加することによりウェハを吸着する真空チャックである。つまり、従来技術においては、ウェハの裏面を研削した後のウェハ表面を洗浄するジェットスクラバのウェハの裏面吸着には、ポーラスチャックとスピンチャックとが用途等に合わせて適宜使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1ないし
図5を参照して、本実施の形態に係る半導体製造装置及び半導体製造方法について詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る半導体製造装置10(異物除去装置)は、スクラブ部26、洗浄液用配管16、真空チャック30、及び制御部40を備えている。
図1は、異物除去処理(スクラバ洗浄処理)の対象となる支持基板22とウェハWAFとが貼り合わされた処理対象基板OBが、真空チャック30に置載された状態を図示している。
ウェハWAFは、例えばシリコンウェハであり、支持基板22は、例えば石英ガラス製のサポートガラスである。
【0019】
スクラブ部26は、ブラシ12、及び押圧部14を含んで構成されている。ブラシ12は、処理対象基板OBにおける支持基板22の表面、すなわちウェハWAFが保持された面とは反対側の面に接触しつつ擦り洗いを行い、支持基板22の表面に付着した異物を除去するためのものである。その際、異物の除去をより確実に行うために、ブラシ12には押圧部14から押圧Pが印加され、ブラシ12と支持基板22の表面との密着がより強固にされる。スクラブ部26は、図視しない駆動部によって支持基板22の径方向に移動可能なように構成されており、スクラブ部26の移動によって支持基板22の表面全体に対し擦り洗いが行われる。
【0020】
洗浄液用配管16は、図示しない洗浄液供給源からの洗浄液を通過させ、支持基板22の表面に供給する部位である。洗浄液用配管16の先端には図示しないノズルが設けられており、該ノズルを介して洗浄液が支持基板22の表面にシャワー状に供給される。このように、本実施の形態では、ブラシ12による擦り洗いは、ノズルによって支持基板22の表面に洗浄液を供給しつつ行われる。
【0021】
真空チャック30は、置載部18(ステージ)とチャック駆動部32を備え、置載部18に処理対象基板OBを置載する。また、チャック駆動部32は、置載部18と置載部18に置載された処理対象基板OBを所定の速度で回転できる。
【0022】
制御部40は、スクラブ部26と真空チャック30を制御する機能を有し、処理対象基板OBに付着した異物を効果的に除去可能な押圧P並びにスクラブ部26の移動をスクラブ部26に指示すると共に処理対象基板OBを最適な速度で回転させる制御を真空チャック30に対して行うことが可能である。
【0023】
図2を参照して、真空チャック30の構成についてより詳細に説明する。
図2(a)は、置載部18を
図1の紙面上方より見た斜視図であり、
図2(b)は、真空チャック30の縦断面図である。
図2(a)に示すように、置載部18は多孔質体24を備え、置載部18の置載面S(吸着面)と面一に多孔質体24の表面が露出している。多孔質体とは、一般にセラミック多孔質焼結体のことをいい、セラミック粒子を高温で焼き固めたものである。多孔質体は気孔を有し通気性がありことから、チャックの吸着面に利用されている。
【0024】
図2(b)に示すように、多孔質体24には、図示しない真空装置(真空ポンプ等)と接続された真空ライン20が連通されている。そして、真空装置によって真空引きし、多孔質体24に負圧を与えることによって処理対象基板OBを吸着する。
【0025】
次に、半導体製造装置10による半導体製造方法について説明する。本実施の形態では、本発明に係る半導体製造方法を、IGBTに代表される縦型の半導体素子の製造に適用した形態を例示して説明する。
【0026】
まず、
図3を参照して、本実施の形態に係る半導体素子100の一例であるトレンチゲート構造のIGBTについて説明する。
図3は、本実施の形態に係る半導体素子100の縦断面図を示している。
図3に示すように、半導体素子100は、トレンチゲート124、ゲート酸化膜122、N型エミッタ層118、P型チャネル層120、中間膜116、表面金属電極112、及び保護膜114を含む基板の厚さ方向に流れる電流を制御する能動領域(絶縁ゲート構造)を備えている。また、該能動領域の下部には、N型基板126、バッファ層(フィールド・ストップ層:FS層)128、P型コレクタ層130、及び裏面金属電極132を備えている。N型基板126は、一例としてシリコン基板を用いている。本実施の形態に係るN型基板126は、最終的に60μm〜80μm程度に薄膜化される。
【0027】
