【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業センター・オブ・イノベーションプログラム「人間力活性化によるスーパー日本人の育成拠点」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【課題】配線に印加されるノイズの影響を抑制可能である電極シートを提供すること。また、配線に印加されるノイズの影響を抑制可能である電極シートを使用した生体信号計測装置を提供すること。
【解決手段】シート11と、シート11に形成され、シート11上に露出している生体信号受信用電極12と、シート11に形成された生体信号増幅器13と、外部の生体信号処理部20に接続するためのインターフェース部14と、生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部13Aとを接続する第1配線15と、インターフェース部14と生体信号増幅器13の出力部13Bとを接続する第2配線16と、を備えた電極シート。また、この電極シートを使用した生体信号計測装置。
前記第1配線は直流除去用コンデンサを介して前記生体信号受信用電極と前記生体信号増幅器の入力部とを接続する請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の電極シート。
前記シートは、人の額に収まる大きさであり、前記生体信号増幅器は、10kHz以下の交流信号を増幅可能である請求項1〜6のいずれかの請求項に記載の電極シート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態の生体信号計測装置のブロック図である。
図2は、本発明の一実施形態の生体信号計測装置の外観図である。
図3は、本発明の一実施形態の生体信号計測装置の被験者への装着例を示す図である。
【0018】
図1や
図2に示されるように、生体信号計測装置1は、電極シート10と、生体信号処理部20と、を備える。電極シート10は、シートとしての伸縮性シート11と、生体信号受信用電極12と、生体信号増幅器13と、インターフェース部14と、第1配線15と、直流除去用コンデンサ151と、第2配線16と、電源供給線17と、グランド供給線18と、を備える。
図1に示されるように、生体信号処理部20は、実装用基板21と、A/D変換器22と、デジタル信号処理部23と、無線部24と、電源管理部25と、を備える。なお、A/D変換器の前段には、適宜フィルタ(バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ等)が配置される(不図示)。
【0019】
図1においては、生体信号受信用電極12、生体信号増幅器13、第1配線15、直流除去用コンデンサ151、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18は、簡略化のために、1系統分しか図示されていない。しかし、
図2に示されるように、本実施形態では、生体信号受信用電極12、生体信号増幅器13、第1配線15、直流除去用コンデンサ151、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18は、6系等分(複数系統分)存在する。
【0020】
図2においては、A/D変換器22と、デジタル信号処理部23、無線部24及び電源管理部25の図示は省略されている。実装用基板21において、A/D変換器22と、デジタル信号処理部23、無線部24及び電源管理部25の実装位置は、様々に変更され得る。また、
図2において、電源供給線17及びグランド供給線18の図示は、簡略化のため、省略されている。
【0021】
図2には、直流除去用コンデンサ151の一方の電極である直流除去用コンデンサ入力側電極151Aが図示されている。直流除去用コンデンサ入力側電極151Aは、生体信号受信用電極12の近傍に配置されており、長方形の形状を有する。直流除去用コンデンサ151の全体構造は、
図4を用いて後述する。また、生体信号増幅器13は、伸縮性シート11に内蔵されているため、
図2では図示されていない。生体信号増幅器13の配置については、
図4を用いて後述する。
【0022】
伸縮性シート11は、全方向に伸縮可能なシートであり、伸縮性を有する種々の材料で形成され得る。本実施形態において、伸縮性シート11は、人の額に収まる大きさある。人の額に収まる大きさとは、例えば、5cm×15cmの矩形に収まる大きさである。また、伸縮性シート11は、粘着性を有している。
