【解決手段】本発明の酸化亜鉛粉体は、水可溶物の含有量が0.30質量%以下、前記水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比が1:2〜10:1の範囲である。
水可溶物の含有量が0.30質量%以下、前記水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比が1:2〜10:1の範囲であることを特徴とする酸化亜鉛粉体。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛粉体および請求項5に記載の分散液からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有してなることを特徴とする化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の酸化亜鉛粉体、分散液および化粧料の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
[酸化亜鉛粉体]
本実施形態の酸化亜鉛粉体は、水可溶物の含有量が0.30質量%以下、水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比が1:2〜10:1の範囲である。
【0015】
本実施形態の酸化亜鉛粉体における水可溶物の含有量とは、次の方法により測定された値を意味する。なお、この測定方法は、医薬部外品原料規格2006(外原規)に記載されている「67.水可溶物試験法」に準ずる測定方法である。
この測定方法の概略を説明する。
酸化亜鉛粉体5gを秤量し、この酸化亜鉛粉体に純水70mLを加えて5分間煮沸する。次いで、酸化亜鉛粉体と純水の混合液を冷却した後、この混合液に純水を加えて100mLとし、さらに、混合し、その後ろ過する。次いで、初めのろ液10mLを除き、その後得られた、次のろ液40mLを採取する。この採取したろ液を水浴上で蒸発乾固し、次いで、105℃で1時間乾燥させて、乾燥残留物の質量を測定する。この乾燥残留物の質量を、最初に秤量した酸化亜鉛粉体の質量で割った値の百分率を、酸化亜鉛粉体における水可溶物の含有量とする。
【0016】
上記方法と同様にして採取したろ液40mLについて、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)(型番:7500cs、Agilent Technologies社製)を用いて、水可溶物中のアルカリ金属とアルカリ土類金属の含有量を測定する。
【0017】
本実施形態の酸化亜鉛粉体中の酸化亜鉛の含有量とは、次の方法により測定された値を意味する。なお、この測定方法は、医薬部外品原料規格2006(外原規)に記載されている「酸化亜鉛 定量法」に準ずる測定方法である。
酸化亜鉛粉体をマッフル炉に入れて、500℃で恒量になる(質量が変化しない状態になる)まで強熱する。その後、酸化亜鉛粉体を、シリカゲルを入れたガラスデシケーター中で室温まで放冷する。放冷後の酸化亜鉛粉体を1.5g精密に秤量し、水50mLと希塩酸20mLを加え、加熱して、酸化亜鉛粉体を溶解する。不要物が残る場合、硝酸を3滴加えて、その不要物を完全に溶解する。その溶液を室温まで冷却し、水を加えて全量を250mLとする。その溶液25mLに、pH5.0に調整した酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液10mLを加え、薄めたアンモニア水を加えてpHを5〜5.5に調整する。その後、水を加えて250mLとし、指示薬としてキシレノールオレンジ試薬0.5mLを加え、0.05mol/Lエデト酸二ナトリウム液で黄色になるまで滴定する。0.05mol/Lエデト酸二ナトリウム液1mLは、酸化亜鉛4.069mgに相当することから、滴定に要した0.05mol/Lエデト酸二ナトリウム液の量により、酸化亜鉛粉体中の酸化亜鉛の含有量を定量することができる。
【0018】
本実施形態の酸化亜鉛粉体における比表面積とは、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model−1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0019】
本実施形態の酸化亜鉛粉体において、水可溶物の含有量は、0.30質量%以下であり、0.25質量%以下であることがより好ましい。
水可溶物は酸化亜鉛粉体由来の不純物であるため、化粧料で用いられる酸化亜鉛は、水可溶物の含有量が少ないことが好ましく、皮脂固化性を促進できる最低限の成分を除き、出来る限り水可溶物を含まないことがより好ましい。しかしながら、水可溶物の含有量を0にすることは現実的には困難であるため、少量含まれていてもよい。したがって、本実施形態の酸化亜鉛粉体において、水可溶物の含有量の下限値は0.010質量%であってもよく、0.050質量%であってもよく、0.10質量%であってもよく、0.15質量%であってもよい。
また、水可溶物の含有量が0.30質量%を超えると、皮脂が固化するまでに要する時間が長くなる。これは、水可溶物が0.30質量%を超えると、アルカリ金属とアルカリ土類金属の絶対量が多すぎるため、それ自体が酸化亜鉛と脂肪酸の反応を阻害するため、皮脂固化性が低くなると推測される。
【0020】
本実施形態の酸化亜鉛粉体において、アルカリ金属は1種含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。アルカリ金属が2種以上含有されている場合には、2種以上のアルカリ金属の含有量の合計量をアルカリ金属の含有量とする。
本実施形態の酸化亜鉛粉体において、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムを意味する。
【0021】
