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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222585(P2017-222585A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】ポリペプチドを含むオイルゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20171124BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20171124BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   A61K8/64
   A61K47/42
   A61K8/34
   A61K47/10
   A61K8/19
   A61K47/04
   A61K8/02
   A61K47/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-117593(P2016-117593)
(22)【出願日】2016年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】井村 知弘
(72)【発明者】
【氏名】平 敏影
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 明
(72)【発明者】
【氏名】脇田 和晃
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076DD21
4C076DD34
4C076DD38
4C076DD45
4C076EE27
4C076EE41
4C076EE53
4C076FF35
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC532
4C083AC682
4C083AC712
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD422
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC02
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】様々な極性のオイルを多量に含有可能であり、塗布時の肌なじみが良好で、塗布後の肌のぎらつき感がなく、さらに保存安定性に優れるオイルゲル組成物を提供する。
【解決手段】オイルゲル組成物は、成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)を含有する。成分(a)の含有量が0.05〜5質量%であり、成分(b)の含有量が45〜95質量%であり、成分(c)の含有量が1〜20質量%であり、成分(c)の含有量と成分(d)の含有量との和に対する成分(c)の含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]が60〜99質量%である。成分(a):天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA(トリクロロ酢酸)可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチド。成分(b):25℃で液状の油剤。成分(c):炭素数3〜6の3〜6価アルコール。成分(d):水
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)を含有するオイルゲル組成物であって、前記成分(a)の含有量が0.05〜5質量%であり、前記成分(b)の含有量が45〜95質量%であり、前記成分(c)の含有量が1〜20質量%であり、前記成分(c)の前記含有量と前記成分(d)の前記含有量との和に対する前記成分(c)の前記含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]が60〜99質量%であることを特徴とする、オイルゲル組成物。

成分(a): 天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA(トリクロロ酢酸)可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチド
成分(b): 25℃で液状の油剤
成分(c): 炭素数3〜6の3〜6価アルコール
成分(d): 水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油剤を主成分とするオイルゲル組成物に関し、様々な極性のオイルを多量に含有可能であり、塗布時の肌なじみが良好で、塗布後の肌のぎらつき感がなく、さらに保存安定性に優れるオイルゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医薬品、医薬部外品、生活雑貨品などの分野において、粘度は、製剤の安定性に影響するばかりでなく、消費者の使用性や嗜好性を左右する重要な要素である。したがって、水性製剤だけでなく、油性製剤においても粘度を制御する技術は重要である。
【0003】
油性製剤の粘度を制御する方法としては、例えば、1,2−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸デキストリン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドなどのように、油剤中で燐片結晶や繊維状会合体を形成するオイルゲル化剤が知られている。しかしながら、これらのオイルゲル化剤を使用して調製したオイルゲルは、塗布時の肌なじみが悪く皮膜感が感じられ、シリコーン等の非極性油のゲル化能が低いといった課題があった。
【0004】
特許文献1では、0.1〜15重量%の天然界面活性物質と、0.1〜15重量%の常温で液状を呈する高級アルコールと、1〜30重量%のグリセリンとを含むゲル形成剤の均一系に、極性油を少なくとも含む油相成分を化粧料全量に対して70〜98重量%含有する非水ゲル化粧料が提案されている。
【0005】