【0023】
ただし、生体信号増幅器13や直流除去用コンデンサ151の形状が伸縮によって変化すると、生体信号増幅器13の信号増幅特性(例えば、周波数ごとの利得等。)が変化し得る。また、生体信号増幅器13が破損する事もあり得る。よって、伸縮性シート11における生体信号増幅器13が形成された部分及び直流除去用コンデンサ151が形成された部分の伸縮性は、伸縮性シート11における他の部分(生体信号増幅器13が形成された部分や直流除去用コンデンサ151が形成されていない部分)の伸縮性よりも小さくされている。すなわち、伸縮性シート11は、全体としては伸縮性を有するものであり、且つ、伸縮性の異なる2つの部分を有している。2つの異なる部分は、伸縮性の異なる材料で形成され得る。
【0024】
生体信号受信用電極12は、伸縮性シート11上に印刷された円形状の伸縮性導体である。伸縮性導体は、例えば、銀ナノワイヤーで形成された導体である。生体信号受信用電極12は、伸縮性シート11の伸縮に追随して伸縮可能である。
図2に示されるように、生体信号受信用電極12は、伸縮性シート11上に6つ(複数)形成されている。生体信号受信用電極12は、伸縮性シート11上に露出している。
【0025】
生体信号増幅器13は、入力部13Aと、出力部13Bと、電源端子13Cと、グランド端子13Dと、を有する。生体信号増幅器13は、電源端子13Cに所定の電圧が供給され、グランド端子13Dにグランド電位が供給されることによって動作する。生体信号増幅器13は、入力部13Aに入力された生体信号を増幅し、出力部13Bから出力する。生体信号増幅器13は、10kHz以下の交流信号を線形増幅可能な増幅器である。生体信号増幅器13は、10kHzより大きい交流信号に対しては、増幅を行わない(正の利得を有さない)。生体信号増幅器13は、伸縮性シート11に内蔵されている(
図4を用いて後述。)。なお、線形増幅可能とは、入力信号の振幅や位相が、生体信号処理部20において解析可能な程度に保存されるように、入力信号を増幅可能なことをいう。また、10kHzは、てんかん症状が発生した被験者の額から検出され得る周波数成分である。この10kHzの周波数以下の周波数を解析できれば、ほぼすべての脳波信号の周波数成分を解析することができる。てんかん症状を検出する必要がない場合、生体信号増幅器13は、1kHz以下の交流信号を線形増幅可能な増幅器であってよい。
【0026】
インターフェース部14は、電極シート10を外部の生体信号処理部20に接続するために、電極シート10に備えられた部分である。インターフェース部14は、ブリッジ部14Aと、コネクタ14Bと、を備える。ブリッジ部14Aは、伸縮性シート11につながっている。ブリッジ部14Aも伸縮性を有する材料で形成されている。ブリッジ部14Aは、伸縮性シート11と一体的に形成されていてもよい。コネクタ14Bは、一般的な携帯電子機器で使用されるコネクタが使用され得る。
【0027】
第1配線15は、生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部13Aとを接続する配線である。本実施形態においては、第1配線15は、直流除去用コンデンサ151を介して、生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部13Aとを接続している。本実施形態においては、第1配線15は、直流除去用コンデンサ151よりも生体信号受信用電極12側の配線(生体信号受信用電極12と直流除去用コンデンサ入力側電極151Aとを接続する配線)と、直流除去用コンデンサ151よりも生体信号増幅器13側の配線(直流除去用コンデンサ出力側電極151Bと生体信号増幅器13とを接続する配線)とで構成されることになる。
【0028】
直流除去用コンデンサ151は、生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部との間に直列に接続されていることになる。直流除去用コンデンサ151は、生体信号の直流成分を除去するためのコンデンサである。本実施形態においては、第1配線15は、生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部13Aとを交流的に接続している。
【0029】
第2配線16は、生体信号増幅器13の出力部13Bとインターフェース部14とを接続する配線である。第1配線15は、第2配線16に比べて短い。
