【課題】本発明が解決しようとする課題は、高速塗布適性、断裁適性、見開き性、初期強度、及び、製本強度に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、結晶性ポリエステルポリオール(a−1)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)、前記(a−2)以外のポリエーテルポリオール(a−3)、アクリルポリオール(a−4)及びポリカプロラクトンポリオール(a−5)を含有するポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤、及び該湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤からなることを特徴とする製本用接着剤に関する。
結晶性ポリエステルポリオール(a−1)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)、前記(a−2)以外のポリエーテルポリオール(a−3)、アクリルポリオール(a−4)及びポリカプロラクトンポリオール(a−5)を含有するポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、結晶性ポリエステルポリオール(a−1)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)、前記(a−2)以外のポリエーテルポリオール(a−3)、アクリルポリオール(a−4)及びポリカプロラクトンポリオール(a−5)を含有するポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0010】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)は優れた製本強度、初期硬度、柔軟性及び低粘度性を得る上で必須の成分であり、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0011】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、接着強度をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールを用いることが好ましい。
【0012】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の数平均分子量としては、オープンタイム及び製本強度をより一層向上できる点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、1,000〜8,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0014】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0015】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0016】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)のガラス転移温度としては、より一層優れた製本強度、初期硬度、柔軟性及び低粘度性が得られる点から、40〜130℃の範囲であることが好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)のガラス転移温度は、JISK7121−1987に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)を入れ、(ガラス転移温度+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0017】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の使用量としては、より一層優れた製本強度、初期硬度、柔軟性及び低粘度性が得られる点から、ポリオール(A)中10〜70質量%の範囲であることが好ましく、30〜60質量%の範囲がより好ましい。
【0018】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)は、基材への浸透性の向上により、非常に優れた初期強度、及び低温時製本強度を得られる点で必須の成分である。前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基とのモル比[EO/PO]としては、より一層優れた初期強度、及び製本強度が得られる点から、3/97〜80/20の範囲であることが好ましく、5/95〜70/30の範囲がより好ましい。
【0019】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)の数平均分子量としては、より一層優れた初期強度、及び低温時製本強度が得られる点から、700〜10,000の範囲であることが好ましく、1,000〜5,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)の数平均分子量は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0020】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)の使用量としては、より一層優れた初期強度、及び低温時製本強度が得られる点から、ポリオール(A)中5〜30質量%の範囲であることが好ましく、7〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
前記(a−2)以外のポリエーテルポリオール(a−3)は、優れた製本強度、皮膜柔軟性及び低粘度性を得る上で必須の成分であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた製本強度、皮膜柔軟性及び低粘度性が得られる点から、ポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0022】
前記ポリエーテルポリオール(a−3)の数平均分子量としては、より一層優れた製本強度、皮膜柔軟性及び低粘度性が得られる点から、200〜10,000の範囲であることが好ましく、400〜8,000の範囲がより好ましく、500〜3,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(a−3)の数平均分子量は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の数平均分子量と同様に測定した値を示す。
【0023】
前記ポリエーテルポリオール(a−3)の使用量としては、より一層優れた製本強度、皮膜柔軟性及び低粘度性が得られる点から、ポリオール(A)中10〜60質量%の範囲であることが好ましく、20〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
前記アクリルポリオール(a−4)は優れた初期強度を得る上で必須の成分であり、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を必須として含有する(メタ)アクリル化合物の重合物を用いることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物及び/又はアクリル化合物を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示し、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を示す。
【0025】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−[1,3]−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの(メタ)アクリル化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、オープンタイム及び接着強度をより一層向上できる点から、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。
【0027】
前記アクリルポリオール(a−4)の数平均分子量としては、オープンタイム及び初期強度をより一層向上できる点から、5,000〜50,000の範囲であることが好ましく、10,000〜30,000の範囲がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(a−4)の数平均分子量は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)の数平均分子量と同様に測定した値を示す。
【0028】
前記アクリルポリオール(a−4)のガラス転移温度としては、オープンタイム及び初期強度をより一層向上できる点から、30〜120℃の範囲であることが好ましく、50〜80℃の範囲がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(a−4)のガラス転移温度は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a−1)のガラス転移温度と同様に測定した値を示す。
