特開2017-219462(P2017-219462A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017219462-生体試料採取器 図000003
  • 特開2017219462-生体試料採取器 図000004
  • 特開2017219462-生体試料採取器 図000005
  • 特開2017219462-生体試料採取器 図000006
  • 特開2017219462-生体試料採取器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-219462(P2017-219462A)
(43)【公開日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】生体試料採取器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20171117BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20171117BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   G01N1/00 101G
   G01N33/48 S
   G01N1/04 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-115169(P2016-115169)
(22)【出願日】2016年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】富田 努
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB07
2G045DA54
2G052AA29
2G052AB16
2G052BA19
2G052CA04
2G052CA11
2G052JA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境負荷が小さく、生体試料の採取工程で別の生体信号を検知することが可能な生体試料採取器を提供する。
【解決手段】吸収体により生体試料を採取する試料採取部1と、ここで採取した生体試料中の成分に応じた電気信号を出力するセンサ部2とからなるセンサ本体部3と、これらを支持する把持部4とを備えており、把持部がセンサ本体部に着脱自在に取り付けられている。また把持部に別の生体信号を検知するセンサを備えることもできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体により生体試料を採取する試料採取部と該試料採取部で採取した生体試料中の成分に応じた電気信号を出力するセンサ部とからなるセンサ本体部と、該センサ本体部を支持する把持部とを備えた生体試料採取器において、
前記把持部が前記センサ本体部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする生体試料採取器。
【請求項2】
請求項1記載の生体試料採取器において、前記把持部に被験者の生体信号を検知するセンサを備えたことを特徴とする生体試料採取器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体試料採取器に関し、特に唾液、血液等の液状の生体試料に含まれる成分を分析等する際に用いられる生体試料採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体試料中の成分を分析・測定することにより、生体情報を検知できることが知られている(特許文献1)。例えば、唾液中に含まれる唾液アミラーゼやコルチゾールを検知することでストレス度を評価することができる。この場合、被験者から生体試料として唾液を採取する必要がある。一般的な唾液の採取方法は、被験者が口腔内に脱脂綿を含んでしばらく放置し脱脂綿に唾液を十分に浸透させ、次いでこの唾液を含んだ脱脂綿を注射器に入れてピストンで絞り出す方法や、唾液を含んだ脱脂綿を遠心分離機にかける方法等が採られている。
【0003】
これに対して本出願人は、簡便に生体試料を採取することができる生体試料採取器を提案している(特許文献2)。本出願人が先に提案した生体試料採取器を図5に示す。図5に示す生体試料採取器は、生体試料を採取する脱脂綿等からなる試料採取部1と、試料採取部1で採取した生体試料中に含まれる所定の成分に応じて電気信号を出力するセンサ部2と、生体試料を採取する際に被験者が手に持ちセンサ部2と試料採取部1とを支持する把持部4とで構成されている。生体試料として唾液を採取する際には、図5(a)に示す脱脂綿等を用いた吸収体からなる試料採取部1の先端を口腔内に入れ、唾液を採取する。
