【課題】本発明が解決しようとする課題は、80℃未満の温度領域下においては非常に優れた接着力を備え、かつ、短時間加熱することによってその接着力を急激に低下させる粘着テープを提供することである。
【解決手段】本発明は、粘着剤層と必要に応じて基材層とを備えた易剥離性粘着テープであって、前記粘着剤層または前記基材層が、誘導電流によって発熱し得る機構(X)を備えたものであり、2以上の被着体の接着に使用され、前記接着された2以上の被着体を分離できるときの前記粘着剤層または前記基材層の温度が80℃以上であることを特徴とする易剥離性粘着テープに関するものである。
粘着剤層と必要に応じて基材層とを有する易剥離性粘着テープであって、前記粘着剤層及び前記基材層の少なくとも一方が、誘導電流によって発熱し得る機構(X)を備えたものであり、2以上の被着体の接着に使用し、前記接着された2以上の被着体を分離できるときの前記粘着剤層の温度が80℃以上であることを特徴とする易剥離性粘着テープ。
23℃下でガラス板と前記易剥離性粘着テープとを貼付しその表面で2kgローラーを一往復させた後、温度23℃の環境下に30分静置して得た試験片を用い、温度23℃の環境下で測定された180°剥離接着強度が3N/20mm以上である請求項1に記載の易剥離性粘着テープ。
2以上の被着体が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の易剥離性粘着テープによって接着された構成を有する物品を解体する方法であって、前記易剥離性粘着テープが有する発熱機構(X)に誘導電流を発生させることで、前記粘着剤層の温度を80℃以上にし、その後、前記被着体を分離することを特徴とする物品の解体方法。
車載用情報表示装置または携帯電子端末を構成する2以上の部品が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の易剥離性粘着テープによって接着された構成を有する車載用情報表示装置または携帯電子端末。
前記易剥離性粘着テープが有する発熱機構(X)に誘導電流を発生させることで、前記粘着剤層または前記基材層の温度を80℃以上にし、その後、前記部品を分離することを特徴とする車載用情報表示装置または携帯電子端末の解体方法。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、例えば車載用情報表示装置、携帯電子端末、コピー機能やスキャン機能等を備えた複写機や複合機をはじめとする様々な電子機器の製造場面で使用されている。
【0003】
前記粘着テープとしては、例えば不織布基材の両面に粘着剤層が形成された両面接着テープであって、該両面接着テープの層間破壊面積率が10%以下であり、かつ両面接着テープの引張り強度がMD方向(縦方向)及びTD方向(横方向)共に20N/10mm以上であることを特徴とする両面接着テープが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
一方、前記電子機器の使用が尽くされた際、前記電子機器は手作業で解体され、それを構成する部品は材質ごとに分別され、廃棄またはリサイクルされることが多い。具体的には、前記複写機や複合機の場合であれば、それを構成する透明天板と、そのきょう体とは、手作業で解体され、材質ごとに分別され、廃棄またはリサイクルされることが多い。
【0005】
しかし、前記透明天板は、その表面に、原稿、画像及び書籍等の紙媒体が繰り返し置かれることで荷重されることを想定し、きょう体と強固に接着されているため、それを手作業で容易に解体することができない場合があった。
【0006】
そこで、前記電子機器の解体現場では、手作業で前記透明天板ときょう体とを解体する代わりに、前記透明天板の一部を、切削機等を用いて切り取る方法が検討されている。
【0007】
しかし、前記切り取り作業は、長時間を要する場合が多く、解体作業効率を低下させるため好まれない場合があった。また、前記透明天板の一部は、依然としてきょう体の一部に接着された状態であるため、それらを分別して廃棄することができず、その廃棄処理に多大な費用がかかる場合があった。
【0008】
このように、およそ80℃未満の温度領域、特に20℃〜60℃程度の温度領域下においては2以上の被着体を強固に接着することができ、かつ、短時間の加熱を行うことによって急激に接着力を低下させ、接着された2以上の被着体を分離することの可能な粘着テープの開発が求められていた。
【0009】
ところで、2以上の被着体を強固に接着することができ、かつ、加熱等することによって接着力を低下させ被着体同士を分離できる特性を備えた粘着テープとしては、例えば加熱水蒸気発生装置を用い加熱及び加湿することによって解体できる粘着テープが知られている(例えば特許文献2参照。)
【0010】
前記解体方法であれば、前記粘着テープで固定された2以上の部品(被着体)を容易に分離することができる場合がある。しかし、前記解体方法では、前記部品の周辺領域も熱の影響を受けるため、前記周辺領域に熱等に弱い部品が使われている場合に、それらの故障や劣化を引き起こす場合があった。とりわけ、前記被着体が、電子機器を構成する電子部品や樹脂きょう体等の比較的熱に弱く、高価な部品である場合、前記解体時の熱等の影響によって部品の故障や変形等を引き起こし、前記部品をリサイクルすることができない場合があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の粘着テープは、粘着剤層と必要に応じて基材層とを有する易剥離性粘着テープであって、前記粘着剤層及び前記基材層の少なくとも一方が、誘導電流によって発熱し得る機構(X)を備えたものであり、2以上の被着体の接着に使用し、前記接着された2以上の被着体を分離できるときの前記粘着剤層の温度が80℃以上であることを特徴とする。
