特開2017-214244(P2017-214244A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-214244表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法、及び表面修飾ナノダイヤモンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-214244(P2017-214244A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法、及び表面修飾ナノダイヤモンド
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/25 20170101AFI20171110BHJP
【FI】
   C01B31/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-109142(P2016-109142)
(22)【出願日】2016年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彩香
(72)【発明者】
【氏名】相川 達男
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 真
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有都
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA04
4G146AA15
4G146AB04
4G146AC02B
4G146AC15A
4G146AC15B
4G146AC16B
4G146AD15
4G146AD20
4G146AD26
4G146AD40
4G146BC12
4G146CB09
4G146CB11
4G146CB14
4G146CB22
4G146CB35
(57)【要約】
【課題】本発明は、塩素導入(塩素化)を必要とせず、工程が少なく簡便な方法で目的とする表面修飾基(末端ビニル基、末端エポキシ基)を導入することができる表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む。また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程、及び前記ビニル基をエポキシ化することにより、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項2】
表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程、及び前記ビニル基をエポキシ化することにより、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項3】
前記両末端にビニル基を有する化合物を反応させる前に、前記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドを熱酸化処理する工程を含む請求項1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項4】
前記の表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を、ナノダイヤモンドの解砕及び/又は粉砕処理とともに行う請求項1〜3の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項5】
前記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドとして、爆轟法ナノダイヤモンド又は高温高圧法ナノダイヤモンドを使用する請求項1〜4の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【請求項6】
前記両末端にビニル基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1〜5の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法。
【化1】
[式中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す]
【請求項7】
表面に水酸基、及び末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項8】
前記末端がビニル基である表面修飾基が、下記式(2)で表される基である請求項7に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【化2】
[式(2)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(2)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【請求項9】
前記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率が、0.01〜20%である請求項7又は8に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項10】
表面に水酸基、及び末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がエポキシ基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項11】
前記末端がエポキシ基である表面修飾基が、下記式(3)で表される基である請求項10に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【化3】
[式(3)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(3)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【請求項12】
前記末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率が、0.01〜20%である請求項10又は11に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法、及び表面修飾ナノダイヤモンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノダイヤモンドは、比表面積が非常に大きい超微粒子のダイヤモンドであり、高い機械的強度と電気絶縁性、及び優れた熱伝導性を有する。また、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性も有する。そのため、研磨材、導電性付与材、絶縁材料、消臭剤、抗菌剤等として使用される。
【0003】
ナノダイヤモンドは、一般的に、爆轟法により合成される。爆轟法で得られるナノダイヤモンドは凝着体を形成している場合が多く、該凝着体を、ビーズミル等の粉砕機を用いた解砕処理に付することで粒子径D50(メディアン径)が10nm未満のいわゆる一桁ナノダイヤモンドが得られる(特許文献1、2)。