【0030】
電源供給線17は、生体信号増幅器13の電源端子13Cとインターフェース部14とを接続する配線である。グランド供給線18は、生体信号増幅器13のグランド端子13Dとインターフェース部14とを接続する配線である。
【0031】
第1配線15、直流除去用コンデンサ151、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18は、生体信号受信用電極12と同様に、伸縮性シート11上に印刷された銀ナノワイヤーのような伸縮性導体である。第1配線15、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18も、生体信号受信用電極12と同様に、伸縮性シート11の伸縮に追随して伸縮可能である。ただし、上述したように、直流除去用コンデンサ151は伸縮性シート11における伸縮性が小さい部分に形成されるため、伸縮可能な材料で形成されているものの、第1配線15、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18のようには伸縮しない。
【0032】
実装用基板21は、柔軟性を有さない一般的なプリント配線基板や柔軟性を有するフレキシブル基板等が使用される。A/D変換器22は、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。このA/D変換器22は、8ビット程度の比較的安価なものが使用される。デジタル信号処理部23は、デジタル信号に所定の処理を行う回路である。無線部24は、外部のコンピュータ(サーバーやスマートフォン等)との無線通信を行う回路である。無線部24は、例えば、ブルートゥース(登録商標)モジュールやWi−Fiモジュール等が使用される。
【0033】
電源管理部25は、A/D変換器22、デジタル信号処理部23及び無線部24に電源電位及びグランド電位を供給する回路である。また、電源管理部25は、インターフェース部14を介して、生体信号増幅器13に電源電位及びグランド電位を供給する。電源電位の供給には、電源供給線17が用いられる。グランド電位の供給には、グランド供給線18が供給される。
【0034】
次に、
図3を参照しながら、生体信号計測装置1の使用方法について説明する。生体信号計測装置1は、インターフェース部14のブリッジ部14Aにおいて折り畳まれる。よって、生体信号処理部20は、伸縮性シート11に重ね合わせられることになる。電極シート10に重ねられた生体信号処理部20は、粘着性のゲル材等(不図示)によって伸縮性シート11に固定される。
【0035】
この様に折り畳まれた生体信号計測装置1は、露出した生体信号受信用電極12が額に密着するように、被験者の額に取り付けられる。伸縮性シート11が粘着性を有しているため、生体信号計測装置1は、被験者の額に固定される。生体信号計測装置1は、被験者の額に固定された状態で、生体信号受信用電極12から人の脳波を取得する。
【0036】
次に、
図1を参照しながら、生体信号計測装置1の動作について、説明する。生体信号受信用電極12で受信された脳波は、第1配線15及び直流除去用コンデンサ151を介して生体信号増幅器13に入力される。生体信号増幅器13は、入力された生体信号を線形増幅する。増幅された生体信号は、第2配線16及びインターフェース部14を介して、生体信号処理部20に出力される。
【0037】
生体信号は、生体信号処理部20におけるA/D変換器22によってデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部23に出力される。デジタル信号処理部23は、デジタル信号に所定の処理を行う。所定の処理が行われたデジタル信号は、無線部24に出力される。無線部24は、デジタル信号を外部のコンピュータに無線信号として送信する。
【0038】
また、無線部24は、外部のコンピュータからの指示信号を無線で受信することも可能である。この指示信号は、例えば、生体信号処理部20の各種動作を指示するための信号である。無線部24は、指示信号をデジタル信号処理部23等に出力する。デジタル信号処理部23は、指示信号に基づいて、信号処理の内容やタイミングを変更することが可能である。
【0039】