【0004】
その後、図5(b)に示すように、可動チューブ5を前方にスライドさせ、試料採取部1を覆う。この状態で、可動チューブ5上面から図示しないローラー等で加圧すると、試料採取部1で採取された唾液はセンサ部2へ送られ、所望の測定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2009/017188号公報
【特許文献2】特開2016−45186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような試料採取器では、生体試料が付着した試料採取部1、センサ部2および可動チューブ5は再使用することができず使い捨てとなり、環境負荷が大きかった。また、生体試料(唾液)を採取し、生体試料(例えばコルチゾール)の量という単一の情報だけから所定の測定(ストレス度)を行う機能しかなかった。そのため、センサ部2の出力に基づく生体信号以外の別の生体信号を検知して総合的に判断するのが適切な場合には、別のセンサを用意する必要があった。本発明は、これらの実情に鑑み、環境負荷が小さく、生体試料の採取工程で別の生体信号を検知することが可能な生体試料採取器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、吸収体により生体試料を採取する試料採取部と該試料採取部で採取した生体試料中の成分に応じた電気信号を出力するセンサ部とからなるセンサ本体部と、該センサ本体部を支持する把持部とを備えた生体試料採取器において、前記把持部が前記センサ本体部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の生体試料採取器において、前記把持部に被験者の生体信号を検知するセンサを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生体試料採取器は、把持部がセンサ本体部から着脱自在となっており、測定後はセンサ本体部のみを取り替え、把持部を繰り返し使用することができる。そのため、環境負荷を少なくすることができるという利点がある。
【0010】
さらに把持部を繰り返し使用可能とすることで、センサ本体部から得られるセンサ出力に基づく生体信号とは別の生体信号を検知できるセンサを把持部に備える構成とすることが可能となる。特に生体試料の採取を行っている間に被験者から別の生体信号を検知することができる構成とすることで測定時間の短縮が可能となる。また採取した生体試料に基づく測定結果と、把持部に備えたセンサの出力に基づく測定結果とを総合して判断することで、精度の高い判定が可能となる。
【0011】
具体的には、被験者から唾液を採取し、唾液中に含まれるコルチゾールの量からストレス度を検知すると同時に、把持部に備えたセンサによって体温、心拍数、経皮的動脈血酸素飽和度等を検知できる構成とすることで、コルチゾールの量と体温等の別の生体信号とを検知し、総合的にストレス度を検知することが可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例の生体試料採取器の説明図である。
図2】本発明の第2の実施例の生体試料採取器の説明図である。
図3】本発明の第3の実施例の生体試料採取器の説明図である。
図4】本発明の第3の実施例の脈拍センサの説明図である。
図5】従来の生体試料採取器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の生体試料採取器は、唾液、血液等の液状の生体試料に含まれる成分を分析等する際に用いることができる。以下、本発明の実施例として、生体試料として唾液を採取し、唾液中に含まれるコルチゾールを検出する生体試料採取器を例にとり、本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず本発明の第1の実施例として生体試料採取器を構成する把持部がセンサ本体部から着脱自在となっている場合について説明する。図1は本発明の第1の実施例の生体試料採取器である。従来例同様、生体試料採取器の先端には脱脂面等を用いた吸収体からなる試料採取部1を備え、可動チューブ5で試料採取部1を覆うことが可能となっている。生体試料を採取する際には、可動チューブ5は後方にスライドし、試料採取部1を露出させて使用する。
【0015】