【0004】
上記ナノダイヤモンドの特性を活かしながら、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング材(例えば、抗菌コーティング材、消臭コーティング材)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等の種々のアプリケーションへ展開するために、ナノダイヤモンドに目的の表面修飾基を導入することが行われている。
【0005】
ナノダイヤモンドに表面修飾基を付与する方法としては、ナノダイヤモンド表面を水素化し、次に塩素を導入(塩素化)した後、目的の表面修飾基を有するアルコールと反応(脱塩素化)する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−001983号公報
【特許文献2】特開2010−126669号公報
【特許文献3】特表2003−527285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に記載の方法では、ナノダイヤモンド表面に塩素を導入する必要があり、毒ガスである塩素または、腐食性の強い塩酸を扱う必要がある。また、ナノダイヤモンド表面を水素化し、塩素化した後にアルコール等と反応(脱塩素化)させる必要があり、ナノダイヤモンドに表面修飾基を付与するための工程が多い。
【0008】
また、特許文献3に記載の方法で得られる表面修飾ナノダイヤモンドは、ダイヤモンドを水素含有環境内で約700〜1200℃という高温で加熱する工程(水素化工程)を含む([0057]〜[0059])。そのため、ナノダイヤモンド表面に存在している水酸基は、ほとんどが水素化されており、表面修飾基導入後のナノダイヤモンド表面には水酸基はほとんど存在していないと考えられる。
【0009】
上記ナノダイヤモンドの特性を付与し、長期にわたって特性を保持するために、ナノダイヤモンドの特性を付与したい母材と反応して強固に結合するための表面修飾基をナノダイヤモンドに付与することが行われている。上記表面修飾基としては、ビニル基やエポキシ基を導入することが特に有用である。
【0010】
表面修飾基としてビニル基やエポキシ基を有する場合、このビニル基やエポキシ基と研磨剤、コーティング材等の母材となる他の化合物を反応させることにより、容易にナノダイヤモンドと他の化合物を結合させることができる。さらに、このようなビニル基やエポキシ基を有しつつ、ナノダイヤモンド表面に水酸基を有することにより、水酸基特有の水分散性が良く、水への親和性が良い等の機能をナノダイヤモンドに付与することができる。
【0011】
従って、本発明の目的は、塩素導入を必要とせず、工程が少なく簡便な方法で目的とする表面修飾基を導入することができる表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、表面に一定の割合の水酸基を残しつつ、表面に特定の割合の表面修飾基を導入した表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンドと両末端ビニル化合物を反応させることで、ナノダイヤモンド表面にビニル基を導入することができ、さらにこのビニル基をエポキシ化することでエポキシ基を導入することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程、及び前記ビニル基をエポキシ化することにより、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を含む表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記両末端にビニル基を有する化合物を反応させる前に、前記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドを熱酸化処理する工程を含む前記の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記の表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程を、ナノダイヤモンドの解砕及び/又は粉砕処理とともに行う前記の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドとして、爆轟法ナノダイヤモンド又は高温高圧法ナノダイヤモンドを使用する前記の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記両末端にビニル基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である前記の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法を提供する。
【化1】
[式中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す]
【0019】
また、本発明は、表面に水酸基、及び末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記末端がビニル基である表面修飾基が、下記式(2)で表される基である前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【化2】
[式(2)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(2)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【0021】
また、本発明は、前記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率が、0.01〜20%である前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【0022】
また、本発明は、表面に水酸基、及び末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がエポキシ基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【0023】
また、本発明は、前記末端がエポキシ基である表面修飾基が、下記式(3)で表される基である前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【化3】
[式(3)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(3)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【0024】
