【解決手段】水中油型乳化組成物は、成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)を含有する。成分(a)の含有量が0.01〜3質量%であり、成分(b)の含有量が0.1〜50質量%であり、成分(c)の含有量が1〜15質量%であり、成分(d)の含有量が32〜98質量%である。成分(a):天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA(トリクロロ酢酸)可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチド。成分(b):25℃で液状の油剤。成分(c):炭素数3〜6の3〜6価アルコール。成分(d):水
下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)を含有する水中油型乳化組成物であって、前記成分(a)の含有量が0.01〜3質量%であり、前記成分(b)の含有量が0.1〜50質量%であり、前記成分(c)の含有量が1〜15質量%であり、前記成分(d)の含有量が32〜98質量%であることを特徴とする、水中油型乳化組成物。
成分(a): 天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA(トリクロロ酢酸)可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸)含有率が10〜25mol%であるポリペプチド
成分(b): 25℃で液状の油剤
成分(c): 炭素数3〜6の3〜6価アルコール
成分(d): 水
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水中油型乳化組成物は、下記の成分(a)〜(d)を含有する。
[成分(a)]
本発明の成分(a)は、天然由来のポリペプチドであって、15質量%TCA可溶率が20〜60%であり、全アミノ酸組成におけるBCAA(分岐アミノ酸;バリン、ロイシン、イソロイシン)含有率が10〜25mol%であるポリペプチドである。
【0016】
15質量%TCA可溶率は、ポリペプチドの分解度の尺度として一般的に用いられている。この数値は、タンパク質粉末をタンパク質含量として1.0質量%になるように水に分散させ、充分攪拌した溶液について、全タンパク質に対する15質量%トリクロロ酢酸(TCA)可溶性タンパク質の割合をケルダール法により測定したものである。タンパク質の分解が進行すると、TCA可溶率は上昇する。
【0017】
成分(a)の15質量%TCA可溶率は20〜60%とする。TCA可溶率が20%未満の場合、成分(a)の水性溶媒への溶解性が低下するため、結果として乳化製剤の保存安定性が不十分となり、また塗布時にぬるつき感が感じられる。このため、成分(a)の15質量%TCA可溶率を20%以上とするが、22%以上が更に好ましく、25%以上が一層好ましい。また、TCA可溶率が60%を超える場合、成分(a)の界面活性能が低下することで乳化製剤の乳化安定性が低下するばかりでなく、塗布後の肌の滑らかさにおいても不十分である。このため、成分(a)の15質量%TCA可溶率を60%以下とするが、58%が更に好ましく、55%以下が一層好ましい。
【0018】
成分(a)の全アミノ酸組成におけるBCAA含有率は、ポリペプチドの疎水性の程度を表しており、ポリペプチドが界面活性を発現する上で重要な因子である。例えば、ポリグルタミン酸やポリアスパラギン酸などの単一アミノ酸組成から構成されるポリペプチド、又はコラーゲンのようにBCAAをほとんど含まないポリペプチドは、本発明の成分(a)として用いることができない。
【0019】
本発明における成分(a)のBCAA含有率は10〜25mol%とする。成分(a)のBCAA含有率が10mol%未満の場合、ポリペプチドの疎水性が小さすぎるため界面活性を発現できず、乳化製剤の保存安定性の点で不十分である。このため、成分(a)のBCAA含有率を10mol%以上とするが、12mol%以上が更に好ましく、14mol%以上が一層好ましい。また、成分(a)のBCAA含有率が25mol%を超える場合、成分(a)の水性媒体への溶解性が低下するため、乳化製剤の保存安定性が不十分となる。このため、成分(a)のBCAA含有率を25mol%以下とするが、23mol%以下が更に好ましく、21mol%以下が一層好ましい。
【0020】
成分(a)のBCAA含有率は、一般的なアミノ酸組成分析法に準じて算出することが可能である。具体的には、タンパク質の加水分解物をアミノ酸自動分析装置によって測定した全アミノ酸のモル数に基づき、下記の式(1)から求められる。
BCAA含有率(mol%)=M
1/M
2×100 ・・・式(1)
(M
1:BCAA(バリン、ロイシンおよびイソロイシン)に由来するピーク面積から求めたBCAAのモル数の合計
M
2:試料中の全アミノ酸のピーク面積から求めたモル数の合計)
【0021】
アミノ酸組成分析法は、広範囲の試料に適用でき、定量性・再現性に優れるポストカラム法で測定する。
【0022】
本発明の成分(a)として適切な割合のBCAAを含有するポリペプチドとしては、牛乳、大豆、小麦、ゴマ、米、エンドウ、真珠貝、アーモンド、ハチミツ、トウモロコシ等から抽出されるタンパク質又はそれらの加水分解物が挙げられる。それらの中でも、牛乳、小麦および大豆由来のタンパク質又はそれらの加水分解物が特に好ましい。