【0018】
ここで、「前記接着された2以上の被着体を分離できるときの前記粘着剤層の温度」とは、一方の被着体から他方の被着体または易剥離性粘着テープを180°方向に300mm/分の速度で引き剥がすことによって測定された接着力が3N/20mm以下、好ましくは0.3N/20mm以下となるときの温度を指す。
【0019】
本発明の易剥離性粘着テープは、常温下において粘着性(タック感)を有する、いわゆる感圧接着テープであるから、被着体への貼付に際して加熱等を必要とせず、例えば指やローラー等で圧力をくわえることで、被着体と粘着剤層とを密着させることができる。
【0020】
本発明の易剥離性粘着テープとしては、単層または2層以上の粘着剤層によって構成されたいわゆる基材レスの粘着テープ、基材の片面または両面に、直接または他の層を介して前記粘着剤層を有する粘着テープを使用することができる。前記粘着テープとしては、基材の両面に、直接または他の層を介して前記粘着剤層を有する粘着テープを使用することが好ましい。
【0021】
本発明の易剥離性粘着テープが有する、誘導電流によって発熱し得る機構(X)としては、例えば電磁誘導加熱装置を前記粘着テープに接近させることで前記誘導電流を発生させ、その誘導電流に対する粘着テープの抵抗が熱に変換されることによって発熱する機構が挙げられる。
【0022】
前記機構(X)は、本発明の易剥離性粘着テープを構成する粘着剤層または必要に応じて使用可能な基材に備えられていることが好ましい。
【0023】
前記誘導電流によって発熱し得る機構(X)を備えた粘着剤層としては、従来知られた粘着成分と、例えば金属とを含有する粘着剤層を使用することができる。
【0024】
前記粘着剤層に含まれる金属は、誘導電流によって発熱する粒状、線状のものであれば特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、フェライト等またはこれらの混合材料からなる導電性を有するものが好ましい。
【0025】
前記金属のうち粒子状のものとしては、その粒径が50メッシュ以下程度のものが好ましく、鉄粉、アルミニウム粉、ステンレス粉、フェライト粉等のアトマイズ粉が好適に使用され、フェライト粉などのような磁性体を使用することが好ましい。
【0026】
前記金属のうち線状のものとしては、例えば、ステンレス繊維等が挙げられ、線径40〜120μm、長さ1〜10mm程度のものを使用することが好ましい。前記線状のものとしては、モノフィラメト(単一繊維)であっても、複数の繊維を束ねたり捻る等して得られた撚り(ひねり)線状のものを使用することができる。
【0027】
前記金属は、前記粘着剤層に含まれる前記金属以外の成分の合計100質量部に対し、10質量部〜200質量部の範囲で使用することが好ましく、20質量部〜150質量部の範囲で使用することが、およそ80℃以下、好ましくは常温下で優れた接着力を備え、かつ、誘導電流を発生させることによって短時間で接着力を低下できる効果を奏するうえでより好ましい。
【0028】
前記金属は、粘着剤層に埋没した状態であることが、常温での優れた接着力を発現するうえで好ましい。したがって、前記金属の大きさ(例えば粒径)は、後述する粘着剤層の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0029】
前記粘着剤層を構成する粘着成分としては、例えば天然ゴム系重合体や合成ゴム系重合体等のゴム系重合体、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、ウレタン系重合体、ビニルエーテル系重合体等が挙げられる。
【0030】
なかでも、前記粘着成分としては、ゴム系ブロック共重合体またはアクリル系重合体を使用することが好ましい。
【0031】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、スチレン系ブロック共重合体を使用することが好ましい。前記スチレン系ブロック共重合体は、ポリスチレン単位(a1)とポリオレフィン単位(a2)とを有するトリブロック共重合体、ジブロック共重合体、または、それらの混合物を指す。
【0032】
前記スチレン系のブロック共重合体としては、例えばポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体等を使用することができる。なかでも、前記スチレン系のブロック共重合体としては、ポリスチレン単位(a1)とポリイソプレン単位(a2)とを有するブロック共重合体を使用することが好ましく、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、を使用することがさらに好ましい。
【0033】
前記アクリル系重合体としては、アクリル単量体の重合体を使用することができる。アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルや(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を使用することができる。
【0034】
前記粘着剤層としては、上記粘着成分のほかに、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤、その他の添加剤等を含有するものを使用することができる。