また、本発明は、前記末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率が、0.01〜20%である前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法は、上記構成を有することで、塩素導入を必要とせず、工程が少なく簡便な方法で目的とする表面修飾基(ビニル基、エポキシ基)を導入することができる。また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、表面に特定の割合の水酸基、及び表面修飾基(ビニル基、エポキシ基)を有するため、研磨剤、コーティング材等の母材となる他の化合物を反応性の良さを有しつつ、表面の水酸基特有の水分散性が良く、水への親和性が良いという機能を付与することができる。
【0026】
また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法で得られた表面修飾ナノダイヤモンド、及び本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、母材となる他の化合物との高い反応性を有し、様々な化合物と反応させることにより、例えば、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング材(例えば、抗菌コーティング材、消臭コーティング材)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】調製例1、実施例1及び2で得られたナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを示す図である。
図2】調製例1、実施例3〜6で得られたナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを示す図である。
図3】調製例1、実施例1及び2で得られたナノダイヤモンドのTGA曲線を示す図である。
図4】調製例1、実施例3〜6で得られたナノダイヤモンドのTGA曲線を示す図である。
図5】実施例1で得られたナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを示す図である。
図6】実施例9で得られたナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを示す図である。
図7】実施例1で得られたナノダイヤモンドの固体13C−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法]
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程(表面修飾基導入工程)を含む。また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を反応させて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程(表面修飾基導入工程)、及び前記ビニル基をエポキシ化することにより、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得る工程(エポキシ化工程)を含む。
【0029】
(表面修飾基導入工程)
表面修飾基導入工程は、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドの水酸基と両末端にビニル基を有する化合物の一方のビニル基を反応させる工程であり、例えば下記式で表される。すなわち、ナノダイヤモンド表面の水酸基と両末端にビニル基を有する化合物の一方のビニル基が反応する。
【化4】
[式中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。NDはナノダイヤモンドを表す]
【0030】
上記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドとしては、例えば、爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)や、高温高圧法ナノダイヤモンド(すなわち、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド)を使用することができる。本発明においては、なかでも、一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルであり、分散性に優れる点で、爆轟法ナノダイヤモンドを使用することが好ましい。また、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドは、反応性に優れ、効率よく表面修飾基を導入できる点から、粉体状であることが好ましい。
【0031】
前記爆轟法には、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法が水冷式爆轟法よりも一次粒子が小さいナノダイヤモンドを得ることができるうえで好ましい。また、爆轟は大気雰囲気下で行っても良く、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。従って、上記表面修飾工程に付すナノダイヤモンドは、爆轟法ナノダイヤモンド、すなわち爆轟法によって生成したナノダイヤモンドが好ましく、より好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンドである。
【0032】
上記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は、例えば5000nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下である。ナノダイヤモンドの粒子径D50の下限は、例えば1nmである。
【0033】
上記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドとしては、市販品を用いることもでき、商品名「NanoAmando」(株式会社ナノ炭素研究所社製)、超分散ナノダイヤモンド(株式会社ダイセル製)等を使用することができる。
【0034】
上記表面に水酸基を有するナノダイヤモンドは、水酸基以外にも、カルボキシル基等のCOO構造をもつ官能基、メチル基、エチル基、プロピル基、アミノ基等の表面官能基を有していてもよい。また、ナノダイヤモンドは、グラファイト(黒鉛)等の不純物を含有している場合もある。よって、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドを熱酸化処理する工程を含むことが好ましい。熱酸化処理する工程を含む場合、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドに含まれるグラファイト(黒鉛)等の不純物を除去でき、また、メチル基、エチル基、メチン基等の表面官能基を除去、若しくは水酸基に変換してナノダイヤモンドの表面官能基全体における水酸基の割合を高くすることができる。表面官能基全体における水酸基の割合を高くすることにより、表面修飾基の導入量を高くすることができる。
【0035】
上記熱酸化処理における温度は、例えば温度200〜600℃(好ましくは300〜500℃)であり、処理時間は、例えば1〜20時間(好ましくは2〜10時間)である。熱酸化処理には、例えば、マッフル炉等を用いることができ、空気雰囲気下以外にも窒素雰囲気下で行ってもよい。
