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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-218638(P2017-218638A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/54 20060101AFI20171117BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20171117BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20171117BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20171117BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C23C14/54 A
   C23C14/14 D
   C23C14/34 C
   H01L21/285 S
   H01L21/28 301R
   H01L21/28 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-114624(P2016-114624)
(22)【出願日】2016年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(72)【発明者】
【氏名】高澤 悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓司
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅紀
【テーマコード(参考)】
4K029
4M104
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA04
4K029BA12
4K029BB02
4K029BC03
4K029BD02
4K029CA01
4K029CA05
4K029DB03
4K029DC03
4K029DC13
4K029DC16
4K029DC39
4K029GA01
4K029KA01
4K029KA09
4M104AA04
4M104BB05
4M104DD37
4M104DD39
4M104DD40
4M104DD79
4M104FF17
4M104GG02
4M104GG04
4M104HH02
4M104HH04
4M104HH08
4M104HH12
4M104HH15
(57)【要約】

【課題】マイグレーションが生じやすい金属材料を用いた場合であっても、下地層との間における相互拡散を抑制し、かつ、下地層との界面を平坦化することにより下地層との密着性を向上させることができる成膜技術を提供する。
【解決手段】第2のターゲット12を回転させながら、第1のターゲット11を構成する第1の成膜材料を、スパッタにより第2のターゲット12の表面に堆積させて第2のターゲット12の表面に極薄の中間膜11bを形成する工程と、第2のターゲット12の表面の中間膜11bを構成する第1の成膜材料を、スパッタにより成膜対象物10の表面に堆積させて当該成膜対象物10の表面に極薄の第1の薄膜31を形成する工程と、第2のターゲット12を構成する第2の成膜材料を、スパッタにより、第1の薄膜31が形成された成膜対象物10上に堆積させて第2の薄膜32を形成する工程とを有する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中において、第1の成膜材料からなる第1の成膜源と、前記第1の成膜材料と異なる第2の成膜材料からなる第2の成膜源を用い、成膜対象物上に金属膜を形成する成膜方法であって、
前記第2の成膜源の表面を前記第1の成膜源の表面に対して移動させながら、前記第1の成膜源を構成する前記第1の成膜材料を、PVD法により前記第2の成膜源の表面に堆積させて当該第2の成膜源の表面に極薄の中間膜を形成する工程と、
前記第2の成膜源の表面の前記中間膜を構成する前記第1の成膜材料を、PVD法により前記成膜対象物の表面に堆積させて当該成膜対象物の表面に極薄の第1の薄膜を形成する工程と、
前記第2の成膜源を構成する前記第2の成膜材料を、PVD法により、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて当該成膜対象物上に第2の薄膜を形成する工程とを有する成膜方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の成膜源としてスパッタリングターゲットを用い、
前記第1のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、前記第1の成膜材料を前記第2のターゲットの表面に堆積させて、当該第2のターゲットの表面に前記極薄の中間膜を形成する工程と、
前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、当該第2のターゲットの表面に形成された前記中間膜を構成する前記第1の成膜材料を、前記成膜対象物の表面に堆積させて、当該成膜対象物の表面に前記第1の薄膜を形成する工程と、