【0035】
前記粘着付与樹脂としては、粘着剤層の強接着性を調整することを目的として、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂等が例示できる。
【0036】
前記架橋剤としては、粘着剤層の凝集力を向上させることを目的として、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト−ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等を使用することができる。
【0037】
前記粘着剤層としては、前記した成分のほかに、必要に応じて発泡剤、熱膨張性バルーン、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、防炎剤、難燃剤等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0038】
前記熱膨張性バルーンは、本発明の粘着テープを加熱し、接着された2以上の被着体を分離する際に、より一層弱い力でそれらを分離することを可能にするため、好適に使用することができる。
【0039】
前記熱膨張性バルーンとしては、例えば、「マツモトマイクロスフェア」(商品名、松本油脂製薬(株)製)、「マイクロスフィアーエクスパンセル」(商品名、日本フィライト(株)製)、「ダイフォーム」(商品名、大日精化工業(株)製)などの市販品を使用することができる。
【0040】
前記熱膨張性バルーンは、60℃以下の温度領域下では優れた接着力を保持ながらも、加熱することでより一層弱い力で、接着された2以上の被着体を分離できる粘着テープを得るうえで、前記粘着剤層(A)に含まれる前記粘着成分の質量に対して3質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%〜30質量%の範囲で使用することがより好ましく、10質量%〜20質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0041】
前記粘着剤層の厚さは、1μm〜200μmの範囲であることが好ましく、5μm〜100μmであることが好ましく、10μm〜80μmであることがより好ましく、30μm〜70μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚さが上記範囲であると、粘着テープを製造する際に粘着剤層を形成し易く、かつ、接着性に優れるため好ましい。
【0042】
前記粘着剤層は、前記した各主成分を含有する粘着剤を基材(中芯)や離型ライナーの表面に塗工し、乾燥等することによって形成することができる。
【0043】
前記粘着剤の形態としては、溶剤系、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤等の水系、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤等の無溶剤系等が挙げられる。
【0044】
また、前記機構(X)のうち、前記誘導電流によって発熱し得る機構(X)を備えた基材としては、金属層の単層によって構成される金属基材、複数の金属層の積層体、金属層とそれ以外の層との積層体、金属粒子等と樹脂等とが混合した基材等を使用することができる。
【0045】
なかでも、前記基材としては、単層または2層以上のアルミニウム箔、または、アルミニウム層とその他層とが積層した基材を使用することが、誘導電流によって前記基材を発熱させ、前記粘着テープを構成する粘着剤層の接着力を著しく低下できる温度(およそ80℃以上)にまで短時間で昇温でき、その結果、被着体を速やかに分離できるため好ましい。
【0046】
前記基材を構成する金属としては、アルミニウム、鉄、銅、フェライト、ニッケル、亜鉛、鉛、ステンレス鋼から選ばれる金属を使用することが好ましく、特にアルミニウムを用いることが好ましい。
【0047】
前記基材としては、厚さ1μm以上1000μm以下であり、好ましくは5μm以上300μm以下、さらに好ましくは5μm以上250μmであることが粘着テープの良好な加工性と、被着体への優れた追従性とを付与するうえでより好ましい。
【0048】
前記基材として、その一部に金属層を有するものを使用する場合、その金属層の厚さは0.5μm以上150μm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上50μm以下であるものを使用することが、誘導電流によって十分な発熱効果を発現するとともに、粘着テープに良好な柔軟性を付与できるため好ましい。
【0049】
本発明の易剥離性粘着テープは、例えば前記基材の片面または両面に、ロールコーターやダイコーター等を用いて、前記粘着剤を塗布及び乾燥し粘着剤層を形成することによって製造することができる。
【0050】
また、前記易剥離性粘着テープは、予め、離型ライナーの表面に、ロールコーター等を用いて、粘着剤を塗布し、乾燥することによって粘着剤層を形成し、次いで、前記粘着剤層を、前記基材の片面または両面に貼り合せる転写法によって製造することができる。
【0051】
本発明の易剥離性粘着テープは、例えば80℃未満、好ましくは60℃以下の温度領域下において非常に優れた接着力を発現する。そのため、前記易剥離性粘着テープは、各種被着体の接着に好適に使用することができる。
【0052】
