特開2017-218421(P2017-218421A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-218421ポリアルキレンポリアミン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218421(P2017-218421A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】ポリアルキレンポリアミン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/08 20060101AFI20171117BHJP
   C07C 211/14 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C07C209/08
   C07C211/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-114393(P2016-114393)
(22)【出願日】2016年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 範之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB60
4H006AB84
4H006AC52
4H006BC51
(57)【要約】
【課題】従来法よりも高収率、選択性の高いポリアルキレンポリアミン類の製造方法を提供する。
【解決手段】1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンをクロロエチルアミン類と反応させる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンをクロロエチルアミン類と反応させることを特徴とするポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項2】
1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジンであることを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項3】
1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンであることを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項4】
クロロエチルアミン類が、2−クロロエチルアミン、ビス(2−クロロエチル)アミン、及びトリス(2−クロロエチル)アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項5】
クロロエチルアミン類が、2−クロロエチルアミン、ビス(2−クロロエチル)アミンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項6】
1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンをクロロエチルアミン類に対して1モル〜30モル当量の範囲で用いて反応を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【請求項7】
反応温度が80℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高収率なポリアルキレンポリアミン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンポリアミンとは、メチレン鎖、エチレン鎖、プロピレン鎖等のアルキレン鎖を介して1級、2級又は3級アミノ基が連なっている分子構造を持つものを意味する。ポリアルキレンポリアミンは、例えば、エポキシ樹脂硬化剤、キレート剤、潤滑剤、医農薬原料に有用な化合物として知られている。
【0003】
ポリアルキレンポリアミンの製造方法として代表的なものは、モノエタノールアミンを原料とし、アンモニア、水素、触媒の存在下で反応を行う方法である(例えば、特許文献1参照)。他にも、原料としてエチレンジアミンやエチレングリコール(EG)を用いる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。これらは、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)等のポリアルキレンポリアミンが収率良く得られる方法である。しかしながら、上記方法においては、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を始めとする、アミノ基を4つ以上有するポリアルキレンポリアミンの収率は十分ではない。
【0004】
アミノ基を4つ以上有するポリアルキレンポリアミンを得る方法としては、例えば、EDC法と呼ばれる方法が挙げられ、具体的には、アンモニアとエチレンジクロリド(EDC)を無触媒下で反応させる方法が例示できる(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法による生成物は、EDA、DETA、TETA、TEPA、PEHA、アミノエチルピペラジン(AEP)、及び各ポリアルキレンポリアミンの構造異性体の混合物(組成物)となるのが一般的である。なお、このような構造異性体としては、例えば、直鎖状、分岐状、及び環状(例えば、分子内にピペラジン環構造等を有する)ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。
【0005】
一方、EDC法における原料をアンモニアからDETAに替えて反応を行う方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法によれば原料の添加時間、及び反応時間が長く、実用的な方法とはいえなかった。
【0006】
以上のように、ポリアルキレンポリアミン類を製造する方法で、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を始めとする、アミノ基を4つ以上有するポリアルキレンポリアミンの生産効率が高い工業的な製造方法はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−510019公報
【特許文献2】特開2009−510020公報
【特許文献3】国際公開第2007/042466号パンフレット
【特許文献4】特開平8−291111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的はポリアルキレンポリアミン類を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下に示すポリアルキレンポリアミン類の製造方法に関するものである。