【0029】
前記アクリルポリオール(a−4)の使用量としては、オープンタイム及び初期強度をより一層向上できる点から、ポリオール(A)中1〜20質量%の範囲であることが好ましく、3〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0030】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a−5)は優れた初期強度を得る上で必須の成分であり、例えば、前述の水酸基を有する化合物とε−カプロラクトンとの反応物を用いることができる。
【0031】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a−5)の数平均分子量としては、オープンタイム及び初期強度をより一層向上できる点から、5,000〜200,000の範囲であることが好ましく、10,000〜100,000の範囲がより好ましい。
【0032】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a−5)の使用量としては、オープンタイム及び初期強度をより一層向上できる点から、ポリオール(A)中1〜20質量%の範囲であることが好ましく、3〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
前記ポリオール(A)は、結晶性ポリエステルポリオール(a−1)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)、前記(a−2)以外のポリエーテルポリオール(a−3)、アクリルポリオール(a−4)及びポリカプロラクトンポリオール(a−5)を含有するものであるが、必要に応じてその他のポリオールを含有してもよい。
【0034】
前記その他のポリオールとしては、例えば、非晶性ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性及び接着強度の点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0036】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0037】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0038】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、接着強度及び柔軟性をより一層向上できる点から、1.1〜5の範囲が好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0039】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、接着強度をより一層向上できる点から、1.7〜5の範囲であることが好ましく、1.8〜3の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0040】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は前記ウレタンプレポリマーを含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0041】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
以上の方法により得られる本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、コーンプレート粘度計により測定した際の120℃における溶融粘度としては、高速塗布適性、断裁適性及び製本強度の点から、1,000〜10,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜9,000mPa・sの範囲がより好ましく、3,000〜8,000mPa・sの範囲が更に好ましい。なお、前記溶融粘度の測定方法は、後述する実施例にて詳細に記載する。
【0043】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、23℃雰囲気下で塗布し30分放置した後のJISA硬度としては、より一層優れた高速塗布適性、断裁適性及び製本強度が得られる点から、20以上であることが好ましく、23〜90の範囲がより好ましく、25〜80の範囲が更に好ましい。なお、前記JISA硬度の測定方法は、後述する実施例にて詳細に記載する。
【0044】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、23℃雰囲気下で塗布し30分放置して、更に23℃、湿度50%の雰囲気下で1週間放置した後のJISA硬度としては、より一層優れた製本の見開き性が得られる点から、95以下であることが好ましく、50〜90の範囲がより好ましい。なお、前記JISA硬度の測定方法は、後述する実施例にて詳細に記載する。
【0045】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化被膜の上降伏点応力としては、製本の見開き性の点から、7MPa以下であることが好ましく、3〜6MPaの範囲がより好ましい。なお、前記上降伏点応力の測定方法は、後述する実施例にて詳細に記載する。
【0046】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、高速塗布適性、断裁適性、見開き性、初期強度、及び、製本強度に優れるものである。従って、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、紙葉と表紙とを接着する、いわゆる製本用接着剤に非常に適している。
【0047】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤により製本する方法としては、例えば、前記接着剤を複数の紙葉の束の貼り合せ面、及び/又は、表紙の貼り合せ面に塗布し、紙葉と表紙とを貼り合せる方法が挙げられる。
【0048】
前記接着剤を前記貼り合せ面に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等のコーター方式;ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の精密方式;ノズル塗布などを使用することができる。
【0049】
一般的に湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を前記貼り合せ面に塗布する時には、優れた製本強度を得るため、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を例えば、100〜140℃の温度で溶融することが好ましい。なお、本発明においては、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を例えば、60〜100℃の温度で溶融させても優れた製本強度を得ることができる。これにより、冬場など紙の温度が低い場合でも優れた製本強度を発現し、さらには塗布装置の温度を下げることによる消費エネルギーの削減、ポリウレタンホットメルトの経時増粘を抑制できるメリットがある。
【0050】
前記紙葉と表紙とを貼り合せた後は、使用する接着剤の種類に応じて乾燥、養生を公知の方法で行うことが好ましい。
【0051】
前記接着剤により接着剤層の厚さとしては、例えば0.001〜0.5cmの範囲で適宜決定することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0053】
[実施例1]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、結晶性ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとドデカン二酸とを反応させたもの、数平均分子量;3,500、以下、「HG/DDA3500」と略記する。)を36質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;4,000、[EO/PO]=10/90、以下「EOPO4000」と略記する。)を10質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;1,000.以下、「PPG1000」と略記する。)を26質量部、アクリルポリオール(メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートを重合させたもの、数平均分子量;20,000、以下、「MMA/BMA/HEMA20000」と略記する。)を5質量部、ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量;80,000、以下、「PCL80000」と略記する。)を5質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)を18質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0054】