【0036】
上記両末端にビニル基を有する化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
[式(1)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す]
【0037】
式中のXは、好ましくは直鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数2〜18のアルキレン基、さらに好ましくは直鎖状の炭素数3〜16のアルキレン基、特に好ましくは直鎖状の炭素数4〜12のアルキレン基である。
【0038】
上記両末端にビニル基を有する化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,16−ヘプタデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,18−ノナデカジエン等が挙げられる。
【0039】
上記反応における両末端にビニル基を有する化合物の使用量は、ナノダイヤモンド100重量部に対して、例えば200〜10000重量部程度、好ましくは300〜5000重量部、より好ましくは500〜2000重量部である。両末端にビニル基を有する化合物を上記範囲で使用すると、反応性良くナノダイヤモンド表面に両末端にビニル基を有する化合物由来のアルケニル基を導入することができる。また、両末端のビニル基両方が、ナノダイヤモンドと反応することを抑制することができる。
【0040】
上記反応は、例えば、表面に水酸基を有するナノダイヤモンドと両末端にビニル基を有する化合物を、加熱、撹拌することにより行うことができる。反応は溶媒中にナノダイヤモンドを分散させて行ってもよく、使用する溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、キシレン等が挙げられる。
【0041】
反応温度は、例えば室温〜200℃程度(好ましくは50〜150℃)である。反応時間は、例えば1〜50時間(好ましくは2〜30時間)である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。また、反応雰囲気は、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0042】
上記反応は、超音波処理、ビーズミリング等によりナノダイヤモンドの解砕及び/又は粉砕処理とともに行うことが、ナノダイヤモンドの一次粒子表面に存在する水酸基と両末端にビニル基を有する化合物を効率良く反応させることができ、得られる表面修飾ナノダイヤモンドにおいて表面修飾基の導入量を高くすることができる点で好ましい。
【0043】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、遠心分離、抽出、洗浄、中和等や、これらを組み合わせた手段により精製処理を施してもよい。遠心分離の条件としては、例えば回転数200〜50000rpm(好ましくは500〜30000rpm)、例えば遠心力100〜100000g(好ましくは500〜50000g)である。洗浄に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、キシレン等が挙げられ、これらの溶媒で複数回洗浄を行ってもよく、洗浄の際に超音波処理を行ってもよい。
【0044】
また、精製処理後は乾燥処理を施してもよい。乾燥処理を施すことにより、本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)の粉体が得られる。乾燥処理の手法としては、例えば、減圧加熱乾燥(減圧下で噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、減圧下でエバポレーターを使用して行う蒸発乾固が含まれる)等が挙げられる。
【0045】
(エポキシ化工程)
上記表面修飾基導入工程にて、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得た後、当該ビニル基をエポキシ化することにより、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドを得ることができる。当該反応は、例えば、下記式で表される。
【化5】
[式中のXは、式(1)中のXと同じである。NDはナノダイヤモンドを表す]
【0046】
上記エポキシ化としては、一般的なオレフィンのエポキシ化の手法を用いることができ、例えば過酸等の酸化剤を用いてオレフィンをエポキシドに変換する方法が挙げられる。用いられる過酸としては、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、ジメチルジオキシラン等が挙げられる。過酸等の酸化剤の使用量は、エポキシ化に十分な量であればよく、ナノダイヤモンド100重量部に対して、例えば50〜3000重量部程度、好ましくは100〜1000重量部である。
【0047】
エポキシ化は、例えばジクロロメタン等の溶媒にナノダイヤモンドを分散させ、過酸等の酸化剤を加えて撹拌することにより行うことができる。エポキシ化の反応温度は、例えば−20〜50℃程度(好ましくは−10〜30℃)である。エポキシ化の反応時間は、例えば1〜50時間(好ましくは2〜30時間)である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0048】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、遠心分離、抽出、洗浄、中和等や、これらを組み合わせた手段により精製処理を施すことが好ましい。遠心分離の条件、洗浄に用いる溶媒は、両末端にビニル基を有する化合物における反応で述べたとおりである。また、精製処理後は乾燥処理を施してもよい。乾燥処理を施すことにより、本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)の粉体が得られる。乾燥処理の手法は、上記表面修飾基導入工程で述べたとおりである。
【0049】
[表面修飾ナノダイヤモンド]
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)は、表面に水酸基、及び末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である。本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、例えば上記本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法で得られる。
【0050】
上記末端がビニル基である表面修飾基は、例えば下記式(2)で表される。
【化2】
[式(2)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(2)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【0051】