本実施形態の酸化亜鉛粉体において、アルカリ土類金属は1種含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。アルカリ土類金属が2種以上含有されている場合には、2種以上のアルカリ土類金属の含有量の合計量をアルカリ土類金属の含有量とする。
本実施形態の酸化亜鉛粉体において、アルカリ土類金属とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを意味する。
【0022】
本実施形態の酸化亜鉛粉体に含まれる水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比は、1:2〜10:1であり、1:2〜6:1であることがより好ましく、1:2〜3:1であることがさらに好ましい。アルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比が上記範囲であれば、皮脂が固化するまでに要する時間を短縮することができる。
【0023】
ここで、アルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比を上記範囲にすることにより、皮脂が固化するまでに要する時間を短縮できるメカニズムの詳細は不明であるが、次のように推測される。
ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属は、皮脂成分であるオレイン酸等の脂肪酸と反応して可溶性の脂肪酸塩を形成する。可溶性の脂肪酸塩は汗や水分に溶けて流れやすく、酸化亜鉛と脂肪酸との皮膚上での反応を妨げ、皮脂固化性が低くなると推測される。
それに対してマグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属は、皮脂に含まれる脂肪酸と反応して不溶性の脂肪酸塩を形成する。不溶性の脂肪酸塩は汗や水に流れにくいため、酸化亜鉛と脂肪酸との皮膚上での反応を阻害せず、皮脂固化性を高めると推測される。
化粧料用の酸化亜鉛に含まれる、アルカリ金属やアルカリ土類金属からなる不純物は微量である。しかし、このわずかな不純物の酸化亜鉛における含有量を制御することにより、皮脂が固化するまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
化粧料に使用される酸化亜鉛において、皮脂が固化するまでに要する時間を短縮できることは、化粧崩れを抑制するための非常に重要な特性である。
しかしながら、化粧料に使用される酸化亜鉛においては、水可溶物等の不純物を極力減らすことが求められるため、従来、不純物量を0にするという技術思想はあっても、不純物の成分の比を制御するという知見はなかった。ましてや、その不純物であるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比が、皮脂固化時間に関わっているという知見はなかった。
本発明者らは、水可溶物の含有量を0.30質量%以下とし、水可溶物中のアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比を所定の範囲に調整することにより、皮脂固化時間を短縮できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0024】
本実施形態の酸化亜鉛粉体中における酸化亜鉛の含有量は、99.0質量%以上であることが好ましく、99.1質量%以上であることがより好ましく、99.2質量%以上であることがさらに好ましい。本実施形態の酸化亜鉛粉体中における酸化亜鉛の含有量の上限は、99.9質量%以下であってもよく、99.8質量%以下であってもよく、99.7質量%以下であってもよい。また、本実施形態の酸化亜鉛粉体中における酸化亜鉛の含有量が上記範囲であることにより、水可溶物の含有量を0.30質量%以下とすることができる。
【0025】
本実施形態の酸化亜鉛粉体は、比表面積が8m
2/g以上かつ65m
2/g以下であることが好ましく、15m
2/g以上かつ60m
2/g以下であることがより好ましく、20m
2/g以上かつ50m
2/g以下であることがさらに好ましく、25m
2/g以上かつ45m
2/g以下であることが最も好ましい。
本実施形態の酸化亜鉛粉体の比表面積が上記範囲であることにより、この酸化亜鉛粉体を含有する分散液、化粧料の透明性を高くすることができる。
【0026】
[酸化亜鉛粉体の製造方法]
本実施形態の酸化亜鉛粉体の製造方法は、アルカリ金属とアルカリ土類金属を所望の範囲に制御できる方法であれば特に限定されない。例えば、酸化亜鉛を作製するための原料を洗浄して水可溶物の含有量を0.30質量%以下とし、アルカリ金属とアルカリ土類金属が上記範囲でない場合には、アルカリ土類金属の塩を追加した原料を用いて酸化亜鉛を作製してもよい。
通常、アルカリ金属の方が不純物として多く含まれ、不純物が多くなることは好ましくないため、アルカリ土類金属の塩を必要最低限混合することが好ましい。
また、酸化亜鉛粉体自体に、アルカリ土類金属の塩を混合することにより、アルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比を制御してもよい。
【0027】
アルカリ土類金属の塩としては、皮脂が固化するまでに要する時間を短縮できるものであれば特に限定されないが、例えば、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等のマグネシウム塩、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム等のストロンチウム塩、炭酸バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、酢酸バリウム等のバリウム塩等が挙げられる。
【0028】
[表面処理酸化亜鉛粉体]
本実施形態の酸化亜鉛粉体は、その表面の少なくとも一部が、無機成分および有機成分の少なくとも一方で表面処理されていてもよい。このように無機成分および有機成分の少なくとも一方で表面処理されている酸化亜鉛粉体を、表面処理酸化亜鉛粉体と言う。