特許文献2では、カゼイン塩類0.1〜8重量%、グルタミン酸ポリペプチドおよびフルクタンから選ばれる一種以上の粘性物質0.01〜10重量%、水分0.1〜20重量%、水溶性ポリヒドロキシ化合物1〜40重量%および油脂1〜80重量%を混合してなる含油ゲル状組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−4911号公報
【特許文献2】特開平11−18695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の非水ゲル化粧料は、肌なじみ等の使用感については改善されているものの、実質的に水を含有しないため、塗布後の肌にぎらつきが感じられるという課題があった。また、天然界面活性成分として使用しているエラスチン加水分解物やコラーゲン加水分解物の界面活性能が低いため、極性油の配合を必須とし、スクワラン等の非極性油を単独でゲル化することはできなかった。
【0008】
また、特許文献2の含油ゲル状組成物は、ぬるぬるとした皮膜感が強く、肌なじみが悪いという課題があった。また、シリコーン等の非極性油を多量に含有することはできなかった。
【0009】
本発明の課題は、様々な極性のオイルを多量に含有可能であり、塗布時の肌なじみが良好で、塗布後の肌のぎらつき感がなく、さらに保存安定性に優れるオイルゲル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、特定のポリペプチド、25℃で液状の油剤、炭素数3〜6の3〜6価アルコールおよび水を特定比率で組み合わせて用いたオイルゲル組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、下記の〔1〕である。
〔1〕 下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)を含有するオイルゲル組成物であって、前記成分(a)の含有量が0.05〜5質量%であり、前記成分(b)の含有量が45〜95質量%であり、前記成分(c)の含有量が1〜20質量%であり、前記成分(c)の前記含有量と前記成分(d)の前記含有量との和に対する前記成分(c)の前記含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]が60〜99質量%であることを特徴とする、オイルゲル組成物。

成分(a): 天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA(トリクロロ酢酸)可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチド
成分(b): 25℃で液状の油剤
成分(c): 炭素数3〜6の3〜6価アルコール
成分(d): 水
【発明の効果】
【0012】
本発明のオイルゲル組成物は、様々な極性のオイルを多量に含有可能であり、塗布時の肌なじみが良好で、塗布後の肌のぎらつき感がなく、さらに保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のオイルゲル組成物は、下記の成分(a)〜(d)を含有する。
【0014】
[成分a]
本発明の成分(a)は、天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチドである。
【0015】
ポリペプチドの15質量%TCA可溶率は、ポリペプチドの分解度の尺度として一般的に用いられている。この数値は、ポリペプチド粉末をタンパク質含量として1.0質量%になるように水に分散させ、充分攪拌した溶液について、全タンパク質に対する15質量%トリクロロ酢酸(TCA)可溶性タンパク質の割合を、ケルダール法により測定したものである。タンパク質の分解が進行すると、TCA可溶率は上昇する。
【0016】
成分(a)の15質量%TCA可溶率は20〜60%とする。TCA可溶率が20%未満の場合、成分(a)の水性溶媒への溶解性が低下するため、結果としてゲル化能が不十分となる。この観点から、成分(a)の15質量%TCA可溶率は20%以上とするが、22%以上が更に好ましく、25%以上が一層好ましい。また、TCA可溶率が60%を超える場合、成分(a)の界面活性能が低下することでゲル化能が不十分となる。この観点から、成分(a)の15質量%TCA可溶率は60%以下とするが、58%以下が更に好ましく、55%以下が一層好ましい。
【0017】
成分(a)の全アミノ酸組成におけるBCAA含有率は、ポリペプチドの疎水性の程度を表しており、ポリペプチドが界面活性を発現する上で重要な因子である。例えば、ポリグルタミン酸やポリアスパラギン酸などの単一アミノ酸組成から構成されるポリペプチドは、本発明の成分(a)として用いることができない。
【0018】
成分(a)のBCAA含有率は、一般的なアミノ酸組成分析法に準じて算出することが可能である。具体的には、タンパク質の加水分解物をアミノ酸自動分析装置によって測定した全アミノ酸のモル数に基づき、下記の式(1)から求められる。

BCAA含有率(mol%)=M/M×100 式(1)
(M:BCAA(バリン、ロイシンおよびイソロイシン)に由来するピーク面積から求めたBCAAのモル数の合計
:試料中の全アミノ酸のピーク面積から求めたモル数の合計)
【0019】
アミノ酸組成部分析法は、広範囲の試料に適用でき、定量性・再現性に優れるポストカラム法で測定する。
【0020】
本発明における成分(a)のBCAA含有率は、10〜25mol%とする。成分(a)のBCAA含有率が10mol%未満の場合、ポリペプチドの疎水性が小さすぎるため界面活性を発現できず、ゲル化能が不十分である。この観点から、成分(a)のBCAA含有率は10mol%以上とするが、12mol%以上が更に好ましく、14mol%以上が一層好ましい。また、BCAA含有率が25mol%を超える場合、成分(a)の水性媒体への溶解性が低下するため、ゲル化能が不十分である。この観点から、成分(a)のBCAA含有率は25mol%以下とするが、23mol%以下が更に好ましく、21mol%以下が一層好ましい。
【0021】
本発明の成分(a)として適切な割合のBCAAを含有するポリペプチドとしては、牛乳、大豆、小麦、ゴマ、米、エンドウ、真珠貝、アーモンド、ハチミツ、トウモロコシ等から抽出されるタンパク質又はそれらの加水分解物が挙げられる。それらの中でも、牛乳、小麦および大豆由来のタンパク質又はそれらの加水分解物が特に好ましい。