前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、前記第2の成膜材料を、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて、当該成膜対象物上に前記第2の薄膜を形成する工程とを有する請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1の成膜源として蒸発源を用い、
前記蒸発源によって前記第1の成膜材料を蒸発させることにより、前記第1の成膜材料を前記第2のターゲットの表面に堆積させて、当該第2のターゲットの表面に前記極薄の中間膜を形成する工程を有する請求項1記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第1の成膜材料がニッケルであり、前記第2の成膜材料が銀である請求項1乃至3のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項5】
成膜対象物上にPVD法によって金属膜を形成する成膜装置であって、
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、第1の成膜材料からなる第1の成膜源と、
前記真空槽内に配置され、前記第1の成膜材料と異なる第2の成膜材料からなり、前記第1の成膜源の表面に対して表面が移動しながら対向するように構成された第2の成膜源と、
前記第1の成膜源を構成する前記第1の成膜材料を前記第2の成膜源の表面に堆積させて極薄の中間膜を形成するための電力を供給する第1の電源と、
前記第2の成膜源の表面に堆積された前記第1の成膜材料を前記成膜対象物の表面に堆積させて第1の薄膜を形成し、かつ、前記第2の成膜源を構成する前記第2の成膜材料を、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて当該成膜対象物上に第2の薄膜を形成するための電力をそれぞれ供給する第2の電源とを有する成膜装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の成膜源である第1及び第2のターゲットと、
前記第1のターゲットがカソードとなるように電力を印加する第1のスパッタ電源と、
前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加する第2のスパッタ電源とを有する請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2のターゲットが、回転可能なロータリーカソードを有する請求項6記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第2のターゲットが、前記第1のターゲットに対する角度が変更するように回転可能なプレーナカソードを有する請求項6記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の成膜源が、前記第1の成膜材料を蒸発させる蒸発源を有する請求項5記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜の成膜技術の分野に関し、特に基板上に金属膜をPVD法によって形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高寿命、高効率の発光素子として、GaN系の半導体材料を用いた発光ダイオードが用いられている。
このようなGaN系の発光ダイオードでは、GaNやAlGaNからなる下地半導体層上に金属からなる反射電極層を形成するものが知られている。
【0003】
このような発光ダイオードでは、反射電極層の材料として、銀(Ag)が用いられているが、銀は熱負荷によってマイグレーションを生じやすく、その結果、下地半導体層との間における相互拡散や表面形状の凹凸等に起因して、反射電極層の反射率が低下したり、下地半導体層との間の接触抵抗が上昇するという問題がある。
このような課題は、発光ダイオードのみならず、銀等のマイグレーションを生じやすい材料を用いて成膜を行う場合にも存在し、その解決手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−182138号公報
【特許文献2】特開2014−220272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、マイグレーションが生じやすい金属材料を用いた場合であっても、下地層との間における相互拡散を抑制し、かつ、下地層との界面を平坦化することにより下地層との密着性を向上させることができる成膜技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本発明は、真空中において、第1の成膜材料からなる第1の成膜源と、前記第1の成膜材料と異なる第2の成膜材料からなる第2の成膜源を用い、成膜対象物上に金属膜を形成する成膜方法であって、前記第2の成膜源の表面を前記第1の成膜源の表面に対して移動させながら、前記第1の成膜源を構成する前記第1の成膜材料を、PVD法により前記第2の成膜源の表面に堆積させて当該第2の成膜源の表面に極薄の中間膜を形成する工程と、前記第2の成膜源の表面の前記中間膜を構成する前記第1の成膜材料を、PVD法により前記成膜対象物の表面に堆積させて当該成膜対象物の表面に極薄の第1の薄膜を形成する工程と、前記第2の成膜源を構成する前記第2の成膜材料を、PVD法により、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて当該成膜対象物上に第2の薄膜を形成する工程とを有する成膜方法である。