【0023】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の含有量の合計を100質量%としたとき、成分(a)の含有量は0.01〜3質量%とする。成分(a)の含有量が0.01質量%未満の場合、乳化製剤の保存安定性が不十分である。このため、成分(a)の含有量を0.01質量%とするが、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が一層好ましい。また、成分(a)の含有量が3質量%を超える場合、塗布時にぬるつき感が感じられる。このため、成分(a)の含有量を3質量%以下とするが、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が一層好ましい。
【0024】
[成分(b)]
本発明の成分(b)は25℃で液状の油剤であり、本発明の組成物は、植物油、炭化水素油、合成エステル油、シリコーン油等のオイルの種類に依存せずゲル化できることが特徴の一つとして挙げられる。
【0025】
植物油としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、綿実油、ヤシ油等が挙げられる。炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。合成エステル油としは、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−
エチルヘキシル、乳酸ミリスチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド等があげられる。シリコーン油としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0026】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の含有量の合計を100質量%としたとき、成分(b)の含有量を0.1〜50質量%とする。成分(b)の含有量が0.1質量%未満の場合、塗布後の肌の滑らかさにおいて不十分となる。このため、成分(b)の含有量を0.1質量%以上とするが、0.5質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が一層好ましい。また、成分(b)の含有量が50質量%を超える場合、油の含有量が多すぎて相分離する場合があり、相分離しない場合でも低粘度の製剤を得ることは難しい。このため、成分(b)の含有量を50質量%以下とするが、45質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が一層好ましい。
【0027】
[成分(c)]
本発明の成分(c)は、炭素数が3〜6である3価〜6価アルコールであり、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素における3〜6個の水素原子が水酸基に置換された構造を持つ化合物である。具体的には、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、好ましくはグリセリン、ソルビトールであり、特に好ましくはグリセリンである。1価または2価のアルコールでは、安定な水中油型乳化組成物を得ることができない。
【0028】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の含有量の合計を100質量%としたとき、成分(c)の含有量は1〜15質量%とする。成分(c)の含有量が1質量%未満の場合、乳化製剤の保存安定性が不十分となる。このため、成分(c)の含有量を1質量%以上とするが、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が一層好ましい。また、成分(c)の含有量が15質量%を超える場合、乳化製剤の保存安定性が不十分であるばかりでなく、塗布時のぬめり感が感じられる。このため、成分(c)の含有量を15質量%以下とするが、12質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が一層好ましい。
【0029】
[成分(d)]
本発明の成分(d)は水であり、化粧品や医薬品等で一般に使用されている水を使用することができる。例えば、イオン交換水や精製水などを使用することができる。
【0030】
[水中油型乳化物の調製方法]
本発明の水中油型乳化物の調製方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1) 組成物全量を高圧ホモジナイザー等の強力な機械力を用いて攪拌し、水中油型乳化物を得る。
組成物全量を高圧ホモジナイザー等で乳化する場合は、その方法は特に限定されるものではないが、一般的にはホモミキサー等で全量を予備乳化した後、高圧ホモジナイザー等で処理することで乳化物を得ることができる。
【0031】
(2) ゲル乳化法
成分(d)を前添加成分(d
1)と後添加成分(d
2)とに分ける。成分(c)と前添加成分(d