式(2)中のXは、好ましくは直鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数2〜18のアルキレン基、さらに好ましくは直鎖状の炭素数3〜16のアルキレン基、特に好ましくは直鎖状の炭素数4〜12のアルキレン基である。
【0052】
上記式(2)で表される表面修飾基は、例えばアルケニルオキシ基が挙げられる。アルケニルオキシ基としては、例えば炭素数4〜24のアルケニルオキシ基が挙げられ、具体的には、3−ブテニルオキシ基、4−ペンテニルオキシ基、5−ヘキセニルオキシ基、6−ヘプテニルオキシ基、7−オクテニルオキシ基、8−ノネニルオキシ基、9−デセニルオキシ基、10−ウンデセニルオキシ基、11−ドデセニルオキシ基、12−トリデセニルオキシ基、13−テトラデセニルオキシ基、14−ペンタデセニルオキシ基、15−ヘキサデセニルオキシ基、16−ヘプタデセニルオキシ基、17−オクタデセニルオキシ基、18−ノナデセニルオキシ基等が挙げられる。アルケニルオキシ基としては、7−オクテニルオキシ基、8−ノネニルオキシ基、9−デセニルオキシ基、10−ウンデセニルオキシ基、11−ドデセニルオキシ基、13−テトラデセニルオキシ基が特に好ましい。
【0053】
上記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドは、表面修飾基として導入した末端がビニル基である表面修飾基以外に原料のナノダイヤモンド由来の水酸基、COO構造をもつ官能基、水素原子、メチル基、アミノ基等の表面官能基を有していてもよい。COO構造をもつ官能基としては、カルボキシル(COOH)基、メトキシカルボニル(COOCH3)基、エトキシカルボニル(COOC25)基等が挙げられる。
【0054】
上記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記アルケニル基を含む表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率は0.1〜30%であり、好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜15%、特に好ましくは2.5〜10%である。比率が上記範囲であると、ビニル基を適度に有することにより他の化合物との反応性を高くすることができる。
【0055】
上記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記水酸基と結合している炭素原子の比率は、例えば0.1〜30%であり、好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜20%、特に好ましくは2.5〜15%である。水酸基の比率が上記範囲であると、親水性等の水酸基の機能を適度にナノダイヤモンドに付与することができる。
【0056】
上記末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.05〜15%、より好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.5〜8%、特に好ましくは1〜6%である。COO構造をもつ官能基の比率が上記範囲であると、親水性等のCOO構造をもつ官能基の機能を適度にナノダイヤモンドに付与することができる。
【0057】
上記末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子、及び水酸基と結合する炭素原子の比率(ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する)は、例えば、固体13C−NMR分析で得られた、表面修飾ナノダイヤモンドのスペクトルより各炭素原子のピーク(ピーク面積)から算出することにより求めることができる。各炭素原子のピークが重なる場合は、波形分離等の手法を用いることにより比率を求めることができる。
【0058】
上記末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子は、式(2)で表される表面修飾基の場合、式(2)で表される表面修飾基の左端と結合しているナノダイヤモンド炭素原子となる。この式(2)で表される表面修飾基の左端と結合しているナノダイヤモンド炭素原子と式(2)で表される表面修飾基のビニル基を形成する炭素原子のうち末端の炭素原子の比率は、同一の表面修飾基に由来するため同じとなる。よって、式(2)で表される表面修飾基の右端の炭素原子の比率を求め、末端がビニル基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率としてもよい。
【0059】
末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占める当該表面修飾基の重量の割合は、例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%である。当該表面修飾基の重量の割合が上記範囲であると、ビニル基を適度に有することにより他の化合物との反応性を高くすることができる。
【0060】
末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占める表面官能基の重量の割合は、例えば0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜25重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。また、末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占めるナノダイヤモンドの重量の割合は、例えば70〜99.99重量%、好ましくは75〜99.5重量%、より好ましくは75〜95重量%、特に好ましくは75〜90重量%、最も好ましくは75〜85重量%である。なお、表面官能基には、上記末端がビニル基である表面修飾基も含まれる。
【0061】
表面修飾ナノダイヤモンドにおける表面修飾基等の重量は、例えば、表面修飾ナノダイヤモンドを熱重量測定に付し、特定温度範囲における減量率から求めることができる。詳細には、表面修飾ナノダイヤモンドを空気雰囲気下での熱重量測定に付すと、200℃以上、500℃未満の温度範囲において重量の減少が観測される。これは、表面修飾ナノダイヤモンドにおける表面官能基部分の熱分解による。従って、上記温度範囲における重量減少率が表面修飾ナノダイヤモンド全量における表面官能基部分の占める割合に相当する。また、500℃以上(例えば、500〜600℃)において急激に重量が減少する。これは表面修飾ナノダイヤモンドにおけるナノダイヤモンド部分の熱分解による。従って、上記温度範囲における重量減少率が、表面修飾ナノダイヤモンド全量におけるナノダイヤモンド部分の占める割合に相当する。
【0062】