半導体素子100では、トレンチゲート124に電圧を印加することでP型チャネル層120を経由してN型エミッタ層118からN型基板126(ドリフト層として機能する)に電子が注入され、P型コレクタ層130から正孔がN型基板126に注入される。これにより、N型基板126において伝導度変調効果が起こり、抵抗が大幅に減少して大電流を流すことが可能となる。この際バッファ層128はN型基板126中に広がった空乏層を止める機能を有している。
【0028】
図4は、本実施の形態に係る半導体製造方法を示すフローチャートである。
【0029】
まず、工程P100で、ウェハWAF(半導体基板)の表面に、能動素子である回路素子(IGBT)を形成する(能動領域形成工程)。ウェハWAFは、一例としてN型のシリコン基板を用いている。しかしながら、これに限られずGaAs基板等の他の基板を用いてもよい。
【0030】
次に、工程P102で、支持基板22をウェハWAFの表面に貼り合わせる(支持基板接着工程)。支持基板22に貼り合わせるウェハWAFの面は、工程P100で回路素子が形成された側の面である。以下、ウェハWAFの回路素子が形成された面を「回路面」、回路面と反対側の面を「裏面」という場合がある。
【0031】
次に、工程P104で、ウェハWAFの裏面を機械的に研削し、ウェハを薄膜化する(裏面研削工程)。この研削は、例えば、インフィード式のグラインダ装置等を用いて行うことができる。
【0032】
次に、工程P106で、支持基板22の表面に付着したシリコンの削れカス等の異物を除去する(支持基板表面洗浄工程)。本工程において、本発明に係る半導体製造装置10(異物除去装置)が使用される。
【0033】
次に、工程P108で、工程P104におけるウェハWAFの裏面研削により生じたダメージ層(切削痕)をウェットエッチング等を用いて除去し、鏡面加工する(裏面ウェットエッチング工程)。本ウェットエッチングの際の薬液としては、例えば、弗酸、硝酸、及びリン酸を含む混合薬液(エッチング液)を用いることができる。
【0034】
次に、工程P110で、ウェハWAFの裏面より不純物を注入する(裏面不純物注入工程)。本工程では、まず、ウェハWAFの裏面から、例えばリン(31P+)を数百keVの加速エネルギーでイオン注入してバッファ層(フィールドストップ層)128を形成する。続けて、ウェハWAFの裏面から、例えばボロン(11B+)を数十keVの加速エネルギーでイオン注入し、P型コレクタ層130を形成する。
【0035】
次に、工程P112で、工程P110においてウェハWAFの裏面から注入された不純物を活性化させる(裏面不純物活性化工程)。本工程は、例えば不純物に対するレーザアニール処理等によって行われる。
【0036】
次に、工程P114で、ウェハWAFの裏面に裏面金属電極132を形成する(裏面金属電極形成工程)。
【0037】
以上の工程により、本実施の形態に係る半導体素子(IGBT)が回路面に形成された、ウェハレベルの半導体素子が完成する。その後はダイシング等を行って、適宜個別の半導体素子のチップに個片化する。
【0038】
次に、
図5を参照して、本実施の形態に係る半導体製造装置10の作用について説明するが、その前に、
図6ないし
図8を参照して比較例に係る半導体製造装置(異物除去装置)の問題点について説明する。
【0039】
図6に示すように、比較例に係る半導体製造装置50は、スクラブ部26、洗浄液用配管16、及び真空チャック70を備えている。
図6は、半導体製造装置50によるスクラバ洗浄処理の対象となる処理対象基板OBが、真空チャック70に置載された状態を図示している。半導体製造装置50は、
図1に示す半導体製造装置10における真空チャック30を真空チャック70に変えた形態である。従って、真空チャック70以外の構成は、半導体製造装置10と同様であるので、同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
真空チャック70は、置載部52(ステージ)を備え、置載部52に処理対象基板OBを置載する。
【0041】
図7(a)は、置載部52を
図6の紙面上方より見た斜視図を、
図7(b)は、真空チャック70の縦断面図を各々示している。
図7(a)に示すように、置載部52の置載面Sには溝56が設けられている。
図7(b)に示すように、溝56は、図示しない真空装置(真空ポンプ等)に接続された真空ライン54と連通しており、真空ライン54を真空引きすることにより溝56が真空状態とされ、処理対象基板OBが置載面Sに真空吸着される。なお、溝56の幅は、一例として約2mmである。
【0042】
半導体製造装置50は、上記半導体製造方法の工程P106の支持基板表面洗浄工程において使用される。すなわち、当該工程において、半導体製造装置50により、支持基板22の表面に付着したシリコンの削れカス等の異物を除去するスクラバ洗浄処理が行われる。このスクラバ洗浄処理は、支持基板22の表面に洗浄液を流しつつ、ブラシ12をウェハWAF表面に押圧することでウェハWAFの表面の洗浄を行う処理である。
【0043】