【0022】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(a)の含有量は0.05〜5質量%とする。成分(a)の含有量が0.05質量%未満の場合、オイルゲルは形成しないので、成分(a)の含有量を0.05質量%以上とするが、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が一層好ましい。また、成分(a)の含有量が5質量%を超える場合、オイルゲルの肌なじみが悪くなるので、成分(a)の含有量を5質量%以下とするが、4質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が一層好ましい。
【0023】
[成分(b)]
本発明の成分(b)は、25℃で液状の油剤であり、植物油、炭化水素油、合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。本発明のオイルゲルは、植物油、炭化水素油、合成エステル油、シリコーン油等のオイルの種類に依存せずゲル化できることが特徴の一つである。
【0024】
成分(b)を構成する植物油としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油等が挙げられる。炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。合成エステル油としては、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−
エチルヘキシル、乳酸ミリスチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド等が挙げられる。シリコーン油としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0025】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(b)の含有量は45〜95質量%とする。成分(b)の含有量が45質量%未満の場合、オイルゲルは形成せず粘稠性の溶液となり、保存安定性が不十分である。この観点からは、成分(b)の含有量を45質量%以上とするが、50質量%以上が更に好ましく、55質量%以上が一層好ましい。また、成分(b)の含有量が95質量%を超える場合、ゲルにオイルを含有することができず、相分離する。この観点からは、成分(b)の含有量は、95質量%以下とするが、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が一層好ましい。
【0026】
[成分(c)]
本発明の成分(c)は、炭素数が3〜6である3価〜6価アルコールであり、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素における3〜6個の水素原子が水酸基に置換された構造を持つ化合物である。成分(c)は、具体的には、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、好ましくはグリセリン、ソルビトールであり、特に好ましくはグリセリンである。1価または2価のアルコールを用いると、オイルゲルを調製できない。
【0027】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(c)の含有量は1〜20質量%とする。成分(c)の含有量が1未満の場合、オイルゲルは形成せず相分離する。こうした観点からは、成分(c)の含有量を1質量%以上とするが、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が一層好ましい。また、成分(c)の含有量が20質量%を超える場合、オイルゲルは形成せず粘稠性の溶液となり、保存安定性が不十分である。こうした観点からは、成分(c)の含有量を20質量%以下とするが、18質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が一層好ましい。
【0028】
[成分(d)]
本発明の成分(d)は水であり、化粧品や医薬品等で一般に使用されている水を使用することができる。例えば、イオン交換水や精製水などを使用することができる。
【0029】
[各成分の比率]
成分(c)の含有量と前記成分(d)の含有量との和に対する成分(c)の含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]は、60〜99質量%とする。[(c/(c+d))×100(%)]が60質量%未満の場合、オイルゲルを形成できない。このため[(c/(c+d))×100(%)]を60質量%以上とするが、62質量%以上が更に好ましく、65質量%以上が一層好ましい。また、[c/(c+d)×100(%)]が99質量%を超える場合、オイルゲル塗布後の肌にぎらつき感があり、好ましくない。このため、[c/(c+d)×100(%)]を99質量%以下とするが、97質量%以下が更に好ましく、95質量%以下が一層好ましい。
【0030】
本発明のオイルゲル組成物は、皮膚もしくは毛髪に適量塗布し化粧料として用いられる他、原料を適切に選択することで、食品や医薬品、その他産業用途にも応用可能である。また、本発明のオイルゲル化粧料には、発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。その他任意成分としては、アルコール類、成分d以外の多価アルコール、糖類、多糖類、アミノ酸、各種界面活性剤、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、香料などを適宜配合することができる。
【実施例】
【0031】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
<ポリペプチド>
実施例、比較例で用いたポリペプチドの種類、15%TCA可溶率、BCAA含有率および由来を示す。ポリペプチド1〜6が本発明の範囲に適合した成分(a)であり、ポリペプチド7〜13が本発明の範囲に適合しない比較成分(a´)である。
【0032】
[15%TCA可溶率の測定]
ポリペプチド粉末をタンパク質含量として1.0質量%になるように水に分散した溶液に、30質量%トリクロロ酢酸(TCA)溶液を等量加え、可溶性タンパク質の割合をケルダール法により測定した
【0033】
[BCAA含有率の測定]