(末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド)は、表面に水酸基、及び末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドであり、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、前記末端がエポキシ基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%であり、且つ前記水酸基と結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率が0.1〜30%である。末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドは、例えば上記本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法で得られる。
【0063】
上記末端がエポキシ基である表面修飾基は、例えば下記式(3)で表される表面修飾基である。
【化3】
[式(3)中のXは、単結合、又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。式(3)の左端はナノダイヤモンドと結合している]
【0064】
式(3)中のXは、好ましくは直鎖状の炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数2〜18のアルキレン基、さらに好ましくは直鎖状の炭素数3〜16のアルキレン基、特に好ましくは直鎖状の炭素数4〜12のアルキレン基である。
【0065】
上記末端がエポキシ基である表面修飾基は、表面修飾基として導入したエポキシ基以外に原料のナノダイヤモンド由来の水酸基、カルボキシル基等のCOO構造をもつ官能基、水素原子、メチル基、アミノ基等の表面官能基を有していてもよい。
【0066】
上記末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記末端がエポキシ基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率は0.1〜30%であり、好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜15%、特に好ましくは2.5〜10%である。比率が上記範囲であると、エポキシ基を適度に有することにより他の化合物との反応性を高くすることができる。
【0067】
上記末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記水酸基と結合している炭素原子の比率は、例えば0.1〜30%であり、好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜20%、特に好ましくは2.5〜15%である。比率が上記範囲であると、親水性等の水酸基の機能を適度にナノダイヤモンドに付与することができる。上記末端がエポキシ基である表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子、及び上記水酸基と結合している炭素原子の比率は、例えば固体13C−NMR分析による上述の方法により算出することができる。
【0068】
上記末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける、ナノダイヤモンドに含まれるsp3混成軌道を形成する炭素原子全体(100%)に対する、上記COO構造をもつ官能基と結合している炭素原子の比率は、例えば0.01〜20%であり、好ましくは0.05〜15%、より好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.5〜8%、特に好ましくは1〜6%である。COO構造をもつ官能基の比率が上記範囲であると、親水性等のCOO構造をもつ官能基の機能を適度にナノダイヤモンドに付与することができる。
【0069】
末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占める末端がエポキシ基である表面修飾基の重量の割合は、例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%である。末端エポキシ基の割合が上記範囲であると、エポキシ基を適度に有することにより他の化合物との反応性を高くすることができる。
【0070】
末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占める表面官能基の重量の割合は、例えば0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜25重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。また、末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド全重量に占めるナノダイヤモンドの重量の割合は、例えば70〜99.99重量%、好ましくは75〜99.5重量%、より好ましくは75〜95重量%、特に好ましくは75〜90重量%、最も好ましくは75〜85重量%である。なお、表面官能基には、上記末端がエポキシ基である表面修飾基も含まれる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0072】
調製例1
(熱酸化処理されたナノダイヤモンドの作製)
ナノダイヤモンド(商品名「NanoAmando」、爆轟法ナノダイヤモンド、水酸基割合16.9%、平均粒径:5nm、株式会社ナノ炭素研究所社製)をマッフル炉(品番:EPTR−26K、株式会社いすゞ社製)を用い、空気雰囲気下において温度425℃、昇温温度3℃/min、保持時間5時間で加熱(熱酸化処理)し、加熱後に自然冷却することにより、熱酸化処理された表面に水酸基を有するナノダイヤモンドを得た。
【0073】
実施例1
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
二ツ口フラスコに調製例1で得られたナノダイヤモンド150mgと1,7−オクタジエン(東京化成工業社製)10mLを加え、冷却器を取り付けた。続いて系内にアルゴンガスを流し、オイルバス(品番:OHB−GBI、東京理化器械株式会社製)で120℃に昇温、撹拌しながら24時間加熱することで、7−オクテニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、トルエン(和光純薬工業社製、和光1級)、酢酸エチル(和光純薬工業社製、試薬特級)、エタノール(和光純薬工業社製、試薬特級)の順で洗浄し、乾燥させることにより、表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。なお、上記洗浄は、各溶媒中で30分間超音波処理をし、溶媒に合わせて、遠心機(品番:Centrifuge 5804、EPPENDORF社製)を用いて、遠心力3000〜13000g、回転数5000〜10000rpmで5〜10分間遠心分離を行い、ナノダイヤモンドと洗浄溶媒を分離する工程を繰り返すことで行った。
【0074】
実施例2
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