本発明では、前記第1及び第2の成膜源としてスパッタリングターゲットを用い、前記第1のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、前記第1の成膜材料を前記第2のターゲットの表面に堆積させて、当該第2のターゲットの表面に前記極薄の中間膜を形成する工程と、前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、当該第2のターゲットの表面に形成された前記中間膜を構成する前記第1の成膜材料を、前記成膜対象物の表面に堆積させて、当該成膜対象物の表面に前記第1の薄膜を形成する工程と、前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加することにより、前記第2の成膜材料を、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて、当該成膜対象物上に前記第2の薄膜を形成する工程とを有する場合にも効果的である。
本発明では、前記第1の成膜源として蒸発源を用い、前記蒸発源によって前記第1の成膜材料を蒸発させることにより、前記第1の成膜材料を前記第2のターゲットの表面に堆積させて、当該第2のターゲットの表面に前記極薄の中間膜を形成する工程を有する場合にも効果的である。
本発明では、前記第1の成膜材料がニッケルであり、前記第2の成膜材料が銀である場合にも効果的である。
また、本発明は、成膜対象物上にPVD法によって金属膜を形成する成膜装置であって、真空槽と、前記真空槽内に配置され、第1の成膜材料からなる第1の成膜源と、前記真空槽内に配置され、前記第1の成膜材料と異なる第2の成膜材料からなり、前記第1の成膜源の表面に対して表面が移動しながら対向するように構成された第2の成膜源と、前記第1の成膜源を構成する前記第1の成膜材料を前記第2の成膜源の表面に堆積させて極薄の中間膜を形成するための電力を供給する第1の電源と、前記第2の成膜源の表面に堆積された前記第1の成膜材料を前記成膜対象物の表面に堆積させて第1の薄膜を形成し、かつ、前記第2の成膜源を構成する前記第2の成膜材料を、前記第1の薄膜が形成された前記成膜対象物上に堆積させて当該成膜対象物上に第2の薄膜を形成するための電力をそれぞれ供給する第2の電源とを有する成膜装置である。
本発明では、前記第1及び第2の成膜源である第1及び第2のターゲットと、前記第1のターゲットがカソードとなるように電力を印加する第1のスパッタ電源と、前記第2のターゲットがカソードとなるように電力を印加する第2のスパッタ電源とを有する場合にも効果的である。
本発明では、前記第2のターゲットが、回転可能なロータリーカソードを有する場合にも効果的である。
本発明では、前記第2のターゲットが、前記第1のターゲットに対する角度が変更するように回転可能なプレーナカソードを有する場合にも効果的である。
本発明では、前記第1の成膜源が、前記第1の成膜材料を蒸発させる蒸発源を有する場合にも効果的である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、第2の成膜源の表面を第1の成膜源の表面に対して移動させながら、第1の成膜源を構成する第1の成膜材料をPVD法によって第2の成膜源の表面に堆積させて第2の成膜源の表面に極薄の中間膜を形成し、この第2の成膜源の表面の中間膜を構成する第1の成膜材料をPVD法によって成膜対象物の表面に堆積させることにより、成膜対象物の表面に例えば1原子層程度の極薄で島状の第1の薄膜を容易に形成することができる。
【0008】
そして、上記第1の薄膜の形成を継続し、例えば第2の成膜源の表面に第1の成膜材料が存在しなくなった時点で、第2の成膜源を構成する第2の成膜材料を第1の薄膜が形成された成膜対象物上にPVD法によって堆積させて成膜対象物上に第2の薄膜を形成することにより、成膜対象物上の下地層との界面部分において第1の成膜材料と第2の成膜材料が接触して合金化し、これにより第2の成膜材料からなる金属層の下地層側の表層部分の性質を改質し、また表面形状を平坦化することができる。
【0009】
その結果、本発明によれば、第2の成膜材料として銀等のマイグレーションが生じやすい材料を用いた場合であっても、下地層との間における相互拡散を抑制するとともに、下地層との界面部分が平坦化されることにより下地層との密着性を向上させることができる。
【0010】
このように、本発明によれば、例えば下地半導体層上に反射電極層を有する発光ダイオードにおいて、反射電極層の反射率の低下や、下地半導体層との間の接触抵抗の上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る成膜装置の例を示す概略構成図
図2】本例の成膜方法の工程の全体を示す説明図(その1)
