【解決手段】ブレードケース(50)が、ブレードマウントのボス部に装着される切削ブレード(40)を収容する収容体(51)と、収容体に着脱可能に装着される蓋体(61)とを備えている。収容体には切削ブレードの挿入孔(46)に遊嵌する凸部(55)と、凸部に遊嵌された切削ブレードのハブ基台(41)に当接して保持する保持部(56)とが形成され、蓋体にはブレードマウントのボス部に挿入される開口(64)と、切削ブレードの把持部を部分的に露出させる切り欠け部(65)とが形成されており、ブレードケースから蓋体ごと切削ブレードを取り出してブレードマウントに装着する構成にした。
ブレードマウントのボス部に挿入される挿入孔が中央に形成され且つオペレータが把持する把持部を表面に有するハブ基台と、該ハブ基台の外周に形成された切刃と、を含む切削ブレードを収容するブレードケースであって、
該切削ブレードを収容する開口部を有する収容体と、該開口部を閉塞及び開放する蓋体と、を含み、
該収容体は、該切削ブレードの挿入孔に遊嵌する凸部と、該凸部に遊嵌された該ハブ基台の該把持部と反対の裏面が当接して該切削ブレードを保持する保持部と、から形成され、
該蓋体は、該ブレードマウントの該ボス部に挿入される大きさの開口と、該切削ブレードが収容され閉塞した状態で該切削ブレードの該把持部の一部を露出させ指の挿入を許容する切り欠け部と、を有し、
該収容体に収容された該切削ブレードは閉塞した該蓋体の該切り欠け部から露出する該ハブ基台の該把持部を該蓋体とともに指で把持され、該ブレードマウントの該ボス部に該ハブ基台の該挿入孔及び該蓋体の該開口を挿入することで、該ブレードマウントを介して加工装置の回転軸に装着されることを特徴とするブレードケース。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態の切削手段の分解斜視図である。なお、
図1では、説明の便宜上、切削ブレードの外周を覆うホイールカバーを省略して記載している。また、切削手段は、本実施の形態のブレードカバーを用いて切削ブレードが装着可能な構成であればよく、
図1に示す構成に限定されない。
【0012】
図1に示すように、加工装置(切削装置)には、チャックテーブル(不図示)上の各種の加工対象物を切削ブレード40で切削する切削手段10が設けられている。切削手段10は、スピンドル20にブレードマウント30が取り付けられ、ブレードマウント30を介してスピンドル20に切削ブレード40が装着されるように構成されている。スピンドル20は、例えばエアスピンドルであり、圧縮エアー層を介してスピンドルハウジング21に対して回転軸22を浮動状態で支持している。スピンドルハウジング21からは回転軸22の先端部分が突出しており、この回転軸22の先端部分にブレードマウント30が取り付けられる。
【0013】
ブレードマウント30は、鉄等の着磁性を有する材料で形成されており、円筒形状のボス部31とボス部31に一体形成されたフランジ形状の環状受面部32とを有している。ボス部31は回転軸方向に延在しており、環状受面部32はボス部31の基端側から半径方向外方に延出している。ブレードマウント30の軸心には、環状受面部32側からスピンドル20の回転軸22の先端部分に嵌め込まれる嵌合孔33(
図4参照)が形成されている。ボス部31の先端面には、円形凹部34が形成されており、円形凹部34の底面には嵌合孔33に連なる貫通孔35が形成されている。
【0014】
スピンドル20の回転軸22の先端面は、ブレードマウント30の嵌合孔33(
図4参照)に嵌め込まれた状態で貫通孔35から露出しており、この露出した回転軸22の先端面にネジ穴23が形成されている。ブレードマウント30のボス部31の貫通孔35に固定ボルト36を差し込んで、貫通孔35から露出したネジ穴23に固定ボルト36を締め付けることで、スピンドル20の回転軸22にブレードマウント30が固定される。このとき、固定ボルト36の頭部38がボス部31の円形凹部34内に収まるため、ボス部31の先端面よりも固定ボルト36の頭部38が突出することがない。
【0015】