湿式微粉砕機・分散機(ビーズミル)(バッチ式ミル、製品名「ラボスターミニ HFM02」、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用い、調製例1で得られたナノダイヤモンド1gと1,7−オクタジエン(東京化成工業社製)100mL、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)をビーズ充填率が75%となるようにミルに加え、回転速度15m/sで処理して混合されたスラリーを作製し、ジルコニアビーズと分離することでダイヤモンドナノ粒子/1,7−オクタジエン分散液を得た。得られた分散液を二ツ口フラスコに移し、冷却器を取り付け、系内にアルゴンガスを流し、オイルバス(品番:OHB−GBI、東京理化器械株式会社社製)で120℃に昇温、撹拌しながら18時間加熱することで、7−オクテニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、実施例1と同様にして、トルエン(和光純薬工業社製、和光1級)、酢酸エチル(和光純薬工業社製、試薬特級)、エタノール(和光純薬工業社製、試薬特級)の順で洗浄し、乾燥させることにより、表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0075】
実施例3
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例1における1,7−オクタジエンを1,9−デカジエン(東京化成工業社製)に変え、反応(加熱)温度を165℃、反応時間を36時間とすることで、9−デセニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、実施例1と同様にして洗浄、乾燥させることにより表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0076】
実施例4
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例1における1,7−オクタジエンを1,10−ウンデカジエン(東京化成工業社製)に変え、反応(加熱)温度を187℃、反応時間を36時間とすることで、10−ウンデセニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、実施例1と同様にして洗浄、乾燥させることにより表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0077】
実施例5
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例1における1,7−オクタジエンを1,11−ドデカジエン(東京化成工業社製)に変え、反応(加熱)温度を207℃、反応時間を36時間とすることで、11−ドデセニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、実施例1と同様にして洗浄、乾燥させることにより表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0078】
実施例6
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例1における1,7−オクタジエンを1,13−テトラデカジエン(東京化成工業社製)に変え、反応(加熱)温度を250℃、反応時間を36時間とすることで、13−テトラデセニルオキシ基を導入する反応を行った。その後、実施例1と同様にして洗浄、乾燥させることにより表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0079】
実施例7
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例2における加熱時間を18時間から24時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0080】
実施例8
(末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例2における加熱時間を18時間から36時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして表面修飾ナノダイヤモンド(灰色固体)を得た。
【0081】
(FT−IR分析)
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例1〜6で得られた表面修飾ナノダイヤモンドについて、下記の分析装置及び分析方法にて、FT−IR分析を行った。
【0082】
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例1及び2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを図1に示す。実施例1及び2では、2800−2900cm-1に調製例1ではほとんど見られないメチレン鎖由来のCH2伸縮振動のピーク、及び3080cm-1付近にCH2=CH−基のC−H伸縮振動のピークが観測された。このことから実施例1及び2では、7−オクテニルオキシ基が導入され、末端ビニル基を有するナノダイヤモンドが得られたことを確認できた。また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例2のC−H伸縮振動のピークが相対的に大きくなっていることからビーズミルを用いることにより、修飾量が増加したことが示唆された。
【0083】
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例3〜6で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT−IRスペクトルを図2に示す。実施例3〜6では、2800−2900cm-1に調製例1ではほとんど見られないメチレン鎖由来のCH2伸縮振動のピーク、及び3080cm-1付近にCH2=CH−基のC−H伸縮振動のピークが観測された。このことから実施例3〜6では、それぞれ末端ビニル基を有するナノダイヤモンドが得られたことを確認できた。
【0084】
分析装置 … 品番:FT/IR−6100、日本分光株式会社製
分析方法 … 試料1mgと臭化カリウム(IR吸収測定用、和光純薬工業株式会社製)100mgと乳鉢を用いて粉砕混合し、この試料26.5mgを40MPaの圧力で3〜5分間加圧成型してKBrペレットを作製して分析(KBr法)
【0085】
(熱重量分析)
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例1〜8で得られた表面修飾ナノダイヤモンドについて、下記の分析装置及び分析条件にて、熱重量減少を測定した。
【0086】