生体信号計測装置1においては、生体信号増幅器13が電極シート10側に配置されている。よって、生体信号受信用電極12で受信された振幅の小さい脳波信号(μVオーダー程度)は、すぐに増幅され、振幅が大きい信号(mVオーダー)になる。よって、第2配線16がノイズを受信するアンテナとして機能し、第2配線16を伝送する脳波信号にノイズが印加されたとしても、脳波信号はすでに振幅が大きくなっているため、受けるノイズの影響は小さい。
【0040】
なお、生体信号計測装置1においても、第1配線15において印加されるノイズは、脳波信号に対して相対的に大きな影響を与え得る。しかし、生体信号計測装置1においては、第1配線15は、第2配線16よりも短くなっているため、増幅される前の生体信号に印加されるノイズの影響も小さい。よって、生体信号増幅器13が備わった電極シート10を使用することによって、ノイズの影響は抑制され得る。
【0041】
特許文献1の生体信号計測装置の場合、リード線32が受信するすべてのノイズが印加された後で、脳波信号は増幅される。そのため、脳波信号はノイズに埋もれた状態となる。この様なノイズに埋もれた脳波信号をデジタル変換するためには、相対的に大きいダイナミックレンジのA/D変換器(例えば、20ビット以上)が必要となってしまう。
【0042】
一方、本実施形態の生体信号計測装置1では、生体信号増幅器13によってノイズの影響が抑制されているため、生体信号がノイズに埋もれ難い。よって、相対的に小さいダイナミックレンジのA/D変換器(例えば、8ビット程度)が使用可能である。そのため、生体信号処理部20のA/D変換器22は、比較的安価なものを使用可能となる。
【0043】
次に、
図4を参照しながら、電極シート10の構造について説明する。
図4は、本発明の一実施形態の電極シートの分解斜視図である。電極シート10を構成する伸縮性シート11は、第1伸縮性シート11Aと、第2伸縮性シート11Bと、で構成される。
図2に示されていたのは、伸縮性シート11における第1伸縮性シート11A側の部分である。
【0044】
第1伸縮性シート11Aには、生体信号受信用電極12と、第1配線15と、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aと、第2配線16と、が印刷により形成されている。上述したように、第1伸縮性シート11Aにおける直流除去用コンデンサ入力側電極151Aが形成された部分は、第1伸縮性シート11Aにおける他の部分に比べて、伸縮性が小さい。
【0045】
第2伸縮性シート11Bには、直流除去用コンデンサ出力側電極151B(直流除去用コンデンサ151の他方の電極)と、生体信号増幅器13と、が配置されている。生体信号増幅器13は、6つ(複数)形成されている。生体信号増幅器13は、生体信号受信用電極12の数と同じである。なお、生体信号増幅器13は、簡略化のため、シンボル図で示されている。生体信号増幅器13の回路構成の一例は、
図5で後述する。
【0046】
上述したように、第2伸縮性シート11Bにおける生体信号増幅器13が形成されている部分及び直流除去用コンデンサ出力側電極151Bが形成されている部分の伸縮性は、第2伸縮性シート11Bにおける他の部分の伸縮性よりも小さい。例えば、第2伸縮性シート11Bにおける生体信号増幅器13が形成されている部分は、生体信号増幅器13の特性変化が無視できる程度にしか伸縮しないように形成されている。
【0047】
第1伸縮性シート11Aは、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aが形成された部分を除き、伸縮性を有している。また、第2伸縮性シート11Bにおける生体信号増幅器13又は直流除去用コンデンサ出力側電極151Bが形成されていない部分は、第1伸縮性シート11Aと略同じ(又は正確に同じ)伸縮性を有している。第1伸縮性シート11Aと第2伸縮性シート11Bとは、略同じ(又は正確に同じ)形状である。第1伸縮性シート11Aと第2伸縮性シート11Bは、重ねられて密着固定される。その結果、第1伸縮性シート11Aと第2伸縮性シート11Bは、一枚の電極シート10として使用可能となる。なお、生体信号増幅器13は、第2伸縮性シート11Bに形成されており、第1伸縮性シート11Aに覆われることになる。よって、生体信号増幅器13は、伸縮性シート11上に露出しない。
【0048】