1)を混合して多価アルコール水溶液を得る。次いで、多価アルコール水溶液に成分(a)を添加してポリペプチド溶液を調製し、このポリペプチド溶液に成分(b)を添加してオイルゲルを得、このオイルゲルに対して後添加成分(d
2)を添加して水中油型乳化組成物を得る。低エネルギーかつ高効率で乳化物を得られる点で、ゲル乳化法が好ましい。
【0032】
なお、ゲル乳化法において、成分(c)と前添加成分(d
1)の和に対する成分(c)の質量分率[(c/(c+d
1))×100]は好ましくは60〜99質量%とする。[(c/(c+d
1))×100]が60質量%未満の場合、オイルゲルが得られないことからゲル乳化法では乳化製剤の保存安定性が低下する場合がある。このため、[(c/(c+d
1))×100]を60質量%以上とするが、より好ましくは62質量%以上であり、一層好ましくは65質量%以上である。また、[(c/(c+d
1))×100]が99質量%を超える場合は、成分(a)の水性媒体への溶解性が低下するため、ゲル乳化法では乳化製剤の保存安定性が低下する場合がある。このため、[(c/(c+d
1))×100]を99質量%以下とするが、97質量%以下が更に好ましく、95質量%以下が一層好ましい。
【0033】
[粒経制御方法]
本発明の水中油型乳化物の粒経、正確には油滴の粒径は、基本的に成分(c)の含有量に応じて制御することができる。成分(a)の含有量が一定である場合、成分(c)の含有量が少なければ乳化物の粒経は小さくなり、成分(c)の含有量が大きくなると乳化物の粒径も大きくなる。
【0034】
また、本発明の水中油型乳化物の粒径は、界面活性剤の添加によっても制御することが可能である。界面活性剤を併用する場合は、ゲル乳化法において調製されるオイルゲルに添加することで乳化物を微細化することができる。界面活性剤の添加量としては、組成物全量に対して好ましくは0.01〜4質量%、より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0035】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。
【0036】
乳液、クリーム、美容液等のスキンケア化粧品として使用する場合は、非イオン性界面活性剤、および陰イオン性界面活性剤が好ましく、洗顔フォーム等の洗浄剤に感触向上剤として使用する場合は、陰イオン性界面活性剤、および両性活性剤が好ましく、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアスタイリング剤等として使用する場合は、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤が好ましい。
【0037】
陰イオン性界面活性剤としては、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩及びアミノ酸塩のものが好ましい。具体的には、硫酸エステル塩として、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられ、スルホン酸塩としは、スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等が挙げられ、カルボン酸塩としては、高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられ、リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、アミノ酸塩
としては、アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等が挙げられる。上記陰イオン性界面活性剤は、いずれも疎水基として炭素数8〜20のアルキル基又は
アルケニル基を有することが好ましい。これらの中では、生体への安全性や効率よく乳化物を微細化できる観点から高級脂肪酸塩、アシルグルタミン酸塩、アシルメチルタウレートが好ましい。
【0038】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル; ポリグリセリン脂肪酸エステル; ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油等のポリアルキレングリコール型;
ポリグリセリンアルキルエーテル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型; 及び脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。これらの中では、生体への安全性や効率よく乳化物を微細化できる観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、アルキルグルコシドが好ましい。
【0039】