切削ブレード40は、ハブブレードであり、略円板状のハブ基台41の外周に切刃45が形成される。切刃45は、例えばダイヤモンド砥粒をボンド剤で結合して円環状に形成されている。ハブ基台41の中央にはブレードマウント30のボス部31に挿入される挿入孔46が形成されている。ハブ基台41の挿入孔46がボス部31に押し込まれると、ハブ基台41からボス部31が突出される。ボス部31の突出部分の外周面には雄ネジ37が形成されており、ボス部31の突出部分の雄ネジ37にリング状のマウントナット39が締め付けられてブレードマウント30に切削ブレード40が固定される。
【0016】
ところで、スピンドル20の周辺にはホイールカバー等の周辺部材が存在しているため、経験不足のオペレータではブレードマウント30に対する切削ブレード40の装着が難しい。すなわち、ブレードマウント30のボス部31に対してハブ基台41の挿入孔46が高精度に形成され、さらにホールカバー等の内側の狭いスペースでボス部31に対してハブ基台41の挿入孔46を位置合わせしなければならない。切削ブレード40の切刃45が剥き出しているため、オペレータの技量によっては切削ブレード40の切刃45が周辺部材に衝突して、周辺部材を傷つけると共に切削ブレード40の切刃45が破損するおそれがあった。
【0017】
そこで、本実施の形態では、切削ブレード40が収容されたブレードケース50(
図2参照)から蓋体61を取り外して、蓋体61ごと切削ブレード40を把持できるようにしている。これにより、切削ブレード40の切刃45を蓋体61でカバーした状態で、切削ブレード40を加工装置の回転軸22に装着することができる。よって、切削ブレード40の切刃45が蓋体61(
図2参照)によって保護されて、ブレードマウント30の周辺部材によって切削ブレード40の切刃45が傷付けられることがなく、オペレータの技量に依らずに回転軸22に対して切削ブレード40を容易に装着することができる。
【0018】
以下、
図2及び
図3を参照して、本実施の形態のフレードケースについて説明する。
図2は、本実施の形態のブレードケースの分解斜視図である。
図3は、本実施の形態のブレードケースの断面模式図である。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ブレードケース50は、切削ブレード40を保管する円形ケースであり、収容体51に蓋体61が装着されることで切削ブレード40の収容空間を形成している。切削ブレード40のハブ基台41は、挿入孔46が形成された基台本体42の外周側に段差を介してテーパ部43が設けられており、このハブ基台41の段差はオペレータが把持するための把持部44になっている。また、把持部44を形成した側をハブ基台41の表面とした場合に、ハブ基台41のテーパ部43の裏面に環状の切刃45が固定されている。切削ブレード40はハブ基台41の裏面側を収容体51側に向けてブレードケース50に収容される。
【0020】
収容体51の底壁52には外周縁に沿って周壁53が形成されており、この周壁53によって切削ブレード40を収容する開口部54が形成されている。収容体51の底壁52の中央には切削ブレード40の挿入孔46に遊嵌する円柱状の凸部55が形成されており、凸部55の周囲には凸部55に遊嵌された切削ブレード40を下方から保持する環状の保持部56が形成されている。保持部56は、ハブ基台41の把持部44とは反対側の裏面に当接することで、ブレードケース50内においてテーパ部43の裏面に固定された切刃45を収容体51から浮かした状態で保持している。
【0021】
蓋体61の上壁62には外周縁に沿って周壁63が形成されており、この周壁63が収容体51の周壁53の内側に入り込むことで蓋体61が収容体51に装着される。蓋体61の上壁62の中央にはブレードマウント30のボス部31(
図1参照)に挿入される大きさの開口64が形成されている。また、蓋体61の上壁62は切削ブレード40(ハブ基台41)の外面形状に倣って段差が形成されており、段差を部分的に切り欠いて一対の切り欠け部65が形成されている。一対の切り欠け部65は、切削ブレード40が収容された収容体51を蓋体61で閉塞した状態で、切削ブレード40の把持部44の一部を露出させて、オペレータの指の挿入(把持)を許容している。
