特開2017-222845(P2017-222845A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-222845(P2017-222845A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】界面活性剤含有試薬
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20171124BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20171124BHJP
   B01D 19/04 20060101ALN20171124BHJP
【FI】
   C09K3/00 Z
   C09K11/06
   B01D19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-96315(P2017-96315)
(22)【出願日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-114385(P2016-114385)
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅士
【テーマコード(参考)】
4D011
【Fターム(参考)】
4D011CC01
(57)【要約】
【課題】
容器の内面と液体との間で表面張力が発生しうる内径の容器に封入された試薬であって、界面活性剤を添加することにより、その表面張力の影響を低減させた試薬を提供する。
【解決手段】
少なくともカチオン性界面活性剤を含有する試薬であって、
溶媒が水であり
カチオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜0.001%(w/v)の範囲であることを特徴とする試薬。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカチオン性界面活性剤を含有する試薬であって、
溶媒が水であり
カチオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜0.001%(w/v)の範囲であることを特徴とする試薬。
【請求項2】
1,2−ジオキセタン系化学発光基質が添加されていることを特徴とする、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
内径が8mm以下の容器に充填されている、請求項1乃至2に記載の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内面と液体との間で表面張力が発生しうる内径の容器に封入された試薬であって、界面活性剤を添加することにより、その表面張力の影響を低減させた試薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に試薬などを溶解させるときには、試薬の溶解性のみならず、非引火性、経済性、生体に対する安全性などの理由から、溶媒として水を選択することが多い。
【0003】
しかし、水はアルコールなどの有機溶媒と比較して表面張力が大きいため、例えば内径が8mm以下の小型容器に対して水溶液を封入してある場合、容器内壁に水溶液との表面張力が働いてその部位で留まってしまう現象が起こる。この現象は充填時のみならず、充填後にも確認される。
【0004】
例えば、容器容量に水溶液を充填する場合には気層が天面側ある状態で開口部をアルミシール、樹脂シール、スクリューキャップ、ゴム栓などで封止する。しかし、輸送時や取り扱い時の衝撃などで、天面側に水溶液が移動した場合に、たとえ容器を正常な状態に静置させたとしても、表面張力の影響で天面側の水溶液が底方向へ移動しないことが多い。このまま天面側に水溶液がある状態で開封した場合には液漏れが発生し、作業者が被液する、装置が被液する、液量不足による正確な作業が実施できなくなるといった問題が発生していた。さらには、吸引ノズル等を容器に挿入し、容器の底部から吸引する場合には、気層からの吸引となってしまうため、定量性の無い吸引となる問題が発生していた。
【0005】
また、水溶液を加熱することにより水の分子間力を弱め、表面張力を低減させることも知られているが、加熱による、溶解してある試薬の劣化や容器の破損などの問題もある。
【0006】
特許文献1においては、容器の内部管内に芯材を導入することにより、液体が芯材に含浸しながら管内を移動しようとするので、表面張力が働かず、液体は管内を自由に移動可能となる技術が公開されている。
【0007】
しかしながら、芯材を入れることは容器形状、包装形態、試薬使用形態から制限を受ける場合が多く、更に芯材材質に起因する試薬の劣化が起こることもあり、芯材を入れることが適切でない場合が多くある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許5318158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、容器の内面と液体との間で表面張力が発生しうる内径の容器に封入された試薬であって、その表面張力の影響を低減させた試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、界面活性剤を添加することにより表面張力の影響を低減させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、少なくともカチオン性界面活性剤を含有する試薬であって、
溶媒が水であり
カチオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜0.001%(w/v)の範囲であることを特徴とする試薬である。
なお、カチオン性界面活性剤の濃度に用いる%(w/v)は、水溶液100mLあたりに含まれる重さ(g)で算出される。
【0013】
また、上記の試薬には、1,2−ジオキセタン系化学発光基質が添加されていてもよい。さらに、内径が8mm以下の容器に充填されている、上記の試薬である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、内径の小さい容器に充填されているものであっても、表面張力の影響を低減させた試薬を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用される界面活性剤は、殺菌作用を有しており、かつ消毒剤として用いられているという安全性から見て、カチオン性界面活性を選択する。