センサ部2は試料採取部1で採取された生体試料が送り込まれ、所定の信号を出力する構成となっている。センサ部2は測定により生体試料が付着するため、試料採取部1と共に使用する毎に交換される。一方把持部4は、繰り返し使用することができるように試料採取部1とセンサ部2を含むセンサ本体部3から着脱自在となっている。例えば図1に示すように、把持部4に形成した係留突起a1とセンサ本体部3に形成した係留穴a2とが嵌合するように、センサ本体部3に把持部4を押し込むことでセンサ本体部3と把持部4を一体とすることができる。また係留突起a1を押圧して把持部4をセンサ本体部3から引き抜くことで、センサ本体部3と把持部4を分離することができる。
【0016】
唾液を採取する際には、センサ本体部3と把持部4を一体とし、可動チューブ5を後方(把持部4側)にスライドさせ、試料採取部1を露出させる。被験者は把持部4を持ち、試料採取部1を口腔内に入れ、唾液を脱脂綿等からなる試料採取部1に十分に浸み込ませる。その後、可動チューブ5を前方(試料採取部1側)へスライドさせて、可動チューブ5上から圧力を加えることで試料採取部1から唾液をセンサ部2へ移動させ所定の測定を行う。
【0017】
一度使用した試料採取部1、センサ部2および可動チューブ5には唾液が付着しているので再度使用することは好ましくない。そこで、係留突起a1を押圧して係留突起a1と係留穴a2の嵌合を外し、センサ本体部3と把持部4とを分離し、センサ本体部3のみを廃棄する。一方再使用する把持部4は、その係留突起a1と別に用意した未使用のセンサ本体部3の係留穴a2とを嵌合させて一体とすることで、新たな生体試料採取器とすることができる。
【0018】
なお、係留突起a1と係留穴a2の嵌合を外すタイミングは、試料採取部1から唾液をセンサ部2へ移動させる前、あるいは試料採取部1から唾液をセンサ部2へ移動させた後、所定の測定を行う前であっても問題ない。
【0019】
このように把持部4を使い捨てせずに再度使用する構成とすると、環境負荷の少ない生体試料採取器を構成することが可能となる。
【実施例2】
【0020】
次に第2の実施例について説明する。上記第1の実施例で説明したように、生体試料を採取する際には、被験者は唾液が試料採取部に浸み込む間は試料採取部を口腔内に保持することになる。そこで第2の実施例では、被験者が試料採取を行っている間に別の生体信号を検出することができる生体試料採取器としている。具体的には別の生体信号として体温を測定する場合について説明する。
【0021】
図2は、把持部4に被験者の体温を測定する温度センサを備えた生体試料採取器を示している。図2において6は赤外線センサ、7は赤外線を伝送するグラスファイバ、8は赤外線センサ6の出力から被験者の体温を検知する信号処理部を示している。図2(a)に示すように、赤外線センサ6、グラスファイバ7および信号処理部8はすべて把持部4内に収納されている。このような構造の把持部4は、第1の実施例同様、センサ本体部3と係留突起a1と係留穴a2を嵌合させることで、図2(b)に示すように一体化することが可能となる。
【0022】
図2(b)に示す生体試料採取器を用いて唾液を採取する際には、被験者は可動チューブ5を後方(把持部4側)にスライドさせ、試料採取部1を露出させて口腔内に入れ、唾液を脱脂綿等からなる試料採取部1に十分に浸み込ませる。このとき、図2(b)に示すグラスファイバ7の先端部も口腔内に入れるようにすると、グラスファイバ7を通して口腔内の温度に基づく赤外線が赤外線センサ6に伝送され、信号処理部8によって所望の信号処理を行うことで被験者の体温を測定することができる。
【0023】
一方、第1の実施例で説明したように、センサ部2において所望の測定を行うことで、唾液中に含まれるコルチゾール量からストレス度がを検知することができる。
【0024】
一度使用した試料採取部1、センサ部2および可動チューブ5を分離、廃棄し、把持部4に未使用のセンサ本体部3を嵌合させることで、新たな生体試料採取器とすることができることも、第1の実施例同様である。
【0025】
ところで一般的にはストレスを受けた場合、一時的あるいは継続的に体温が高くなることが知られている。また、稀に体温が低くなることもある。そこで、センサ本体部3から出力される検知結果と温度センサの検知結果とを総合してストレス度を検知することは、より正確なストレス度の測定方法として有用である。特に、コルチゾール量の測定によりストレス度を測定する場合、コルチゾール量が個人差の大きい指標であるので他の生体信号の測定結果と総合的に判断することは好ましい。さらに継続して測定することで、相対的にストレスの度合いを判断することが重要となる。温度センサを備えた把持部4を繰り返し使用できる構造とすることは、そのような継続的な使用に好適な構造となる。
【0026】
なお、把持部4に温度センサを備える構成とする際、温度センサの構成は適宜変更することが可能である。例えば、グラスファイバーと赤外線センサの組み合わせに限らず、熱電対からなる温度センサとしても良い。
【0027】