【0022】
ブレードケース50では、収容体51に対する蓋体61の着脱によって収容体51の開口部54が閉塞及び開放され、ブレードケース50に対して切削ブレード40が出し入れされる。ブレードケース50に切削ブレード40を収容する場合には、蓋体61が取り外された収容体51の凸部55に切削ブレード40の挿入孔46を遊嵌させ、収容体51の環状の保持部56に切削ブレード40のハブ基台41が保持(支持)される。そして、切削ブレード40の挿入孔46から突出した凸部55に蓋体61の開口64を遊嵌させ、収容体51に蓋体61を装着することで、ブレードケース50内で切削ブレード40が保管される。
【0023】
一方で、ブレードケース50から切削ブレード40を取り出す場合には、収容体51を閉塞した蓋体61の切り欠け部65から露出するハブ基台41の把持部44を蓋体61と共に指で把持することで、収容体51に収容された切削ブレード40が蓋体61ごと持ち上げられる。そして、ブレードマウント30のボス部31(
図1参照)にハブ基台41の挿入孔46及び蓋体61の開口64を挿入することで、ブレードマウント30を介して加工装置の回転軸22(
図1参照)に装着される。切削ブレード40がブレードケース50の蓋体61にカバーされているため、ブレードマウント30への装着時に周辺部材に切削ブレード40が接触して傷つくことがない。
【0024】
次に、
図4から
図6を参照して、切削ブレードの装着手順について説明する。
図4は、本実施の形態のブレード装着工具の取り付け状態を示す図である。
図5は、本実施の形態の切削ブレードの取り出し状態を示す図である。
図6は、本実施の形態の切削ブレードの装着手順の説明図である。なお、本実施の形態では、ブレード装着工具を用いてブレードマウントに切削ブレードを装着する構成について説明するが、この構成に限定されない。ブレード装着工具を用いずにブレードマウントに切削ブレードを装着してもよい。
【0025】
図4に示すように、ブレード装着工具70は、ブレードマウント30のボス部31に取り付けられて、ボス部31の先端から延びる円筒部71によって切削ブレード40(
図2参照)をボス部31まで案内するように構成されている。円筒部71は、ナイロン等の滑り性が良好な材料によってボス部31と面一になるように形成されている。円筒部71の一端側の角部72は面取りされており、切削ブレード40の挿入孔46(
図2参照)に円筒部71を挿入し易くしている。円筒部71の取付面73には磁石74が埋設されており、磁石74の磁力によって円筒部71の取付面73がボス部31の先端面に固定される。
【0026】
ブレード装着工具70がブレードマウント30のボス部31の先端面に固定されると、円筒部71の外周面とボス部31の外周面が面一になって、円筒部71の長さ分だけボス部31が実質的に延長される。切削ブレード40(
図2参照)の装着方向でブレードマウント30の周辺部材よりもブレード装着工具70が手前側に突き出されているため、ブレードマウント30の周辺部材よりも手前側でブレードマウント30に対する切削ブレード40の位置合わせが可能になっている。また、位置合わせ後の切削ブレード40をブレード装着工具70でブレードマウント30まで案内することが可能になっている。
【0027】
図5に示すように、ブレードケース50から切削ブレード40を取り出す場合には、蓋体61の切り欠け部65から露出した切削ブレード40の把持部44を把持する。そして、収容体51から切削ブレード40を持ち上げることで、切削ブレード40に被せられた蓋体61と共に切削ブレード40が収容体51から取り出される。このように、切り欠け部65を介して切削ブレード40を直に把持することで、切削ブレード40と蓋体61を一体的に持ち上げることが可能になっている。ブレードケース50から取り出された切削ブレード40は、蓋体61にカバーされた状態でブレードマウント30へ持ち運ばれる。
【0028】