前記易剥離性粘着テープは、例えば常温(23℃)環境下において、ステンレス板SUSにハンドローラーを用いてテープに貼付し、2kgローラーで1往復加圧し、温度23℃環境下に30分放置した後、SUSからの180°方向に300mm/分の速度で引き剥がした際の接着力が5N/20mm〜50N/20mm程度の接着力を有するものであることが好ましく、7N/20mm〜50N/20mm程度の接着力を有するものであることが、貼付直後でも被着体を強固に接着させ剥がれ等を防止するうえでより好ましい。
【0053】
前記易剥離性粘着テープを用い2以上の被着体を接着させることによって物品を製造する方法としては、例えばいずれか一方の被着体の表面に前記易剥離性粘着テープを構成する一方の粘着剤層を貼付した後、他方の粘着剤層の表面に他方の被着体を貼付し、必要に応じてそれらを圧着等させることによって物品を製造することができる。
【0054】
一方、前記物品を解体する方法としては、例えば前記物品を構成する前記易剥離性粘着テープに、高周波電磁誘導加熱装置を接近または接触させ、前記易剥離性粘着テープの一部または全部に磁束を通過させることによって、前記易剥離性粘着テープの一部または全部に誘導電流を発生させる。前記誘導電流が、前記易剥離性粘着テープの抵抗によって消費させることで、前記易剥離性粘着テープの一部または全部が自己発熱し、前記粘着剤層を局所的に短時間で、被着体同士を容易に分離できる温度(およそ80℃以上)にまで加熱される。これにより、熱に弱い被着体の変形等を引き起こすことなく、短時間で、前記接着された2以上の被着体を分離でき、その結果、前記物品を解体することが可能となる。
【0055】
前記高周波電磁誘導加熱装置としては、特に限定されないが、サイヒット社製の商品名EASY WELDER KIT1000や商品名EASY WELDER KIT2000が挙げられる。
【0056】
また、前記加熱法であれば前記易剥離性粘着テープを局所的に加熱することができるため、物品の周辺領域に存在する部品等への熱の影響を抑制することができる
【0057】
本発明の易剥離性粘着テープは、80℃未満、好ましくは60℃以下の温度領域下において非常に優れた接着力を有するため、電子機器の内部温度が比較的高温になった場合であっても、前記易剥離性粘着テープの接着力の低下による部品の脱落等を引き起こしにくい。
【0058】
一方、前記電子機器に使用される高価な部品をリサイクル等する際には、加熱によって電子機器から前記部品を容易に分離することができる。
【0059】
そのため、本発明の易剥離性粘着テープは、電子機器のなかでも、コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置、夏場等に高温環境にさらされやすい車載用ディスプレイの製造場面等で好適に使用することができる。
【0060】
前記コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置においては、それを構成する透明天板と、そのきょう体との固定に本発明の易剥離性粘着テープを好適に使用することができる。
【0061】
前記透明天板としては、一般のコピー機能やスキャン機能を搭載した複写機や複合機に設置される透明天板を使用することができる。
【0062】
前記透明天板としては、例えばガラスまたはプラスチックからなる透明板状剛体を使用することができ、透明ガラス板を使用することが好ましい。前記プラスチックとしては、例えばアクリル板、ポリカーボネート板等を使用することができる。
【0063】
前記透明天板としては、それが設置される複写機等の形状に合ったものを使用できるが、通常は、正方形または長方形であるものを使用することが好ましい。
【0064】
前記易剥離性粘着テープは、例えば長方形の前記透明天板であれば、対向する2辺の端部に沿って、貼付されることが好ましい。その際、前記粘着テープは、前記透明天板の辺の長さに対応した大きさに裁断したものを使用できるが、例えば幅が0.5mm〜20mmで、長さが10mm〜500mmであるものを使用することが好ましい。
【0065】
前記画像読み取り装置を解体する方法としては、それを構成する前記易剥離性粘着テープを、前記誘導電流によって発熱し得る機構(X)を加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離する方法が挙げられる。
【0066】
前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置の製造場面においては、例えばそれを構成する液晶表示パネル等とタッチパネル部材とを固定する際に、本発明の易剥離性粘着テープを好適に使用することができる。
【0067】
前記前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置を解体する方法としては、それを構成する前記粘着テープを、前記誘導電流によって発熱し得る機構(X)を加熱することによって、液晶表示パネル等の情報表示パネルと、タッチパネル部材とを分離する方法が挙げられる。
【0068】
また、本発明の易剥離性粘着テープは、もっぱら、携帯電子機器を構成する部材の固定に使用することができる。前記部材としては、例えば電子機器を構成する2以上のきょう体またはレンズ部材が挙げられる。
【0069】
前記携帯電子機器としては、例えば前記部材としてきょう体と、レンズ部材またはその他きょう体の一方とが、前記易剥離性粘着テープを介して接合された構造を有するものが挙げられる。
【0070】
(実施例1)