第1伸縮性シート11Aと第2伸縮性シート11Bは重ねられるため、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aと直流除去用コンデンサ出力側電極151Bとは対向することになる。直流除去用コンデンサ出力側電極151Bは、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aと同じ大きさであり、且つ、同じ長方形の形状を有する。対向する直流除去用コンデンサ入力側電極151Aと直流除去用コンデンサ出力側電極151Bは、全体として1つの直流除去用コンデンサ151として機能することになる。また、生体信号増幅器13の出力部13Bと、第1伸縮性シート11Aの第2配線16とは、第1伸縮性シート11Aに形成された貫通電極によって接続される。貫通電極は、
図4における点線で示されている。
【0049】
上述したように、第1伸縮性シート11Aにおける直流除去用コンデンサ入力側電極151Aが形成された部分、第2伸縮性シート11Bにおける直流除去用コンデンサ出力側電極151Bが形成されて部分、及び第2伸縮性シート11Bにおける生体信号増幅器13が形成されている部分は、他の部分に比べて伸縮性が小さい。よって、第1伸縮性シート11Aと第2伸縮性シート11Bとが重ねられた伸縮性シート11全体としても、直流除去用コンデンサ151及び生体信号増幅器13が形成されている部分の伸縮性は、他の部分の伸縮性に比べて小さくなる。
【0050】
なお、
図4においても、電源供給線17及びグランド供給線18の図示は省略されている。電源供給線17及びグランド供給線18は、第1伸縮性シート11Aに形成されていてもよいし、第2伸縮性シート11Bに形成されていてもよいし、第1伸縮性シート11A及び第2伸縮性シート11Bに形成されていてもよい。
【0051】
次に、
図5を用いて、生体信号増幅器13の回路構成について説明する。
図5(A)は、本発明の一実施形態の電極シートに形成される生体信号増幅器13の回路構成の一例を示す図である。
図5(B)は、本発明の一実施形態の電極シートに形成される生体信号増幅器13の回路構成の他の一例を示す図である。
【0052】
図5(A)に示されるように、生体信号増幅器13は、4つのFET131A〜131Dと、抵抗Rと、で構成される。4つのFET131A〜131Dは、それぞれP型の電界効果トランジスタである。生体信号増幅器13の入力部は、FET131Aのゲート及びFET131Cのゲートに対応する。生体信号増幅器13の出力部は、FET131CとFET131Dとの接続部に対応する。抵抗Rの一端は、FET131Aのゲート及びFET131Cのゲートに接続されており、抵抗Rの他端は、FET131CとFET131Dとの接続部に接続される。抵抗Rは、フィードバック用の抵抗である。4つのFET131A〜131Dによって、インバータが構成されており、インバータの入力と出力とをフィードバック用の抵抗Rで接続することにより、全体として線形増幅器として機能する生体信号増幅器13が構成されることになる。
【0053】
図5(B)に示されるように、更に調整用のFET131Eを追加して生体信号増幅器13を調整機能付増幅器として構成することも可能である。調整用のFET131Eを追加することにより、生体信号増幅器13の特性を安定させることも可能である。調整用のFET131Eに対する調整用の信号は、インターフェース部14を介して、生体信号処理部20から供給され得る。
【0054】
図6には、第2伸縮性シート11Bにおける、生体信号増幅器13を構成するFETが形成されている部分の断面図が示されている。第2伸縮性シート11Bは、FET封止部11B1と、FET非封止部11B2と、下地部11B3と、で構成される。
【0055】
FET封止部11B1には、FET131が内蔵される(配置される)。FET非封止部11B2は、FET131が内蔵されない(配置されない)部分である。下地部11B3は、FET封止部11B1及びFET非封止部11B2の下側に共通して設けられたフィルム状の部材である。
【0056】
FET非封止部11B2及び下地部11B3は、ほぼ同じ(又は正確に同じ)伸縮性を有する部材である。FET封止部11B1は、FET131の特性変化が無視できる程度の伸縮性しか有さない部材である。FET封止部11B1は、上述の第2伸縮性シート11Bにおける生体信号増幅器13が形成されている部分に含まれる部分である。
【0057】
FET131は、FET本体部1310と、FET基板部1320と、FET封止部1330と、で構成される。FET本体部1310は、FETとして機能する半導体素子の部分である。FET本体部1310の構造は、