図3】本例の成膜方法の工程の全体を示す説明図(その2)
図4】本例の成膜方法の工程の全体を示す説明図(その3)
図5】(a)〜(d):同成膜方法の工程の要部を示す説明図
図6】(a)〜(d):同成膜方法によって形成される膜の構成を示す説明図
図7】(a)(b):本発明に係る成膜装置及び成膜方法の他の例を示す全体説明図
図8】実施例及び比較例のサンプルの膜についての波長480nmにおける反射率Rの測定結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る成膜装置の例を示す概略構成図である。
図1に示すように、この成膜装置1は、真空排気手段2に接続された真空槽3を有している。また、真空槽3は、図示しないスパッタガス導入手段に接続され、アルゴン等の所定のスパッタガスを導入するように構成されている。
【0013】
真空槽3の内部の例えば下部には、バッキングプレート4に取り付けられた第1のターゲット(第1の成膜源)11が設けられている。
本実施の形態の場合、第1のターゲット11として、例えばニッケル(Ni)等の第1の成膜材料からなるプレーナ型のターゲットが用いられている。
【0014】
この第1のターゲット11は、真空槽3の外部に設けられた第1のスパッタ電源(第1の電源)21からバッキングプレート4を介して所定の電力が印加されるように構成されている。なお、バッキングプレート4の近傍には、図示しないマグネットが設けられている。
【0015】
真空槽3内の第1のターゲット11の上部の近傍には、第2のターゲット(第2の成膜源)12が、第1のターゲット11と対向するように設けられている。
本実施の形態の場合、この第2のターゲット12として、例えば銀(Ag)等の第2の成膜材料からなる回転可能なロータリー型のターゲットが用いられている。
【0016】
この第2のターゲット12は、真空槽3の外部に設けられた第2のスパッタ電源(第2の電源)22からバッキングプレート5を介して所定の電力が印加されるように構成されている。なお、バッキングプレート5の近傍には、図示しないマグネットが設けられている。
【0017】
そして、本実施の形態では、ガラス基板等の成膜対象物10を水平方向に搬送し、第2のターゲット12の上方の近傍を通過させて成膜を行うように構成されている。
【0018】
真空槽3の例えば上部には、図示しない真空搬送室に接続された搬出入口6が設けられている。
そして、本実施の形態では、この搬出入口6を介して成膜対象物10を真空槽3内に導入し、所定の経路に沿って成膜対象物10を水平方向に搬送させながら成膜を行い、成膜後の成膜対象物10を搬出入口6から真空槽3の外へ搬出するように構成されている。
【0019】
以下、本発明に係る成膜方法の例を説明する。
図2図4は、本例の成膜方法の工程の全体を示す説明図である。
また、図5(a)〜(d)は、同成膜方法の工程の要部を示す説明図である。
さらに、図6(a)〜(d)は、同成膜方法によって形成される膜の構成を示す説明図である。
【0020】
本例では、図2に示すように、搬出入口6を介して成膜対象物10を真空槽3内に搬入した後、真空槽3内を所定の圧力になるように真空排気を行う。
そして、第2のターゲット12を回転させてその表面を第1のターゲット11の表面に対して移動させながら、第1のターゲット11に対して第1のターゲット11がカソードとなるように第1のスパッタ電源21から所定の電力を印加する。
【0021】
これにより、第1のターゲット11を構成する第1の成膜材料のスパッタ粒子11aが回転中の第2のターゲット12に向って飛翔し(図5(a)参照)、第2のターゲット12の表面に第1の成膜材料が堆積し、その表面に例えばニッケルからなる中間膜11bが形成される(図5(b)参照)。この中間膜11bは、島状の1原子層程度の極薄膜からなる。
【0022】
その後、第2のターゲット12を回転させるとともに、第2のターゲット12に対して第2のターゲット12がカソードとなるように第2のスパッタ電源22から所定の電力を印加する。
そして、図3に示すように、成膜対象物10を搬出入口6から離れる方向に移動させ第2のターゲット12の上方を通過させて成膜を行う。
【0023】
これにより、第2のターゲット12の表面の中間膜11bを構成する第1の成膜材料のスパッタ粒子11aが成膜対象物10に向って飛翔し(図5(c)参照)、成膜対象物10の表面に第1の成膜材料が堆積し、その表面に上述した中間膜11bと同等の島状で極薄の例えばニッケルからなる第1の薄膜31が形成される(図6(a)(b)参照)。
【0024】
さらに、第2のターゲット12に対する電力の印加と第2のターゲット12の回転を継続し、例えば第2のターゲット12の表面に第1の成膜材料が存在しなくなるまで成膜対象物10を第2のターゲット12の直上の位置に対して搬出入口6から離れる方向の位置に退避させておく(図3参照)。
【0025】
その後、この退避位置から成膜対象物10を搬出入口6に向って移動させて次の成膜工程を開始する。
具体的には、第2のターゲット12を回転させるとともに、第2のターゲット12に対して第2のターゲット12がカソードとなるように第2のスパッタ電源22から所定の電力を印加する。
【0026】