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤(c1)を得た。
【0071】
前記粘着剤(c1)を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって粘着剤層を形成した。前記粘着剤層を、厚さ25μmのアルミニウム基材の両面に貼り合せた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって、易剥離性粘着テープを作製した。
【0072】
(実施例2)
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部、ステンレス繊維(びびり振動切削法によるSUS430、相当直径60μm、長さ2mm)132質量部、アルミニウム粉(福田金属箔粉工業社製アルミニウムアトマイズ粉350メッシュ)116質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤(c2)を得た。
【0073】
前記粘着剤(c2)を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって粘着剤層を形成した。前記粘着剤層を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に貼り合せた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって、易剥離性粘着テープを作製した。
【0074】
(実施例3)
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部、熱膨張性カプセルとしてマツモトマイクロスフィアーF−48(松本油脂製薬株式会社製、120℃における熱膨張率が370%、膨張開始温度90℃〜100℃、最大膨張温度125℃〜135℃、平均粒子径(膨張前)9μm〜15μm)を16.5質量部混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤(c3)を得た。
【0075】
前記粘着剤(c3)を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、60℃で10分間乾燥させることによって粘着剤層を形成した。前記粘着剤層を、厚さ25μmのアルミニウム基材の両面に貼り合せた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって、易剥離性粘着テープを作製した。
【0076】
(実施例4)
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル44.9質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル50質量部、アクリル酸2質量部、酢酸ビニル3質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、70℃で10時間重合することによって、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体X溶液を得た。
【0077】
次に、アクリル共重合体X100質量部に対し、A−100(荒川化学工業(株)製、ロジンエステル系樹脂)を10質量部、D−135(荒川化学工業(株)製、重合ロジンエステル系樹脂)30質量部を混合し、トルエンで希釈することによって不揮発分45質量%の粘着剤(c4)を得た。
【0078】
前記粘着剤(c4)100質量部に対し、「コロネートL−45」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)を1.1質量部添加し15分攪拌したものを、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが60μmになるように、セパレーター上に塗布し、85℃下で5分間乾燥することによって粘着剤層を形成した。
【0079】
次に、上記粘着剤層を厚さ25μmのアルミニウム基材の両面に貼りあわせた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって易剥離性粘着テープを作製した。
【0080】
(比較例1)
ポリエステル系ホットメルト接着剤(バイロン200、東洋紡株式会社製、非結晶性ポリエステル)を厚さ25μmのアルミニウム基材の両面にそれぞれ厚さが60μmになるように塗工し接着シートを作製した。
【0081】
(比較例2)
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は50質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は30質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は70質量%)100質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点115℃、分子量1000)65質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤(c1)を得た。
【0082】