【0010】
[1]1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンをクロロエチルアミン類と反応させることを特徴とするポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0011】
[2]1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジンであることを特徴とする上記[1]に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0012】
[3]1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンであることを特徴とする上記[1]に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0013】
[4]クロロエチルアミン類が、2−クロロエチルアミン、ビス(2−クロロエチル)アミン、及びトリス(2−クロロエチル)アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0014】
[5]クロロエチルアミン類が、2−クロロエチルアミン、ビス(2−クロロエチル)アミンであることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0015】
[6]1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミンをクロロエチルアミン類に対して1モル〜30モル当量の範囲で用いて反応を行うことを特徴とする上記[1]乃至[5]に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【0016】
[7]反応温度が80℃以上200℃以下であることを特徴とする上記[1]乃至[6]に記載のポリアルキレンポリアミン類の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、従来に比べて目的とするポリアルキレンポリアミン類を高収率で得ることが可能である。
【0018】
また、本発明の製造方法において、クロロエチルアミン類として、ビス(2−クロロエチル)アミンを用いた場合には、従来に比べて直鎖状のポリアルキレンポリアミンを高収率で得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、1級アミノ基を有する原料ポリアルキレンポリアミン(以下、「原料ポリアルキレンポリアミン」と称する。)をクロロエチルアミン類と反応させて、アミノ基を4つ以上有するポリアルキレンポリアミン類(以下、「ポリアルキレンポリアミン類」と称する。)を得ることをその特徴とする。
【0020】
本発明において、原料ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジン等が挙げられる。中でもエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリエチレンポリアミンが好ましい。また、N−メチルエチレンジアミン、N−メチルプロピレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン等の末端が2級、3級のポリアルキレンポリアミンも原料として使用可能である。これらのうち、安価なジエチレントリアミンが特に好ましい。
【0021】
本発明において、クロロエチルアミン類としては、例えば、2−クロロエチルアミン、ビス(2−クロロエチル)アミン、トリス(2−クロロエチル)アミン等が挙げられる。これらのうち、安価なビス(2−クロロエチル)アミン、2−クロロエチルアミンが好ましい。クロロエチルアミン類は塩酸塩であっても問題ない。
【0022】
本発明においては、生成するポリアルキレンポリアミン類(例えば、トリエチレンテトラミンの混合物)とクロロエチルアミンとの逐次反応を抑制するため、原料ポリアルキレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン)を過剰量存在させても良い。収率良くポリアルキレンポリアミン類を得るためには、クロロエチルアミン類のモル数に対して1当量以上の原料ポリアルキレンポリアミンが必要であるが、生産効率との兼合いから、30当量以下が好ましく、さらに20当量以下が好ましい。
【0023】
本発明において、反応を行う際には溶媒を用いても良い。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、DMF、DMSO、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることが可能である。また、これらの溶媒は1種単独のみならず、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも安価な水が好ましい。
【0024】
本発明における反応方式としては、流通式、回分式の何れを採用しても良い。
【0025】
本発明においては、反応温度、反応時間、反応圧力は特に限定されないが、通常、反応温度は80℃〜200℃、反応時間は10分〜3時間、反応圧力は常圧〜20MPaの範囲で行われる。好ましい反応温度は80℃以上150℃以下である。80℃より反応温度が低い場合、反応速度が極めて遅いため実用的ではなく、200℃より高い場合、生成物の分解や腐食等による装置の劣化が加速されるという問題が生じるおそれがある。
【0026】
本発明においては、反応の雰囲気は特に限定されず、例えば空気中、もしくは不活性雰囲気中で行われる。
【0027】
反応完結後は、蒸留操作により目的のポリアルキレンポリアミン類を精製するが、その際、蒸留効率の悪化を防止するため、副生した塩を除去しても良い。副生塩を除去する方法として、例えば、溶媒を留去、濃縮、再結晶、ろ過、遠心分離等の操作によって塩を除去する方法が挙げられる。また、溶媒を留去した後、別の溶媒でポリアルキレンポリアミン類を抽出し、遠心分離操作によって塩を除去する方法も挙げられる。抽出したポリアルキレンポリアミン類は、溶媒を留去した後、減圧蒸留によって精製される。蒸留条件としては特に限定されないが、通常180℃〜230℃、圧力は5mmHg〜20mmHgの範囲で行われる。なお、回収した原料ポリアルキレンポリアミンは、再びポリアルキレンポリアミンを製造する原料として使用しても差支えない。その際、沸点の低いアミンが主留分であるほど、原料回収に掛かるエネルギーコストを低減することができる。
【実施例】
【0028】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0029】
実施例1.