図6Aに示すように、切削ブレード40をブレードマウント30に装着する場合には、ブレード装着工具70の円筒部71に対して切削ブレード40の挿入孔46を位置合わせし、円筒部71に対して切削ブレード40の挿入孔46及び蓋体61の開口64が押し込ませる。ブレードマウント30の周辺部材よりも円筒部71の先端側が手前側に突き出ているため、ブレードマウント30に対して切削ブレード40が位置合わせし易くなっている。このとき、切削ブレード40の切刃45が蓋体61に保護されているため、ブレードマウント30の周辺部材に切刃45が直に接触することがない。
【0029】
図6Bに示すように、円筒部71の先端に切削ブレード40の挿入孔46及び蓋体61の開口64を押し込み、円筒部71の外周面に沿って切削ブレード40及び蓋体61をボス部31まで摺動させる。そして、切削ブレード40をボス部31の奥方まで押し込み、ブレードマウント30の環状受面部32に当接させる。このように、切削ブレード40の切刃45が蓋体61に保護された状態で、円筒部71によって切削ブレード40がブレードマウント30のボス部31まで案内される。よって、ブレードマウント30の周辺部材と切削ブレード40の切刃45との接触が確実に抑えられて切刃45が破損することがない。
【0030】
図6Cに示すように、切削ブレード40をブレードマウント30の環状受面部32に当接させると、切削ブレード40の挿入孔46からボス部31の先端側が突出する。そして、磁石74の磁力に抗してボス部31の先端面からブレード装着工具70を引き離すと共に、切削ブレード40から蓋体61を取り外した後、切削ブレード40から突出したボス部31の雄ネジ37にリング状のマウントナット39を締め付ける。このようにして、ブレードマウント30の環状受面部32とマウントナット39との間に切削ブレード40が挟み込まれて、切削ブレード40がブレードマウント30に装着される。
【0031】
以上のように、本実施の形態のブレードケース50は、蓋体61の切り欠け部65から切削ブレード40のハブ基台41の把持部44が露出されており、このハブ基台41の把持部44によって蓋体61と共に切削ブレード40を把持することができる。よって、ブレードマウント30を介して切削ブレード40を加工装置の回転軸に装着する際には、蓋体61の切り欠け部65から露出したハブ基台41の把持部44を把持して、蓋体61に収容された状態で切削ブレード40をブレードマウント30のボス部31に取り付けることができる。切削ブレード40の切刃45が蓋体61によって保護されているため、ブレードマウント30の周辺部材によって切削ブレード40の切刃45が傷付けられることがない。
【0032】
なお、上記した実施の形態において、蓋体61に一対の切り欠け部65が形成される構成にしたが、この構成に限定されない。蓋体61には、切削ブレード40の把持部44に対応して部分的に切り欠け部65が形成されていればよく、例えば、蓋体61に3つ以上の切り欠け部65が形成されていてもよい。
【0033】
また、上記した実施の形態において、切り欠け部65が指の挿入を許容するとは、切り欠け部65が指全体の挿入を許容することではなく、少なくとも指先の部分的な挿入を許容することを示している。したがって、切り欠け部65は、指先の腹が部分的に入り込んで、切削ブレード40の把持部44を把持できる大きさを有していればよい。
【0034】
また、上記した実施の形態において、収容体51の保持部56が凸部55の周囲に環状に形成される構成について説明したが、この構成に限定されない。保持部56は、ブレードケース50内において切削ブレード40の切刃45を浮かした状態で保持可能であればよく、例えば、凸部55の周囲に円弧状に形成されてもよい。
【0035】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0036】
また、本実施の形態では、本発明を切削ブレードのブレードカバーに適用した構成について説明したが、切削ブレードの切刃を破損することなく、ブレードマウントに切削ブレードを装着することができる加工工具の工具カバーに適用することも可能である。