両性界面活性剤としては、ベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤、アルキルイミノジカルボン酸系界面活性剤、リン脂質(レシチン)等が挙げられる。ベタイン系としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等が挙げられ、アミンオキシド型としては、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられ、アルキルイミノジカルボン酸系としては、アルキルイミノジ酢酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等が挙げられ、リン脂質としては、レシチン、水添レシチン、リゾレシチン、スフィンゴミエリン等が挙げられる。これらの中で、生体への安全性や効率よく微細乳化できる観点から、アルキルイミノジ酢酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩、水添レシチン、レシチン、リゾレシチンが好ましい。
【0040】
陽イオン性界面活性剤の例としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12〜28の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクダデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等の塩化モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウムや、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム等の塩化ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムや、ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミンの塩酸、クエン酸又は乳酸塩等のモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩や、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの塩酸、クエン酸又は乳酸塩等の長鎖脂肪酸ジメチルアミノプロピルアミド塩が挙げられる。
【0041】
これらの陽イオン性界面活性剤は、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアスタイリング剤等の毛髪化粧料において使用されるが、処理した毛髪の指通りに優れる観点から、塩化モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム及びモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩が好ましい。
【0042】
[その他成分]
本発明の水中油型乳化組成物は、皮膚もしくは毛髪に適量塗布し化粧料として用いられる他、原料を適切に選択することで、食品や医薬品、その他産業用途にも応用可能である。また、本発明の水中油型乳化組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。その他任意成分としては、アルコール類、成分(c)以外の多価アルコール、糖類、多糖類、アミノ酸、固体脂、ワックス、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、顔料、香料などを適宜配合することができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
<本発明に用いたポリペプチド>
実施例、比較例で用いた各ポリペプチドの種類、15%TCA可溶率、BCAA含有率および由来を、表1に示す。ポリペプチド1〜6が本発明の範囲に適合した成分(a)であり、ポリペプチド7〜13が本発明の範囲に適合しない比較成分(a´)である。
【0044】
<乳化物の調整方法>
表2〜表5に示す処方に基づいて、全て100gスケールで、各例の乳化物を調製した。また、以下の二つの方法で乳化物を調製した。
【0045】
(ゲル乳化法)
200mLのビーカーに、成分(a)、成分(c)および前添加成分(d
1)を投入し、スリーワンミキサーに装着したプロペラを用いて40±5℃で混合しながらポリペプチド溶液を調製した。プロペラでポリペプチド溶液を40±5℃で攪拌しながらゆっくりと成分(b)を投入し、オイルゲルを調製した。ここで、複数種類の成分(b)を用いる場合は、予め成分(b)同士を混合して投入した。また、乳化物の粒径を制御するために、界面活性剤を添加する場合は、オイルゲル形成後に投入することが好ましい。最後に、後添加成分(d
2)をオイルゲルに投入し、水中油型乳化物を得た。
【0046】
(高圧乳化法)
200mLのビーカーに全ての原料を投入し、ホモミキサー(6000rpm、5分、80℃)で予備乳化した。この予備乳化液を液高圧ホモジナイザー(40MPa、40±10℃)に1回通過させることで水中油型乳化物を得た。
【0047】
<乳化物の保存安定性>
調製した乳化物を100mLのスクリュー管に充填し、40℃の恒温槽に静置した。1ヶ月後、分離した水相の高さを測定し、下記の基準で判定した。AA、A、およびBを合格とした。尚、調製直後に分離が観察され、評価がEと判定されたエマルションについては、その後の評価を行わなかった。
AA : 分離した水相の高さが0mm以上、5mm未満
A : 分離した水相の高さが5mm以上、10mm未満
B : 分離した水相の高さが10mm以上、15mm未満