無機成分と有機成分は、酸化亜鉛粉体の用途に応じて、適宜選択される。
【0029】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粉体が化粧料に用いられる場合、無機成分および有機成分としては、特に限定されず、一般的に化粧料に用いられる表面処理剤が用いられる。
無機成分としては、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
有機成分としては、例えば、シリコーン化合物、オルガノポリシロキサン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルおよび有機チタネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
また、無機成分または有機成分としては、界面活性剤を用いてもよい。
このような無機成分および有機成分の少なくとも一方で、酸化亜鉛粉体を表面処理した場合、酸化亜鉛の表面活性を抑制したり、酸化亜鉛粉体の分散媒への分散性を向上したりすることができる。
【0030】
表面処理に用いられるシリコーン化合物としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。
これらのシリコーン化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、シリコーン化合物としては、これらのシリコーン化合物の共重合体を用いてもよい。
【0031】
脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0032】
有機チタネート化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0033】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粉体が、紫外線遮蔽フィルムやガスバリア性フィルム等の工業用途で用いられる場合、化粧料に用いられる無機成分や有機成分の他に、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、シランカップリング剤、湿潤分散剤等の分散剤等、粒子を分散させる際に使用される一般的な分散剤も適宜選択して用いることができる。
このような表面処理をした場合、酸化亜鉛の表面活性を抑制したり、酸化亜鉛粉体の分散媒への分散性を向上したりすることができる。
【0034】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粉体の製造方法は、特に限定されず、表面処理に用いる成分に応じて、公知の方法で適宜実施すればよい。
【0035】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の酸化亜鉛粉体と、分散媒と、を含有してなる。
なお、本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も含む。
【0036】
本実施形態の分散液における酸化亜鉛粉体の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。
本実施形態の分散液を化粧料に用いる場合には、分散液における酸化亜鉛粉体の含有量は、30質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上かつ85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上かつ80質量%以下であることがさらに好ましい。
分散液における酸化亜鉛粉体の含有量が上記範囲であることにより、酸化亜鉛粉体が高濃度で含有されるため、処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度を取り扱いが容易な程度とすることができる。
【0037】
本実施形態の分散液の粘度は、5Pa・s以上かつ300Pa・s以下であることが好ましく、8Pa・s以上かつ100Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以上かつ80Pa・s以下であることがさらに好ましく、15Pa・s以上かつ60Pa・s以下であることが最も好ましい。
分散液の粘度が上記範囲であることにより、例えば、固形分(酸化亜鉛粉体)を高濃度に含んでいても、取り扱いが容易な分散液を得ることができる。
【0038】
分散媒は、分散液の用途に応じて、適宜選択される。好適な分散媒を以下に例示するが、本実施形態の分散液における分散媒は、これらに限定されない。
分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類が用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
また、他の分散媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の環状炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類等が用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
また、他の分散媒としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類等が用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
また、他の分散媒としては、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等の疎水性の分散媒を用いてもよい。
【0042】