また、把持部4に温度センサを動作させるためのバッテリを内蔵させたり、体温測定を開始するためのスタートボタンを備えても良い。また温度センサの出力信号とセンサ部2の出力信号は、それぞれ別々に、あるいは同時に出力可能とする等、種々変更することができる。
【実施例3】
【0028】
次に第3の実施例について説明する。上記実施例1、実施例2同様、生体試料を採取する際には、被験者は唾液が脱脂綿等からなる試料採取器に浸み込む間は試料採取器を保持することになる。そこで第3の実施例では、被験者が試料採取器を把持して試料採取を行っている間に、把持する指先から別の生体信号を検出することができる生体試料採取器について説明する。具体的には別の生体信号として脈拍(心拍)数を測定する場合について説明する。
【0029】
図3は、把持部4に被験者の脈拍を測定する脈拍センサ9を備えた生体試料採取器を示している。図3(a)に示すように、脈拍センサ9が把持部4内に収納されている。このような構造の把持部4は、第1、第2の実施例同様、係留突起a1と係留穴a2を嵌合させることで図3(b)に示すように一体化することが可能となる。
【0030】
図3(b)に示す生体試料採取器を用いて唾液を採取する際には、被験者は、可動チューブ5を後方(把持部4側)にスライドさせ、試料採取部1を露出させて口腔内にいれ、唾液を脱脂綿等からなる試料採取部1に十分に浸み込ませる。このとき、被験者は把持部4の脈拍センサ9に指を当てるようすると、指先の血流を検知し、後述するように信号処理部8によって被験者の脈拍数をカウントすることができる。
【0031】
図4は、被験者が把持部4の脈拍センサ9に指を当てた状態の説明図を示す。図4では、脈拍センサ9を発光素子10および受光素子11を備えたフォトリフレクタで構成した例を示している。受光素子11から出力される測定信号を処理して脈拍を計測する信号処理部8と電源を供給するバッテリ12を備え、さらに被験者が指を押し当てたときに測定を開始するためスイッチ13を備えた構成を示している。
【0032】
被験者が把持部4の脈拍センサ9に指を当てると、スイッチ13がオン状態となり、脈拍の測定が開始される。発光素子10および受光素子11を用いた脈拍の測定は、現在広く用いられている技術であり、その原理等の説明は省略する。
【0033】
一方、上記第1、第2の実施例で説明したように、センサ部2において所望の測定を行うことで、唾液中に含まれるコルチゾール量からストレス度を検知することができる。
【0034】
一度使用した試料採取部1、センサ部2および可動チューブ5は分離、廃棄され、把持部4に未使用のセンサ本体部3を嵌合させることで、新たな生体試料採取器とすることができる。
【0035】
ところで一般的にはストレスを受けた場合、一時的に脈拍数が上昇することが知られている。そこで、センサ本体部3から出力される検知結果と脈拍センサ9の検知結果とを総合してストレス度を検知することは、より正確なストレス度の測定方法として有用である。特に、コルチゾール量の測定によりストレス度を測定する場合、前述同様、コルチゾール量が個人差の大きい指標であるので他の生体信号の測定結果と総合的に判断することが好ましい。さらに継続して測定することで、相対的にストレスの度合いを判断することが重要となる。脈拍センサを備えた把持部4を繰り返し使用できる構造とすることは、そのような継続的な使用に好適な構造となる。
【0036】
なお、把持部4に脈拍センサを備える構成とする際、発光素子と受光素子からなるフォトリフレクタの代わりに別の構成に適宜変更することが可能である。
【0037】
また、発光素子と受光素子からなるフォトリフレクタは、脈動の他、経皮的動脈血酸素飽和度を測定することもでき、ストレスを受けた場合に、一時的あるいは継続的に経皮的動脈血酸素飽和度が低下することが知られている。そこで、センサ本体部3から出力される検知結果と経皮的動脈血酸素飽和度の測定結果とを総合してストレス度を検知するように構成しても良い。脈拍センサの出力信号とセンサ部2の出力信号は、それぞれ別々に、あるいは同時に出力可能とする等、種々変更することができる。
【0038】
以上本発明について、唾液に含まれるコルチゾールの量と他の生体信号の検出結果とを総合してストレス度を検知する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、血液等の生体試料を採取する際にも使用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:試料採取部、2:センサ部、3センサ本体部、4:把持部、5:可動チューブ、6:赤外線センサ、7:グラスファイバ、8:信号処理部、9:脈拍センサ、10:発光素子、11:受光素子、12:バッテリ、13:スイッチ、a1:係留突起、a2:係留穴
図1
図2
図3
図4
図5