図7を用いて後述する。FET基板部1320は、FET本体部1310を配置するための基板である。FET封止部1330は、FET本体部1310を封止する部分である。
【0058】
第2伸縮性シート11Bは、上述した構造となっているため、全体としては伸縮性を有する。ただし、FET非封止部11B2(生体信号増幅器13が設けられていない部分)の伸縮性に比べて、FET封止部11B1(生体信号増幅器13が設けられている部分)の伸縮性は小さい。
【0059】
次に、
図7を使用してFET131の構造について、説明する。
図7は、FET131の構造を示す図である。上述したように、FET131は、FET本体部1310と、FET基板部1320と、FET封止部1330と、で構成される。
【0060】
FET本体部1310は、ゲート電極1311と、酸化膜1312と、修飾膜1313と、有機半導体層1314と、ソース電極1315と、ドレイン電極1316と、で構成される。
図7に示されるように、FET本体部1310は、ゲート電極1311、酸化膜1312、修飾膜1313、有機半導体層1314の順に積層され、最後にソース電極1315及びドレイン電極1316が積層された薄膜トランジスタの構造となっている。
【0061】
ゲート電極1311は、一例としてアルミニウムから構成することができる。酸化膜1312は、一例として、アルミニウム酸化膜から構成できる。修飾膜1313は、一例として自己組織化単分子膜(SAM)を用いることができる。自己組織化単分子膜とは、基板を溶液等に浸すことにより自己組織化的に単分子の膜を形成する有機分子のことであり、一般的には表面修飾等に用いられる膜である。具体的には、nオクタデシルホスホン酸(C−18)が用いられ得る。有機半導体層1314には、一例として、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)が用いられ得る。ソース電極1315及びドレイン電極1316には、一例として、金電極が用いられ得る。アルミニウム酸化膜9を自己組織化単分子膜の修飾層で修飾することでハイブリッド型のゲート絶縁膜が構成される。その結果、FET1310は、3Vで駆動可能な有機FETとなる。
【0062】
この様な有機FETは、シリコン系半導体等に比較して歪による電子移動度の低下が少ないので、伸縮性シートに内蔵されるFETとして好適である。
【0063】
本実施形態の電極シート10は、伸縮性シート11と、伸縮性シート11に形成され、伸縮性シート11上に露出している生体信号受信用電極12と、伸縮性シート11に形成された生体信号増幅器13と、外部の生体信号処理部20に接続するためのインターフェース部14と、伸縮性シート11に形成された第1配線15であって、生体信号受信用電極12と前記複数の生体信号増幅器13の入力部13Aとを接続する第1配線15と、伸縮性シート11に形成された第2配線16であって、インターフェース部14と生体信号増幅器13の出力部13Bとを接続する複数の第2配線16と、を備えた電極シート。よって、本実施形態の電極シート10によれば、配線に印加されるノイズの影響を抑制可能である。
【0064】
本実施形態の電極シート10において、第1配線15の長さは、第2配線16の長さよりも短い。よって、本実施形態の電極シート10によれば、配線に印加されるノイズの影響をより効率的に抑制可能である。
【0065】
本実施形態の電極シート10において、生体信号受信用電極12及び生体信号増幅器13は6つ(複数)形成されており、生体信号受信用電極12及び生体信号増幅器13の数は共に6つで同じである。よって、本実施形態の電極シート10によれば、生体信号の多様な脳波計測が可能となる。また、本実施形態の電極シート10によれば、生体信号の高精度な脳波計測が可能となり得る。
【0066】
本実施形態の電極シート10において、伸縮性シート11に生体信号増幅器13が形成された部分の伸縮性は、伸縮性シート11における生体信号増幅器13が形成されていない部分の伸縮性よりも小さくされている。また、本実施形態の電極シート10において、生体信号増幅器13は、伸縮性シート11上に露出しない。よって、本実施形態の電極シート10によれば、より簡易な取り扱いが可能となる。
【0067】
本実施形態の電極シート10において、第1配線15は直流除去用コンデンサ151を介して前記生体信号受信用電極12と生体信号増幅器13の入力部13Aとを接続する。よって、本実施形態の電極シート10によれば、生体信号をより高精度に増幅可能となる。