[実施例2]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を32質量部、EOPO4000を10質量部、PPG1000を26質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部、ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量;40,000、以下、「PCL40000」と略記する。)を10質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを17質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0055】
[実施例3]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を21質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物、数平均分子量;3,500、以下「HG/AA3500」と略記する。)を15質量部、EOPO4000を10質量部、PPG1000を26質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部、PCL80000を5質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを18質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0056】
[実施例4]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を16質量部、HG/AA3500を16質量部、EOPO4000を10質量部、PPG1000を26質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部、PCL40000を10質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを17質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0057】
[比較例1]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を35質量部、PPG1000を26質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部、PCL80000を5質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを19質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た
【0058】
[比較例2]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を41質量部、EOPO4000を10質量部、PPG1000を26質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを18質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0059】
[比較例2]
攪拌機、温度計を備えた4ツ口フラスコに、HG/DDA3500を40質量部、PPG1000を36質量部、MMA/BMA/HEMA20000を5質量部入れ混合し、100℃で減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを19質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得た。
【0060】
[120℃における溶融粘度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で1時間溶融した後に、1mlをサンプリングし、コーンプレート粘度計(40Pコーン、ローター回転数;50rpm)にて溶融粘度を測定した。
【0061】
[JISA硬度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で1時間溶融した後に、23℃の雰囲気下で直径56mm、高さ8mmの円柱状の金型に流し込み、30分放置した後の円柱成形物表面のJISA硬度(初期硬度)及び、その後、23℃、湿度50%の雰囲気下で1週間放置した後の前記円柱成形物表面のJISA硬度(最終硬度)をJISK7312−1996に準拠して測定した。
【0062】
[上降伏点応力の測定方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で溶融した後に、離型処理されたポリエチレンテレフタラートフィルム上に塗布後の厚さが100μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、23℃、湿度50%の条件下で1週間放置し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化被膜を得た。得られた厚さ100μmの硬化被膜の上降伏点応力(MPa)をJISK7311−1995に準拠して測定した。
【0063】
[高速塗布適性の評価方法]
実施例及び比較例で得られたで湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃に溶融し、2本ロールコーターの間に入れ、50m/分の速度で回転させ、ロールの両端の糊止から接着剤が溢れないものを高速塗布適性が「T」、溢れるものを「F」と評価した。
【0064】
[断裁適性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃に溶融し、アプリケーターを用いて紙上に厚さが400μmとなるように塗布し、5分放置後に断裁機により断裁し、刃に接着剤の糊残りがあるか否かを目視で確認した。刃に接着剤の糊残りがない場合は断裁適性が「T」、糊残りがある場合は「F」と評価した。
【0065】
[初期強度の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で1時間溶融した後に、0.25mmの厚さの表紙上にアプリケーターを使用して400μmの厚さで塗工し、該塗工面に100枚の紙葉(上質紙、1枚の厚さ;0.09mm)の束を貼り付けて、5分後に株式会社島津製作所製の精密万能試験機「AG−10NX」を使用して接着強度(N/25mm)を測定し、初期強度を以下のように評価した。
「T」:接着強度が8(N/25mm)以上である。
「F」:接着強度が8(N/25mm)未満である。
【0066】
[製本サンプルの作製方法1]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で1時間溶融した後に、0.25mmの厚さの表紙上にアプリケーターを使用して400μmの厚さで塗工し、接着剤塗工面を120℃に調整し、該塗工面に100枚の紙葉(上質紙、1枚の厚さ;0.09mm)の束を貼り付け、その後、23℃、湿度50%の条件下で2日放置し、製本サンプルを得た。
【0067】
[製本サンプルの作製方法2]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で1時間溶融した後に、0.25mmの厚さの表紙上にアプリケーターを使用して400μmの厚さで塗工し、接着剤塗工面を80℃に調整し、該塗工面に100枚の紙葉(上質紙、1枚の厚さ;0.09mm)の束を貼り付け、その後、23℃、湿度50%の条件下で2日放置し、製本サンプルを得た。
【0068】
[見開き性の評価方法]
製本サンプルの作製方法1で得られた製本サンプルを手で開いて以下のように見開き性の評価を行った。
「T」:本を開いた後、放置しても本が閉じず、紙葉も浮き上がらない。
「F」:本を開いた後、手を離すと本が閉じてしまう。
【0069】
[製本強度(接着剤温度120℃)の評価方法]
製本サンプルの作製方法1で得られた製本サンプルに対して、株式会社島津製作所製の精密万能試験機「AG−10NX」を使用して接着強度(N/25mm)を測定し、製本強度を以下のように評価した。
「T」:接着強度が30(N/25mm)以上である。
「F」:接着強度が30(N/25mm)未満である。
【0070】
[低温時製本強度(製本強度(接着剤温度80℃))の評価方法]
製本サンプルの作製方法2で得られた製本サンプルに対して、株式会社島津製作所製の精密万能試験機「AG−10NX」を使用して接着強度(N/25mm)を測定し、製本強度を以下のように評価した。
「T」:接着強度が30(N/25mm)以上である。
「F」:接着強度が30(N/25mm)未満である。
【0071】
【表1】
【0072】
本発明の製本用接着剤は、高速塗布適性、断裁適性、見開き性、初期強度、及び、製本強度に優れることが分かった。
【0073】
一方、比較例1は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)を用いない態様であるが、低温時製本強度が不十分であった。
【0074】
また、比較例2は、ポリカプロラクトンポリオール(a−5)を用いない態様であるが、初期強度が不良であった。
【0075】
比較例3は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a−2)及びポリオカプロラクトンポリオール(a−5)を用いない態様であるが、初期強度及び低温時製本強度が不良であった。