ポリペプチド粉末を6mol/Lの塩酸を用いて110℃で24時間分解し、アミノ酸自動分析装置(L−8800型高速アミノ酸分析計、日立ハイテクノロジーズ、カラム:4.6×6.0mm)を用いて、ポストカラム法によってアミノ酸組成を分析した。分析したアミノ酸組成から、前記式(1)を用いてBCAA含有率を算出した。
【0034】
<オイルゲルの調整方法>
200mLのビーカーに、成分(a)または(a’)と、成分(c)または(c’)と、成分(d)とを投入し、スリーワンミキサーに装着したプロペラを用いて40±5℃で混合しながらポリペプチド溶液を調製した。プロペラでポリペプチド溶液を40±5℃で攪拌しながらゆっくりと成分(b)を投入し、オイルゲルを調製した。尚、複数種類の成分(b)を用いる場合は、予め成分(b)同士を混合して投入した。
【0035】
<ゲルの形成可否>
調製直後のゲルを観察した。下記の基準で判定し、○を合格とした。尚、オイルゲルは全て100gスケールで調製し、ゲルを調製しなかったサンプルについては、その後の評価は行わなかった。
○:オイルゲルが調製できた。
×:オイルゲルが調製できなかった。
【0036】
<使用感の評価>
専門パネラー20名による使用感テストを行った。調製したオイルゲル0.2gを手に取って前腕内側部に塗布してもらい、(1)塗布時の肌なじみ性、(2)塗布後のぎらつき感について、パネラー各人が下記絶対評価にて4段階に評価した。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階評価を行い、AA、AおよびBを合格とした。
【0037】
<評点の合計による4段階評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0038】
(1)塗布時の肌なじみ
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 塗布時の肌なじみが極めて良好
2: 塗布時の肌なじみが良好
1: 塗布時の肌なじみがやや悪い
0: 塗布時の肌なじみが著しく悪い
【0039】
(2)塗布後のぎらつき感
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 塗布後の肌に全くぎらつき感がない
2: 塗布後の肌にぎらつき感がほとんどない
1: 塗布後の肌にややぎらつき感が感じられる
0: 塗布後の肌に著しいぎらつき感が感じられる
【0040】
<長期保存安定性>
調製したオイルゲル30gを50mLのスクリュー管に充填し、40℃の恒温槽で6ヶ月間保管し、その状態を観察した。以下の判定基準で保存安定性を評価し、○を合格とした。
○:外観・臭気ともに調製直後とほとんど変わらない
×:外観・臭気が調製直後と比較して変化している。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
実施例1〜12については、いずれのサンプルにおいてもオイルゲルの形成が確認され、塗布時の肌なじみ性が良好で、塗布後のぎらつき感がなく、保存安定性の高いオイルゲルを得ることができた。
【0047】
一方、比較例1〜15については、十分な効果を発揮するオイルゲルを得られなかった。
すなわち、比較例1〜7では、15%TCA可溶率又はBCAA含有率が本発明の範囲から外れたポリペプチドを使用しているため、オイルゲルを得ることができなかった。
【0048】
比較例8では、成分(a)の含有量が本願の範囲より小さいため、オイルゲルを得ることができなかった。比較例9では、成分(a)の含有量が本願の範囲より大きいため、塗布時の肌なじみ性、塗布後のぎらつき感、および保存安定性において不十分であった。比較例10では、成分(c)の含有量と成分(d)の含有量との和に対する成分(c)の含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]が本願の範囲より小さいため、オイルゲルを得ることができなかった。
【0049】
比較例11では、成分(c)の含有量が本願の範囲を外れているため、オイルゲルを得ることができなかった。
比較例12では、成分(c)の含有量が発明の範囲よりも小さいため、オイルゲルを得ることができなかった。比較例13では、本発明の(c)成分の代わりに、その他成分(c´)である1,3−ブチレングリコールを使用しているため、オイルゲルが得られなかった。
【0050】
比較例14では、ホホバアルコール等を使用することでオイルゲルを調製できたが、水を全く含有しないため、塗布後の肌にぎらつき感が感じられた。比較例15では、カゼインNaとポリ−γ−グルタミン酸を組み合わせることで、オイルをゲル化することはできたが、ぬるぬるとした皮膜感が強く肌なじみが悪かった。また、保存安定性においても不十分であった。比較例16では、成分(d)を含まずに、成分(c)の含有量と成分(d)の含有量との和に対する成分(c)の含有量の質量分率[(c/(c+d))×100(%)]が99質量%を超えるので、オイルゲルを得ることが出来なかった。
【0051】
以下、その他の実施例を挙げて本発明についてさらに説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、調製方法は実施例と同様であるが、その他成分において、水溶性成分は水相に、油性成分は油相に配合した。
【0052】
(実施例13:ボディオイルジェリー)
成分: 配合率(質量%)
成分(a):ポリペプチド5(加水分解大豆タンパク) 0.50
成分(b):スクワラン 20.0
成分(b):オリーブ油 20.0
成分(b):ジメチルポリシロキサン(100cs) 47.0
成分(c):グリセリン 10.0
成分(d):水 2.50
合計 100
(その他成分)
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル):
1.00
シア脂: 1.00
ミツロウ: 1.00
天然ビタミンE(d−δ−トコフェロール): 0.02
酢酸トコフェロール(酢酸dl−α−トコフェロール):0.02
香料: 0.20
ベタイン(トリメチルグリシン): 0.02
トレハロース: 0.02
ヒアルロン酸Na(1%水溶液): 0.01
EDTA−2Na: 0.01
ポリクオタニウム‐51(5%水溶液): 0.10
アスコルビルグルコシド: 0.01
ペンチレングリコール: 0.02
アラントイン: 0.01
グリチルリチン酸ジカリウム: 0.01