本実施形態の分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油等が挙げられる。
【0043】
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態の酸化亜鉛粉体と、分散媒とを、公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0044】
本実施形態の分散液は、化粧料の他、紫外線遮蔽機能やガス透過抑制機能等を有する組成物等に用いることができる。
【0045】
[化粧料]
本実施形態の一実施形態の化粧料は、本実施形態の酸化亜鉛粉体および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有してなる。
【0046】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料を意味し、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の酸化亜鉛粉体や分散液を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、公知の方法で配合することにより得られる。
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の酸化亜鉛粉体を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することにより得られる。
【0048】
化粧料における酸化亜鉛粉体の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、酸化亜鉛粉体の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、酸化亜鉛粉体の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の酸化亜鉛粉体によれば水可溶物の含有量が0.30質量%以下、水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属の質量比を1:2〜10:1の範囲であるため、皮脂の固化に要する時間を短縮することができる。
【0050】
本実施形態の表面処理酸化亜鉛粉体によれば、本実施形態の酸化亜鉛粉体の表面の少なくとも一部が、無機成分および有機成分の少なくとも一方で表面処理されているため、酸化亜鉛の表面活性をより抑制することができ、また、分散媒への分散性を向上することができる。
【0051】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の酸化亜鉛粉体と、分散媒と、を含有してなるため、皮脂の固化に要する時間を短縮することができる。
【0052】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の酸化亜鉛粉体および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有してなるため、化粧崩れを抑制することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
酸化亜鉛粉体(A1)(水可溶物0.20質量%、アルカリ金属の含有量12.5μg/mL、アルカリ土類金属の含有量11.5μg/mL、アルカリ金属:アルカリ土類金属(質量比)=1.1:1.0、酸化亜鉛含有量99.5質量%、比表面積37m
2/g)を用意し、実施例1の酸化亜鉛粉体とした。
【0055】
[実施例2]
酸化亜鉛粉体(A2)(水可溶物0.28質量%、アルカリ金属の含有量29.2μg/mL、アルカリ土類金属の含有量3.1μg/mL、アルカリ金属:アルカリ土類金属(質量比)=9.4:1.0、酸化亜鉛含有量99.2質量%、比表面積40m
2/g)を用意し、実施例2の酸化亜鉛粉体とした。
【0056】
[実施例3]
酸化亜鉛粉体(A3)(水可溶物0.24質量%、アルカリ金属の含有量20.5μg/mL、アルカリ土類金属の含有量4.4μg/mL、アルカリ金属:アルカリ土類金属(質量比)=4.7:1.0、酸化亜鉛含有量99.4質量%、比表面積38m
2/g)を用意し、実施例3の酸化亜鉛粉体とした。
【0057】
[比較例1]
酸化亜鉛粉体(A4)(水可溶物0.05質量%、アルカリ金属の含有量3.3μg/mL、アルカリ土類金属の含有量0.21μg/mL、アルカリ金属:アルカリ土類金属(質量比)=15.7:1.0、酸化亜鉛含有量99.9質量%、比表面積29m
2/g)を用意し、比較例1の酸化亜鉛粉体とした。
【0058】
[比較例2]
酸化亜鉛粉体(A5)(水可溶物0.94質量%、アルカリ金属の含有量88.8μg/mL、アルカリ土類金属の含有量13.3μg/mL、アルカリ金属:アルカリ土類金属(質量比)=6.7:1.0、酸化亜鉛含有量98.0質量%、比表面積24m
2/g)を用意し、比較例2の酸化亜鉛粉体とした。
【0059】
[皮脂固化性の評価]
「人工皮脂の作製」
オレイン酸(関東化学社製)10g、スクワラン10g(関東化学社製)、オリーブオイル10g(商品名:EXバージンオイル、BOSCO社製)を混合して人工皮脂を作製した。
実施例1〜3、比較例1〜2の酸化亜鉛粉体各1gと、人工皮脂4gとを混合し、スターラーで攪拌した状態で、人工皮脂が固化するまでの時間を測定し、皮脂固化性を評価した。
その結果、実施例1の酸化亜鉛粉体は2分で固化し、実施例2の酸化亜鉛粉体は9分で固化し、実施例3の酸化亜鉛粉体は7分で固化した。また、比較例1の酸化亜鉛粉体は60分でも固化せず、比較例2の酸化亜鉛粉体は60分で固化した。
【0060】
上記の皮脂固化性の評価により、水可溶物の含有量を0.30質量%以下、水可溶物中におけるアルカリ金属とアルカリ金属の質量比が1:2〜10:1に調整された酸化亜鉛粉体は、皮脂を固化できる時間が短縮されることが確認された。その結果、化粧崩れを抑制できると考えられる。