反応容器にジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン/2−クロロエチルアミンのモル比=1となるように加え、オイルバスで100℃に加熱した後、2−クロロエチルアミン水溶液を滴下ロートを用いて滴下し、2時間撹拌を行った。反応液を室温に戻した後、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行った。得られたポリアルキレンポリアミン類の帰属は、ガスクロマトグラフ(GC)における保持時間とMSスペクトル解析によって行った。評価結果を表1に示す。
【0030】
GCは島津製作所製GC−2025を用い、カラムとしてAgilent製キャピラリーカラムDB−1を使用した。生成物を分析した結果、トリエチレンテトラミン(TETA)の収率は53重量%、テトラエチレンペンタミン(TEPA)の収率は23重量%、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の収率は12重量%であった。
【0031】
実施例2〜5.
実施例1において、ジエチレントリアミン/2−クロロエチルアミンのモル比を2〜10の範囲に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表1に示す。
【0032】
実施例6、7.
実施例1において、反応温度を80℃と120℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例8.
反応容器にエチレンジアミン、エチレンジアミン/ビス(2−クロロエチル)アミンのモル比=1となるように加え、オイルバスで100℃に加熱した後、ビス(2−クロロエチル)アミン水溶液を滴下ロートを用いて滴下し、2時間撹拌を行った。反応液を室温に戻した後、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行った。得られたポリアルキレンポリアミン類の帰属は、ガスクロマトグラフ(GC)における保持時間とMSスペクトル解析によって行った。評価結果を表2に示す。なお、表2、表3における直鎖、分岐、環状比率とは、GCチャート中、テトラエチレンペンタミンに帰属される総ピーク面積における各異性体の面積割合を意味する。
【0035】
GCは島津製作所製GC−2025を用い、カラムとしてAgilent製キャピラリーカラムDB−1を使用した。生成物を分析した結果、トリエチレンテトラミン(TETA)の収率は8重量%、テトラエチレンペンタミン(TEPA)の収率は30重量%、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)の収率は25重量%であった。トリエチレンテトラミンの構造異性体の比率は直鎖体が90%、分岐体が5%、環状体が5%であった。
【0036】
実施例9〜14.
実施例8において、エチレンジアミン/ビス(2−クロロエチル)のモル比を2〜20の範囲に変更した以外は実施例8と同様の方法で反応を行った。結果を表1に併せて示す。
【0037】
実施例15、16.
実施例8において、反応温度を80℃と120℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
比較例1.
実施例1において、ジエチレントリアミンの代わりに、アンモニアを用い、2−クロロエチルアミンの代わりに、エチレンジクロリドを用い、アンモニア/エチレンジクロリドのモル比を4、反応温度を150℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示す。
【0040】
比較例2〜5.
比較例1において、アンモニア/エチレンジクロリドのモル比を5〜8の範囲に変更した以外は比較例1と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示す。
【0041】
比較例6.
実施例8において、反応温度を50℃に変更した以外は実施例8と同様の方法で反応を行った。結果を表3に示す。
【0042】
比較例7.
実施例1において、ジエチレントリアミンの代わりにエチレンジアミンを用い、エチレンジアミン/2−クロロエチルアミンのモル比を0.5に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表3に示す。
【0043】
比較例8、9.
比較例7において、エチレンジアミン/2−クロロエチルアミンのモル比を1〜2の範囲に変更した以外は比較例7と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示す。
【0044】
比較例10.
実施例1において、反応温度を50℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表1〜表3より、本発明の方法によれば、ポリアルキレンポリアミン類の製造方法について、従来法よりも高収率、選択性の高いポリアルキレンポリアミン類が得られることが示された。
【0047】
また、表2、表3より、本発明の方法によれば、ポリアルキレンポリアミン類の製造方法について、従来法よりも高収率で直鎖状ポリアルキレンポリアミンが得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、ポリアルキレンポリアミン類を選択的に得る方法として、アミン誘導体の製造分野で広く使用される可能性を有する。