【0016】
本発明で使用されるカチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリヘプチルフェニルホスホニウムブロミドおよびテトラデシルトリフェニルホスホニウムブロミドがあげられる。
【0017】
カチオン性界面活性剤の濃度は、0.0001〜0.001%(w/v)の範囲であることが好ましい。0.0001%(w/v)よりも低い濃度では表面張力の影響を低減することができない。また、0.001%(w/v)よりも高い濃度では振動などで生じた気泡が消失するのに時間がかかり、例えば試薬の液面検出の際に誤差を生じさせる原因となる。
【0018】
本発明の試薬には、1,2−ジオキセタン系化学発光基質を添加してもよい。1,2−ジオキセタンとしては、例えば、5−t−ブチル−4,4−ジメチル−1−(3’−ホスホリルオキシ)フェニル−2,6,7−トリオキサビシクロ[3.2.0]ヘプタンジナトリウム塩、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン ジナトリウム塩、2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロトリシクロ[3.3.1.13.7]デカン])−4−イル]−1−フェニルリン酸ジナトリウム塩、3−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロトリシクロ[3.3.1.13.7]デカン])−4−イル]−1−フェニルリン酸ジナトリウム塩があげられる。
【0019】
本発明の供給容器の材質は、熱可塑性樹脂(例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂)やガラス等が例示できる。
【0020】
本発明の供給容器の形状は特に限定しないが、表面張力が発生しうる内径の容器(例えば内径が8mm以下の小型容器)の場合に用いるのが好ましい。
【0021】
本発明で使用される試薬には、緩衝剤などを合わせて溶解させることもできる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
純水800mLに2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール4.46gを溶解し、酢酸でpH10に調製した。この水溶液に1,2−ジオキセタン系化学発光基質である5−t−ブチル−4,4−ジメチル−1−(3’−ホスホリルオキシ)フェニル−2,6,7−トリオキサビシクロ[3.2.0]ヘプタンジナトリウム塩を0.8g、アジ化ナトリウムを1.0gそれぞれ添加した。さらに純水を添加して容量が1000mLとなるように調製した。調製した水溶液の組成は以下の通りである。
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 50mM(pH10)、5−t−ブチル−4,4−ジメチル−1−(3’−ホスホリルオキシ)フェニル−2,6,7−トリオキサビシクロ[3.2.0]ヘプタンジナトリウム塩 0.08%(w/v)、アジ化ナトリウム 0.1%(w/v)
【0024】
前記水溶液をベースとして用いて、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドの濃度が0%(w/v)、0.00005%(w/v)、0.0001%(w/v)、0.0002%(w/v)、0.001%(w/v)、0.005%(w/v)および0.01%(w/v)となる水溶液を調製した。内径が8mmの容器(容量400μL)に、調製した水溶液をそれぞれ350μL分注した。その後アルミシールにて容器を封止した。容器の天地を反転させた状態で容器を指ではじき、気層を上部へと移動させた。次にゆっくり容器の天地を戻してそのまま静置し気層の動きを確認した。
【0025】
界面活性剤濃度が0%(w/v)と0.00005%(w/v)では気層の動きが観察されず、表面張力の影響を低減させることができなかった。0.0001%(w/v)において気層の動きがゆっくりであるが確認され、0.0002%(w/v)以上においては、容器の天地を戻してすぐに気層が動き、良好な結果であった。
【0026】
実施例2
実施例1にて調製したものを、振盪機にて4500ppsで30秒間振盪し気泡を発生させた。次に容器をそのまま静置し気泡の状態を確認した。
【0027】
界面活性剤濃度が0%(w/v)から0.0002%(w/v)では、気泡が10秒以内に消失する良好な結果であった。0.001%(w/v)では、気泡が約30秒で消失した。0.005%(w/v)以上では、気泡の消失に1分以上要した。
【0028】
実施例3
実施例1にて使用したトリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドの代わりに、カチオン性界面活性剤としてベンザルコニウムクロリドを使用した。
【0029】
界面活性剤濃度が0%(w/v)と0.00005%(w/v)では気層の動きが観察されず、表面張力の影響を低減させることができなかった。0.0001%(w/v)において気層の動きがゆっくりであるが確認され、0.0002%(w/v)以上においては、容器の天地を戻してすぐに気層が動き、良好な結果であった。
【0030】
実施例4
実施例3にて調製したものを、振盪機にて4500ppsで30秒間振盪し気泡を発生させた。次に容器をそのまま静置し気泡の状態を確認した。
【0031】
界面活性剤濃度が0%(w/v)から0.0002%(w/v)では、気泡が10秒以内に消失する良好な結果であった。0.001%(w/v)では、気泡が約30秒で消失した。0.005%(w/v)以上では、気泡の消失に1分以上要した。
【0032】
実施例1から実施例4までの結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
参考例1
内径が9mmの容器(容量1000μL)に、純水を850μL分注した。その後アルミシールにて容器を封止した。容器の天地を反転させた状態で容器を指ではじき、気層を上部へと移動させた。次にゆっくり容器の天地を戻したところ、すぐに気層が動くことが確認された。
【0035】
つまり、内径が8mmよりも大きい容器においては、表面張力の影響は確認されなかった。