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例1及び2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのTGA曲線を図3に示す。実施例1及び実施例2では、200〜480℃にかけて主に7−オクテニルオキシ基の熱分解による調製例1には見られない重量減少が確認された。このことから、実施例1及び実施例2では、7−オクテニルオキシ基が導入されたことが確認できた。また、実施例2は実施例1に比べて480℃までの重量減少が大きいことから、ビーズミルを用いることで7−オクテニルオキシ基の導入量が大きく増加していることが分かる。なお、調製例1における480℃以降の重量減少は、ダイヤモンドの熱分解によるものと考えられる。実施例2において、重量減少より求めた修飾された7−オクテニルオキシ基の重量は、ナノダイヤモンド粒子1gに対して、0.346g(ナノダイヤモンド粒子100重量%に対して、34.6重量%)であった。また、実施例7及び8において、重量減少より求めた修飾された7−オクテニルオキシ基の重量は、ナノダイヤモンド粒子1gに対して、0.44g(ナノダイヤモンド粒子100重量%に対して、44.0重量%)であった。
【0087】
調製例1で得られたナノダイヤモンド、実施例3〜6で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのTGA曲線を図4に示す。実施例3〜6では、200〜480℃にかけて、主にアルケニレンオキシ基の熱分解による調製例1には見られない重量減少が確認された。このことから、実施例3〜6ではそれぞれアルケニレンオキシ基が導入されたことが確認できた。
【0088】
分析装置 … 品番:TGA/DSC 1、メトラー・トレド社製
分析条件 … 試料1mg、空気雰囲気下、昇温速度5℃/min、測定範囲200−600℃、基準物質:アルミナ
【0089】
実施例9
(末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドの製造)
実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドにジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製)を加え、ジクロロメタンスラリーとした。氷浴下、ジクロロメタンスラリー3.0mLにメタクロロ過安息香酸(30%含水液、東京化成工業株式会社製)1260mg(5.11mmol)を加え、室温に昇温し8時間撹拌し、その後、氷浴下、さらにメタクロロ過安息香酸(30%含水液)630mg(2.56mmol)を加え、室温に昇温し8時間撹拌することにより末端ビニル基のエポキシ化反応を行った。この反応液に亜硫酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)の飽和水溶液を加え反応を停止させ、この反応混合物を遠心機(品番:Centrifuge 5804、EPPENDORF社製)を用いて、遠心力20000g、回転数12700rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去することで沈殿物を得た。この沈殿物に同様の遠心分離操作を、水、アセトンを用いて順に行い、回収した沈殿物を真空ポンプ(品番:GCD−050XA、アルバック機工株式会社社製)を用いて減圧加熱乾燥を60℃で1時間、その後120℃で1時間行い、灰色固体を得た。
【0090】
実施例9で得られた灰色固体、及び実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドについて、下記の分析装置及び分析方法にてFT−IR分析を行った。図5で示す原料である末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンド(実施例1で得られたナノダイヤモンド)ではビニル基由来のピーク(908cm-1、991cm-1)が観測されているが、図6で示す実施例9のエポキシ化後ではビニル基由来のピーク(908cm-1、991cm-1)が減少し、生成したエポキシ基由来のピーク(838cm-1)が見られた。このことから末端がエポキシ基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドが得られたことを確認した。
【0091】
分析装置 … 品番:FT−720、株式会社堀場製作所製
分析方法 … 試料と臭化カリウム(IR吸収測定用、和光純薬工業株式会社製)とを乳鉢を用いて粉砕混合し、加圧成型してKBrペレットを作製して分析(KBr法)
【0092】
(定量分析:固体13C−NMR分析)
実施例1で得られた末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドについて、下記の分析装置及び分析条件にて、固体13C−NMRを測定し、得られた結果から末端がビニル基である表面修飾基を有するナノダイヤモンドにおける炭素原子の比率を求めた。13C−NMRスペクトルを図7に示す。30ppm付近に7−オクテニルオキシ基由来のCH2炭素原子、35ppm付近にナノダイヤモンド由来のsp3炭素原子、50〜55ppmにナノダイヤモンド由来のCH炭素原子、60〜90ppmにナノダイヤモンド由来のCOH炭素原子、115ppmおよび139ppmに7−オクテニルオキシ基由来のC=C炭素原子、110〜140ppmに7−オクテニルオキシ基以外のナノダイヤモンド由来のC=C炭素原子、181ppm付近にナノダイヤモンド由来のCOO炭素原子のピークが観測された。また、15ppm付近にはナノダイヤモンド由来のCH3炭素原子の微小ピークが観測された。
【0093】
得られた13C−NMRスペクトルにおける各炭素原子のピークを波形分離することにピーク面積比を算出し、ピーク面積比から各炭素原子の比率を求めた。各炭素原子についてのピーク面積比とナノダイヤモンド由来のsp3炭素原子を100[%]としたときの各炭素原子の比率[%]を表1に示す。
【0094】
なお、表1における7−オクテニルオキシ基炭素原子は、7−オクテニルオキシ基由来のC=C炭素原子のうち、ナノダイヤモンドから最も離れている末端の炭素原子という意味である。このナノダイヤモンドから最も離れている末端の炭素原子の比率は、アルケニルオキシ基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率と同じである。よって、表1の7−オクテニルオキシ基炭素原子の比率は、アルケニルオキシ基を含む表面修飾基が結合しているナノダイヤモンド炭素原子の比率となる。なお、表1のCOOとはCOO構造をもつ官能基を意味する。
【0095】
分析装置 … 品番:AVANCE 400、Bruker社製
測定法 … DD/MAS(Dipolar Decoupling)法
測定核周波数 … 100.6248425 MHz(13C 核)
スペクトル幅 … 40 kHz
パルス幅 … 4.2 sec(90°パルス)
パルス繰り返し時間 … ACQTM: 0.0256625 sec,PD: 20 sec
観測ポイント … 1024 データポイント: 8192
基準物質 … ヘキサメチルベンゼンのメチル基(外部基準:17.35 ppm)
温度 … 室温(約22℃)
試料回転数 … 11 kHz
【0096】
【表1】
【0097】
表1より、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドでは、末端がビニル基である表面修飾基を有しつつ、ナノダイヤモンド表面に一定量以上の水酸基が存在していることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7