C : 分離した水相の高さが15mm以上、20mm未満
D : 分離した水相の高さが20mm以上
E : 調製直後に油水分離が確認された
【0048】
<使用感の評価>
専門パネラー20名による使用感テストを行った。調製した乳化物0.25gを手に取って手の甲に塗布してもらい、(1)塗布時のぬめり感、(2)塗布後の肌の滑らかさについて、パネラー各人が下記絶対評価にて4段階に評価した。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階評価を行い、AA、AおよびBを合格とした。
【0049】
<評点の合計による4段階評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0050】
(1)塗布時のぬめり感
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 塗布時のぬめり感がなく、肌なじみが非常に良好
2: 塗布時のぬめり感があまりなく、肌なじみが良好
1: 塗布時のぬめり感がややあり、肌なじみが悪い
0: 塗布時のぬめり感があり、肌なじみが著しく悪い
【0051】
(2)塗布後の肌の滑らかさ
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3: 塗布後の肌につるつると滑らかな感触が感じられる
2: 塗布後の肌につるつると滑らかな感触がやや感じられる
1: 塗布後の肌につるつると滑らかな感触があまり感じられないる
0: 塗布後の肌にきしみ感が感じられる
【0052】
[実施例1〜14および比較例1〜16]
上記の方法により乳化物を調整し、評価を行った。表2〜表5に処方および結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
実施例1〜14については、いずれのサンプルにおいても安定な乳化物の形成が確認され、塗布時のぬめり感がなく肌なじみ性が良好で、塗布後の肌の滑らかさも良好な感触を付与できた。
【0059】
一方、比較例1〜15については、十分な効果を発揮する乳化物を得られなかった。
すなわち、比較例1〜8では、本発明の成分(a)以外のポリペプチドを使用しているため、本願の効果を全て満たす乳化物を調製できなかった。
【0060】
比較例9では、本発明の成分(c)の代わりに1,3−ブチレングリコールを使用しているため、安定な乳化物を得ることができなかった。比較例10では、本発明の成分(a)を含有していないため、安定な乳化物を得ることができなかった。比較例11では、本成分の成分(a)の含有量が3質量%を超えているため、塗布時のぬめり感、塗布後の肌の滑らかさにおいて不十分であった。比較例12では、本発明の成分(b)の含有量が50質量%を超えているため、安定な乳化物を得ることができなかった。
【0061】
比較例13では、成分(c)の含有量が1質量%未満であり、[(c/(c+d
1))×100(%)]が60質量%未満であるが、安定な乳化物を得ることができなかった。比較例14では、成分(c)の含有量が15質量%を超えており、[(c/(c+d
1))×100(%)]が99質量%を超えているが、乳化物の安定性が悪く、塗布時のぬめり感、塗布後の肌の滑らかさについても不十分であった。
【0062】
比較例15では、成分(a)の代わりにポリペプチドアシル化物を使用しており、調製直後の乳化物の状態は良好であるものの、保存安定性においては不十分であった。また、塗布時の滑らかさも不十分であった。比較例16では、成分(a)の代わりにアルキル変性カルボマーを使用した系であるが、乳化物の保存安定性に関しては改善されるものの、塗布後の肌の滑らかさにおいて不十分であった。
【0063】
以下、その他の実施例を挙げて本発明についてさらに説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、乳化物はゲル乳化法によって調製した。
【0064】
(実施例15:美容液)
成分: 配合率(質量%)
成分(a):ポリペプチド5(加水分解大豆タンパク) 0.50
成分(b):スクワラン 10.0
成分(b):オリーブ油 10.0
(その他油性成分)
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル): 1.00
シア脂: 1.00
ミツロウ: 1.00
天然ビタミンE(d−δ−トコフェロール): 0.02
酢酸トコフェロール(酢酸dl−α−トコフェロール):0.02
香料: 0.20
成分(c):グリセリン 10.0
前添加成分(d
1):水 2.50
【0065】
これらの成分を用いてオイルゲルを調製した。そして、オイルゲルに対して、後添加成分d
2として水を投入し、100質量%となるようにし、水中油型乳化物を得た。次いで、下記の(その他水性成分)を投入した。
【0066】
(その他水性成分)
ベタイン(トリメチルグリシン): 0.02
トレハロース: 0.02
ヒアルロン酸Na(1%水溶液): 0.01
EDTA−2Na: 0.01
ポリクオタニウム‐51(5%水溶液): 0.10
アスコルビルグルコシド: 0.01
ペンチレングリコール: 0.02
アラントイン: 0.01
グリチルリチン酸ジカリウム: 0.01