【0068】
本実施形態の電極シート10において、伸縮性シート11は、人の額に収まる大きさであり、生体信号増幅器13は、10kHz以下の交流信号を増幅可能である。よって、本実施形態の電極シート10によれば、脳波信号の計測に最適な電極シートを提供できる。
【0069】
本実施形態の生体信号計測装置1において、電極シート10と、インターフェース部14に接続された生体信号処理部20と、を備え、生体信号受信用電極12で受信した生体信号は生体信号増幅器13で増幅され、増幅された生体信号は、インターフェース部14を介して生体信号処理部20に入力され、生体信号処理部20は、入力された生体信号に対して所定の処理を行う。よって、生体信号計測装置1は、配線に印加されるノイズの影響を抑制可能である。
【0070】
以上、本発明の本実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において種々に変形可能である。
【0071】
上記実施形態では、伸縮性シート11が使用されていたが、伸縮性シート11の代わりに伸縮性を有さないシートが使用されてもよい。また、伸縮性シート11は、粘着性を有さないシートであってもよい。伸縮性シート11が粘着性を有さない場合、伸縮性シート11は、ヘッドバンド等によって人の額に固定され得る。また、伸縮性シート11の代わりに、伸縮性及び粘着性を有さないシートが使用されてもよい。例えば、伸縮性シート11の代わりに、伸縮性及び粘着性のいずれか一方又は両方を有さない柔軟性シート(柔軟性を有するシート)が使用されてもよい。
【0072】
上記実施形態では、第1配線の長さが第2配線の長さよりも短かったが、これに限定されない。第1配線の長さが第2配線の長さと同じ又は長くても、ノイズの影響は抑制され得る。第1配線の長さが第2配線の長さと同じ又は長くても、生体信号増幅器13が存在するによって、生体信号増幅器13が存在しない場合と比べて、ノイズの影響は抑制され得るからである。
【0073】
上記実施形態では、生体信号増幅器は、10kHz以下の交流信号を増幅可能であったが、これに限定されない。生体信号増幅器13は、1kHz以下の交流信号を増幅可能であってもよい。てんかん症状を有する被験者を除くと、被験者から計測できる脳波に含まれる周波数成分は、1kHz以下である。よって、1kHz以下の交流信号が増幅できれば、ほぼすべての脳波信号の周波数成分を増幅可能だからである。
【0074】
上記実施形態では、生体信号受信用電極12、生体信号増幅器13、第1配線15、直流除去用コンデンサ151、第2配線16、電源供給線17及びグランド供給線18は、6系統分(複数系統分)存在していたが、必要に応じて、1系統のみであってもよい。生体信号受信用電極12、第1配線15、第2配線16、直流除去用コンデンサ151等は、上記実施形態の形状や配置に限定されない。例えば、直流除去用コンデンサ入力側電極151A及び直流除去用コンデンサ出力側電極151Bの形状は長方形であるが、要求される直流除去用コンデンサ151の容量に応じて、様々な形状(正方形、円形、楕円形等)が採用され得る。また、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aの形状が生体信号受信用電極12を取り囲むコの字形状とされ、直流除去用コンデンサ入力側電極151Aと対向する直流除去用コンデンサ出力側電極151Bの形状も同じコの字形状とされてもよい。生体信号増幅器13の配置、回路構成、FETの構造やFETを構成する材料等は、上記実施形態のものに限定されない。
【0075】
また、生体信号受信用電極12の数と生体信号増幅器13の数は、共に6つ(同数)であったが、これに限定されない。生体信号増幅器13の数は、生体信号受信用電極12の数より少なくてもよい場合があり得る。例えば、特定の生体信号受信用電極12が振幅の大きな生体信号を受信するためのものである場合、この特定の生体信号受信用電極12には、生体信号増幅器13が接続されていなくてもよい。
【0076】
上記実施形態では、直流除去用コンデンサ151が使用されていたが、計測する生体信号や生体信号増幅器13の構成によっては、直流除去用コンデンサ151が使用されないこともあり得る。
【0077】
上記実施形態では、測定対象となる生体信号は脳波信号であったが、これに限定されない。測定対象となる生体信号は、脳波信号以外の生体信号、例えば、筋電位の変動(筋電位信号)等であってもよい。