前記粘着剤(c1)を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが60μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって粘着剤層を形成した。前記粘着剤層を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に貼り合せた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって、粘着テープを作製した。
【0083】
〔初期接着性(初期接着力)の評価〕
実施例及び比較例で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。前記圧着して得た試験片を23℃環境下に30分間静置した後、23℃環境下で引張り試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの接着力を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0084】
○ 初期接着力が10N/20mm以上
△ 初期接着力が1N/20mm以上10N/20mm未満
× 初期接着力が1N/20mm未満
【0085】
〔長期接着性(長期接着力)の評価〕
実施例及び比較例で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。前記圧着して得た試験片を60℃環境下に500時間静置した後、次に23℃環境下で放冷した後、23℃環境下で引張り試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの接着力を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0086】
○ 長期接着力が10N/20mm以上
△ 長期接着力が1N/20mm以上10N/20mm未満
× 長期接着力が1N/20mm未満
【0087】
〔誘導電流による熱解体性の評価〕
実施例及び比較例で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。
【0088】
前記圧着して得た試験片を60℃環境下に500時間静置し、次に23℃環境下で放冷した後、電磁誘導加熱装置(入力電圧:200V、消費電力:1500W)を用いて、前記試験片を構成する粘着テープに5秒間、誘導電流を発生させた。
【0089】
前記誘導電流を発生させた後、5秒以内に引張り試験機を用いてテープを180°方向に300mm/分の速度で引き剥がし接着力を測定した。又、これと同時に熱伝対を用いて粘着テープの表面温度を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0090】
◎ 0N/20mm以上0.3N/20mm未満
○ 0.3N/20mm以上3N/20mm未満
△ 3N/20mm以上5N/20mm未満
× 5N/20mm以上
【0091】
〔局所加熱性の評価〕
実施例及び比較例で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。
【0092】
圧着して得た試験片を23℃環境下に30分間静置した後、電磁誘導加熱装置(入力電圧:200V、消費電力:1500W)を用いて、前記試験片を構成する粘着テープに5秒間、誘導電流を発生させた。
前記誘導電流を発生させた後、5秒以内に前記試験片を構成する粘着テープの粘着剤層の温度と、それが貼付されたガラス板の表面温度とを、熱伝対を用いてそれぞれ測定した。粘着テープの粘着剤層の表面温度をT1、ガラス板の表面温度をT2とし、下記基準により局所加熱性を評価した。
【0093】
〇 30℃<T1−T2
△ 20℃≦T1−T2<30℃
× 20℃>T1−T2
【0094】
なお、参考例として、実施例1で作製した易剥離性粘着テープを使用し、かつ、前記〔誘導電流による熱解体性の評価〕及び〔局所加熱性の評価〕の評価方法において、電磁誘導加熱装置の代わりに加熱炉(110℃)を使用したときの評価を表に示した。具体的な評価方法を以下に示す。
【0095】
〔加熱炉を用いた熱解体性の評価〕
実施例1で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。
【0096】
前記圧着して得た試験片を60℃環境下に500時間静置し、次に23℃環境下で放冷した後、加熱炉(110℃、内容積:幅400mm×奥行き300mm×高さ400mm)で15分間加熱し、23℃環境下に取り出したときから5秒以内に、引張り試験機を用いてテープを180°方向に300mm/分の速度で引き剥がし接着力を測定した。又、これと同時に熱伝対を用いて粘着テープの表面温度を測定した。尚、評価基準は下記とした。
【0097】
〔加熱炉を用いた局所加熱性の評価〕
実施例1で作製した粘着テープの一方の面を厚さ25μmポリエステルフイルムで裏打ちし、幅20mm、長さ100mmに切断した。23℃環境下、それを幅30mm、長さ130mm及び厚さ2mmのガラス板上に貼付し、その上面で重さ2kgのハンドローラーを1往復させることによってそれらを圧着した。
【0098】
圧着して得た試験片を23℃環境下に30分間静置した後、加熱炉(110℃、内容積:幅400mm×奥行き300mm×高さ400mm)で15分間加熱した。前記試験片を23℃環境下に取り出したときから5秒以内に、前記試験片を構成する粘着テープの粘着剤層の温度と、それが貼付されたガラス板の表面温度とを、熱伝対を用いてそれぞれ測定した。粘着テープの粘着剤層の表面温度をT1、ガラス板の表面温度をT2とし、下記基準により局所加熱性を評価した。