そして、図4に示すように、成膜対象物10を搬出入口6に向って移動させ第2のターゲット12の上方を通過させて第2の成膜材料のスパッタリングを行う。
これにより、第2のターゲット12を構成する第2の成膜材料のスパッタ粒子12aが成膜対象物10に向って飛翔し(図5(d)参照)、成膜対象物10の表面の島状の第1の薄膜31の表面、並びに、成膜対象物10の表面に第2のターゲット材料が堆積し、その結果、成膜対象物10上に例えば銀からなる第2の薄膜32が形成される(図6(c)参照)とともに、成膜対象物10と第2の薄膜32との界面部分33が第1及び第2の成膜材料によって合金化される(図6(d)参照)。
これにより、成膜対象物10上に目的とする金属膜を得る。
【0027】
以上述べたように本実施の形態では、第2のターゲット12を回転させ、その表面を第1のターゲット11の表面に対して移動させながら、第1のターゲット11を構成する第1の成膜材料をスパッタリングによって第2のターゲット12の表面に堆積させて第2のターゲット12の表面に極薄の中間膜11bを形成し、この第2のターゲット12の表面の中間膜11bを構成する第1の成膜材料をスパッタリングによって成膜対象物10の表面に堆積させることにより、成膜対象物10の表面に例えば1原子層程度の極薄の第1の薄膜31を容易に形成することができる。
【0028】
そして、例えば第2のターゲット12の表面に第1の成膜材料が存在しなくなった時点で、第2のターゲット12を構成する第2の成膜材料を第1の薄膜31が形成された成膜対象物10上にスパッタリングによって堆積させて成膜対象物10上に第2の薄膜32を形成することにより、成膜対象物10との界面部分33において第1の成膜材料(例えばニッケル)と第2の成膜材料(例えば銀)が接触して合金化し、これにより第2の成膜材料からなる第2の薄膜32の下地層側の表層部分の性質を改質し、また表面形状を平坦化することができる。
【0029】
その結果、本実施の形態によれば、第1の成膜材料として銀等のマイグレーションが生じやすい材料を用いた場合であっても、下地層との間における相互拡散を抑制するとともに、下地層との界面部分33が平坦化されることにより下地層との密着性を向上させることができる。
【0030】
このように、本実施の形態によれば、例えば下地半導体層上に反射電極層を有する発光ダイオードにおいて、反射電極層の反射率が低下や、下地半導体層との間の接触抵抗の上昇を防止することができる。
【0031】
図7(a)(b)は、本発明に係る成膜装置及び成膜方法の他の例を示す全体説明図である。
以下、上記例と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0032】
本例では、第2の成膜源として、第2の成膜材料からなるプレーナ型の第2のターゲット12Aが設けられている。
この第2のターゲット12Aは、真空槽3の外部に設けられた第2のスパッタ電源22からバッキングプレート5Aを介して所定の電力が印加されるように構成されている。なお、バッキングプレート5Aの近傍には、図示しないマグネットが設けられている。
【0033】
そして、本例の第2のターゲット12Aは、例えば水平方向に延びる中心軸線を中心として、例えば360°連続的に回転して第1のターゲット11に対する角度を変更できるように構成されている。
【0034】
このような構成を有する本例において成膜対象物10上に成膜を行う場合には、まず、第2のターゲット12Aを回転させてその表面を第1のターゲット11の表面に対して移動させながら、第1のターゲット11に対して第1のターゲット11がカソードとなるように第1のスパッタ電源21から所定の電力を印加する。
【0035】
そして、図7(a)に示すように、例えば第2のターゲット12Aの表面が第1のターゲット11の表面と対向しているタイミングで、第1のターゲット11を構成する第1の成膜材料のスパッタ粒子(図示せず)が第2のターゲット12Aに向って飛翔するように制御し、第2のターゲット12Aの表面に第1の成膜材料を堆積させ、その表面に上述した島状で極薄の中間膜(図示せず)を形成する。
【0036】
その後、図7(b)に示すように、第2のターゲット12Aの表面を上側に向け、第2のターゲット12Aに対して第2のターゲット12Aがカソードとなるように第2のスパッタ電源22から所定の電力を印加する。
そして、上述したように、成膜対象物10を搬出入口6から離れる方向に移動し第2のターゲット12Aの上方を通過させて成膜を行う。
【0037】
これにより、第2のターゲット12Aの表面の中間膜を構成する第1の成膜材料のスパッタ粒子(図示せず)が成膜対象物10に向って飛翔し、成膜対象物10の表面に第1の成膜材料が堆積し、その表面に上述した島状で極薄の第1の薄膜31が形成される(図6(a)(b)参照)。
【0038】
そして、図7(b)に示すように、第2のターゲット12Aの表面に第1の成膜材料が存在しなくなるまで成膜対象物10を第2のターゲット12Aの直上の位置に対して成搬出入口6から離れる方向の位置に退避させておき、その後、第2のターゲット12Aに対して第2のターゲット12Aがカソードとなるように第2のスパッタ電源22から所定の電力を印加し、成膜対象物10を搬出入口6に向って移動させ、第2のターゲット12Aの上方を通過させて第2の成膜材料のスパッタリングを行う。
【0039】