図8を参照して、比較例に係るスクラバ洗浄処理についてより詳細に説明する。
図8(a)は、上記工程P104の裏面研削工程終了後、処理対象基板OBを置載部52上に設置した状態を示している。この状態においては、異物G(シリコンの削れカス等)が支持基板22の表面に付着している。上記工程P106では、
図8(a)の状態の処理対象基板OBに対し半導体製造装置50を用いたスクラバ洗浄処理が行われる。
【0044】
図8(b)は、スクラバ洗浄処理後の処理対象基板OBの状態を示している。
図8(b)に示すように、この状態において、ウェハWAFの裏面には、置載部52の溝56に沿ってマイクロクラックMが発生している。スクラバ洗浄処理において処理対象基板OBを真空チャック70に真空吸着した際には、ブラシ12から処理対象基板OBに対し押し付ける力が働く。真空チャック70により強固に真空吸着されたウェハWAFの裏面が、ブラシ12により置載面Sにさらに押し付けられる。このことと、置載面Sの一部の領域に配置された幅が約2mmの溝56に形成される真空により処理対象基板OBを吸着固定するために真空吸着力を高める必要があるということが相乗し、微小な傷、すなわちマイクロクラックMが発生する。以上のようなメカニズムでマイクロクラックMが発生することが、本発明者によって明らかにされた。
【0045】
次に、工程P108においてウェハWAFの裏面に対しウェットエッチング処理(バックエッチング)が行われる。ここで、本工程において、真空チャック70(スピンチャック)の置載面Sの状態を反映した凹凸が発生するという問題が、本発明者により明らかにされた。これは、スクラバ洗浄処理において発生したウェハWAF裏面のマイクロクラックMにウェットエッチング処理におけるエッチング液が浸透し、マイクロクラックM及びその近傍の領域を侵食、拡大して凹部C(チャック痕)を生ずるためと考えられる。本発明者の測定によると、凹部Cの深さは約1μmであることがわかった。
【0046】
図8(d)に、ウェットエッチング処理後のウェハWAFの裏面の状態を示す。凹部Cは、真空チャック70の置載面SがウェハWAFと接触した箇所に生じるため、置載面SとウェハWAFとが接触する接触領域52Sにおいて、溝56の形状がウェハWAFの裏面に転写されている。
【0047】
本実施の形態に係る半導体製造装置10は、比較例に係る半導体製造装置50の上記問題、すなわちチャック痕の発生を抑制することを目的としている。
【0048】
図5は、半導体製造装置10を用いた場合のスクラバ洗浄処理を説明する図である。
図5(a)は、上記工程P104の裏面研削工程終了後、処理対象基板OBを置載部18上に置載した状態を示している。この状態においては、異物G(シリコンの削れカス)が支持基板22の表面に付着している。
図5(a)の状態の処理対象基板OBに対し、上記工程P106で、半導体製造装置10を用いたスクラバ洗浄処理が行われる。
【0049】
図5(b)は、スクラバ洗浄処理後の処理対象基板OBの状態を示している。
図5(b)に示すように、この状態において、ウェハWAFの裏面には、マイクロクラックMが発生していないか、あるいは発生しているとしてもごく微細である。これは、置載部18に配置された多孔質体24には気孔28(吸着孔)が存在するものの、この気孔の直径が、例えば10μm〜20μmと非常に微細であるため、スクラバ洗浄処理において、処理対象基板OBを真空チャック30に真空吸着した状態でブラシ12から処理対象基板OBに対し押し付ける力が働いても、圧力が分散される。さらに、置載面Sの外縁に隣接する領域に接して配置された多孔性物質の全面が、処理対象基板OBのウェハWAFの裏面を真空吸着するため、真空吸着力を低くすることが可能となるためである。
【0050】
従って、工程P108においてウェハWAFの裏面に対しウェットエッチング処理(バックエッチング)が行われても、マイクロクラックMが微細であるため、マイクロクラックMにエッチング液が浸透し、マイクロクラックMを侵食することが極力抑えられる。そのため、
図5(c)に示すように、ウェハWAFの裏面における凹部C(チャック痕)の発生が抑制され、このことにより、ウェハWAFの外見検査において不良になる率が抑制される。
【0051】
すなわち、本実施の形態に係る半導体製造装置、及び半導体製造方法によれば、ウェハWAFの裏面を保持する置載部に多孔性物質(多孔質体)で構成された真空吸着部を備えることで、圧力を分散しつつ、真空吸着力を低くし、置載面の全体でウェハWAFの裏面を真空吸着することが可能となる。そのため、ブラシによる洗浄時に十分な吸着力が確保でき、かつブラシがウェハWAFを置載部に押し付けたとしても、ウェハWAFの裏面に生じる微細な傷の発生を抑制できるという効果が得られる。このことにより、続いて行われるウェットエッチング処理において、ウェハWAFの裏面に凹凸(凹部C、チャック痕)が発生することが抑制されるという効果を奏する。