これにより、第2のターゲット12Aを構成する第2の成膜材料のスパッタ粒子(図示せず)が成膜対象物10に向って飛翔し、成膜対象物10の表面の第1の薄膜31の表面、並びに、成膜対象物10の表面に第2の成膜材料が堆積し、その結果、成膜対象物10上に第2の成膜材料からなる第2の薄膜32が形成される(図6(c)参照)とともに、成膜対象物10と第2の薄膜32との界面部分33が第1及び第2の成膜材料によって合金化される(図6(d)参照)。
これにより、成膜対象物10上に目的とする金属膜を得る。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態では、スパッタリングによって第2のターゲット12、12Aの表面に極薄の中間膜11bを形成するようにしたが、本発明はこれに限られず、第1の成膜源として蒸発源を用いて第1の成膜材料を蒸発させ、第1の成膜材料を第2のターゲット12Aの表面に堆積させて第2のターゲット12Aの表面に極薄の中間膜を形成することもできる。
【0041】
また、上記実施の形態では、いわゆる通過成膜によって第1及び第2の薄膜31、32を形成する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、固定成膜によって第1及び第2の薄膜を形成することもできる。
【0042】
ただし、上記実施の形態のように、成膜対象物10を往復移動させ、通過成膜によって第1及び第2の薄膜31、32を順次形成するようにすれば、装置の小型化及び成膜時間の短縮化を図ることができる。
さらに、本発明は、発光ダイオードに限られず、種々の半導体デバイスに適用することができるものである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例>
図1に示す装置と同一の構成を有する成膜装置を用い、成膜対象物である基板上にニッケルからなる第1の薄膜と、銀からなる第2の薄膜の成膜を行った。
【0044】
この場合、第1のターゲットとしては、サイズが127×350mmのニッケルからなるプレーナ型のものを用いた。
また、第2のターゲットとしては、直径155mmで、ターゲット長が300mmのものを用いた。
【0045】
まず、真空槽内に基板を導入し、真空槽内の真空排気とスパッタガスの導入を行った後、ロータリーカソードである第2のターゲットの回転を開始した(10rpm)。
そして、第1のターゲットがカソードとなるように第1のターゲットに対して第1のスパッタ電源から所定の直流電力を印加し、スパッタリングによって第2のターゲットの表面にニッケルからなる極薄の中間膜を形成した。
この場合、成膜時間は、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒とした。
【0046】
その後、第1のターゲットに対する電力の印加を停止し、第2のターゲットに対して第2のターゲットがカソードとなるように第2のスパッタ電源から所定の直流電力を10秒間印加した。
そして、基板の搬送を開始し(搬送速度:300mm/分)、基板を所定方向に移動し、第2のターゲット上を通過させて基板表面にニッケルからなる第1の薄膜を形成した。
【0047】
その後、この基板を反対方向に移動し、第2のターゲット上を通過させて基板上に銀からなる第2の薄膜を形成し、5種類の成膜直後のサンプルを作成した。
これら5種類の成膜直後のサンプルに対し、温度350℃、1時間の条件で真空アニールを行い、5種類の実施例のサンプルを作成した。
【0048】
<比較例>
ニッケルからなる極薄の中間膜を形成せず、それ以外は上記実施例と同一の条件で基板上に銀からなる膜を形成した成膜直後のサンプルと、この成膜直後のサンプルに対して実施例と同一の条件で真空アニールを行った比較例のサンプルを作成した。
【0049】
上記実施例及び比較例のサンプルについて、分光光度計により、それぞれの膜の波長480nmにおける反射率Rを測定した。その結果を図8に示す。
図8から明らかなように、ニッケルからなる極薄の中間膜を形成せず、基板上に銀のみからなる単膜を形成した比較例は、アニール後の反射率が25%以上低下した。
【0050】
これに対し、ニッケルからなる極薄の膜を介して基板上に銀からなる膜を形成した実施例の場合は、成膜直後において高い反射率が得られるとともに、アニール後においても反射率の低下は見られなかった。
ただし、ニッケルからなる中間膜の形成時間が20秒以上のサンプルでは、中間膜の厚さが厚くなるに従い反射率の低下が見られた。
【0051】
以上より、ニッケルからなる中間膜として1原子層程度の島状の極薄膜を形成することにより、銀からなる金属膜のアニール後のマイグレーションを抑制できることを実証することができ、本発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0052】
1……成膜装置
2……真空排気手段
3……真空槽
10……成膜対象物
11……第1のターゲット(第1の成膜源)
12……第2のターゲット(第2の成膜源)
21……第1のスパッタ電源(第1の電源)
22……第2のスパッタ電源(第2の電源)
31……第1の薄膜
32……第2の薄膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8